説明

粒状チョコレート菓子の製造方法

【課題】センター材が小さく、重量が軽くても、センター材を十分に感じることが出来、仕上がりも綺麗で不良品の発生も防止することが出来る粒状のチョコレート菓子及びその製造方法、該チョコレート菓子の製造に適した被覆センター材を提供すること。
【解決手段】軽量のセンター材の周囲をチョコレート生地が覆う粒状チョコレート菓子の製造方法において、前記センター材を焼成菓子又はパフスナックの粉砕品で被覆する工程、得られた被覆センター材をさらにチョコレート生地で被覆する工程を含み、前記粉砕品の平均粒径が700μm未満であり、かつ、前記センター材がチョコレート付着性の異なる2種類以上の表面を有するものである、粒状チョコレート菓子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量のセンター材の周囲をチョコレート生地が覆う粒状チョコレート菓子及びその製造方法、チョコレート被覆に適した被覆センター材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、チョコレートとチョコレート以外の菓子を組み合わせた菓子の一製法として、アーモンドやピーナツ、焼き菓子等の具材をセンター材として、回転釜(レボルビングパン)を回転させながら液状チョコレートを滴下、若しくはシャワー状に添加していき、センター材となる具材に均一にコーティングさせることにより粒状のチョコレート菓子を製造するパンワーキング製法が知られている。
【0003】
このパンワーキングによる粒状のチョコレート菓子を製造するにあたっては、センター材となる具材が小さく、重量が軽いものである場合、単にチョコレートをコーティングさせていくとセンター材同士が結合(以下アベックと略記する)してしまい、不良品が多発してしまう為、従来は比較的大きく、重い具材をセンター材として使用していた。
【0004】
この問題点を解決する方法として、粉状のチョコレート類(以下フレークと略記する)を被覆(以下プレコーティングと略記する)し、後に液状のチョコレート類をコーティングすることにより解決させる発明が開示されている(特許文献1)。
【0005】
この方法によると、比較的小型軽量の具材をセンター材として用いた場合においても、製造途中でアベックを防止させ、不良品の発生を防止することが出来る。
【0006】
しかしこの方法によると、プレコーティングの際に使用する原料(以下プレコーティング材と略記する)としてコンチング工程を経る前のリファイナをかけた直後の原料を使用した場合には、チョコレートの製造過程で雑味を除去する極めて重要な工程であるコンチング処理がされていない原料を使用することになる為、使用するフレーク量を多くしていくと、アベックの防止には効果がある反面、味の面で雑味が残ってしまう問題が発生する。
【0007】
さらに、最終製品として全面に綺麗にチョコレートをコーティングさせる場合、それ相当のフレーク量、チョコレート量が必要になる為、例えば、焼成菓子をセンター材にした場合には、最終製品におけるチョコレート類の割合が比較的多くなる結果、チョコレート感が強くなり、センター材の食感、味を十分に発揮することが出来ない問題が生じる。
【0008】
同様に、一旦チョコレートとして固めた後破砕したものをプレコーティング材として使用した場合においても、全面に綺麗にチョコレートをコーティングさせる場合にはプレコーティング、その後のコーティングに使用するチョコレート量が多くなるため、最終製品におけるチョコレートの割合が比較的多くなり、センター材の食感、味を十分に発揮することが出来ない問題が生じる。
【0009】
従って、特許文献1の方法においては、センター材の食感、味とチョコレート感のバランスを調整しながらも、最終製品として全体に綺麗にチョコレートがコーティングされている粒状のチョコレート菓子を製造することが出来なかった。
【特許文献1】特開2006−109791号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明はセンター材が小さく、重量が軽くても、センター材を十分に感じることが出来、仕上がりも綺麗で不良品の発生も防止することが出来る粒状のチョコレート菓子及びその製造方法、該チョコレート菓子の製造に適した被覆センター材を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明者は誠意努力した結果、プレコーティング材として、焼成菓子又はパフスナックの粉砕品が特定の粒度である粉状原料を使用してセンター材を被覆することによって、センター材が小さく重量が軽くても、センター材を十分に感じることが出来、仕上がりも綺麗で不良品の発生も防止することが出来る粒状のチョコレート菓子が製造できることを見出し、本発明に至った。
【0012】
すなわち、本発明は、以下のチョコレート菓子及びその製造方法、該チョコレート菓子の製造に適した被覆センター材を提供するものである。
項1. 軽量のセンター材の周囲をチョコレート生地が覆う粒状チョコレート菓子の製造方法において、前記センター材を焼成菓子又はパフスナックの粉砕品で被覆する工程、得られた被覆センター材をさらにチョコレート生地で被覆する工程を含み、前記粉砕品の平均粒径が700μm未満であり、かつ、前記センター材がチョコレート付着性の異なる2種類以上の表面を有するものである、粒状チョコレート菓子の製造方法。
項2. センター材が焼成菓子又はパフスナックであることを特徴とする項1に記載のチョコレート菓子の製造方法。
項3. センター材の1個あたりの平均重量が0.01g〜1.0gの範囲であることを特徴とする項1または2に記載のチョコレート菓子の製造方法。
項4. センター材の平均粒度が0.05mm〜20mmの範囲であることを特徴とする項1〜3のいずれかに記載のチョコレート菓子の製造方法。
項5. 焼成菓子又はパフスナックの粉砕品を被覆する方法として、焼成菓子又はパフスナックと油脂を含む被覆原料を作成し、その被覆原料中における総油脂重量が7〜45重量%の範囲であることを特徴とする項1〜4のいずれかに記載のチョコレート菓子の製造方法。
項6. 前記センター材を焼成菓子又はパフスナックの粉砕品で被覆する工程が、前記粉砕品を油脂原料でコーティングしながら被覆して油脂被覆粉砕品を得、この油脂被覆粉砕品を前記センター材に作用させて被覆することで実施される工程であることを特徴とする項1〜5のいずれかに記載のチョコレート菓子の製造方法。
項7. 前記粉砕品の平均粒径が50〜300μmの範囲にある、項1〜6のいずれかに記載のチョコレート菓子の製造方法。
項8. 前記センター材が、破断面を有し、かつ、前記粉砕品が前記センター材の粉砕品である項1〜7のいずれかに記載のチョコレート菓子の製造方法。
項9. チョコレート付着性の異なる2種類以上の表面を有する軽量のセンター材の周囲を焼成菓子又はパフスナックの粉砕品と油脂を含む被覆層で被覆してなり、かつ、以下の条件を満たす被覆センター材:
(1)チョコレート被覆性が均一な被覆層でセンター材が完全に覆われている;
(2)被覆層中の前記粉砕品の平均粒径が700μm未満である
(3)センター材の平均粒度が0.05mm〜20mmの範囲である
(4)センター材の1個あたりの平均重量が0.01g〜1.0gの範囲である
(5)被覆層中における総油脂重量が7〜45重量%の範囲である
(6)被覆層の割合が10〜45重量%である
項10. 前記粉砕品がセンター材の粉砕品であり、かつ、前記センター材がビスケット又はプレッチェルである項9に記載の被覆センター材。
項11. 被覆層にシーズニングを有する項9又は10に記載の被覆センター材。
項12. 被覆層中の前記粉砕品の平均粒径が50〜300μmの範囲にある、項9〜11のいずれかに記載の被覆センター材。
項13. 項9〜11のいずれかに記載の被覆センター材をチョコレート層で被覆してなるチョコレート菓子。
【発明の効果】
【0013】
本発明の方法によれば、焼成菓子又はパフスナックの粉砕品をセンター材に被覆するプレコーティング工程及びチョコレート生地を被覆するコーティング工程を経ることにより、センター材が小さく重量が軽くても、センター材を十分に感じることが出来、仕上がりも綺麗で不良品の発生も防止することが出来る粒状チョコレート菓子を得ることが出来る。
【0014】
特に、センター材が焼成菓子またはパフスナックの場合において、本発明のプレコーティング材の原料として、センター材を粉砕したものを使用することで、センター材の食感、味とチョコレート感のバランスの調整が非常に容易になり、仕上がり具合に影響されることなく、嗜好性にあわせた商品設計が可能となる。
【0015】
さらには、センター材と異なる焼成菓子又はパフスナックを粉砕したものを使用した場合は、センター材、プレコーティング材、チョコレート生地の組み合わせ次第で味のバラエティ感を出させ、様々な味を作り上げることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明の粒状チョコレート菓子とその製造方法、その製造に適した被覆センター材について詳細に説明する。
【0017】
本発明におけるチョコレート生地とは、カカオマス、ココアバター、ココアケーキ又はココアパウダーを原料とし、必要により糖類、乳製品、他の食用油脂、他の食品原料、果汁、香料、調味料等を必要に応じて加えて通常の工程を経て製造されたものや、ココアバターの代わりに代用脂として、動植物由来のテンパリング、ノーテンパリング又はそれらを混合した油脂を使用したチョコレート生地等を含み、チョコレート規約におけるチョコレート生地だけに制限されるものではない。
【0018】
本発明におけるセンター材とは、一般的に菓子の原料として使用されものであり、本発明におけるチョコレート生地と組み合わせることの可能なあらゆる食品素材及び加工食品をいう。また、センター材の形状は特に限定するものではなく、回転しやすい形状であればよく、スナック類、ナッツ類、ドライフルーツ類、焼成菓子類、キャンディー類、錠菓類、豆類及びゼリー類等を例示することが出来、これらから1種類又は2種類以上のセンター材を適宜選択することが出来る。回転しやすい形状としては、球形、楕円体、立方体、直方体(最も長い辺と最も短い辺の長さの比が約5以下、好ましくは約3以下)、あるいはこれらに類似する球体や直方体にできるだけ近い形状のものが挙げられる。好ましいセンター材は、焼き菓子であり、特にプレッチェル、ビスケット、クッキー、ラスク、クルトンなどが挙げられる。
【0019】
本発明のセンター材は、直接チョコレートで被覆すると均一なチョコレート被覆ができないものであり、チョコレート付着性の異なる2種類以上の表面を有するものである。このような2種類以上の表面としては、センター材が割れた面と割れていない面の2種類の表面を有する場合や、ビスケットのように表面と裏面、あるいは側面や角の部分でチョコレートの付着性に差があるセンター材が挙げられる。
【0020】
センター材の大きさ(平均粒度)は、代表的には0.05mm〜20mm、好ましくは0.1mm〜15mm、より好ましくは3mm〜10mmである。センター材の大きさが大きすぎると、本発明の態様を用いなくても製造が可能になり、小さすぎる場合はアベック発生率が増加する。また、使用するセンター材の大きさのばらつきは本発明の効果に影響はないが、少ないほうが好ましいため、大きさのばらつきが少ないパフスナック、焼成菓子をセンター材として選択することが好ましい。
【0021】
センター材の重さは、代表的には0.01g〜1.0g、好ましくは0.03g〜0.8g、より好ましくは0.05g〜0.5gである。センター材が重過ぎると、本発明態様を用いなくても製造が可能になり、軽すぎる場合にはアベック発生率が増加する。また、使用するセンター材の重さのばらつきは本発明の効果に影響はないが、少ないほうが好ましいため、重さのばらつきが少ないパフスナック、焼成菓子をセンター材として選択することが好ましい。
【0022】
焼成菓子とは、原料を加水若しくは加水をせずに混合し、原料生地を作成、焼成工程を経て得られる菓子すべてを言い、ソフトビスケット、ハードビスケット、クラッカー、ウエハース、プレッチェル、パイ、ゴーフレット、マカロン、ラングドシャ、ケーキ、あられ、せんべい等を例示することが出来、パフスナックとは、小麦粉、米、とうもろこし等の穀物や豆類等を主原料として、膨化工程を経て得られる菓子すべてを言い、一般的にコーンスナック、小麦パフ、米パフ等と呼ばれる製品群やポップコーン等を例示することが出来る。
【0023】
本発明に使用する焼成菓子又はパフスナックの粉砕品は、人為的に破砕したものを使用しても良いが、粒度が大きく、不均一である場合にはプレコーティングにおいて接着力が弱くなり、またセンター材に均一に付着することが難しくなるため、フードカッター、各種ミル、その他微粉砕装置等の機械を用いて細かく均一に粉砕したものを使用するのが好ましい。粉砕品の粒径は700μm以下のものがよく、平均粒径としては、代表的には300μm程度以下、好ましくは250μm程度以下、より好ましくは200μm程度以下、さらに好ましくは150μm程度以下であり、平均粒径の下限は通常1μm、好ましくは5μm程度、より好ましくは10μm、さらに好ましくは30μm程度、特に50μm程度である。粉砕品は小さくても問題はないが、あまりに小さい場合には油脂とともにセンター材を被覆した場合に凝集する傾向にある。粉砕品の下限は特に限定されないが、例えば0.2μm程度以上のものが飛散性の観点から好ましく使用される。なお、粉砕品の粒径が大きすぎると、油脂とともに被覆層を形成する際、ダマになりやすく、また、粒度が大きすぎると(特に700μm超)、被覆した後も被覆層がはがれやすくなる。
【0024】
なお、粉砕品の粒度及び粒度分布は、市販の測定装置、例えば島津製作所製のレーザー回析式粒度分布測定装置SALD-2000J型を用いて測定することができる。
【0025】
また、粉砕品の作成にあたっては粉砕のし易さを考慮すると、約10重量%以下の比較的低水分の素材のものを利用することが好ましい。
【0026】
粉砕品の製造は、公知の粉砕機を用いて実施できるが、例えば実施例で使用したスーパーマスコロイダー(増幸産業株式会社製)等を用いて粉砕品を製造することができる。
【0027】
本発明における焼成菓子又はパフスナックの粉砕品をセンター材に被覆する方法としては、(i)焼成菓子又はパフスナックの粉砕品と油脂を含む粉状原料(プレコーティング材)を作成し、作成したプレコーティング材をセンター材に被覆する方法、(ii)焼成菓子又はパフスナックの粉砕品を油脂原料でコーティングしながらセンター材に被覆する方法がある。
【0028】
焼成菓子又はパフスナックの粉砕品と油脂を含む粉状原料の作成方法には特に制限されることはないが、事前に荒砕きした焼成菓子又はパフスナックと溶解した油脂を混合し、その後ロール粉砕機を用いて粉状原料を作成する方法、焼成菓子又はパフスナックを事前に微粉砕した後、溶解した油脂を混合させ、その後冷却固化させた後、再度粉砕機を用いて粉状原料を作成する方法等を例示することが出来る。また、粉状原料を作成するにあたっては、焼成菓子又はパフスナック、油脂以外の原料を適宜入れることが出来る。このような原料としては、シーズニング(カレー、コンソメ、明太子、塩、チーズ、香辛料、乳加工原料など)、香料、着色料が挙げられる。このような原料を配合することで、被覆物に種々の味、色を付与することができる。
【0029】
使用する油脂としては、焼成菓子又はパフスナックの粉砕品と混合した後、粉状の状態に加工することが出来る植物性、動物性油脂及びそれらの加工品であれば特に制限されることはないが、チョコレート生地との相性からカカオマス、ココアバターやココアバターの代わりとして使用されている代用脂、またはこれら油脂を含む加工品等を用いるのが好ましい。
【0030】
本発明において作成するプレコーティング材中の総油脂重量率は、代表的には7〜45%重量、好ましくは10〜35%、より好ましくは13〜25%である。総油脂重量が多いと、付着力は強くなりすぎ、アベック発生がしやすく、また取り扱いが困難になり、総油脂重量が少ないと、付着力が足らず、本発明の効果を発揮する事が出来ない。
【0031】
また、プレコーティング材中の焼成菓子又はパフスナック重量は、総油脂重量の範囲内において、センター材の種類、食感、味と、プレコーティング材の作成において適宜使用できるその他原料の重量、最終製品におけるチョコレートとのバランスにあわせて調整することが出来る。
【0032】
プレコーティングに使用する回転被覆装置は、センター材を回転させることの出来る形状を有する装置であれば特に制限されることはなく、レボルビングパンや、筒型の回転装置等を本発明に使用することの出来る装置として例示することが出来る。
【0033】
作成したプレコーティング材は、回転被覆装置内に投入されたセンター材を回転させながらプレコーティングしていく。プレコーティング中に適時温風を当てることで、プレコーティング材中の油脂が緩まり、被覆を容易にすることが出来る。また、プレコーティング材を投入後に溶解したチョコレート生地や油脂を少量散布させ、適時温風、冷風を当てることを繰り返すことにより同様に被覆を容易にすることが出来る。
【0034】
焼成菓子又はパフスナックの粉砕品を油脂原料でコーティングしながら被覆する方法は、特に制限されることはないが、油脂原料をセンター材にスプレー状に噴霧してコーティングする工程中に焼成菓子又はパフスナックの粉砕品を振り掛け、攪拌させながら被覆させていく方法を例示することができ、これにより本発明の効果を有することが出来る。この場合における油脂原料としては、チョコレート生地や、動物、植物油脂等、粉砕原料と同時にコーティングすることが出来る油脂であれば、特に制限されることなく使用することが出来る。
【0035】
この方法は、プレコーティング材を作成する工程を省略することが出来る為、より簡易的に本発明の効果を得ることができるが、プレコーティング材を作成した場合と比べ、油脂と粉砕品の分散性が悪い為、食した時に僅かに粉っぽさが発生する場合があるが、製品中に対して被覆する量が少ない場合は、本発明の効果を十分に有している。
【0036】
所定量のプレコーティング材を被覆したセンター材はその後、チョコレート生地を少量ずつ散布していく。コーティングに使用する回転被覆装置は、プレコーティングと同様、センター材を回転させることの出来る形状を有する装置であれば特に制限されることはなく、レボルビングパンや、筒型の回転装置等を使用することができる。
【0037】
一回に散布する量としてはセンター材(プレコーティング前)に対して2〜7重量%程度が適当である。散布後、適宜冷風、温風を当てて、センター材にかかったチョコレート生地表面を生乾き状態にさせ、次のチョコレート生地を散布する。これを繰り返すことで所定量のチョコレート生地をコーティングしていく。
【0038】
チョコレート生地表面が固化しすぎた状態で次のチョコレート生地を散布すると、延びが悪くなる結果、表面に凹凸が出来やすく、最終製品仕上がり具合が悪くなる。また、表面が緩すぎる状態で次のチョコレート生地を散布すると、チョコレートが軟化しアベックが発生しやすくなる。
【0039】
所定量のチョコレート生地をコーティングさせた後は、約20℃程度まで冷却を行い、チョコレート生地を固化させる。その後適宜ガム液、シェラック剤等で艶出しを行い所望の粒チョコレート菓子を得る。
【実施例】
【0040】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これら例示に限定されるものではない。単位は特に記載がない場合は、質量を基準とする。
実施例1
プレコーティング材の作成
表1に示す割合でプレコーティング材を作成した。ココアバター、代用脂は事前に溶解し、ビスケットはミルで荒砕きを行い、その他の原料と混合後、3段ロール式の粉砕機にかけてプレコーティング材を作成した。出来上がったプレコーティング材中の総油脂量は27.8%、焼成菓子量は15.3%であった。また、プレコート材の平均粒子は37μmであった。
【0041】
【表1】

【0042】
表2に示す割合でプレコーティング、コーティング、艶出し処理を実施した。各工程は以下の通り実施した。
【0043】
【表2】

【0044】
プレコーティング
センター材は、プレコーティング材に使用したビスケットと同じものを粉砕して篩に掛け選別し、3〜5mmの大きさとなるビスケットクランチとして使用した。これを、レボルビングパンに8kg投入し、回転させながらセンター材に作成したプレコーティング材を振りかけ、温風を当てて付着させていき、最終的に6kgのプレコーティング材を付着させた。プレコーティング後のセンター材の表面は均一にプレコーティング材が付着されおり、この段階ではアベックの発生は見られなかった。
コーティング
プレコーティング終了後、37℃に加温したチョコレート生地を、レボルビングパンを回転させながら少量ずつセンター材へスプレー状に噴霧し、表面を半乾き状態にさせる為、冷却を行った。半乾き状態になったら再度チョコレート生地を噴霧、冷却の作業を行い、この作業を繰り返すことで最終的に10kgのチョコレート生地をコーティングさせた。コーティング終了後の製品表面は、全面に均一にチョコレート生地がコーティングされている状態であった。
艶出し・取り出し
コーティング終了後、製品表面温度が20℃以下になるまでレボルビングパンを回転させながら冷風を当てて冷却を行った。冷却終了後、デキストリン20%を水に溶解したものを0.22kg被覆し、その後さらにシェラック剤0.18kgを被覆させることで光沢を与えた後冷却を行い、粒チョコレート菓子を得た。出来上がった製品を食したところ、センター材の味、食感が良く出ているのと同時に、チョコレート感もある嗜好性の高い良好なものであった。コーティング時にレボルビングパン缶体へのチョコレート生地の付着が発生した為、使用原料量24.4kgに対し最終的な取り出し量は23.2kgであり、歩留まりが95.1%であった。
アベック発生率の測定
完成品を6.5mmのパンチ穴の篩に通し、アベック品の発生率を測定した結果、2.9%であった。
【0045】
比較として、フレークコーティングしない場合においては、6.5mmのパンチ穴の篩に通して測定したアベック発生率が8.9%(使用原料30.40kg、取り出し量、28.4kg)であった。
【0046】
なお、比較品の使用原料(30.40kg)は、以下の配合を有する:
チョコ 15kg
センター 15kg
グリスター 0.22kg
シェラック 0.18kg
【0047】
実施例2
プレコーティング材の作成
表3に示す割合でプレコーティング材の作成を行い、作成方法は実施例1と同様の方法で実施した。出来上がったプレコーティング材中の総油脂量は23.6%、焼成菓子量は44.8%であった。また、プレコート材の平均粒子は40μmであった。
【0048】
【表3】

【0049】
表4に示す割合でプレコーティング、コーティング、艶出し処理を実施した。各工程は以下の通り実施した。
【0050】
【表4】

【0051】
プレコーティング
センター材として使用する粒ビスケットは、プレコーティング材に使用したビスケットと同じ配合のものを5mmの細さで棒状に成型した後焼成し、その後5mmの間隔でカットして作成した。このときの粒ビスケットの重量は1粒0.08gであった。その後、実施例1と同様の方法でプレコーティングを実施した。プレコーティング後のセンター材の表面は均一にプレコーティング材が付着されおり、この段階ではアベックの発生は見られなかった。
コーティング・艶出し・取り出し
その後は実施例1と同様の方法で取り出しまで行った。コーティング終了後の製品表面は、全面に均一にチョコレート生地がコーティングされている状態であり、製品を食したところ、センター材の味、食感が良く出ているのと同時に、チョコレート感もある嗜好性の高い良好なものであった。コーティング時にレボルビングパン缶体へのチョコレート生地の付着が発生した為、使用原料量30.42kgに対し最終的な取り出し量は29.46kgであり、歩留まりが96.8%であった。
アベック発生率の測定
完成品を6.5mmのパンチ穴の篩に通し、アベック品の発生率を測定した結果、0.34%であった。
【0052】
実施例3
プレコーティング材の作成
表5に示す割合でプレコーティング材の作成を行った。微粉砕装置(スーパーマスコロイダー、増幸産業製)を用いて事前に荒砕きしたビスケットを微粉砕した後、溶解したココアバターと混合させた。このとき使用したビスケットの平均粒子は160μmであった。その後冷却させて油脂を固化させた後、ミルで粉砕させ粉状のプレコーティング材を作成した。出来上がったプレコーティング材中の総油脂量は23.6%、焼成菓子量は85.5であった。
【0053】
【表5】

【0054】
表6に示す割合でプレコーティング、コーティング、艶出し処理を実施した。各工程は以下の通り実施した。
【0055】
【表6】

【0056】
プレコーティング
センター材として使用する粒ビスケットは実施例2と同様に作成し、実施例1、2と同様の方法でプレコーティングを実施した。プレコーティング後のセンター材の表面は均一にプレコーティング材が付着されおり、この段階ではアベックの発生は見られなかった。
コーティング・艶出し・取り出し
その後は実施例1、2と同様の方法で取り出しまで行った。コーティング終了後の製品表面は、全面に均一にチョコレート生地がコーティングされている状態であり、製品を食したところ、センター材の味、食感が強く出ており、軽いチョコレート感があるスナック的な嗜好性の高い出来上がりとなった。コーティング時にレボルビングパン缶体へのチョコレート生地の付着が発生した為、使用原料量30.42kgに対し最終的な取り出し量は29.26kgであり、歩留まりが96.2%であった。
アベック発生率の測定
完成品を6.5mmのパンチ穴の篩に通し、アベック品の発生率を測定した結果、1.8%であった。
【0057】
実施例4及び比較例1
以下の表7に示す原料及び製造方法を用いて、棒状プレッチェルを製造した。
【0058】
【表7】

【0059】
得られたプレッチェルを約5mm間隔で切断し、センター材を得た。ミルで粉砕したプレッチェルの粗粉砕物をさらに微粉砕装置(スーパーマスコロイダー、増幸産業製)で粉砕した(実施例4)。得られた粉砕品の粒度分布を図1と表8に示す。
【0060】
【表8】

【0061】
図1と表8に示すように、スーパーマスコロイダーで微粉砕した粉砕品は、95%程度のものが250μm以下の粒子であり、約50%の粒子が100μm以下であり、90%程度の粒子が200μm以下であり、平均粒径は約110μm程度であり、頻度データからは、170μm程度の粒子が一番多く存在した。
【0062】
プレッチェルをパワーミルで粉砕した粉砕品(比較例1)は、700μm以上の粒度を有していた。
【0063】
これらの粉砕品を用いて長さ約5mmのプレッチェルからなるセンター材を、下記の表9に示す条件を用いてプレッチェルの各粉砕品で被覆した結果を図2(実施例4)と図3(比較例1)に示す。
【0064】
【表9】

【0065】
図2,図3から明らかなように、平均粒径が約110μmの粉砕品を用いた本発明の被覆物は断面が均一に覆われており、この被覆物をさらにチョコレートで被覆した場合に、優れた被覆性を有していた。
【0066】
一方、図3で示される比較例1の被覆物は、粒子がダマになったか、あるいは被覆後に剥離したと考えられる多数の粉が存在し、センター材の被覆が均一に行われず、このものをチョコレートで被覆した場合には、チョコレートが不均一に付着した。
【0067】
これらの結果から、本発明によれば、チョコレートの被覆に好適な被覆層を有するセンター材が得られることが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の方法によれば、これら上記条件で焼成菓子又はパフスナックの粉砕品と油脂を含む粉状原料を被覆するプレコーティング工程及びチョコレート生地を被覆するコーティング工程を経ることにより、センター材が小さく重量が軽くても、センター材を十分に感じることが出来、仕上がりも綺麗で不良品の発生も防止することが出来る粒状チョコレート菓子を得ることが出来る。特に、センター材が焼成菓子またはパフスナックの場合において、本発明のプレコーティング材の原料として、センター材を粉砕したものを使用することで、センター材の食感、味とチョコレート感のバランスの調整が非常に容易になり、仕上がり具合に影響されることなく、嗜好性にあわせた商品設計が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】実施例4で使用したプレッチェルの粉砕品の粒度分布を示す図である。
【図2】実施例4で得られた、本発明の粉砕品と油脂で被覆したプレッチェルを示す図である。
【図3】比較例1で得られた、粉砕品と油脂で被覆したプレッチェルを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽量のセンター材の周囲をチョコレート生地が覆う粒状チョコレート菓子の製造方法において、前記センター材を焼成菓子又はパフスナックの粉砕品で被覆する工程、得られた被覆センター材をさらにチョコレート生地で被覆する工程を含み、前記粉砕品の平均粒径が700μm未満であり、かつ、前記センター材がチョコレート付着性の異なる2種類以上の表面を有するものである、粒状チョコレート菓子の製造方法。
【請求項2】
センター材が焼成菓子又はパフスナックであることを特徴とする請求項1に記載のチョコレート菓子の製造方法。
【請求項3】
センター材の1個あたりの平均重量が0.01g〜1.0gの範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載のチョコレート菓子の製造方法。
【請求項4】
センター材の平均粒度が0.05mm〜20mmの範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のチョコレート菓子の製造方法。
【請求項5】
焼成菓子又はパフスナックの粉砕品を被覆する方法として、焼成菓子又はパフスナックと油脂を含む被覆原料を作成し、その被覆原料中における総油脂重量が7〜45重量%の範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のチョコレート菓子の製造方法。
【請求項6】
前記センター材を焼成菓子又はパフスナックの粉砕品で被覆する工程が、センター材に油脂原料をコーティングしながら粉砕品を前記センター材に作用させて被覆することで実施される工程であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のチョコレート菓子の製造方法。
【請求項7】
前記粉砕品の平均粒径が50〜300μmの範囲にある、請求項1〜6のいずれかに記載のチョコレート菓子の製造方法。
【請求項8】
前記センター材が、破断面を有し、かつ、前記粉砕品が前記センター材の粉砕品である請求項1〜7のいずれかに記載のチョコレート菓子の製造方法。
【請求項9】
チョコレート付着性の異なる2種類以上の表面を有する軽量のセンター材の周囲を焼成菓子又はパフスナックの粉砕品と油脂を含む被覆層で被覆してなり、かつ、以下の条件を満たす被覆センター材:
(1)チョコレート被覆性が均一な被覆層でセンター材が完全に覆われている;
(2)被覆層中の前記粉砕品の平均粒径が700μm未満である
(3)センター材の平均粒度が0.05mm〜20mmの範囲である
(4)センター材の1個あたりの平均重量が0.01g〜1.0gの範囲である
(5)被覆層中における総油脂重量が7〜45重量%の範囲である
(6)被覆層の割合が10〜45重量%である
【請求項10】
前記粉砕品がセンター材の粉砕品であり、かつ、前記センター材がビスケット又はプレッチェルである請求項9に記載の被覆センター材。
【請求項11】
被覆層にシーズニングを有する請求項9又は10に記載の被覆センター材。
【請求項12】
被覆層中の前記粉砕品の平均粒径が50〜300μmの範囲にある、請求項9〜11のいずれかに記載の被覆センター材。
【請求項13】
請求項9〜11のいずれかに記載の被覆センター材をチョコレート層で被覆してなるチョコレート菓子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−171872(P2009−171872A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−12140(P2008−12140)
【出願日】平成20年1月23日(2008.1.23)
【出願人】(000000228)江崎グリコ株式会社 (187)
【Fターム(参考)】