説明

紫外線を吸収する層状複水酸化物

【課題】紫外線を吸収する層状複水酸化物を提供する。
【解決手段】紫外線を吸収する化合物および次式(I)で表される層状複水酸化物からなる組成物。
[Zn(1-x)Alx(OH)2]x+[(CO3)x・yH2O]x- (I)(式中、xは0.1≦x<0.4、yは0より大きい実数を表す)
または、紫外線を吸収する化合物を含有する水溶液に、式(I)で表される層状複水酸化物又は式(I)で表される層状複水酸化物を加熱処理したものを添加し、攪拌混合後、沈殿を分取乾燥することによる紫外線を吸収する化合物を取り込んだ層状複水酸化物の製造方法。さらに、紫外線を吸収する化合物を含有する水溶液に、Zn(NO3)2及びAl(NO3)3混合水溶液を滴下し、pHを5〜9に調整後、沈殿を分取乾燥することによる紫外線を吸収する化合物を取り込んだ層状複水酸化物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、紫外線を吸収する化合物を含有する層状複水酸化物複合体に関するものであり、更に該複合体を含有する外用剤である。
【0002】
【従来の技術】紫外線は太陽光線を構成する光線の一種で、可視光線よりも波長の短い目に見えない光線である。紫外線は人体に対して、皮膚ガンの増加、視覚障害の増加、免疫力の低下やシミ・ソバカス等の原因となるなどの悪影響を与えるため、その影響を回避するため、日焼け止めクリームなどが用いられている。日焼け止めクリームなどの化粧品には紫外線を遮蔽する無機物質や紫外線を吸収する有機化合物等が配合されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】日焼け止めクリームに配合される無機物質は、不透明であるため皮膚に塗布すると色が付着し外見が悪く、また紫外線を吸収する有機化合物は炎症を起こすなどの副作用があることが知られている。本発明者はこれら課題を解決するため鋭意検討した結果、以下に示す構成により、課題を解決できることを見い出し本発明を完成した。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、紫外線を吸収する化合物が、層状複水酸化物の層間に取り込まれた複合体であり、また、本発明は紫外線を吸収する化合物が、層状複水酸化物の層間に取り込まれた複合体を含有する外用剤である。更に本発明は、紫外線を吸収する化合物を含有する水溶液に、層状複水酸化物又は層状複水酸化物を加熱処理したものを添加し、攪拌混合後、沈殿を分取乾燥することによる紫外線を吸収する化合物を取り込んだ層状複水酸化物複合体の製造方法であり、また、紫外線を吸収する化合物を含有する水溶液に、Zn(NO3)2及びAl(NO3)3混合水溶液を滴下し、pHを5〜9に調整後、沈殿を分取乾燥することによる紫外線を吸収する化合物を取り込んだ層状複水酸化物複合体の製造方法である。
【0005】層状複水酸化物は、下記の一般式(I)を有し、市販されているものを使用することができ、また、新たに合成することもできる。
[M2+1-XM3+X(OH)2]X+[An-x/n・yH2O]X- (I)ここで、M2+は、Mg2+,Mn2+,Ni2+,Zn2+,Fe2+,Co2+,Cu2+等の2価金属イオンを意味し、M3+は、Al3+,Fe3+,Cr3+,Co3+等の3価金属イオンを意味し、An-は、OH-,F-,Cl-,NO3-,SO42-,CO32-,[Fe(CN)6]4-,CHCOO-,V10O286-,ドデシルSO42-等のn価のアニオンを意味する。Xは0.2≦X≦0.4である。(I)式において、[M2+1-XM3+X(OH)2]X+は、基本層であり、[An-x/n・yH2O]X-は中間層である。本発明においては中間層を、層間と称することがある。層状複水酸化物は、原子配列が二次元的な層状基本構造を持ち(これを基本層と称する)、層と層が比較的弱い力で結合していることから、その層間に種々の分子や陰イオンを挿入できる(この部分を中間層と称する)。基本層では、M2+をM3+が最大でおよそM2+:M3+=2:1のモル比まで置換し、その置換量に依存して正の電荷量が決まる。この正電荷を中間層の陰イオンが中和して、結晶全体としての電気的中性を保ち、中間層のアニオンが占めた残りのスペースは層間水で満たされている。市販されている層状複水酸化物としては例えば、「合成ヒドロタルサイト」(協和化学株式会社)を挙げることができる。「合成ヒドロタルサイト」には、比表面積等その性質に応じて種々のグレードがあるが、本発明ではいずれも用いることができる。また、新たに合成する場合、例えば次のようにして製造できる。
【0006】40℃に保った1MのNa2CO3水溶液に1MのZnCl2と1MのAlCl3の混合水溶液をかき混ぜながら滴下して加水分解を行い、次いで70℃に温度を上げ固体生成物を1時間熟成することにより製造する。この間、2MのNaOHを滴下することによりpHを8〜11に保持する。固体生成物は固液分離した後、さらに1MのNa2CO3水溶液に添加し、5時間加熱還流することにより再び熟成を行う。固体生成物は十分水洗いした後、アセトンとエーテルで洗浄を行い、60℃で24時間減圧乾燥する。本発明において熟成とは結晶を成長させることを意味し、熟成時間を変えることにより種々の大きさ、比表面積を有する結晶を得ることができる。また、通常、ZnとAlの比は、Zn:Al=4:1〜5:2であり、好ましくは4:1〜2:1である。
【0007】本発明において紫外線を吸収する化合物とは、特に限定されず、紫外線を吸収することにより日焼けを防止できる物質であればいずれも用いることができるが、例えば、パラアミノ安息香酸、サリチル酸エチレングリコール、オキシベンゾンスルホン酸、ウロカニン酸等を挙げることができる。本発明において、紫外線を吸収する化合物は、層状複水酸化物の層間に保持されている。即ち、層状複水酸化物の層間は一般には陰イオンが電気的に保持されているが、本発明においては層間に紫外線を吸収する化合物が保持されている。本発明にかかる紫外線を吸収する化合物を取り込んだ層状複水酸化物複合体を製造するには例えば次のような方法によることができる。紫外線吸収剤を25mmol/dm3の濃度の水溶液とし、その50mlに、層状複水酸化物0.2gを加え、窒素ガス下25℃24時間振盪し、固体生成物を分離し、60℃24時間減圧乾燥して紫外線を吸収する化合物を取り込んだ層状複水酸化物複合体を得ることができる(以下、吸着法と称する)。
【0008】また、紫外線吸収剤を25mmol/dm3の濃度の水溶液とし、その50mlに、あらかじめ500℃2時間加熱後冷却した層状複水酸化物0.2gを加え、窒素ガス下25℃24時間振盪し、固体生成物を分離し、60℃24時間減圧乾燥して紫外線を吸収する化合物を取り込んだ層状複水酸化物複合体を得ることができる(以下、再構築法と称する)。再構築法の場合、層状複水酸化物は、通常、400℃〜900℃で30分以上加熱すればよい。
【0009】更に、紫外線吸収剤を25mmol/dm3の濃度の水溶液とし、Zn(NO3)2及びAl(NO3)3混合水溶液を滴下し、NaOH水溶液によりpHを5〜9に調整して1時間攪拌、熟成後、固相を分離洗浄して紫外線を吸収する化合物を取り組んだ層状複水酸化物複合体を得ることができる(以下、共沈法と称する)。Zn(NO3)2又はAl(NO3)3水溶液の濃度は特に限定されないが、通常は500mMから1M程度である。本発明においては、吸着法、再構築法又は共沈法のいずれでも、紫外線を吸収する物質を取り込んだ層状複水酸化物を得ることができるが、当該物質を直接得ることができる点で共沈法が最も優れている。
【0010】本発明にかかる、紫外線を吸収する化合物を取り込んだ層状複水酸化物複合体は、軟膏剤、クリーム剤、乳剤等の外用剤とすることができる。外用剤を製造する方法は、特に限定されず、紫外線を吸収する化合物を取り込んだ層状複水酸化物複合体を油性基剤中に混合溶解する他は、一般に用いられる方法により製造することができる。
【0011】
【効果】本発明にかかる、紫外線を吸収する化合物を取り込んだ層状複水酸化物複合体は、化合物が紫外線を吸収することにより日焼け等の皮膚への影響を防ぐ他に、層状複水酸化物が紫外線を反射散乱するため、紫外線の皮膚への悪影響を効果的に軽減することができる。また、化合物は層状複水酸化物の層間に保持されているため、化合物の皮膚に対する刺激も軽減できる。以下に、実施例1、2、3及び4で得た、紫外線を吸収する化合物を取り込んだ層状複水酸化物の試験例を示すが本発明がこれらに限定されるわけではない。
【0012】なお、以下の説明においてLDHとは層状複水酸化物(Layered Double Hydroxide)の略である。また、炭酸型LDHとは、層状複水酸化物の層間にCO32-が取り込まれたものであり以下のようにして製造した。40℃に保った1MのNa2CO3水溶液に1MのZnCl2と1MのAlCl3の混合水溶液をかき混ぜながら滴下して加水分解を行い、次いで70℃に温度を上げ固体生成物を1時間熟成することにより製造した。この間、2MのNaOHを滴下することによりpHを8〜11に保持した。固体生成物は固液分離した後、さらに1MのNa2CO3水溶液に添加し、5時間加熱還流することにより再び熟成を行った。固体生成物は十分水洗いした後、アセトンとエーテルで洗浄を行い、60℃で24時間減圧乾燥した。
【0013】図1は、パラアミノ安息香酸を取り込んだ層状複水酸化物複合体の試験例であり、図1Aは、粉末X線回折図、図1Bは炭酸型LDHの粉末X線回折図である。図1A及びBから明らかなように、本発明にかかる層状複水酸化物複合体は、低角度側に新たなピークがみられた。パラアミノ安息香酸亜鉛などの粉末X線回折図と比較検討したところ該当するピークはなかったため、これは層間にパラアミノ安息香酸が取り込まれ、層間距離が広がったものと考えられる。
【0014】図1Cは、本発明にかかる層状複水酸化物複合体のFT-IRスペクトルであり、図1Dは炭酸型LDHのFT-IRスペクトルである。本発明にかかる層状複水酸化物複合体のスペクトルでは、新たに、1550〜1640cm-1付近にベンゼン環の吸収、1160〜1280cm-1付近にカルボン酸の吸収がみられたことから、パラアミノ安息香酸が層間に固定化されていることが確認できた。
【0015】図1Eは本発明にかかる層状複水酸化物複合体の紫外線吸収スペクトルである。図1Eから明らかなように、本発明にかかる化合物は炭酸型LDHにはない吸収がみられ、層間にパラアミノ安息香酸が固定化されていることが分かる。なお、図1E中のPABAとはパラアミノ安息香酸の略である。また、図面において、Zn/Al=3とは、以下に示す実施例における「原料の合成」により得られた化合物のうちZn2+/Al3+の比が3の化合物であり、Zn/Al=2とはその比が2の化合物である。また、図中の曲線は、図の左上に示す説明文の順と一致する。
【0016】図2は、サリチル酸エチレングリコールを取り込んだ層状複水酸化物複合体の試験例であり、図2Aは、粉末X線回折図であり、図2Bは炭酸型LDHの粉末X線回折図である。図2A及びBから明らかなように、本発明にかかる層状複水酸化物複合体は、強度が大幅に減少しブロードになった。これは、結晶性が大きく低下したことを示し、サリチル酸エチレングリコールの層間への取り込みにより、層間距離が不均一になったものと考えられる。
【0017】図2Cは、本発明にかかる層状複水酸化物複合体のFT-IRスペクトルであり、図2Dは炭酸型LDHのFT-IRスペクトルである。本発明にかかる層状複水酸化物複合体のスペクトルでは、新たに、1550〜1640cm-1付近にベンゼン環の吸収、1160〜1280cm-1付近にカルボン酸の吸収がみられたことから、サリチル酸エチレングリコールが層間に固定化されていることが確認できた。
【0018】図2Eは本発明にかかる層状複水酸化物複合体の紫外線吸収スペクトルである。図2Eから明らかなように、本発明にかかる化合物は炭酸型LDHにはない吸収がみられ、層間にサリチル酸エチレングリコールが固定化されていることが分かる。図2E中、EGSとはサリチル酸エチレングリコールの略である。
【0019】図3は、オキシベンゼンスルホン酸を取り込んだ層状複水酸化物複合体の試験例であり、図3Aは、粉末X線回折図、図3Bは炭酸型LDHの粉末X線回折図である。図3A及びBから明らかなように、本発明にかかる層状複水酸化物複合体は、低角度側に新たなピークがみられた。オキシベンゼンスルホン酸亜鉛などの粉末X線回折図と比較検討したところ該当するピークはなかったため、これは層間にオキシベンゼンスルホン酸が取り込まれ、層間距離が広がったものと考えられる。
【0020】図3Cは、本発明にかかる層状複水酸化物複合体のFT-IRスペクトルであり、図3Dは炭酸型LDHのFT-IRスペクトルである。本発明にかかる層状複水酸化物複合体のスペクトルでは、新たに、1550〜1640cm-1付近にベンゼン環の吸収、500〜1400cm-1付近にS=O又はSOC結合の吸収がみられたことから、オキシベンゼンスルホン酸が層間に固定化されていることが確認できた。
【0021】図3Eは本発明にかかる層状複水酸化物複合体の紫外線吸収スペクトルである。図3Eから明らかなように、本発明にかかる化合物は炭酸型LDHにはない吸収がみられ、層間にオキシベンゼンスルホン酸が固定化されていることが分かる。図3E中、OBSAはオキシベンゼンスルホン酸の略である。
【0022】図4は、ウロカニン酸を取り込んだ層状複水酸化物複合体の試験例であり、図4Aは、粉末X線回折図、図4Bは炭酸型LDHの粉末X線回折図である。図4A及びBから明らかなように、本発明にかかる層状複水酸化物複合体は、低角度側に新たなピークがみられた。ウロカニン酸亜鉛などの粉末X線回折図と比較検討したところ低角度側のピークは、層間にウロカニン酸が取り込まれ、層間距離が広がったものと考えられる。
【0023】図4Cは、本発明にかかる層状複水酸化物複合体のFT-IRスペクトルであり、図4Dは炭酸型LDHのFT-IRスペクトルである。本発明にかかる層状複水酸化物複合体のスペクトルでは、新たに、1640〜1700cm-1付近と960〜1240cm-1付近に5員環のC=N結合の吸収、550〜930cm-1付近に環隣接H結合の吸収がみられたことから、ウロカニン酸が層間に固定化されていることが確認できた。
【0024】図4Eは本発明にかかる層状複水酸化物複合体の紫外線吸収スペクトルである。図4Eから明らかなように、本発明にかかる化合物は炭酸型LDHにはない吸収がみられ、層間にウロカニン酸が固定化されていることが分かる。図4E中、UAはウロカニン酸の略である。
【0025】図5は、共沈法によりパラアミノ安息香酸を取り込んだ層状複水酸化物複合体の粉末X線回折図である。図5から明らかなように、本発明にかかる層状複水酸化物複合体は、硝酸型LDHとは明らかに異なる回折ピークを示したことから、パラアミノ安息香酸が層間に取り込まれ層間距離が広がったものと考えられる。なお、硝酸型LDHとは、層状複水酸化物の層間にNO32-が取り込まれたものであり以下のようにして製造した。40℃に保った500mMのNaNO3水溶液に500mMのZn(NO32と500mMのAl(NO33の混合水溶液をかき混ぜながら滴下して加水分解を行い、次いで70℃に温度を上げ固体生成物を1時間熟成することにより製造した。この間、1MのNaOHを滴下することによりpHを8〜11に保持した。固体生成物は固液分離した後、さらに500mMのNaNO3水溶液に添加し、5時間加熱還流することにより再び熟成を行った。固体生成物は十分水洗いした後、アセトンとエーテルで洗浄を行い、60℃で24時間減圧乾燥した。
【0026】図6は、本発明にかかる層状複水酸化物複合体のFT-IRスペクトルである。図より本発明にかかる層状複水酸化物複合体(図中pH7と表示)は、新たに、1550〜1640cm-1付近にベンゼン環の吸収、1160〜1280cm-1付近にカルボン酸の吸収がみられたことから、パラアミノ安息香酸が層間に固定化されていることが確認できた。
【0027】
【実施例】原料の合成1MZnCl2・AlCl3混合溶液(混合モル比は、Zn2+/Al3+=3又は2とした)を2MNaOHで所定のpHを保ちながら1MNa2CO3溶液に滴下した。反応温度は40℃とし、滴下後もそのままの状態で1時間熟成させ、Cl-がなくなるまでデカンテーションを繰り返した。得られた固体生成物を吸引ろ過し、60℃で24時間減圧乾燥した。得られた生成物は、以下の示性式を示す物質であった。
[Zn0.74Al0.26(OH)2](CO3)0.16・0.80H2O又は[Zn0.68Al0.32(OH)2](CO3)0.16・0.66H2O
【0028】なお、ZnとAlの組成比は、得られた固体生成物を塩酸によって融解し、希釈した水溶液の濃度を原子吸光光度計によって測定し、濃度比より計算した。CO2は炭酸ガス法により測定を行い計算した。水分量は、示差熱重量同時測定装置によって得られたTG−DTA曲線から計算した。
【0029】実施例1パラアミノ安息香酸を水に溶解し25mmol/dm3の濃度とした。その50mlに、上記合成例で得たLDH(Zn/Al=3)をあらかじめ500℃2時間加熱後冷却し、その0.2gを加え、窒素ガス下25℃24時間振盪した。固体生成物を分離し、60℃24時間減圧乾燥してパラアミノ安息香酸を取り込んだ層状複水酸化物複合体を得ることができた。層状複水酸化物中複合体に含有された各紫外線吸収物質の全化合物中における割合(以下、固定化率と称する)を、全有機炭素計により、初濃度とろ液中の紫外線吸収物質濃度を測定し、両者の濃度差から計算した。その結果、固定化率は44.9%であった。
【0030】実施例2サリチル酸エチレングリコールを水に溶解し25mmol/dm3の濃度とした。その50mlに、上記合成例で得たLDH(Zn/Al=3)をあらかじめ500℃2時間加熱後冷却し、その0.2gを加え、窒素ガス下25℃24時間振盪した。固体生成物を分離し、60℃24時間減圧乾燥してサリチル酸エチレングリコールを取り込んだ層状複水酸化物複合体を得ることができた。実施例1と同様に測定した固定化率は、12.6%であった。
【0031】実施例3オキシベンゾンスルホン酸を水に溶解し25mmol/dm3の濃度とした。その50mlに、上記合成例で得たLDH(Zn/Al=3)をあらかじめ500℃2時間加熱後冷却し、その0.2gを加え、窒素ガス下25℃24時間振盪した。固体生成物を分離し、60℃24時間減圧乾燥してオキシベンゾンスルホン酸を取り込んだ層状複水酸化物複合体を得ることができた。実施例1と同様に測定した固定化率は、21.3%であった。
【0032】実施例4ウロカニン酸を水に溶解し25mmol/dm3の濃度とした。その50mlに、上記合成例で得たLDH(Zn/Al=3)をあらかじめ500℃2時間加熱後冷却し、その0.2gを加え、窒素ガス下25℃24時間振盪した。固体生成物を分離し、60℃24時間減圧乾燥してウロカニン酸を取り込んだ層状複水酸化物複合体を得ることができた。実施例1と同様に測定した固定化率は、97.5%であった。
【0033】実施例5サリチル酸エチレングリコールを水に溶解し25mmol/dm3の濃度とした。その50mlに、上記合成例で得たLDH(Zn/Al=2)をあらかじめ500℃2時間加熱後冷却し、その0.2gを加え、窒素ガス下25℃24時間振盪した。固体生成物を分離し、60℃24時間減圧乾燥してサリチル酸エチレングリコールを取り込んだ層状複水酸化物複合体を得ることができた。実施例1と同様に測定した固定化率は、11.9%であった。
【0034】実施例6ウロカニン酸を水に溶解し25mmol/dm3の濃度とした。その50mlに、上記合成例で得たLDH(Zn/Al=3)0.2gを加え、窒素ガス下25℃24時間振盪した。固体生成物を分離し、60℃24時間減圧乾燥してウロカニン酸を取り込んだ層状複水酸化物複合体を得ることができた。実施例1と同様に測定した固定化率は、46.0%であった。
実施例725mMのパラアミノ安息香酸(以下PABA)水溶液100mlに、Zn(NO3)2及びAl(NO3)3混合水溶液15mlを、40℃窒素雰囲気下で滴下し(PABA:Zn:Al=1:2:1(モル比))、NaOHによりpHを約7に調製した。滴下後、1時間攪拌し熟成を行い、固液を分離した。固相を洗浄後、60℃で減圧乾燥してPABAを取り込んだ層状複水酸化物複合体を得た。実施例と同様に測定した固定化率は、63.3%であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、再構築法によりパラアミノ安息香酸が層状複水酸化物に取り込れていることを示す図である。
【図2】図2は、再構築法によりサリチル酸エチレングリコールが層状複水酸化物に取り込れていることを示す図である。
【図3】図3は、再構築法によりオキシベンゾンスルホン酸が層状複水酸化物に取り込れていることを示す図である。
【図4】図4は、再構築法によりウロカニン酸が層状複水酸化物に取り込れていることを示す図である。
【図5】図5は、共沈法によりパラアミノ安息香酸が層状複水酸化物に取り込れていることを示す粉末X線回折図である。
【図6】図6は、共沈法によりパラアミノ安息香酸が層状複水酸化物に取り込れていることを示すFT-IRスペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】紫外線を吸収する化合物が、層状複水酸化物の層間に取り込まれた複合体。
【請求項2】紫外線を吸収する化合物が、層状複水酸化物の層間に取り込まれた複合体を含有する外用剤。
【請求項3】紫外線を吸収する化合物を含有する水溶液に、層状複水酸化物又は層状複水酸化物を加熱処理したものを添加し、攪拌混合後、沈殿を分取乾燥することによる紫外線を吸収する化合物を取り込んだ層状複水酸化物複合体の製造方法。
【請求項4】紫外線を吸収する化合物を含有する水溶液に、Zn(NO3)2及びAl(NO3)3混合水溶液を滴下し、pHを5〜9に調整後、沈殿を分取乾燥することによる紫外線を吸収する化合物を取り込んだ層状複水酸化物複合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2002−167570(P2002−167570A)
【公開日】平成14年6月11日(2002.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−364128(P2000−364128)
【出願日】平成12年11月30日(2000.11.30)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成12年9月18日 第44回粘土科学討論会実行委員会発行の「第44回粘土科学討論会 講演要旨集」に発表
【出願人】(000000217)エーザイ株式会社 (102)
【Fターム(参考)】