説明

紫外線照射装置

【課題】被照射物が受ける紫外線の照度を、低コストで効果的に向上することが可能な紫外線照射装置を提供する。
【解決手段】被照射物の搬送方向と直交する照射物幅方向に沿って並ぶ複数の紫外線光源32を有する少なくとも1つの光源ユニットと、光源ユニットと被照射物との間に配置され、前記各光源ユニットを搬送方向の上流側及び下流側から挟むように配置された一対の反射部材61及び62と、を備え、各反射部材は、被照射物と対向する第1反射部611及び621を有する紫外線照射装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被照射物に、紫外線を照射する紫外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線は、インキの硬化、半導体の接着、配向膜の形成など、製造工程において広く用いられている。このような紫外線は、対象物に対して効率よく照射する必要があり、例えば、特許文献1には、次のような紫外線照射装置が開示されている。この紫外線照射装置では、紫外線放電ランプを囲むように円弧状の反射板を配置し、ランプから発せられた紫外線を対象物に向けて照射されるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−86890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した工程を効果的に経るためには、対象物が受ける紫外線の照度をできるだけ高くなるようにする必要がある。照度を高くするには、ランプの出力を上げるほか、上記のように、ランプの周囲を囲む反射板を用いることで、紫外線に指向性を持たせる方法がある。しかしながら、紫外線照射の需要が高まる中、できるだけ低コストで照度を高くする方法が要望されていた。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、被照射物が受ける紫外線の照度を、低コストで効果的に向上することが可能な紫外線照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、被照射物に紫外線を照射する紫外線照射装置であって、前記被照射物の搬送方向と直交する照射物幅方向に沿って並ぶ複数の紫外線光源を有する少なくとも1つの光源ユニットと、前記光源ユニットと前記被照射物との間に配置され、前記各光源ユニットを、前記搬送方向の上流側及び下流側から挟むように配置された一対の反射部材と、を備え、前記各反射部材は、前記被照射物と対向する第1反射部を有している。
【0007】
この構成によれば、光源ユニットを挟む反射部材に、被照射物と対向する第1反射部を設けているため、被照射物へ照射された紫外線のうち、被照射物の表面で反射した紫外線を、第1反射部によって反射し、再度被照射物へ照射することができる。このため、光源ユニットから発せられた紫外線を効率よく被照射物に照射することができる。すなわち、紫外線光源の出力を上げることなく、低コストで、被照射物が受ける紫外線の照度を向上することができる。例えば、被印刷物上のインキを硬化するために紫外線を照射する場合、インキを硬化させるには、所定以上のピーク照度のほか、所定以上の照度の紫外線を所定時間以上照射する積算量が必要になる。特に、ラジカル重合型の紫外線硬化性インキにおいては、乾燥に必要な所定の最小照度以上で紫外線を照射しなければならないが、これに加えて、最小照度を所定時間以上照射することにより得られる必要積算照度が達成されなければならない。本発明では、上記のように被照射物から反射する紫外線も利用できるため、全体的に照度を増大させることができ、ピーク照度のほか、積算量も増大することができる。
【0008】
上記紫外線照射装置においては、複数の光源ユニットを、所定間隔をおいて搬送方向に沿って配置することができる。そして、隣接する光源ユニット間に配置される各反射部材の第1反射部により、搬送方向に沿って連続する反射面を形成することができる。複数の光源ユニットを配置すると、両者の間では、各光源ユニットから照射される紫外線が重ね合わされて照度が大きくなる。これにより、この箇所においては被照射物からの反射量も大きくなると考えられる。そこで、隣接する各光源ユニットの反射部材の第1反射部を連続するように配置することで、被照射物から反射する紫外線を無駄なく反射することでき、被照射物の照度をさらに向上することができる。
【0009】
各反射部材においては、第1反射部を、照射物幅方向に沿って所定間隔をおいて複数設けることができる。そして、各光源ユニット間の隣接する2つの反射部材を、第1反射部が互いに噛み合うように配置すれば、搬送方向に沿って連続する反射面を形成することができる。このようにすると、隣接する光源ユニットの間隔が狭い場合であっても、2つの反射部材を組み合わせて幅の狭い連続した反射面を形成することができる。
【0010】
各反射部材には、紫外線光源から被印刷物に向かって延びる第2反射部を設けることができる。そして、第2反射部の全部または少なくとも一部が、紫外線光源から前記被印刷物への入射角が所定の基準角以上であって、インキ内部の硬化に寄与し難い微弱な紫外線を、入射角が前記基準角より小さくなるように反射するように構成することが望ましい。
【0011】
この構成によれば、次の効果を奏する。照射される紫外線が、光源から離れるほど、被印刷物への入射角が大きくなり、所定の基準角を越えると、反射量が増加する。これに対して、本発明においては、紫外線光源から被印刷物に向かって延びる第1反射部を有する反射部材を設けている。そして、この第1反射部は、紫外線光源から被印刷物への入射角が基準角以上となって、インキ内部の硬化に影響を与える光量が微弱となる紫外線を、入射角が基準角より小さくなるように反射するように構成されている。これにより、インキの硬化に寄与し難い微弱な紫外線が、被印刷物に照射されるのを防止することができ、被印刷物上の紫外線の照度を向上することができる。これにより、インキを効果的に硬化させることができる。なお、ここでいう「基準角」とは、インキの種類などに起因する値であるが、発明者の検討の結果、空気からインキに入射する場合には、30〜60度の範囲にあり、一般的なインキの場合、40〜50度の範囲にあることが多い。
【0012】
第2反射部は、種々の態様にすることができる。例えば、各反射部材を板材により形成し、第2反射部を、照射物幅方向に延びる少なくとも一つの折り目によって、対向する反射部材側に凹となるように折り曲げることで形成することができる。
【0013】
また、光源ユニットを挟んで対向する少なくとも一方の第2反射部を、断面において近似的に楕円の一部を構成するようにし、光源ユニットを、断面において、楕円における一方の焦点近傍に配置することができる。
【0014】
これにより、次の効果を得ることができる。一般的に、反射板を楕円状に形成し、楕円の長軸の一端部側の焦点近傍に光源を配置すると、長軸の他端部側の焦点に集光することが知られている。但し、本発明のように、光源が点光源ではなくある程度の大きさを有している紫外線光源の場合には、焦点の一点に集光するのではなく、焦点の近傍にある程度の幅をもった平行光に近似する紫外線が照射される。これに対して、板材を折り曲げて第2反射部により近似的な楕円を形成すると、反射された紫外線は、上述したような挙動を示さず、紫外線を搬送方向に、入射角を保ったまま、分散させることができる。すなわち、被印刷物に照射される紫外線は、平行光よりも概ね分散するため、被印刷物が受ける紫外線の照射幅を増大させることができる。また、板材を折り曲げることで反射部材を形成できるため、製造が容易になる。なお、上述した「焦点近傍」とは、焦点もしくはその付近を意味する。そして、「付近」の範囲は、以下の通りである。まず、光源ユニットが焦点にあれば他の焦点に集光し、光源ユニットが焦点から離れるほど照射範囲が大きくなることが知られている。したがって、「付近」とは、必要とされる被印刷物への照射範囲を越えて、集光範囲が大きくなる位置までの範囲を意味する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る紫外線照射装置によれば、被照射物が受ける紫外線の照度を、低コストで効果的に向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る紫外線照射装置が装着される印刷機の一実施形態を示す概略側面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】本発明に係る紫外線照射装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図4】図3の底面図である。
【図5】図3の平面図である。
【図6】図3の一部を透過した斜視図である。
【図7】図5のA−A線断面図である。
【図8】紫外線照射部の概略構造を示す斜視図である。
【図9】紫外線照射部の概略構造を示す拡大断面図である。
【図10】第2反射部材の組立を示す斜視図である。
【図11】図7のB−B線断面図である。
【図12】紫外線照射部における紫外線の照射の例を示す拡大断面図である。
【図13】紫外線照射部における紫外線の照射の例を示す拡大断面図である。
【図14】被印刷物が受ける紫外線の照度の例を示す図である。
【図15】紫外線照射部における紫外線の照射の例を示す拡大断面図である。
【図16】実施例及び比較例に用いる反射部材等の形状を示す図である。
【図17】比較例の態様及び照度の評価を示す図である。
【図18】本発明の実施例の態様及び照度の評価を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る紫外線照射装置を印刷機に適用した場合の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、この紫外線照射装置が装着される印刷機の概略側面図、図2は図1の平面図である。
【0018】
まず、本実施形態の紫外線照射装置が装着される印刷機について説明する。この印刷機は、枚葉の被印刷物Pに対して、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、及び仕上げ用透明インキ(OP)をこの順で塗布することでフルカラーの画像を形成するものである。ここで用いられるインキは、紫外線硬化性を有し、ラジカル重合型またはカオチン重合型の紫外線硬化樹脂を含有している。図1及び図2に示すように、この印刷機には、同図の右側から左側に向かって、上述した5つのインキを塗布する印刷ユニット1K,1C,1M,1Y,1Pがそれぞれ配置されている。各印刷ユニット1は、インキを供給するインキ供給装置11を備えており、各インキ供給装置11の下方には、インキが転写される版胴12、ゴム胴13、及び圧胴14が下方に向かってこの順で配置されている。さらに、各圧胴14においてゴム胴13と接触している位置から周方向の下流側には、被印刷物Pに紫外線を照射する紫外線照射装置2が配置されている。
【0019】
各印刷ユニット1間には、被印刷物Pを受け渡しするための渡し胴15が配置されている。より詳細には、各印刷ユニット1の最下部にある圧胴14の間に渡し胴15がそれぞれ配置されており、各ゴム胴13と圧胴14との間でインキが塗布された被印刷物Pは、渡し胴15により下流側の印刷ユニットの圧胴14に搬送される。なお、インキを配置する順序は、上述したもの以外でも可能である。
【0020】
次に、紫外線照射装置について、図3〜図5を参照しつつ説明する。図3はこの紫外線照射装置の斜視図、図4は図3の底面図、図5は図3の平面図である。
【0021】
図3及び図4に示すように、この紫外線照射装置2は、長尺状に延びる箱形の筐体21を有しており、この筐体21の底面から紫外線が照射される。以下では、筐体21の延びる方向を長手方向、それと直交する方向を幅方向、長手方向における図3の右側を第1端部、左側を第2端部と称することとする。但し、被印刷物Pとの関係で説明をする場合には、上記幅方向を「搬送方向」、長手方向を「印刷幅方向(照射物幅方向)」と称する場合がある。筐体21の内部には、紫外線を照射する複数の紫外線発光ダイオード(紫外線LED)、及びこの紫外線LEDの駆動を制御する制御基板などが配置されている。筐体21の長手方向の長さは、被印刷物Pの幅に対応しており、被印刷物Pの印刷幅全体に渡って紫外線を照射できるようになっている。この筐体21は、上側に頂部を有する断面五角形状に形成されており、図5に示すように、上部の一方の面(図5の上側)の両端には、この筐体21を持ち運びするためのハンドル22が取り付けられている。
【0022】
図5に示すように、筐体21の第1端部には、後述する水冷用の水の供給孔23及び排出孔24が設けられており、図示しないDCインバータチラーに接続されている。また、供給孔23及び排出孔24に近接して電源端子25、及び印刷機から制御信号を受送信する信号端子26が設けられている。また、ハンドル22が設けられている筐体21の上面において第1端部側には、長手方向に平行に延びる複数のスリットが形成されており、これらスリットが空気の吸気口27を構成している。一方、第2端部の端面には、図3に示すように、筐体21内の空気を排出する排気口28が形成されている。
【0023】
次に、筐体の内部構造について、図6及び図7も参照して説明する。図6は図3の一部透過斜視図、図7は図5のA−A線断面図である。
【0024】
図7に示すように、筐体21の内部は、下方から上方に向かって概ね3つの領域に分かれており、各領域には、下から紫外線照射部3、冷却部4、及び制御部5が配置されている。
【0025】
まず、紫外線照射部3から説明する。この紫外線照射部3は、後述する冷却部4の冷却ブロック41の下面413に当接する支持基板31を有し、この支持基板31の下面に複数の紫外線LED(例えば、波長:385nmの近紫外線光源)32が実装されている。複数の紫外線LED32は、長手方向に延びる4列に分けて配置されるとともに、2列を一組とした2つのLEDユニット33で構成されている。両LEDユニット33は幅方向に所定間隔をおいて配置されており、両ユニット33の間には、下方に延びるスペーサ34が配置されている。また、紫外線照射部3の幅方向の端部には、支持ブロック35がそれぞれ配置されており、これら支持ブロック35、及びスペーサ34が所定間隔をおいて配置されることにより、各LEDユニット33の下方に照射空間Sがそれぞれ形成されている。すなわち、スペーサ34の両側には、各LEDユニット33から照射される紫外線が通過する照射空間Sが形成される。なお、各支持ブロック35は、上方に延びる連結部35aによって冷却ブロック41の側面に固定されている。
【0026】
そして、各LEDユニット33の下方の照射空間Sには、照射された紫外線が下方に向かうように反射するリフレクタが配置されている。本実施形態のリフレクタは、紫外線LED32から拡散する紫外線を下方に向くように反射するものであり、4つの部品から形成されている。すなわち、各支持ブロック35に固定される一対の第1反射部材61と、スペーサ34に固定される一対の第2反射部材62とで構成されている。そして、LEDユニット33から照射される紫外線を幅方向に挟むように各第1及び第2反射部材61,62を配置することで、紫外線が下方に向くように反射される。各反射部材は、例えば、アルミニウムなどの板材の表面に、反射剤をコーティングすることで形成することができる。そのような反射板として、例えば、alanod社のMIRO(商標)を用いることができるが、特には限定されない。
【0027】
ここで、図8〜図10も参照して、各反射部材61,62をさらに詳細に説明する。図8は紫外線照射部の概略構造を下側から見た斜視図であり、図9は紫外線照射部の拡大断面図であり、図10は第2反射部材の組立を示す斜視図である。なお、図8では便宜上、スペーサ34と支持ブロック35を省略している。図7〜図10に示すように、各第1反射部材61は、断面略L字型の板材で形成されており、支持ブロック35の下面に沿って延びる第1反射部611と、第1反射部611の端部から支持ブロック35に沿って照射空間Sを上方に延びる第2反射部612とで構成されている。一方、各第2反射部材62も断面略L字型の板材で形成されており、スペーサ34の下面に沿って延びる第1反射部621と、この第1反射部621の端部から支持ブロック35に沿って照射空間Sを上方に延びる第2反射部622とで構成されている。
【0028】
上述したように、各照射空間Sでは、照射された紫外線を挟むように、第1反射部材61と第2反射部材62が配置されているが、各反射部材61,62の第2反射部612,622は、搬送方向に延びる2つの折り目Hによって、照射空間Sを囲むような円弧状に折り曲げられている。これにより、対向する各反射部材61,62の第2反射部612,622は、図9に示すように、近似的に楕円Eの一部を構成している。したがって、完全な楕円を形成することなく、簡易な加工で紫外線を下方に向けて反射することができる。また、各第2反射部材62には、長手方向の全長に渡って第2反射部622が設けられているのではなく、図10に示すように、所定間隔をおいて設けられている。したがって、対向する2つの第2反射部材62は、第1反射部621が互い違いに噛み合うように配置され、これにより、スペーサ34の下面に沿って、第1反射部621が連続して延びるようになる。ところで、このような形状を形成する場合、2つの第2反射部材62を一枚の板材で形成することも考えられる。すなわち、板材を少なくとも2箇所で折り曲げれば、LEDユニット33の間に第1反射部を形成することができる。しかしながら、LEDユニット33間の間隔が狭く、第1反射部の幅を小さくしなければならない場合には、2箇所での折り曲げが難しい場合がある。このような場合には、図10に示すように、第2反射部材62を形成すれば、1箇所の折り曲げで第1反射部621を形成できるため、有効である。また、一体にする場合に比べ、損傷したときに一部だけの交換ができるため、保守コストも低減することができる。
【0029】
また、各反射部材61,62の第2反射部612,622は、次のように形成されている。図9に示すように、各第2反射部612,622は、搬送方向Gに延びる2つの折り目Hを有することで、近似的な楕円Eの一部を構成している。特に、2列の紫外線LED32からなるLEDユニット33のうち、近接する紫外線LED32を楕円Eの焦点近傍に配置している。そして、この楕円Eの下側の焦点N付近を被印刷物Pが通過するように、紫外線照射装置2と被印刷物Pとの距離が決められている。
【0030】
続いて、汚れ防止板37について説明する。図7に示すように、紫外線照射部3の最下部、つまり筐体21の底面には、両照射空間Sを覆う汚れ防止板37が設けられている。この汚れ防止板37は、紫外線が透過可能な透明な材料であり、石英ガラス等で形成される。
【0031】
次に、冷却部4について図11も参照しつつ説明する。図11は、図7のB−B線断面図である。図7に示すように、冷却部4は、アルミニウムなどの熱伝導性の高い材料で形成された扁平状の冷却ブロック41を有している。上述したように、冷却ブロック41の下面には、紫外線LED32の支持基板31が取り付けられているが、熱伝導性を高めるため、冷却ブロック41の下面と支持基板31との間には公知の放熱グリスが塗布されている。これにより、冷却ブロック41及び支持基板31の接触部分の凹凸を埋めることができ、熱伝導効果を向上させている。一方、冷却ブロック41の上面411には、水冷用の水が供給されるU字型の溝412が形成されている。より詳細に説明すると、図7及び図11に示すように、この溝412は、筐体21の長手方向に延びる第1通路412a及び第2通路412bが連結された平面視U字型に形成されており、上述した供給孔23から供給された水は、このU字型の溝412を通過して冷却ブロック41を往復し、排出孔24から排出されるようになっている。すなわち、図7の右側に配置された第1通路412aを通過する水は、供給孔23から筐体21の第2端部に向かって(紙面の奥から手前に向かって)流れ、左側の第2通路412bを通過する水は筐体21の排出孔に向かって(紙面の手前から奥に向かって)流れる。各通路412a,bは、断面矩形状に形成されており、各LEDユニット33の上方にそれぞれ配置されている。
【0032】
また、冷却ブロック41の上面411には、溝412を覆うように矩形状の蓋部材42が配置されており、冷却ブロック41と蓋部材42との接触部分にシート状の断熱材43が配置されている。蓋部材42は、アルミニウム、SUS等の熱伝導性の高い材料で形成され、U字型の溝412全体を覆うように、筐体21の長手方向に延びている。また、断熱材43は、冷却ブロック41の上面において溝412が形成されている以外の部分に配置されており、冷却ブロック41の熱が蓋部材42に伝導するのを防止している。また、断熱材43は、溝412を流れる水が蓋部材42によって密閉されるようにガスケットの役割も果たしている。このような断熱材43としては、例えば、耐熱性・断熱性の高い樹脂4弗化エチレン樹脂で形成された断熱シート材や、シリコンゴムで形成された断熱シート材を用いることができる。なお、ガスケットとしての役割のみを果たすシート材を用いることもでき、その場合には、断熱効果は小さくなるものの冷却ブロック41の上面全体を覆ってもよい。
【0033】
続いて、制御部5について、図6及び図7を参照しつつ説明する。図7に示すように、制御部5は、蓋部材42から上方に延びる一対の第1熱伝導部材51を有しており、この第1熱伝導部材51に、紫外線LED32の駆動を制御する制御基板52が支持されている。制御基板52は、FET、コイル、ダイオード等の部品から構成される。また、定電流回路が配置されており、電源端子25から供給される電力を設定された電流値で各紫外線LED32に供給する。その他、CPU,印刷機本体のコントロール基板との通信回路、冷却ファンの制御回路、紫外線LED32の照射時間等の記録を行う回路などが配置されており、信号端子26を介して印刷機から送信される信号に基づいて紫外線LED32の駆動を制御するようになっている。なお、一対の第1熱伝導部材51は、必ずしも同一形状でなくてもよく、図7に示すように、異なる形状であってもよい。
【0034】
制御基板52を支持する各第1熱伝導部材51は、アルミニウム、銅などの熱伝導性の高い板材で形成され、蓋部材42上に配置される底部511と、この底部511の一端から上方に延びる延在部512とからなる断面L字型に形成されている。そして、両第1熱伝導部材51の延在部512同士が対向するように合わさることで、逆T字型をなしている。すなわち、合わさった延在部512が、冷却ブロック41の第1及び第2通路412a,bの間に配置されて上方に延びるとともに、各底部511が各通路412a,bをそれぞれ覆うように配置されている。各延在部512には、熱伝導性を有する絶縁材53を介して制御基板52が取り付けられており、各制御基板52が筐体21の両側を向くように配置されている。このような構造により、筐体21の両側の内壁面と、制御基板52との間には、空冷用の空気が流れる空冷空間Fが形成されるようになっている。
【0035】
また、各第1熱伝導部材51の底部511上には、制御基板52に接触する第2熱伝導部材54がそれぞれ取り付けられている。各第2熱伝導部材54は、第1熱伝導部材51と接触する底部541、制御基板52との間に空間を形成するL字型の段部542、及び制御基板52の下部と接触する接触部543が連結されることで形成されている。したがって、第2伝導部材54も制御基板52の熱を第1伝導部材51を介して蓋部材42に伝導できるようになっている。なお、図示を省略するが、第2熱伝導部材54の接触部543と制御基板52との間にも、上述した絶縁材54と同様のシート材が設けられている。このようなシート材としては、例えば、公知の放熱シリコンシートを使用することができる。
【0036】
上述したように、制御部5には、空冷空間Fが形成されているが、図6に示すように、筐体21の第2端部には、空冷空間Fに空気を流すための冷却ファン55が取り付けられている。このような冷却ファン55としては、公知の軸流ファンを用いることができ、この冷却ファン55を駆動すると、空冷空間Fの空気が冷却ファン55を介して第2端部の排気口28から排出されるようになっている。
【0037】
次に、上記のように構成された紫外線照射装置の動作について説明する。まず、印刷機において被印刷物Pが搬送されると、各印刷ユニット1K,1C,1M,1Y,1Pにより被印刷物Pにインキが塗布される。具体的には、図1に示すように、各インキ供給装置11から版胴12に供給されたインキが、ゴム胴13に転写された後、ゴム胴13と圧胴14との間を通過する被印刷物Pに塗布される。その直後、紫外線照射装置2から照射される紫外線により、被印刷物P上のインキは硬化され、渡し胴15によって次の印刷ユニット1に送られる。各印刷ユニット1においても同様にインキの塗布及び硬化が行われながら、インキが重ね合わせられ、フルカラーの画像が形成された後、印刷機の外部に搬送される。
【0038】
紫外線照射装置においては、印刷の開始に先立って、冷却ブロック41に水が供給される。供給孔23から供給される水の温度を約25℃とすることができ、後述する熱交換によりこれよりも例えば約5〜10℃程度高い温度の水が排出孔24から排出される。また、電源が供給されることにより、紫外線LED32から紫外線が照射されるとともに、印刷機からの信号に応じて、制御基板52により紫外線LEDの照射強度などが調整される。こうして、紫外線照射装置2が駆動している間、紫外線LED32が発する熱は、冷却ブロック41を介して水と熱交換され、紫外線LED32は冷却される。また、制御基板52で発生する熱も、第1及び第2熱伝導部材51,54、蓋部材42を介して、水と熱交換されることで冷却される。このとき、第1及び第2熱伝導部材51,54は、水が流れる溝412の上方に配置されているため、制御基板52で生じた熱を効率的に水に伝導することかできる。特に、第1及び第2熱伝導部材51,54は、制御基板52を挟むように配置されているため、制御基板52の表面及び裏面の双方から熱が伝達される。したがって、冷却効果が高くなっている。さらに、図5に示すように、冷却ファン55の駆動により、筐体21の第1端部に形成された吸気口27から空気Xが流入し、筐体21内の空冷空間Fを長手方向に通過しながら、第2端部の排気口28から排出されていく。この過程において、制御基板52は、冷却ブロック41に加え、流通する空気Xによっても冷却される。
【0039】
以上説明したように、本実施形態によれば、各反射部材61,62の下端部に、被印刷物Pと対向する第1反射部611,621を設けているため、図12に示すように、被印刷物Pから反射された紫外線を、第1反射部611,621により被印刷物P側に反射することができる(点線の矢印参照)。その結果、被印刷物Pにおける紫外線の照度をさらに向上することができる。
【0040】
また、本実施形態では、2列のLEDユニット34を、所定間隔をおいて配置しているため、各LEDユニット34から照射される紫外線が、これらの間で重ね合わされる。これにより、LEDユニット34間で、被印刷物Pが受ける紫外線の照度をさらに向上することができる。このように照度が高くなる箇所では被印刷物Pからの反射が大きくなるため、上記のように、隣接するLEDユニット34間に第1反射部621を設けておけば、その反射光をさらに反射して被印刷物Pに照射することができる。
【0041】
また、次の効果もある。紫外線LED32から発せられる紫外線は、LED32から離れるほど、被印刷物Pへの入射角が大きくなり、さらに所定の基準角α以上となると、被印刷物Pからの反射量が増加し、インキ内部の硬化に影響を与える被印刷物Pへの照射量が微弱になる。その結果、インキが硬化しがたいおそれがある。これに対して、本実施形態では、図13に示すように、反射部材がなければ紫外線LED32から被印刷物Pへの入射角θが基準角α以上となる紫外線Rを、各第1反射部611,621によって入射角γが基準角αより小さくなるように反射している(符号R参照)。これにより、インキの硬化に寄与しない微弱な紫外線が、被印刷物Pに照射されるのを防止することができ、被印刷物P上の紫外線の照度を向上することができる。その結果、インキを効果的に硬化させることができる。なお、本実施形態では、石英ガラスなどで汚れ防止板37を形成しているため、照射された紫外線が汚れ防止板37に入射すると、汚れ防止板37の下面で全反射を生じ、被印刷物P側に紫外線が照射されない可能性がある。これに対して、光源ユニット33と汚れ防止板37との間に、上記のようなリフレクタを配置すると、汚れ防止板37内での全反射を防止することができ、LEDからの紫外線を被印刷物Pに対して確実に照射することができる。なお、このような効果は、光源と被印刷物との間にレンズを配置した場合でも同様に得ることができる。
【0042】
また、図13に示すように、第1反射部611,621の位置は、次のよう設定されている。すなわち、第1反射部611,621の下端付近に照射される紫外線は、被印刷物Pに対する入射角βとなっており、基準角αよりも小さくなっている。本実施形態では、第1反射部611,621の下端がLEDユニットから離れるように下方に延ばすことで、このような基準角よりも小さい入射角を有する紫外線も反射するようにしている。こうすることで、LEDユニットの直下付近に紫外線を照射できるため、ピークの紫外線照度を向上することができる。
【0043】
さらに、次のような効果も得ることができる。一般的に、反射板を楕円状に形成し、楕円の長軸の一端部側の焦点近傍に光源を配置すると、長軸の他端部側の焦点に集光することが知られている。但し、本実施形態のように、光源が点光源ではなくある程度の大きさを有している紫外線LEDの場合には、焦点の一点に集光するのではなく、焦点の近傍にある程度の幅をもった平行光に近似する紫外線が照射される。そのため、楕円状の反射板を用いれば、平行光に近い光が被印刷物に照射されるようになる(例えば、図14の符号V参照)。これに対して、本実施形態のように、板材を折り曲げて第2反射部612,622が近似的な楕円Eの一部を形成するようにすると、平行光よりもさらに分散した紫外線を照射することができる。これにより、被印刷物Pに照射される紫外線は、平行光よりも概ね分散するため(例えば、図14の符号U参照)、被印刷物Pが受ける積算光量を増大させることができる。
【0044】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、第1及び第2反射部からなる反射部材を用いているが、第1反射部だけで構成された反射部材を用いることもできる。また、第2反射部は、2つ折りで形成しているが、これに限定されるものではなく、折り目を1,または3以上にすることで、楕円に近似させてもよい。また、板材ではなく、例えば、ブロックの一部を切り取って反射面を形成することもできる。また、図15に示すように、第2反射部612,622を傾斜した楕円に沿うように形成することもできる。同図の例では、2つの楕円Eの長軸Yを傾けて、被印刷物P側で交差するようにしている。このような楕円Eに沿って各反射部材61,62の第2反射部612,622を形成すると、各紫外線LED32直下の照度の高い部分が互いに近接して重ね合わされるため、ピーク照度を増大することができる。
【0045】
また、上記実施形態では、紫外線LED32を用いているが、紫外線を照射できるものであれば、特には限定されず、例えば、紫外線レーザダイオードや、紫外線を発光するレーザ光源を用いることもできる。さらに、上記実施形態では、本発明に係る紫外線照射装置を印刷機に適用したが、紫外線を照射する限りにおいては、被照射物は特には限定されない。
【実施例】
【0046】
以下、本発明の実施例について説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0047】
図16に示すように、上記実施形態で示したような、被印刷物の搬送方向に2列の紫外線LEDを有するLEDユニットを、所定間隔をおいて2組配置した紫外線照射装置を用い、シミュレーションにより、反射部材を評価した。シミュレーションの条件は以下の通りとし、被照射物が受ける紫外線の照度を算出した。
(1)LED:日亜化学LED「NC4U134」、消費電力は、14.8[v(電圧)]×0.5[A(電圧)]=7.4w
(2)紫外線LED,反射部材の形状等:図16に示すとおり
(3)インキ:ラジカル型紫外線硬化性インキ(UV OFS LEDシリーズ(T&K TOKA社製))
(4)反射率:反射部材の反射率を95%に設定し、被印刷物の反射率を50%に設定した。
【0048】
まず、図17(a)に示すように、各反射部材において第1反射部を有さず、第2反射部のみを設けたものを比較例として、被印刷物が受ける照度を測定した。結果は、図17(b)に示すとおりである。横軸が搬送方向の位置であり、縦軸が被印刷物が受ける紫外線の照度である。同図によれば、照度は各LEDユニットの直下が最も強く、搬送方向に離れるにしたがって照度が小さくなる。しかし、この例では2つのLEDユニットを用いているため、両者の光が重複する部分、つまり両LEDユニット間Wでは、紫外線が重ね合わされて照度が大きくなっている。
【0049】
続いて、図18(a)に示すように、第1及び第2反射部を有する反射部材を用いた実施例の評価を行った。結果は、図18(b)に示すとおりである。同図では、点線が第1反射部を設けたときの照度を示しており、比較のため、図17(b)と重ね合わせている。その結果、LEDユニット間Wの照度が大きく向上していることが分かる。また、第1反射部による反射の影響は、紫外線の照射範囲全体に表れており、例えば、LEDユニット直下のピーク照度が向上している(矢印P)。また、LEDユニットから離れた位置(矢印M)では、照度が低下しているものの、ピークの近傍(矢印J)においては照度が向上している。これは、第1反射部により紫外線がLEDの直下側に反射されているからであると思われる。よって、第1反射部を設けることで、LEDの出力を上げることなく、被印刷物が受ける照度が向上していることが分かった。
【符号の説明】
【0050】
32 紫外線LED(紫外線光源)
33 LEDユニット(光源ユニット)
61,62 反射部材
611,621 第1反射部
612,622 第2反射部
α 基準角
γ 入射角
E 楕円

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被照射物に紫外線を照射する紫外線照射装置であって、
前記被照射物の搬送方向と直交する照射物幅方向に沿って並ぶ複数の紫外線光源を有する少なくとも1つの光源ユニットと、
前記光源ユニットと前記被照射物との間に配置され、前記各光源ユニットを、前記搬送方向の上流側及び下流側から挟むように配置された一対の反射部材と、を備え、
前記各反射部材は、前記被照射物と対向する第1反射部を有している、紫外線照射装置。
【請求項2】
複数の前記光源ユニットが、所定間隔をおいて前記搬送方向に沿って配置されており、
隣接する前記光源ユニット間に配置される前記各反射部材の前記第1反射部は、前記搬送方向に沿って連続する反射面を形成している、請求項1に記載の紫外線照射装置。
【請求項3】
前記各反射部材において、前記第1反射部は、前記照射物幅方向に沿って所定間隔をおいて複数設けられており、
前記光源ユニット間の隣接する2つの前記反射部材は、前記第1反射部が互いに噛み合うように配置されることで、前記搬送方向に沿って連続する反射面を形成する、請求項2に記載の紫外線照射装置。
【請求項4】
前記各反射部材は、前記紫外線光源から前記被印刷物に向かって延びる第2反射部を有しており、
当該第2反射部の全部または少なくとも一部は、前記紫外線光源から前記被印刷物への入射角が所定の基準角以上であって、インキ内部の硬化に寄与し難い微弱な紫外線を、入射角が前記基準角より小さくなるように反射する、請求項1から3のいずれかに記載の紫外線照射装置。
【請求項5】
前記各反射部材は板材により形成され、当該各反射部材を、前記幅方向に延びる折り目に沿って折り曲げることで、前記第1反射部と第2反射部とを形成している、請求項4に記載の紫外線照射装置。
【請求項6】
前記光源ユニットを挟んで対向する少なくとも一方の前記第2反射部は、断面において近似的に楕円の一部を構成しており、
前記光源ユニットが、断面において、前記楕円における一方の焦点近傍に配置されている、請求項4から6のいずれかに記載の紫外線照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−24708(P2012−24708A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−166518(P2010−166518)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【出願人】(311001347)NKワークス株式会社 (96)
【Fターム(参考)】