説明

粘着剤及び光学フィルム

【課題】光学フィルムの貼着に使用され、高温又は高温高湿の環境下においても優れた耐久性を示し、白抜けの発生を抑制すると共に、光学フィルムの貼り直しが要求される場合は容易にリワークできる光学フィルム用粘着剤、及び光学フィルムを提供する。
【解決手段】反応性官能基を含有するアクリル系共重合体(A)と、前記アクリル系共重合体(A)100重量部に対して、5〜30重量部のイソシアネート化合物(B)と、0.05〜1重量部のポリエーテル変性シリコーン(C)と、0.03〜1重量部のシランカップリング剤(D)とを含有する粘着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光フィルム、位相差フィルム等の光学フィルムを、液晶セル等の被着体に貼着することに用いる粘着剤組成物、粘着剤、及び当該粘着剤層を有する光学フィルムに関する。更に詳しくは、本発明は、被着体へ光学フィルムを貼着した時に不具合が生じた場合は剥離でき、高温又は高温高湿下においても優れた耐久性を示すと共に、白抜けが生じにくい等の特性を有する粘着剤組成物、粘着剤、及び当該粘着剤層を有する光学フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置として広範な分野で使用されている液晶表示装置は、通常、ガラス等の2枚の支持基板の間に、所定の方向に配向した液晶成分を挟持した液晶セルと、偏光フィルム、位相差フィルム、輝度向上フィルム等の光学フィルムとから構成されており、光学フィルム同士の積層、液晶セルへの貼着には粘着剤が使用されていることが多い。
【0003】
液晶表示装置は、パーソナルコンピュータ、テレビジョン、カーナビゲーション等の表示装置として広範囲に使用されている。それに伴って高温又は高温高湿下のような過酷な環境下での使用においても耐久性に優れた、即ち、長期間の使用においても剥がれ、気泡の発生等が生じない粘着剤が要求されている。
【0004】
高温又は高温高湿下のような苛酷な環境化において光学フィルムは収縮、膨張といった寸法変化が大きい。このような光学フィルムを液晶セル等の被着体に貼着した状態にて、高温又は高温高湿の環境下にさらした場合において、剥がれ、気泡の発生等が生じない粘着剤としては、凝集力が高く、被着体と強く接着する粘着剤が使用されている。さらに、高温又は高温高湿下では、光学フィルムに作用する残留応力の分布が不均一となり、液晶セルに貼着した光学フィルムの外周部に応力集中が生じる結果、液晶表示装置の周辺部から光が漏れて白くなる、いわゆる「白抜け」と呼ばれる現象が生じやすいという問題があった。
【0005】
また、この技術分野では、粘着剤層を有する光学フィルムを被着体に貼着する際に、異物等の噛み込み、位置ズレ等の不具合が生じた場合に、被着体から光学フィルムを剥離・除去して新しい光学フィルムを貼り直すリワーク作業が実施される。この時に、光学フィルムの接着強度が大きいと被着体から光学フィルムを剥離することが困難であったり、光学フィルムを剥離した後、粘着剤の一部が被着体に残留したりするという不具合が発生していた。
【0006】
このように、光学フィルムに使用される粘着剤は、高温又は高温高湿下での使用によっても剥がれ、気泡が発生しないように液晶セル等の被着体に接着しなければならない耐久性が要求される。一方で、リワーク作業の時には被着体から剥がれやすく粘着剤の一部が被着体に残留しない特性(以下、リワーク性という)が要求される。このように、相反する耐久性とリワーク性と、白抜けの抑制とを両立する粘着剤が求められている。
【0007】
上記の問題を解決するために種々の検討がなされている。例えば、特開2004-331697号公報(特許文献1)には、耐久性とリワーク性と白抜けの抑制とを両立する粘着剤として、反応性官能基を有する重量平均分子量100万〜200万の共重合体100重量部と、上記共重合体の存在下で重合してなるカルボキシル基を有する重量平均分子量1万〜10万の共重合体20〜100重量部と、2個以上の反応性官能基を有する多官能製化合物0.03〜3重量部からなる粘着剤組成物が開示されている。しかしながら、上記粘着剤組成物は光学フィルムの伸縮等により生じる応力集中を緩和する柔らかい粘着剤であり、白抜けを抑制することに優れているが、粘着剤の凝集力が不足しているために、光学フィルムの伸縮によって粘着剤が引きずられる過程で剥がれたり、発泡が生じたりすることもあり、耐久性に関しては不十分であった。特に、大型の液晶表示装置においては、光学フィルムのサイズが大きくなり、それに伴って光学フィルムの収縮量も大きくなることから、応力集中を緩和する柔らかい粘着剤は耐久性に関して課題が大きいといえる。
【0008】
また、白抜けを抑制する方法としては、応力集中を緩和させることにより白抜けの発生を防ぐ方法とは反対に、高い凝集力を有する粘着剤を用いて、応力が発生する領域を最小限に押しとどめることで白抜けの発生を抑える方法がある(例えば、特開2006-235568号公報(特許文献2))。しかしながら、この方法では、粘着剤が高い凝集力を有しているために、被着体と光学フィルムとの粘着力が高くなる傾向にあり、リワーク性に劣るものであった。
【0009】
また、特開平9−80230号公報(特許文献3)には、耐久性とリワーク性とを改良した粘着剤として、ポリエーテル変性シリコーンオイル、シラザン及びシリルアミンのうち少なくとも1種を含むアクリル系粘着剤が開示されている。しかしながら、ポリエーテル変性シリコーンオイル等の添加は、粘着剤と被着体との接着性を低下させることとなり、耐久性に劣ることが十分に予測される。
【0010】
このように、相反する耐久性とリワーク性と、白抜けの抑制とを両立することは難しく、未だ十分に耐久性とリワーク性と白抜けの抑制を合わせて発現できているとはいえない。
【0011】
【特許文献1】特開2004−331697号公報
【特許文献2】特開2006−235568号公報
【特許文献3】特開平9−80230号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は高温又は高温高湿の環境下においても耐久性に優れ、白抜けを抑制すると共に、光学フィルムの貼り直しが要求される場合は容易にリワークできる粘着剤組成物、粘着剤、及び当該粘着剤層を有する光学フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、反応性官能基を含有するアクリル系共重合体(A)と、イソシアネート化合物(B)と、ポリエーテル変性シリコーン(C)と、シランカップリング剤(D)とを含有する粘着剤組成物から形成された粘着剤を用いることで上記課題を解決し得ることを見出した。すなわち、本発明は上記課題を解決するため、以下の構成からなる。
(1)反応性官能基を含有するアクリル系共重合体(A)と、アクリル系共重合体(A)100重量部に対して、5〜30重量のイソシアネート化合物(B)と、0.05〜1重量部のポリエーテル変性シリコーン(C)と、0.03〜1重量部のシランカップリング剤(D)とを含有する粘着剤組成物。
(2)アクリル系共重合体(A)とは異なる、反応性官能基を含有するアクリル系共重合体(E)を更に含み、イソシアネート化合物(B)、ポリエーテル変性シリコーン(C)、シランカップリング剤(D)は、アクリル系共重合体(A)とアクリル系共重合体(E)との混合物100重量部に対して含有してなる上記(1)に記載の粘着剤組成物。
(3)25℃での引っ張り試験における破断時の伸度が300%〜1500%であり、200%モジュラスが0.15N/mm〜5N/mmである上記(1)又は(2)に記載の粘着剤組成物からなる粘着剤。
(4)上記(1)又は(2)に記載の粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する光学フィルム。
(5)上記(3)に記載の粘着剤からなる層を有する光学フィルム。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る粘着剤組成物、粘着剤、及び当該粘着剤層を有する光学フィルムによれば、高温又は高温高湿の環境下においても耐久性に優れ、光学フィルムの貼り直しが要求される場合は容易にリワークできると共に、白抜けを抑制する、粘着剤組成物、粘着剤、及び当該粘着剤層を有する光学フィルムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施の形態に係る粘着剤組成物は、反応性官能基含有単量体を共重合成分として含有するアクリル系共重合体と、イソシアネート化合物(B)と、ポリエーテル変性シリコーン(C)と、シランカップリング剤(D)とを含有する。本実施の形態に係る粘着剤組成物は、アクリル系共重合体の反応性官能基とイソシアネート化合物(B)とが架橋反応すると共に、アクリル系共重合体の反応性官能基との反応に寄与しなかったイソシアネート基が、環境中の水と反応することで多量体を形成し、良好な粘着特性を有すると考えられる。
【0016】
本実施の形態において、アクリル系共重合体(A)とは、共重合体中に共重合成分としてのアクリル酸エステル単量体、メタクリル酸エステル単量体(以下、「アクリ」を含む単語と「メタクリ」を含む単語とを併記する場合には「(メタ)アクリ」と記載することがある)が80重量%以上含まれる共重合体を意味し、90重量%以上の共重合成分が含まれる共重合体が好ましい。
【0017】
(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル構造を有する単量体であれば特に限定するものではなく、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、i−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、i−ノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸の炭素数1〜18の直鎖若しくは分枝アルキルエステル、更にはこれらの各種誘導体の1種又は2種以上を用いることができる。
【0018】
本実施の形態に係るアクリル系共重合体(A)は、アクリル系共重合体(A)の定義を超えない範囲で(メタ)アクリル酸エステル単量体以外の単量体を共重合成分として含有することができる。(メタ)アクリル酸エステル単量体以外の単量体としては、一例として、飽和脂肪酸ビニルエステル、芳香族ビニルエステル、シアン化ビニル単量体、マレイン酸若しくはフマル酸のジエステルを用いることができる。飽和脂肪酸ビニルエステルとしては、例えば、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、「バ−サチック酸ビニル」(商品名)等(好ましくは酢酸ビニル);芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等;シアン化ビニル単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル;マレイン酸もしくはフマル酸のジエステルとしては、例えば、ジメチルマレ−ト、ジ−N−ブチルマレ−ト、ジ−2−エチルヘキシルマレ−ト、ジ−N−オクチルマレ−ト、ジメチルフマレ−ト、ジ−N−ブチルフマレ−ト、ジ−2−エチルヘキシルフマレ−ト、ジ−N−オクチルフマレ−ト等を用いることができる。
【0019】
本実施の形態に係るアクリル系共重合体(A)は反応性官能基含有単量体を共重合成分として含有する。なお、反応性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体も、アクリル共重合体を定義する際の、アクリル系共重合体(A)の共重合成分として含有される(メタ)アクリル酸エステル単量体の量としてカウントされる。
【0020】
反応性官能基含有単量体としては、例えば、カルボキシル基含有単量体、水酸基含有単量体、グリシジル基含有単量体、アミド基含有単量体、N−置換アミド基含有単量体、3級アミノ基含有単量体の1種又は2種以上を用いることができる。
【0021】
カルボキシル基含有単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、桂皮酸、コハク酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、マレイン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フマル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,2−ジカルボキシシクロヘキサンモノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ダイマー、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等を用いることができる。
【0022】
水酸基含有単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,1−ジメチル−3−ブチル(メタ)アクリレート、1,3−ジメチル−3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2,4−トリメチル−3−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−3−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、N−メチロールアクリルアミド、アリルアルコール、メタリルアルコール等を用いることができる。
【0023】
グリシジル基含有単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルビニルエーテル、グリシジル(メタ)アリルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アリルエーテル等を用いることができる。
【0024】
アミド基含有単量体、N−置換アミド基含有単量体としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等を用いることができる。
【0025】
三級アミノ基含有単量体としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等を用いることができる。
【0026】
共重合成分としての各種反応性官能基を有する単量体のうち、特にカルボキシル基含有単量体、又は、カルボキシル基含有単量体と水酸基含有単量体とが共重合成分としてアクリル系共重合体(A)に含まれることが好ましい。
【0027】
カルボキシル基含有単量体が共重合成分として含まれる割合は、粘着剤の凝集力と被着体との接着性とを向上させることを目的として、アクリル系共重合体(A)に対して0.5重量%以上、好ましくは1重量%以上とする。また、カルボキシル基含有単量体が共重合成分として含まれる割合は、粘着剤の粘着力が高くなりすぎることの抑制を目的として、アクリル系共重合体(A)に対して5重量%以下、好ましくは3重量%以下とする。
【0028】
水酸基含有単量体が共重合成分として含まれる割合は、粘着剤組成物の凝集力を増加させて粘着剤組成物の耐久性を向上させることを目的として、アクリル系共重合体(A)に対して0.001重量%以上、好ましくは0.01重量%以上にする。また、水酸基含有単量体が共重合成分として含まれる割合は、粘着剤組成物が耐久性にて剥がれが生じることを抑制することを目的として、アクリル系共重合体(A)に対して1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下にする。
【0029】
アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、粘着剤組成物に十分な凝集力を与え、気泡の発生を抑制することを目的として、100万以上、好ましくは120万以上、特に好ましくは140万以上にする。また、アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、粘着剤組成物の塗工作業性を確保することを目的として、250万以下にする。
【0030】
アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、下記の方法により測定された値である。
(重量平均分子量(Mw)の測定方法)
下記(1)〜(3)に従って測定する。
(1)アクリル系共重合体溶液を剥離紙に塗布し、100℃で2分間乾燥し、フィルム状のアクリル系共重合体を得る。
(2)上記(1)で得られたフィルム状のアクリル系共重合体をテトラヒドロフランにて固形分0.2%になるように溶解させる。
(3)下記条件にて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)を測定する。
(条件)
GPC:HLC−8220 GPC〔東ソー(株)製〕
カラム:TSK−GEL GMHXL 4本使用
移動相溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.6ml/min カラム温度:40℃
【0031】
アクリル系共重合体(A)のガラス転移点(Tg)は、粘着剤組成物に十分な凝集力を与え、十分な耐久性を発揮させることを目的として、−80℃以上、好ましくは−60℃以上にする。また、アクリル系共重合体(A)のガラス転移点(Tg)は、支持基板に対する十分な密着性を粘着剤組成物に発揮させ、剥がれ等が生じない耐久性を発揮させることを目的として、−20℃以下、好ましくは−30℃以下にする。
【0032】
アクリル系共重合体のガラス転移点(Tg)は下記式1の計算により求められる温度(K)を(℃)に換算した値である。
式1 1/Tg=M1/Tg1+M2/Tg2+M3/Tg3+・・・+Mn/Tgn
式中、Tg1、Tg2、Tg3・・・及びTgnは、成分1、成分2、成分3・・・及び成分nそれぞれのホモポリマーのガラス転移点(
K ) を示す。また、式中、M1、M2、M3・・・及びMnは各種成分のモル分率を示す。
【0033】
本実施の形態に用いられるアクリル系共重合体(A)の重合方法は、特に制限されるものではなく、溶液重合、乳化重合、懸濁重合等の方法により重合できる。なお、重合により得られる共重合体の混合物を用いて本実施の形態に係る粘着剤組成物を製造するにあたり、処理工程が比較的簡単で、かつ、短時間で粘着剤組成物を得られる溶液重合により重合することが好ましい。
【0034】
溶液重合は、重合槽内に所定の有機溶媒、単量体、重合開始剤、及び、必要に応じて用いられる連鎖移動剤を仕込み、窒素気流中又は有機溶媒の還流温度で、撹拌しながら数時間加熱反応させる等の方法を使用することができる。なお、本実施の形態に係るアクリル系共重合体(A)の分子量は、反応温度、時間、溶剤量、触媒の種類や量を調整することにより、所望の分子量にすることができる。
【0035】
本実施の形態に係る粘着剤組成物は、アクリル系共重合体(A)とは異なる、アクリル系共重合体(E)を更に含んでいても良い。本実施の形態に係る粘着剤組成物は樹脂成分としてアクリル系共重合体(A)とアクリル系共重合体(E)との混合物を使用することで、凝集力と粘性とをバランス良く調整することが出来る。
【0036】
本実施の形態に係るアクリル系共重合体(E)の共重合成分としては、(メタ)アクリル酸エステル、反応性官能基を有する単量体、およびその他の単量体としてアクリル系共重合体(A)で例示したものと同様のものを用いることができる。
【0037】
共重合成分としての各種反応性官能基を有する単量体のうち、カルボキシル基含有単量体及び水酸基含有単量体を共重合成分としてアクリル系共重合体(E)に含むことが好ましい。アクリル系共重合体(E)はカルボキシル基含有単量体及び水酸基含有単量体を共重合成分として含むことで高い凝集力を有しており、樹脂成分の凝集力と粘性の調整が容易になる。
【0038】
カルボキシル基含有単量体が共重合成分として含まれる割合は、粘着剤の凝集力を増加させて粘着剤組成物の耐久性を向上させることを目的として、アクリル系共重合体(E)に対して0.1重量%以上、好ましくは0.3重量%以上、特に好ましくは0.5重量%以上にする。また、カルボキシル基含有単量体が共重合成分として含まれる割合は、粘着剤組成物の粘着力が高くなりすぎることの抑制を目的として、アクリル系共重合体(E)に対して5重量%以下、好ましくは3重量%以下、特に好ましくは2重量%以下にする。
【0039】
水酸基含有単量体が共重合成分として含まれる割合は、白抜けの抑制をさせることを目的として、アクリル系共重合体(E)に対して、0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、更に好ましくは0.3重量%以上にする。また、水酸基含有単量体が共重合成分として含まれる割合は、耐久性試験での剥がれの発生を抑制することを目的として、アクリル系共重合体(E)に対して5重量%以下、好ましくは3重量%以下、特に好ましくは1重量%以下とする。
【0040】
本実施の形態に係るアクリル系共重合体(E)の重量平均分子量(Mw)は、粘着剤組成物に十分な凝集力を与えることを目的として、100万以上、好ましくは120万以上、特に好ましくは140万以上にする。また、アクリル共重合体(E)の重量平均分子量(Mw)は、粘着剤組成物の塗工作業性を確保することを目的として250万以下にする。
【0041】
本実施の形態に係るアクリル系共重合体(E)のガラス転移点(Tg)は、アクリル系共重合体(A)のガラス転移点と等しいか、アクリル系共重合体(A)のガラス転移点より高いことが好ましい。アクリル系共重合体(A)とアクリル系共重合体(E)のTgが上記関係にあれば、アクリル系共重合体(E)はアクリル系共重合体(A)以上の凝集力を有しており、樹脂成分の凝集力と粘性のバランスが取り易い。より具体的には、アクリル系共重合体(E)のガラス転移点は、粘着剤組成物に十分な凝集力を与え、十分な耐久性を発揮させることを目的として、−60℃以上、好ましくは−50℃以上にする。また、アクリル系共重合体(E)のガラス転移点は、支持基板に対する十分な密着性を粘着剤組成物に発揮させ、剥がれ等が生じない耐久性を発揮させることを目的として、0℃以下、好ましくは−30℃以下にする。
【0042】
本実施の形態に用いられるアクリル系共重合体(E)の重合方法は、特に制限されるものではなく、アクリル系共重合体(A)と同様の方法で重合できる。なお、重合により得られる共重合体の混合物を用いて本実施の形態に係る粘着剤組成物を製造するにあたり、処理工程が比較的簡単で、且つ短時間で行えることから溶液重合により重合することが好ましい。
【0043】
溶液重合は、一般に、重合槽内に所定の有機溶媒、単量体、重合開始剤、及び、必要に応じて用いられる連鎖移動剤を仕込み、窒素気流中又は有機溶媒の還流温度で、撹拌しながら数時間加熱反応させる等の方法を使用することができる。なお、本実施の形態に係るアクリル系共重合体(E)の重量平均分子量は、反応温度、時間、溶剤量、触媒の種類や量を調整することにより、所望の分子量にすることができる。
【0044】
アクリル系共重合体(A)の溶解性パラメーター(SP)とアクリル系共重合体(E)の溶解性パラメーター(SP)との差(ΔSP=SP−SP)は−0.5〜0.5が好ましく、−0.4〜0.4が更に好ましく、−0.2〜0.2が特に好ましい。溶解性パラメーターの差(ΔSP)が上記範囲内にあれば、アクリル系共重合体(A)とアクリル系共重合体(E)との相溶性が極めて優れているので好ましい。
【0045】
溶解性パラメーターはFedorの方法で計算される。Fedorの方法は、例えば「SP値 基礎・応用と計算方法」(山本秀樹著 株式会社情報機構発行、2005年)に記載されている。Fedorの方法において、溶解性パラメーターは下記式2より算出される。
式2 溶解性パラメーター=[ΣEcoh/ΣV]^2
式2中、Ecohは凝集エネルギー密度、Vはモル分子容である。原子団ごとに決められたEcohおよびVに基づき、高分子の繰り返し単位におけるEcohおよびVの総和ΣEcohおよびΣVを求めることによって、溶解性パラメーターを算出することができる。共重合体の溶解性パラメーターは、上記式2によりその共重合体を構成する各構成単位のそれぞれの単独共重合体の溶解性パラメーターを算出し、これらのSP値のそれぞれに各構成単位のモル分率を乗じたものを合算して算出される。
【0046】
アクリル系共重合体(A)とアクリル系共重合体(E)とを混合する割合は、耐久性試験での剥がれの発生を抑制することを目的として、重量比(アクリル系共重合体(A)の重量/アクリル系共重合体(E)の重量)で50/50以上、好ましくは70/30以上、特に好ましくは80/20以上にする。また、アクリル系共重合体(A)とアクリル系共重合体(E)を混合する割合は、耐久性試験での発泡の発生を抑制することを目的として、重量比(アクリル系共重合体(A)の重量/アクリル系共重合体(E)の重量)で99/1以下、好ましくは95/5以下、特に好ましくは90/10以下にする。
【0047】
本実施の形態に係る粘着剤組成物は、アクリル系共重合体(A)100重量部、又は、アクリル系共重合体(A)とアクリル系共重合体(E)との混合物100重量部に対して、5〜30重量部のイソシアネート化合物(B)を含有する。
【0048】
イソシアネート化合物(B)としては、例えば、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、該芳香族イソシアネート化合物の水素添加物等の脂肪族又は脂環族イソシアネート;それらイソシアネートの2量体もしくは3量体又はそれらイソシアネートと、トリメチロールプロパンなどのポリオールとのアダクト体などの各種イソシアネートに由来するイソシアネート化合物を用いることができる。これらは単独で、あるいは組み合せて使用することが出来る。
【0049】
イソシアネート化合物(B)は、例えば「コロネートL」、「コロネートHX」、「コロネートHL−S」、「コロネート2234」〔以上日本ポリウレタン工業(株)製〕、「デスモジュールN3400」〔住友バイエルウレタン(株)製〕、「デュラネートE−405−80T」、「デュラネートTSE−100」〔旭化成工業(株)製〕、「タケネートD−110N」、「タケネートD−120N」、「タケネートM−631N」「MT−オレスタ−NP1200」〔以上三井化学ポリウレタン(株)製〕などの商品名により市販されているものを好適に使用することができる。
【0050】
なかでも、イソシアネート化合物(B)として、耐久性と白抜け性の観点から芳香族イソシアネートに由来するイソシアネート化合物が好ましく、特にトリレンジイソシアネートに由来するイソシアネート化合物が好ましい。
【0051】
アクリル系共重合体(A)100重量部、又は、アクリル系共重合体(A)とアクリル系共重合体(E)との混合物100重量部に対するイソシアネート化合物(B)の使用量は、白抜けの抑制をさせることを目的として、5重量部以上、好ましくは10重量部以上にする。また、アクリル系共重合体(A)100重量部、又は、アクリル系共重合体(A)とアクリル系共重合体(E)との混合物に対するイソシアネート化合物(B)の使用量は、アクリル系共重合体とイソシアネート化合物(B)との相溶性を確保し、粘着剤として十分なタック感を発生させることを目的として、30重量部以下、好ましくは20重量部以下にする。
【0052】
また、本実施の形態に係る粘着剤組成物はアクリル系共重合体との反応に寄与していないイソシアネート化合物(B)のイソシアネート基が環境中の水と反応することで多量体を形成し、耐久性と白抜けの抑制に優れる良好な粘着物性を示していると思われる。イソシアネート基と水との反応性は比較的高く、アクリル系共重合体の反応性官能基に対して過剰量にイソシアネート基を入れなくとも、イソシアネート基の一部は環境中の水と反応することで多量体を形成していると考えられるが、多くの多量体を形成させて、耐久性と白抜けの抑制とを向上させるために、アクリル系共重合体の反応性官能基の合計1当量に対して1当量より多く、好ましくは1.01当量以上、特に好ましくは1.2当量以上のイソシアネート基を使用する。
【0053】
本実施の形態に係る粘着剤組成物は、イソシアネート化合物(B)以外の架橋剤を併用することも出来る。イソシアネート化合物(B)以外の架橋剤としては、アクリル系共重合体と反応して架橋構造を形成するものである限り、特に限定されるものではなく、アジリジン化合物、エポキシ化合物、メラミンホルムアルデヒド縮合物、金属塩、金属キレート化合物などをあげることができる。また、光学フィルムと粘着剤との密着性、耐久性の観点から、アジリジン化合物、エポキシ化合物を用いることが好ましい。これら架橋剤はそれぞれ単独で、又は2種以上組み合せて用いることができる。
【0054】
アジリジン化合物としては、イソシアネート化合物とエチレンイミンとの反応生成物が使用でき、イソシアネート化合物としては、前記で例示したものを用いることができる。またトリメチロールプロパンやペンタエリトリトールなどのポリオールと(メタ)アクリル酸などとの多価エステルにエチレンイミンを付加させた化合物も知られており、使用することができる。
【0055】
アジリジン化合物としては、例えば、N,N’−ヘキサメチレンビス(1−アジリジンカルボアミド)、メチレンビス[N−(1−アジリジニルカルボニル))−4−アニリン]、テトラメチロールメタン−トリス(β−アジリジニルプロピオナート)、トリメチロールプロパン−トリス(β−アジリジニルプロピオナート)などを挙げることができ、これらのうち、例えば「TAZO」、「TAZM」〔以上相互薬工(株)製〕、「ケミタイトPZ−33」〔(株)日本触媒製〕などの商品名により市販されているものを好適に使用することができる。
【0056】
エポキシ化合物としては、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリトリトールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、トリス(グリシジル)イソシアヌレート、トリス(グリシドキシエチル)イソシアヌレート、1,3−ビス(N,N−グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミンなどを用いることができる。
【0057】
エポキシ化合物のうち、3つ以上のエポキシ基を含有するエポキシ化合物が好ましく、中でもトリス(グリシジル)イソシアヌレート、トリス(グリシドキシエチル)イソシアヌレート、1,3−ビス(N,N−グリシジルアミノメチル)シクロヘキサンN,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミンなどのエポキシ化合物の使用がさらに好ましく、1,3−ビス(N,N−グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミンの使用が特に好ましい。このようなエポキシ化合物は、例えば「TETRAD−C」、「TETRAD−X」〔三菱瓦斯化学(株)製〕などの商品名により市販されているものを好適に使用することができる。
【0058】
本実施の形態に係る粘着剤組成物は、アクリル系共重合体(A)100重量部、又は、アクリル系共重合体(A)とアクリル系共重合体(E)との混合物100重量部に対して、0.05〜1重量部のポリエーテル変性シリコーン(C)が含有される。ポリエーテル変性シリコーン(C)としては、ジメチルポリシロキサンの両末端、片末端、側鎖、あるいは両末端と側鎖のメチル基の一部を、−R(CO)(CO)R’で置換したもの(ただし、Rは炭素数1以上のアルキレン基、R’は水素原子、又は炭素数1以上のアルキル基、aとbは0以上の整数かつa+b>1である。また、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体の場合は、ブロック又はランダム共重合体のどちらであっても良い。)、ジメチルポリシロキサンとポリオキシアルキレンとの直鎖状ブロック共重合体等を1種または2種以上用いることができる。
【0059】
このようなポリエーテル変性シリコーン(C)としては、例えば「KF−351A」、「KF−352A」、「KF−353」、「KF−354L」、「KF−355A」、「KF−615A」、「KF−945」、「KF−640」、「KF−641」、「KF−642」、「KF−643」、「KF−6020」、「X−22−6191」、「X−22−4515」、「KF−6011」、「KF−6012」、「KF−6013」、「KF−6015」、「KF−6016」、「KF−6017」、「X−22−4741」、「KF−1002」、「X−22−4952」、「X−22−4272」、「X−22−6266」、「KF−6004」、「KP−301」、「KP−323」、「KP−354」、「KP−355」、「KP−341」、「KP−118」、「F−501」、「X−22−3506」、「X−22−3004」、「KF−6005」、「KP−101」、「KF−889」、「KF−6003」、「X−22−4515」、「F−3031」、「X−24−1430」、「X−22−4991」、「KP−208」〔信越化学工業(株)製〕、「L−720」、「L−7604」、「Y−7006」、「BY−16−201」、「FZ−77」、「FZ−2101」、「FZ−2104」、「FZ−2110」、「FZ−2118」、「FZ−2120」、「FZ−2122」、「FZ−2130」、「FZ−2161」、「FZ−2162」、「FZ−2163」、「FZ−2164」、「FZ−2166」、「FZ−2191」、「FZ−2154」、「FZ−2203」、「FZ−2207」、「FZ−2208」、「L−7001」、「L−7002」、「SF−8427」、「SF−8428」、「SH−3749」、「SH−3773M」、「SH−8400」、「FZ−5609」、「FZ−7001」、「FZ−7002」〔東レ・ダウコーニング(株)製〕、「TSF−4440」、「TSF−4441」、「TSF−4445」、「TSF−4446」、「TSF−4450」、「TSF−4452」、「TSF−4460」〔モメンティブ
・パフォーマンス ・マテリアルズ・ジャパン合同会社製〕などの商品名により市販されているものを好適に用いることができる。
【0060】
アクリル系共重合体(A)100重量部、又は、アクリル系共重合体(A)とアクリル系共重合体(E)との混合物100重量部に対するポリエーテル変性シリコーン(C)の使用量は、粘着剤の粘着力及び経時での粘着力上昇を抑制することを目的として、0.05重量部以上、好ましくは0.1重量部以上にする。また、アクリル系共重合体(A)100重量部、又は、アクリル系共重合体(A)とアクリル系共重合体(E)との混合物100重量部に対するポリエーテル変性シリコーン(C)の使用量は、粘着剤と被着体とが良好な接着性を保つこと、耐久性試験での剥がれの発生を抑制することを目的として、1重量部以下、好ましくは0.5重量部以下、特に好ましくは0.3重量部以下にする。
【0061】
また、目的に応じて、ポリエーテル変性シリコーン(C)以外のシリコーンオイルを適宜組み合せても良い。
【0062】
本実施の形態に係る粘着剤組成物は、アクリル系共重合体(A)100重量部、又は、アクリル系共重合体(A)とアクリル系共重合体(E)との混合物100重量部に対して、0.03〜1重量部のシランカップリング剤(D)が含有される。シランカップリング剤(D)としては、例えばγ
− メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ − メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ − メルカプトプロピルジメトキシメチルシランなどのメルカプト基含有シランカップリング剤;
例えば、β − ( 3 , 4 − エポキシシクロヘキシル) エチルトリメトキシシラン、β − ( 3 , 4 − エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、メチルトリ(
グリシジル) シラン、γ − グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ − グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ − グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのエポキシ基含有シランカップリング剤;
例えば、3 − トリエトキシシリルプロピルコハク酸(無水物) 、3 − トリメトキシシリルプロピルコハク酸( 無水物) 、3 − メチルジメトキシシリルプロピルコハク酸(
無水物) 、メチルジエトキシシリルプロピルコハク酸( 無水物) 、1 − カルボキシ− 3 − トリエトキシシリルプロピルコハク酸( 無水物) などのカルボキシル基含有シランカップリング剤;例えば、N
− ( β − アミノエチル) − γ − アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N −( β − アミノエチル) − γ − アミノプロピルトリメトキシシラン、N
− ( β − アミノエチル) − γ − アミノプロピルトリエトキシシラン、γ − アミノプロピルトリメトキシシラン、γ − アミノプロピルトリエトキシシラン、N
− フェニル− γ − アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有シランカップリング剤; 例えば、γ − ヒドロキシプロピルトリメトキシシランなどの水酸基含有シランカップリング剤;例えば、γ
− イソシアネートプロピルトリメトキシシランなどのイソシアネート基含有シランカップリング剤などを1種または2種以上用いることができる。
【0063】
上記シランカップリング剤(D)のうち、高温又は高温高湿下における耐久性が良好であることから、特にエポキシ基含有シランカップリング剤が好ましい。
【0064】
上記シランカップリング剤(D)の含有量は、高温、又は高温高湿下において粘着剤と被着体との間で剥がれ、気泡等が発生することの抑制を目的として、アクリル系共重合体(A)100重量部、又は、アクリル系共重合体(A)とアクリル系共重合体(E)との混合物100重量部に対して、0.03重量部以上、好ましくは0.05重量部以上にする。また、上記シランカップリング剤(D)の含有量は、粘着剤の経時変化によって粘着剤の粘着力が増加することによるリワーク性の低下の抑制を目的として、アクリル系共重合体(A)100重量部、又は、アクリル系共重合体(A)とアクリル系共重合体(E)との混合物100重量部に対して、1重量部以下、好ましくは0、5重量部以下、特に好ましくは0.3重量部以下にする。
【0065】
本実施の形態に係る粘着剤組成物には、上記の通りポリエーテル変性シリコーン(C)とシランカップリング剤(D)を用いている。
【0066】
粘着剤組成物にポリエーテル変性シリコーン(C)を含有させた場合は、粘着剤と被着体との接着性が低下し、初期の粘着力及び経時での粘着力上昇が小さく、リワーク性に優れた粘着剤が得られる。しかしながら、ポリエーテル変性シリコーン(C)のみでは、高温又は高温高湿下での光学フィルムの伸縮に耐えることができず、剥がれが発生し、耐久性が非常に悪いものであった。
【0067】
粘着剤組成物にシランカップリング剤(D)を含有させた場合は、粘着剤と被着体との接着性が向上し、耐久性が向上する。しかしながら、シランカップリング剤(D)のみでは、経時で粘着剤の粘着力が増加するため、リワーク性に劣っていた。
【0068】
上記の通り、ポリエーテル変性シリコーン(C)やシランカップリング剤(D)のみを使用した粘着剤組成物では、耐久性とリワーク性を両立することは難しかった。しかしながら、特定量にてポリエーテル変性シリコーン(C)とシランカップリング剤(D)とを用いることにより、初期又は経時ではポリエーテル変性シリコーン(C)の添加の効果が主に発揮されることでリワーク性に優れ、高温又は高温高湿下ではシランカップリング剤(D)の添加の効果が主に発揮されることで耐久性が良好な粘着剤組成物を得ることができる。このように、粘着剤組成物にポリエーテル変性シリコーン(C)とシランカップリング剤(D)を特定量用いることにより、耐久性とリワーク性が良好な粘着剤が得られる。
【0069】
本実施の形態に係る粘着剤組成物には、上述したアクリル共重合体(A)、又は、アクリル系共重合体(A)とアクリル系共重合体(E)との混合物、イソシアネート化合物(B)、ポリエーテル変性シリコーン(C)、シランカップリング剤(D)、イソシアネート化合物(B)以外の架橋剤の他に、本実施の形態に係る粘着剤組成物が発揮する効果を損なわない範囲内の量で、各種添加剤、溶剤、耐候性安定剤、タッキファイヤ−、可塑剤、軟化剤、染料、顔料、無機充填剤等を適宜配合することができる。耐候性安定剤、タッキファイヤ−、可塑剤、軟化剤、染料、顔料、無機充填剤等の配合量の範囲は、アクリル共重合体(A)100重量部、又は、アクリル系共重合体(A)とアクリル系共重合体(E)との混合物100重量部に対し、30重量部以下が好ましく、更に好ましくは20重量部以下、最も好ましくは10重量部以下にする。配合量を係る範囲内にすることにより、粘着剤組成物の粘着力、濡れ性、耐熱性、糊転着性のバランスを適切に保つことができ、良好な各種物性を示す粘着剤組成物が得られる。
【0070】
本実施の形態に係る光学フィルムは、本実施の形態に係る粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する光学フィルムである。その製造方法としては、例えば、剥離シートの上に本実施の形態に係る粘着剤組成物からなる粘着剤層を形成し、得られた剥離シートと粘着剤層の積層物の粘着剤側に光学フィルムを積層し、剥離シート/粘着剤層/光学フィルムの積層物とする。液晶セル等の被着体と積層する際は、その積層物から剥離フィルムを剥離し、剥離された粘着剤層を液晶セル等の被着体の表面に押し当てて接着することで作成できる。
【0071】
剥離シートとしては、フッ素系樹脂、パラフィン、ワックス、シリコーン等の離型剤で離型処理を施したポリエステル等の合成樹脂シートを用いることができる。剥離シート上に形成される粘着剤層の厚さは、例えば、乾燥後の厚みで1〜100μm、好ましくは5〜50μm、更に好ましくは15〜30μm程度の厚さにする。剥離シート上に粘着剤層を形成する更に具体的な方法は、本実施の形態に係る粘着剤組成物を剥離シート上に塗布し、乾燥することにより形成する方法である。剥離シート上に塗布された粘着剤組成物は、熱風乾燥機で70〜120℃、1〜3分程度の加熱条件で乾燥することができる。
【0072】
本実施の形態に係る粘着剤組成物は、アクリル系共重合体の反応性官能基とイソシアネート化合物(B)が架橋構造を形成し、架橋反応に寄与しなかったイソシアネート基が環境中の水と反応することで多量体を形成すると考えられる。架橋構造および多量体が形成された後におけるゲル分は、十分な凝集力を与えることを目的として60重量%以上、好ましくは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上にする。
【0073】
なお、ゲル分とは、下記方法により測定できる。
(粘着剤組成物のゲル分の測定方法)
下記(1)〜(6)に従って測定する。
(1)粘着剤組成物の溶液をシリコーン系離型剤で表面処理された剥離シートに、乾燥後の塗工量が25g/mとなるように塗布し、100℃で90秒間熱風循環式乾燥機にて乾燥し、フィルム状の感圧接着剤層を形成する。
(2)形成された感圧接着剤層を23℃、湿度50%RHで10日間養生する。
(3)精秤した250メッシュの金網(100mm×100mm)に(2)で得られたフィルム状粘着剤層を約0.25g貼付し、ゲル分が漏れないように包む。その後、精密天秤にて重量を正確に測定して試料を作成する。
(4)上記の金網を酢酸エチル溶液に3日間浸漬する。
(5)浸漬後、金網を取り出して少量の酢酸エチルにて洗浄し、120℃で24時間乾燥させる。その後、精密天秤にて重量を正確に測定する。
(6)下式によりゲル分を計算する。
ゲル分(重量%)=(C−A)/(B−A)×100
ただし、Aは金網の重量(g)、Bは粘着剤を貼付した金網の重量(粘着剤重量)(g)、Cは浸漬後、乾燥させた金網の重量(ゲル樹脂重量)(g)である。
【0074】
本実施の形態に係る光学フィルムは、粘着剤層を形成後、23℃で24時間経過後の無アルカリガラス板に対する粘着力、及び23℃で30日間経過後の無アルカリガラス板に対する粘着力が0.5〜10N/25mmである。
【0075】
光学フィルムに粘着剤層を形成した後、リワーク作業する場合は、直ちにリワーク作業がなされるか、あるいは、比較的良好な環境で長時間保管された後にリワーク作業がなされる。本実施の形態に係る粘着剤から形成された粘着層は、23℃で30日間経過後の無アルカリガラス板に対する粘着力が10N/25mm以下であるため、容易にリワーク作業できる。
【0076】
本実施の形態に係る粘着剤は、架橋構造および多量体が形成された後における粘着剤の引張試験における破断時の伸度が300%〜1500% であり、200%モジュラスが0.15N/mm〜5N/mmである。粘着剤の引張試験における破断時の伸度は、耐久性において剥がれが生じることの抑制を目的として、300%以上、好ましくは400%以上、特に好ましくは500%以上とする。また、粘着剤の引張試験における破断時の伸度は、耐久性において発泡が生じることの抑制を目的として、1500%以下、好ましくは1000%以下とする。粘着剤の引張試験における200%モジュラスは、白抜けを抑制することを目的として、0.15N/mm以上、好ましくは0.4N/mm以上とする。また、粘着剤の引張試験における200%モジュラスは、耐久性において剥がれが生じることの抑制を目的として、5N/mm以下、好ましくは3N/mm以下、特に好ましくは2N/mm以下とする。
【0077】
なお、粘着剤の引張試験における破断時の伸度、及び、200%モジュラスは下記測定方法により測定された値である。
(粘着剤の引張試験における破断時の伸度、及び、200%モジュラスの測定方法)
下記(1)〜(5)に従って測定する。
(1)粘着剤組成物の溶液を、シリコーン系離型剤で表面処理された離型シートに、乾燥後の塗布厚が25μmとなるように塗布し、100℃で90秒間熱風循環式乾燥機にて乾燥し、フィルム状の粘着剤を形成する。
(2)形成された粘着剤層を23℃、湿度50%RHの環境下で10日間養生する。
(3)(2)で得られたフィルム状の粘着剤を150mm×30mm切り出し、粘着剤層を30mm幅の円柱状に形成し、試験サンプルを作成する。
(4)23℃の環境下で、試験サンプルを、チャック間距離10mm、引っ張り速度100mm/minの条件で引張試験を行い、応力−歪み曲線を求めた。
(5)試験サンプルが破断したときの歪み量を破断伸度とし、伸度が200%の時の応力を初期の断面積(3.75mm)で除した値を200%モジュラスとして得た。
【0078】
(実施の形態の効果)
本実施の形態に係る粘着剤、当該粘着剤層を有する光学フィルムは、上述した構成を備えるので、光学フィルムは被着体に対して、長期間、所定の粘着力に抑えられていることからリワーク性に優れている。また、本実施の形態に係る粘着剤、当該粘着剤層を有する光学フィルムは、200%モジュラスに代表される高い凝集力を有している為に、白抜けの発生が抑制され、200%モジュラスに代表される高い凝集力と伸び率に代表される適度な粘性とを有している為に、高温又は高温高湿下で通常発生する剥がれ、気泡の発生を抑制することができる。
【実施例】
【0079】
以下に実施例、及び比較例を説明する。なお、実施例、及び比較例において用いた試験片の作成、並びに各種の試験方法、及び評価方法は以下の通りである。
【0080】
(1)試験用光学フィルムの作成
光学フィルムの一例として偏光フィルムを使用し粘着剤層を有する偏光フィルムを作成した。シリコーン系離型剤で表面処理された剥離フィルム上に、乾燥後の塗工量が25g/cmとなるように、粘着剤組成物を塗布した。次に、100℃で90秒間熱風循環式乾燥機にて乾燥して粘着剤層を形成した。続いて、偏光ベースフィルム〔ポリビニルアルコール(
PVA )フィルムを主体とする偏光子の両面にセルローストリアセテート( TAC )フィルムをラミネートしたもの;約190μm 〕の裏面に粘着剤層面を貼り合せ、加圧ニップロールに通して圧着した。圧着後、23℃、50%RH
で10日間養生させて粘着剤層を有する偏光フィルムを得た。
【0081】
(2)粘着力の測定
(2−1)23℃の環境下に24時間放置後の粘着力の測定
「(1)試験用光学フィルムの作成」において作成した偏光フィルムを25mm×150mmにカットした後、この偏光フィルム片を、卓上ラミネート機を用いて厚さ0.7mmコーニング社製無アルカリガラス板「#1737」に圧着して試験サンプルとした。このサンプルをオートクレーブ処理(50℃、5kg/cm、20分)した。次にこのサンプルを、23℃、50%RHの条件下で24時間放置した後、180度剥離における粘着力(剥離速度:300mm/分)を測定した。なお、本発明の実施の形態、及び実施例において、「粘着剤層を形成後、23℃で24時間経過後の無アルカリガラス板に対する粘着力」とは、本試験法で測定した粘着力を意味する。
【0082】
(2−2)23℃の環境下に30日間放置後の粘着力の測定
「(2−1)23℃の環境下に放置後の粘着力の測定」と同様に作成し、オートクレーブ処理を施した試験サンプルを、23℃、50%RHの条件下で30日間放置した後、180度剥離における粘着力(剥離速度:300mm/分)を測定した。なお、本発明の実施の形態、及び実施例において、「粘着剤層を形成後、23℃で30日間経過後の無アルカリガラス板に対する粘着力」とは、本試験法で測定した粘着力を意味する。
【0083】
(3)リワーク性の評価
「(2−2)23℃の環境下に30日間放置後の粘着力の測定」にて測定した23℃で30日間経過後の無アルカリガラス板に対する粘着力、および無アルカリガラス板への粘着剤の残留を目視観察して評価した。評価基準は次の通りである。
◎:8N/25mm以下で、かつ、無アルカリガラス板への粘着剤の残留がない。
○:8N/25mmより大きく10N/25mm以下で、かつ、無アルカリガラス板への粘着剤の残留がない。
×:10N/25mmより大きい、又は無アルカリガラス板への粘着剤の残留が有る。
【0084】
(4) 耐久性の評価
「(1)試験用光学フィルムの作成」において作成した偏光フィルムを、吸収軸に対して長辺が45゜になるようにカットした140mm
× 260mm(12インチ)の試験片を用い、0.7mmコーニング社製無アルカリガラス板「#1737」の片面にラミネーターを用いて貼付した。次に、このサンプルにオートクレーブ処理(50℃、5kg/cm、20分)を施し、23℃、50%RHの条件下で24時間放置した。その後、次の温度、及び湿度条件下に1000時間放置し、発泡、剥れや浮きの状態を目視観察にて評価した。評価基準は次の通りである。
【0085】
(耐久性評価基準)
a)発泡
◎:発泡がほとんど見られない。
×:発泡が顕著に見られる。
b)剥がれ
◎:4辺において、外周端部の位置に剥がれが無いもの。
○:4辺において、外周端部から0.8mm以上の位置に剥がれが無いもの。
×:4辺のいずれか1辺に、外周端部から0.8mm以上の位置に剥がれがあるもの。
【0086】
(5)白抜け現象の評価試験
「(4)耐久性の評価」と同様のサイズの粘着剤層を有する偏光フィルムを0.7mmコーニング社製無アルカリガラス板「#1737」の両面に、偏光軸が互いに直交するように貼付した試験サンプルを作成した。次に、このサンプルにオートクレイブ処理(50℃、5kg/cm、20分)を施し、23℃、50%RHの条件下で24時間放置した。その後、80℃、ドライの条件下に500時間、放置した。放置後、23℃、50%RHの条件下で均一光源を使用し、白抜け状態を目視により観察した。評価基準は次の通りである。
◎:白抜けが全く認められない。
○:白抜けがほとんど認められない。
×:白抜けが大きい。
【0087】
(アクリル系共重合体の製造)
(製造例1)
温度計、攪拌機、窒素導入管、及び還流冷却管を備えた反応器内に、n−ブチルアクリレート(BA)98.975重量部、アクリル酸(AA)1重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)0.025重量部、酢酸エチル(EAc)100重量部、及びアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.1重量部を入れ、反応容器の空気を窒素ガスで置換した。その後、攪拌下、窒素雰囲気中で、反応容器の内容物温度を65℃に昇温させて8時間反応させた。反応終了後、反応混合物を酢酸エチルで希釈し、固形分19.2重量%のアクリル系共重合体溶液を得た。アクリル系重合体の重量平均分子量は152万であった。
【0088】
(製造例2〜3)
製造例1で使用した共重合体組成の代わりに、共重合体組成を表1の各製造例に示した単量体組成とした以外は製造例1と同様にして重合した。表1に、各製造例の共重合体組成、固形分、ガラス転移点(Tg)、溶解性パラメーター(SP値)、重量平均分子量(Mw)を示した。
【0089】
【表1】

【0090】
(偏光板用感圧接着剤組成物の製造)
(実施例1)
アクリル系共重合体(A)として製造例1で合成したアクリル共重合体溶液を469重量部(アクリル系共重合体(A)として90重量部)、アクリル系共重合体(E)として製造例3で合成したアクリル系共重合体溶液を51重量部(アクリル共重合体(E)として10重量部)、イソシアネート化合物(B)としてコロネートL20重量部(日本ポリウレタン社製イソシアネート系化合物、有効成分15重量部)、ポリエーテル変性シリコーン(C)としてSH−3773M0.2重量部(東レ・ダウコーニング社製ポリエーテル変性シリコーンオイル、有効成分0.2重量部)、シランカップリング剤(D)としてKBM−403 0.1重量部(信越化学工業社製シランカップリング剤、有効成分0.1重量部)を十分に攪拌混合して粘着剤組成物を得た。アクリル系共重合体(A)とアクリル系共重合体(E)の反応性官能基の合計1当量に対するイソシアネート基の量(表2に、「NCO/樹脂官能基」として記載)は4.32当量であった。得られた粘着剤組成物を使用して、前記のゲル分の測定方法、破断時の伸度、及び、200%モジュラスの測定方法により各種試験を行い、その結果を表2に示す。更に、得られた粘着剤組成物を使用して、前記の試験用光学フィルムの作成方法により試験用光学フィルムを作成し、前記の各種測定を行い、その結果を表3に示す。
【0091】
(実施例2〜7、比較例1〜3)
実施例1における配合組成の代わりに、表2に示した各実施例、及び比較例の配合組成を採用する以外は実施例1と同様にして粘着剤組成物(実施例2ないし7に係る粘着剤組成物、及び比較例1ないし3に係る粘着剤組成物)を作成した。得られた粘着剤組成物を使用して、前記のゲル分の測定方法、破断時の伸度、及び、200%モジュラスの測定方法により各種試験を行い、その結果を表2に示す。更に、得られた粘着剤組成物を使用して、前記の試験用光学フィルムの作成方法により試験用光学フィルムを作成し、前記の各種測定を行い、その結果を表3に示す。
【0092】
【表2】

【0093】
なお、表2において、「NCO/樹脂官能基」は、各配合組成例でのアクリル系共重合体の反応性官能基の合計1当量に対するイソシアネート基の量を表す。
【0094】
なお、表2における各配合物の略号は以下の通りであり、各成分の添加量は有効成分の重量部である。
(a)コロネートL「日本ポリウレタン社製のイソシアネート系化合物」
商品名;コロネートL、有効成分75%
トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート
イソシアネート化合物(B)成分
(b)TETRAD−X「三菱瓦斯化学社製のエポキシ化合物」
商品名;TETRAD−X、有効成分100重量%
化学名;N、N、N’、N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン
エポキシ化合物
(c)SH−3773M「東レ・ダウコーニング社製のポリエーテル変性シリコーン」
商品名;SH−3773M、有効成分100%、
ポリエーテル変性シリコーン(C)成分
(d)KBM−403「信越化学工業社製のシランカップリング剤」
商品名;KBM−403、有効成分100%
化学名;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、
シランカップリング剤(D)成分
【0095】
【表3】

【0096】
表3を参照すると分かるように、実施例1ないし7に係る全ての光学フィルムは、リワーク性、耐久性(80℃)、耐久性(60℃×90%RH)、白抜けの全ての項目において評価基準が「◎」又は「○」を示した。すなわち、実施例1ないし7に係る光学フィルムは、高温又は高温高湿の環境下においても耐久性に優れると共に白抜けを抑制し、光学フィルムの貼り直しが要求される場合は容易にリワークできることが示された。
【0097】
なお、本実施の形態、及び実施例に係る光学フィルム用粘着剤を有する光学フィルムは、リワーク性に優れ、高温又は高温高湿下で通常発生する剥がれや気泡の発生がないため、パーソナルコンピュータ、テレビジョン、カーナビゲーション等の表示装置に用いられる光学フィルムに適用することができる。
【0098】
以上、本発明の実施の形態、及び実施例を説明したが、上記に記載した実施の形態、及び実施例は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態、及び実施例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性官能基を含有するアクリル系共重合体(A)と、前記アクリル系共重合体(A)100重量部に対して、5〜30重量部のイソシアネート化合物(B)と、0.05〜1重量部のポリエーテル変性シリコーン(C)と、0.03〜1重量部のシランカップリング剤(D)とを含有する粘着剤組成物。
【請求項2】
前記アクリル系共重合体(A)とは異なる、反応性官能基を含有するアクリル系共重合体(E)を更に含み、前記イソシアネート化合物(B)、前記ポリエーテル変性シリコーン(C)、前記シランカップリング剤(D)は、アクリル系共重合体(A)とアクリル系共重合体(E)との混合物100重量部に対して含有してなる請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
25℃での引っ張り試験における破断時の伸度が300%〜1500%であり、200%モジュラスが0.15N/mm〜5N/mmである請求項1又は2に記載の粘着剤組成物からなる粘着剤。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する光学フィルム。
【請求項5】
請求項3に記載の粘着剤からなる層を有する光学フィルム。

【公開番号】特開2010−159346(P2010−159346A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−2172(P2009−2172)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(000004592)日本カーバイド工業株式会社 (165)
【Fターム(参考)】