説明

粉粒体の散布装置

【課題】繰り出しロールに直接衝撃を与え、嵌入凹部の内周面と粉粒体の剥離性を向上させて粉粒体の定量散布を得ることができる粉粒体の散布装置を提供する。
【解決手段】散布装置の繰り出しロール6に直接打撃を与える衝撃付与機構Aが、繰り出しロール6の内部中空室8内に移動自在に収納した衝撃付与塊9と、前記繰り出しロール6の中空室8内に設けられ、この繰り出しロール6の回転時に下位の位置で衝撃付与塊9を持ち上げて上部の位置で落下させる持ち上げ部材10とで形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、粉粒体の散布装置、更に詳しくは、農地に肥料や薬剤等の粉状体や粒状体を散布するための散布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の粉粒体の散布装置は、粉粒体を収納するホッパーと、前記ホッパーの下部に設けられた排出口にこの排出口を閉じる摺接状態で回転自在に軸止され、その外周面に粉粒体の嵌入凹部が設けられた繰り出しロールと、前記排出口において、繰り出しロールの回転方向に沿う前後の位置に配置され、繰り出しロールに摺接するようにした粉粒体漏れ防止部材と、前記繰り出しロールを回転駆動するモータとからなる構造を有している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような散布装置は、走行用車両に取付けたホッパー内に粉粒体を投入し、車両の前進走行と共にモータで繰り出しロールを回転させ、繰り出しロールに設けた嵌入凹部内の粉粒体を排出口の下部に向けて排出することで散布することになる。
【0004】
ところで、排出口内における繰り出しロールの回転により、上方に回動した嵌入凹部内にホッパー内の粉粒体を嵌入させ、下方に回動した嵌入凹部内の粉粒体を落下排出することにより散布する粉粒体の散布装置は、嵌入凹部による計量によって定量散布を目的とするものであるが、例えば、水分率が高くて繰り出しロールやホッパーの内面に対する付着性のある粉粒体の場合、嵌入凹部内に嵌入した状態で嵌入凹部からの剥離性が悪くなり、下方に回動した嵌入凹部内から粉粒体を自重による自然落下によって排出させるときに、嵌入凹部の内周面に付着した状態で粉粒体が残り、嵌入凹部内の全量を排出できないことにより、定量散布に支障をきたすという問題がある。
【0005】
上記のような粉粒体のホッパー内での固まり(ブリッジ現象)の発生を防ぎ、円滑な散布を可能にすることを目的とした粉粒体の散布装置として、ホッパー内に外部から駆動する振動板を組み込んだもの(例えば、特許文献2参照)や、ホッパーの外面に、モータで駆動する回転カムと、このカムに対して先端が常時圧接する方向の弾性が付勢された衝撃付与アームと、カムによる押圧が解かれた衝撃付与アームが衝突するストッパーを取付け、衝撃付与アームがストッパーに衝突することでホッパーに振動を生じさせるようにしたもの(例えば、特許文献3参照)が提案されている。
【0006】
また、粉体の嵌入凹部に対する付着を防止して排出を円滑に行うための粉体取出し技術として、図6に示すように、外周面に嵌入凹部21を設けた繰り出しロール22を内部中空の円筒状とし、その軸心を貫通する中心軸23で回転するように支え、前記繰り出しロール22の内周面を凸部24と凹部25が周方向へ一定間隔で交互に連続する凹凸面に形成し、この繰り出しロール22の内部に衝撃発生用のボール26を収納した構造が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0007】
上記のような粉体取出し技術は、繰り出しロール22が回転すると、中空内部の下部に位置しているボール26は凹凸面における凹部25で回転方向に持ち上げられ、ボール26は上方に回動してくると自重で凹部25から繰り出しロール22の下部に向けて落下し、繰り出しロール22の回転により、ボール26は上記のような持ち上げと落下を繰り返すものであり、前記ボール26はその落下時に繰り出しロール22の下部に衝突することで繰り出しロール22に衝撃を与え、この衝撃で下部の嵌入凹部21内に納まる粉体を剥離させることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−217827号公報
【特許文献2】特開2006−246725号公報
【特許文献3】特開2004−8050号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】書籍名:図解 粉体機器・装置の基礎 第136頁(工業調査会 2005年2月15日発行)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上記した振動付与機構を備えた粉粒体の散布装置は、振動発生のために専用の駆動原を用いているため、その分製作コストが高くつくという問題がある。
【0011】
また、何れの振動付与機構においても、ホッパー内の粉粒体に直接又はホッパーを介して間接的に振動を与えるものであるため、ホッパー内での粉粒体の固まり発生を防ぐことができる。
【0012】
しかしながら、繰り出しロールの回転により粉粒体を散布する構造の散布装置において、定量散布を得るには、嵌入凹部の内周面に対する粉粒体の剥離性を向上させる必要性があるが、ホッパー内の粉粒体に直接又はホッパーを介して間接的に振動を与える上記の方法では、繰り出しロールに十分な振動が伝わらず、嵌入凹部の内周面と粉粒体の剥離性が向上しないため、粉粒体の定量散布を得ることができないという問題がある。
【0013】
また、非特許文献1で示した粉体取出し技術においては、繰り出しロール22の内周面に設けた凹部25でボール26を持ち上げる構造になっているので、ボール26の持ち上げ角度が90°を超えたあたりでボール26が落下することになり、このため、ボール26の落下距離が短く、繰り出しロール22に与える衝撃力が小さく、従って、ボール26による衝撃によって得られる嵌入凹部21に対する粉体の剥離効果が少ないという問題がある。
【0014】
更に、繰り出しロール22の軸心に沿って中空内部を中心軸23が貫通する構造では、中空内部の空間が中心軸23の直径分だけ狭くなり、しかも、空間は平面的に二分されることになるため、中空内部に収納できるボール26の外径が制約を受け、重量の大きなボールを採用できないので、ボール26によって得られる衝撃力が小さいものとなり、かつ、落下するポール26が中心軸に接触や当接することで、落下速度が低下させられることになり、何れにしても、繰り出しロール22の下部に与える衝撃力が小さいというものである。
【0015】
そこで、この発明の課題は、上記のような問題点を解決するため、繰り出しロールに対して直接大きな衝撃を与えることができるようにし、嵌入凹部の内周面と粉粒体の剥離性を向上させて粉粒体の定量散布を得ることができる粉粒体の散布装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記のような課題を解決するため、請求項1の発明は、粉粒体を収納するホッパーと、前記ホッパーの下部に設けられた排出口にこの排出口を閉じる摺接状態で回転自在に軸止され、その外周面に粉粒体の嵌入凹部が設けられた繰り出しロールと、前記繰り出しロールを回転駆動する駆動源とからなる粉粒体の散布装置において、前記繰り出しロールに、この繰り出しロールの回転によって繰り出しロールに衝撃を与える衝撃付与機構を設け、繰り出しロールの回転時にこの繰り出しロールに直接打撃を与えるようにしたものである。
【0017】
請求項2の発明は、上記衝撃付与機構が、繰り出しロールの内部を障害物のない中空室に形成し、この中空室内に衝撃付与塊を移動自在に収納し、前記繰り出しロールの中空室内で軸心を挟む内周面寄りの二箇所の位置に、繰り出しロールの回転時に下位の位置で衝撃付与塊を繰り出しロールの回転軸心よりも上部の位置に持ち上げて落下させる持ち上げ部材を設けて形成されているようにしたものである。
【0018】
ここで、上記繰り出しロールは、両端が閉鎖された円筒状に形成され、その外周面に嵌入凹部が軸方向に複数が並び、それが周方向に一定間隔の配置で複数組設けられ、この繰り出しロール内に組み込む衝撃付与塊は、金属等の硬質材料を用い、繰り出しロール内で移動が自由となる直径の球状等に形成されている。
【0019】
また、持ち上げ部材は、繰り出しロール内で軸方向に沿う軸状となり、前記繰り出しロール内の内周面寄りで軸心を挟む二箇所の位置に架設され、繰り出しロールが回転すると、下部から上部に向けて回動するとき繰り出しロールの内周面とで衝撃付与塊を繰り出しロールの回転軸心よりも上部に持ち上げ、略180°回動すれば衝撃付与塊を自重で落下させるようになっており、落下した衝撃付与塊は、繰り出しロールに直接衝撃を加えることになる。
【0020】
請求項3の発明は、上記衝撃付与機構が、繰り出しロールの軸に固定され、この繰り出しロールと一体に回転するカムと、前記カムの近傍に配置され、このカムの回転により繰り出しロールの外周面に対して接近離反動し、繰り出しロールへの接近動時に繰り出しロールの外周面を直接打撃する衝撃付与アームとで形成されているようにしたものである。
【0021】
上記カムは、外形が大径部と小径部が交互になる十字形に形成され、繰り出しロールの軸に固定することにより繰り出しロールと一体に回転し、カム用の駆動モータを別途必要としないことになり、また、衝撃付与アームは、先端がカムの外形面に当接するカム用アームによって揺動が与えられ、カム用アームはカムに対して枢止点を支点に接近又は離反する揺動自在となり、スプリングでカムに常時当接する方向の弾性が付勢され、繰り出しロールと一体にカムが回転すると、カム用アームの先端が大径部から小径部に落ち込むとき、一体に揺動する衝撃付与アームが繰り出しロールの外周面を直接打撃し、この打撃によって繰り出しロールに衝撃を与えることになる。
【発明の効果】
【0022】
請求項1の発明によると、繰り出しロールに、この繰り出しロールの回転によって繰り出しロールに衝撃を与える衝撃付与機構を設け、繰り出しロールの回転時にこの繰り出しロールに振動を生じさせるようにしたので、繰り出しロールの回転により粉粒体を散布する構造の散布装置において、繰り出しロールに衝撃を加えることで、嵌入凹部の内周面に対する粉粒体の剥離性を向上させることができ、粉粒体の定量散布を得ることができる。
【0023】
また、請求項2の発明によると、繰り出しロールの内部を障害物のない中空室に形成し、この中空室内に移動自在に収納した衝撃付与塊を、前記繰り出しロールの中空室内の二箇所に設けた持ち上げ部材で繰り出しロールの回転軸心よりも上部に持ち上げて落下させることにより、繰り出しロールに直接衝撃を加えるようにしたので、繰り出しロールの略180°の回転角度まで衝撃付与塊を持ち上げて落下させることができ、これにより、衝撃付与塊の落下距離を長く確保でき、繰り出しロールに加える衝撃が落下距離の長さに比例して大きくなり、このような大きな衝撃を加えることにより、下向きとなる嵌入凹部から粉粒体を確実に排出させることが可能となり、粉粒体の定量散布が得られるだけでなく、衝撃付与機構のための駆動原を別途必要としないので、製作コストの削減が図れる。
【0024】
また、繰り出しロールの内部を障害物のない中空室とし、軸線を挟む二箇所の位置で内周面よりに持ち上げ部材を設けた構造とすることにより、落下する衝撃付与塊は繰り出しロールの下部に直接衝撃を加えることができ、大きな衝撃を加えることができると共に、衝撃付与塊の外形を、両側持ち上げ部材の間隔を通過できる範囲で大きくでき、大形化による重量の増大により、繰り出しロールに加える衝撃を大きくすることができる。
【0025】
更に、請求項3の発明によると、カムと衝撃付与アームで繰り出しロールを直接打撃するようにしたので、繰り出しロールに対して衝撃が直接加わることで、繰り出しロールに大きな衝撃を大きくすることができ、これにより、下向きとなる嵌入凹部から粉粒体を確実に排出させることが可能となり、しかも、衝撃付与機構のための駆動原を別途必要としないので、製作コストの削減が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(a)は第1の実施の形態の衝撃付与機構を用いた粉粒体の散布装置を示す斜視図、(b)は同一部切欠き正面図
【図2】(a)は第1の実施の形態の衝撃付与機構を示す繰り出しロールの拡大した一部切欠き正面図、(b)は(a)の矢印b−bでの縦断側面図
【図3】第1の実施の形態の衝撃付与機構を示す作動説明図であり、(a)は繰り出しロールの回転による衝撃付与塊の持ち上げ開始時の縦断側面図、(b)は同じく衝撃付与塊の持ち上げ途中の側図縦断側面図、(c)は同じく持ち上げた衝撃付与塊の落下による衝撃付与時の縦断側面図
【図4】第2の実施の形態の衝撃付与機構を示す斜視図
【図5】(a)は第2の実施の形態の衝撃付与機構を示す正面図、(b)は第2の実施の形態における衝撃付与機構の衝撃付与前の状態を示す(a)の矢印b−bでの縦断側面図、(c)は第2の実施の形態における衝撃付与機構の衝撃付与状態を示す(a)の矢印b−bでの縦断側面図
【図6】先行技術として非特許文献1で例示した粉体取出し技術を示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0028】
図1(a)と(b)のように、粉粒体の散布装置1は、粉粒体を収納するホッパー2と、前記ホッパー2の下部排出口3に連ねて設けたシュート4内に、前記排出口3を閉じる摺接状態で回転自在に軸止され、その外周面に粉粒体の嵌入凹部5が設けられた繰り出しロール6と、前記繰り出しロール6を回転駆動する駆動モータ7とからなり、前記繰り出しロール6の内部もしくは外部の位置に、この繰り出しロール6の回転によって繰り出しロール6に直接衝撃を付与する衝撃付与機構が設けられている。
【0029】
図1乃至図3は、上記衝撃付与機構Aの第1の実施の形態を示し、繰り出しロール6は、内部が障害物のない中空室8に形成され、この中空室8内に鋼球等の衝撃付与塊9を移動自在に収納し、前記繰り出しロール6の中空室8内に、繰り出しロール6の回転時に下位の位置で衝撃付与塊9を持ち上げて上部の位置で落下させる持ち上げ部材10を設けた構造になっている。
【0030】
上記繰り出しロール6は、両端が閉鎖され、排出口3を閉じることができる外径と長さを有する円筒状に形成され、両端に突設した軸11をシュート4の対向板4aで支持することにより回転自在となり、一方対向板4aの外面に固定した駆動モータ7を軸11と結合することにより、回転が与えられるようになっている。
【0031】
この繰り出しロール6の外周面には、嵌入凹部5が軸方向に複数が並び、それが周方向に一定間隔の配置で複数組設けられ、繰り出しロール6を回転させると、上部に回動した嵌入凹部5にホッパー2内の粉粒体が嵌入し、この嵌入凹部5が下部に回動して下向きとなると粉粒体をシュート4の下部に向けて落下排出するようになっており、図示省略したが、シュート4の下部には、繰り出しロール6の回転方向の前部と後部の位置に、繰り出しロール6に摺接するようにしたブラシ構造のような粉粒体漏れ防止部材が設けられ、嵌入凹部5に嵌入した粉粒体の定量化を図るようにしている。
【0032】
上記繰り出しロール6の内周面は、図2(b)で示すように、周方向に並ぶ嵌入凹部5に沿って、隣接する嵌入凹部5間の部分が凹部5aとなる凹凸面になっている。
【0033】
図1の場合、繰り出しロール6は長い一本物の構造を示したが、図2(a)のように、嵌入凹部5の軸方向に並ぶ数にあわせて軸方向に複数に分割し、これを同軸心状となるよう一体に結合した構造とすることもできる。
【0034】
また、図示省略したが、上記シュート4の下部で繰り出しロール6の直下には、軸方向に並ぶ嵌入凹部5と等しい数の散布管が配置され、各嵌入凹部5から排出された粉粒体を分配して散布するようになっている。
【0035】
上記繰り出しロール6内に組み込む衝撃付与塊9は、金属等の強度と重量のある硬質材料を用い、繰り出しロール6の中空室8内で移動が自由となる直径の球状や多角形、軸状等に形成され、例えば、球状の衝撃付与塊9を採用した場合、軸方向に並ぶ嵌入凹部5と等しい数が組み込まれている。従って、繰り出しロール6の中空室8は、軸方向に並ぶ嵌入凹部5間の位置で区切り、区切った各部屋ごとに衝撃付与塊9を組み込むような構造を採用するようにしてもよい。
【0036】
上記持ち上げ部材10は、繰り出しロール6の中空室8内で軸方向の全長に沿う軸状となり、前記繰り出しロール6内の内周寄りで軸心を挟む二箇所の位置に架設され、繰り出しロール6が回転するとき、一本の持ち上げ部材10と繰り出しロール6の内周面とで下部から上部に向けて衝撃付与塊9を持ち上げ、上部に回動すれば衝撃付与塊9を自重で落下させるようになっており、二本の持ち上げ部材10を設けることにより、繰り出しロール6の略180°の回転ごとに衝撃付与塊9を落下させることができる。
【0037】
また、繰り出しロール6の中空室8内を障害物のないように形成し、内周寄りで軸心を挟む二箇所の位置に軸状の持ち上げ部材10を設けた構造にすると、衝撃付与塊9の外形を、両持ち上げ部材10の対向間隔を通過できる範囲で大形化でき、これにより、衝撃付与塊9の重量を重くし、繰り出しロール6の下部に与える衝撃力を大きくすることができる。
【0038】
なお、図2(a)で示したように、繰り出しロール6が軸方向に分割された構造の場合、上記持ち上げ部材10は、繰り出しロール6の結合軸を兼ねることになる。
【0039】
第1の実施の形態の衝撃付与機構Aを用いた散布装置1は、上記のような構成であり、走行用車両に取付けたホッパー2内に粉状や粒状となる肥料や薬剤等の粉粒体を投入し、車両の前進走行と共にモータ7で繰り出しロール6を所定の散布量に合わせて回転させる。
【0040】
繰り出しロール6は、その回転時に、上部に回動した嵌入凹部5内にホッパー2内の粉粒体が嵌入し、この嵌入凹部5が下方に回動すれば嵌入凹部5内の粉粒体が排出口3の下部に落下排出され、散布管を介して地面に散布される。
【0041】
上記のような繰り出しロール6の回転時に、この繰り出しロール6の内部中空室8内に設けた一本の持ち上げ部材10は、下部から上部に向けて回動していく工程で、図3(a)と(b)のように、内部中空室8の底部に位置する衝撃付与塊9を、繰り出しロール6の内周面とで保持して持ち上げ、繰り出しロール6の内周面に形成した凹部5aと軸状の持ち上げ部材10は、衝撃付与塊9を安定よく持ち上げることになり、繰り出しロール6が略180°回転して衝撃付与塊9が上部に回動すれば、図3(c)のように衝撃付与塊9は自重で落下し、繰り出しロール6の回転によってこのような衝撃付与塊9の持ち上げと落下を繰り返すことになる。
【0042】
上記のように、上部に持ち上げられた衝撃付与塊9が自重で落下すると、両側の持ち上げ部材10間を通過して繰り出しロール6内の下部に直接衝突することになり、この衝突によって繰り出しロール6に直接下向きの衝撃を加えることができる。
【0043】
図3(a)乃至(c)に示したように、衝撃付与塊9は、繰り出しロール6の略180°の回転により上部に持ち上げられた位置から落下するので、落下距離を長く確保でき、落下距離の長さに比例して繰り出しロール6に与える衝撃力が大きくなり、また、衝撃付与塊9の大形化により重量を重くすることで繰り出しロール6に大きな衝撃を加えることができ、このような大きな衝撃により、下方に回動した嵌入凹部5内の粉粒体が水分率の高いものであっても、これを嵌入凹部5の内周面から強制的に剥離させることができ、これにより、下向きとなる嵌入凹部5内の粉粒体全量を確実に排出させることが可能となり、粉粒体の定量散布が得られることになる。
【0044】
なお、繰り出しロール6に衝撃付与塊9で打撃を加えるとその振動がホッパー2に伝わり、ホッパー2の振動により、ホッパー内での粉粒体の固まり(ブリッジ現象)の発生を防ぐことができる。
【0045】
次に、図4と図5は、衝撃付与機構Aの第2の実施の形態を示している。なお、上記第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付すことにより説明に代える。
【0046】
この第2の実施の形態の衝撃付与機構Aは、繰り出しロール6の軸11に固定され、この繰り出しロール6と一体に回転するカム12と、前記カム12の外周近傍に配置され、カム12の外周面に対して接近及び離反する方向の揺動が自在となるカム用アーム13と、このカム用アーム13と一体に揺動し、繰り出しロール6の外周面を打撃する衝撃付与アーム14と、前記カム用アーム13にカム12へ常時当接する方向の弾性を付勢するスプリング15とで形成されている。
【0047】
上記カム12は、外形が大径部12aと小径部12bが交互になる十字形に形成され、繰り出しロール6の軸11に固定することにより繰り出しロール6と一体に回転するようになっており、また、カム用アーム13は、先端の転子16がカム12の外形面に当接するよう後端のボス17を図1で示したシュート4の一方対向板4aに固定した支点軸18に枢止し、カム12に対してこの支点軸18を支点に接近又は離反する揺動自在となり、上記スプリング15でカム12に常時当接する方向の弾性が付勢されている。
【0048】
上記衝撃付与アーム14は、上記ボス17に設けられ、このボス17から繰り出しロール6の端部で外周面の上部に臨むように突出し、カム用アーム13の先端の転子16がカム12の大径部12aで持ち上げられたとき繰り出しロール6から離反し、また、カム用アーム13の先端の転子16がカム12の小径部12bに落ち込んだとき繰り出しロール6の外周面を直接打撃するようになっている。
【0049】
第2の実施の形態の衝撃付与機構Aを用いた散布装置は、上記のような構成であり、図1と同じく、走行用車両に取付けたホッパー内に粉状や粒状となる肥料や薬剤等の粉粒体を投入し、車両の前進走行と共にモータ7で繰り出しロール6を所定の散布量に合わせて回転させる。
【0050】
上記繰り出しロール6と一体にカム12が回転すると、カム用アーム13は、図5(a)のように、先端の転子16が大径部12aで持ち上げられた位相と、図5(b)のように、先端の転子16が小径部12bに落ち込んだ位相を交互に繰り返すことになる。
【0051】
上記カム用アーム13と一体に揺動する衝撃付与アーム14は、図5(a)で示したように、カム用アーム13が大径部12aで持ち上げられたとき、繰り出しロール6から離反した位相となり、また、図5(a)で示したように、カム用アーム13が小径部12aに落ち込むと、繰り出しロール6に向けて接近するよう揺動して繰り出しロール6の端部外周面を直接打撃し、このように、カム12の1回転で衝撃付与アーム14は繰り出しロール6に4回の打撃を与え、この打撃によって繰り出しロール6に直接衝撃を与えることになる。
【0052】
上記のように、繰り出しロール6に直接衝撃を与えることにより、粉粒体が水分率や付着性の高いものであっても、嵌入凹部5の内周面から粉粒体を強制的に剥離させることができ、これにより、下向きとなる嵌入凹部5内の粉粒体全量を確実に排出させることが可能となり、粉粒体の定量散布が得られることになる。
【0053】
なお、繰り出しロール6に打撃を加えるとその振動がホッパーに伝わり、ホッパーの振動により、粉粒体のホッパー内での固まり(ブリッジ現象)の発生を防ぐことができる。
【0054】
このように、何れの実施の形態の衝撃付与機構Aにおいても、繰り出しロール6の回転を用いてこの繰り出しロール6に直接衝撃を与えることができ、衝撃付与機構Aのための駆動原を別途必要としないので、製作コストの削減が図れることになる。
【符号の説明】
【0055】
1 散布装置
2 ホッパー
3 下部排出口
4 シュート
5 嵌入凹部
6 繰り出しロール
7 駆動モータ
8 中空室
9 衝撃付与塊
10 持ち上げ部材
11 軸
12 カム
13 カム用アーム
14 衝撃付与アーム
15 スプリング
16 転子
17 ボス
18 支点軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉粒体を収納するホッパーと、前記ホッパーの下部に設けられた排出口にこの排出口を閉じる摺接状態で回転自在に軸止され、その外周面に粉粒体の嵌入凹部が設けられた繰り出しロールと、前記繰り出しロールを回転駆動する駆動源とからなる粉粒体の散布装置において、
前記繰り出しロールに、この繰り出しロールの回転によって繰り出しロールに衝撃を与える衝撃付与機構を設け、繰り出しロールの回転時にこの繰り出しロールに直接打撃を与えるようにしたことを特徴とする粉粒体の散布装置。
【請求項2】
上記衝撃付与機構が、繰り出しロールの内部を障害物のない中空室に形成し、この中空室内に衝撃付与塊を移動自在に収納し、前記繰り出しロールの中空室内で軸心を挟む内周面寄りの二箇所の位置に、繰り出しロールの回転時に下位の位置で衝撃付与塊を繰り出しロールの回転軸心よりも上部の位置に持ち上げて落下させる持ち上げ部材を設けて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の粉粒体の散布装置。
【請求項3】
上記衝撃付与機構が、繰り出しロールの軸に固定され、この繰り出しロールと一体に回転するカムと、前記カムの近傍に配置され、このカムの回転により繰り出しロールの外周面に対して接近離反動し、繰り出しロールへの接近動時に繰り出しロールの外周面を直接打撃する衝撃付与アームとで形成されていることを特徴とする請求項1に記載の粉粒体の散布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−31388(P2013−31388A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168413(P2011−168413)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(591137156)株式会社ジョーニシ (4)
【Fターム(参考)】