説明

納豆の製造方法

【課題】 大豆を原料として納豆を製造するに際して、納豆菌とともに、パチルス属の微生物を添加して、納豆菌に特有なアンモニア臭を薄めた製品を提供する。
【解決手段】 納豆菌を大豆に添加して納豆を製造する前に、大豆等の微粉末処理したものに、パチルス属の微生物としての「バチルス・サブチルス・タケミ菌」を増殖させたものを用意して、納豆菌と「タケミ菌」とを同時に増殖させた納豆を製造する。この「タケミ菌」により、納豆菌に特有なアンモニア臭を薄めた製品とするとともに、キチン質等の有効成分を容易に摂取できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、納豆菌による生成物が発生する異臭を防止可能なバチルス属の菌として知られるところの、「タケミ菌」(特願2000−593726号公報に開示されている菌)を、納豆菌とともに、煮豆として製造した大豆に添加して、納豆を製造する温度の環境下で製造可能で、異臭が発生しない納豆の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
納豆を製造するに際しては、煮豆として処理した大豆に納豆菌を添加して、納豆菌の増殖に適した40℃の高湿度の環境下で、24時間程度保管し、煮豆の中まで納豆菌を十分に増殖させるようにして納豆を製造している。前記一般的な納豆の製造方法によれば、納豆菌を増殖させて良質な納豆は製造される。前記納豆において、納豆菌から産生されるキナーゼを、より大量に得られるようにするために、特許文献1に説明されるような処理を行うことも知られている。
【0003】
前記従来例では、煮豆として作成した大豆と、カルシウムに富んだ成分とを混合し、その混合物に糖類、キトサン、核酸、有機酸類を加えるとともに、ねばりボンドを産生する微生物を添加して、前記混合物を混合・粉砕する工程、納豆菌の増殖する温度で発酵させる工程と、前記発酵物を低温処理する工程、および、空気を混入しながら、再発酵させる工程を経て、ねばりボンドを産生する微生物を増殖させ、増殖されたねばりボンドを産生する微生物に対して、乳酸菌等の菌類、各種のビタミン類を混合し、乾燥工程を経て粉末状の製品を得るようにしているものである。そして、この製造方法によれば、ねばりボンドを大量に製造できて、大豆の蛋白質を有効利用するこが可能とされる。
【特許文献1】特開平6−7156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、一般の納豆では、納豆菌による生成物には、納豆に特有な臭があり、納豆を好まない人には、異臭として感じられるものであって、その異臭をなくすれば、納豆の消費がより拡大されて、良質な大豆の蛋白質を多くの人に有効に利用して貰うことが可能となる。ところで、本出願人は、先に特願2000−593726(国際公開番号WO00/42169)、発明の名称「新種の微生物およびその利用法」として、バチルス属の微生物を出願している。この微生物は、「バチルス・サブチルス・タケミ菌」(以下「タケミ菌」と呼んで説明する)として知られている新種のバチルスであり、納豆菌とともに大豆に添加して2種類の菌を混合した状態で増殖させると、納豆菌によるねばりボンドを大量に産生するとともに、納豆の異臭を少なくできるという、前記「タケミ菌」の特徴を発揮できるものとされる。
【0005】
本発明は、前記納豆菌とともに、「タケミ菌」を煮豆に添加して増殖させて、異臭が発生されなくて、キチン質等の有用成分を多く含み、食味が新鮮な新たな納豆とその製法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は納豆の製造方法に関するもので、請求項1の発明は、煮豆として作成した大豆に対して、納豆菌と、硝酸塩を還元することができ、細胞壁にキチンおよび/またはキトサンのようなキナーゼ成分を多く含むパチルス属の微生物と、を混合し、
納豆菌の増殖する温度で発酵させる工程を経て、製造することを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、前記パチルス属の微生物として、「バチルス・サブチルス・タケミ菌」を用い、前記「バチルス・サブチルス・タケミ菌」を、大豆を微粉末に加工したものを原料として用い、納豆の製法と同様な方法により前記菌を増殖させて処理したものを、前記納豆菌とともに煮豆として作成した大豆に添加し、納豆菌の増殖する環境で発酵させる工程を経て、製造することを特徴とする。
【0008】
前述したように納豆菌のみによらずに、バチルス属の菌を納豆菌とともに用いて、新しい風味を有する納豆を製造できることになり、納豆に特有な臭気を好まない人でも、容易に食することができるものを提供できる。また、「タケミ菌」を納豆菌に添加して製造した新しい納豆は、従来の納豆では考えられなかった、キチン質等の有用成分を多く含み、新たな風味を有する納豆として提供できる。したがって、調味料と組み合わせて食卓を賑やかにすることや、料理の原材料として新しい材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
始めに、納豆菌に混合する「タケミ菌」について、その製造方法を説明する。前記「タケミ菌」は、前記パチルス属の微生物として、「バチルス・サブチルス・タケミ菌」を用いて、大量に増殖させる処理を行うことができる。例えば、前記「タケミ菌」を増殖させるためには、大豆または脱脂大豆を原料として用いて、微粉末となるように微粉砕処理したものを原料とし、それを加熱処理して、一般の納豆の製法と同様な方法を用いて、菌を増殖させるようにする。
【0010】
前記原料として用いる脱脂大豆は、大豆油を絞った後のフレーク状のものであるが、前記「タケミ菌」と納豆菌を繁殖させることができる原料である。また、丸大豆を使用する場合でも、それを微粉末となるように粉砕してから、その大豆または脱脂大豆の微粉末を蒸気を用いて加熱処理する。そして、前記加熱処理した丸大豆等の粉末を冷却して、温度が40℃程度になってから、「タケミ菌」を添加する。その後に、40℃程度で、湿度の高い高温多湿の環境の下で、前記「タケミ菌」を増殖させる処理を行うが、そのために要する時間は、24時間程度で十分と考えられる。
【0011】
前述したように、大豆原料を微粉砕したものを、「タケミ菌」を増殖させる原料として用いる場合には、菌が接する原料の表面積が非常に大きいものであることから、短時間で大量に「タケミ菌」を増殖させることが可能である。そして、前記「タケミ菌」を十分に繁殖させた状態で、その菌が増殖したものを乾燥処理し、塊をほぐすような処理を行う。前述したようにして、「タケミ菌」を増殖させた粉末は、納豆菌とともに煮豆としての大豆原料に添加して、納豆発酵させることで、納豆菌が大豆成分を分解しながら、ねばりボンドをより増殖せることができるとともに、「タケミ菌」によりペプチド成分を大量に生成することができる。
【0012】
前述したようにして、微粉末状のものとして製造した「タケミ菌」を大量に含む生成物の粉末は、前記「タケミ菌」が生成するペプチド成分を大量に含むものである。なお、以下の説明において、「タケミ菌」を増殖させて得られる粉状の製品は、「納豆添加用加工製品」と呼んで説明する。
【実施例】
【0013】
前記「納豆添加用加工製品」は、納豆を製造するに際して、原料の煮豆に納豆菌と同じ量を添加して、40℃程度の高温高湿の環境に24時間程度保管することで、納豆菌を増殖させる納豆発酵と、「タケミ菌」を同時に増殖させる処理を行う。そして、そのようにして納豆を製造することで、原料の大豆には、納豆菌とともに「タケミ菌」を大量に増殖させることができるものとなる。特に、「納豆添加用加工製品」が微粉末状のものとされていることから、大豆の粒の表面に均一にまぶされる状態となって、菌を良好な環境のもとで増殖させるようになる。
【0014】
前記「タケミ菌」を納豆菌とともに、大豆中で増殖させる際に、前記2種類の菌は特に邪魔し合うことがない状態で、大豆の蛋白質を分解しながら増殖することが確認できた。そして、本発明で得られる「納豆添加用加工製品」に含まれる「タケミ菌」は、大豆の原料から、ペプチドを大量に生成するものである。一般に、納豆菌を大豆に繁殖させて納豆を製造するに際して、大量にアンモニアを発生させるので、前記アンモニアを主体とする臭気の成分は、納豆を好まない人には、より強烈に拒否反応を誘起するものである。
【0015】
前記納豆の製造に際して、大量に発生されるアンモニア成分は、「タケミ菌」が分解刷ることができるので、異臭を発散させないという利点を発揮することができる。そこで、前記「タケミ菌」が増殖された「納豆添加用加工製品」を、納豆菌とともに大豆に添加することで、2種類の菌がともに増殖されるが、納豆菌がねばりボンドを大量に生成することで、いわゆる納豆がその製造工程で作られる。その納豆が製造されると同時に、「タケミ菌」は大豆の蛋白質を分解して、大豆ペプチドを大量に生成する。その「タケミ菌」はの増殖により前記納豆菌が発生するアンモニアを分解するので、アンモニア臭の少ない納豆を作ることができる。
【0016】
前述したように「タケミ菌」と納豆菌とを混合した状態で、原料の大豆に添加して、納豆発酵させたことにより得られる納豆は、従来の納豆菌のみにより製造した納豆に比較しても、前記2種類の菌によって分解された大豆の成分の比率が、非常に多いものであることが確認できた。したがって、前記2種類の菌により産生される納豆菌の酵素のキナーゼ等の、人が摂取して栄養として活用可能な有効成分、つまり、ねばりボンドと、「タケミ菌」により生成されたキナーゼ成分との、双方の成分との含有量が非常に多含まれるものとなる。そして、納豆としてより有用な成分を多く含有し、新たな納豆を製造できるという特徴を発揮できる。
【0017】
前述したように、納豆菌とともに「タケミ菌」を添加して、納豆発酵させる処理を行うことにより得られるところの、本発明の製品である「納豆」は、人がおかずとして食する他に、その納豆生成物を乾燥させてから、粉末化させる処理を行って、市場に提供することが可能である。そして、前記粉末状に加工した納豆の粉は、それをケーキの材料等として用いる等の、二次加工のための原料として利用することも可能である。また、他の食材と混ぜて、前記ねばりボンドに加えて、「タケミ菌」により生成されるキナーゼ成分を大量に含む食品を提供でき、前記キナーゼ成分を有効に利用させることができる。
【0018】
前述したように、人の食品として、本発明の納豆を利用することの他に、家畜の飼料等にも用いることができるもので、ねばりボンドを大量に含む納豆の生成物を、飼料に少量添加する等の方法で与えることができる。そして、前記「納豆」を家畜やペットのえさに混ぜて与えることで、家畜等が餌を消化する作用を向上させるとともに、整腸作用を良好に維持させることが可能となる。
【0019】
前記「納豆状加工製品」において、アンモニア臭を少なくした納豆を提供することの他に、前記「タケミ菌」が増殖されることで、納豆に特有な臭気を薄めて、新たな風味とにおいを持つ食品として、消費者に提供することができることになる。また、前記「タケミ菌」は、その細胞壁にキチンおよび/またはキトサンのようなキナーゼ成分を大量に含むものであることから、当然、前記「タケミ菌」を大量に含む添加用粉末では、その有効成分を大量に含んでいる。そして、前記「タケミ菌」の生成物を納豆とともに摂取することにより、キチン質等の有効成分を大量に摂取できることにもなり、人の健康の維持に寄与させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
煮豆として作成した大豆に対して、
納豆菌と、
硝酸塩を還元することができ、細胞壁にキチンおよび/またはキトサンのようなキナーゼ成分を多く含むパチルス属の微生物と、を混合し、
納豆菌の増殖する温度で発酵させる工程を経て、製造することを特徴とする納豆の製造方法。
【請求項2】
前記パチルス属の微生物として、「バチルス・サブチルス・タケミ菌」を用い、
前記「バチルス・サブチルス・タケミ菌」を、大豆を微粉末に加工したものを原料として用い、納豆の製法と同様な方法により前記菌を増殖させて処理したものを、前記納豆菌とともに煮豆として作成した大豆に添加し、
納豆菌の増殖する環境で発酵させる工程を経て、製造することを特徴とする請求項1に記載の納豆の製造方法。

【公開番号】特開2006−345755(P2006−345755A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−174926(P2005−174926)
【出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【出願人】(000105822)ゴールド興産株式会社 (4)
【Fターム(参考)】