説明

簡便な米菓製造方法

【課題】簡便な米菓の製造方法およびそれによって製造される米菓を提供すること。
【解決手段】冷水糊化粉および未糊化粉からなる穀粉澱粉類100重量部に対して、糖類10〜30重量部および油脂類5〜40重量部を含む生地を焼成して得られる米菓であって、該冷水糊化粉と未糊化粉との重量の比率が、冷水糊化粉:未糊化粉=15:85〜60:40であり、該穀粉澱粉類が、冷水糊化粳米粉および未糊化粳米粉を含み、該米粉の重量の合計が、該穀粉澱粉類の重量の70重量%〜100重量%であり、該米菓の形状がスティック状である、米菓。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米菓および簡便な米菓製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日本のスナック類の消費量は、ポテトを原料とするスナックが圧倒的に一位を占めており、次いで、米菓、コーンスナック、小麦粉を原料とするスナックという順序で続く。米菓はこのように、スナック類の中でも消費量が多い。
【0003】
しかし、米菓は、通常、「蒸練−展延−型抜き−乾燥−調湿(ねかせ)−焼成」または「水浸漬−蒸練−展延−型抜き−乾燥−調湿(ねかせ)−焼成、油チョウなど」といった多くの工程によって製造される。そのため、米菓を得るには、多くの手間および時間がかかる。
【0004】
手間および時間を省略して生産性を向上させるために、従来の米菓製造法のうちの蒸練工程を省くと、得られる米菓においては、生地の繋がりが悪く、また食感が粉っぽくなる。そのため、従来技術では蒸練工程が必要である。手間および時間を省略して生産性を向上させるために、従来の米菓製造法のうちの乾燥工程を省くと、焼成時の浮きが悪くなり、得られる米菓は堅くなる。そのため、従来技術では乾燥工程が必要である。さらに、従来技術では、乾燥−調湿といった工程を経る間に反りや欠損が生じやすく、まっすぐなスティック状米菓を得ることが困難であった。
【0005】
簡便な米菓製法に関する技術は知られていない。特許文献1は、原料米を微粉砕し、これに適量の水分を加え混練して任意断面のロープ状に押し出し成形し、これを茹煮釜に入れて移動しつつα化し、ついで冷却後製餅することを特徴とした米菓生地の製造方法を開示する。特許文献1に記載の製造方法は、成型から焼成を連続的に行なわない点で簡便でなく、本法とは異なる。特許文献1の方法は、従来の蒸練工程の代替法として、蒸練工程を連続的にむらなく行うための方法であり、従来の乾燥工程などは省略できない。そのため、米菓を得るために多くの手間および時間がかかり、まっすぐなスティック状米菓を得ることが困難であるという問題は何ら解決されていない。
【0006】
特許文献2は、グルテン形成能を有さない未糊化粉および冷水糊化粉を含む生地を成型および焼成して得られる焼き菓子を開示する。特許文献2においては、種々の未糊化粉のうちの一例として米粉が開示されており、種々の冷水糊化粉のうちの一例として米粉から製造した冷水糊化粉が開示されている。特許文献2においては、米粉に糯米粉および粳米粉があることについて記載されておらず、これらがどのように組み合わせて使用されるかについて全く開示されていない。
【0007】
特許文献3は、未糊化粉と冷水糊化粉とを含む生地を焼成して得られる、中空スティック状の焼き菓子であって、該生地が活性グルテンを実質的に含まない、焼き菓子を開示する。特許文献3においては、種々の未糊化粉のうちの一例として米粉が開示されており、種々の冷水糊化粉のうちの一例として米粉から製造した冷水糊化粉が開示されている。特許文献2においては、米粉に糯米粉および粳米粉があることについて記載されておらず、これらがどのように組み合わせて使用されるかについて全く開示されていない。
【特許文献1】特許第3629602号公報
【特許文献2】特開2003−284501号公報
【特許文献3】国際公開第2005/000027号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点の解決を意図するものであり、スティック状の米菓およびその米菓の簡便な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、(i)冷水糊化糯米粉および未糊化粳米粉を含むか、(ii)冷水糊化粳米粉および未糊化糯米粉を含むか、または(iii)冷水糊化粳米粉および未糊化粳米粉を含む穀粉澱粉類を使用することにより、火ぶくれのないスティック状の米菓が得られることを見出し、これに基づいて本発明を完成させた。
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、例えば、以下の手段を提供する:
(項目1)
冷水糊化粉および未糊化粉からなる穀粉澱粉類100重量部に対して、糖類10〜30重量部および油脂類5〜40重量部を含む生地を焼成して得られる米菓であって、
該冷水糊化粉と未糊化粉との重量の比率が、冷水糊化粉:未糊化粉=15:85〜40:60であり、
該穀粉澱粉類が、(i)冷水糊化糯米粉および未糊化粳米粉を含むか、または(ii)冷水糊化粳米粉および未糊化糯米粉を含み、
該米粉の重量の合計が、該穀粉澱粉類の重量の70重量%〜100重量%であり、
該米菓の形状がスティック状である、米菓。
【0011】
(項目2)
冷水糊化粉および未糊化粉からなる穀粉澱粉類100重量部に対して、糖類10〜30重量部および油脂類5〜40重量部を含む生地を焼成して得られる米菓であって、
該生地中の該冷水糊化粉と未糊化粉との重量の比率が、冷水糊化粉:未糊化粉=15:85〜60:40であり、
該穀粉澱粉類が、(iii)冷水糊化粳米粉および未糊化粳米粉を含み、
該米粉の重量の合計が、該穀粉澱粉類の重量の70重量%〜100重量%であり、
該米菓の形状がスティック状である、米菓。
【0012】
(項目3)
前記米菓が、表面の平滑性を実質的に維持したまま生地をスティック状に成形した後にその成形品を乾燥せずに焼成して得られるものである、項目1または2に記載の米菓。
【0013】
(項目4)
前記生地中の油脂類に加えて、焼成後、焼成品の重量の5〜40重量%の油脂類を焼成品に浸透させることにより得られる、項目1または2に記載の米菓。
【0014】
(項目5)
前記穀粉澱粉類100重量部が焼成米1〜50重量部を含む、項目1または2に記載の米菓。
【0015】
(項目6)
前記焼成米が粒度2mm以下の粉末である、項目5に記載の米菓。
【0016】
(項目7)
前記生地の糖類10〜30重量部中の砂糖を除く非還元糖の重量が3〜30重量部である、項目1〜6のいずれか1項に記載の米菓。
【0017】
(項目8)
前記非還元糖がトレハロースである、項目7に記載の米菓。
【0018】
(項目9)
前記米菓の形状が円柱状であり、直径が2mm〜10mm、長さが40〜150mmである、項目1〜8のいずれか1項に記載の米菓。
【0019】
(項目10)
中空状の形状を有する、項目1〜9のいずれか1項に記載の米菓。
【0020】
(項目11)
米菓の製造方法であって、
冷水糊化粉および未糊化粉からなる穀粉澱粉類100重量部に対して、糖類10〜30重量部および油脂類5〜40重量部を蒸練せずに混合して生地を得る工程であって、該冷水糊化粉と未糊化粉との重量の比率が、冷水糊化粉:未糊化粉=15:85〜40:60であり、該穀粉澱粉類が、(i)冷水糊化糯米粉および未糊化粳米粉を含むか、または(ii)冷水糊化粳米粉および未糊化糯米粉を含み、該米粉の重量の合計が、該穀粉澱粉類の重量の70重量%〜100重量%である、工程;
該生地を、エクストルーダーにより、表面の平滑性を実質的に維持したままスティック状に成形する工程;および
該成形品を乾燥せずに焼成して、スティック状米菓を得る工程
を包含し、該スティック状米菓の外径が2mm〜10mmである、方法。
【0021】
(項目12)
米菓の製造方法であって、
冷水糊化粉および未糊化粉からなる穀粉澱粉類100重量部に対して、糖類10〜30重量部および油脂類5〜40重量部を蒸練せずに混合して生地を得る工程であって、該冷水糊化粉と未糊化粉との重量の比率が、冷水糊化粉:未糊化粉=15:85〜60:40であり、該穀粉澱粉類が、(iii)冷水糊化粳米粉および未糊化粳米粉を含み、該米粉の重量の合計が、該穀粉澱粉類の重量の70重量%〜100重量%である、工程;
該生地を、エクストルーダーにより、表面の平滑性を実質的に維持したままスティック状に成形する工程;および
該成形品を乾燥せずに焼成して、スティック状米菓を得る工程
を包含し、該スティック状米菓の外径が2mm〜10mmである、方法。
【0022】
(項目13)
前記スティック状米菓が、外径3mm〜10mm、内径1mm〜8mmの中空スティック状である、項目11または12に記載の方法。
【発明の効果】
【0023】
米粉(好ましくは「α糯米粉、β粳米粉」、「α粳米粉、β糯米粉」、「α粳米粉、β粳米粉」の組み合わせよりなる米粉)、糖質、油脂および必要に応じてその他澱粉、呈味原料を配合することにより、火膨れが無く、火通りが良好で且つエクストルーダー成型適性があり、その後蒸練、乾燥を必要とせずに焼成可能な生地を得ることが出来、通常より簡便に米菓を得ることが可能となった。
【0024】
また、本発明の製造方法によれば、従来困難であったまっすぐなスティック状米菓を得ることも可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0026】
(1.本発明の米菓の原料)
本発明で言う「米菓」とは、米を主原料とし、必要に応じて他の穀粉、澱粉等の粉、糖類、油脂類、その他呈味原料、食品添加物、水を加え、混合して生地を調製した後、成形し、焼成した食品をいう。「米を主原料とする」とは、水を除く原料のうちの25重量%以上が米であることをいう。米菓の原料中の米の割合は、好ましくは約30重量%以上であり、より好ましくは約35重量%以上であり、さらに好ましくは約40重量%以上であり、特に好ましくは約50重量%以上である。米菓の原料中の米の割合は、好ましくは約85重量%以下であり、より好ましくは約80重量%以下であり、さらに好ましくは約70重量%以下であり、特に好ましくは約60重量%以下である。
【0027】
本発明の米菓は、風味的に特に制限はない。例えば、甘いタイプのスナックとする場合は糖類、乳製品等を、米菓を辛いタイプのスナックとする場合は食塩、調味料等を多く加えると目的とする米菓を製造することができる。嗜好性を上げるため、本米菓の中空内部にチョコレート等の油脂性菓子を充填したり、あるいは外側にコートしたり、シーズニングオイルをコートしたりといった二次的加工についても何ら制限はない。
【0028】
本発明の米菓は、冷水糊化粉および未糊化粉からなる穀粉澱粉類100重量部に対して、糖類10〜30重量部および油脂類5〜40重量部を含む生地を焼成して得られる米菓である。
【0029】
(1.1 澱粉穀粉類)
本明細書中では、澱粉と穀粉とを総称して、澱粉穀粉類という。
【0030】
本明細書中では、「澱粉」とは、物質として100%純粋な澱粉だけでなく少量の不純物を含んでもよい。ただし、澱粉中の不純物の含有量は、好ましくは約10重量%以下、より好ましくは約5%以下、さらに好ましくは約1%以下である。未糊化粉である澱粉の例としては、未処理澱粉および各種化工澱粉が挙げられる。本発明において澱粉を用いる場合、その量に特に制限はないが、澱粉穀粉類のうちの好ましくは約30重量%以下、より好ましくは約20重量%以下、さらに好ましくは約15重量%以下、特に好ましくは約10重量%以下である。澱粉の量が多すぎると、米菓の風味が低下しやすい。特に下限はないが、必要に応じて約0.1重量%以上または約1重量%以上の配合量とすることができる。
【0031】
「未処理澱粉」とは、天然で生成される澱粉であって、自然状態で共存している他の成分(例えば、タンパク質、脂質など)から澱粉を分離するために必要な処理以外の処理が施されていない澱粉をいう。未処理澱粉としては、通常市販されている澱粉であればどのような澱粉でも使用され得る。未処理澱粉の例としては、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、甘藷澱粉、くず澱粉などの地下澱粉;コーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉(例えば、もち米澱粉、粳米澱粉)などの地上澱粉が挙げられる。
【0032】
化工澱粉としては、従来から知られている架橋澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、可溶性澱粉、漂白澱粉などいずれも使用することができる。架橋処理、エステル化処理、エーテル化処理、可溶化処理、漂白処理など、化工澱粉を得るための種々の処理は、任意に組み合わされ得る。本発明の目的の効果が得られる限り、これらの種々の処理の組合せが施された任意の化工澱粉が、本発明で使用され得る。
【0033】
架橋澱粉とは、澱粉中の2箇所以上の水酸基に多官能基を結合させて澱粉分子内または澱粉分子間で架橋させた、澱粉誘導体をいう。架橋剤の例としては、オキシ塩化リン、トリメタリン酸、アクロレイン、エピクロルヒドリンなどが挙げられる。常法で製造された任意の架橋澱粉を使用し得る。
【0034】
エステル化澱粉とは、澱粉に対してエステル結合で官能基を付加した澱粉をいい、エーテル化澱粉とは、澱粉に対してエーテル結合で官能基を付加した澱粉をいう。エステル化澱粉の例としては、アセチル澱粉、リン酸澱粉、コハク酸澱粉、カルボキシメチル澱粉、酢酸澱粉、硝酸澱粉およびキサントゲン酸澱粉が挙げられる。エーテル化澱粉の例としては、ヒドロキシプロピル澱粉、ヒドロキシエチル澱粉およびカルボキシエチル澱粉が挙げられる。エステル化澱粉、およびエーテル化澱粉の製造方法は当業者に周知である。
【0035】
本明細書中では、「穀粉」とは、穀物の種子の粉砕物をいう。穀粉としては、通常市販されている穀粉であればどのような穀粉でも使用され得る。穀粉の粒子サイズは通常、0.001mm〜1mmである。穀粉の原料として用いられる穀物の例としては、コメ、コムギ、ライムギ、トウモロコシ、ソバ、アワ、キビ、ハトムギ、ヒエなどが挙げられる。穀粉の例としては、米粉、小麦粉、ライ麦粉、ソバ粉、コーンフラワー、あわ粉、きび粉、はと麦粉、ひえ粉などが挙げられる。本発明の米菓においては、主に米粉が使用されるが、米粉以外の任意の他の穀粉(小麦粉、コーンフラワー等)もまた使用され得る。穀粉の製造方法は当業者に周知である。本発明の米粉の原料としては、粳米および糯米が使用され得る。粳米はその澱粉中にアミロースを約20%含むが、糯米はその澱粉中にアミロースを実質的に含まず、糯米澱粉はほぼアミロペクチン100%からなる。糯米粉は、粳米粉と比較して、吸水力が大きく、これを使った生地は粘りが強いうえ製品の老化も遅いという特性を有する。これに対して、粳米粉は、アミロースを含むために吸水力が小さくて比較的粘りが弱く、製品の老化が速いという特性を有する。
【0036】
本発明においては、米粉の重量は、澱粉穀粉類の重量のうちの約70重量%以上であることが好ましく、約75重量%以上であることがより好ましく、約80重量%以上であることが最も好ましい。米粉の重量は、澱粉穀粉類の重量のうちの約100重量%以下であり得、例えば、約95重量%以下、約90重量%以下、約85重量%以下であってもよい。
【0037】
米粉以外の穀粉は、少ないことが好ましい。米粉以外の穀粉が多いと、他の穀物の風味が付与されて米菓らしい風味が得られにくくなるからである。本発明においては、米粉以外の穀粉の重量の合計は、澱粉穀粉類の重量のうちの約30重量%以下であることが好ましく、約25重量%以下であることがより好ましく、約20重量%以下であることがさらに好ましく、約10重量%以下であることが好ましく、約5重量%以下であることが最も好ましい。
【0038】
澱粉および穀粉は澱粉を含んでいるため、水と混合して加熱すると糊状になる性質を有する。澱粉穀粉類を予め加熱することにより常温の水と混合した際に糊状となるように処理してあれば、その澱粉穀粉類は冷水糊化粉であり、そのような処理が施されていなければ、その澱粉穀粉類は未糊化粉である。
【0039】
(1.1.1 冷水糊化粉)
本発明で言う「冷水糊化粉」とは、常温の水と混合した際に糊状となる、穀粉および澱粉類を指す。より詳細には、「冷水糊化粉」とは、糊化されている穀粉および澱粉類をいい、糊化とは、澱粉が結晶性および複屈折性を失った状態をいう(「澱粉科学ハンドブック」、株式会社朝倉書店、1977年7月20日発行、第35頁)。通常の穀粉および澱粉類は常温の水と混合しても糊状とならない。冷水糊化粉は、通常の穀粉または澱粉類を水と合わせてから加熱し、エクストルーダーを使用せずにドラムドライ(ホットロールともいう)によって乾燥して、あるいはエクストルーダーで加圧加熱処理を行い糊状とし(すなわち、α化し)、その後、エクストルーダーの出口から吐出することにより糊状の生地を出口で瞬時に膨化、乾燥および粉砕することにより得られる。冷水糊化粉の製造方法は当業者に公知である。冷水糊化粉は、製造の過程で加熱されているので、活性グルテンを実質的に含まない。冷水糊化粉の原料として用いられる穀粉としては、米粉、小麦粉等、上記の任意の穀粉が挙げられる。冷水糊化粉の原料として用いられる澱粉類の例としては、上記の未処理澱粉、架橋澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉等の各種化工澱粉、デキストリンが挙げられる。特定の実施形態では、小麦粉を使用しないことが好ましい。
【0040】
冷水糊化粉としては、冷水糊化粳米粉(α化粳米粉ともいう)または冷水糊化糯米粉(α化糯米粉ともいう)を用いることが好ましい。冷水糊化粳米粉と冷水糊化糯米粉との混合物もまた使用し得る。「α化粳米粉」とは、α化処理された粳米粉をいう。「α化糯米粉」とは、α化処理された糯米粉をいう。α化処理は、従来公知の方法により行われ得る。例えば、米粉に水を加えた懸濁液を加熱された回転ドラムに落下させることにより糊化し、ドラムロール表面で薄膜状に脱水乾燥し、かき取り、粉砕、整粒することにより得る方法などが知られている。α化米粉は、澱粉以外の成分を分離したα化澱粉と異なり、加工した穀粉であるため、焼成米の粉末同様、米の香りが残っているため製品の風味を向上することが可能となる。
【0041】
冷水糊化粉の一部として、冷水糊化粉としての性質を有する焼成米破砕物または焼成米粉末を使用してもよい。「焼成米」とは、焙煎を行った米である。米粒を蒸煮し、乾燥した後に米粒を焙煎し、破砕または粉末化すると、冷水糊化粉としての性質を有する焼成米破砕物または焼成米粉末が得られる。他方、米粒の蒸煮を行わずに破砕または粉末化し、これを焙煎すると、未糊化粉としての性質を有する焼成米破砕物または焼成米粉末が得られる。未糊化粉としての性質を有する焼成米破砕物および焼成米粉末については次の項目で説明する。焼成米は、蒸煮し、乾燥した後に焙煎された焼成米であることが好ましい。焼成米を使用する場合、焼成米は、粒状または粉末状に破砕されることが好ましい。冷水糊化粉としての性質を有する焼成米破砕物または焼成米粉末の粒度は、好ましくは約2mm以下であり、より好ましくは約1mm以下であり、さらに好ましくは約0.5mm以下である。焼成米破砕物または焼成米粉末の粒度に特に下限はないが、例えば、約0.01mm以上、約0.05mm以上、約0.1mm以上などであり得る。焼成米は、米菓に米菓らしい風味を与えるために適切である。
【0042】
(1.1.2 未糊化粉)
本発明で言う「未糊化粉」とは、常温の水と混合した際に糊状にならない、穀粉および澱粉類を指す。より詳細には、「未糊化粉」とは、糊化されていない、すなわち、結晶性および複屈折性を有する、穀粉および澱粉類をいう(「澱粉科学ハンドブック」、株式会社朝倉書店、1977年7月20日発行、第35頁)。
【0043】
未糊化粉に包含される穀粉としては、通常市販されている穀粉であればどのような穀粉でも使用され得る。穀粉の粒子サイズは通常、0.001mm〜1mmである。穀粉の原料として用いられる穀物の例としては、コメ、コムギ、ライムギ、トウモロコシ、ソバ、アワ、キビ、ハトムギ、ヒエなどが挙げられる。穀粉の例としては、米粉、小麦粉、ライ麦粉、ソバ粉、コーンフラワー、あわ粉、きび粉、はと麦粉、ひえ粉などが挙げられる。穀粉として米粉を使用することが好ましく、未糊化粳米粉または未糊化糯粉を使用することがより好ましい。未糊化粳米粉と未糊化糯粉とを混合して使用してもよい。本発明においては未糊化粉として、米粉に加えて、小麦粉、コーンフラワー等の1種以上を広く用いることができる。穀粉の製造方法は当業者に周知である。
【0044】
米粉は米の香りが残っているため、澱粉類を併用する場合でも製品の風味を向上させることが可能となる。副素材である呈味原料を添加する場合で、呈味原料の風味が強いときは、穀粉を使用しなくても澱粉臭が際立たない場合があるが、必要に応じて穀粉を使用すれば良い。
【0045】
未糊化粉の一部として、未糊化粉としての性質を有する焼成米破砕物または焼成米粉末を使用してもよい。未糊化粉としての性質を有する焼成米破砕物または焼成米粉末は、米粒の蒸煮を行わずに粉砕または粉末化し、これを焙煎することにより得られる。水分量は保存性を考慮すると1%以下が望ましい。焼成米は、粒状または粉末状に破砕されることが好ましい。未糊化粉としての性質を有する焼成米破砕物または焼成米粉末の粒度は、好ましくは約2mm以下であり、より好ましくは約1mm以下であり、さらに好ましくは約0.5mm以下である。焼成米の粒度に特に下限はないが、例えば、約0.01mm以上、約0.05mm以上、約0.1mm以上などであり得る。焼成米は、米菓に米菓らしい風味を与えるために適切である。
【0046】
この穀粉澱粉類は、(i)冷水糊化糯米粉および未糊化粳米粉を含むか、(ii)冷水糊化粳米粉および未糊化糯米粉を含むか、または(iii)冷水糊化粳米粉および未糊化粳米粉を含む。
【0047】
本発明の米菓の好ましい実施形態では、穀粉澱粉類は、(i)冷水糊化糯米粉および未糊化粳米粉を含み、この場合、冷水糊化糯米粉(ならびにある場合は他の冷水糊化穀粉および冷水糊化澱粉)を含めた冷水糊化粉の重量の合計と未糊化粳米粉(ならびにある場合は他の未糊化穀粉および未糊化澱粉)を含めた未糊化粉の重量の合計との比率は、冷水糊化粉:未糊化粉=15:85〜40:60であり得る。特定の好ましい実施形態では、穀粉澱粉類が冷水糊化糯米粉および未糊化粳米粉を含む場合、穀粉澱粉類は、冷水糊化粳米粉を含まず、かつ未糊化糯米粉を含まない。
【0048】
本発明の米菓の好ましい実施形態では、穀粉澱粉類は、(ii)冷水糊化粳米粉および未糊化糯米粉を含み、この場合、冷水糊化粳米粉(ならびにある場合は他の冷水糊化穀粉および冷水糊化澱粉)を含めた冷水糊化粉の重量の合計と未糊化糯米粉(ならびにある場合は他の未糊化穀粉および未糊化澱粉)を含めた未糊化粉の重量の合計との比率は、冷水糊化粉:未糊化粉=15:85〜40:60であり得る。特定の好ましい実施形態では、穀粉澱粉類が冷水糊化粳米粉および未糊化糯米粉を含む場合、穀粉澱粉類は、冷水糊化糯米粉を含まず、かつ未糊化粳米粉を含まないことが好ましい。
【0049】
本発明の米菓の好ましい実施形態では、穀粉澱粉類は、(iii)冷水糊化粳米粉および未糊化粳米粉を含み、この場合、冷水糊化糯米粉(ならびにある場合は他の冷水糊化穀粉および冷水糊化澱粉)を含めた冷水糊化粉の重量の合計と未糊化粳米粉(ならびにある場合は他の未糊化穀粉および未糊化澱粉)を含めた未糊化粉の重量の合計との比率は、冷水糊化粉:未糊化粉=15:85〜60:40であり得る。特定の好ましい実施形態では、穀粉澱粉類が冷水糊化粳米粉および未糊化粳米粉を含む場合、穀粉澱粉類は、糯米粉を含まない。
【0050】
本発明の米菓の好ましい実施形態では、穀粉澱粉類100重量部は、焼成米1〜50重量部を含む。好ましくは焼成米は、冷水糊化粉としての性質を有する焼成米粉末である。この米粉の重量の合計は、穀粉澱粉類の重量の70重量%〜100重量%である。
【0051】
(1.2 糖類)
本発明で言う「糖類」とは、単糖、二糖、オリゴ糖、糖アルコール、水飴、澱粉分解物および水溶性食物繊維をいう。糖類としては、当該分野で市販される任意の糖類が使用され得る。糖類の例としては、砂糖、異性化糖、ぶどう糖、麦芽糖、乳糖、トレハロース、マルチトール、パラチニット;水飴、デキストリン等の澱粉分解物;ポリデキストロース等の食物繊維が挙げられる。目的とする米菓の甘味の程度、食感、焼色、膨化程度に伴う形状等を調整するために、必要に応じて1種、又は2種以上の糖類を選択して用いることができる。低甘味の糖類を選択して用いることにより、得られる米菓の食感および膨化程度を調整することが可能である。
【0052】
糖類としては、非還元糖を用いるか、または還元糖の量を減らすことが好ましい。還元糖を使用すると、米菓の焼成中にメイラード反応が起こる。メイラード反応の量が適正であれば適度な焼き色が付き、食欲をそそる米菓となるが、メイラード反応の量が多すぎると、焦げが発生し、喫食の際に気になる場合がある。非還元糖の例としては、トレハロース、糖アルコール(マルチトール、ソルビトール、エリスリトール、マンニトール、パラチニット、ラクチトール、キシリトールなど)が挙げられる。糖類としてトレハロースを使用することが好ましい。
【0053】
糖類の配合量は、未糊化粉と冷水糊化粉との合計100重量部に対して、代表的には約10重量部以上であり、好ましくは約15重量部以上であり、さらに好ましくは約20重量部以上である。糖類の配合量は、未糊化粉と冷水糊化粉との合計100重量部に対して、代表的には約30重量部以下であり、好ましくは約25重量部以下であり、さらに好ましくは約23重量部以下である。糖類の配合量が多すぎる場合、生地のまとまりまたは伸展性が悪く成形性が低下したり、焼成後の形状がだれてしまったりといった問題が生じやすい。糖類の配合量が少なすぎる場合は、粉っぽい風味が感じられたり、火通りが悪く焼成に長時間を要したり、焼成する際にバンド等への付着が悪く、そり等の形状変化が生じる可能性がある。
【0054】
還元糖の配合量は、未糊化粉と冷水糊化粉との合計100重量部に対して、代表的には約3重量部以上であり、好ましくは約10重量部以上であり、さらに好ましくは約15重量部以上である。還元糖の配合量は、未糊化粉と冷水糊化粉との合計100重量部に対して、代表的には約30重量部以下であり、好ましくは約25重量部以下であり、さらに好ましくは約23重量部以下である。還元糖の配合量が多すぎる場合、生地のまとまりまたは伸展性が悪く成形性が低下したり、焼成後の形状がだれてしまったりといった問題が生じやすい。還元糖の配合量が少なすぎる場合は、粉っぽい風味が感じられたり、火通りが悪く焼成に長時間を要したり、焼成する際にバンド等への付着が悪く、そり等の形状変化が生じる可能性がある。
【0055】
(1.3 油脂類)
本発明で言う「油脂類」とは植物油脂、動物油脂およびそれらの加工品をいう。油脂類としては、当該分野で市販される任意の油脂類が使用され得る。油脂類の例としては、ショートニング、マーガリン、バター、ラード、コーン油、オリーブオイル、綿実油、ナタネ油、ダイズ油、ヤシ油、ゴマ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、サラダオイル、粉末油脂等の各種植物性および動物性の油脂が挙げられる。得られる米菓の風味および口溶けを向上させるために、必要に応じて1種、又は2種以上の油脂類を選択して用いることができる。これら油脂類は、スナック的な風味にしたり、洋風的な味付けにしたりする場合等、油脂の風味を付与したり口溶けをさらに向上させるのに有効である。
【0056】
油脂類の配合量は、未糊化粉と冷水糊化粉との合計100重量部に対して、代表的には約5重量部以上であり、好ましくは約10重量部以上であり、さらに好ましくは約15重量部以上である。油脂類の配合量は、未糊化粉と冷水糊化粉との合計100重量部に対して、代表的には約40重量部以下であり、好ましくは約35重量部以下であり、さらに好ましくは約30重量部以下である。油脂類の配合量が多すぎる場合、生地がゆるくなって成形性が低下したり、焼成後の形状がだれてしまったりといった問題が生じ易い。油脂類の配合量が少なすぎる場合は、生地のまとまりまたは伸展性が悪く成形性が低下したり、口溶けが悪かったり、粉っぽい風味が感じられたり、火通りが悪く焼成に長時間を要したりする可能性がある。通常、得られる米菓の食感は、油脂量が多いほどサクサクした軽い方向となる。得られる米菓の目的とする食感に応じて、油脂類の配合量を設定することができる。
【0057】
(1.4 他の原料)
本発明でいう「呈味原料」とは、得られる米菓に特定の味を付与する目的で添加される食品素材をいう。なお、本明細書中では、糖類は、呈味原料の範囲には含まれない。呈味原料の例としては、ピーナッツ、アーモンド、マカダミアナッツ、カシューナッツ、栗等の種実類;アズキ、えんどう豆、大豆等の豆類;エビ、カニ、鮭、ホタテ、タラコ等の魚介類;ソーセージ、ハム、ベーコン、ミンチ肉等の畜産物類;生卵、卵白、卵黄等の卵類;牛乳、生クリーム、れん乳、全粉乳、脱脂粉乳、チーズ、ヨーグルト等の乳類;ニンジン、トマト、オニオン等の野菜類;イチゴ、オレンジ、レーズン、リンゴ、キウイ、パイナップル、梅、バナナ等の果実類;しいたけ、マッシュルーム等のきのこ類;青海苔、昆布、わかめ等の藻類;コーヒー、紅茶、ココア、ビール、ワイン等の嗜好飲料類;食塩、コンソメ、醤油、ソース、カレー粉、こしょう、シナモン等の調味料香辛料類等が挙げられる。呈味原料の形態は、生、乾燥品、ペースト、ピューレ、粉末等の任意の形態であってよい。米菓に目的とする風味を付与するために、必要に応じて1種、又は2種以上の呈味原料を選択して用いることができる。
【0058】
呈味原料の配合量は、未糊化粉と冷水糊化粉との合計100重量部に対して、代表的には約1重量部以上であり、好ましくは約5重量部以上であり、さらに好ましくは約10重量部以上である。呈味原料の配合量は、未糊化粉と冷水糊化粉との合計100重量部に対して、代表的には約20重量部以下であり、好ましくは約15重量部以下であり、さらに好ましくは約10重量部以下である。呈味原料の配合量が多すぎる場合、生地のまとまりまたは伸展性が悪く成形性が低下したり、膨化が小さかったり、口溶けが悪かったりといった問題が生じやすい。呈味原料の配合量が少なすぎる場合は、粉っぽい風味を感じる場合がある。
【0059】
上記の他、乳化剤、膨脹剤、クエン酸等の酸味料、アミノ酸等の調味料、アスパルテーム等の甘味料、香料等の添加物を加えることに全く制限はない。例えば、レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等の各種乳化剤が使用可能である。得られる米菓の食感を調整する場合、および成形時の油脂分離を抑制する等の目的で、必要に応じて1種、又は2種以上の添加物を選択して用いることができる。乳化剤の種類およびHLBによって多少異なるが、通常、乳化剤の配合量が多いほど得られる米菓の食感は軽いサクサクとした方向となるため、米菓の食感がガリガリして硬すぎる場合等、目的とする食感に応じて配合量を設定することができる。乳化剤の配合量は、未糊化粉と冷水糊化粉との合計100重量部に対して、代表的には約0.001重量部以上であり、好ましくは約0.01重量部以上であり、さらに好ましくは約0.1重量部以上である。乳化剤の配合量は、未糊化粉と冷水糊化粉との合計100重量部に対して、代表的には約5重量部以下であり、好ましくは約1重量部以下であり、さらに好ましくは約0.5重量部以下である。
【0060】
膨脹剤としては、例えば重曹、重炭安、ベーキングパウダー等の各種膨脹剤が広く使用可能である。得られる米菓の膨化程度および食感を調整する目的で、必要に応じて1種、又は2種以上の膨脹剤を選択して用いることができる。本発明の米菓の場合、膨脹剤を必ずしも配合しなくて良いが、さらに膨化を大きくしたい場合、食感をより軽くしたい場合等、目的とする膨化程度、食感に応じて配合量を設定することができる。膨脹剤の配合量は、未糊化粉と冷水糊化粉との合計100重量部に対して、代表的には約0.001重量部以上であり、好ましくは約0.01重量部以上であり、さらに好ましくは約0.1重量部以上である。乳化剤の配合量は、未糊化粉と冷水糊化粉との合計100重量部に対して、代表的には約3重量部以下であり、好ましくは約1重量部以下であり、さらに好ましくは約0.5重量部以下である。
【0061】
また、最近の健康志向に合わせるため、各種ビタミン類、ミネラル類、食物繊維類、ペプチド類、ポリフェノール類等の栄養機能成分、生理機能成分を付与することも可能である。
【0062】
上記の原料に、適宜水を加えて混合し、生地を作る。水の配合量は、生地を適切な状態にする目的で、呈味原料由来の水分量とは別に添加する量をいう。すなわち、牛乳、生卵等の水分量の多い呈味原料を多く配合する場合は、別途水を配合する必要がない場合がある。チーズパウダー、ココアパウダー等の水分量の少ない呈味原料を多く配合する場合は、水の配合量が増加する。水の配合量が多すぎる場合、生地がべたついて成形性が低下したり、焼成時のだれが大きかったり、必要以上に膨化したり、目的とする形状または食感が得られないといった問題が生じやすい。水の配合量が少なすぎる場合は、生地のまとまりまたは伸展性が悪くなって成形性が低下したり、膨化が小さかったり、口溶けが悪かったり、粉っぽい風味が生じたりという問題が生じやすい。また押出し機内で生地への負荷が過大になりやすく、生地がダメージを受けてしまいやすい。
【0063】
(2.米菓の製造方法)
本発明の米菓の製造方法は、冷水糊化粉および未糊化粉からなる穀粉澱粉類100重量部に対して、糖類10〜30重量部および油脂類5〜40重量部を蒸練せずに混合して生地を得る工程;該生地を、エクストルーダーにより、表面の平滑性を実質的に維持したままスティック状に成形する工程;および該成形品を乾燥せずに焼成して、スティック状米菓を得る工程を包含する。
【0064】
まず、穀粉澱粉類(すなわち、冷水糊化粉および未糊化粉)、糖類、油脂類および必要に応じて他の原料(例えば、呈味原料、乳化剤、膨脹剤、および水)を混合する。この際、蒸練を行わない。本明細書中では、「蒸練」とは、澱粉が糊化する温度以上で粉類に蒸気を導入しながら混合することをいう。澱粉の種類により糊化温度が異なり、通常、澱粉の糊化温度は約50℃〜80℃である。蒸練は好ましくは、100℃以上の温度で行われる。
【0065】
これと比較して、エクストルーダーを使用する場合には、エクストルーダーとは別の混合機で混合を行った後にエクストルーダーに混合物を投入し、澱粉を糊化させない温度(好ましくは約50℃以下、通常は常温(約30℃程度))で混合しながら押し出される。
【0066】
混合は、例えば、常温下にて行われる。澱粉穀粉類は、乾燥状態のまま、混合に用いられてもよく、予め水に浸漬した後で混合に用いられてもよい。
【0067】
本発明においては、糯米粉を使用するかまたは粳米粉を使用するかによって、用いられる未糊化粉と冷水糊化粉との重量比の範囲が異なる。穀粉澱粉類が(i)冷水糊化糯米粉および未糊化粳米粉を含む場合、冷水糊化粉と未糊化粉との割合は、冷水糊化粉:未糊化粉=15:85〜40:60であり、より好ましくは20:80〜40:60である。穀粉澱粉類が(ii)冷水糊化粳米粉および未糊化糯米粉を含む場合、冷水糊化粉と未糊化粉との割合は、冷水糊化粉:未糊化粉=15:85〜40:60であり、より好ましくは20:80〜40:60である。穀粉澱粉類が(iii)冷水糊化粳米粉および未糊化粳米粉を含む場合、冷水糊化粉と未糊化粉との割合は、冷水糊化粉:未糊化粉=15:85〜60:40であり、より好ましくは20:80〜60:40である。未糊化粉が少なすぎる場合、焼成時の水抜けが悪くなったり、膨化が大きすぎて頼りない食感となったり、食感がガリガリとしたいわゆるガラス質な食感となったり、内部の空洞や火ぶくれが生じて目的とする形状にならなかったりといった問題が生じやすい。反対に未糊化粉が多すぎる場合には、生地のまとまりまたは伸展性が悪く成形性に劣ったり、口溶けが悪かったり、粉っぽさが生じたり、膨化が足りないといった問題が生じやすい。
【0068】
本発明において用いられる未糊化粉と冷水糊化粉との重量の合計は、生地全体の重量(水を含む)のうちの、好ましくは約20%以上であり、より好ましくは約30%以上であり、さらに好ましくは約40%以上である。本発明において用いられる未糊化粉と冷水糊化粉との重量の合計は、生地全体の重量(水を含む)のうちの、好ましくは約80%以下であり、より好ましくは約70%以下であり、さらに好ましくは約60%以下である。
【0069】
冷水糊化粉として使用される米粉と未糊化粉として使用される米粉とは、適切な割合で混合される。澱粉穀粉類は、(i)冷水糊化糯米粉および未糊化粳米粉を含むか、(ii)冷水糊化粳米粉および未糊化糯米粉を含むか、または(iii)冷水糊化粳米粉および未糊化粳米粉を含む。1つの実施形態では、穀粉澱粉類は(i)冷水糊化糯米粉および未糊化粳米粉を含み、かつ、他の米粉を含まず、ここで、冷水糊化糯米粉と未糊化粳米粉との重量の比率は、冷水糊化糯米粉:未糊化粳米粉=15:85〜40:60であることが好ましい。1つの実施形態では、穀粉澱粉類は(ii)冷水糊化粳米粉および未糊化糯米粉を含み、かつ、他の米粉を含まず、ここで、冷水糊化粳米粉と未糊化糯米粉との重量の比率は、冷水糊化粳米粉:未糊化糯米粉=15:85〜40:60であることが好ましい。1つの実施形態では、穀粉澱粉類は(iii)冷水糊化粳米粉および未糊化粳米粉を含み、かつ、他の米粉を含まず、ここで冷水糊化粳米粉と未糊化粳米粉との重量の比率は、冷水糊化粳米粉:未糊化粳米粉=15:85〜60:40であることが好ましい。なお、米粉の割合が穀粉澱粉のうちの70重量%以上である限り、これらの米粉のうちの一部を澱粉または米粉以外の穀粉で代用することができ、その場合には、冷水糊化米粉と未糊化米粉との重量比は、上記の範囲に限定されない。例えば、上記(i)の場合に、冷水糊化糯米粉のうちの一部を冷水糊化澱粉とすることができる。その場合には、例えば、冷水糊化澱粉:冷水糊化糯米粉:未糊化粳米粉=10:5:85〜10:30:60とすることができる。他の比率についても同様であるが、冷水糊化粉にも未糊化粉にも必ず米粉を使用することに留意すべきである。
【0070】
これらの原料の混合には、縦型、横型等の形状を問わず、通常のパンおよび菓子の製造過程で用いるミキサーが使用できる。原料が実質的に均一に混合されるのであれば、どのような混合方法を用いてもよい。原料の混合順序に特に制限はなく、全てを一度に入れて混合する、いわゆるオールインミックスでもよい。特定の原料の添加を他の原料の混合中に行ってもよい。油脂類が固形ショートニングなど常温固体の場合は、加温融解後、混合する必要が生じる場合がある。その場合、原料粉に加水混合してから添加すると生地粘性の違いにより油脂と混ざりにくいことがあるため、加水より先に油脂を軽く混合するか、あるいはオールインミックスの方が望ましい。混合は1〜10分程度の短時間でよく、蒸煮等は特に必要としない。通常、混合時間が長いほど焼成後の食感がサクサクしたソフトになる傾向があるので、混合時間を調節することによって、目的とする食感に調節することが可能である。特に必要がなければ原料が均一化する最短混合時間で混合してよい。
【0071】
このようにして得られた生地を、エクストルーダーにより、表面の平滑性を実質的に維持したままスティック状に成形する。具体的には、例えば、生地をエクストルーダーのリング状ノズルから押出し成形するなどの方法が採用され得る。「表面の平滑性を実質的に維持したまま成形される」とは、例えば、エクストルーダー内で生地が100℃以上に加熱されないで押し出し成形されることにより達成され得る。こうすることにより、生地がパフすることなく成形される。パフすると、成形後の生地が急激に膨化して表面に無数の穴が生じる。しかし、表面の平滑性を実質的に維持したまま生地を成形すれば、膨化が起こらないので、このような無数の穴は生じない。エクストルーダー内の生地の温度は、好ましくは生地内の澱粉が実質的に糊化しない温度であり、好ましくは約50℃以下であり、より好ましくは約45℃以下であり、さらに好ましくは約40℃以下であり、特に好ましくは約30℃である。エクストルーダー内の生地の温度は通常、常温以上である。このような条件の設定方法は当業者に公知である。
【0072】
また本発明の米菓の配合を用いれば、外径と内径との差の小さい押出し機のノズルから押出すことも可能であり、外径と内径差の小さい米菓を容易に製造することができる。
【0073】
具体的には、例えば、得られた生地を、エクストルーダーで連続的に、スティック状に押出し成形することができる。例えば、円筒状で中空スティック状の製品を成形する場合であれば、生地をリング状ノズルで中空スティック状に押出し成形する方法が採用され得る。この場合、リング状ノズルとしては、焼成後の製品と同じ程度のサイズのノズルを用いてもよく、もしくは製品よりもやや小さいノズルを用いてもよい。
【0074】
ノズルから押出しされた直後のスティック状の成形生地のサイズは、通常、ノズルの内径と同程度のサイズである。中空スティックの場合、リング状ノズルから押出しされた直後の中空スティック状の成形生地のサイズは、通常、ノズルの外径、内径と同じ程度のサイズである。また押出した成形生地をコンベア、オーブンのバンド等により引っ張ることで、成形生地の直径サイズ(または外径、内径サイズ)をノズルより小さく調整することができる。押出した成形生地を引っ張って該サイズを小さくすることで、押出し機のノズルの開口面積を大きくすることが可能であり、その結果、成形ストレスを軽減し、生地を大きく傷めないで成形することができる。焼成後の米菓の直径サイズ(または外径、内径サイズ)は、通常、成形生地と同じ程度のサイズか、もしくはやや大きくなる。このため、焼成後のサイズは、成型生地の引っ張りが小さい場合、押出しノズルの大きさとほほ同じか、もしくはやや大きくなる。逆に成型生地の引っ張りが大きい場合、押出しノズルの大きさに比べ、小さくなることもあり得る。これらの点を考慮して、当業者であれば、所望の最終製品の形状を得るために必要なノズルの形状を容易に設計することができる。
【0075】
スティック状で焼成されると、食べやすく、火通りがよく、水分が飛散しやすく、複雑な形状に比べて成形ストレスがかかりにくく、生地を大きく傷めない(生地を傷めると、成形後、および焼成後のだれや、食感悪化の原因となる)ので、生地はスティック状に成形されることが好ましい。なお、本発明の米菓は、スティック状であればよく、中実であっても中空であってもよい。
【0076】
この成形工程において、生地は、焼成後の米菓の外径が好ましくは2mm以上、より好ましくは3mm以上、さらに好ましくは4mm以上になるように成形される。この成形工程において、生地は、焼成後の米菓の外径が好ましくは10mm以下、より好ましくは8mm以下、さらに好ましくは6mm以下になるように成形される。
【0077】
次いで、成形品を乾燥せずに焼成して、スティック状米菓を得る。本明細書中では、「乾燥」とは、100℃未満の条件下で成形品から水分を蒸発させることをいう。本明細書中では、「焼成」とは、100℃以上の条件下で成形品を加熱することをいう。成形品は、当該分野で公知の任意の焼成条件、および任意の方法で焼成される。焼成のためには、例えば固定オーブン、連続オーブン、ダイレクトオーブン、熱風循環オーブン等いずれも使用可能である。成形品は、必要に応じて、スチールベルト、ヘビーメッシュ、ライトメッシュ等を任意に用いて焼成され得る。焼成時間は従来のビスケット同様、成形品の大きさによって異なるが、通常120〜300℃の範囲において3〜30分である。焼成後、米菓の中に多量の水分が残存していると、米菓の食感がねちゃつく、口溶けが悪い、粉っぽい等の状態になることがある。そのため、製品が焦げない範囲で充分に水分を飛散させることが重要である。
【0078】
なお、本明細書中では、「水分量」とは、米菓に含まれる水分の、米菓全体の重量に対する割合をいう。例えば、100gの米菓中に1gの水分が含まれている場合、その米菓の水分量は1重量%である。水分量の測定方法は、当業者に公知である。例えば、赤外水分計を用い、まず、粉砕した米菓の重量を測定し、次いで粉砕した米菓を105℃にて10分間保持し、10分間保持後の米菓の重量を測定し、保持前と比較して10分間の保持後に減少した重量から水分量を決定し得る。焼成直後の米菓中の水分量は、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下、さらに好ましくは2重量%以下、特に好ましくは1重量%以下である。焼成直後の米菓中の水分量が多すぎる場合、得られる米菓の食感がねちゃついたり、口溶けが悪かったりといった場合がある。加えて「チェッキング」と呼ばれる、米菓がぼろぼろに割れてしまう現象が生じやすい。
【0079】
また、焼成後、米菓は空気中の水分を吸収する場合がある。保存吸湿後の水分が多すぎる場合、米菓の食感が湿ったような食感となりやすい。そのため、焼成後の米菓は、空気中の水分を吸収しにくい形態で保存されることが好ましい。例えば、焼成後の米菓は、密閉されて保存されることが好ましい。また密閉保存する場合、吸湿剤とともに保存、または不活性ガス(例えば、窒素)などを充填した密閉容器中に保存等してもよい。ただし、本発明の米菓は、水分を吸収しすぎない限り、開放された容器中で保存されてもよい。
【0080】
本明細書中においては、喫食される際の米菓の水分量を、米菓の水分量という。焼成直後に喫食する場合は、焼成直後の米菓の水分量を、米菓の水分量という。焼成した後、一定期間、保存した後、喫食する場合には、上述したようなさまざまな方法で保存された後、喫食される際の米菓の水分量を、米菓の水分量という。
【0081】
このようにして得られたスティック状米菓が中空スティック状米菓である場合には、必要に応じて、中空スティック状米菓の中空部に、充填材料を注入することができる。本発明でいう「充填材料」とは、得られる中空スティック状米菓の中空部分に注入することができる食品素材をいう。充填材料は、特定の味を付与することができることが好ましい。充填材料の例としては、具体的には、クリーム、チョコレート、マヨネーズ、ジャム、バター、カレー等が挙げられる。これらの充填材料は、当業者に公知の任意の方法で注入され得る。例えば、水平にした中空スティック状米菓の一方の開口端から、粘性をもつように調製した充填材料を注入し、充分に他方の端部に達せしめる方法などがある。
【0082】
このようにした後、クリーム、マヨネーズ、ジャム等の、粘性のまま賞味する充填材料を注入した製品は完成する。
【0083】
他方、固化させて賞味する充填材料を用いる場合、充填材料を冷却させるか、または乾燥させる等の方法により充填材料を固化させることができ、充填材料が注入された所望の米菓を得ることができる。
【0084】
焼成後、生地中の油脂類に加えて、焼成品の重量の5〜40重量%の油脂類を焼成品に浸透させてもよい。焼成後に浸透させる油脂類は、純粋な油脂類であってもよく、チョコレートのような油脂性菓子、シーズニングオイルのような油脂混合物であってもよい。焼成品への油脂の浸透は、当該分野で公知の任意の条件および公知の任意の方法によって行われ得る。例えば、米菓の一方の端をクリップなどで挟み、容器にためた液状の油脂類の中に他方の端を浸漬することによって、米菓を油脂類でコーティングし得る。あるいは、液状の油脂類(例えばチョコレート)をカーテン状に落下させ、その下をコンベアに乗せた米菓を通すことにより付着させるエンローバー方法によってコーティングし得る。あるいは、モールドの中に米菓および油性菓子を入れてコーティングし得る。シーズニングオイルのコーティングは、例えば、シーズニングオイルを米菓にスプレーし、必要に応じてタンブラー等で回転攪拌してコーティングを均一化することによって行われる。コーティングされる油脂性菓子の種類およびコーティングされる層の厚さは、必要に応じて任意に選択され得る。油脂性菓子でコーティングすることにより、米菓本体の部分と油脂性菓子との組合せにより、より嗜好性の優れた複合菓子が得られる。シーズニングオイルをコーティングすることによって、より良い口溶けが得られる。
【0085】
(3.米菓)
本発明の製造方法によって得られた米菓は、口溶けが良くて粉っぽさがなく、必要に応じて呈味原料を多く配合して嗜好性を向上し、さらに大量生産や加工に適した火ぶくれの少ないまっすぐな形状のものとなる。また必要に応じて充填材料を米菓の中空部に注入し、より嗜好性に優れた複合菓子を得ることができる。
【0086】
本発明の米菓は、スティック状の米菓である。本発明の米菓の形状としては、スティック状の形状であれば、任意の形状が可能である。好ましくは、中空のスティック状であるか、中実であってもよい。より好ましくは、スティック形状の長手方向(長軸方向)に対して垂直な断面の外周および内周が円となる形状、すなわち、円筒の形状である。また、断面の外周および内周が正多角形となる形状であってもよい。1つの実施形態では、断面の外周および内周が四角となる形状であってもよい。例えば、正方形、長方形、ひし形または台形となる形状であり得る。
【0087】
なお、本明細書中において、「多角形」もしくは「角」などと記載される場合、いうまでもなく、そのコーナー部分は、工業的に実用的なレベルでその先端が丸められた、いわゆる「Rをつけた」コーナー部分をも包含する。
【0088】
本発明の米菓が中空スティック状である1つの実施形態では、断面の外周形状と内周形状が異なる形状であってもよい。例えば、外周形状が多角形であって、内周形状が円であってもよい。
【0089】
さらに、本発明の米菓には、必要に応じて、断面の外周に凹凸を設けることができる。
【0090】
本発明の米菓の外径は、好ましくは2mm以上、より好ましくは3mm以上、さらに好ましくは4mm以上である。本発明の米菓の外径は、好ましくは10mm以下、より好ましくは8mm以下、さらに好ましくは6mm以下である。なお、本明細書中で「外径」とは、スティック状の米菓の断面の最大径をいう。例えば、米菓の断面の形状が円柱状である場合には、その断面の円の直径である。米菓の断面の形状が楕円状である場合には、その楕円の長径である。多角形である場合はその辺または対角線のうちの最大のものである。
【0091】
本発明の米菓が中空スティック状である場合、外径と内径との比率については、内径が外径の30%〜95%であることが好ましく、より好ましくは40%〜90%であり、さらに好ましくは50%〜80%である。例えば、本発明の米菓の内径は、好ましくは1mm以上、より好ましくは2mm以上、さらに好ましくは3mm以上である。本発明の米菓の外径は、好ましくは8mm以下、より好ましくは6mm以下、さらに好ましくは4mm以下である。
【0092】
本発明の米菓の肉厚は、好ましくは0.3mm〜4mmであり、より好ましくは0.5mm〜3mmであり、さらに好ましくは0.8mm〜2.5mmであり、特に好ましくは1.0mm〜2.0mmである。肉厚が薄すぎる場合、米菓の強度が低下しやすい。逆に肉厚が厚すぎる場合は、必然的に米菓の中空部の相対的体積が減少し、充分な味覚を得るのに充分な呈味量を収容しにくくなりやすい。
【0093】
本発明の米菓は、肉厚が均一な形状であってもよいが、肉厚が不均一な形状であってもよい。具体的には、例えば、肉厚の厚い部分と薄い部分とが存在する形状であってもよい。
【0094】
肉厚の不均一な形状である場合、上記肉厚の最も厚い部分と最も薄い部分との差は、好ましくは3mm以下であり、より好ましくは2mm以下であり、さらに好ましくは1.5mm以下である。肉厚の最も厚い部分と最も薄い部分との差が大きすぎる場合、製品を均一に焼成することが難しくなりやすい。
【0095】
なお、本明細書中で「肉厚」とは、中空スティック状の米菓の断面の厚みをいう。より具体的には、例えば、米菓の断面の形状が円筒状である場合には、その断面の外周半径と内周半径の差をいう。
【0096】
本発明の米菓が中空スティック状である場合、中空部分は、本発明の米菓の両端を結ぶことが好ましい。例えば、本発明の米菓がまっすぐな中空スティックである場合、米菓の一端から中空部分を覗くと、反対側を見ることができることが好ましい。しかし、米菓の内径が小さい場合は、反対側が見えない場合もあり得る。
【0097】
本発明の米菓の長さは、いずれの長さであってもよく、好ましくは40mm以上であり、より好ましくは50mm以上であり、さらに好ましくは60mm以上である。本発明の米菓の長さは、好ましくは150mm以下であり、より好ましくは130mm以下であり、さらに好ましくは100mm以下である。米菓の長さが長すぎる場合、折れやすく、持ち運び、保管等に不便となりやすい。短すぎる場合には、手で持って食べる場合に食べにくくなりやすい。
【0098】
1つの実施形態では、本発明の米菓は、水分量が5重量%以下と低いため、通常の米菓同様、長期にわたって品質を保持することが可能である。
【0099】
このようにして、本発明によれば、通常の米菓に比べ、容易な方法で米菓を得ることができる。
【0100】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の内容はこれらにより制限されるものではない。
【実施例】
【0101】
以下の実施例において、以下の原料を使用した:
β粳米粉:市販品
β糯米粉調整品(β糯米粉:タピオカ澱粉=83:17):市販品
β粳米粉調整品(β粳米粉:タピオカ澱粉=83:17):市販品
α糯米粉調製品(α糯米粉:α化タピオカ澱粉=83:17):市販品
α粳米粉調製品(α粳米粉:α化タピオカ澱粉=83:17):市販品
ロースト米粉砕品:株式会社ヤギショー社製の焼成米(砕き)−G、目開き0.25mm篩パス。
【0102】
マルトース:株式会社林原商事製のサンマルト、純度92%以上;
トレハロース:株式会社林原商事製のトレハ;
食塩:市販品;
ショートニング:植物性の市販品;
乳化剤:株式会社Jオイルミルズ社製のレシチン、純度99%以上;
スプレーオイル:不二製油株式会社製のスプレーオイル。
【0103】
(実施例1)
表1に記載の原料を使用して米菓を製造した。詳細には、未糊化粉として、β粳米粉とタピオカ澱粉とを83:17で混合したβ粳米粉調整品230重量部を用い、冷水糊化粉として、α糯米粉とタピオカ澱粉α化品とを83:17で混合したα糯米粉調整品70重量部およびロースト米粉砕品20重量部を用いた。未糊化粉と冷水糊化粉との合計重量は320重量部である。
【0104】
未糊化粉と冷水糊化粉に、油脂類であるショートニング80重量部を40℃で融解したものと乳化剤0.55重量部との混合物を添加し、その後糖類としてマルトース30重量部およびトレハロース30重量部および食塩2.8重量部を水230重量部に溶解させた加水部を加えながら縦型のケーキミキサーで5分間混合し均一な生地を得た。なお、これらの混合工程において、蒸練を行わなかった。生地をエクストルーダーで外径4.3mmのノズルからパフしないように円柱状に押出し成形し、やや引っ張りながらライトメッシュ上に並べ、110mmの長さに切断した。このときのエクストルーダー内での生地の温度は約30℃であった。切断後の生地の外径は4.0mmであり、長さ110mmであった。生地のつながりがよく、スティックの形状を容易に非常に容易に得ることができた。次いで、固定オーブンを用いて200℃で15分間焼成して残存水分量1重量%にした。得られた米菓は外径5.3mmで長さ110mmであり、火ぶくれのない均一な、ほぼまっすぐな円柱状のスティック状を呈しており、焼成特性は良好であった。また、得られた米菓を喫食してみたところ、口溶けが良く、粉っぽさがなく、米菓らしい、香ばしく、非常に美味であった。
【0105】
(実施例2−1〜3−2)
表1に示す配合で、実施例1と同様にして米菓を製造した。実施例2−1〜2−2においては、冷水糊化粉:未糊化粉=20:80であった。実施例3−1〜3−2においては、冷水糊化粉:未糊化粉=40:60であった。いずれの実施例においても、米粉とタピオカ澱粉との比率は、米粉:タピオカ澱粉=83:17であった。いずれの実施例においても、糖類の合計量の比率は、澱粉穀粉の合計100重量部に対して20重量部であった。油脂の比率は、澱粉穀粉の合計100重量部に対して13重量部または27重量部であった。いずれの実施例においても、スティックへの製造特性は良好であり、火ぶくれのない均一な、ほぼまっすぐな、スティック状の良好な米菓が得られた。
【0106】
この結果、冷水糊化粉:未糊化粉の比率は、20:80〜40:60のときに米菓を良好に得られることがわかった。糖類の合計量の比率が澱粉穀粉の合計100重量部に対して20重量部のときに米菓を良好に得られることがわかった。油脂の比率が澱粉穀粉の合計100重量部に対して13重量部のときも27重量部のときも米菓を良好に得られることがわかった。得られた米菓を喫食してみたところ、実施例2−1、2−2の米菓はいずれも、粉っぽさがなく、米菓らしい、香ばしい味であった。実施例3−1、3−2はさらに口溶けの良い風味であった。
【0107】
(比較例1−1〜2−2)
表1に示す配合で、実施例1と同様にして米菓を製造した。比較例1−1〜1−2においては、冷水糊化粉:未糊化粉=7:93であった。比較例2−1〜2−2においては、冷水糊化粉:未糊化粉=70:30であった。いずれの比較例においても、米粉とタピオカ澱粉との比率は、米粉:タピオカ澱粉=83:17であった。いずれの比較例においても、糖類の合計量の比率は、澱粉穀粉の合計100重量部に対して20重量部であった。油脂の比率は、澱粉穀粉の合計100重量部に対して13重量部または27重量部であった。比較例1−1、1−2においては実施例1、2−1〜3−2にくらべまとまりが悪く伸展性に劣るもので成型時に引っ張ると生地の破断が生じるなどスティック状への成型が不可能であった。また比較例2−1、2−2においては生地のベタツキが激しく混合から成型における作業性に極めて劣るものであった。
【0108】
この結果、冷水糊化粉:未糊化粉の比率が、7:93のとき(比較例1−1〜1−2)はスティックへの成形が不可能であることがわかった。得られた米菓を喫食してみたところ、比較例1−1〜1−2の米菓はいずれも、粉っぽく、口溶けの良くない、非常に食感の劣るものであった。
【0109】
冷水糊化粉:未糊化粉の比率が、70:30のとき(比較例2−1〜2−2)は焼成時に火ぶくれ、変形が大きく均一なスティックを得ることができないという問題があることがわかった。得られた米菓を喫食してみたところ、比較例2−1〜2−2の米菓はいずれも、火ぶくれが大きいため食感が均一でないなど食感に劣るものであった。
【0110】
(実施例4−1〜6−3および比較例4−1〜6−2)
表2および表3の配合で、実施例1と同様にして米菓を製造した。実施例4−1および5−2においては、冷水糊化粉:未糊化粉=34:66であった。実施例5−1においては、冷水糊化粉:未糊化粉=40:60であった。実施例6−1においては、冷水糊化粉:未糊化粉=60:40であった。実施例4−2、5−4および6−3においては、冷水糊化粉:未糊化粉=20:80であった。実施例5−3においては、冷水糊化粉:未糊化粉=23:77であった。実施例6−2においては、冷水糊化粉:未糊化粉=50:50であった。いずれの実施例および比較例においても、糖類の合計量の比率は、澱粉穀粉の合計100重量部に対して20重量部であった。油脂の比率は、澱粉穀粉の合計100重量部に対して27重量部であった。いずれの実施例においても、スティックへの製造特性は良好であり、火ぶくれのない均一な、ほぼまっすぐな、スティック状の良好な米菓が得られた。
【0111】
この結果、β粳米粉調整品:α糯米粉調整品=66:34〜80:20(β粳米粉:α糯米粉=55:28〜66:17)、実施例3―2の結果も合わせると60:40〜80:20では、スティック形状を容易に得ることができることがわかった。β粳米粉とα糯米粉との組み合わせでは、比較例4−2に示すように、β粳米粉が多すぎる場合には組織が硬く、粉っぽく、比較例4−1に示すように、α糯米粉が多すぎる場合には、火膨れが大きかった。
【0112】
β糯米粉調整品:α粳米粉調整品=60:40〜80:20(β糯米粉:α粳米粉=50:33〜66:17)では、スティック形状を容易に得ることができることがわかった。β糯米粉とα粳米粉との組み合わせでは、比較例5−2に示すように、β糯米粉が多すぎる場合には生地がつながらず、スティック形状に成形することができなかった。比較例5−1に示すように、α粳米粉が多すぎる場合には、火ぶくれが多かった。
【0113】
β粳米粉調整品:α粳米粉調整品=40:60〜80:20(β粳米粉:α粳米粉=33:50〜66:17)では、スティック形状を容易に得ることができることがわかった。β粳米粉とα粳米粉との組み合わせでは、比較例6−2に示すように、β粳米粉が多すぎる場合には組織が硬く粉っぽくなった。比較例6−1に示すように、α粳米粉が多すぎる場合には火膨れが多くなった。他の組み合わせと比較すると、α粳米粉の比率が高くても火膨れが少なめである傾向があった。
【0114】
(比較例7−1〜7−2)
表3の配合で、実施例1と同様にして米菓を製造した。比較例7−1においては、冷水糊化粉:未糊化粉=29:71であった。比較例7−2においては、冷水糊化粉:未糊化粉=7:93であった。いずれの比較例においても、糖類の合計量の比率は、澱粉穀粉の合計100重量部に対して20重量部であった。油脂の比率は、澱粉穀粉の合計100重量部に対して27重量部であった。いずれの比較例においても、火膨れが大きく、まっすぐなスティックを得ることができなかった。
【0115】
このように、β糯米粉調整品:α糯米粉調整品=71:29〜93:7(β糯米粉:α糯米粉=59:24〜77:6)では、火膨れが大きく、まっすぐなスティックを得ることができないことがわかった。
【0116】
(実施例7−1〜7−2)
表4の配合で、実施例1と同様にして米菓を製造した。実施例7−1においては、冷水糊化粉:未糊化粉=23:77であった。実施例7−2においては、冷水糊化粉:未糊化粉=50:50であった。いずれの実施例および比較例においても、糖類の合計量の比率は、澱粉穀粉の合計100重量部に対して20重量部であった。油脂の比率は、澱粉穀粉の合計100重量部に対して27重量部であった。いずれの実施例においても、スティックへの製造特性は良好であり、火ぶくれのない均一な、ほぼまっすぐな、スティック状の良好な米菓が得られた。
【0117】
この結果、β粳米粉とα糯米粉調整品の組み合わせ、β粳米粉とα粳米粉調製品の組み合わせのいずれの場合でもスティック形状を容易に得ることができることがわかった。
【表1】

【0118】
【表2】

【0119】
【表3】

【0120】
【表4】

【0121】
(実施例8)
実施例1と同じ原料および同じ手順で米菓を製造した。米菓の焼成直後に、米菓100重量部あたり20重量部のシーズニングオイルを、米菓にスプレーした。これにより、さらに良好な風味の米菓が得られた。
【0122】
(実施例9)
生地を押し出す際に外径6.8mm、内径3mmのリング状ノズルから押出し成形し、やや引っ張りながらライトメッシュ上に並べ、110mmの長さに切断したこと、および固定オーブンを用いて200℃で15分間焼成したこと、得られた米菓が外径6mm、内径4mmの中空スティック状を呈していたこと以外は、実施例1と同じ原料および同じ手順で米菓を製造した。クリスピー感のある、火ぶくれのない均一な、ほぼまっすぐな中空スティック状の米菓が得られた。焼成特性もまた良好であった。
【0123】
これらの実施例および比較例の結果から、粉っぽさがなく口溶けが良好な点で、β粳米粉とα糯米粉との組み合わせが最もよいことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明により、簡便な米菓の製造方法が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷水糊化粉および未糊化粉からなる穀粉澱粉類100重量部に対して、糖類10〜30重量部および油脂類5〜40重量部を含む生地を焼成して得られる米菓であって、
該生地中の該冷水糊化粉と未糊化粉との重量の比率が、冷水糊化粉:未糊化粉=15:85〜40:60であり、
該穀粉澱粉類が、(i)冷水糊化糯米粉および未糊化粳米粉を含むか、または(ii)冷水糊化粳米粉および未糊化糯米粉を含み、
該米粉の重量の合計が、該穀粉澱粉類の重量の70重量%〜100重量%であり、
該米菓の形状がスティック状である、米菓。
【請求項2】
冷水糊化粉および未糊化粉からなる穀粉澱粉類100重量部に対して、糖類10〜30重量部および油脂類5〜40重量部を含む生地を焼成して得られる米菓であって、
該生地中の該冷水糊化粉と未糊化粉との重量の比率が、冷水糊化粉:未糊化粉=15:85〜60:40であり、
該穀粉澱粉類が、(iii)冷水糊化粳米粉および未糊化粳米粉を含み、
該米粉の重量の合計が、該穀粉澱粉類の重量の70重量%〜100重量%であり、
該米菓の形状がスティック状である、米菓。
【請求項3】
前記米菓が、表面の平滑性を実質的に維持したまま生地をスティック状に成形した後にその成形品を乾燥せずに焼成して得られるものである、請求項1または2に記載の米菓。
【請求項4】
前記生地中の油脂類に加えて、焼成後、焼成品の重量の5〜40重量%の油脂類を焼成品に浸透させることにより得られる、請求項1または2に記載の米菓。
【請求項5】
前記穀粉澱粉類100重量部が焼成米1〜50重量部を含む、請求項1または2に記載の米菓。
【請求項6】
前記焼成米が粒度2mm以下の粉末である、請求項5に記載の米菓。
【請求項7】
前記生地の糖類10〜30重量部中の砂糖を除く非還元糖の重量が3〜30重量部である、請求項1または2に記載の米菓。
【請求項8】
前記非還元糖がトレハロースである、請求項7に記載の米菓。
【請求項9】
前記米菓の形状が円柱状であり、直径が2mm〜10mm、長さが40〜150mmである、請求項1または2に記載の米菓。
【請求項10】
中空状の形状を有する、請求項1または2に記載の米菓。
【請求項11】
米菓の製造方法であって、
冷水糊化粉および未糊化粉からなる穀粉澱粉類100重量部に対して、糖類10〜30重量部および油脂類5〜40重量部を蒸練せずに混合して生地を得る工程であって、該冷水糊化粉と未糊化粉との重量の比率が、冷水糊化粉:未糊化粉=15:85〜40:60であり、該穀粉澱粉類が、(i)冷水糊化糯米粉および未糊化粳米粉を含むか、または(ii)冷水糊化粳米粉および未糊化糯米粉を含み、該米粉の重量の合計が、該穀粉澱粉類の重量の70重量%〜100重量%である、工程;
該生地を、エクストルーダーにより、表面の平滑性を実質的に維持したままスティック状に成形する工程;および
該成形品を乾燥せずに焼成して、スティック状米菓を得る工程
を包含し、該スティック状米菓の外径が2mm〜10mmである、方法。
【請求項12】
米菓の製造方法であって、
冷水糊化粉および未糊化粉からなる穀粉澱粉類100重量部に対して、糖類10〜30重量部および油脂類5〜40重量部を蒸練せずに混合して生地を得る工程であって、該冷水糊化粉と未糊化粉との重量の比率が、冷水糊化粉:未糊化粉=15:85〜60:40であり、該穀粉澱粉類が、(iii)冷水糊化粳米粉および未糊化粳米粉を含み、該米粉の重量の合計が、該穀粉澱粉類の重量の70重量%〜100重量%である、工程;
該生地を、エクストルーダーにより、表面の平滑性を実質的に維持したままスティック状に成形する工程;および
該成形品を乾燥せずに焼成して、スティック状米菓を得る工程
を包含し、該スティック状米菓の外径が2mm〜10mmである、方法。
【請求項13】
前記スティック状米菓が、外径3mm〜10mm、内径1mm〜8mmの中空スティック状である、請求項11または12に記載の方法。