説明

素振り練習器

【課題】実際にボールをバットやラケットで打った時にボールがバットに吸い付いたような心地良い感触を味わうことができ、なおかつ、脇が締まりインパクトまでは小さな軌道で、インパクトからは大きな軌道に移行できる体の軸回転で振る理想的なスイングを体得することでさらにヘッドスピードを向上させ、グリップを握った手が滑らない素振り練習器を提供する。
【解決手段】 シャフト1と、シャフト1の基端部側に設けられたグリップ3と、シャフト1の先端側に固着された先端部材2と、シャフト1に、その軸方向に移動可能に設けられた打撃部材5とを有し、グリップ3を握った素振りによって、打撃部材5がシャフト1に沿って先端方向に移動して先端部材2に衝突することで、実際にボールを打った時等の衝撃力、打撃音、感触、臨場感を体感できる素振り練習器において、グリップ3を、シャフト1の軸方向に移動可能に設け、さらに、シャフト1の、グリップ3とシャフト1の基端部の間に弾性部材6を配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野球、テニス、ゴルフ、バドミントン、卓球、剣道など、打撃用具を使用するスポーツの素振り練習をするため、あるいは、運動不足を解消するために誰でもどんな場所でも使用できる素振り練習器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
野球、テニス、ゴルフなどにおいて素振り練習をする場合、実際にボールを打った時等の衝撃力、打撃音、感触、臨場感を体感できる素振り用練習器が考えられていた(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】 特開平8−24386号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載の器具によれば、素振りによる遠心力によって打撃部材が先端に移動して被打撃部材に衝突し、ボールを打った時の音、感触、臨場感を体感できるが、衝突時に振動、衝撃があることに加え、遠心力が働くために遠心力のかかる方向へ腕が引っ張られ、体の軸を使った下半身主導の素振りが困難になり、いわゆる手打ち状態になり、ヘッドスピードが思うように上がらないという場合があった。
【0004】
また、ボールをバットに乗せて運ぶ感触、いわゆる打撃時にバットとボールの接触時間を長くし、ボールがバットに吸い付いた感触、ボールが潰れた心地良い感触を味わうことができなかった。
【0005】
また、素振りをすると腕が遠心力の働く方向へ引っ張られ、それを阻止しようとグリップを握る手に力が入るが、素振りの回数を重ねるうちに、グリップを握った手が滑りヘッドがぶれた不安定な素振りになってしまうという課題があった。
【0006】
本発明は、このような課題を解決しようとするものであり、実際にボールをバットやラケットで打った時にボールがバットに吸い付いたような心地良い感触を味わうことができ、なおかつ、グリップが内側に移動することで脇が締まりインパクト(打撃点)までは小さな軌道で、インパクトからは大きな軌道に移行できる体の軸を使った理想的なスイングを体得することでヘッドスピードを向上させ、さらにグリップを握った手が滑らない素振り練習器を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するため本発明にあっては、シャフトと、シャフトの基端部側に設けられたグリップと、シャフトの先端部側に固着された先端部材と、シャフトに、その軸方向に移動可能に設けられた打撃部材とを有し、グリップを握った素振りによって、打撃部材がシャフトに沿って先端方向に移動して前記先端部材に衝突することで、実際にボールを打った時等の衝撃力、打撃音、感触、臨場感を体感できる素振り練習器において、グリップを、シャフトの軸方向に移動可能に設け、更に、シャフトの、グリップとシャフトの基端部の間に弾性部材を配設させたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明にあっては、弾性部材は、シャフトの外周に取り付けられたスプリング部材であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明にあっては、グリップの移動範囲を規制調整するために、シャフトの外周に着脱可能に固定するストッパを設けたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明にあっては、グリップの下端側に中空間を設けると共に最下側を閉口したグリップエンドを設け、グリップエンドは、グリップに一体的に形成されると共に中空間内に弾性部材が位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上述した本発明の素振り練習器にあっては、素振りをすることにより先端部に打撃部材が衝突、その衝突力で手元側の弾性部材がグリップにより圧縮され、実際にジャストミートでボールを捉えた時のバットとボールの接触時間が長い時に起こる現象、いわゆるボールが潰れた感触、ボールがバットに吸い付いた感触が体感でき、打撃のイメージづくりに優れた効果を発揮することができる。
【0012】
また、素振りをする時にグリップを握った手が滑るという不具合を解消できるという優れた効果を発揮することができる。
【0013】
また、弾性部材としてスプリング部材を使用し、シャフトの外周に取り付けることにより、多種多様な打球感の違いを表現することができる。スプリング部材は、外からの圧力により歪みを受けるとそれを跳ね返そうとする特性を持っており、また、スプリング部材の仕様により、歪み、跳ね返そうとする力が異なることから、仕様の異なるスプリング部材を使用することにより、さまざまな打球感の違いを表現することができるという優れた効果を発揮することができる。
【0014】
また、移動可能なグリップの移動範囲を規制調整するためのストッパをシャフトの外周に着脱自在に固定することにより、グリップのシャフト上での移動距離を短くしたり、長くしたり調整でき、結果バットの長さが調整でき、個々人に合わせた無理のない軌道及びフォロースルーを調整することができるという優れた効果を発揮することができる。
【0015】
また、素振りで構えた時に素振り練習器の先端部側が下に下がるのを防止し、先端部側を立てた理想的な素振りができるようになる。先端部側を立てた素振りができることで、素振り時に遠心力によりシャフトが遠心力の働く方向へ抜け出すことを防ぎ、手元側が重いことで身体の軸側にグリップが移動し、脇の締まった下半身主導の体の軸を使ったヘッドのブレない安定したフォームが作られ、さらにヘッドスピードが向上するという優れた効果を発揮することができる。
【発明をするための最良の形態】
【0016】
以下本発明の実施の形態を図1から図9を参照して詳しく説明する。本実施形態の素振り練習器は、野球用の素振りバットを示すものである。ただし、本実施形態により、本発明が限定されるものではなく、以下の実施の形態は、本発明の素振り練習器についての一例として説明するものであり、この説明の内容に限定されるものではない。
【0017】
図1は、本発明の素振り練習器の側面断面図である。本発明の素振り練習器は、シャフト1、先端部材2、グリップ3、グリップエンド4、打撃部材5、スプリング部材からなる弾性部材6、制動部7、突縁部8、栓体8′から構成される。
【0018】
シャフト1は、ステンレスパイプのような剛性率の高い材料で形成されている。シャフト1の先端部側には木、金属、樹脂などで形成される先端部材2が、抜け防止のための栓体8′により固着されている。シャフト1の手元側となる基端部側には、木、金属、樹脂などで円筒形状に形成されるグリップ3が、シャフト1の軸方向に移動可能にはめ込まれて設けられている。図1に示すように、グリップ3の内径は、シャフト1の外径よりも若干大きくなるように形成されており、このことでグリップ3がシャフト1に沿って移動可能となる。
【0019】
また、シャフト1の先端部材2とグリップ3の間には、ゴム、樹脂などで形成される打撃部材5が、シャフト1の軸方向に移動可能にはめ込まれて設けられている。図1に示すように打撃部材5の内径は、シャフト1の外径よりも若干大きくなるように形成されており、このことで打撃部材5がシャフト1に沿って移動可能となる。したがって、グリップ3を握って素振りを行うことで、その遠心力、慣性によって、打撃部材5はシャフト1に沿って先端部側に高速に移動し先端部材2に衝突すると、打撃音が生じると共にシャフト1、グリップ3を介して衝撃力が伝達され、実際にボールを打った時のような感触、臨場感を体感できることになる。また、打撃部材5の重さ、材質、形状、大きさを適宜選択することで、種々の打撃音や衝撃力を生じさせることが可能となる。
【0020】
また、シャフト1の、グリップ3の手元側となる基端部側とシャフト1の基端部に設けられた抜け防止の突縁部8の間の外周には、弾性部材6を構成する金属、樹脂などで形成されるスプリング部材が巻き付けるように設けられている。また、シャフト1の、グリップ3の手元側の外周には制動部7が、シャフト1に沿って異動可能に設けられる。制動部7は、打撃部材5が先端部材2に衝突するインパクト時に、スプリング部材(弾性部材)6に圧力をかける部位であり、木及び樹脂、弾性部材などで形成され、形状も任意に形成できるものである。なお、スプリング部材(弾性部材)6は、図1に示すように抜け防止用の突縁部8に固定しても良いが、制動部7に固定しても、突縁部8、制動部7側のいずれにも固定しなくとも良いものである。
【0021】
グリップ3を握って素振りを行った際の、打撃部材5が先端部材2に衝突するインパクト時に、グリップ3とその手元側に設けられている制動部7はシャフト1を移動し、スプリング部材(弾性部材)6に衝突し、この衝突によりスプリング部材(弾性部材)6がグリップ3と制動部7により圧縮され、実際にジャストミートでボールを捉えたときのバットとボールの接触時間が長い時に起こる現象、いわゆるボールが潰れた感触、ボールがバットに吸い付いた感触が体感できる。
【0022】
また、弾性部材6を構成するスプリング部材は、形状、、構造、寸法、成分、精度、性能、製造方法などの仕様を変えることにより、ボールを打った時の手に伝わる感触を変えることができる。例えば、軟式野球の軟球を打った感触、ソフトボールを打った感触、ゴルフボールを打った感触、剣道の竹刀で相手の的に当たった時の感触など、仕様を変えることと、スプリング部材(弾性部材)6に対する外圧を変えることでそれぞれの打撃用具の感触を自由に作り出すことができる。なお、制動部7は、必要に応じて設ければ良いものである。
【0023】
また、素振り時にグリップ3を握った手の平の筋肉と表皮は遠心力の働く方向へ引っ張られるが、グリップ3が体の軸(手元)側に移動することで遠心力の働く方向へ引っ張られることを防ぎ、また、スプリング部材(弾性部材)6のもう一つの特性である振動及び衝撃を吸収することにより、グリップ3を握った手が滑るという不具合を解消することができる。手の平が滑る要因の一つに、通常のバットを握った場合には、素振り時に手の平の筋肉と表皮が引っ張られ柔軟性が低下することに起因し、この手の平の筋肉と表皮の弾力性をスプリング部材6のもう一つの特性により保持することができ、グリップ3を握った手が滑るという不具合を解消できるものである。
【0024】
また、グリップ3の下端側には、グリップ3と一体的に形成されるグリップエンド4が、シャフト1の軸方向にグリップ3と共に移動可能に設けられている。グリップエンド4は、内部に中空間を有し、この中空間に、スプリング部材(弾性部材)6、シャフト1の一部、制動部7、突縁部8が配設されると共に最下(体)側は閉口されている。また、グリップ3より下端側のグリップエンド4の径、長さはグリップ3より大きく形成することができる。これにより、グリップ3より下(体)側に重心を位置させることができ、このことで先端部側が立ち、シャフトが遠心力のかかる方向へ移動することを防止できると共にグリップ3は体の軸側へ移動することができる。なお、グリップエンド4は、木、金属、樹脂などで形成でき、グリップ3と一体成形しても、グリップ3と別体に製作した後に組み合わせて一体的に形成しても良い。
【0025】
図2は、本発明の素振り練習器の、素振り前とインパクト時の比較をした側面断面図である。Aはグリップエンド4の移動距離、Bはグリップエンド4内の遊び空間を示す。素振りの始動前の状態が図2(A)であり、インパクト時の状態が図2(B)である。素振りの始動前は、図2(A)に示すように、グリップ3の上端部に打撃部材5が載っている状態で、スプリング部材(弾性部材)6は外圧を受けずにピッチは開いた状態である。グリップエンド4の最下側は閉口していることから、最下部に突縁部8が当接することになり、結果、グリップ3の先端が一番先端部側に近づくことになるため、シャフト1での打撃部材5の移動範囲を最も短い状態に規制すると共に素振り練習器の全長を最も短い状態とする。グリップ3を握って素振りをすることにより、図2(B)に示すように、グリップ3が体の軸側に移動し、それと共に打撃部材5が遠心力及び慣性により先端部側に高速で移動する。移動した打撃部材5は、そのまま先端部材2に衝突し、打撃音が生じると共にシャフト1、グリップ3を介して衝撃力が伝達される。この先端部材2と打撃部材5の衝突した時が、バットとボールのインパクトの位置となる。
【0026】
また、素振りをした際に打撃部材5が先端部材2に衝突した衝撃により、衝撃力がシャフト1、グリップ3を介して伝達されるため、グリップエンド4の中空間内の、シャフト1の基端部に設けられたスプリング部材(弾性部材)6は制動部7に衝突し、さらに突縁部8に挟まれて圧縮され縮まるように形成されている。スプリング部材(弾性部材)6は、衝突の時点で圧縮され縮まるが、外圧に対して元に戻ろうとする特性により、その特性を生かしてスプリング部材(弾性部材)6が圧縮された時点から元に戻ろうとする時点までの時間差(時間の隔たりの量)を作ることが本発明の最大の特徴である。この時間差が、バットとボールの長い接触時間を擬似的に作り、実際にボールをバットで打った時のような、ボールを打って、バットに乗せて、離れていった感触、いわゆるバットにボールが吸い付いて飛んでいった感触に似た手応えを作り出すことができる。
【0027】
また、素振りの始動前は、打撃部材5は、グリップ3の上端部に載っていることと、シャフト1がグリップエンド4の最下側に位置することで、先端部側より基端部側が重くなるように重心をグリップより下側に位置させる構造にすることができる。また、素振りをした際に、打撃部材5が先端部側に移動した場合でも、重心は本発明の素振り練習器の長さの中心よりグリップ3寄りに位置させる構造にすることができる。これにより素振りの際に先端部が下に下がるのを防止し、先端部が立つことで遠心力の働く方向へ先端部が引っ張られる動きを抑制することができる。先端部が立つことで、肩と腕から力を抜いた下半身主導の軸の安定した理想的なフォームが体得でき、ヘッドスピードを向上させることができる。
【0028】
また、図2(A)は、本発明の素振り練習器の素振り前の全長であり、(B)はインパクト時の全長である。素振り時にグリップ3が体の軸側に移動することで、インパクト時に遊び空間Bが広くなり、結果、素振り前より距離A分だけ、素振り練習器の全長が伸長したことが分かる。素振りの速度が速ければ速いほどスプリング部材(弾性部材)6の縮みが大きくなることで、必然的に遊び空間Bは大きくなり、本発明の素振り練習器の全長が長くなる。長くなった分、体の内側(体に近い部分)、さらに内側へとグリップ3が入り込むことができ、今まで困難だった脇が締まった体の軸回転を利用した素振りが容易に習得できるようになる。
【0029】
図3、図4は、フォロースルーの大きさを調整するための調整手段の一つとして第1のストッパ9を設けた場合の側面断面図である。この第1のストッパ9以外の構成は、図1、図2で説明した構成と同様である。第1のストッパ9は、樹脂、金属などで形成され、シャフト1の外周の任意の位置に着脱自在に固定できるものである。また、フォロースルー調整目盛り10は、5ミリ、1センチ、2センチ、3センチ程度の幅で等間隔にシャフト1上に水転写シール、レーザーなどで刻むことができる。第1のストッパ9を取り付る位置が先端部側10になればなるほど遊び空間Bが小さくなり、素振りをした時のフォロースルーが小さくなるように調整できる。フォロースルーを小さくすることで、初心者等が使った時でも無理のない素振り練習ができる。
【0030】
図3とは逆に、図4に示すように、第1のストッパ9の取り付け位置を、基端部側であるグリップ3側の目盛り10′に取り付けた場合は、遊び空間Bの空間は大きくなり、これによりフォロースルーが大きくなるように調整できる。フォロースルーを大きくすることで、中級者、上級者が使った時に、より大きなフォロースルーで練習ができ、ヘッドスピードを向上させるなどの技術の向上を促すことができる。
【0031】
図5、図6は、スプリング部材(弾性部材)6の伸縮の調整をする手段の一つとして、着脱自在な第2のストッパ11を取り付けた側面断面図である。この第2のストッパ11以外の構成は、図1、図2で説明した構成と同様である。第2のストッパ11をグリップ3上端部に当接させ、図5に示すような位置でグリップ3の位置を固定させることによりスプリング部材(弾性部材)6のピッチを狭く調整できる。スプリング部材6のピッチを狭くすることで、打撃部材5が先端部材2に衝突した際の硬い手応えを可能にすることができる。この硬い手応えは、例えば硬式野球のボールを打った時の手応えを擬似的に作ることができ、スプリング部材6のピッチを狭くすることで振動、衝撃の吸収率を低下させたための効果である。
【0032】
図5とは逆に、第2のストッパ11をグリップ3の上端部に当接させ、図6に示すような位置でグリップ3の位置を固定させることによりスプリング部材(弾性部材)6のピッチを広く調整したものである。スプリング部材(弾性部材)6のピッチを広くすることで、打撃部材5が先端部材2に衝突した際の柔らかい手応えを可能にすることができる。この柔らかい手応えは、例えばソフトテニスのボールを打った時の手応えを擬似的に作ることができ、スプリング部材(弾性部材)6のピッチを広くすることで、振動、衝撃の吸収率を向上させたための効果である。
【0033】
なお、図3、図4に示したように第1のストッパ9と、図5、図6に示した第2のストッパ11は、互いに共用するようにし、いずれか一方のストッパのみを設けることが可能である。
【0034】
図7は、スプリング部材(弾性部材)6の機能及び動きを分かり易く説明するために、グリップエンド4の内部を部分的に拡大した部分断面図で表したものである。図7(A)は、素振りの始動前の状態であり、スプリング部材(弾性部材)6には、どこからも外圧がかかっていない状態である。図7(B)は、グリップ3を握って素振りを始めることにより、グリップ3が体の軸側に移動し、スプリング部材(弾性部材)6が、制動部7に接触し始め、徐々にスプリング部材(弾性部材)6のピッチが縮まっていく状態である。図7(C)は、制動部7と突縁部8により押し潰されているインパクト時のスプリング部材(弾性部材)6の状態である。この後、スプリング部材(弾性部材)6は元に戻ろうとする特性により、外圧を跳ね返すように元の状態に戻る。図7(A)〜(C)までの一連のスプリング部材(弾性部材)6の運動により、縮まり始めてから元の形状に戻るまでの時間の経過が、バッティングでいうところのインパクトでボールを捉え、リリースポイントでボールが離れ、さらにフォロースルーで振り切った状態までのボールとバットの接触時間を長く保った手応えを疑似的に作ることができる。
【0035】
図8は、本実施形態の素振り練習器の軌道と通常のバットの軌道を上面から見た説明図である。aは素振り時の体の軸となる位置、bは振り出しの地点、cはインパクトに集中するために踏ん張る地点、dはインパクトの地点、d′は先端部の軌道が前へ真っ直ぐ伸びた地点、d″はさらに軌道が前へ真っ直ぐ伸びた地点、eは通常のバットの軌道(グリップ3が移動しないと仮定した場合の軌道)、fは本発明の素振り練習器の軌道、gはグリップエンド4の遊び空間を広く取った場合の軌道、hは本発明の素振り練習器を使って素振りをした場合と、通常のバットで素振りをした場合のフォロースルーの比較を表したものである。インパクトに集中するために踏ん張る地点cの手前からグリップ3は体の軸a側に徐々に移動を始め、脇が締まりながら素振り時の体の軸となる位置aを中心に体は回転を始める。グリップ3の軌道が素振り時の体の軸となる位置a側に近いほど、体はぶれずに速い速度で回転することができるために、先端部も速い速度で回転することができヘッドスピードが向上する。ヘッドスピードが向上することで、おのずと軌道fは大きくなる。
【0037】
また、グリップ3が体の軸側へ移動した距離分、本発明の素振り練習器の支点(グリップを握る位置)も体の軸側に移動しながら回転を続けるが、図7(C)のスプリング部材(弾性部材)6の縮みが大きければ大きいほど、本発明の素振り練習器の全長が素振り時の体の軸側に伸長することができ、伸長した状態で本発明の素振り練習器の軌道はインパクトdからd′、さらにd″のように前へ前へと真っ直ぐ押し出されることになる。また、素振り時の体の軸となる位置aが安定する(1本の軸足へ重心が移動して安定する)ことで、下半身に踏ん張りができ、この踏ん張りができることで、前へ押し出す軌道c〜d″が可能になり、インパクトから前へ真っ直ぐ押し出す、いわゆるインパクトゾーンの長い楕円軌道をつくることができる。
【0038】
また、素振りの速度が速ければ速いほど、打撃部材5が先端部材2に衝突した衝撃が大きく、その衝撃が大きくなった分だけスプリング部材(弾性部材)6の縮みが大きくなり、元に戻るまでの時間差も大きくなる。これにより、バットとボールの接触時間は素振りの速度が速くなるほど長くなり、素振りの速度が遅いほど短くなるという特徴がある。この接触時間を表しているのが、d〜d″の位置である。バットとボールの接触時間が長くなるということは、手首の返しが遅くなるということであり、手首の返しが遅くなるということはバットでボールを前へ押し込む距離が長くなり、軌道が前へ伸びるということである。このインパクト前後の長くなった軌道が方向性を向上させ、大きなフォロースルーを作り、さらにヘッドスピードを向上させるという効果をもたらす。
【0039】
また、図2(B)に示すように遊び空間Bを広く調整した場合の軌道gは、インパクトの地点dからシャフト1の移動距離が長くなることで素振り練習器の全長が長くなり、さらに軌道及びフォロースルーが大きくなる。通常のバットを使った素振りの軌道eは、円軌道になるためにおのずと軌道も小さくフォロースルーも小さい。そのフォロースルーの差がhである。フォロースルーが小さいということはヘッドスピードも上がっていないということである。
【0040】
図9は、本発明の素振り練習器のグリップ3の軌道と先端部材2の軌道を比較するため上面から見た説明図である。aは素振り時の体の軸となる位置、bは振り出し地点、cはインパクトに集中すために踏ん張る地点、dはインパクトの地点、d′は軌道が前へ真っ直ぐ伸びている地点、d″はさらに軌道が前へ真っ直ぐ伸びた地点、fは本発明の素振り練習器の先端部材2の軌道、iはグリップ3が移動しないと仮定した場合の軌道、jは本発明のグリップ3が体の軸側に移動した場合の軌道、kはグリップ3が体の軸側へ移動する地点、k′は、さらにグリップが体の軸側に移動した地点である。インパクトに集中するために踏ん張る地点cの手前からグリップ3は体の軸a側に徐々に移動を始め、脇が締まりながら素振り時の体の軸となる位置aを中心に体は回転を始める。グリップ3が素振り時の体の軸側へ移動して動いた分、本発明の素振り練習器の支点も素振り時の体の軸となる位置aに沿って移動しながら回転を続けるが、本発明の素振り練習器の全長が伸長することで、本発明の素振り練習器の軌道はc〜d″まで前へ真っ直ぐ伸びることができる。グリップ3が体の軸側に移動することで、おのずと脇が締まることになるが、k′でさらに体の軸側にグリップ3が移動し、さらに脇が締まる。これにより、グリップ3の軌道jは脇が締まるほどに小さくなり、軌道jの円は小さくなる。軌道jの円が小さくなることで、必然的に体の回転が速くなり、ヘッドスピードが速くなるという効果をもたらす。ちなみに、グリップ3が移動せずに描いた軌道iは、遠心力の働きで脇が開くために軌道が大きく、軌道jの円より大きくなることで体の回転が遅くなり、ヘッドスピードもおのずと遅くなる。
【0041】
また、c、d、d″それぞれの地点で、グリップ3は体の軸側に移動しているが、シャフト1は徐々に伸長している状態を図面は示している。グリップ3が体の軸側へ移動する地点k〜k′は、徐々に内側に小さな軌道を作っているが、先端部の軌道はcからd″まで真っ直ぐ前へ伸びている。このcからd″の軌道をつくるのが、固定されていないグリップ3とグリップエンド4内部に位置するスプリング部材(弾性部材)6の役割である。なぜなら、素振りの際に、先端部が遠心力の働く方向へ引っ張られる運動を、グリップ3が動くことで、グリップ3を握った手・腕がグリップ3を体の軸a側へ引き寄せることができ、なおかつ、グリップ3を体の軸a側に引き寄せた距離分、グリップエンド4内部のスプリング部材(弾性部材)6は制動部7と突縁部8に押し潰され縮み、シャフト1が伸長することができるからである。
【0042】
また、本発明の素振り練習器は、dからd″の打点を広く取れる為の楕円軌道の素振り を体得するための素振り練習器でもある。楕円軌道に必要なものは、先端部を立て、グリップを握った腕を体の軸側に移動させながら下半身を安定させ、さらに先端部をグリップより後方に遅らせ、インパクトの位置で前へ真っ直ぐ押し出し、そのまま外側に軌道を大きく作っていくという俗にいうインサイドアウトのフォームをつくることである。本発明の素振り練習器は、振り出しは、グリップ側に重心があることで肩、腕などの上体から力を抜いた状態になり、それにより本発明の素振り練習器の先端部材2が立ち、下半身主導の安定した素振りができるようになる。これがグリップが移動しない軌道iになると、グリップ3は素振り時の体の軸aから離れた円軌道になり、脇が開いている分、上半身が安定せず、おのずと下半身も不安定な状態になり、いわゆるiは、手打ちと呼ばれる円軌道で振るヘッドがぶれた素振りの軌道になる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、野球用のバットの素振り練習器以外にも、テニス・卓球・バドミントンのラケット、ゴルフのクラブ、剣道の竹刀など、打撃用具を使用するスポーツの素振り練習器として利用可能である。また、運動不足を解消するためのトレーニング器具としても利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施形態を示す側面断面図
【図2】図1の素振り前(A)とインパクト時(B)の比較をした側面断面図
【図3】第1のストッパ9を設けた場合の側面断面図
【図4】第1のストッパ9を設けた場合の側面断面図
【図5】第2のストッパ11を設けた場合の側面断面図
【図6】第2のストッパ11を設けた場合の側面断面図
【図7】グリップエンド4の内部を部分的に拡大した部分断面図
【図8】本発明の素振り練習器の軌道と通常のバットの軌道を上面から見た説明図
【図9】本発明の素振り練習器のグリップ3の軌道と先端部材2の軌道を比較するため上面から見た説明図
【符号の説明】
【0045】
1 シャフト
2 先端部材
3 グリップ
4 グリップエンド
5 打撃部材
6 スプリング部材(弾性部材)
7 制動部
8 突縁部
8′ 栓体
9 第1のストッパ
10、10′ フォロースルー調整目盛り
11 第2のストッパ
a 素振り時の体の軸となる位置
b 素振りの始動地点
c インパクトに集中するための踏ん張り地点
d インパクト(打撃点)地点
d′ ィンパクトから前へ押し出し、軌道が伸びた地点
d″ さらに前へ軌道が伸びた地点
e 通常のバットの軌道
f 本発明の軌道
g 本発明の遊び空間を広げた場合の軌道
h 大きくなったフォロースルー
i グリップが移動しないと仮定した場合のグリップの軌道
j 本発明のグリップの軌道
k 本発明のグリップが体の軸側に移動する地点
k′ 本発明のグリップがさらに体の軸側に移動する地点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、前記シャフトの基端部側に設けられたグリップと、前記シャフトの先端部側に固着された先端部材と、前記シャフトに、その軸方向に移動可能に設けられた打撃部材とを有し、前記グリップを握った素振りによって、前記打撃部材が前記シャフトに沿って先端方向に移動して前記先端部材に衝突することで、実際にボールを打った時等の衝撃力、打撃音、感触、臨場感を体感できる素振り練習器において、
前記グリップを、前記シャフトの軸方向に移動可能に設け、更に、前記シャフトの、前記グリップと前記シャフトの基端部の間に弾性部材を配設させたことを特徴とする素振り練習器。
【請求項2】
前記弾性部材は、前記シャフトの外周に取り付けられたスプリング部材であることを特徴とする請求項1に記載の素振り練習器。
【請求項3】
前記グリップの移動範囲を規制調整するために、前記シャフトの外周に着脱可能に固定するストッパを設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の素振り練習器。
【請求項4】
前記グリップの下端側に中空間を設けると共に最下側を閉口したグリップエンドを設け、前記グリップエンドは、前記グリップに一体的に形成されると共に前記中空間内に前記弾性部材が位置することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の素振り練習器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−35998(P2010−35998A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−220469(P2008−220469)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【出願人】(399043417)有限会社内田販売システム (24)
【出願人】(592047663)
【出願人】(597030637)