説明

糞取り具とその使用方法

【課題】犬の糞を路上に落下させることなく容易に回収するための糞取り器を提供する。
【解決手段】円筒形状の外筒1と、その外筒1の内側に接するように配置した内筒2と、これら外筒1、内筒2のそれぞれの末端に取り付けられた外筒用腕3と内筒用腕4で構成されていることに加えて、前記外筒1の切り口は先端が斜め形状で末端が円筒軸に垂直方向の切り落とし形状となっており、前記内筒2は、半月筒の部品同士をその内壁を向き合わせた姿勢で組み合わせて円筒形状となるものであり、前記外筒1の外部に押し出された状態の内筒2が、この内筒2の露出した長さの2倍の深さのビニール袋5で覆われている糞取り具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糞取り具とその使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
都市部でも犬をペットとして飼う家庭が増えており、散歩中の犬の糞取りは多くの飼い主にとっての問題となっている。犬は路上、公園などいたるところで糞をするので、飼い主はその度に糞をつまみ上げて持ち帰らなければならない。多くの飼い主は新聞紙やビニール袋を介して路上等に落ちている糞をつかみ上げて回収しているが、手が汚れたり十分に回収できないなどの課題を抱えているのでこれまでに様々な発明がなされている。たとえば、特許文献1では、犬の糞及びたばこの吸い殻を、杖本体パイプ内部に収納する構造が提案されている。この発明は地面に落ちた糞などを杖の長さ分離れた位置での操作で拾い上げることで不快感を緩和することを狙っている。
また特許文献2では、水溶性部材のみにて形成された収納袋のアイディアが示されている。このアイディアは、回収した糞をそのまま便器に流すことを狙ったものである。実際にどのように糞を回収するかの記述がないが、路上の糞を拾い上げるか、または、肛門の直下で収納袋の口を広げた状態で待ち構えるかであるが、特許文献2に記載された形状と素材では後者の口を広げた状態で待ち構えるには困難が多く、おそらく路上の糞を拾い上げることを想定したものと思われる。特許文献3には、片手で操作できる糞取り装置のアイディアが示されている。このアイディアも地面に落ちた糞を拾い上げることを前提としたアイディアである。特許文献4には、スコップ型の糞取り器具のアイディアが示されている。地面に落ちた糞をスコップですくい上げてスコップに設けられた収納部分にそのまま収納するというアイディアである。特許文献5には、犬の肛門付近に糞収納袋をくくりつけるアイディアが開示されている。特許文献6には、虫取り網のような形状の器具を使って糞が地面に落ちる前にキャッチするアイディアが開示されている。
【0003】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−224226号公報
【特許文献2】特開2007−75092号公報
【特許文献3】特開2007−97484号公報
【特許文献4】特開2007−244302号公報
【特許文献5】特開2007−259845号公報
【特許文献6】特開2007−312753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
犬の糞取りについてのこれまでのアイディアのほとんどが、地面に落ちた糞を拾い上げるものであった。地面に落ちる前に回収するアイディアとしては、特許文献5には犬の肛門付近にくくりつけるアイディアが示されている。このアイディアは確かに地面に落ちる前に回収できそうであるが、実際には、散歩で犬が歩いている間に位置がずれる懸念もあり、ずれないようにきつくとめると犬が苦痛である。このような姿で散歩するのは姿が美しくないという問題も抱えている。また、犬は座りこんで排便する習慣があるので実際の排便の際には袋が犬の臀部と地面との間に挟まりうまく回収できないということも起こり得る。さらに、犬が排便後に立ちあがって動き回ることで袋に回収しきれなかった糞が犬に付着することも懸念される。このように犬の体に糞回収袋をとりつけることは様々な問題を抱えている。一方、特許文献6で示した虫取り網のような器具で回収するアイディアは、散歩中は飼い主が持ち歩き、排便の気配を感じたら回収するということなので、特許文献5で挙げた課題はほとんど解決される。ただし、特許文献6のアイディアは虫取り網の部分が二つ折になった状態で持ち歩く必要があり、人ごみの中を通り抜けるような際には糞が入った袋が周囲の通行人と接触する懸念もある。また、袋の淵や外側が糞や地面の泥などで汚れている場合もあるため、糞を回収した後の散歩は周囲に気を使いながら歩く必要がある。
【0008】
このように、これまでの糞取り器の大半は地面に落ちた糞を拾うタイプであり、地面から十分には回収できずに地面に汚れを一部残した状態での回収で好ましくなく、また、犬に回収袋をくくりつけるアイディアは問題が多い。虫取り網のような器具で回収するアイディアは糞を地面に落とす前に回収するという点で優れたアイディアであるが、回収後の持ち運びが不便という課題を抱えていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の糞取り器は、円筒形状の外筒と、その外筒の内側に接するように配置した内筒と、これら外筒、内筒のそれぞれの末端に取り付けられた外筒用腕と内筒用腕で構成されていることに加えて、前記外筒の切り口は先端が斜め形状で末端が円筒軸に垂直方向の切り落とし形状でかつこの端部は塞がれており、前記内筒は、半月筒の部品同士をその内壁を向き合わせた姿勢で組み合わせて円筒形状となるものであり、合わさった状態ではその先端は円筒軸に垂直方向の切り落とし形状でかつ塞がれており末端は斜めに切り落とした形状であることと、この半月筒の部品同士が接する2つの辺のうちの長い方の辺に蝶番が取り付けられていること、さらに、この内筒は前記外筒用腕に対して内筒用腕を前に押し出すと内筒が外筒の先端より先に押し出されて前記蝶番を軸に円筒の内側を露出して開いた形状となり、前記内筒用腕を後ろに引くことで内筒の末端の斜めに切り出した端部が外筒の先端の斜めに切り出した端部の内壁に沿いながら2つの部品が合わさり円筒形状となって外筒の内部に収まった状態になること、さらに、前記外筒の外部に押し出された状態の内筒が、この内筒の露出した長さの2倍の深さのビニール袋で覆われていることを第1の特徴とし、
前記第1の特徴に加えて、前記ビニール袋の開口部付近に指を入れて持ち歩くための穴が2つ設けられていることを第2の特徴とし、
本発明の糞取り器の使用方法として、前記第1または第2の特徴にさらに加えて、第1の状態として前記内筒が外筒の外部に押し出されて開いた2つの半筒部品の両方の先端部分および内筒、外筒の一部がビニール袋で覆われ、前記ビニール袋の開口部分が外筒と接した状態と、前記第1の状態に続く第2の状態として前記内筒の上を覆ったビニール袋の上に糞が乗った状態と、前記第2の状態に続く第3の状態として前記内筒が前記外筒に一部引き込まれることで前記外筒の斜めに切り落とされた斜面さおに沿って内筒が内側に閉じて前記ビニール袋で糞を包む形状に挟み込んだ状態と、前記第3の状態に続く第4の状態として前記内筒が外筒の中に収まり、前記ビニール袋の開口部が前記外筒の先端部のさらに先端方向に押し出された状態と、前記第4の状態に続く第5の状態として前記ビニール袋の開口部が人の手などでつかまれて固定された状態で内筒が外筒の先端方向に押し出されて前記半筒部品による挟み込みが緩み前記糞をビニール袋の中に収納した状態で前記ビニール袋が取り出された状態とを備える糞取り器の使用方法を第3の特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の糞取り器を用いると汎用のビニール袋で簡単に犬等のペットの糞を取って家に持ち帰ることができる。糞を路上に落とすことなく受け止めるので路上がまったく汚れない。また、ビニール袋の中に手やまわりの器具を汚さずに糞を収納できるので衛生的である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施例の第1の状態を描いた側断面図である。
【図2】本発明の第1の実施例の第1の状態を描いた正面図である。
【図3】本発明の第1の実施例の第2の状態を描いた側断面図である。
【図4】本発明の第1の実施例の第3の状態を描いた側断面図である。
【図5】本発明の第1の実施例の第3の状態を描いた正面図である。
【図6】本発明の第1の実施例の第4の状態を描いた側断面図である。
【図7】本発明の第1の実施例の第5の状態を描いた側断面図である。
【図8】本発明の第1の実施例の第5の後の状態を描いた側断面図である。
【図9】本発明の第1の実施例の糞取り器の全体を描いた側断面図である。
【図10】本発明の第2の実施例の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は散歩させている犬が路上で糞をする際に、その糞を路面に落とすことなく受け止めて、その糞で周辺や人の手を汚すことなくビニール袋に収納する器具である。
以下に具体的に説明する。
【実施例1】
【0013】
本発明の第1の実施例を図1から図9までを使用して説明する。図1は本発明の糞とり器の第1の状態を描いた側断面図である。この第1の状態とは、犬が排便の気配を見せた際にその糞を受け止めるために準備した状態のことである。外筒1は略円筒形の筒であり、図で右端は円筒の軸に垂直な切断面を持ち、左端は下方向が突き出すように斜めに切った切断面を持っている。内筒2は半月筒部品6を2つ組み合わせた構成になっている。図2にこの第1の状態の正面図を描いた。内筒が2つの半月筒部品から構成されており、2つの半月筒部品はその一辺を蝶番7で結合してあり、開いた状態では図2に描くように互いの内側を上方向に向けて隣り合わせてあり、この2つの半月筒部品が閉じた状態では図5に示すように1つの円筒の形状になる。第1の状態では、内筒は左端では円筒の軸に垂直な切断面を持ち、右端では下側が伸びた斜めの切り口を持っており、内筒の右端の一部が外筒の内側に収納されている。外筒、内筒のそれぞれには外筒用腕3と内筒用腕4が取り付けてあり(図1参照)、外筒用腕を固定した状態で内筒用腕を図において左右に操作することで内筒を左側に押し出したり右側に引き込んだりすることができる。この内筒と外筒の一部はビニール袋5で覆われている。覆われている範囲について図1を用いて説明する。ビニール袋は、内筒の左端を袋の底側に収め、そのまま内筒と外筒の円筒の途中までを覆っている。このビニール袋は端部付近に穴8を備えている。このようにビニール袋の端部付近に穴を備えてそこに手を通して持ちやすくした袋は、よくコンビニエンスストアなどで商品を入れるのに使われている。正面から見ると、図2のように、内筒部分では半月筒部品がちょうど両手で水をすくう形状にあるところを覆っており、外筒部分では円筒の形状を覆っている。犬が排便の気配を見せたら肛門の下にこの糞取り器を構えて待機する。
【0014】
本発明の第1の実施例の第2の状態を図3に描いた。図1とほぼ同じ状態であるが、違いは、糞100を受け止めた後であることである。糞は図3に描いたように内筒部分に被せたビニール袋5の上で受け止める。飼い主は犬の糞がこの位置に落下するようにうまく受け止める必要がある。
【0015】
本発明の実施例1の第3の状態の側断面図を図4に正面図を図5に描いた。糞を受け止めた第2の状態から内筒を外筒の内側に向けて引き込む途中の状態である。糞100を内筒2の上を覆ったビニール袋5の上に載せた状態で、内筒用腕4を図4における右方向に引くことで内筒が右方向に引き込まれて外筒の内側に入り込んでいく。その状態を正面から見た様子を図5に描いた。2つの半月筒部品が互いに合わさって1つの円筒形状になっていることがわかる。図5では、糞をくるむようにビニール袋が覆っており、その上端部は2つの半月筒部品が合わさった部分で挟み込まれている。この内筒部分では内筒の内側にも外側にもビニール袋が存在している。外筒部分付近でのビニール袋の様子について図4を再度用いて説明する。図4ではビニール袋の端部が外筒から浮き上がっている。このビニール袋の端部は第1、第2の状態では外筒に接していたのだが、内筒が右方向に移動して外筒に引き込まれるのに伴って、ビニール袋が内筒と外筒の間に巻き込まれ、その影響でビニール袋端部が左方向に持ち上がった状態になっている。
【0016】
本発明の実施例1の第4の状態について図6を用いて説明する。第3の状態よりもさらに内筒2が引き込まれた状態である。ビニール袋5の端部が図の左側に出ていることが特徴である。ビニール袋が最もしっかりと掴まれているのは内筒の構成部品の半月筒部品6の合わせ目であり、外筒と内筒との間に巻き込まれたビニール袋の部分は比較的ゆるい力がかかっている。この状態では図6に描いてあるようにビニール袋の穴8が内筒よりも左側に出る。ビニール袋が外筒と内筒との間に必要以上に巻き込まれてこの穴部分が出ていない状況においては手で軽く引っ張ることで簡単に図6の状態にさせることができる。
【0017】
本発明の実施例1の第4の状態に続く第5の状態を図7に描いた。内筒が第4の状態よりも左側に押し出された状態である。操作の観点では、前記の状態3から4にかけて内筒を右方向に引き込んできて、再び左方向に押し戻した状態がこの第5の状態である。この状態は、内筒の2つの構成部品(半月筒部品)の合わせ目が緩み、ビニール袋を取り出せる状態である。図7では糞の処理をする飼い主の手を描くことを省略しているが、飼い主はビニール袋の穴を手で持って持ち上げようとしている。この状態では糞はビニール袋の内側に納まっている。つまり、糞を受け止めた状態である、第2の状態ではビニール袋の外側に乗っていた糞が、ビニール袋の内側に納まっているのである。
【0018】
本発明の実施例の第5の状態のさらに後の状態を図8に描く。ビニール袋を内筒から完全に取り除いた状態である。ここまでで糞を地面に落とすことなく回収する一連の動きを説明した。飼い主は次にペットの犬が排便することに備えて図1に示すようにビニール袋を被せる。こうして、散歩中何度でも糞の回収を行うことができる。
【0019】
図9は本発明の実施例1の糞取り器の全体を描いた側断面図である。外筒用腕にも内筒用腕のそれぞれの右端には飼い主が持ちやすいようにもち手が取り付けられている。飼い主は拳銃の引き金を引くのと同様の操作で内筒を外筒に引き込むことができる。スプリングを利かせて置くことで、定常状態を図1、2、3、8の状態としておき、もち手を引き絞った時だけ図4、図6に描くように内筒を引き込むという構造にしておくと、片手で楽に操作することが可能である。
【0020】
図10は本発明の実施例2の糞取り器の側断面図である。図10において外筒1の左端の端部が直角に切り落とされていることを特徴とした実施例である。受け止めた糞を内筒と外筒で形成される閉空間に素早く収納するためにはこの実施例で示すように片方の端部が直角に切り落とされていることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明はペットの犬の糞を取るための糞取り器である。
【0022】
【符号の説明】
【0023】
1は外筒、2は内筒、3は外筒用腕、4は内筒用腕、5はビニール袋、6は半月筒部品、7は蝶番、8は穴、100は糞である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状の外筒と、その外筒の内側に接するように配置した内筒と、これら外筒、内筒のそれぞれの末端に取り付けられた外筒用腕と内筒用腕で構成されていることに加えて、前記外筒の切り口は先端が斜め形状で末端が円筒軸に垂直方向の切り落とし形状でかつ塞がれており、前記内筒は、半月筒の部品同士をその内壁を向き合わせた姿勢で組み合わせて円筒形状となるものであり、合わさった状態ではその先端は円筒軸に垂直方向の切り落とし形状でかつ塞がれており末端は斜めに切り落とした形状であることと、この半月筒の部品同士が接する2つの辺のうちの長い方の辺に蝶番が取り付けられていること、さらに、この内筒は前記外筒用腕に対して内筒用腕を前に押し出すと内筒が外筒の先端より先に押し出されて前記蝶番を軸に円筒の内側を露出して開いた形状となり、前記内筒用腕を後ろに引くことで内筒の末端の斜めに切り出した端部が外筒の先端の斜めに切り出した端部の内壁に沿いながら2つの部品が合わさり円筒形状となって外筒の内部に収まった状態になること、さらに、前記外筒の外部に押し出された状態の内筒が、この内筒の露出した長さの2倍の深さのビニール袋で覆われていることを特徴とする糞取り具。
【請求項2】
請求項1の糞取り器において、さらに、前記ビニール袋の開口部付近に指を入れて持ち歩くための穴が2つ設けられていることを特徴とする糞取り具。
【請求項3】
請求項1または請求項2の糞取り器の使用方法において、前記第1または第2の特徴にさらに加えて、第1の状態として前記内筒が外筒の外部に押し出されて開いた2つの半筒部品の両方の先端部分および内筒、外筒の一部がビニール袋で覆われ、前記ビニール袋の開口部分が外筒と接した状態と、前記第1の状態に続く第2の状態として前記内筒の上を覆ったビニール袋の上に糞が乗った状態と、前記第2の状態に続く第3の状態として前記内筒が前記外筒に一部引き込まれることで前記外筒の斜めに切り落とされた斜面に沿って内筒が内側に閉じて前記ビニール袋で糞を包む形状に挟み込んだ状態と、前記第3の状態に続く第4の状態として前記内筒が外筒の中に収まり、前記ビニール袋の開口部が前記外筒の先端部のさらに先端方向に押し出された状態と、前記第4の状態に続く第5の状態として前記ビニール袋の開口部が人の手などでつかまれて固定された状態で内筒が外筒の先端方向に押し出されて前記半筒部品による挟み込みが緩み前記糞をビニール袋の中に収納した状態で前記ビニール袋が取り出された状態とを備える糞取り具の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−135850(P2011−135850A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−299593(P2009−299593)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(597037337)
【Fターム(参考)】