説明

紙巻器および紙巻器の取付方法

【課題】パネルの厚みに対応してすっきりとした設置状態で取り付けできる紙巻器を提供する。
【解決手段】パネルに埋め込み状に取り付けられる紙巻器8であって、パネルには下端が開放された下向きコの字状の切り欠きを形成しておき、この切り欠きの内周に嵌め込まれてトイレットペーパーを保持可能な下向きコの字状の本体枠部14と、切り欠きの前面外周を覆うコの字状をなしパネルの前面に当接される鍔部15とを備えて紙巻器8を形成し、本体枠部14にはボルト18により前後移動可能に当て板19,19,19を設け、この当て板19,19,19をパネルの裏側に当接させて固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネルに埋め込み状に取り付けられる紙巻器、および、この紙巻器のパネルへの取付方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、カウンターの前板に紙巻器を取り付ける場合、カウンターの下方に十分な配管スペースを確保すると、紙巻器が前板から前方へ突出した収まりとなってしまう。この紙巻器の突出感をなくするために配管スペースの下に紙巻器を取り付けるものとすると、紙巻器の高さが低くなってしまい、非常に使い勝手が悪いものとなる。
そこで、特許文献1に開示されているように、カウンターの前板に孔を開けて、前板に埋め込み状に紙巻器を取り付けた構造のものが存在する。この構造では、カウンターの下方に配管スペースを確保することができ、また、紙巻器の取り付け高さを良好な位置に確保できるものである。
【特許文献1】特開平8−256936号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記特許文献1に開示されているような紙巻器の取付構造においては、前板に長方形状の孔を開けて紙巻器を取り付けるため、長方形状の孔を開けることが面倒であり、また、紙巻器を取り付けるために補強を行う必要があり、紙巻器の取り付け施工に困難を伴うという問題点があった。
また、紙巻器を構成するケーシングの下底にゴミ等が溜まりやすく、紙巻器の下底部分の掃除が面倒になるという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、補強が不要となり、取り付け施工が容易で、配管スペースを確保しつつ良好な高さ位置に取り付けできる紙巻器、および、この紙巻器の取付方法の提供を目的とし、この目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
本発明の紙巻器は、ロール状のトイレットペーパーを保持可能でパネルに埋め込み状に取り付けられる紙巻器であって、前記パネルには下端が開放された下向きコの字状の切り欠きが形成されているとともに、紙巻器は、該切り欠きの内周に嵌め込まれてトイレットペーパーを保持可能な下向きコの字状の本体枠部と、前記切り欠きの前面外周を覆うコの字状をなし前記パネルの前面に当接される鍔部を備えていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明の紙巻器は、下向きコの字状の本体枠部と下向きコの字状の鍔部を備えて構成され、本体枠部はパネルに形成した下向きコの字状の切り欠きに嵌め込み、鍔部をパネルの前面に当接させることで、下向きコの字状の切り欠きを前面から隠すことができ、切り欠きの仕上げ不良などを良好に隠蔽させて、すっきりとした状態でパネルに紙巻器を取り付けることができ、取付状態において紙巻器の下端側は開放されているため、従来のように底側にゴミ等が溜まることがなく、掃除が容易であり、また、トイレットペーパーの着脱も容易なものとなる。
【0006】
また、本発明の紙巻器において、前記本体枠部に、ボルトにより前後移動可能に当て板を設け、該当て板を前記パネルの裏側に固定した構成とすることもできる。
こうすれば、ボルトにより当て板を前後調整して、パネルの裏側に当て板を当接させて仮固定でき、また、この当て板をパネルの裏側に固定して、補強材を用いることなく強固にパネルに紙巻器を取り付けることができ、しかも、パネルの厚みに対応させて良好に紙巻器を取り付けできるものとなる。
【0007】
また、本発明の紙巻器の取付方法は、パネルに形成された下向きコの字状の切り欠き内に、下向きコの字状の紙巻器の本体枠部を嵌め込み、紙巻器の下向きコの字状の鍔部をパネルの前面に当接させて該鍔部により前記切り欠きの前面外周を覆蓋するとともに、前記本体枠部に設けた当て板をボルトにより前後調整して該当て板をパネルの裏面に当接させて固定することを要旨とする。
こうすれば、パネルに形成した下向きコの字状の切り欠き内に本体枠部を嵌め込み、鍔部をパネルの前面に当接させて切り欠きを良好に隠すことができ、ボルトにより当て板を調節して、当て板と鍔部によりパネルを挟み込んだ状態で仮固定することができ、パネルの厚みに良好に対応させて、パネルの裏面に当て板を当接させた状態で当て板を固定することにより、厚みの異なるパネルに対し良好に対応して紙巻器を取り付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
図1は、手洗器とカウンターの斜視構成図であり、図2は、壁Wに手洗器とカウンターを設置した状態の側面構成図である。
手洗器1には水栓2が立設され、手洗器1の前面には手洗い前板3が、また、手洗器1の側端面には側板4が設けられている。
手洗器1から水平方向に延びてカウンター5が設けられ、このカウンター5は、部屋の壁Wに固設した支持ブラケット6,6により支持されて設置され、カウンター5の前面には前板(パネル)7が取り付けられている。この前板7の手洗器1側に紙巻器8が埋め込み状に取り付けられる。
【0009】
カウンター5の設置状態では、図2に示すように、カウンター5の下方の前板7の裏側には、給水管12および排水管13を横引き状に配管するための配管スペースSが確保され、この配管スペースSの下部部位の前板7の下端側に埋め込み状に紙巻器8が取り付けられる。
この紙巻器8は、例えば床面Fから650mmの高さ位置に配置され、使いやすい高さ位置に設定されている。
【0010】
図3は、前板7に紙巻器8を取り付けた状態の前面側から視た斜視構成図であり、この紙巻器8にロール状のトイレットペーパー11を保持させた状態は、図9の斜視図で示す。
紙巻器8には、上部に上下方向に揺動可能に紙切板9が設けられており、下方側にはロール状トイレットペーパー11の芯に通される芯棒10が設けられ、この芯棒10に保持されてトイレットペーパー11が交換可能に設けられる。
【0011】
図4は、前板7に紙巻器8を取り付ける前の分解図であり、前板7には、下端が開放された下向きコの字状の切り欠き7aが予め形成される。この切り欠き7aに対し下方側から嵌め込み状に紙巻器8を取り付けることができる。
紙巻器8は、図5の前側からの拡大斜視図で、また図6に裏側から視た拡大斜視図で示すような構造となっており、下向きコの字状の本体枠部14と、下向きコの字状の鍔部15を備えている。本体枠部14と鍔部15を一体化する前の分解斜視図を図7に示す。
【0012】
本体枠部14は、水平な上水平片14aの左右両端から一体状に折り曲げて垂設された左右の垂下片14b,14bにより下向きコの字状に形成されており、この本体枠部14は後方側へ延びる幅長を有し、左右の垂下片14b,14bの下端には、それぞれ外側に90度折曲した下端鍔部14c,14cが一体形成されており、この下端鍔部14c,14cは、切り欠き7a内に本体枠部14が嵌め込まれた時に前板7の下端に当接されるものである。
【0013】
左右の垂下片14b,14bのそれぞれの下端側には、横方向に貫通して芯棒10を通すことのできる芯棒孔16,16が形成されている。また、左右の垂下片14b,14b間の上部部位に、前述した紙切板9が上下方向に揺動可能に設けられる。
この本体枠部14の上水平片14aおよび左右の垂下片14b,14bの後端縁には、外側へ90度折曲された支持突片17,17,17がそれぞれ突出形成されている。
【0014】
本体枠部14の3個所に形成された支持突片17,17,17には、それぞれ図6に示すように、雌ネジを形成した雌ネジ孔17a,17a,17aが形成されており、この各雌ネジ孔17a内にボルト18が後方側から螺合されている。
各ボルト18の前端側には、平板状の当て板19,19がそれぞれ固定されて設けられている。この各当て板19には、ビス21を通すビス孔19aが形成されている。
【0015】
一方、鍔部15は、水平な上水平片15aの左右両端側に一体状に垂設して左右の垂下片15b,15bが形成されて下向きコの字状を成している。なお、鍔部15の上水平片15aは、上向きに立ち上げ形成されたものである。
また、鍔部15の左右の垂下片15b,15bからそれぞれ後方側へ折り曲げ状にして接合片20,20が一体形成されており、この接合片20の下部部位には芯棒10を通す芯棒孔16が形成されている。
【0016】
この鍔部15の各接合片20,20を、図6のように、本体枠部14の左右の垂下片14b,14bの内側に当接させて、本体枠部14の芯棒孔16と鍔部15の芯棒孔16を整合させた状態で、接合片20を垂下片14bにスポット溶接等の溶接手段で接合させることで、本体枠部14と鍔部15を図5および図6のように一体化させることができる。
この一体化させた状態で、前板7の切り欠き7aの下方より本体枠部14を上方へ押し込んで、本体枠部14を切り欠き7aの内周に嵌め込むことができ、この時に鍔部15を前板7の前面に当接させることで、鍔部15により切り欠き7aの前面外周を覆って、切り欠き7aを前面側から隠すことができ、切り欠き7aにカケなどの仕上げ不良が発生していても、このカケなどを鍔部15で良好に隠して、すっきりとした状態で図3および図9のように、前板7に紙巻器8を取り付けることができる。
【0017】
この取付状態では、図10の裏側からの斜視図で示すように、前板7の裏面よりも後方側へ突出して本体枠部14が配置され、本体枠部14の支持突片17,17,17および当て板19,19,19は前板7の裏側に配置されることとなる。
ここで裏側より各ボルト18を締め付けてゆくと、各当て板19は、図8に要部平面拡大図で示すように、やがては前板7の裏側にボルト18の締め付け力で当接されることとなる。
この状態では、当て板19,19,19と鍔部15間で前板7を締め付けた状態となり、良好に紙巻器8が前板7に仮固定されることとなる。
【0018】
この状態で紙巻器8の水平方向位置および垂直方向位置を調整して、良好な位置に紙巻器8をセットすることができ、その後に、各当て板19に形成されているビス孔19a内に裏側から図8のようにビス21を入れて、ビス21を前板7の裏面に締め付けることで、前板7の裏面に当て板19,19,19が固定され、これにより前板7に強固に紙巻器8が取り付けられることとなる。
3枚の当て板19,19,19により強固に補強された状態で前板7に紙巻器8が取り付けられるため、前板7の裏側に補強木等を設ける必要がなく、強固な取付状態を確保できるものである。
【0019】
なお、ボルト18は裏側から工具を用いて締め付けできるように、六角形状の頭部18bを後端側に有し、前端側はカシメによりカシメ部18aを形成して当て板19に固定されるものである。
なお、ボルト18は、頭部18bの部分に手で締め付けることのできる蝶部を設けた蝶ボルトで構成しても良い。
【0020】
なお、鍔部15側の接合片20を本体枠部14の垂下片14bの外側に溶接で接合一体化させても良く、また、本体枠部14と鍔部15が最初から一体形成されたものであっても良く、このような場合でも、ボルト18により当て板19を前後方向に移動させて前板7の裏側に当て板19を当接させ、その後にビス21で当て板19を前板7に固定して、強固に紙巻器8を取り付けできるものである。
【0021】
なお、前板7は、その表面に貼着される化粧板の種類等により厚みが異なり、例えば樹脂のコート紙が貼着されている前板7では15mmの厚みであり、また、表面に樹脂のメラミン化粧板が貼着されている前板7では19mmの厚みである。このような厚みが異なる前板7に対しても、ボルト18で当て板19を前後方向に調節することで、前板7の厚みに対応して良好に紙巻器8を取り付けることができるものである。
【0022】
本例の紙巻器8では、取付状態において、紙巻器8の下端側は開放されているため、取り付けられるトイレットペーパー11の下部には何も存在せず、そのため、従来の紙巻器のようにトイレットペーパー11の下方の底面にゴミが溜まるようなこともなく、トイレットペーパー11の底側面を掃除する必要もなく、常に綺麗な状態に維持することができ、掃除も極めて楽なものとなる。また、紙巻器8の下端側は開放されているためトイレットペーパー11の着脱も容易なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】手洗器とカウンターの斜視構成図である。
【図2】図1の手洗器とカウンターを壁の所定高さ位置に設置した状態の側面構成図である。
【図3】カウンターの前板に取り付けられた紙巻器の要部拡大斜視図である。
【図4】前板に形成された切り欠きに紙巻器を取り付ける前の分解斜視図である。
【図5】紙巻器を前方側から視た拡大斜視図である。
【図6】紙巻器を後方側から視た拡大斜視図である。
【図7】紙巻器を構成する本体枠部と鍔部を一体化させる前の分解斜視図である。
【図8】前板の切り欠きに紙巻器を取り付けた状態の要部拡大平面構成図である。
【図9】トイレットペーパーを取り付けた紙巻器の設置状態の前面から視た斜視構成図である。
【図10】トイレットペーパーを取り付けた紙巻器の設置状態の前板の裏側から視た斜視構成図である。
【符号の説明】
【0024】
1 手洗器
5 カウンター
7 前板(パネル)
7a 切り欠き
8 紙巻器
9 紙切板
10 芯棒
11 ロール状トイレットペーパー
12,13 配管
14 本体枠部
14c 下端鍔部
15 鍔部
16 芯棒孔
17 支持突片
17a 雌ネジ孔
18 ボルト
18a カシメ部
18b 頭部
19 当て板
19a ビス孔
20 接合片
21 ビス
S 配管スペース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状のトイレットペーパーを保持可能でパネルに埋め込み状に取り付けられる紙巻器であって、
前記パネルには、下端が開放された下向きコの字状の切り欠きが形成されているとともに、
紙巻器は、該切り欠きの内周に嵌め込まれてトイレットペーパーを保持可能な下向きコの字状の本体枠部と、前記切り欠きの前面外周を覆うコの字状をなし前記パネルの前面に当接される鍔部を備えている
ことを特徴とする紙巻器。
【請求項2】
前記本体枠部に、ボルトにより前後移動可能に当て板を設け、該当て板を前記パネルの裏側に固定したことを特徴とする請求項1に記載の紙巻器。
【請求項3】
パネルに形成された下向きコの字状の切り欠き内に、下向きコの字状の紙巻器の本体枠部を嵌め込み、紙巻器の下向きコの字状の鍔部をパネルの前面に当接させて該鍔部により前記切り欠きの前面外周を覆蓋するとともに、前記本体枠部に設けた当て板をボルトにより前後調整して該当て板をパネルの裏面に当接させて固定することを特徴とする紙巻器の取付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−119466(P2010−119466A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293951(P2008−293951)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)