説明

簡易便器

【課題】背もたれ部と肘掛けとの間で手指を挟まない安全性の高い簡易便器を提供する。
【解決手段】簡易便器1の使用状態では、背もたれ部4の側板部4Aと肘掛け3の後端に形成された延長部8Bとが左右方向で隣接し、該背もたれ部4の側板部4Aの外側面の少なくとも一部に、該肘掛け3の延長部8Bの少なくとも一部が覆い被さった状態となっている。さらに、肘掛け3の肘掛け本体部8Aにおける後端部には、前記延長部8Bに向かうに従って幅狭となるテーパー部8Cが形成されており、該肘掛け本体部8Aにおけるテーパー部8Cの側面が手指挟み防止用傾斜面60とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肘掛けと、前後位置調節自在な背もたれ部とを備える簡易便器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、肘掛けと背もたれ部との間に使用者等の手指が挟まらないようにした肘掛け付きポータブルトイレ(簡易便器)は既に開示されている(特許文献1参照)。このように、簡易便器において背もたれ部と肘掛けとの間に手指を挟まないようにしようとする取り組みは既に行われてきている。
【0003】
また、背もたれ部を前後位置調節可能にした携帯用便器(簡易便器)も既に開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−97348号公報
【特許文献2】特開2001−340263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、背もたれ部が前後調節自在とされた簡易便器の場合、背もたれ部と肘掛けとの離間距離が変わるため、上記特許文献1に開示されている構成では、手指挟み防止効果が得られなくなるという問題があった。例えば、図15に示すように、前後調節可能な背もたれ部bを備えた簡易便器Aにおいて、背もたれ部bを後方へ移動させると、肘掛けaの後端と背もたれ部bの側板部cとの間には、手指が入り込んでしまう隙間dが生じてしまう。
【0006】
また、背もたれ部を前後調節自在とした簡易便器にあって、該背もたれ部を後方位置に設定した場合に、該背もたれ部と肘掛けとの間に生じた隙間を介して、該肘掛けに使用者が着衣しているシャツの袖が引っ掛かってしまうことがあり、使い勝手が悪いという問題もあった。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題を解決することができる簡易便器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、便器本体と、該便器本体の側部に設けられた肘掛けと、該便器本体の後部に設けられた背もたれ部と、を備えた簡易便器であって、前記背もたれ部は、左右一対の側板部と該側板部間に差渡される背あて部とからなり、該便器本体両側後部には該背もたれ部の側板部下端を前後位置調節可能に嵌着する嵌着凹部が設けられて、前記背もたれ部が前記便器本体の後部において前後調節自在とされており、前記肘掛けは、使用者の肘を支持する肘掛け本体部の後端部から後方へ向かって差し出された該肘掛け本体部より幅狭の延長部を備えており、前記背もたれ部がいずれの前後位置でも、該背もたれ部の側板部と該肘掛けの延長部とが左右方向で隣接して、該背もたれ部の側板部の側面の少なくとも一部に、該肘掛けの延長部の少なくとも一部が覆い被さっていることを特徴とする簡易便器である。
【0009】
上記構成にあっては、背もたれ部の前後位置に関わらず、常に、該背もたれ部の側板部と、前記肘掛けにおける延長部とが左右方向で隣接し、該背もたれ部の側板部の側面の少なくとも一部が、該肘掛けの延長部の少なくとも一部によって被覆された状態となるため、背もたれ部を移動させても該背もたれ部と該肘掛けとの間に手指を挟むおそれのある隙間が生じない。したがって、上記簡易便器は、安全性に優れている。また、上記構成のように該肘掛け本体部と該背もたれ部との間に隙間が生じないため、該肘掛けに使用者が着衣しているシャツの袖が引っ掛かってしまうこともなく、また肘掛けと背もたれ部とが切れ目なくほぼ一体的に繋がった構成となるため、使用者を後方及び側方から適切に支持して安定的に着座させることもできる。
【0010】
また、前記肘掛けは、便器本体の上面両側に左右一対で交換可能に取付け自在とされ、かつ、互いに左右対称形状とされており、前記肘掛けを左右交換して取り付けて、該背もたれ部の側板部の外側に該肘掛けの延長部が配置される第1の状態、及び、該背もたれ部の側板部の内側に該肘掛けの延長部が配置される第2の状態のうちいずれかを選択することにより肘掛け間隔を変更自在とした構成が望ましい。
【0011】
上記構成とすることにより、簡易な構造で、使用者の体格に応じて肘掛け間隔を変更することができる。
【0012】
また、前記肘掛け本体部の後端部の側面には、該後端部を前記延長部に向かうに従って幅狭形状とする手指挟み防止用傾斜面が形成されていることが望ましい。
【0013】
上記構成にあっては、該延長部の根端部近傍位置において、該肘掛け本体部の後端と該背もたれ部の外縁との間に十分広い空間が形成されているため、手指を挟むような個所が生じることがない。
【0014】
また、前記肘掛けは、便器本体の上面両側に着脱可能に取付けられている上下二段構造であって、該便器本体の上面両側には上部支柱と下部支柱とからなる支柱が前後一対立設されており、該上部支柱間には上段肘掛けが差渡され、該下部支柱間には下段肘掛けが差渡されており、該上部支柱の根端部は該下部支柱の上端部に上下摺動可能にそれぞれ嵌着されており、該上部支柱には複数個の係止孔が縦列され、該下部支柱の上端部の内周からは突出方向にバネ付勢された係止ピンが出没可能に設けられており、該係止ピンにはワイヤを介して押下げ把手が接続されており、該押下げ把手は該下段肘掛けの下面に取付けられ、該押下げ把手を上下に摺動させることによって、該係止ピンを出没させて該係止ピンを該係止孔のいずれかに係合させることによって、上段肘掛けの高さ調節が可能とされている構成が望ましい。
【0015】
上記構成においては、肘掛けが上下二段に設けられているため、使用状況に応じて上段肘掛けを使用したり、下段肘掛けを使用したりすることができ、使い勝手が非常に良好になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の簡易便器は、背もたれ部と肘掛けとの間に手指が入り込んでしまう隙間が生じないため、極めて安全性に優れており、また肘掛けに使用者の着衣の袖が引っかかることがないため、極めて使い勝手が良い。また、肘掛けと背もたれ部とが切れ目なくほぼ一体的に繋がった構成となるため、使用者を安定的に着座させることができる効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】簡易便器の外観斜視図
【図2】便器本体の斜視図
【図3】背もたれ部の取付部分を示す斜視図
【図4】背もたれ部の取付部分を説明する説明横断面図
【図5】背もたれ部の取付状態を示す縦断面図
【図6】肘掛けを示す分解斜視図
【図7】肘掛け構造を示す分解斜視図
【図8】肘掛け構造(摺動ロック状態)の説明側断面図
【図9】肘掛け構造(摺動フリー状態)の説明側断面図
【図10】背もたれ部が最前位置において、イ)は左右肘掛け交換前の平面図、ロ)は交換後の平面図
【図11】背もたれ部が最後位置において、イ)は左右肘掛け交換前の平面図、ロ)は交換後の平面図
【図12】他の形態の嵌着凹部の縦断面図
【図13】他の形態の嵌着凹部の縦断面図
【図14】他の形態の背もたれ部の取付部分を示す説明図
【図15】従来構成の簡易便器を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を図1〜図11に示す実施例によって説明する。
【0019】
図1に示すように、簡易便器1は、合成樹脂製の便器本体2と、該便器本体2の上面両側に着脱可能に取付けられている合成樹脂製の上下二段の肘掛け3と、該便器本体2の後部に立設されているコの字状の背もたれ部4と、該便器本体2の上面に載置されている便座5と、該便器本体2の後縁部に枢着されている折畳み可能な上蓋6と、該便器本体2の前後左右に取付けられている高さ調節可能な脚部7とからなる。
【0020】
前記簡易便器1において、該背もたれ部4は、図1等に示すようにほぼ鉛直方向に沿って形成され、外側面及び内側面が垂直面とされた側板部4A,4Aを備えており、該左右一対の側板部4A,4Aとの間に、背あて部4Bが差し渡されて、コの字状に形成されている。さらに、該側板部4A,4Aの下端からは、箱型根端部41が突設されている。
【0021】
一方、図2に示すように、該便器本体2の上面両側の後部には一対の嵌着凹部40,40が設けられており、該背もたれ部4の箱型根端部41,41を該便器本体2の嵌着凹部40,40に各々嵌着することによって、該背もたれ部4は該便器本体2に着脱可能に取付けられる。
【0022】
さらに詳述すると、図3に示すように、該背もたれ部4の箱形根端部41の両側には縦突条42が設けられ、かつ前後に貫通する係止孔43が設けられ、一方便器本体2の嵌着凹部40の両側壁には複数条の縦溝44,44が設けられている。また、固定棒45は該背もたれ部4を嵌着凹部40に固定する棒であって、該固定棒45の後端にはつまみ部46が設けられ、後寄り部分にキー47が設けられている。
【0023】
上記構成にあって、背もたれ部4を取り付ける場合には、図4に示すように、該背もたれ部4の箱形根端部41の縦突条42を該縦溝44,44のいずれかに嵌合し、固定棒45を便器本体2の嵌着凹部40後面に貫通する固定棒挿入孔48を介して該背もたれ部4の箱形根端部41の係止孔43に挿通する。
【0024】
固定棒45を挿通した後、図5に示すようにつまみ部46を回転させ、該固定棒45のキー47を便器本体2の固定凹部49内側に係合する。このようにして該背もたれ部4は該便器本体2の上面後部に前後位置調節可能かつ着脱可能に安定な状態で取付けられる。なお、本実施例の簡易便器1は、該背もたれ部4を最前位置α、中間位置β、及び最後位置γ(図3等参照)の3段階に12mm間隔で調節可能とされている。
【0025】
また、上記肘掛け3は、上下調節自在に便器本体2に取り付けられている。
図6等に示すように、該上下二段の肘掛け3は上段肘掛け8と下段肘掛け9とからなり、該上段肘掛け8は前後一対の支柱10の上部支柱11間に差渡され、該下段肘掛け9は肘掛け基台13から立設された前後一対の支柱10の下部支柱12間に差渡されている。該上部支柱11の内側面にはそれぞれ5個の係止孔14が縦列されており、該上部支柱11の根端部は該下部支柱12の上端部に上下摺動可能にそれぞれ嵌着されている。
【0026】
肘掛け3の上段肘掛け8の高さは便器本体2上面から18cm〜30cmの高さに設定されていることが望ましく、下段肘掛け9の高さは便器本体2上面から8cm〜12cmの高さに設定されていることが望ましい。本実施例では、下段肘掛け9の高さは便器本体2の上面から10cmの高さに設定されている。
【0027】
肘掛け基台13の下面からは前後一対の支持筒15が垂設されており、また、該肘掛け基台13の下面中央には支持ブロック16が凸設されている。更に、該肘掛け基台13には、下部にロックキー(図示せず)を有するロック部材17が取付けられている。一方、便器本体2の上面両側には、該肘掛け基台13を取付けるための基台取付部18が設けられており、該基台取付部18には該肘掛け基台13の支持筒15を嵌着するための支持筒取付孔19が前後一対凹設されており、また、該肘掛け基台13の支持ブロック16を嵌着するための支持ブロック取付孔20が凹設されている。さらに、該基台取付部18には、該肘掛け基台13のロック部材17のロックキーが挿着されるキー溝21が設けられている。
【0028】
便器本体2に肘掛け3を取付け固定する場合には、該便器本体2の基台取付部18に該肘掛け基台13を嵌着して、該基台取付部18のキー溝21にロック部材17のロックキーを挿通した状態で、該ロック部材17を90度回動させることによって、ロックキーをキー溝21に係止させて固定する。本実施例では、図6に示すように、後側の下部支柱12の後部に係止突起22が立設されており、背もたれ部4の対応する位置に係止凹部23が設けられているので、該下部支柱12の係止突起22を該背もたれ部4の係止凹部23に係合させることによって、該便器本体2に取付けた肘掛け3が左右にがたつくのを防止することが出来る。
【0029】
図7〜図9に示すように、下段肘掛け9の内部には、一端部に係止ピン24が設けられ他端部にワイヤ25が接続されている一対の摺動ピン部材26と、該ワイヤ25をガイドするための一対のガイドロール27が取付けられており、また、下段肘掛け9の下面には、該ワイヤ25を挿通するためのワイヤ挿通孔28が設けられた凸部29を有する押下げ把手30が取付けられている。
【0030】
該摺動ピン部材26の係止ピン24の先端下面には面取部31が設けられており、また、該摺動ピン部材26の中央部には孔部32が設けられており、該孔部32の一方の内壁にはスプリング挿着杆33が立設されており、該スプリング挿着杆33には該摺動ピン部材26の係止ピン24を突出方向に付勢するためのスプリング34が挿着されている。このようにして、該摺動ピン部材26は下段肘掛け9内部に前後(図8,9における左右)摺動可能に取付けられており、突出方向にバネ付勢された係止ピン24は該下部支柱12の上端部の内周から出没可能とされている。
【0031】
また、該押下げ把手30の上面には、該押下げ把手30の上下摺動を円滑にガイドするためのガイド杆35が前後一対立設されており、該押下げ把手30の両側部分には、該押下げ把手30を押し下げるときに指を引っ掛けるための耳部36が設けられている。
【0032】
肘掛け3の使用状態では、図8に示すように、下段肘掛け9内部の摺動ピン部材26の係止ピン24は、該摺動ピン部材26内に挿着されたスプリング34によって突出方向にバネ付勢されて、該下部支柱12の上端部の内周から突出する。そして、バネ付勢されて突出した係止ピン24が、下部支柱12に嵌着された上部支柱11の係止孔14に係合することによって、上段肘掛け8が差渡されている上部支柱11の上下摺動が規制され、上段肘掛け8が摺動ロック状態とされている。
【0033】
肘掛け3の高さを調節する場合には、図9に示すように、下段肘掛け9下面の押下げ把手30を指で押し下げることによって、該押下げ把手30のワイヤ挿通孔28に挿通されたワイヤ25を介して摺動ピン部材26が引張られ、該摺動ピン部材26内に挿着されたスプリング34のバネ付勢力に抗して該摺動ピン部材26が内側に向かって摺動し、該摺動ピンの係止ピン24が上部支柱11の係合孔から引抜かれ、上段肘掛け8が差渡されている上部支柱11の上下摺動の規制が解除されて、上段肘掛け8が摺動フリー状態となる。
【0034】
そして、摺動フリー状態となった上段肘掛け8を所望の高さに合わせた後、それまで押し下げていた押下げ把手30を放すと、下段肘掛け9内部の摺動ピン部材26の係止ピン24が、該摺動ピン部材26内に挿着されたスプリング34によって突出方向にバネ付勢されて、該下部支柱12の上端部の内周から突出して、下部支柱12に嵌着された上部支柱11の係止孔14に係合し、再び上部支柱11の上下摺動が規制されて上段肘掛け8が摺動ロック状態に戻る。本実施例では、該上部支柱11の5個の係止孔14のいずれか一つを選択して該係止ピン24を係合させることにより、上段肘掛け8の高さを3cm間隔で5段階に調節することが出来る。
【0035】
また、図6等に示すように、前記肘掛け3の上段肘掛け8は、使用者の肘を支持する肘掛け本体部8Aと、該肘掛け本体部8Aの後端部から後方へ向かって差し出された延長部8Bとを備えている。該肘掛け本体部8Aは、前端から後端にかけて横幅が一定なストレート形状とされていると共に、前記該延長部8Bは、該肘掛け本体部8Aより幅狭とされ、かつ該肘掛け本体部8Aの一方の側面(図6において外側の側面)に沿って真っ直ぐ後方へ延出形成されている。また、該延長部8Bの後方への延出長さは、少なくとも前記背もたれ部4が最後位置γに設定された場合にも該背もたれ部4の側板部4Aの側面へ達する長さに設定されている。すなわち、該延長部8Bは、該背もたれ部4の前後調整ストロークよりも長い寸法に設定されている。
【0036】
したがって、例えば簡易便器1の使用状態では、図1あるいは図10イ,図11イに示すように、該背もたれ部4の側板部4Aと該肘掛け3の延長部8Bとが左右方向で隣接し、該背もたれ部4の側板部4Aの外側面の少なくとも一部に、該肘掛け3の延長部8Bの少なくとも一部が覆い被さった状態となっている。そして、該背もたれ部4を前後に移動させた場合、該背もたれ部4の側板部4Aは該上段肘掛け8の延長部8Bに沿ってスライドすることとなる。なお、該側板部4Aと該延長部8Bとは、接触している構成が望ましいが、手指が入り込まない程度(例えば3mm以下)の隙間を介して非接触であってもよい。
【0037】
さらに、前記上段肘掛け8の肘掛け本体部8Aにおける後端部には、前記延長部8Bに向かうに従って幅狭となるテーパー部8Cが形成されており、該肘掛け本体部8Aにおけるテーパー部8Cの他方の側面(図6において内側の側面)が、手指挟み防止用傾斜面60とされている。
【0038】
上記簡易便器1にあっては、図10イに示すように前記背もたれ部4が最前位置αにある場合でも、図11イに示すように前記背もたれ部4が最後位置γにある場合でも、該背もたれ部4の前後位置に関わらず、該背もたれ部4の側板部4Aの外側面の少なくとも一部に、該肘掛け3の延長部8Bの少なくとも一部が覆い被さった状態となっており、該背もたれ部4と該上段肘掛け8との間に隙間が生じない。さらに、前記肘掛け本体部8Aには手指挟み防止用傾斜面60が形成されており、該延長部8Bの根端部近傍位置においても、該肘掛け本体部8Aの後端と該背もたれ部4の外縁との間に十分広い空間が形成されているため、手指を挟むような個所が生じない。該手指挟み防止用傾斜面60は、非曲面で構成されていてもよいし、曲面で構成されていてもよい。
【0039】
また、上記左右一対の肘掛け3,3は、左右で同じ取付構造を採用することにより交換可能に取付け自在とされており、かつ、互いに左右対称形状とされているため、左右交換することにより肘掛け間隔Wが変更可能となっている。
すなわち、図1,図10イ,図11イに示すように、延長部8Bを背もたれ部4の側板部4Aの外側に配置するように肘掛け3,3を取り付けた第1の状態とすると、肘掛け間隔はW1(例えば41cm)となって広くなり、体格の大きな人に対応可能となる。一方、肘掛け3,3を左右交換して取り付け、図10ロ,図11ロに示すように、延長部8Bが背もたれ部4の側板部4Aの内側に配置される第2の状態とすると、肘掛け間隔はW2(例えば38cm)となって狭くなり(W2<W1)、体格の小さな人に対応可能となる。なお、前記肘掛け本体部8Aの前端部形状を片側へ膨出した形状とし、前記第1の状態とした場合に肘掛け間隔W1が狭くなり、前記第2の状態とした場合に肘掛け間隔W2が広くなるようにしてもよい。
【0040】
本発明は、上記実施例に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更可能である。
例えば、これまでに述べた構成のほか、図12に示すように嵌着凹部40の両側壁の縦溝44,44の下端に連通する横溝44Aが底面に設けられてもよいし、また図13に示すように嵌着凹部40の底面にラック54を設け、背もたれ部4の箱形根端部41の底面に該ラック54に噛合するラック52を設けてもよい。また図14に示すように便器本体2の後壁に直接キー溝58Aを付した固定棒挿入孔58を設け、更に背もたれ部4の箱形根端部41の係止孔43にもキー溝43Aを付し、固定棒55のキー57を該固定棒挿入孔58の内側に係止してもよい。また背もたれ部4の箱形根端部41側に縦溝を設け、便器本体2の嵌着凹部40側に縦突条を設けてもよい。また縦突条を複数条、縦溝を1条設けてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 簡易便器
2 便器本体
3 肘掛け
4 背もたれ部
4A 側板部
4B 背あて部
8 上段肘掛け
8A 肘掛け本体部
8B 延長部
9 下段肘掛け
11 上部支柱
12 下部支柱
14 係止穴
24 係止ピン
25 ワイヤ
30 押下げ把手
40 嵌着凹部
60 手指挟み防止用傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器本体と、該便器本体の側部に設けられた肘掛けと、該便器本体の後部に設けられた背もたれ部と、
を備えた簡易便器であって、
前記背もたれ部は、左右一対の側板部と該側板部間に差渡される背あて部とからなり、
該便器本体両側後部には該背もたれ部の側板部下端を前後位置調節可能に嵌着する嵌着凹部が設けられて、前記背もたれ部が前記便器本体の後部において前後調節自在とされており、
前記肘掛けは、使用者の肘を支持する肘掛け本体部の後端部から後方へ向かって差し出された該肘掛け本体部より幅狭の延長部を備えており、
前記背もたれ部がいずれの前後位置でも、該背もたれ部の側板部と該肘掛けの延長部とが左右方向で隣接して、該背もたれ部の側板部の側面の少なくとも一部に、該肘掛けの延長部の少なくとも一部が覆い被さっていることを特徴とする簡易便器。
【請求項2】
前記肘掛けは、
便器本体の上面両側に左右一対で交換可能に取付け自在とされ、かつ、互いに左右対称形状とされており、
前記肘掛けを左右交換して取り付けて、該背もたれ部の側板部の外側に該肘掛けの延長部が配置される第1の状態、及び、該背もたれ部の側板部の内側に該肘掛けの延長部が配置される第2の状態のうちいずれかを選択することにより肘掛け間隔を変更自在とした請求項1に記載の簡易便器。
【請求項3】
前記肘掛け本体部の後端部の側面には、該後端部を前記延長部に向かうに従って幅狭形状とする手指挟み防止用傾斜面が形成されている請求項1又は請求項2記載の簡易便器。
【請求項4】
前記肘掛けは、便器本体の上面両側に着脱可能に取付けられている上下二段構造であって、
該便器本体の上面両側には上部支柱と下部支柱とからなる支柱が前後一対立設されており、
該上部支柱間には上段肘掛けが差渡され、
該下部支柱間には下段肘掛けが差渡されており、
該上部支柱の根端部は該下部支柱の上端部に上下摺動可能にそれぞれ嵌着されており、
該上部支柱には複数個の係止孔が縦列され、
該下部支柱の上端部の内周からは突出方向にバネ付勢された係止ピンが出没可能に設けられており、
該係止ピンにはワイヤを介して押下げ把手が接続されており、
該押下げ把手は該下段肘掛けの下面に取付けられ、該押下げ把手を上下に摺動させることによって、該係止ピンを出没させて該係止ピンを該係止孔のいずれかに係合させることによって、上段肘掛けの高さ調節が可能とされている請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項に記載の簡易便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−16469(P2012−16469A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155436(P2010−155436)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【Fターム(参考)】