説明

粉末消火薬剤および消火器

【課題】 本発明は、1.5kgの量であってもB−7以上の消火能力有する粉末消火薬剤およびその粉末消火薬剤を充填した消火器を提供することを課題とする。
【解決手段】 リン酸二水素アンモニウムを70質量%以上含むと共に、粒度10.8μm以下の粉末を2.2質量%以上含む粉末消火薬剤とすること、ならびに、リン酸二水素アンモニウムを30質量%以上含むと共に、粒度10.8μm以下の粉末を7.2質量%以上含む粉末消火薬剤とすることによって、いずれも、粉末消火薬剤1.5kgの量でB−7以上の消火能力を有する粉末消火薬剤とすることが可能となり、それらの粉末消火薬剤を充填することによって高い消火能力を有する消火器を提供することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は消火薬剤および消火器の改良に関し、特に、粉末消火器や粉末消火設備に使用される粉末消火薬剤およびその粉末消火薬剤を充填した消火器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在最も一般的に普及している消火器は、普通火災(A火災)、油火災(B火災)、電気火災(C火災)のいずれにも強い消火力を発揮するものとして用いられている粉末消火器、所謂、ABC粉末消火器であって、リン酸二水素アンモニウムを主成分とする粉末消火薬剤を用いたものである。
【0003】
ABC粉末消火器に用いられる粉末消火薬剤は「消火器用消火薬剤の技術上の規格を定める省令」第7条、および「消火器用消火薬剤の検定細則」第8に定められたように、180μmの篩で99.0%通過するとともに、油火災(B火災)では粉末消火薬剤1.5kgの量でB−4(0.8m火皿火災)の消火能力を有することが求められるものであるが、通常用いられている粉末消火薬剤は、粒子径37μm以下の粉末粒子の割合が40〜60質量%程度である。
【0004】
近年、粒子径37μm以下の粉末粒子を50重量%以上含むリン酸二水素アンモニウムを40〜80重量部とし、粒子径177μm以下の硫酸アンモニウム粉末の量を20〜60重量部とするとともに、全体として粒子径37μm以下の粉末成分を45〜70重量%または粒子径50μm以下の成分を55〜80重量%とする技術が知られている。(特許文献1参照)この従来技術では、粒子径37μm以下の粉末粒子の割合が45〜70重量%と比較的多くなっているが、これは、ABC粉末消火器用の粉末消火薬剤の製造コストを低減する目的で、主成分であるリン酸二水素アンモニウム粉末の一部の代わりに置き換えて用いられている硫酸アンモニウム粉末の量が20重量%以上になると、この粉末消火薬剤の消火性能の低下が見られるので、その消火性能低下を改善するために為された技術であって、製造コストの低減とともに、粉末消火薬剤1.5kgの量で油火災B−4(0.8m火皿火災)の消火能力を維持することを目論んだものである。
【0005】
現在一般的に普及している消火器の内、家庭用消火器では、子供や老齢者等、比較的非力な使用者にとって持ち運びや操作が容易である小型で軽量な消火器、例えば、粉末消火薬剤1kgを充填した消火器や、1.2kgを充填した消火器も普及しているが、それらはB−4(0.8m火皿火災)の油火災を消火するには消火能力が十分であるとは言えないものである。更に、B−4(0.8m火皿火災)を超える油火災においては、それらの消火器を用いて消火することは不可能である。例えばB−7(1.4m火皿火災)の油火災においては従来の粉末消火薬剤1.5kgを充填した消火器であっても消火することは不可能と言える。B−7(1.4m火皿火災)の油火災の場合であっても大量の粉末消火薬剤、例えば3〜3.5kgの粉末消火薬剤を充填した消火器(10型消火器)などを用いれば消火することも可能であるが、上記非力な使用者にとっては持ち運びや操作が容易ではなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平2−23196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の様に、現在最も一般的に普及しているABC粉末消火器においても、子供や老齢者等、比較的非力な使用者にとっても軽量で操作し易く、より短い時間で十分なる消火能力を有するものが望まれるところである。また、状況によっては、油火災において粉末消火薬剤1.5kgの量でB−4(0.8m火皿火災)を超える、例えば、B−7(1.4m火皿火災)の消火能力を有する粉末消火器が望まれる場合もある。
このような課題を解決するために、本発明は、「消火器用消火薬剤の技術上の規格を定める省令」第7条、および「消火器用消火薬剤の検定細則」第8に基準として示された1.5kgの量であっても、B−7(1.4m火皿火災)の消火能力を有する粉末消火薬剤であって、比較的安価に提供することを目的とする。また、その様な粉末消火薬剤であれば、1.5kgよりも少ない量、例えば1kgといった軽量化されたものであっても、B−4(0.8m火皿火災)程度以上の油火災に対して消火能力を有することをも可能とし、また、B−4(0.8m火皿火災)程度の油火災に対しては、従来の粉末消火薬剤の場合よりも短時間にて、より迅速なる消火を可能とする粉末消火薬剤、および、その粉末消火薬剤を充填した消火能力の高い消火器を提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明に係る第一の粉末消火薬剤は、粉末消火薬剤中に主剤としてのリン酸二水素アンモニウムを70質量%以上含むと共に、該粉末消火薬剤中に粒度(粒子径)10.8μm以下の粉末を2.2質量%以上含むことを特徴とするものである。第一の粉末消火薬剤における、主剤としてのリン酸二水素アンモニウム以外の成分として、硫酸アンモニウムを含むものであってもよい。また、更に必要に応じて、添加剤として、固結防止剤、流動性付与剤、撥水剤、着色剤等を添加混合することができる。なお、上記粒度10.8μm以下の粉末には、少なくともリン酸二水素アンモニウムの粉末が含まれていることが好ましい。
【0009】
第一の粉末消火薬剤におけるリン酸二水素アンモニウムの量は70質量%〜98質量%が好ましく、硫酸アンモニウムの量は28質量%〜0質量%が好ましい。更に、固結防止剤、流動性付与剤、撥水剤、着色剤が、合計1質量%〜3質量%の添加剤として添加混合されていることが好ましい。
【0010】
また、上記課題を解決するための本発明に係る第二の粉末消火薬剤は、粉末消火薬剤中に主剤としてのリン酸二水素アンモニウムを30質量%以上含むと共に、該粉末消火薬剤中に粒度10.8μm以下の粉末を7.2質量%以上含むことを特徴とするものである。上記第一の粉末消火薬剤の場合と同様に、第二の粉末消火薬剤における、主剤としてのリン酸二水素アンモニウム以外の成分として、硫酸アンモニウムを含むものであってもよい。また、第二の粉末消火薬剤についても、必要に応じて、添加剤として、固結防止剤、流動性付与剤、撥水剤、着色剤等を添加混合することができる。
【0011】
第二の粉末消火薬剤におけるリン酸二水素アンモニウムの量は30質量%〜98質量%が好ましく、硫酸アンモニウムの量は68質量%〜0質量%が好ましい。更に、固結防止剤、流動性付与剤、撥水剤、着色剤が、合計1質量%〜3質量%の添加剤として添加混合されていることが好ましい。
【0012】
上記添加剤の例としては、必要に応じて通常用いられる、無水ケイ酸やホワイトカーボン(非晶性シリカ)等の流動性付与剤(流動化剤)、シリコン樹脂やシリカ等の撥水剤・固結防止剤、色粉等の着色剤が挙げられるが、特に限定するものではない。
【0013】
また、本発明に係る消火器は、上記本発明に係る粉末消火薬剤を内部に充填していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明による、粉末消火薬剤中に主剤としてのリン酸二水素アンモニウムを70質量%以上含むと共に、粒度(粒子径)10.8μm以下の粉末を2.2質量%以上含む第一の粉末消火薬剤、ならびに、粉末消火薬剤中に主剤としてのリン酸二水素アンモニウムを30質量%以上含むと共に、粒度10.8μm以下の粉末を7.2質量%以上含む第二の粉末消火薬剤は、いずれも、1.5kgの量で少なくともB−7(1.4m火皿火災)の油火災消火能力を有するものである。従って、子供や老齢者等、比較的非力な使用者にとっても操作し易い、粉末消火薬剤1kgを充填した小型の消火器であってもB−4(0.8m火皿火災)の油火災を十分に消火することが可能となり、また、粉末消火薬剤1.5kgを充填した比較的小型の消火器として用いた場合、B−7(1.4m火皿火災)の油火災を消火することが可能となる。さらに、同じ質量の消火器であっても、本発明の消火器を用いた場合は、従来の粉末消火薬剤を充填した消火器を用いる場合よりも短い時間で消火することを可能とするものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る第一の粉末消火薬剤および第二の粉末消火薬剤による効果を、ならびに、その粉末消火薬剤を充填した消火器による効果を、以下の比較例および実施例により、各比較例および実施例における各粉末消火薬剤の成分構成、ならびに、消火実験を基にして、具体的に説明する。
【実施例1】
【0016】
リン酸二水素アンモニウム、硫酸アンモニウム、ならびに、その他の添加剤を、以下に示す各組成となるように、混合し、粉末消火薬剤A〜粉末消火薬剤Jを調製した。

粉末消火薬剤A:
リン酸二水素アンモニウム・・・30質量%
硫酸アンモニウム・・・・・・・68質量%
添加剤(ホワイトカーボン等)・・2質量%
粒度10.8μm以下の粉末・・・・・・2.7質量%
粉末消火薬剤B:
リン酸二水素アンモニウム・・・30質量%
硫酸アンモニウム・・・・・・・68質量%
添加剤(ホワイトカーボン等)・・2質量%
粒度10.8μm以下の粉末・・・・・・5.8質量%
粉末消火薬剤C:
リン酸二水素アンモニウム・・・40質量%
硫酸アンモニウム・・・・・・・58質量%
添加剤(ホワイトカーボン等)・・2質量%
粒度10.8μm以下の粉末・・・・・・2.7質量%
粉末消火薬剤D:
リン酸二水素アンモニウム・・・63質量%
硫酸アンモニウム・・・・・・・35質量%
添加剤(ホワイトカーボン等)・・2質量%
粒度10.8μm以下の粉末・・・・・・2.5質量%
粉末消火薬剤E:
リン酸二水素アンモニウム・・・70質量%
硫酸アンモニウム・・・・・・・28質量%
添加剤(ホワイトカーボン等)・・2質量%
粒度10.8μm以下の粉末・・・・・・2.0質量%
粉末消火薬剤F:
リン酸二水素アンモニウム・・・70質量%
硫酸アンモニウム・・・・・・・28質量%
添加剤(ホワイトカーボン等)・・2質量%
粒度10.8μm以下の粉末・・・・・・2.2質量%
粉末消火薬剤G:
リン酸二水素アンモニウム・・・70質量%
硫酸アンモニウム・・・・・・・29質量%
添加剤(ホワイトカーボン等)・・1質量%
粒度10.8μm以下の粉末・・・・・・2.2質量%
粉末消火薬剤H:
リン酸二水素アンモニウム・・・70質量%
硫酸アンモニウム・・・・・・・27質量%
添加剤(ホワイトカーボン等)・・3質量%
粒度10.8μm以下の粉末・・・・・・2.2質量%
粉末消火薬剤I:
リン酸二水素アンモニウム・・・71質量%
硫酸アンモニウム・・・・・・・27質量%
添加剤(ホワイトカーボン等)・・2質量%
粒度10.8μm以下の粉末・・・・・・2.4質量%
粉末消火薬剤J:
リン酸二水素アンモニウム・・・79質量%
硫酸アンモニウム・・・・・・・19質量%
添加剤(ホワイトカーボン等)・・2質量%
粒度10.8μm以下の粉末・・・・・・2.3質量%
粉末消火薬剤K:
リン酸二水素アンモニウム・・・88質量%
硫酸アンモニウム・・・・・・・10質量%
添加剤(ホワイトカーボン等)・・2質量%
粒度10.8μm以下の粉末・・・・・・2.2質量%
粉末消火薬剤L:
リン酸二水素アンモニウム・・・98質量%
硫酸アンモニウム・・・・・・・・0質量%
添加剤(ホワイトカーボン等)・・2質量%
粒度10.8μm以下の粉末・・・・・・2.4質量%

上記添加剤は、ホワイトカーボン、シリコン樹脂、色粉からなり、それぞれ、流動化剤(流動性付与剤)、撥水剤・固結防止剤、着色剤として添加混合されたものである。
【0017】
なお、各粉末消火薬剤粒子中の10.8μm以下の粒子の計量は次の手順にて行った。各粉末消火薬剤の試料をレーザ回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製SALD−200V ER)にセットし、10.8μm以下の粒子の体積%を計測した。計測された体積%から質量%に換算することによって、10.8μm以下の粒子の質量%を求めた。
【0018】
上記調製した各粉末消火薬剤を用いて、以下の消火実験を行った。
消火実験:
火災模型の条件:
燃焼火皿:B−7(模型番号:7)縦:118.3cm、横:118.3cm、深さ:30cm(1.4m火皿火災)
燃料:n−ヘプタン
(1)粉末消火薬剤1.5kg(誤差+100g〜−40g)を容量2.0リットル±0.2リットルの消火器容器に入れた。
(2)上記B−7の火皿に水を深さ12cmまで投入し、更に、n−ヘプタンを深さ3cmとなるように投入し、点火した。
(3)点火から1分後に火皿から1mの距離から上記(1)の消火器容器を用いて消火操作を行った。
【0019】
消火実験結果
消火実験結果を以下の表1に示す。表1中の「B-7火災模型の消火の可否」の項目は、「○」が消火できたことを、また、「×」が消火できなかったことを表す。
【0020】
【表1】

【0021】
上記消火実験の結果、粉末消火薬剤中に粒度10.8μm以下の粉末を2.5質量%含む場合であっても、リン酸二水素アンモニウムの量が63質量%含む粉末消火薬剤や、粉末消火薬剤中に粒度10.8μm以下の粉末を5.8質量%含む場合であっても、リン酸二水素アンモニウムの量が30質量%含む粉末消火薬剤は、B−7の消火能力が認められず、また、粉末消火薬剤中にリン酸二水素アンモニウムの量が70質量%含む場合であっても、粒度10.8μm以下の粉末を2.0質量%含む粉末消火薬剤も、B−7の消火能力が認められなかった。
それに対して、粉末消火薬剤F〜粉末消火薬剤Lによる消火実験結果から、粉末消火薬剤中にリン酸二水素アンモニウムの量が70質量%以上含まれる場合には、粒度10.8μm以下の粉末が2.2質量%以上含まれていれば、その粉末消火薬剤はB−7の消火能力を有することが認められた。
また、添加剤1質量%及び3質量%含まれる場合には、添加剤2質量%含まれる場合と同程度の消火能力を有することが認められた。
【0022】
この結果から、粉末消火薬剤中にリン酸二水素アンモニウムを70質量%以上含むと共に、該粉末消火薬剤中に粒度10.8μm以下の粉末を2.2質量%以上含む第一の粉末消火薬剤はB−7以上の消火能力を有すると言うことができ、従来の粉末消火薬剤に比べて著しく高い消火能力が認められるものであった。
【実施例2】
【0023】
リン酸二水素アンモニウム、硫酸アンモニウム、ならびに、その他の添加剤を、以下に示す各組成となるように、混合し、各粉末消火薬剤を調製した。
粉末消火薬剤M:
リン酸二水素アンモニウム・・・25質量%
硫酸アンモニウム・・・・・・・73質量%
添加剤(ホワイトカーボン等)・・2質量%
粒度10.8μm以下の粉末・・・・・・7.2質量%
粉末消火薬剤N:
リン酸二水素アンモニウム・・・30質量%
硫酸アンモニウム・・・・・・・68質量%
添加剤(ホワイトカーボン等)・・2質量%
粒度10.8μm以下の粉末・・・・・・7.2質量%
粉末消火薬剤O:
リン酸二水素アンモニウム・・・30質量%
硫酸アンモニウム・・・・・・・69質量%
添加剤(ホワイトカーボン等)・・1質量%
粒度10.8μm以下の粉末・・・・・・7.2質量%
粉末消火薬剤P:
リン酸二水素アンモニウム・・・30質量%
硫酸アンモニウム・・・・・・・67質量%
添加剤(ホワイトカーボン等)・・3質量%
粒度10.8μm以下の粉末・・・・・・7.2質量%
粉末消火薬剤Q:
リン酸二水素アンモニウム・・・70質量%
硫酸アンモニウム・・・・・・・28質量%
添加剤(ホワイトカーボン等)・・2質量%
粒度10.8μm以下の粉末・・・・・・7.2質量%
粉末消火薬剤R:
リン酸二水素アンモニウム・・・98質量%
硫酸アンモニウム・・・・・・・・0質量%
添加剤(ホワイトカーボン等)・・2質量%
粒度10.8μm以下の粉末・・・・・・7.2質量%

上記添加剤は、上記実施例1と同じものを用いた。
【0024】
なお、各粉末消火薬剤粒子中の10.8μm以下の粒子の計量は、上記実施例1と同じ手順にて行った。
【0025】
上記調製した各粉末消火薬剤を用いて、実施例1と同じ条件にて消火実験を行った。
【0026】
消火実験結果
消火実験結果を、実施例1の粉末消火薬剤A〜粉末消火薬剤Dの結果と共に以下の表2に示す。表2中の「B-7火災模型の消火の可否」の項目は、表1の場合と同様に、「○」が消火できたことを、また、「×」が消火できなかったことを表す。
【0027】
【表2】

【0028】
上記消火実験の結果、粉末消火薬剤中にリン酸二水素アンモニウムの量が30質量%含む場合であっても、粒度10.8μm以下の粉末を5.8質量%含む粉末消火薬剤や、粉末消火薬剤中にリン酸二水素アンモニウムの量が63質量%含む場合であっても、粒度10.8μm以下の粉末を2.5質量%含む粉末消火薬剤は、B−7の消火能力が認められず、また、粉末消火薬剤中に粒度10.8μm以下の粉末を7.2質量%含む場合であっても、リン酸二水素アンモニウムの量が25質量%含む粉末消火薬剤は、B−7の消火能力が認められなかった。
これに対して、粉末消火薬剤N〜粉末消火薬剤Rによる消火実験結果から、粉末消火薬剤中に粒度10.8μm以下の粉末が7.2質量%以上含まれる場合には、リン酸二水素アンモニウムの量が30質量%以上含まれていれば、その粉末消火薬剤はB−7の消火能力を有することが認められた。
また、添加剤1質量%及び3質量%含まれる場合には、添加剤2質量%含まれる場合と同程度の消火能力を有することが認められた。
【0029】
この結果から、粉末消火薬剤中にリン酸二水素アンモニウムを30質量%以上含むと共に、該粉末消火薬剤中に粒度10.8μm以下の粉末を7.2質量%以上含む第二の粉末消火薬剤はB−7(1.4m火皿火災)以上の消火能力を有すると言うことができ、従来の粉末消火薬剤に比べて著しく高い消火能力が認められるものであった。
【0030】
上記の通り、粉末消火薬剤1.5kgの量でB−7(1.4m火皿火災)の消火能力が認められない粉末消火薬剤A〜粉末消火薬剤E、および粉末消火薬剤Kは、本発明における比較例に相当する粉末消火薬剤であるが、それらの比較例に対して、粉末消火薬剤中にリン酸二水素アンモニウムを70質量%以上含むと共に、該粉末消火薬剤中に粒度10.8μm以下の粉末を2.2質量%以上含む第一の粉末消火薬剤、ならびに、粉末消火薬剤中にリン酸二水素アンモニウムを30質量%以上含むと共に、該粉末消火薬剤中に粒度10.8μm以下の粉末を7.2質量%以上含む第二の粉末消火薬剤は、いずれも、B−7(1.4m火皿火災)以上の消火能力を有する、従来の粉末消火薬剤に比べて著しく高い消火能力が認められるものである。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明に係る消火薬剤は、粉末消火器や粉末消火設備に適用することが可能であり、本発明に係る消火器は、一般的に普及しているABC粉末消火器として使用できるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末消火薬剤中にリン酸二水素アンモニウムを70質量%以上含むと共に、該粉末消火薬剤中に粒度10.8μm以下の粉末を2.2質量%以上含むことを特徴とする粉末消火薬剤。
【請求項2】
リン酸二水素アンモニウムを70質量%〜98質量%、硫酸アンモニウムを29質量%〜0質量%含む請求項1に記載の粉末消火薬剤。
【請求項3】
固結防止剤、流動性付与剤、撥水剤、着色剤を、合計1質量%〜3質量%の添加剤として添加混合してなる請求項2に記載の粉末消火薬剤。
【請求項4】
粉末消火薬剤中にリン酸二水素アンモニウムを30質量%以上含むと共に、該粉末消火薬剤中に粒度10.8μm以下の粉末を7.2質量%以上含むことを特徴とする粉末消火薬剤。
【請求項5】
リン酸二水素アンモニウムを30質量%〜98質量%、硫酸アンモニウムを69質量%〜0質量%含む請求項4に記載の粉末消火薬剤。
【請求項6】
固結防止剤、流動性付与剤、撥水剤、着色剤を、合計1質量%〜3質量%の添加剤として添加混合してなる請求項5に記載の粉末消火薬剤。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の粉末消火薬剤を内部に充填していることを特徴とする消火器。

【公開番号】特開2012−139266(P2012−139266A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292276(P2010−292276)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000114905)ヤマトプロテック株式会社 (46)
【Fターム(参考)】