説明

粘着剤組成物および加工工程保護フィルム

【課題】加工工程保護フィルム用粘着剤組成物として、適度の接着力を有し、打ち抜き加工性に優れ、特にジッピング、糊残り、粉落ちのない粘着剤組成物および該粘着剤を使用した加工工程保護フィルムを提供すること。
【解決手段】加工工程保護フィルム用粘着剤組成物であって、反応性官能基として、0.1〜10重量%の水酸基含有単量体を共重合成分として含み、ガラス転移点(Tg)が−60〜−40℃のアクリル共重合体(A)100重量部に対し、ポリオキシアルキレン基を有するジメチルルシリコン化合物(B)0.01〜2.0重量部、アクリル共重合体(A)中の反応性官能基に対して0.1〜1.5当量のイソシアネート基を有する架橋剤(C)を含有することを特徴とする粘着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工工程保護フィルム及びそれに用いる粘着剤組成物に関し、さらに詳しくは、基材等を貼り付けた後フィルムを打ち抜き加工する際に粉落ち(カット端面の感圧接着剤がはがれ落ち汚染する現象)がなく、粘着力が低水準でジッピングがなく、且つ被着体への汚染性・熱処理による粘着力の上昇が少ない加工工程保護フィルムおよびそれに用いる粘着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器部品などは、小型化が進んだため、その製造において、表面に固定用粘着剤層が形成された粘着フィルム(加工工程保護フィルム)に基板材料等の部材を仮粘着固定し、各部品の形に打ち抜き加工等を行い、加工終了後に、粘着フィルムから各部品を分離して、使用するという部品の製造方法が行われている。
【0003】
加工工程保護フィルムは、セラミック加工工程時、FPC材料のエッチング工程時、薄いプラスチックフィルム・金属箔の印刷時、薄いシート・フィルムの多面取り抜き加工時、金属箔の打ち抜き加工時、拡散フィルムなど光学フィルムの多面取り抜き加工時等の支持体・キャリアーフィルムとして使用されている。たとえば基板用セラミックスの成形には、グリーンシート法と呼ばれるテープ成形法があり、この成形法では、バインダーに熱可塑性樹脂を使用し、有機溶媒を用いてセラミック原料粉末と混合して得た泥漿を薄いシートに成形し、その後に保護用の粘着フィルム上に仮着した状態で打ち抜き加工、カッテイングなどの成形加工処理及び導電ペーストの充填などの加工処理を施して乾燥した後に、パターン印刷などの処理が行われる。
【0004】
上記成形に使用されている加工工程保護フィルムは、パンチングやカッテイング工程で柔軟性のあるグリーンシートの保護テープとしての働きをし、成形加工工程に引き続く導電ペーストの充填時にはマスキングテープの機能を果たし、さらに乾燥工程や熟成工程においては成形されたグリーンシートの収縮を防止して寸法を安定させる働きをしており、ポリエステルタイプのフィルム、ポリプロピレンフィルム等の他に、トリアセチルセルロースフィルム、ジアセチルセルロースフィルムなどが使用されている。例えば、特開1996−60104(特許文献1)、特開平1997−279102(特許文献2)には このように使用される加工工程保護フィルムが開示されている。
【0005】
加工工程保護フィルムは拡散フィルムなどの光学フィルムや薄い構成のFPC材料の支持体に使用され、加工工程保護フィルムを貼り付けた状態で打ち抜き加工し、最終的に加工工程保護フィルムをはがして使用する。しかしながら、加工工程保護フィルムの粘着力が強すぎると、光学フィルムやFPC材料等が折れたり、変形したりする。また、高温環境または加熱条件雰囲気に曝される場合は粘接着力が上昇して、剥離が困難になって作業効率が低下したり、著しい場合は、基板の裏面に粘着剤が残留して(いわゆる糊残り)、次の工程の障碍になったり、あるいは、製品の性能が損なわれる場合もあったため、初期接着強度として容易に脱落しない程度の接着強度を有し、しかも高温加熱した後においても容易に剥離できる程度の軽い接着強度を保持することができる耐熱性粘着剤組成物として特許文献3に開示された特定の構造のアクリル系樹脂混合物を架橋した耐熱性粘着剤組成物を本用途に用いられている。
【0006】
しかしながら、従来の加工工程保護フィルム(低水準の粘着力でジッピングのない凝集力の高い粘着剤組成物)を使用すると、打ち抜き加工時、裁断刃に粘着剤が粉状に付着し、精密電子機器内を粘着剤カスで汚染する(粉落ち)という問題が発生した。
【特許文献1】特開1996−60104
【特許文献2】特開1997−279102
【特許文献3】特開2008−30103
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、前述した加工用として、適度の接着力を有し、打ち抜き加工性に優れ、特にジッピング、糊残り、粉落ちのない粘着剤組成物および加工工程保護フィルムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】

上記課題を解決するために本発明者らは、種々の既存の樹脂フィルムについて検討した結果、反応性官能基として水酸基を含有する単量体を共重合成分として含み、特定のガラス転移点(Tg)を有するアクリル共重合体(A)に対し、特定量の ポリオキシアルキレン基を有するジメチルシリコン化合物(B)および イソシアネート基を有する架橋剤(C)を含有することを特徴とする粘着剤組成物が、前記課題を解決するバランスの取れた特性を有する粘着剤組成物であることを見い出し、本発明を完成した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の粘着剤組成物は、特定のアクリル共重合体(A)と特定のシリコン化合物(B)と特定の架橋剤(C)を含有する粘着剤組成物である。
【0010】
上記アクリル共重合体(A)は、その分子中に0.1〜10重量%の反応性官能基として水酸基を含有する単量体を共重合成分として含み、ガラス転移点(Tg)が−60℃〜−40℃のアクリル共重合体である。
【0011】
前記水酸基含有単量体の種類としては、水酸基を含有している単量体であれば特に制限はなく、水酸基を含有するアクリル単量体及びメタクリル単量体その他の単量体を挙げられる(以下、アクリル単量体とメタクリル単量体を併記する場合には(メタ)アクリル単量体と記載することがある)。上記水酸基を含有する(メタ)アクリル単量体としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-メチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,1-ジメチル-3-ブチル(メタ)アクリレート、1,3-ジメチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2,4-トリメチル-3-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-3-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、N−メチロールアクリルアミドを挙げることができる。
【0012】
上記その他の単量体としては、例えば、アリルアルコール、メタリルアルコール等を挙げることができる。
【0013】
これらの単量体の中で、他の単量体と共重合してアクリル共重合体(A)を合成する際の他の単量体との相溶性及び共重合性が良好である、並びに架橋剤との架橋反応性が良好である観点から、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、が好ましく、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが更に好ましい。
【0014】
上記水酸基含有単量体の上記アクリル共重合体(A)分子中に共重合成分として含まれるカルボキシル基含有単量体としては、カルボキシル基を有する単量体であれば特に限定するのではなく、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、桂皮酸、コハク酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリ レート、マレイン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フマル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,2-ジカルボキシシクロヘキサンモノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ダイマー、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)
アクリレート等を挙げることができる。
【0015】
上記官能基含有単量体の上記アクリル共重合体(A)分子中に共重合成分として含まれる含有量は水酸基含有単量体とカルボキシル基含有体の合計量が、アクリル共重合体(A)に対して0.1〜10重量%、好ましくは1〜8重量%、更に好ましくは3から7重量%であるのがよい。
【0016】
官能基含有単量体の共重合成分として含まれる含有量が上記下限値以上であれば表面保護フィルムを剥離する際の被着体への汚染(クモリ・糊残り)がないので好ましく、一方該上限値以下であれば表面保護フィルムを剥離する際にジッピングが生じないので好ましい。
【0017】
カルボキシル基含有単量体は触媒としても働き、カルボキシル基含有単量体を共重合する場合には、カルボキシル基含有単量体がアクリル共重合体(A)中に共重合成分として含まれる含有量はアクリル共重合体(A)中に共重合成分として含まれる含有量は、0.1〜2.0重量%、好ましくは0.3〜1.0重量%、さらに好ましくは0.4〜0.8重量%の範囲であるのがよい。
【0018】
カルボキシル基含有単量体がアクリル共重合体(A)中に共重合成分として含まれる含有量が上限値以下であれば、(ポリ)イソシアネ−ト化合物を配合した後の粘着剤組成物のポットライフが十分であるので好ましく、一方該下限値以上であれば、再剥離時の接着力が大きくなりすぎることがなく、特に打ち抜き加工後、加工工程保護フィルムをはがす場合でも薄いシート・フィルム等の部材を破壊するなどの不都合を生じることなく加工工程保護フィルムを容易に剥離することができるので好ましい。
【0019】
本発明において、上記アクリル共重合体(A)とは、共重合体中に共重合成分として(メタ)アクリル単量体が70重量%以上含まれるものを意味し、好ましくは90重量%以上含まれるのが好ましい。共重合体(A)中に共重合成分として含まれる(メタ)アクリル単量体が上記下限値未満であれば、粘着剤の耐熱性が低下するためである。
【0020】
また、前記水酸基含有単量体のうち(メタ)アクリル酸エステルであるものも、上記共重合体(A)中に含有する共重合成分として(メタ)アクリル単量体の量としてカウントされる。
【0021】
上記アクリル単量体としては、アクリル酸エステル構造を有するものであれば特に限定するものではなく、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、i-ブチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、i-オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-ノニルアクリレート、i-ノニルアクリレート、n-デシルアクリレート、n-ドデシルアクリレート、ステアリルアクリレート等のアクリル酸の炭素数1〜18の直鎖もしくは分枝アルキルエステルが挙げられる。
【0022】
上記メタクリル系単量体としては、メタクリル酸エステル構造を有するものであれば特に限定するものではなく、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、n-ドデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等のメタクリル酸の炭素数1〜18の直鎖もしくは分枝アルキルエステル、更にはこれらの各種誘導体の1種又は2種以上を選ぶことができる。
【0023】
上記アクリル共重合体(A)は、上記アクリル共重合体(A)の定義を超えない範囲で(メタ)アクリル単量体以外の単量体を共重合成分として含有することができる。(メタ)アクリル単量体以外の単量体としては、例えば飽和脂肪酸ビニルエステル、例えば、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、「バ−サチック酸ビニル」(商品名)等(好ましくは酢酸ビニル);芳香族ビニル単量体、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等;シアン化ビニル単量体、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル;マレイン酸もしくはフマル酸のジエステル、例えば、ジメチルマレ−ト、ジ−N−ブチルマレ−ト、ジ−2−エチルヘキシルマレ−ト、ジ−N−オクチルマレ−ト、ジメチルフマレ−ト、ジ−N−ブチルフマレ−ト、ジ−2−エチルヘキシルフマレ−ト、ジ−N−オクチルフマレ−ト等を挙げることができる。
【0024】
更に、上記アクリル共重合体(A)に共重合成分として含有されていてもよい単量体として、必要に応じて、分子内に1個のラジカル重合性不飽和基の他に少なくとも1個の官能基を有する単量体単位であって、上記水酸基含有単量体以外の単量体を含有することができる。
【0025】
上記の単量体としては、官能基として、例えば、アミド基もしくは置換アミド基、アミノ基もしくは置換アミノ基、低級アルコキシル基又はエポキシ基等を有する単量体を挙げることができ、また、分子内にラジカル重合性不飽和基を2個以上有する単量体も使用できる。
【0026】
上記の官能基としてアミド基もしくは置換アミド基、アミノ基もしくは置換アミノ基を有する単量体の具体例としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロ−ルアクリルアミド、N−メチロ−ルメタクリルアミド、N−N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−i−ブトキシメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド(好ましくはアクリルアミド、メタクリルアミド)等のアミド基もしくは置換アミド基含有単量体;例えば、アミノエチルアクリレ−ト、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレ−ト、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレ−ト、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレ−ト、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレ−ト等のアミノ基もしくは置換アミノ基含有単量体を挙げることができる。
【0027】
上記の官能基として低級アルコキシル基又はエポキシ基等を有する単量体としては、例えば、2−メトキシエチルアクリレ−ト、2−エトキシエチルアクリレ−ト、2−N−ブトキシエチルアクリレ−ト、2−メトキシエトキシエチルアクリレ−ト、2−エトキシエトキシエチルアクリレ−ト、2−N−ブトキシエトキシエチルアクリレ−ト、2−メトキシエチルメタクリレ−ト、2−エトキシエチルメタクリレ−ト、2−N−ブトキシエチルメタクリレ−ト、2−メトキシエトキシエチルメタクリレ−ト、2−エトキシエトキシエチルメタクリレ−ト、2−N−ブトキシエトキシエチルメタクリレ−ト、メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート等の低級アルコキシル基含有単量体;例えば、グリシジルアクリレ−ト、グリシジルメタクリレ−ト、グリシジルアリルエ−テル、グリシジルメタリルエ−テル等のエポキシ基含有単量体を挙げることができる。
【0028】
上記分子内にラジカル重合性不飽和基を2個以上有する単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレ−ト、トリアリルシアヌレ−ト、トリアリルイソシアヌレ−ト、エチレングリコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、1,2−プロピレングリコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、1,3−プロピレングリコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、1,4−ブタンジオ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、1,6−ヘキサンジオ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、ネオペンチルグリコ−ルジ(メタ)アクリレ−ト、トリメチロ−ルプロパントリ(メタ)アクリレ−ト、アリル(メタ)アクリレ−ト等の2個以上のラジカル重合性不飽和基を有する単量体を挙げることができる。
【0029】
上記アクリル共重合体(A)のガラス転移点(Tg)は、−60〜−40℃のアクリル共重合体であり、Tgが該温度未満であれば、糊落ち性が悪化し、Tgが該温度を超えると接着力が上昇し、且つ表面保護フィルムを剥離する際にジッピングが生じる。
【0030】
尚、本発明においてTgとは、共重合体(A)を構成するそれぞれの単量体成分の単独重合体のTgを用いて次式によって求めたものである。
【0031】
1/Tg=w1/Tg1+w2/Tg2+・・・・・・・・・+wk/Tgk 但し、Tgは共重合体(A)のガラス転移温度であり、Tg1、Tg2、・・・・・・Tgkは各単量体成分の単独重合体のTgであり、w1、w2、・・・・・・wkは各単量体成分の重量分率を表わし、w1+w2+・・・・・・+wk=1である。
【0032】
本発明に用いられるアクリル共重合体(A)は、その重量平均分子量(Mw)が、一般に30万以上、好ましくは35万以上、さらに好ましくは40〜100万であるのがよい。該重量平均分子量(Mw)が該下限値以上であれば再剥離性の低下(汚染・糊残り)や耐熱性の低下が生じないので好ましく、一方該上限値以下であれば塗工性の低下が生じないので好ましい。
【0033】
また本発明に好適に用いられるアクリル共重合体(A)は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比Mw/Mnで表される分子量分布が、一般に15以下、好ましくは12以下の範囲であるのがよい。Mw/Mnの値が該上限値を超えると再剥離性の低下(汚染・糊残り)や耐熱性の低下が生じる。
【0034】
なお本明細書における上記重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)の値には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ−(GPC)法により、定法に従って測定された値が用いられる。
【0035】
本発明に用いられるアクリル共重合体(A)の重合方法は、特に制限されるものではなく、溶液重合、乳化重合、懸濁重合などの公知の方法により重合できるが、重合により得られた共重合体を用いて本発明の粘着剤組成物を製造するに当り、処理工程が比較的簡単で且つ短時間で行えることから溶液重合により重合することが好ましい。
【0036】
溶液重合は、一般に、重合槽内に所定の有機溶媒、単量体、重合開始剤、及び、必要に応じて用いられる連鎖移動剤を仕込み、窒素気流中又は有機溶媒の還流温度で、撹拌しながら数時間加熱反応させることにより行われる。この場合に有機溶媒、単量体及び/又は重合開始剤の少なくとも一部を逐次添加してもよい。
【0037】
上記の重合用有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、N−プロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、テトラリン、デカリン、芳香族ナフサなどの芳香族炭化水素類;例えば、N−ヘキサン、N−ヘプタン、N−オクタン、i−オクタン、N−デカン、ジペンテン、石油スピリット、石油ナフサ、テレピン油などの脂肪系もしくは脂環族系炭化水素類;例えば、酢酸エチル、酢酸N−ブチル、酢酸N−アミル、酢酸2−ヒドロキシエチル、酢酸2−ブトキシエチル、酢酸3−メトキシブチル、安息香酸メチルなどのエステル類;例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノンなどのケトン類;例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル類;例えば、メチルアルコ−ル、エチルアルコ−ル、N−プロピルアルコ−ル、i−プロピルアルコ−ル、N−ブチルアルコ−ル、i−ブチルアルコ−ル、s−ブチルアルコ−ル、t−ブチルアルコ−ルなどのアルコ−ル類;などを挙げることができる。これらの有機溶媒はそれぞれ単独で、又は2種以上混合して用いることができる。
【0038】
これら重合用有機溶媒のうち、前記アクリル共重合体(A)の重合に際しては、重合反応中に連鎖移動を生じにくい有機溶媒、例えば、エステル類、ケトン類を使用することが好ましく、特に、アクリル共重合体(A)の溶解性、重合反応の容易さなどの点から、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセトンなどの使用が好ましい。
【0039】
前記の重合開始剤としては、通常の溶液重合で使用できる有機過酸化物、アゾ化合物などを使用することが可能である。このような有機過酸化物としては、例えば、t−ブチルハイドロパ−オキサイド、クメンハイドロオキサイド、ジクミルパ−オキサイド、ベンゾイルパ−オキシド、ラウロイルパ−オキシド、カプロイルパ−オキシド、ジ−i−プロピルパ−オキシジカ−ボネ−ト、ジ−2−エチルヘキシルパ−オキシジカ−ボネ−ト、t−ブチルパ−オキシビバレ−ト、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパ−オキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−アミルパ−オキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−オクチルパ−オキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−α−クミルパ−オキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパ−オキシシクロヘキシル)ブタン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−オクチルパ−オキシシクロヘキシル)ブタンなどが挙げられ、アゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビス−i−ブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリルなどを挙げることができる。
【0040】
これら有機過酸化物のうち、前記アクリル共重合体(A)の重合に際しては、重合反応中にグラフト反応を起こさない重合開始剤が好ましく、特にアゾビス系が好ましい。その使用量は、通常、単量体合計100重量部に対して0.01〜2.0重量部、好ましくは0.1〜1.0重量部である。
【0041】
また、本発明に用いられるアクリル共重合体(A)の製造に際しては、連鎖移動剤は使用しないのが普通であるが、本発明の目的及び効果を損なわない範囲で、必要に応じて使用することは可能である。このような連鎖移動剤としては、例えば、シアノ酢酸;シアノ酢酸の炭素数1〜8のアルキ
ルエステル類;ブロモ酢酸;ブロモ酢酸の炭素数1〜8のアルキルエステル類;アントラセン、フェナントレン、フルオレン、9−フェニルフルオレンなどの芳香族化合物類;p−ニトロアニリン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、p−ニトロ安息香酸、p−ニトロフェノ−ル、p−ニトロトルエンなどの芳香族ニトロ化合物類;ベンゾキノン、2,3,5,6−テトラメチル−p−ベンゾキノンなどのベンゾキノン誘導体類;トリブチルボランなどのボラン誘導体;四臭化炭素、四塩化炭素、1,1,2,2−テトラブロモエタン、トリブロモエチレン、トリクロロエチレン、ブロモトリクロロメタン、トリブロモメタン、3−クロロ−1−プロペンなどのハロゲン化炭化水素類;クロラ−ル、フラルデヒドなどのアルデヒド類:炭素数1〜18のアルキルメルカプタン類;チオフェノ−ル、トルエンメルカプタンなどの芳香族メルカプタン類;メルカプト酢酸、メルカプト酢酸の炭素数1〜10のアルキルエステル類;炭素数1〜12のヒドロキシアルキルメルカプタン類;ビネン、タ−ピノレンなどのテルペン類;などを挙げることができる。
【0042】
重合温度としては、一般に約30〜180℃、好ましくは40〜150℃、より好ましくは50〜90℃の範囲である。
【0043】
なお、溶液重合法などで得られた重合物中に未反応の単量体が含まれる場合は、該単量体を除くために、メタノ−ルなどによる再沈澱法で精製することも可能である。
【0044】
本発明の粘着剤組成物は、ポリオキシアルキレン基を有するジメチルシリコン化合物(B)を含有する。
【0045】
前記 ポリオキシアルキレン基を有するジメチルシリコン化合物としては、下記一般式で示されるものが使用される。

(1)
(式中、R1はメチル基、R2〜4はアルキレン基、R5は水素原子又は一価の有機基、mは0〜100の整数、nは1〜100の整数、a及びbは、それぞれ独立に0〜100の整数を示すが、a及びbが同時に0であることはない。)
【0046】
ポリオキシアルキレン基としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン及びこれらのブロック化合物が挙げられる。
【0047】
上記ポリオキシアルキレン基を有するジメチルシリコン化合物は、例えば「KF−351A」、「KF−352A」、「KF−353」、「KF−354L」、「KF−355A」、「KF−615A」、「KF−945」、「KF−640」、「KF−641」、「KF−642」、「KF−643」、「KF−6020」、「X−22−6191」、「X−22−4515」、「KF−6011」、「KF−6012」、「KF−6013」、「KF−6015」、「KF−6016」、「KF−6017」、「X−22−4741」、「KF−1002」、「X−22−4952」、「X−22−4272」、「X−22−6266」、「KF−6004」、「KP−301」、「KP−323」、「KP−354」、「KP−355」、「KP−341」、「KP−118」、「F−501」、「X−22−6191」、「X−22−3506」、「X−22−3004」、「KF−6005」、「KP−101」、「KF−889」、「KF−6003」、「X−22−4515」、「F−3031」、「X−24−1430」、「X−22−4991」、「KP−208」、「KF−6003」〔以上信越化学(株)製〕、「L−720」、「L−7604」、「Y−7006」、「BY−16−201」、「FZ−77」、「FZ−2101」、「FZ−2104」、「FZ−2110」、「FZ−2118」、「FZ−2120」、「FZ−2122」、「FZ−2130」、「FZ−2161」、「FZ−2162」、「FZ−2163」、「FZ−2164」、「FZ−2166」、「FZ−2191」、「FZ−2154」、「FZ−2203」、「FZ−2207」、「FZ−2208」、「L−7001」、「L−7002」、「SF−8427」、「SF−8428」、「SH−3749」、「SH−3773M」、「SH−8400」、「FZ−5609」、「FZ−7001」、「FZ−7002」〔東レ・ダウ(株)製〕、「TSF−4440」、「TSF−4441」、「TSF−4445」、「TSF−4446」、「TSF−4450」、「TSF−4452」、「TSF−4460」〔モメンィブ・パフォーマンス(株)製〕例えば「PC−03」〔丸善油化工業(株)〕製などの商品名により市販されている。
【0048】
また、目的に合わせ、ポリオキシアルキレン基を有するジメチルシリコン化合物(B)以外に適宜シリコンオイルを組み合わせて配合しても良い。
【0049】
前記一般式(I)で表されるポリオキシアルキレン基を有するジメチルシリコン化合物(B)は、例えば水素化ケイ素を有するポリオルガノシロキサン主鎖に対し、不飽和結合及びポリオキシアルキレン基を有する有機化合物をヒドロシリル化反応によりグラフトさせることによって得ることができる。
【0050】
上記ジメチルシリコン化合物(B)が粘着剤組成物に含有される量は、該アクリル共重合体(A)100重量部に対し0.1〜3.0重量部であり、好ましくは0.2〜1.5重量部であり、更に好ましくは0.3〜0.7重量部である。
【0051】
上記ジメチルシリコン化合物(B)が粘着剤組成物に含有される量が上記下限値以上であれば 糊落ち性が悪化することがないため好ましく、上記ジメチルシリコン化合物(B)が粘着剤組成物に含有される量が上記上限値以下であれば被着体への汚染(クモリ)やアクリル共重合体(A)との相溶性が悪化し、白濁することがないため好ましい。
【0052】
本発明の粘着剤組成物は、イソシアネート基を有する架橋剤(C)を含有する。本発明で使用することのできる架橋剤(C)としては、例えば、キシリレンジイソシアネ−ト、ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、トリフェニルメタントリイソシアネ−ト、トリレンジイソシアネ−ト等の芳香族ポリイソシアネ−ト;例えば、ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、イソホロンジイソシアネ−ト、該芳香族ポリイソシアネ−ト化合物の水素添加物等の脂肪族又は脂環族ポリイソシアネ−ト;それらポリイソシアネ−トの2量体もしくは3量体又はそれらポリイソシアネ−トと、トリメチロ−ルプロパンなどのポリオ−ルとのアダクト体などの各種ポリイソシアネ−トに由来するポリイソシアネ−ト化合物を挙げることができるが、これらのイソシアネ−ト化合物の中では、ヘキサメチレンジイソシアネ−トが特に好ましい。
【0053】
これらのイソシアネ−ト化合物は、例えば「コロネ−トHX」、「コロネ−トHL−S」、「コロネ−ト2234」「アクアネ−ト200」、「アクアネ−ト210」〔以上日本ポリウレタン(株)製〕、「デスモジュ−ルN3400」〔住友バイエルウレタン(株)製〕、「デュラネ−トE−405−80T」、「デュラネ−ト24A−100」、「デュラネ−トTSE−100」〔旭化成工業(株)製〕、「タケネ−トD−110N」、「タケネ−トD−120N」、「タケネ−トM−631N」「MT−オレスタ−NP1200」〔以上三井武田ケミカル(株)製〕などの商品名により市販されているものを好適に使用することができる。
【0054】
これらイソシアネート基を有する架橋剤(C)の使用量は、前記アクリル共重合体(A)の水酸基当量に対して、イソシアネ−ト基として0.1〜1.5当量が好ましく、0.3〜1.2当量が更に好ましく、0.5〜1.0当量が特に好ましい。イソシアネート基を有する架橋剤(C)の量がアクリル共重合体(A)上記上限値以下であれば接着力が低下し、且つ糊落ち性が悪化することがないので好ましく、上記下限値以上であれば加工工程保護フィルムを剥離する際に被着体への汚染(クモリ・糊残り)が発生しないので好ましい。
【0055】
本発明の粘着剤組成物は、上記イソシアネート基を有する架橋剤(C)を含有するとともに、さらに架橋触媒を含有してもよい。架橋触媒としては、金属触媒を使用することができ、金属触媒として一般的なイソシアネ−ト架橋触媒、たとえばSn(スズ)系触媒が使用可能であり、ジブチルスズジラウレートなどは、ポットライフと触媒効果の点から好適に使用できる。
【0056】
本発明の粘着剤組成物には、以上述べたアクリル共重合体(A)、ポリオキシアルキレン基を有するジメチルシリコン化合物(B)、イソシアネート基を有する架橋剤(C)の他に、必要に応じて、粘着剤組成物に配合される配合物、例えば、溶剤、耐候性安定剤、タッキファイヤ−、可塑剤、軟化剤、染料、顔料、無機充填剤などを適宜配合することができる。耐候性安定剤、タッキファイヤ−、可塑剤、軟化剤、染料、顔料、無機充填剤などの配合量の範囲アクリル共重合体(A)100重量部に対し、30重量部以下が好ましく、さらに好ましくは20重量部以下、最も好ましくは10重量部以下であるのがよい。配合量が該上限値以上であると各種物性が悪化する。
【0057】
本発明6の粘着剤組成物に溶剤を含有させて、粘着剤組成物の不揮発分は20〜50%の程度であることが塗工に適した粘度とすることができる。溶剤としては、粘着剤組成物の構成要素と反応せず、アクリル共重合体(A)を溶解し、加工工程保護フィルムを作成する際に、塗工後適当な速度で乾燥するものであれば特に制限はない。本発明の感圧接着剤組成物の粘度は300〜5000mPa・sの程度であることが塗工性等の観点から好ましい。
【0058】
本発明の加工工程保護フィルムは、上記の粘着剤組成物を適宜の透明な表面保護基材の少なくとも一方の面に粘着剤層を形成して製造することができる。具体的に粘着剤層の形成方法としては、本発明の粘着剤組成物を、そのまま又は、必要に応じて適宜の溶媒で希釈し、これを基材シートに直接塗布・乾燥して溶媒を除去する方法を採用することができる。また、先ずシリコン樹脂等により離型処理が施された紙やポリエステルフィルム等の適宜のフィルムからなる剥離シ−ト上に、本発明の粘着剤組成物を塗布し、加熱乾燥して粘着剤層を形成させ、次に該剥離シ−トの粘着剤層側を基材シートに圧接して該粘着剤層を該保護フィルムに転写させることもできる。
【0059】
上記の基材シートとしては特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニルなどから成るシート又は紙類等を挙げることができる。そのなかでも、価格、腰の強さなどの観点からPETシートを好適に挙げることができる。これらの基材シートは、本発明の効果に悪影響を及ぼさない範囲において、他の添加剤、例えば、顔料、染料、酸化防止剤、劣化防止剤、充填剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤及び/又は電磁波防止剤を含んでいてもよい。
【0060】
上記の基材シートの厚さは、特に限定されないが、目的により適宜調整され、通常20μm〜10mmであるが、キャリアーシートとして使用する場合は、通常25μm〜1mmであり、実用的には50μm〜200μm程度である。また、上記の基材シートには、必要により基材シートの塗布用面にコロナ処理、プラズマ処理、ブラスト処理等の易粘着処理が施しておくことができる。また、表面にアンカーコート層あるいは易接着層が設けられているものも好適に使用することができる。
【0061】
基材シート上に塗布された粘着剤組成物は、熱風乾燥機で70〜120℃、1〜3分程度の加熱条件で乾燥および架橋を行うことができる。
【0062】

上記の基材シートへの耐熱性粘着剤組成物溶液の塗布量は、加工工程保護フィルムの求められる接着力や加工する部材の厚さや大きさなどに応じて適宜設定されるが、通常、乾燥厚みで1〜50μm、好ましくは5〜50μm、さらに好ましくは15〜30μm程度の厚さを例示することができる。 また、その塗布方法は、公知の方法を適用できるが、例えば、ローラー塗装法、刷毛塗装法、スプレー塗装法、ダイコーター、バーコーター、ナイフコーターなどを用いた方法が挙げられる。そして、上記の塗布層は、通常、熱風乾燥機で70〜120℃、1〜3分程度の加熱条件で乾燥および架橋を行うことができ、本発明の加工工程保護フィルムを得る事ができる。
【0063】

上記の加工工程保護フィルムトの粘着剤層の表面には、取り扱い上の便利のため、離型性シートを積層することができる。かかる離型性シートとしては、公知のものを利用することができ、例えば、プラスチックシートの表面にシリコーン系離型剤を塗布したものを挙げることができるが、上記の粘着剤層の粘着力が低い水準にあることから、ポリオレフィン系フィルム等、接着性が小さいフィルムを未処理のまま使うことができる場合もある。
【実施例】
【0064】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明の効果を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、実施例及び比較例において用いた、試験用粘着シートの作成、並びに各種の試験方法及び評価方法は以下のとおりである。
【0065】
(1) 試験用加工工程保護フィルムの作成
ポリエチレンテレフタレ−ト(PET)フィルム〔商品名;E5001;東洋紡績(株)製 フィルム厚み38μm〕上に乾燥後の塗工量が10g/m2となるように、粘着剤組成物を塗布し、70℃で60秒間熱風循環式乾燥機にて乾燥して粘着剤層を形成した後、シリコ−ン系離型剤で表面処理された離型紙上に、粘着剤層面が接するように載置し、加圧ニップロ−ルを通して圧着して貼り合わせた後、23℃、50%RHで10日間養生を行って試験用加工工程保護フィルムを得た。
【0066】
(2) 接着力の測定
前(1)項により作製した試験用加工工程保護フィルムを25mm×150mmにカットしたのち、この試験用加工工程保護フィルム片を、卓上ラミネ−ト機を用いて、アクリル板〔商品名アクリライト001;(株)パルテック製〕に圧着して試験サンプルとした。このサンプルを23℃、50%RHの条件下で24時間放置(コンディショニング処理)した後、180゜剥離における接着力を剥離速度0.3m/minで測定した。また、同様の測定方法で剥離速度30m/minでのジッピングッピングその際の抵抗値を測定する。があるかどうか評価した。評価基準は以下の通り。
【0067】
(ジッピング評価基準)
○ :ジッピング無し。
× :ジッピング有り。
【0068】
(3) 糊落ち性評価方法
前(1)項により作製した試験用加工工程保護フィルムの粘着剤層面を爪で10回引っかき、粘着層皮膜が粉状にはがれるか落ちるか評価した。評価基準は次の通りである。
【0069】
(評価基準)
○ :粘着層皮膜が粉状にはがれ落ちない。
△ :粘着層皮膜が引っかき5〜7回以上ではがれ始め、やや粉状にはがれ落ちる。
× :粘着層皮膜が引っかき3〜4回以上ではがれ始め、粉状にはがれ落ちる。
×× :粘着層皮膜が引っかき1〜2回で粉状にはがれ落ちる。
【0070】
(4) 汚染性の評価
(1)項により測定した被着体(アクリル板)を目視により確認し、試験用加工工程保護フィルムを剥離した際の被着体への汚染性(糊残り、クモリ)を評価する。
【0071】
(評価基準)
○ :被着体への糊残り及びクモリが認められない。
△ :被着体への糊残りが認められず、クモリがほとんど認められない。
× :被着体への糊残りが認められないが、クモリが認められる。
×× :被着体への糊残りが認められる。
【0072】
アクリル系共重合体溶液の製造
製造例1
温度計、攪拌機、窒素導入管及び還流冷却器を備えた反応器内に、アセトン100重量部、トルエン100重量部を入れ、また別の容器に、単量体(a)としてブチルアクリレ−ト(BA)95.0重量部、単量体(a)として4−ヒドロキシブチルアクリレ−ト(4HBA)5.0重量部を入れ混合して単量体混合物とし、その中の25%を反応容器中に加え、次いで該反応容器の空気を窒素ガスで置換した後、重合開始剤としてアゾビスブチロニトリロ(以下AIBNと言う)0.05重量部を添加して、攪拌下に窒素雰囲気中で該反応容器内の混合物温度を70℃に昇温させて初期反応を開始させた。初期反応がほぼ終了した後、残りの単量体混合物75%、並びにアセトン80重量部、トルエン40重量部及びAIBN 0.5重量部の混合物をそれぞれ逐次添加しながら1.5時間反応させ、引き続いてさらに1.5時間反応させた。その後、トルエン100重量部にパーブチルPV1.0重量部を溶解させた溶液を1時間かけて滴下し、さらに1.5時間反応させた。反応終了後、反応混合物をメチルエチルケトン300重量部で希釈して、固形分35.8重量%のアクリル系共重合体溶液Aを得た。
【0073】
得られたアクリル系共重合体溶液Aの粘度は1580mPa・sであり、またアクリル系共重合体Aは、ガラス転移温度(Tg)−55.9℃であって、重量平均分子量(Mw)約44万及び重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比Mw/Mn約4を有していた。
【0074】
製造例2〜6、比較製造例1〜6アクリル系単量体の量・種類を表1に示すように変えた以外は実施例1と同様にしてアクリル系共重合体溶液 B〜Lを得た、各溶液の物性値を表1に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
なお表1における単量体の略号は以下のとおりである。
BA:n-ブチルアクリレ−ト
t−BA:t-ブチルアクリレート
MA:メチルアクリレート
2EHA:2−エチルヘキシルアクリレ−ト
4HBA:4−ヒドロキシブチルアクリレ−ト
AA:アクリル酸
【0077】
加工用粘着剤組成物の作製
実施例1
製造例1で製造したアクリル共重合体(A)100重量部、シリコン化合物(B)としてPC−03(丸善油化工業(株)製ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン 有効成分60%)を0.3重量部用い、これにイソシアネート化合物(C)としてヘキサメチレンジイソシアネ−ト系架橋剤(日本ポリウレタン(株)製、商品名:コロネ−トHX、NCO含有量21.3%)をアクリル共重合体(A)100重量部に対して2.86重量部(アクリル共重合体(A)の水酸基当量に対してNCOの当量数=0.43当量)を添加し、十分に攪拌し粘着剤組成物の溶液を得た。得られた感圧接着剤組成物は固形分約35.0重量%、粘度1520mPa・sであった。 この粘着剤組成物を用い、前記の試験用加工工程保護フィルムの作成方法に従って試験用加工工程保護フィルムを作成し、前記の各種物性試験を行った。得られた結果を表2に示す。
【0078】
実施例2〜実施例6 比較例1〜12
実施例1の配合条件の代わりに表2に示した各配合条件で配合する以外は、実施例1と同様にして試験用加工工程保護フィルムを作成し、前述した試験方法で各物性を測定した結果を表2に示す。
【0079】
【表2】

【0080】
なお表2における配合物の略号は以下のとおりである。
PC−03 : ポリオキシアルキレン変性シリコン、有効成分60%

丸菱油化工業(株)製、商品名:PC−03
KF96−1000 : ジメチルシリコン、有効成分100%

信越化学(株)製、商品名:KF96−1000
コロネ−トHX
: ヘキサメチレンジイソシアネ−ト系架橋剤

NCO含有量21.3%、日本ポリウレタン(株)製、商品名:コロネートHX

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工工程保護フィルム用粘着剤組成物であって、反応性官能基として、0.1〜10重量%の水酸基含有単量体を共重合成分として含み、ガラス転移点(Tg)が−60〜−40℃のアクリル共重合体(A)100重量部に対し、ポリオキシアルキレン基を有するジメチルルシリコン化合物(B)0.01〜2.0重量部、アクリル共重合体(A)中の反応性官能基に対して0.1〜1.5当量のイソシアネート基を有する架橋剤(C)を含有することを特徴とする粘着剤組成物。
【請求項2】
ポリオキシアルキレン基を有するジメチルシリコン化合物が 一般式(I)であらわされるシリコン化合物である請求項1記載の粘着剤組成物。

(I)
(式中、R1はメチル基、R2〜4はアルキレン基、R5は水素原子又は一価の有機基、mは0〜100の整数、nは1〜100の整数、a及びbは、それぞれ独立に0〜100の整数を示すが、a及びbが同時に0であることはない。)
【請求項3】
請求項1から請求項3いずれかに記載された粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する加工工程保護フィルム。

【公開番号】特開2009−292959(P2009−292959A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−148774(P2008−148774)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【出願人】(000004592)日本カーバイド工業株式会社 (165)
【Fターム(参考)】