説明

粉粒体散布装置

【課題】拡散ガイドケースにおける粉粒体詰まりを回避しやすく、かつ詰まり回避の手段に起因する問題発生も回避しやすい粉粒体散布装置を提供する。
【解決手段】回転体50を、粉粒体を受け止める回転板51と、回転板51から上方向きに突出して粉粒体を跳ね飛ばす羽根体52とを備えて構成してある。拡散ガイドケース58を、天井壁部58Aと、回転体50に対して散布口58Cが位置する側とは反対側に回転体50の外周縁に沿って位置して粉粒体の飛散を規制する縦壁部58Bと、散布口58Cと縦壁部58Bとの間に位置して粉粒体を拡散案内する案内横壁部60とを備えて構成し、拡散ガイドケース58が下向きに開口するようにしてある。縦壁部58B及び案内横壁部60の下端58Bt,60tを、回転体50の下端50tより低くしてある

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒体が拡散ガイドケースの内部に供給され、供給された粉粒体が前記拡散ガイドケースの内部で縦軸芯まわりに回転駆動される回転体によって跳ね飛ばされて、前記拡散ガイドケースによって案内されて前記拡散ガイドケースの散布口から飛散されるように構成した粉粒体散布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記した粉粒体散布装置として、従来、例えば特許文献1に記載されたものがあった。特許文献1に記載されたものでは、拡散ガイドケースとしてのケーシング、回転体としての遠心ブロワを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭57−9230号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の技術を採用することによって得た粉粒体散布装置の場合、回転体の下方に拡散ガイドケースの底壁部が存在することになり、次の如き問題があった。
粉粒体は回転体の作用範囲に供給されるのであるが、供給された粉粒体は、跳ね返りなどによって回転体の作用範囲から外れることがある。すると、回転体の作用範囲から外れた粉粒体は拡散ガイドケースの内部に留まったままになり、粉粒体詰まりが発生しやすくなっていた。また、粉粒体詰まりが発生すれば、回転体の動きが悪くなるなどによって散布不良が発生しやすくなっていた。
【0005】
本発明の目的は、拡散ガイドケースにおける粉粒体詰まりを回避しやすく、かつ詰まり回避の手段に起因する問題発生も回避しやすい粉粒体散布装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本第1発明は、粉粒体が拡散ガイドケースの内部に供給され、供給された粉粒体が前記拡散ガイドケースの内部で縦軸芯まわりに回転駆動される回転体によって跳ね飛ばされて、前記拡散ガイドケースによって案内されて前記拡散ガイドケースの散布口から飛散されるように構成した粉粒体散布装置において、
前記回転体を、前記縦軸芯まわりに回転駆動されながら粉粒体を受け止める回転板と、前記回転板から上方向きに一体回転自在に突出して粉粒体を跳ね飛ばす羽根体とを備えて構成し、
前記拡散ガイドケースを、前記回転体の上方を覆う天井壁部と、前記回転体に対して前記散布口が位置する側とは反対側に前記回転体の外周縁に沿って位置して粉粒体の飛散を規制する縦壁部と、前記散布口と前記縦壁部との間の前記回転体の両横側に位置して粉粒体を拡散案内する案内横壁部とを備えて構成し、
前記拡散ガイドケースが下向きに開口するように構成し、前記縦壁部及び前記案内横壁部の下端の配置高さを、前記回転体の下端より低い配置高さに設定してある。
【0007】
本第1発明の構成によると、供給された粉粒体は、回転体を構成する回転板によって受け止められて羽根体による跳ね飛ばしを受け、所定方向に跳ね飛ばされた粉粒体は、拡散ガイドケースを構成する案内横壁部によって案内されて散布口から飛散し、回転体から所定方向とは外れた方向に向かって飛ぼうとする粉粒体があると、この粉粒体は、縦壁部によって拡散ガイドケースの外部に飛散しないように規制され、回転体に戻って所定方向に跳ね飛ばされて散布口から飛散するから、拡散ガイドケースが下向きに開口するように構成したものでありながら、粉粒体の散布を所定どおり行なうことができる。そして、回転体からはみ出て回転体による跳ね飛ばしを受けない粉粒体が発生した場合、このはみ出し粉粒体を、回転体から落下させて拡散ガイドケースの下向き開口から拡散ガイドケース外に排出することができる。
縦壁部及び案内横壁部の下端の配置高さを、回転体の下端より低い配置高さに設定してあるから、田面などから水や泥が跳ね上がることがあっても、縦壁部や案内横壁部に当たって拡散ガイドケースの内部に入り込みにくいように縦壁部及び案内横壁部にガード機能を発揮させることができる。また、雨天時や洗浄時において、縦壁部や案内横壁部の外面側を沿って落下した水滴が縦壁部や案内横壁部の下端に到達して縦壁部や案内横壁部の内面側に回り込むことがあっても、回転体の付近まで回り込むことを防止できる。
【0008】
従って、回転体の作用範囲から外れた粉粒体が発生しても、拡散ガイドケースの下向き開口によって自ずと排出させて粉粒体詰まりを回避しやすく、そして、拡散ガイドケースの下向き開口からの泥水や水滴の入り込みを縦壁部や案内横壁部のガード機能によって回避しやすくて、泥水や水滴の入り込みに起因する粉粒体詰まりも回避しやすく、粉粒体詰まりによる散布不良が生じにくい粉粒体散布装置を得ることができる。
【0009】
本第2発明は、本第1発明の構成において、前記案内横壁部を、拡散案内方向が変化するように角度変更自在に支持させてある。
【0010】
本第2発明の構成によると、案内横壁部の角度変更を行なうことにより、案内横壁部による拡散案内方向が変化して粉粒体の散布方向を変更できる。
【0011】
従って、性状に変化が無い粉粒体を散布する場合であっても、案内横壁部による拡散案内方向を変化させて散布方向を変化させるとか、性状に変化がある粉粒体を散布する場合であっても、案内横壁部による拡散案内方向を変化させて散布方向を実質的に変化させないなど、散布方向を所望方向に調節することができる。
【0012】
本第3発明は、本第2発明の構成において、前記案内横壁部の粉粒体流動方向上手側端部を、前記縦壁部の外側に前記回転体の半径方向に前記縦壁部と重複する状態で配置してある。
【0013】
本第3発明の構成によると、縦壁部をこれの回転体回転方向での一端から他端に亘って回転体の外周縁に極力接近するように配置しながら、かつ縦壁部をこれの回転体回転方向での両端部が回転体と案内横壁部との間に入り込む簡単な形状に形成しながら、案内横壁部の粉粒体流動方向上手側端部を縦壁部の外面側に極力接近させることができる。
【0014】
従って、縦壁部と回転体の隙間を極力狭くして縦壁部と回転体の間からの粉粒体漏れを発生しにくくできるとともに案内横壁部と縦壁部の隙間を極力狭くして案内横壁部と縦壁部の間からの粉粒体漏れも発生しにくくでき、粉粒体が漏れ出して作物に悪影響を与えるなどのトラブルを回避しやすい。しかも、縦壁部を形状簡単なものにして安価に得ることができる。
【0015】
本第4発明は、本第1〜第3発明のいずれか一つの構成において、前記案内横壁部の粉粒体流動方向での長さを、前記回転体の直径の1.5倍以上に設定してある。
【0016】
本第4発明の構成によると、粉粒体に対して拡散案内作用する案内横壁部の拡散案内域の粉粒体流動方向での長さを長くし、回転体によって跳ね飛ばされた粉粒体が案内横壁部による拡散案内作用を受けずに散布されることが発生しにくいように案内横壁部を極力確実に作用させることができる。
【0017】
従って、回転体によって跳ね飛ばされた粉粒体に案内横壁部による拡散案内を極力確実に受けさせ、粉粒体の散布を所望の散布方向に精度よく向かわせてできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】乗用型田植機の全体側面図である。
【図2】乗用型田植機の全体平面図である。
【図3】粉粒体散布装置の背面図である。
【図4】粉粒体散布装置の縦断側面図である。
【図5】粉粒体散布装置の底面図である。
【図6】散布部の横断平面図である。
【図7】(a)横案内壁部の取り付け角が変更された状態での散布部を示す底面図、(b)拡散ガイドケースを示す背面図である。
【図8】繰出し機構の縦断側面図である。
【図9】繰出し機構の横断平面図である。
【図10】第2実施形態での繰出し部の横断平面図である。
【図11】第3実施形態での繰出し部の横断平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔第1実施形態〕
以下、図面に基づいて、本発明に係る粉粒体散布装置を乗用型田植機に装備した場合について説明する。
図1及び図2に示すように、乗用型田植機は、操向操作自在な左右一対の前輪1及び左右一対の後輪2を備えた走行機体3の前部側に、エンジン4及びミッションケース5を備え、走行機体3のエンジン4より後方にステアリングハンドル6及び運転座席8等を装備した操縦部7を備えて構成され、又、走行機体3の左右両側に予備苗のせ台9が配設されている。走行機体3の後方には、リフトシリンダ10の操作によりリンク機構11を介して昇降操作自在に苗植付装置12が連結され、その苗植付装置12の後方に、除草剤等の薬剤を散布する粉粒体散布装置13が備えられている。苗植付装置12は4条植型式に構成されている。ミッションケース5には、変速レバー16を操作することにより変速操作される静油圧式の無段変速装置(図示せず)が備えられている。
【0020】
図1及び図2に示すように、苗植付装置12は、1個のフィードケース14に連結された機体左右方向に延びる支持フレーム(図示せず)に、2個の伝動ケース15が後向きに片持ち状に連結されている。伝動ケース15の後部の左右両側部に植付アーム18がクランク機構17により上下に揺動自在に支持され、植付アーム18に植付爪22が備えられており、苗植付装置12の下部には接地フロート19が支持されている。
又、苗植付装置12には、苗のせ台20が左右に一定ストロークで往復横送り駆動自在に備えられており、苗のせ台20がストロークエンドに達する毎に、載置された苗を所定量だけ下方に送るベルト式の縦送り装置21が苗のせ台20に備えられている。
【0021】
そして、フィードケース14に伝達される動力が伝動ケース15に伝達されて、植付アーム18が駆動される一方、フィードケース14に伝達される動力により苗のせ台20が往復横送り駆動されて、苗のせ台20の下部から上下に揺動運動する植付アーム18が、その先端部に備えられた植付爪22により1株ずつ苗を取り出して田面に植え付けるのであり、苗のせ台20が往復横送りのストロークエンドに達すると、フィードケース14に伝達される動力により縦送り装置21が駆動されて、苗のせ台20に載置された苗が下方に送られる構成となっている。
【0022】
次に、粉粒体散布装置13について説明する。
図1〜図3に示すように、粉粒体散布装置13は、苗植付け状態において田面から設定距離上方に位置する状態で、2個の伝動ケース15から固定立設した支柱23に支持される構成となっている。そして、図4及び図5に示すように、粉粒体散布装置13は、薬剤を貯留するホッパー形の貯留部24と、その貯留部24の下部に位置して貯留部24から薬剤を繰り出す繰出し機構25と、繰出し機構25から供給経路26を通して落下供給される薬剤を散布する散布部27とを備えて構成されており、貯留部24に貯留された除草剤などの薬剤を苗植付装置12による苗植えが行なわれた箇所に散布する。
【0023】
支柱23は、一対に伝動ケース15,15に亘って取り付けた前後方向視で門形の支持フレーム23aから上方向きに立設されている。
【0024】
繰出し機構25は、支柱23に連結部29Aで脱着自在に連結されたケーシング29に収納される構成となっており、このケーシング29は、合成樹脂材からなり、散布部27に薬剤を落下供給する供給経路26を構成する筒部30が一体形成されている。図5に示すように、ケーシング29は、左右両側の分割ケーシング部分29a,29bを合わせ面同士で接続する左右2つ割り構造となっている。
【0025】
図4、図8、図9に示すように、繰出し機構25は、粉粒体通過用の開口31が形成された金属製の開口形成板32と、粉粒体通過用の開口31を閉塞する閉状態と薬剤通過用の開口31を開放する開状態とにわたりスライド移動自在な金属製のシャッター部材33と、そのシャッター部材33を閉状態と開状態とに切り換えるアクチュエータとしてのソレノイド34とを備えて構成されている。
【0026】
開口形成板32とシャッター部材33とが上下に重なる状態で設けられ、シャッター部材33が開口形成板32に形成された粉粒体通過用の開口31を閉じると閉状態となり、薬剤の落下供給が停止され、シャッター部材33が粉粒体通過用の開口31を開放する位置までスライドすると、粉粒体通過用の開口31が開放されて開状態となり、この開状態では、粉粒体通過用の開口31を通して薬剤が下方の供給経路26に落下供給される構成となっている。
この構成では、粉粒体通過用の開口31の下方側では、シャッター部材33だけが存在しており、シャッター部材33の下方には他の部材が存在しないので、薬剤が詰まり難い構成となっている。
【0027】
開口形成板32には、粉粒体通過用の開口31が形成される水平面部分32aの開口側端部に下方に向けて屈曲する下向き屈曲片32bが形成され、それと反対のソレノイド34側端部には上方に向けて屈曲する上向き屈曲片32cが形成されている。又、水平面部分32aの開口側端部とソレノイド34側端部との中間部における幅方向両側部夫々に、シャッター部材33が下方に離間するのを防止するために、シャッター部材33を上下から囲うように略コ字状に屈曲する保持部32dが形成されている。
【0028】
この開口形成板32は、下向き屈曲片32bがケーシング29の筒部30の内側に形成された係止凹部35に係合して、シャッター部材33がソレノイド34に近接する方向にスライド移動することによって連なって移動することが規制され、且つ、上向き屈曲片32cがケーシング29の筒部30の外側の端縁部36に係合して、シャッター部材33がソレノイド34から離間する方向にスライド移動することによって連なって移動することが規制される構成となっている。
【0029】
シャッター部材33は、帯板状に形成されて、ソレノイド34の操作ロッド37に対して連結ピン38で枢支連結される構成となっており、開口形成板32の下側に接する状態で備えられ、保持部32dによって開口形成板32から上下に離間することを阻止する構成となっている。又、図8に示すように、シャッター部材33の開口遮蔽箇所33Aよりもソレノイド34側に寄った箇所に、開口形成板32とシャッター部材33との間に嵌まり込む薬剤を下方に落下させるために上下方向に貫通する掻き出し孔39が形成されている。
【0030】
図4に示すように、ケーシング29における筒部30の前側箇所には、ソレノイド34を収納するためのソレノイド収納室40が形成されており、反対側箇所には、散布部27を構成する電動モータ41を収納するためのモータ収納室42が形成されている。
ソレノイド収納室40側の筒部30の側壁には、シャッター部材33と開口形成板32とを挿通するためのスリット孔43が形成されている。このスリット孔43の上側には、開口形成板32とシャッター部材33とを水平姿勢で保持するための幅広案内部44が形成されており、この幅広案内部44の上面には、粉粒体通過用の開口31に向かうほど下方に傾斜する傾斜面45が全幅にわたって形成されている。又、スリット孔43の上側における幅方向両側部には、開口形成板32の浮き上がりを防止する両側ガイド部46が形成されている。
【0031】
スリット孔43の下部側には、幅方向両側部にシャッター部材33を受止め支持する下側ガイド部47が形成されるとともに、シャッター部材33を開状態に切り換えたときに、掻き出し孔39の下方から排出される薬剤を供給経路26に案内できるように幅広の排出用空間48が形成されている(図8参照。)。
【0032】
シャッター部材33は、ソレノイド34に内装されるコイルバネ49が座金38aを介して連結ピン38に作用することにより閉位置(粉粒体通過用の開口31を閉じる位置)に移動付勢され、ソレノイド34に通電することによりコイルバネ49の付勢力に抗して引き操作することにより開位置(粉粒体通過用の開口31を開放する位置)に移動操作することができるように構成されている。
【0033】
したがって、繰出し機構25は、ソレノイド34によるシャッター部材33のスライド操作によって開口形成板32の粉粒体通過用の開口31を開き状態と閉じ状態に切り換えることで供給経路26を開き状態と閉じ状態に切り換え、供給経路26を開き状態に切り換えることにより、貯留部24に貯留されている薬剤を、供給経路26に繰出して供給経路26から散布部27に供給し、粉粒体通通過用の開口31を開き状態に維持する時間の設定により、散布部27に単位時間当たりに供給する薬剤の量を設定される。
【0034】
図4、図5、図6に示すように、散布部27は、ケーシング29の後端が位置する箇所で後方向きに開口する散布口58Cを後端側に有する拡散ガイドケース58と、この拡散ガイドケース58の前端側の上方に位置する電動モータ41と、拡散ガイドケース58の前端側の内部に設けた回転体50とを備えて構成されている。
【0035】
回転体50は、回転板51と、この回転板51の上面で成る受止め面51Aの回転板周方向での複数箇所から上方向きに突出された羽根体52とを備えて構成されている。回転板51に一体成形された回転支軸53が、拡散ガイドケース58の天井壁部58Aに設けた貫通孔を通って拡散ガイドケース58の内部に入り込んでいる電動モータ41の出力軸41aに一体回転自在に連結されており、回転体50の回転板51は、出力軸41aの軸芯で成る縦軸芯Yまわりに電動モータ41によって回転方向F(図6参照)に回転駆動され、各羽根体52は、回転板51と一体回転する。
【0036】
拡散ガイドケース58の天井壁部58Aに供給経路26の出口26aが開口しており、回転体50は、繰出し機構25によって供給経路26に繰出され、供給経路26から繰出しケース58の内部に落下供給される薬剤を回転板51の受止め面51Aにおける羽根無し領域Qによって受け止め、受け止めた薬剤を、回転板51の回転によって受止め面51Aの羽根体52が存在する領域に移動させて羽根体52によって拡散ガイドケース58の内部に跳ね飛ばす。
【0037】
回転板51は、中央部が下向きに突出する形状に形成されていて、受止め面51Aが縦軸芯Yに至るほど下方に位置する中凹み状の傾斜面になっており、回転体51は、供給された薬剤を周方向に均す機能を発揮する。
【0038】
拡散ガイドケース58は、回転体50の上方を覆うように形成した状態でケーシング29に一体形成された板状の合成樹脂製の天井壁部58Aと、回転体50に対して散布口58Cが位置する側とは反対側に位置してケーシング29に一体形成した縦壁部58Bと、回転体50の両横側に分かれて位置する左右一対の案内横壁部60,60とを備えて構成され、回転体50の下方の全域又はほぼ全域に亘って下向きに開口する下向き開口58Dを備えている。天井壁部58Aと縦壁部58Bとは一体形成されている。なお、天井壁部58Aと縦壁部58Bとがケーシング29とを別部材で構成してケーシング29に取り付ける構成を採用してもよい。縦壁部58Bの下端58Bt及び案内横壁部60の下端60tが回転体50の下端50tより低い配置高さに位置するように、縦壁部58B及び案内横壁部60の上下高さを設定してある。天井壁部58Aの内面から回転体50の下端50tまでの距離と、回転体50の下端50tから縦壁部58B及び案内横壁部60の下端58Bt,60tまでの距離とを同じ又はほぼ同じに設定するか、回転体50の下端50tから縦壁部58B及び案内横壁部60の下端58Bt,60tまでの距離を天井壁部58Aの内面から回転体50の下端50tまでの距離より大に設定すると、縦壁部58B及び案内横壁部60の外面側を沿って下降した水滴が縦壁部58Bや案内横壁部60の下端58Bt,60tに達して縦壁部58Bや案内横壁部60の内面側に回り込んでも、回転体50が位置する部位まで達せず、かつ後輪2や苗植付装置12から跳ね上がった泥土が縦壁部58Bや案内横壁部60に当たり、縦壁部58B及び案内横壁部60のガード機能によって回転体50に届きにくい。
【0039】
縦壁部58Bは、天井壁部58Aの前端部から下向きに突出する状態で天井壁部58Aに一体形成された合成樹脂材によって構成されている。縦壁部58Bは、2つの分割ケーシング部分29a,29bに一体形成された2つの分割縦壁部分を備えて構成してある。縦壁部58Bの内周面58Bsは、回転体50の外周縁に回転体50のほぼ半周分にわたって沿う円弧面に形成されており、縦壁部58Bは、回転体50によって散布口58Cが位置する方向とは反対方向(前向き)の跳ね飛ばしを受けた薬剤を内周面58Bsによって受け止めてその薬剤の飛散を規制し、内周面58Bsの円弧形状によって薬剤を回転体50の中心に向けて跳ね返す。縦壁部58Bと回転体50との隙間は、薬剤漏れが発生しにくいよう狭い隙間に設定されている。
【0040】
左右一対の案内横壁部60,60のそれぞれは、回転体50によって後方側に跳ね飛ばされた薬剤を内面のうちの支軸61の軸芯付近から後端に至る拡散案内領域60Aで跳ね返すことにより、回転体50からの薬剤を散布口58Cから左右方向に拡散して飛散するように案内する。
【0041】
したがって、散布部27は、電動モータ41によって回転体50を縦軸芯Yまわりに回転駆動し、繰出し機構25によって貯留部24から繰出されて供給経路26から拡散ガイドケース58の内部に供給された薬剤を回転体50の回転板51によって受け止め、回転板51によって受け止めた薬剤を回転板51と一体回転する羽根体52によって回転体50の後方側に向けて跳ね飛ばし、跳ね飛ばされた薬剤を案内横壁部60の拡散案内領域60Aの跳ね返しによる拡散案内によって散布口58Cから左右方向に拡散させて飛散させることにより、苗植付装置12による苗植えが行なわれた箇所にこの苗植え箇所の全幅にわたって分散させて薬剤散布を行なう。
【0042】
散布部27は、回転体50からこぼれ落ちた薬剤を、拡散ガイドケース58の下向き開口58Dから排出して苗植付装置12による苗植えが行なわれた箇所に落下させながら、かつ後輪2や苗植付装置12によって跳ね上げられた泥水が拡散ガイドケース58内の回転体50が位置する部位に入り込むことを縦壁部58B及び案内横壁部60のガード機能によって防止しながら薬剤散布を行なう。
【0043】
図5、図6に示すように、左右一対の案内横壁部60,60は、これの薬剤流動方向上手側端部60aに装着された支軸61を介して天井壁部58Aに支持されている。支軸61は、案内横壁部60の薬剤流動方向上手側端部60aを天井壁部58Aに対し、回転体50の回転軸芯である縦軸芯Yと平行な軸芯Pまわりに回転自在及び固定自在に連結している。
【0044】
図7(a)に示すように、各案内横壁部60は、支軸61による天井壁部58Aに対する締め付け固定を解除して支軸61の軸芯Pまわりに揺動操作され、揺動操作された位置で天井壁部58Aに支軸61によって締め付け固定されることにより、天井壁部58Aに対する取付け角が変更された状態となり、回転体50からの薬剤を横方向に拡散するように案内する方向を変更する。図7(a),(b)に示すように、案内横壁部60は、案内横壁部60の上端部から拡散ガイドケース58の内側に向かって延出するシール板62を備えており、案内横壁部60が天井壁部58Aから横外側に出る状態に取付け角変更された場合において、案内横壁部60と天井壁部58Aの隙間を薬剤漏れが発生しないようにシール板62によって閉じる。
【0045】
したがって、左右一対の案内横壁部60,60の天井壁部58Aに対する取り付け角を同じ向きや異なる向きに、同じ角度や異なる角度で変更することにより、回転体50からの薬剤が各案内横壁部60の拡散案内領域60Aによって跳ね飛ばされる方向を変更でき、散布部27によって薬剤が散布される範囲の苗植付装置横方向で大きさを増減調節したり、散布部27によって薬剤が散布される範囲の苗植付装置12に対する横方向での位置を変更したりできる。除草剤を苗植え付けと同時に散布する場合、未植苗や田面の未植領域に散布されると稲が枯れてしまうことがあり、未植苗や未植領域に散布されないように調節できる。
【0046】
図6に示すように、案内横壁部60の粉粒体流動方向上手側での端面60bが、案内横壁部60の取付け角変更の軸芯Pを中心とした外側に凸の円弧面に形成され、縦壁部58Bの案内横壁部60の端面60bに対向する端面58Bfが、案内横壁部60の取付け角変更の軸芯Pを中心とした凹入形の円弧面に形成されている。
【0047】
つまり、案内横壁部60の端面60bと縦壁部58Bの端面58Bfとが近づき合う状態を維持しながら案内横壁部60の取付け角変更ができ、縦壁部58Bと案内横壁部60との間の隙間が、案内横壁部60の取付け角変更にかかわらず薬剤漏れが発生しにくい狭い隙間になる。
【0048】
〔第2実施形態〕
図10は、第2実施形態での散布部27を示す横断平面図である。第2実施形態での散布部27では、案内横壁部60の拡散案内領域60Aでの薬剤流動方向での長さL1が、回転体50の直径L2の1.5倍以上の長さに設定されており、案内横壁部60による薬剤の拡散方向の方向付けが精度よく行なわれる。
【0049】
〔第3実施形態〕
図11は、第3実施形態での散布部27を示す横断平面図である。第3実施形態での散布部27では、案内横壁部60の薬剤流動方向上手側端部60aが、縦壁部58Bの外側に回転体50の半径方向に縦壁部50Bと重複する状態で配置されている。
【0050】
この構成によると、縦壁部58Bを回転体回転方向での一端から他端に亘って回転体50の外周縁に極力接近させて、縦壁部58Bと回転体50の隙間からの薬剤漏れを発生しにくくしても、かつ縦壁部50Bを回転体回転方向での両端部が回転体50と案内横壁部60との間に入り込む簡単な形状に形成しても、案内横壁部60の薬剤流動方向上手側端部60aを縦壁部58Bの外面側に極力接近させて、案内横壁部60と縦壁部58Bの間からの薬剤漏れを発生しにくくできる。
【0051】
〔別実施形態〕
(1)上記した実施形態では、縦壁部58Bの下端58Btと案内横壁部60の下端60tとが同じ配置高さに位置する拡散ガイドケース構造を示したが、縦壁部58Bの下端58Btが案内横壁部60の下端60tよりも低い配置高さに位置する拡散ガイドケース構造や、案内横壁部60の下端60tが縦壁部58Bの下端58Btよりも低い配置高さに位置する拡散ガイドケース構造を採用して実施してもよい。
【0052】
(2)上記した実施形態では、回転体50の両横側に備えられる左右の案内横壁部60の薬剤流動方向での長さが略同じ長さに設定される構成としたが、この構成に替え、左右の案内横壁部60のうち縦壁部58Bに対して回転体回転方向上手側に備えられる案内横壁部60の薬剤流動方向での長さを他方の案内横壁部60の薬剤流動方向での長さより長く設定する構成を採用してもよい。また、粉粒体散布装置13を苗植付装置12の横方向での中心に対して横一側方に偏倚させて設置する場合、その偏倚方向や回転体50の回転方向に対応させて左右一対の案内横壁部60,60の薬剤流動方向での長さを相違させる構成を採用してもよい。すると、回転体50の回転方向や粉粒体散布装置13の苗植付装置12に対する偏倚にかかわらず、薬剤散布量の左右方向での均一化をより精度よく達成できる。
【0053】
(3)上記した実施形態では、横案内壁部60を揺動式にした例を示したが、横案内壁部60を固定式にしてもよい。横案内壁部60を固定式にする場合、横案内壁部60を縦壁部58Bと連続したものに構成してもよい。この場合、横案内壁部60をケーシング29に一体形成しても、ケーシング29に別部材として取付けてもよい。
【0054】
(4)上記した実施形態では、回転板51が平面視で一定の外径の円形に形成されているが、回転板51の形状を、周方向に沿って回転板の外径が順次異なるように形成するものでもよい。このように構成することで、薬剤が外方に放出されるときの下方に落下するタイミングを周方向に異ならせることができ、薬剤を走行機体3の前後方向に対しても極力均等にさせる状態で散布させることが可能となる。
又、散布面積を異ならせるために、圃場条件が異なる毎に、回転板51の外形が異なるものを用いるようにしてもよい。
【0055】
(5)上記した実施形態では、複数の羽根体52が夫々回転体50の半径方向に沿う状態で備えられる構成としたが、薬剤散布方向や散布面積を異ならせるために、複数の羽根体52の形状を異ならせる構成としてもよい。例えば、複数の羽根体52の取り付け姿勢を回転体50の半径方向に対して異なる傾斜角で回転方向下手側に傾斜させる構成としてもよい。又、複数の羽根体52の回転体半径方向での長さを夫々異ならせるようにしてもよい。
【0056】
(6)上記した実施形態では、受止め面51Aが全体にわたって回転軸芯側ほど下方に位置する中凹み状の傾斜面に形成されているものを示したが、受止め面51Aが全体にわたって平坦面に形成されるものでもよく、又、受止め面51Aにおける羽根体52が形成される領域が中凹み状の傾斜面に形成され、羽根無し領域Qが平坦面に形成されるものや、受止め面51Aにおける複数の羽根体52が形成される領域が平坦面に形成され、羽根無し領域Qが中凹み状の傾斜面に形成されるものでもよい。
【0057】
(7)上記した実施形態では、複数の羽根体52が同一形状であり6個備える構成としたが、羽根体52の形状や数量は異なるものであってもよく、例えば、羽根体52の形状を四角形や三角形等の形状としたり、羽根体52の数量を5個以下、又は7個以上にしてもよい。
【0058】
(8)上記した実施形態では、電動モータ41が回転体50の上方に位置する状態で備えられた例を示したが、縦壁部58Bから回転体50の下方に延出するアーム形状の支持体を備え、電動モータ41が回転体50の下方に位置して支持体に支持される構成を採用して実施してもよい。
【0059】
(9)上記した実施形態では、除草剤などの薬剤を散布するよう構成した例を示したが、肥料など各種の粉粒体を散布するよう構成して実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、作業機に装備される粉粒体散布装置の他、作業者の背に担がれ、作業者の歩行によって作業箇所を移送されながら散布作業するよう携帯型に構成された粉粒体散布装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0061】
50 回転体
50t 回転体の下端
51 回転板
52 羽根体
58 拡散ガイドケース
58A 天井壁部
58B 縦壁部
58Bt 縦壁部の下端
58C 散布口
60 案内横壁部
60a 案内横壁部の粉粒体流動方向上手側端部
60t 案内横壁部の下端
L1 案内横壁部の粉粒体流動方向での長さ
L2 回転体の直径
Y 縦軸芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉粒体が拡散ガイドケースの内部に供給され、供給された粉粒体が前記拡散ガイドケースの内部で縦軸芯まわりに回転駆動される回転体によって跳ね飛ばされて、前記拡散ガイドケースによって案内されて前記拡散ガイドケースの散布口から飛散されるように構成した粉粒体散布装置であって、
前記回転体を、前記縦軸芯まわりに回転駆動されながら粉粒体を受け止める回転板と、前記回転板から上方向きに一体回転自在に突出して粉粒体を跳ね飛ばす羽根体とを備えて構成し、
前記拡散ガイドケースを、前記回転体の上方を覆う天井壁部と、前記回転体に対して前記散布口が位置する側とは反対側に前記回転体の外周縁に沿って位置して粉粒体の飛散を規制する縦壁部と、前記散布口と前記縦壁部との間の前記回転体の両横側に位置して粉粒体を拡散案内する案内横壁部とを備えて構成し、
前記拡散ガイドケースが下向きに開口するように構成し、前記縦壁部及び前記案内横壁部の下端の配置高さを、前記回転体の下端より低い配置高さに設定してある粉粒体散布装置。
【請求項2】
前記案内横壁部を、拡散案内方向が変化するように角度変更自在に支持させてある請求項1記載の粉粒体散布装置。
【請求項3】
前記案内横壁部の粉粒体流動方向上手側端部を、前記縦壁部の外側に前記回転体の半径方向に前記縦壁部と重複する状態で配置してある請求項2記載の粉粒体散布装置。
【請求項4】
前記案内横壁部の粉粒体流動方向での長さを、前記回転体の直径の1.5倍以上に設定してある請求項1〜3のいずれか一項に記載の粉粒体散布装置。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−152140(P2012−152140A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14371(P2011−14371)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】