説明

粘性流体の取り出し方法及びその方法に用いられるエアー供給具

【課題】 本発明の課題は、軟質樹脂製バッグからの粘性流体の取り出し時間を短くできると共に粘性流体の残留量を低減できる粘性流体の取り出し方法及びその方法に用いられるエアー供給具の提供することである。
【解決手段】 粘性流体を収納した軟質樹脂製バッグ1からポンプ7により粘性流体を取り出す粘性流体の取り出し方法において、樹脂製バッグ1の一端側下部1aに設けた取出口3からポンプ7により粘性流体を送り出すと共に、樹脂製バッグ1の上部から樹脂製バッグ1内に加圧エアーを供給している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡酒製造に用いられる大麦エキス等の粘性流体を樹脂製バッグから取り出す粘性流体の取り出し方法及びその方法に用いられるエアー供給具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、粘性流体を収納した容器の変形を防止する内部変形規制プレートを容器に配置すると共に、容器内を加圧することにより、容器内圧を高めて粘性流体を容器上方から取り出すことが開示されている。
【0003】
一方、発泡酒製造において使用される大麦エキスは大型の軟質樹脂製バッグに充填されて工場に搬入され、バッグからポンプにより大麦エキスを取り出している。バッグはいわゆるビニール製であり軟質樹脂材で作られているので、大麦エキスの取り出しに伴なって液位が下がると容積を小さくするように潰れていた。尚、樹脂製バッグに充填される大麦エキスは約10トン程度あり、樹脂製バッグは部屋一つ分程度の大きさを有するものである。
【0004】
【特許文献1】特開2002−255285号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した特許文献の技術では、容器に内部変形規制プレートを配置するので、樹脂製バックに用いるとすれば大掛かりになると共に、容器内を加圧した圧力で容器上部から粘性流体を取り出すものであるから、粘性流体を取り出した後には潰して搬出する軟質樹脂製バッグには適さない。
【0006】
また、大麦エキスは粘性が高いため(粘性流体)バッグからの取り出しに時間がかかると共に、粘性流体の取り出しにつれて軟質樹脂製バッグが潰れていくので、潰れたバッグの皺等のために粘性流体の残留量が多くなるというという問題がある。
【0007】
本発明は、軟質樹脂製バッグからの粘性流体の取り出し時間を短くできると共に粘性流体の残留量を低減できる粘性流体の取り出し方法及びその方法に用いられるエアー供給具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、請求項1に記載された発明は、粘性流体を収納した軟質樹脂製バッグからポンプにより粘性流体を取り出す粘性流体の取り出し方法において、樹脂製バッグの一端側下部に設けた取出口からポンプにより粘性流体を送り出すと共に、樹脂製バッグの上部から樹脂製バッグ内に加圧エアーを供給することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載の発明において、樹脂製バッグの他端側を吊り上げて取出口を下側にすると共に加圧エアーは他端側からバッグ内に供給することを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載された発明は、請求項2に記載の発明において、粘性流体は発泡酒の製造で使用される大麦エキスであり、樹脂製バッグは下側から蒸気により加熱することを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載された発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の粘性流体の取り出し方法に用いられるエアー供給具であって、樹脂製バッグにおける粘性流体の充填口を塞ぐキャップに換えて充填口に螺合する蓋体と、蓋体に固定したエアーノズルとを備え、エアーノズルに加圧エアー供給ホースを接続して用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、軟質樹脂製バッグは粘性流体が取り出されて液位が下がっても、取り出された体積分は加圧エアーが補充するので、バッグは潰れることなく粘性流体を充填した形状を維持する。したがって、バッグは潰れて皺等ができ難いので、皺に粘性流体が残留するのを防止でき、粘性流体を取り出し後の空バッグにおける残留量を低減できる。
【0013】
また、樹脂製バッグから粘性流体をポンプで取り出しているときには、加圧エアーがバッグ内を加圧して粘性流体を加圧するので、粘性流体の送り出しを促進でき、粘性流体の取り出し時間を従来よりも短くできる。
【0014】
請求項2に記載された発明によれば、請求項1に記載の発明と同様の効果が得られると共に、取出口がある一端側を下にし、他端側を上にするので、粘性流体を重力を利用して取出口に集めると共に自重により加圧できるので、更に取り出し時間を短くできると共に取り出し後のバッグ内における粘性流体の残留量を少なくできる。
【0015】
請求項3に記載された発明によれば、請求項2に記載の発明と同様の効果が得られると共に、粘性流体の大麦エキスは、加熱により粘性が低くなり流動性が増すので、取り出しをスムーズにできると共に取り出し後のバッグ内における粘性流体の残留量も少なくできる。
【0016】
請求項4に記載された発明によれば、バッグにおける粘性流体の充填口を利用してエアーノズルを装着できるので、エアーノズルの装着口を別に設ける必要がない。また、エアー供給具は蓋体にエアーノズルを固定したものであるから構成が簡易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の実施形態に係る粘性流体の取り出し方法を示す斜視図であり、図2は樹脂製バッグの充填口にエアー供給具を取り付けた状態を示す断面図であり、図3はエアー供給具の取り付け前における樹脂製バッグの充填口を示す断面図である。
【0018】
本実施の形態に係る粘性流体は発泡酒製造に使用される大麦エキスであり、本実施の形態では、樹脂製バッグ1に充填した大麦エキスを工場に搬入した後、工場の設備に送り出すものである。尚、樹脂製バッグ1は約10トンの大麦エキスを充填している。
【0019】
樹脂製バッグ1は、いわゆるビニール製(軟質樹脂製)であり、粘性流体を充填した状態では略直方体形状を成している。樹脂製バッグ1の一端側下部1aには取出口3が設けてあり、取出口3にホース5を接続してポンプ7によりバッグ1内から粘性流体を取り出している。
【0020】
樹脂製バッグ1の他端側上部1bには加圧エアーの供給口9が設けてあり、この供給口9にはエアー供給具11が取り付けられている。エアー供給具11には工場の計装ライン(図示せず)から加圧エアーがホース15を介して供給されている。
【0021】
また、樹脂製バッグ1の他端側はクレーンの吊具16に係止されて上方に吊り上げられており、粘性流体の取出し作業時にはバッグ1は取出口3を下にして斜めに傾斜した状態にしてある。
【0022】
一方、樹脂製バッグ1の下側からは蒸気加熱器25により加熱蒸気をあてて粘性流体を加熱している。粘性流体の大麦エキスは、加熱により粘性が低くなり流動性が増すので、取り出しをスムーズにできると共に取り出し後のバッグ1内における粘性流体の残留量も少なくできる。
【0023】
加圧エアーの供給口9は、樹脂製バッグ1に粘性流体を充填するときの充填口であり、この充填口のネジ23に螺合してあるキャップ17を外して、エアー供給具11を取り付けている。
【0024】
エアー供給具11は、蓋体19と、蓋体19に固定されたノズル21とから構成されており、蓋体19はテフロン(登録商標)製であり且つキャップ17と略同じ寸法と形状であり、キャップ17と同様に充填口のネジ23に螺合するネジ溝が形成されている。
【0025】
ノズル21は蓋体19の略中央を貫通して先端21aをバッグ1内に挿入してある。ノズル21の基端21bは上述した加圧エアーが供給されるホース15に接続されている。ホース15は工場の計装ラインから加圧エアーを供給している。
【0026】
エアー供給具11は、樹脂製バッグ1に粘性流体を充填する充填口を利用して装着しているので、装着口を別途設ける必要がない。また、エアー供給具11は蓋体19にエアーノズル21を固定したものであるから構成が簡易である。
【0027】
次に、上述した構成に基づき、本実施の形態の作用及び効果を説明する。粘性流体が充填された樹脂製バッグ1を工場に搬入した後、バッグ1の取出口3にホース5を接続し、充填口のキャップ17(図3参照)を外してエアー供給具11の蓋体19を螺合してバッグ1に装着する一方、バッグ1の他端側にクレーンの吊具16を取り付けて吊り上げるとともに、樹脂製バッグ1の下側から蒸気加熱器25により加熱蒸気をあてて粘性流体を加熱する。
【0028】
そして、ポンプ7を駆動してバッグ1内から粘性流体を取り出すと共にエアー供給具11によりバッグ1内に加圧エアーを供給する。加圧エアーの供給圧力は例えば、約2Kg/cm2である。
【0029】
軟質の樹脂製バッグ1は粘性流体が取り出されて液位が下がると取り出された体積分は加圧エアーが補充するので、樹脂製バッグ1は潰れることなく、粘性流体を充填した形状を維持したまま粘性流体を取り出すことができる。
【0030】
本実施の形態によれば、粘性流体の取り出し時に樹脂製バッグ1は潰れによる皺等ができないので、粘性流体を取り出し後の空バッグにおける粘性流体の残留量を低減できる。
【0031】
また、樹脂製バッグ1から粘性流体をポンプ7で取り出しているときには、加圧エアーがバッグ1内を加圧して粘性流体を押圧するので、粘性流体の流出を促進でき、粘性流体の取り出し時間が従来よりも短くて済む。
【0032】
樹脂製バッグ1は、クレーンの吊具16により他端部1b側を吊り上げて取出口3が下になるように傾斜しているので、粘性流体は重力を利用して取り出しできるので、更に取り出し時間を短くできる。また、粘性流体は自重により取出口3に集まるのでバッグ1内における粘性流体の残留量を少なくできる。
【0033】
粘性流体の取り出し作業の終了後は、樹脂製バッグ1内からエアーを抜き、バッグ1を潰して搬出する。したがって、粘性流体の取り出し後にはバッグ1を潰して嵩張らないようにできるので、スペースを取らないとともに小さくして搬出できるので取り扱いやすい。
【0034】
本発明は、上述した実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
【0035】
例えば、樹脂製バッグ1の吊上げはクレーンに限らず、他の機器を用いて吊り上げるものであってもよい。
【0036】
エアー供給具11に供給されるエアーは、ポンプによりホース15に供給したものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態に係る粘性流体の取り出し方法を示す斜視図である。
【図2】樹脂製バッグの充填口にエアー供給具を取り付けた状態を示す断面図である。
【図3】エアー供給具の取り付け前における樹脂製バッグの充填口を示す断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 樹脂製バッグ(バッグ)
3 取出口
7 ポンプ(粘性流体の送り出しポンプ)
9 供給口
11 エアー供給具
19 蓋体
21 ノズル
25 蒸気加熱器








【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘性流体を収納した軟質樹脂製バッグからポンプにより粘性流体を取り出す粘性流体の取り出し方法において、樹脂製バッグの一端側下部に設けた取出口からポンプにより粘性流体を送り出すと共に、樹脂製バッグの上部から樹脂製バッグ内に加圧エアーを供給することを特徴とする粘性流体の取り出し方法。
【請求項2】
樹脂製バッグの他端側を吊り上げて取出口を下側にすると共に加圧エアーは他端側からバッグ内に供給することを特徴とする請求項1に記載の粘性流体の取り出し方法。
【請求項3】
粘性流体は発泡酒の製造で使用される大麦エキスであり、樹脂製バッグは下側から蒸気により加熱することを特徴とする請求項2に記載の粘性流体の取り出し方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の粘性流体の取り出し方法に用いられるエアー供給具であって、樹脂製バッグにおける粘性流体の充填口を塞ぐキャップに換えて充填口に螺合する蓋体と、蓋体に固定したエアーノズルとを備え、エアーノズルに加圧エアー供給ホースを接続して用いることを特徴とするエアー供給具。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−8149(P2006−8149A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−184671(P2004−184671)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)
【Fターム(参考)】