説明

細胞の異常消失に関わる障害の治療のための、および/または、肥満の治療のためのGIP活性を有する化合物の使用

細胞の異常消失により引き起こされるか、もしくはこれを特徴とする状態の予防および/もしくは治療のための、並びに/または、過剰体重および肥満の予防および/もしくは治療のための医薬組成物の製造のための、同じ条件の同じ試験において試験した場合に胃抑制性ポリペプチド、GIPの活性の50%活性以上を有する化合物の使用、並びに/または、GIP、その類縁体およびそのフラグメントの使用。過剰体重および肥満の予防および/または治療のための上記化合物。細胞の増殖亢進および/もしくは異常に低い体重により引き起こされるか、もしくはこれを特徴とする障害の予防並びに/または治療のためのGIPまたはGIP受容体に対するアンタゴニストの使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は細胞の異常消失により引き起こされるか、もしくはこれを特徴とする状態の予防および/または治療のための医薬組成物の製造のための、同じ条件で同じ試験において試験した場合GIPの活性の少なくとも50%活性を有する化合物の使用、ならびに/または、GIP、その類縁体およびそのフラグメントの使用に関する。本発明はまた、過剰体重および肥満の予防および/または治療のための上記化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
中枢神経系(CNS)への外傷性、窒息性、低酸素性、虚血性、毒性、感染性、変性性または代謝性の傷害は数種の異なる細胞型に対する損傷をもたらす場合が多い。即ち、外傷、窒息、毒素、虚血または感染による脳への損傷は神経学的な、および認知機能の欠損をもたらす場合が多い。
【0003】
神経変性の最も重度の形態は、恐らくは脳卒中後に観察されるものである。この形態の大脳虚血はニューロン並びに脳のグリア細胞および血管エレメントの死滅をもたらす。脳卒中により麻痺、記憶喪失および会話不能がもたらされる場合が多い。
【0004】
選択的に傷害を受けやすいニューロンの重要なグループに対して極めて脅威的であり得る別の形態の脳虚血は全虚血である。全大脳虚血は心臓が細動を起こしている期間の心停止患者において一般的に観察される。全虚血によるニューロン死は心停止を起こした心臓発作患者において一般的に起こり、心停止は心臓発作患者において一般的に起こる。
【0005】
パーキンソン病は徴候が3種の主症状、即ち休止期の振せん、硬直および運動不能により定義される運動障害である(Fahn,1989)。疾患は細胞の特定の集団の消失をもたらす場合が多く、特に、黒質におけるドーパミン作用性のニューロンの特定の消失に関わっている。疾患の進行過程は進行性である。長期間にわたり、抗コリン作用性薬剤が振せん麻痺症状の唯一の有効な治療法であった。L−3,4−ジヒドロフェニルアラニン(L−DOPA)療法の有利な効果はかなりの程度まで患者の寿命を延長した。しかしながら、疾患の進行段階ではL−DOPA療法による合併症およびL−DOPA応答性の欠如が優勢となる。PD治療の制約要因は多くの抗パーキンソン病薬の精神病誘発性である。
【0006】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)はその一般的形態においては孤発性に現れる慢性の進行性変性障害である。ALS患者における最も顕著な病理学的変化は運動皮質、脳幹および脊髄における大型の運動ニューロンの消失である。運動ニューロン疾患(例えばALS)においては、中枢垂体、末梢運動系または両者の変性が臨床像の原因である。
【0007】
特定のニューロンの選択的な消失により引き起こされる変性障害の別の例はアルツハイマー病(AD)であり、これはコリン作用性のニューロンの消失と関わっている。認知機能低下は、記憶喪失、見当識障害、およびそれに関わる生活の楽しみの同時的喪失により顕在化するADの本質的な臨床基準である。死亡後にのみ、脳内の多量のアミロイドおよび神経炎性プラークの存在により診断を病理学的に確認できる。
【0008】
同様に、多発性硬化症(MS)はミエリンおよびオリゴデンドロサイトの消失と関わっている。更にまた、CNSの傷害または疾患がオリゴデンドログリア、星状グリアおよびニューロン細胞に対する損傷を引き起こす場合がある多くの他の例が存在する。
【0009】
現時点において、神経変性疾患の薬理学的療法は原因となる疾患の進行過程を改変しない対症療法に限定されている。
【0010】
一方、罹患集団内の上記した適応症に対する現在市販されている治療方法は現在では不十分であるため、局所的または全体の虚血、ALS、アルツハイマー病およびパーキンソン病などの合併症または状態に関わる神経変性の過程を緩徐化させるか、または、むしろそのような神経変性を一括して防止するようなより安全で良好な治療法がなお望まれている。
【発明の開示】
【0011】
本発明は、細胞の異常消失により引き起こされるまたはそれを特徴とする状態の予防および/または治療用医薬組成物製造のための、in vitro 増殖試験において試験した場合に、同じ条件下で同じ試験において試験されたときに配列番号2の活性の少なくとも約50%に相当する活性を有する化合物の使用に関する。配列番号2を有する配列はヒト胃抑制性ポリペプチド、即ちGIPである。in vitro の増殖試験はCyQUANT細胞増殖キット(Molecular Probes, Eugine, OR)を用いて実施例において後述する通り実施してよいが、いずれかの他の適当な市販の増殖試験法も当然ながら使用してよい。
【0012】
本発明者等は脳におけるGIPの発現およびGIPの免疫反応性の存在を明らかにしている。更に、外因性に供給したGIPがin vitro およびin vivo において成体由来海馬前駆細胞の増殖を誘導したことも明らかにしている。GIPは幹細胞、前駆細胞および他の細胞、特に、ニューロン、星状細胞、および/またはオリゴデンドロサイトなどの分化した細胞を発生する能力を有する中枢神経系由来の細胞の増殖を誘発できるため、GIPは成熟哺乳類脳内の神経前駆細胞の増殖のための重要な調節分子でありえるだろう。
【0013】
胃抑制性ポリペプチド(GIP)は小腸のヒト神経内分泌細胞内に天然に存在するインスリン分泌性(insulinotrophic)のペプチドである(Buchan A., Polak J., Capella C., Solcia E. and Pearse A., Histochemistry 56:37-44(1978))。その主要な機能は、膵臓からの食後インスリン放出を媒介するインクレチンとしての機能である(Pederson R., Schubert H. and Brown J., Diabetes 24:1050-1056(1975); Pederson R. and Brown J., Endocrinology 99:780-785(1976))。
【0014】
GIPは、セクレチン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド1および2(GLP1および2)、血管作用性腸ポリペプチド(VIP)、ペプチドヒスチジンイソロイシン(PHI)、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)および下垂体アデニリルサイクレース活性化ポリペプチド(PACAP)を包含する胃腸調節ポリペプチドのセクレチン−グルカゴンファミリーの他のメンバーと化学的に関連し、およびそれと構造的相同性を示す42アミノ酸のポリペプチドである(Tseng C., Jarboe L., Landau S., Williams E. and Wolfe M., Proc Natl Acad Sci USA 90:1992-1996(1993))。
【0015】
42アミノ酸の胃抑制性ペプチド(GIP)は、膵臓に対するその主要なインスリン分泌性作用とは別に、他の系にも影響することが報告されている。特に肝静脈血流の特性に影響し、動脈に対する作用を有し、骨芽様細胞におけるコラーゲン合成を増強し、脂肪組織における脂肪酸の合成を増大させる。
【0016】
GIP受容体のmRNAの発現は、海馬および嗅球を含む脳の領域において報告されているが(Usdin T., Mezey E., Button D., Brownstein M. and Bonner T., Endocrinology 133:2861-2870(1993); Kaplan A. and Vigna S., Peptides 15:297-302(1994))、本発明者等が最初に脳内のGIPペプチドそのものの存在を明らかにしている。実施例において示す通り、本発明者等は免疫標識によりGIPを検出するための特殊な抗原回復(retrieval)法を使用しており、GIPに対する極めて効率的なプライマーを開発している。
【0017】
本発明を更に詳述する前に、以下の通り本明細書において使用する特定の用語を列挙する。
【0018】
定義
特段の定義が無い限り、本明細書において使用する技術的および科学的な用語は、全て本発明の属する技術分野の当業者により一般的に理解されているものと同様の意味を有する。
【0019】
本明細書で使用される「GIP」または「胃抑制性ペプチド」という用語は、配列番号2を有するポリペプチドをさすものとする。
【0020】
本明細書で使用される「GIP−活性」または「GIP様活性」という用語は、細胞増殖を誘導するGIPの活性および/または体重増加を低減する活性に関するものとする。
【0021】
本明細書で使用される「拮抗」作用という用語は、その作用が、細胞に対するGIPの増殖作用に対抗するか、または、GIPの体重低減作用に対抗する(即ち体重増加を誘導する)ことであるという意味を有する。
【0022】
本明細書で定義される、「同様性」または「同様の置換」という用語は、化学的に同様のアミノ酸が相互に置き換わることを意味する。例えば、塩基性の残基LysおよびArgは化学的に同様であると考えられ、しばしば相互に置き換えられ、また、酸性残基AspおよびGlu、ヒドロキシル残基SerおよびThr、芳香族残基Tyr、PheおよびTrp、ならびに非極性残基Ala、Val、Ile、LeuおよびMetも同様である。同様性は同様の残基の数を残基の総数で割り、商を100倍してパーセントとすることにより求められる。
【0023】
「同一性」とは配列の同様性または関連性の尺度となるその配列の特徴を意味する。同一性は同一の残基の数を残基の総数で割り、商を100倍してパーセントとすることにより求められる。即ち厳密に同様の配列の2コピーは100%の同一性を有するが、保存性がそれほど高度ではなく、欠失、付加または置換を有する配列はより低い程度の同一性を有する。当業者の知る通り、数種のコンピュータープログラム、例えばBLAST(Basic Local Alignment Search Tool, Altschul et al.,(1993)J.Mol.Biol.215:403-410)などのアルゴリズムを用いたものを配列の同一性の測定に利用できる。
【0024】
本明細書で定義される、GIPポリペプチドに関連した「類縁体」という用語は、1個以上のアミノ酸が異なる天然または合成のアミノ酸により置き換えられているポリペプチドを意味する。更にまた、1個以上のアミノ酸の欠失、置換、付加またはリピートが導入されているGIPも包含される。更にまた、ペプチドのフラグメント、またはこれらのフラグメントのオリゴマーも包含される。
【0025】
「神経保護性」という用語は神経への傷害を低減、停止または緩解し、神経傷害を受けた神経組織を保護、蘇生または回復させる作用を指す。
【0026】
本明細書で定義される、「異常および/または病理学的な変性」という用語は、分化した細胞および/または組織、胚性幹細胞、成熟幹細胞、前駆細胞および/または幹細胞または前駆細胞から誘導した細胞の再生の能力の消失および/または制御の消失を指す。
【0027】
「虚血」という用語は動脈血の流入の閉塞による局所的な組織の貧血を指す。全虚血は全体の脳への血流が一定時間停止した場合に起こる。全虚血は心停止より生じる場合がある。局所的虚血は脳の一部において正常な血液の供給が枯渇する場合に起こる。局所的虚血は大脳血管の血栓塞栓性の閉塞、外傷性の頭部傷害、浮腫または脳腫瘍から生じる場合がある。一過性であっても、全体および局所的な虚血は広範なニューロン損傷を起こす場合がある。神経組織の損傷は虚血の発症後数時間〜数日間に渡って起こるが、一部の永久的な神経組織の損傷は脳への血流の停止後の初期の数分間に発生する場合がある。
【0028】
「神経変性疾患」という用語は、アルツハイマー病、パーキンソン病ならびに虚血および再灌流傷害から生じる疾患を包含し、血管性脳卒中および全脳および局所性の虚血並びに網膜虚血の場合に観察されるような神経毒性を含む。
【0029】
「神経傷害」という用語は、神経組織への何らかの損傷、および、それから生じる何らかの障害または死を指す。神経傷害の原因は代謝性、毒性、神経毒性、医原性、熱または化学物質性のものであり、限定されるわけではないが、虚血、低酸素、脳血管傷害、外傷、手術、圧力、質量作用、出血、放射線、血管痙攣、神経変性疾患、感染、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、髄鞘形成/髄鞘脱落過程、癲癇、認知機能障害、グルタメート異常およびこれらの二次的作用を包含する。
【0030】
「神経変性の予防」という用語は、神経変性疾患を診断された患者または神経変性疾患の発症の危険性のある者における神経変性を予防する能力を含む。用語はまた、神経変性疾患に既に罹患しているか症状を有する患者におけるそれ以上の神経変性を予防することも包含する。
【0031】
「治療すること」、「治療する」または「治療」という用語は下記の意味:
i)疾患、障害および/または状態に罹患しやすいがまだ罹患していると診断されていない動物において疾患、障害または状態を予防すること;
ii)疾患、障害または状態を抑制すること、即ち、その発症を停止すること;並びに、
iii)疾患、障害または状態を緩解すること、即ち疾患、障害および/または状態の減弱を誘発すること;
を指す。
【0032】
本明細書で定義される、「増殖亢進」という用語は、通常より高速で細胞が増殖することを指す。増殖亢進は癌または腫瘍または他の疾患、例えば乾癬または挫瘡を招く。これらの疾患はよく知られており、当業者はこれらの疾患のいずれかに罹患している患者を適切に診断できる。
【0033】
本明細書で定義される、「肥満」という用語は、患者が30を超えるボディマス指数(BMI、体重(kg)/(身長(m))2(kg/m2))として計算)を有する状態として定義される。
【0034】
本明細書で定義される、「過剰体重」という用語は、約25〜約29.9の範囲のBMIを指すものとする。
【0035】
「細胞の異常または病理学的な消失および/または増加」という用語は、本明細書においては、種々多様な医学的状態および障害に共通の技術的特徴を説明するために使用される。ここで説明される状態および障害は、分化した細胞および/または組織、胚性幹細胞、成熟幹細胞、前駆細胞および/または幹細胞もしくは前駆細胞から誘導された細胞の、病理学的変性、再生能力の欠如、および/または、再生制御の欠如を示すことを特徴とする。
【0036】
16以下のBMIを有する患者は食欲不振または極めて過少体重であると考えられ、体重増加を誘導する目的でGIPのアンタゴニストで治療してよい。
【0037】
本明細書で使用される、「哺乳類」という用語は、いずれかの哺乳類、例えば霊長類、例えばヒトおよびサルを指す。本明細書においては他の哺乳類の例は、ウサギ、イヌ、ネコおよび家畜類、例えばウシ、ヤギ、ヒツジおよびウマを含む。
【0038】
異常な細胞の消失/増加
本発明は分化した細胞もしくは組織の異常な増加および/もしくは消失、並びに/または、細胞、即ち軟骨細胞、心筋細胞、オリゴデンドログリア、星状グリア、ニューロン細胞、種々の形態の上皮、内皮、皮膚、血液、肝臓、腎臓、骨、膵臓細胞、例えば膵臓b−細胞、結合組織、肺組織、外分泌腺組織および/もしくは内分泌腺組織の増殖の制御の喪失に影響するいずれかの病理学的状態の治療のための上記した化合物の使用に関する。
【0039】
本発明は、パーキンソン病(ドーパミン作用性ニューロンに影響)、アルツハイマー病(コリン作用性ニューロンに影響)、脳卒中(ニューロンおよびグリア細胞に影響)、多発性硬化症(オリゴデンドロサイトに影響)、窒息または低酸素(ニューロンおよびグリア細胞に影響)、癲癇、心疾患(心筋細胞に影響)、心筋梗塞(心筋細胞に影響)、糖尿病(膵臓ベータ細胞に影響)、関節症または関節炎(軟骨細胞に影響)、皮膚疾患および熱傷性傷害(真皮および表皮に影響)、肝疾患または肝不全(肝細胞に影響)、筋肉の疾患または損傷(筋細胞に影響)、癌(癌に罹患した組織に影響)、すい臓の機能不全(外分泌および内分泌の膵臓細胞、例えば膵臓b-細胞に影響)、炎症性腸疾患(腸細胞に影響)のような細胞の異常消失を特徴とする状態の、家畜の獣医治療を含む、治療用医薬の製造のための化合物の使用に関する。疾患群に属するものとして更に、プリオンにより引き起こされる疾患、例えばクロイツフェルト−ヤコブ病、スクレイピーおよびウシ海綿状脳炎も含まれる。
【0040】
細胞の異常消失は、外傷性、窒息性、低酸素性、虚血性、毒性、感染性、変性性または代謝性の傷害により生じる場合がある。
【0041】
本発明の特定の実施形態においては、細胞の異常消失はニューロン細胞、星状細胞またはオリゴデンドロサイトの変性および/または消失であってよい。
【0042】
本発明の別の実施形態においては、細胞の異常消失は中枢または末梢の神経系に対する傷害により生じ、神経学的な、および/または認知機能の欠損をもたらす。予防または治療すべき状態は、パーキンソン病、アルツハイマー病、脳卒中、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、窒息または低酸素、癲癇並びにプリオンにより引き起こされる疾患、例えばクロイツフェルト−ヤコブ病、スクレイピーおよびウシ海綿状脳炎(BSE)の群に属するものである。
【0043】
本発明は、in vitro 増殖試験において試験した場合、配列番号2の活性の少なくとも約55%、例えば少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約92%、少なくとも約94%、少なくとも約96%、少なくとも約98%または少なくとも約99%に相当する活性を有する化合物の使用に関する。
【0044】
本発明はまた、配列番号2を有する化合物(GIP)と同じかより高い活性を有する化合物の使用に関し、即ち、本発明はまた、配列番号2の活性の少なくとも約100%、例えば少なくとも約110%、少なくとも約120%、少なくとも約130%、少なくとも約140%、少なくとも約150%、少なくとも約160%、少なくとも約170%、少なくとも約180%、少なくとも約190%または少なくとも約200%に相当する活性を有する化合物の使用に関する。
【0045】
1つの実施形態において、本発明は、化合物が配列番号2、即ちヒトGIPの活性部分と同一である、本発明の使用に関する。
【0046】
本発明はまた、化合物が配列番号2と同様である、即ち、配列番号2の1個以上のアミノ酸が化学的に同様のアミノ酸と交換された配列を化合物が有する、本明細書に記載した使用に関する。
【0047】
多くの予防用および治療用のポリペプチドの場合と同様、ペプチドの特定の部分が活性の原因である。したがって、ペプチドのフラグメントもまた本発明の範囲に包含されるものと考える。更にまた、これらのフラグメントの2量体、3量体、4量体、5量体、または他のオリゴマーも本発明の範囲に含まれる。更に、胃抑制性ペプチド全体のオリゴマーも本発明の範囲に含まれる。更にまた、1個以上のアミノ酸の欠失、置換、付加または繰り返しの導入によりGIPポリペプチドが改変されている類縁体も本発明の範囲に含まれる。
【0048】
従って本発明は、化合物が配列番号2に対し、少なくとも約75%、例えば少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%に相当する同一性を有する本明細書に記載した使用に関する。
【0049】
更にまた、本発明は、化合物が配列番号2に対し、少なくとも約75%、例えば少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%に相当する同様性を有する、本明細書に記載した使用に関する。
【0050】
別の特徴において、本発明は、in vitro 増殖試験において試験した場合に、同じ条件下で同じ試験において試験すると、配列番号2の活性の少なくとも約50%に相当する活性を有する化合物、ただし化合物は配列番号2または塩基性線維芽細胞成長因子bFGFではない上記化合物に関する。本発明者等の知る限りにおいて、これらの2種の化合物のみが上記基準を満たす既知化合物であるが、他の従来技術の化合物が存在する場合、それらもまた本発明から除外される。
【0051】
本発明はまた医薬用途のための記載した化合物に関する。より詳しくは、化合物は細胞の異常消失により引き起こされる状態の予防および/または治療において使用してよい。
【0052】
本発明の化合物の使用に関する上記の詳細および事項は、本発明の化合物に準用する。
【0053】
本発明はまた、細胞の異常消失により引き起こされる、またはこれを特徴とする状態の予防および/または治療の方法に関し、その方法は、本発明の化合物を含有する医薬組成物をそれを必要とする対象に投与することを含む。
【0054】
GIPに対するアンタゴニスト、またはGIP受容体に対するアンタゴニストは、GIP化合物の逆行的作用を有する。GIPの作用の1つは細胞増殖の刺激であるため、GIPまたはGIP受容体のアンタゴニストは細胞増殖の抑制において作用を有する可能性が最も高いだろう。従って、GIPに対するアンタゴニストおよび/またはGIP受容体に対するアンタゴニストを細胞の増殖亢進を特徴とする疾患または障害の予防および/または治療に使用してよい。
【0055】
即ち本発明は細胞の増殖亢進により引き起こされる、またはそれを特徴とする状態の予防および/または治療のためのGIPに対するアンタゴニストの使用に関する。「GIPに対するアンタゴニスト」という用語はGIP化合物に結合し、これによりそれがGIP受容体に結合することを防止する化合物を指す。このような化合物の例はGIPに対する抗体であってもよい。抗体はモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、またはそのフラグメント、相同体もしくは類縁体であってよい。更にまた、抗体はキメラ、ヒトまたはヒト化抗体であってよい。生産される抗体は哺乳類に投与された場合に不適切な免疫反応をもたらさないことが目標とされる。
【0056】
本発明はまた細胞の増殖亢進により引き起こされる、またはそれを特徴とする状態の予防および/または治療用医薬組成物の製造のためのGIP受容体に対するアンタゴニストの使用に関する。GIP受容体に対するアンタゴニストはGIP受容体と相互作用を示し、これにより、アゴニストの作用の抑制またはそれ自体の固有の活性のどちらかにより受容体の機能的活性を低減する化合物である。
【0057】
細胞の増殖亢進により引き起こされるか、またはそれを特徴とし、および本発明のアンタゴニストの投与により予防または治療してよい状態は、新生物または癌の疾患、例えば黒色腫、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、肺癌、肝癌、網膜芽細胞腫、星状細胞腫、神経膠芽細胞腫、白血病、神経芽細胞腫、前新生物病変、例えば腺腫性過形成および前立腺上皮内新生物、上皮内癌、並びに歯肉、舌、頭部、頸部、乳房、すい臓、前立腺、腎臓、肝臓、骨、甲状腺、精巣、卵巣、中皮、頸部、胃腸管、リンパ腫、脳、結腸、肉腫および膀胱の癌から選択される。
【0058】
本発明のアンタゴニストの投与により予防または治療するべき他の疾患の例は、腫瘍関連疾患、慢性関節リウマチ、炎症性腸疾患、変形性関節症、平滑筋腫、腺腫、脂肪腫、血管腫、腺維腫、血管閉塞、再狭窄、アテローム性動脈硬化症、口腔毛髪状白斑、良性前立腺過形成または乾癬である。
【0059】
異常体重障害
肥満は、変形性関節症のような非致命的な衰弱的状態から冠動脈心疾患、II型糖尿病および特定の型の癌のような生命にかかわる慢性疾患にわたる、多くの健康上の側面と関わっている。肥満の生理学的影響は自信低下から臨床的鬱病に及び得る。
【0060】
肥満の有病率は、疫病の流行している途上国および先進国の両方において増加している。食餌療法はしばしば長期持続においては低い成功率しか示さないため、医薬的な代替法への要望がますます増加している。
【0061】
以前より、GIPを抑制する化合物は抗肥満作用を有することが報告されている。この知見とは逆に、本発明者等は意外にも、配列番号2または4を有する化合物の脳室内投与が体重増加を低減する活性を有することを明らかにしている。
【0062】
従って、本発明は、体重過剰および/または肥満の予防または治療用医薬組成物の製造のための、ラットに化合物を脳において脳室内投与し、その後各ラットの体重を記録する実施例9に記載の試験において試験すると、対照として配列番号2または配列番号4を有する化合物を用いて同じ条件下の同じ試験において試験された場合の配列番号2または配列番号4の体重増加低減における活性の少なくとも約50%に相当する活性を有する活性を有する化合物の使用に関する。
【0063】
GIPまたはGIP活性を有する化合物の脳室内投与は恐らくは、中枢神経系内のGIP受容体を活性化させる。特に視床下部内のニューロンがこの投与の標的であると推測されるが、厳密な機序および標的はまだ明確ではない。しかしながら、GIPの作用は脳内において発揮されるため、本発明の化合物は脳に直接投与しなければならないか、または、血液脳関門を通過することが可能でなければならない。即ち、本発明は血液脳関門を通過することのできる化合物の使用に関する。特定の例においては、本発明は、医薬組成物が血液脳関門を通過する化合物の輸送を可能にする担体を更に含む、医薬組成物の製造のための本明細書に記載した化合物の使用に関する。
【0064】
本発明は、化合物が配列番号2または配列番号4の活性の少なくとも約55%、例えば少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約92%、少なくとも約94%、少なくとも約96%、少なくとも約98%または少なくとも約99%に相当する活性を有する、本発明の当該化合物の使用に関する。
【0065】
本発明はまた配列番号2または配列番号4を有する化合物(GIP)と同じかそれより高値の活性を有する化合物の使用に関する。即ち、本発明はまた、配列番号2または4の活性の少なくとも約100%、例えば少なくとも約110%、少なくとも約120%、少なくとも約130%、少なくとも約140%、少なくとも約150%、少なくとも約160%、少なくとも約170%、少なくとも約180%、少なくとも約190%または少なくとも約200%に相当する活性を有する化合物の使用に関する。
【0066】
1つの実施形態において、本発明は化合物が配列番号2または配列番号4と、即ちヒトGIPの活性部分と同一である本発明の使用に関する。
【0067】
本発明はまた、化合物が配列番号2または配列番号4と同様である、即ち、配列番号2または配列番号4の1個以上のアミノ酸が化学的に同様のアミノ酸と交換された配列を化合物が有する、本明細書に記載した使用に関する。
【0068】
上記した通り、本発明はGIPポリペプチドの類縁体、フラグメントおよびオリゴマーにも関する。
【0069】
従って、本発明は、化合物が配列番号2に対し、少なくとも約75%、例えば少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%に相当する同一性を有する、本明細書に記載した過剰体重および肥満の予防および/または治療のための当該化合物の使用に関する。
【0070】
更にまた、本発明は、化合物が配列番号2に対し、少なくとも約75%、例えば少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%に相当する同様性を有する、本明細書に記載する使用に関する。
【0071】
別の特徴において、本発明は、ラットに化合物または配列番号2もしくは配列番号4を含有する化合物を脳において脳室内投与し、その後各ラットの体重を記録する実施例9に記載の試験において試験すると、同じ条件下の同じ試験において試験された場合の配列番号2または配列番号4の体重増加低減における活性の少なくとも約50%に相当する活性を有する当該化合物に関する。上記基準を満足するいずれかの従来技術の化合物は本発明から除外される。
【0072】
本発明はまた、医薬用途のための上記化合物に関する。より詳細には、当該化合物は体重過剰および/または肥満の予防または治療において使用してよい。
【0073】
本発明の化合物の使用に関する上記の詳細および事項は、本発明の化合物に準用する。
【0074】
本発明はまた、体重過剰および/または肥満の予防または治療の方法に関し、該方法は脳室内経路により本発明の化合物を含む医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0075】
本発明の別の方法においては、当該方法は、血管脳関門を通過することができる化合物を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0076】
本発明は更に、体重減少のための美容上の方法に関し、該方法は本発明の化合物を含む組成物を投与することを含む。
【0077】
GIPに対するアンタゴニストは治療すべき対象における体重の増加において作用を有する可能性が高いだろう。即ち、本発明は、異常に低い体重により引き起こされる、またはこれを特徴とする状態の予防および/または治療用医薬組成物の製造のためのGIPに対するアンタゴニストの使用に関する。上記した通り、GIPに対するアンタゴニストは抗体であってよい。
【0078】
本発明はまた、異常に低い体重により引き起こされる、またはこれを特徴とする状態の予防および/または治療用医薬組成物の製造のためのGIP受容体に対するアンタゴニストの使用に関する。
【0079】
GIPまたはGIP受容体に対するアンタゴニストの投与により予防または治療されるべき状態は、食欲不振、悪液質、AIDSまたは癌に関連する消耗、および、新生児および小児における成長障害症候群から選択される。
【0080】
本発明の他の特徴
上記した通り、本発明者等が初めて、免疫標識によりGIPを検出するための特殊な抗原回復(retrieval)法を使用することにより、およびGIPに対する極めて効率的なプライマーを使用することにより、哺乳類脳中のGIPの存在を検出した。
【0081】
従って、本発明は哺乳類の脳内のGIPの異常なレベルを検出するための方法に関する。当該方法は、脳内のGIPの異常な量を特徴とする疾患の診断、疾患モニタリングおよび/または治療モニタリングのために使用してよい。
【0082】
本発明の1つの方法において、疾患は被検者の脳内GIPレベルが健常者と比べて低いことを特徴とする。脳内GIP低レベルを特徴とする疾患の例は鬱病、気分障害および摂食障害であってよい。脳内GIP低レベルを特徴とする状態の別の例は記憶および学習の障害並びに痴呆である。
【0083】
本発明はまた、被検者の脳内GIPレベルが健常者と比べて高い方法に関する。
【0084】
本発明はまた、鬱病および/または気分障害の予防および/または治療用医薬組成物の製造のための本明細書に記載した配列番号2またはその類縁体、機能的類縁体もしくはそのフラグメントを有する化合物に関する。
【0085】
本発明はさらに、躁病および躁鬱病の予防および/または治療用医薬組成物の製造のための本発明の化合物に関する。
【0086】
本発明はまた、記憶および/または学習の障害の予防および/または治療用医薬組成物の製造のための本発明の化合物の使用に関する。
【0087】
更にまた、本発明は薬学的に許容しうる1種以上の賦形剤と共に本発明の化合物を含む医薬組成物に関する。
【0088】
本発明の他の特徴は添付する請求項から自明なものである。本発明の化合物の使用に関する上記および請求項の詳細および事項は、本発明の別の特徴に準用する。
【0089】
投与
医療上の使用のためには、治療効果を達成するための本発明の化合物の必要量は、投与する特定の化合物、投与経路、治療する動物、および関与する特定の障害または疾患により変動する。本明細書に記載した状態のいずれかに罹患した、または罹患する可能性のある動物に対する本発明の化合物の適当な全身用量は典型的には体重キログラムあたり約0.1〜約100mg、好ましくは、約1〜約10mg/kg動物体重の範囲である。当該分野の医師または獣医師は所望の予防的または治療的な治療のために有効な化合物の量を容易に決定および処方することができる。
【0090】
そのような操作において、医師または獣医師は、静脈内単回投与とその後の静脈内注入および反復投与を適宜用いてよい。本発明の方法においては、化合物は例えば、吸入噴霧、局所、直腸、経鼻、口腔内、舌下、膣内、脳室内に、または、埋め込みリザーバを用いることにより、経口的に、非経口的に従来の非毒性の薬学的に許容しうる担体、アジュバントおよび溶媒を含有する剤形において投与してよい。
【0091】
非経口投与は、限定されるわけではないが、以下の例:静脈内、皮下、筋肉内、脊髄内、骨内、腹腔内、髄腔内、脳室内、胸骨内または硬膜下ポンプなどによる頭蓋内の注射および注入法が包含される。侵襲性の方法、特に損傷を受けたニューロン組織に直接投与する方法が好ましい。本発明の化合物を単独で投与することも可能であるが、医薬品製剤の一部として与えることが好ましい。
【0092】
上記した通り、中枢神経系の標的として治療上有効であるためには、本発明の方法において使用される化合物は末梢投与された場合に血液脳関門を容易に通過しなければならない。血液脳関門を通過できない化合物は脳室内の経路によりなお有効に投与されえる。
【0093】
本発明の方法において使用される化合物は、単回用量または異なる多用量により投与してよい。
【0094】
本発明の方法においては、投与時期および投与順序を調節するいずれかの有効な投与方法を用いてよい。化合物の用量は好ましくは活性化合物の有効量を含む薬学的投与単位を含む。有効量とは、1つ以上の薬学的投与単位の投与を介して細胞の増殖の誘発の抑制および/または所望の有利な作用の誘導を行うのに十分な量を意味する。1つの実施形態においては、用量は神経変性疾患の作用を予防または低減するのに十分なものである。
【0095】
脊椎動物の宿主に対する例示される一日当たり用量は約0.001mg/kg〜約50mg/kgの量を含む。典型的には、活性成分の化合物約0.1mg〜約10,000mgのオーダーの用量水準が上記状態の治療において有効であり、例えば約0.1mg〜約1,000mgの水準である。いずれかの特定の患者に対する特定の用量水準は種々の要因、例えば使用する特定の化合物の活性;患者の年齢、体重、全身状態、性別および食餌;投与の時期;排出速度;他の薬剤との化合物の何らかの組み合わせ;治療すべき特定の疾患の重症度;ならびに投与の形態および経路により変動する。典型的には、in vitro の用量−作用の結果が患者への投与のための適切な用量に関する有用な指針を与える。動物モデルにおける試験も有用であり得る。適切な用量水準を決定するための検討事項は当該分野でよく知られている。
【0096】
神経傷害(特に急性の虚血性脳卒中および溺れや頭部外傷により引き起こされる全虚血)を治療する方法において、本発明の化合物は1種以上の他の治療薬、例えば脳卒中の危険性を低減する薬剤(例えばアスピリン)および二次的虚血事象の危険性を低減する薬剤(例えばチクロピジン)と共に同時投与できる。
【0097】
本発明の方法および組成物を用いて細胞を殺傷し、細胞の生育を抑制し、転移を抑制し、腫瘍または組織の大きさを低減し、およびそのほか腫瘍細胞の悪性表現型を後退または低減するためには、一般的に増殖亢進性細胞を治療用の発現コンストラクトに接触させる。投与経路は当然ながら病変の位置および性質により変動し、例えば皮内、経皮、非経口、静脈内、筋肉内、鼻内、皮下、経皮、気管内、腹腔内、腫瘍内、灌流、洗浄、直接注射および経口の投与および製剤を包含する。
【0098】
腫瘍内注射または腫瘍の血管系への注射は、分離した固形の接触可能な腫瘍に対して特に意図される。局所的、領域的または全身性の投与もまた適切であるだろう。4cm超の腫瘍に対しては、投与容量は約4〜10ml(好ましくは10ml)であり、4cm未満の腫瘍に対しては約1〜3mlの容量を使用する(好ましくは3ml)。単回用量として供給される多数回注射は約0.1〜約0.5mlの容量を含む。本発明の化合物は約1cm間隔の空間をあけて腫瘍に多数回注射して投与することにより好都合に接触させてよい。
【0099】
外科的介入の場合は、本発明は手術不能な腫瘍対象を切除に付すために術前に使用してよい。或は、本発明は残余または転移した疾患を治療するために手術時および/またはその後に使用してよい。切開後、例えば手術の部位に移植されたカテーテルを残留させることにより灌流を継続してよい。周期的な術後の治療も意図される。
【0100】
連続投与もまた、例えば、腫瘍を摘出し、残存する顕微鏡的疾患を排除するために腫瘍床を治療する場合など、適宜適用してよい。シリンジまたは挿管を用いた供給が好ましい。このような連続灌流は治療開始後、約1〜2時間から約2〜6時間まで、約6〜12時間まで、約12〜24時間まで、約1〜2日まで、約1〜2週間まで、またはそれより長期間の期間に渡り実施してよい。一般的に、連続灌流による治療組成物の用量は灌流を行う期間にわたって調節される単回または複数回の注射により与えられるものと等しい。特に黒色腫および肉腫の治療においては本発明の治療用組成物を投与するために四肢灌流を用いることもさらに意図される。
【0101】
治療用法も変動する場合があり、腫瘍の種類、腫瘍の位置、疾患の進行状況、並びに患者の健康状態および年齢により異なる場合が多い。当然ながら腫瘍の特定の種類はより集中的な投与を要するが、同時に特定の患者はより負担の大きいプロトコルを耐容できない場合がある。このような決定は、治療用製剤の知られた薬効および毒性(存在する場合)に基づいて医師が行うのが最も適している。
【0102】
特定の実施形態において、治療される腫瘍は少なくとも初期においては切除可能でなくてもよい。治療用ウィルスコンストラクトを用いた治療は、辺縁における収縮により、または、特定の特に侵襲性の部分の排除により、腫瘍の切除可能性を増大することがある。治療後に切除が可能となる場合がある。切除後の追加的治療により腫瘍部位における顕微鏡的な残存疾患を除去することができる。
【0103】
原発腫瘍または摘出後の腫瘍床に対する典型的な治療過程は複数回の投与を含む。典型的な原発腫瘍治療では、2週間の期間に渡り6用量の適用が含まれる。2週間の用法を1回、2回、3回、4回、5回、6回またはそれ以上、反復してよい。治療期間中、予定された投薬を完了する必要性を再評価してよい。
【0104】
治療は種々の「単位用量」を含んでよい。単位用量は、治療用組成物の所定量を含むように定義される。投与すべき量並びに特定の経路および製剤は臨床分野の当業者の知る通りである。単位用量は必ずしも単回注射として投与する必要は無く、所定の期間中に渡る連続注入も含まれる。本発明の単位用量は好都合にはmg/kg体重の単位で記載される。
【0105】
乾癬のような疾患を治療するためには、本発明の化合物は好ましくはローションクリームまたは皮膚上への医薬の投与に適するいずれかの他の組成物として投与される。
【0106】
組成物は従来の薬学的慣行に従って製剤してよく、例えば「Remington: The science and practice of pharmacy」第20版、Mack Publishing, Easton PA,2000 ISBN0-912734-04-3および「Encyclopedia of Pharmaceutical Technology」 Swarbrick, J. & J.C.Boylan編、Marcel Dekker, Inc., New York,1988 ISBN0-8247-2800-9を参照できる。
【0107】
本発明に従って使用するための組成物中の薬学的に許容しうる賦形剤の選択およびその至適濃度は一般的に予測できないものであり、その実験的測定に基づいて決定しなければならない。薬学的に許容しうる賦形剤が医薬組成物中における使用に適するものであるかどうかもまた、一般的にはどのような種類の剤形を選択するかに依存する。しかしながら、医薬品製剤の当業者は例えば「Remington: The science and practice of pharmacy」第20版、Mack Publishing, Easton PA,2000 ISBN0-912734-04-3に指針を見出すことができる。
【0108】
以下の実施例は本発明を説明するものであって、これに限定する意図はない。
【0109】
実施例
動物:全実験プロトコルはAnimal Ethics Committee of Goteborg Universityにより認可されたものである。cDNAアレイに用いた動物はMollegaard Breeding Center (Ejby, Denmark)から入手したが、他の全ての実験については、B&K Universal (Stockholm, Sweden)から入手した。試験においては、雄性Sprague-Dawleyラット(SD)よりも有意に高値の海馬歯状回(DG)内の細胞増殖および実質神経形成を示す雄性自発的高血圧ラット(SHR)を用いた11
【実施例1】
【0110】
海馬におけるGIP遺伝子の発現はラットDGにおける細胞増殖速度と同時変動する。
若齢成熟ラット海馬におけるニューロン増殖に関わる可能性の有る遺伝子を調べるために、成熟DGにおける神経前駆細胞の増殖に関して異なることが知られている3群ラットからRNAを単離した。
【0111】
材料および方法
アトラスcDNAアレイ:雄性SHR(n=5)並びに雄性(n=5)および雌性(n=5)のSDラットを5週齢で屠殺した。脳の半分からの海馬をRNA単離のために使用し、残りの半分の脳は免疫蛍光分析用とした。各海馬の全RNAを個々に、Atlas(商標)ピュアトータルRNA標識システムユーザーマニュアル(PT3231-1、カタログ番号K1038-1)に従って調製し、貯蔵した。cDNAプローブの調製、アレイへのハイブリダイゼーションおよびX線フィルムの現像はAtlas(商標)cDNA発現アレイユーザーマニュアル(PT3140-1)にしたがって行った。アレイ実験はラットの個々のセットに対して2回実施した。データ分析はAtlasImage(商標)1.5ユーザーマニュアルに従ってソフトウエアAtlasImage(商標)(Clontech)を用いて実施した。
【0112】
RT−PCR:全RNAを培養成熟海馬前駆細胞、ラット海馬、小腸および脾臓から単離した43。全試薬はPromega, Madison,WIより入手し、cDNAはサーマルサイクラー(Perkin Elmer 2400)を用いて35サイクル循環させた。GIP用のPCRプライマーはClontechにより設計(GIP-P1、AAGAGGTTGAGTTCCGATCCCATGC;GIP-P2、GATTGTCCTGCCAGCTCCAAAGCC)され、GIP受容体用のプライマーは以前に報告されている15。内部標準としてリボソーム蛋白質27Aを検出するPCRプライマーを使用した。
【0113】
配列決定:配列決定はABIプリズムビッグダイターミネーターサイクルシーケンシングレディーキット(Applied Biosystem)およびRT−PCRに用いたものと同様のプライマーを用いてPCR産物に対して実施した。生成物を95%エタノールおよび3M NaAcで沈殿させ、鋳型抑制試薬(Applied Biosystem)中に再懸濁し、更にABIプリズム3100ジェネティックアナライザーで分析した。
【0114】
結果
海馬RNAは図1aに要約した通り正常思春期前雄性SHR並びに雄性および雌性のSDラットから単離し、Atlasラット1.2cDNAアレイへのハイブリダイゼーション用のcDNAプローブを合成するために使用した。cDNA法によりこの問題に取り組む理由は、単純なスクリーニングを行うため、および、他の方法による研究を継続するために新しい仮説を発見するためであった。本分析の目的はラットの異なる群における海馬遺伝子調節の全ての相違点を特性化することではなかった。ハイブリダイゼーションの結果は図1aに示す通りであり、ここでは黒スポットはアレイにおける各遺伝子を示す。雄性SHRと雄性SDラットの海馬遺伝子発現の特徴の比較(SHRはSDラットと比較してより高速の前駆細胞増殖速度を有する)によれば、2群の間には11の異なって発現(発現の差が4倍超)された遺伝子が存在した。その後、雄性および雌性SDラットの間で第2の比較を実施した(雄性動物はより高速の前駆細胞増殖速度を有する)。結果によれば31の異なって発現された遺伝子が存在した。両比較のデータを編集し、2比較においてDGの細胞のin vivo 増殖レベルと同時変動する発現特性を示す遺伝子を発見しようと試みた。SD雄性よりも雄性SHRにおいて、SD雌性よりもSD雄性において、GIPがアップレギュレートされた。GIPは、分析した1200遺伝子のうちこのパターンを示す唯一の遺伝子であった。
【0115】
脳組織内のGIP遺伝子の発現をRT−PCRを用いて確認した。ラット海馬およびラット小腸(陽性対照)に由来するRNAを逆転写し、同じcDNAの一部づつを全反応に使用した。RPL27ARNAを図1bに示す通り内部標準として使用した。海馬および小腸の両方のRNAにおいて、220bpに相当するバンドが観察され、その後配列決定された。PCR産物の配列決定により、ラット海馬におけるGIP遺伝子の発現が確認された。VIP/セクレチン/グルカゴンファミリーのメンバーは活性ペプチドをコードするcDNAのN末端部分近傍に同様のアミノ酸配列を有するが、それ以外は極めて相違している24,25。本発明者等のリバースGIP RT−PCRプライマーは、かなりのアミノ酸およびcDNA配列の相違を示すC末端伸長にハイブリダイズした。ラット海馬におけるGIPmRNAの発現を確認するために、本発明者等は2種の異なるオリゴヌクレオチドプローブを用いて脳切片のin situハイブリダイゼーションも実施した。GIPmRNA発現はCA1−CA3領域および顆粒細胞層を含むDGにおいて、弱いものであったが観察された(図1c参照)。GIP発現はまた、雄性SDラットよりも雄性SHRから得たRNAにおいて高値であり、雌性SDラットから得たRNAは半定量的RT−PCRを用いて分析したところ最低の発現を示していた(図1d参照)。220bpのバンドは30回のサイクルのみでは雌性SDラットにおいて検出されなかった。
【実施例2】
【0116】
海馬におけるGIPペプチドの発現
本実施例は免疫組織化学的方法により測定した場合の成体ラットの海馬におけるGIPの存在を示すものである。
【0117】
方法
免疫蛍光染色:培養細胞:ラットの成熟海馬前駆細胞クローン7を以前に報告されている通り44培養した。一次抗体:ウサギGIP受容体(1:500)45およびマウスネスチン(1:500、PharMingen, Becton Dickson, Franklin Lakes, NJ)。ラット脳:切片化、染色および免疫蛍光の検出は以前に報告されている通り46実施した。一次抗体:モノクローナルマウスGIP(3.65H;1:1000、Dr. Alison Buchan, UBC, Canadaより、ご提供)、ポリクローナルウサギGIP(1:100,Chemicon)、ウサギGIP受容体(1:500)、マウスBrdU(1:400,Boeringer Mannheim)、ウサギGFAP(1:500、Dako, Glostrup, Denmark)、ウサギカルビンジンD28K(1:500、Swant, Bellinzona, Switzerland)、マウスNeuN(1:30,Chemicon)。培養細胞および脳切片の両方に対する二次抗体はAlexa Fluor 488コンジュゲート抗マウスおよびAlexa Fluor 594コンジュゲート抗ウサギ(共に1:400、Molecular Probes, Leiden, Netherlands)とした。GIPの抗原回復のためには、切片をTBS中4x2分間マイクロウェーブ処理した(Moulinex Micro-Chef MO55;650W/230V/50Hz)。
【0118】
免疫定量:雄性SHR並びに雄性および雌性のSDラットの海馬を含む脳の切片をモノクローナルGIP抗体(上記)を用いて染色した。切片を解剖学的に比較して同様の等価な位置が選択されるようにした。ラット当たり2つの切片および群当たり4匹のラットを染色した。定量はNikon-Mikaelのコンピュータープログラムを用いて実施した。
【0119】
結果
成熟ラット海馬におけるGIP免疫反応性の存在を、GIPに対するモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体を用いて、免疫組織化学的に調べた。図2aに示す通り、海馬の顆粒細胞層は特徴的な細胞質染色パターンを有する大量のGIP免疫反応性を含んでいた。グリア細胞マーカーGFAPとGIPの同時標識は観察されなかったが(図示せず)、海馬顆粒細胞層の細胞はニューロンマーカーカルビンジンおよびNeuNとのGIP免疫反応性の同時局在を示していた(図2b〜c参照)。即ち、GIP免疫反応性は、成体哺乳類における活動性の増殖および神経形成の領域である、内顆粒細胞下層を含むDG全体に渡って発現されている1,4,10。GIPを生産する細胞に対する前駆細胞の緊密な接近は、それらが恐らくはペプチドに曝露されていることを示している。BrdU標識に必要なDNAの変性工程がGIP免疫反応性の損失をもたらしたため、本発明者等はGIPおよびBrdUの同時標識を行うことができなかった。しかしながら本発明者等はGIPおよびBrdUの同時標識を行うことができなかったものの、BrdUおよびカルビンジンの染色により、顆粒細胞下層における新規に形成された細胞の位置がわかり、BrdUおよびGIP標識細胞が近接していることが示された(図2d参照)。GIPの免疫反応性は全ての群のDG、即ち雄性SHR並びに雌性および雄性SDラットにおいて検出されている。これらの3群の海馬顆粒細胞層のGIPの免疫反応性のレベルには有意な差が存在しており、蛋白質レベルにおいてもcDNAアレイでの差異が確認された(図2e〜h参照)。
【0120】
実際、過去の報告は異なる抗体の使用により哺乳類膵臓におけるGIP免疫反応性の存在に関しては矛盾していた26,27。種々のGIP抗体の特異性および感受性が調べられており、モノクローナルC末端特異的抗体が最も適するという結論が引き出されている26,27。ペプチドのVIP/セクレチン/グルカゴンファミリーの他のメンバーを本発明者等が検出しなかったと結論するために、本試験において使用した抗体はモノクローナルのC末端特異的なものであり、VIP、セクレチン、グルカゴンおよびソマトスタチンと共に予備インキュベートすることによりその特異性についても試験している26,28。従って、本発明者等は合理的に、成熟ラット脳がGIPを生産すると結論する。
【実施例3】
【0121】
成熟海馬前駆細胞におけるGIP受容体の発現
本実施例は、海馬前駆細胞がGIP受容体を発現すること、および、生理学的条件下で脳の神経形成領域における細胞がGIPを生産することを示すものである。
【0122】
方法
In situ ハイブリダイゼーション:雄性Sprague-Dawleyラットを断頭し、脳をクリオスタット(Dittes, Heidelberg.Germany)中で14μmの厚みに切片化し、予備処理したスライドガラス (ProbeOn(商標)、Fisher Scientific, Pittsburgh, PA, USA) 上に解凍してマウントした。MacVector(商標)ソフトウエア(IBI, New Haven, CT, USA)オリゴヌクレオチドプローブを用いて、オリゴヌクレオチドプローブをグアノシン+シトシン/総ヌクレオチド数の至適比率(50〜65%)およびGenBank登録配列との最小の相同性(80%以下)に基づいて選択した。オリゴヌクレオチドプローブはラットGIPmRNA16,17のGGCTTTGGAGCTGGCAGGACAATCTCAGAGAAACGAGGAGAAAGAGGC(ヌクレオチト゛313〜360)およびTGCTGGCCCCCGACCACGAGGCCCAAGGTATGCAGAGGGGACTTTCAT(ヌクレオチド148〜195)、並びにラットGIP−RmRNA15のGTACAGGTGAGCACTGACTTGGGCTGAAGCTCAAGAGTTGGTTCTGCC(ヌクレオチド61〜108)およびCCTGTTCACGTCTTTCATGCTGCGAGCAGGGGCCATCCTCACCCGAGA(ヌクレオチド682〜729)に相補となるように逆向きに作製し、合成した(MWG Biotech, Ebersberg, Germany)。プローブは末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(Amersham Ltd., Amersham, UK)を用いて3’末端で33P-dATP(NEN, Boston, MA, USA)で標識し、ProbeQuant G-50マイクロカラム(Amersham Pharmacia Biotech, Inc., Piscataway, NJ, USA)を用いて精製した。標識されたプローブの比活性は3x109cpm/μgであった。In situ ハイブリダイゼーションは本質的に文献記載の通り実施した47。組織切片を風乾し、標識プローブ0.5ng/スライドを含有するハイブリダイゼーション溶液と共にインキュベートした。ハイブリダイゼーション溶液は、50%脱イオンホルムアミド(J.T.Baker Chemicals, Deventer, The Netherlands),4xSSC(1xSSC=0.15M塩化ナトリウム、0.015Mクエン酸ナトリウム)、1xデンハート溶液[0.02%ウシ血清アルブミン、0.02%Ficoll(Pharmacia, Uppsala, Sweden)、0.02%ポリビニルピロリドン]、1%N−ラウロイルサルコシン、0.02M NaPO4(pH7.0)、10%デキストランスルフェート(Pharmacia)、500μg/ml変性サケ精巣DNA(Sigma, St.Louis, MO, USA)および200mMジチオスレイトール(LKB, Stockholm, Sweden)を含有した。16時間インキュベートした後、スライドを1xSSCで4回15分間56℃で洗浄し、室温に戻し、蒸留水で洗浄し、迅速に60%および95%エタノールに移した。33P−dATP標識切片をβマックスオートラジオグラフィーフィルム(Amersham)に併置した。フィルムを2ヶ月露光し、KodakLX24で現像し、KodakAL4で定着させた。オートラジオグラフィーフィルムはUMAXパワールック3000スキャナー(Umax Technologies, Inc., Dallas, Texas, USA)を用いてスキャニングし、アドビフォトショップ5.5ソフトウエア(Adobe, Inc., San Jose, CA, USA)を用いて処理した。
【0123】
ウエスタンブロット:成熟海馬前駆細胞をcm2当たり2x104個の細胞密度でポリオルニチン(PORN)/ラミニンコーティングプレート上にプレーティングした。細胞を1%プロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma)を含有する冷RIPA緩衝液で溶解し、4℃で5分間12,000gで遠心分離した。上澄みの蛋白質濃度をローリー法48で分析した。ウエスタンブロットはProtean Cell装置(Biorad, CA, USA)を使用しながら20mAで2〜3時間泳動したポリアクリルアミドゲル(10%分離ゲル、pH8.8および4%スタッキングゲル、pH6.8、0.1%SDS中)を用いて実施した。15μg蛋白質およびラット血清を用いた陰性対照の試料をゲルに負荷した。蛋白質をPVDF膜(イモビロン−P,Millipore, Bedford, MA)に80mAで一夜転写した。膜をPBSで洗浄し、1時間5%乳蛋白質でブロッキングし、次に一夜5%乳蛋白質中に希釈した一次ウサギGIP受容体(1:500)抗体と共にインキュベートした。一次抗体を用いない対照実験も行った。PBS−Tで洗浄後、膜を二次抗体:HRPコンジュゲートロバ抗ウサギ(1:1000;Amersham)中でインキュベートした。PBS−Tで洗浄後、膜をケミルミネセンス基質(Boehringer-Mannheim GmBH)で処理し、フィルム上に記録した。
【0124】
結果
培養成熟海馬前駆細胞のGIP受容体の存在について分析することにより、これらの細胞がGIPに応答する能力を有するかどうか調べた。RT−PCRの結果によれば、これらの細胞におけるGIP受容体遺伝子の発現が明らかになった(図3a参照)。海馬組織におけるGIP受容体遺伝子の発現もまた他の文献15に従って観察した。GIP受容体遺伝子の発現は線維芽細胞成長因子−2(FGF−2)と共に培養した細胞において最も高値であった。FGF−2はこれらの細胞の増殖物質であることが良く知られている。GIP受容体遺伝子の発現は細胞を分化させるFGF−2除去の後には低減した。GIP受容体mRNA発現もまた2種のオリゴヌクレオチドプローブを用いた脳切片のin situハイブリダイゼーションにより検討したが、これにより、海馬顆粒細胞層における発現が弱いながら確認された(図3b参照)。培養成熟海馬前駆細胞中のGIP受容体の存在を調べるために、GIP受容体抗体を用いたこれらの細胞の免疫細胞学的染色を図3cに示す通り実施した。GIP受容体およびネスチン、ニューロン前駆細胞のマーカー、の同時局在は、図3dに示す通り未分化の前駆細胞中に受容体が存在するが、より成熟したニューロンマーカー、例えばカルビンジン、Map−2abおよびベータチュブリンとの同時局在もまた観察されたことを示している(図3e参照)。このことは、GIP受容体が未分化細胞にのみ限定されるわけではないことを示している。培養前駆細胞中のGIP受容体の存在もまたウエスタンブロットを用いて観察し、その際、約70kDaのバンドが図3fに示す通り観察された。脳切片内のGIP受容体の免疫組織化学的検出によれば、全海馬顆粒細胞層(図3g〜i参照)における発現およびBrdUとの同時局在が明らかになり、ここでもまた、GIP受容体が未成熟細胞内にのみ位置するものではないことが示された(図3j参照)。即ち、脳の神経形成領域における細胞は生理学的条件下でGIPを生産し、海馬前駆細胞はGIP受容体を発現し、GIPが前駆細胞の増殖の特徴に影響する可能性があることを示唆している。
【実施例4】
【0125】
培養成熟海馬前駆細胞においてGIPは増殖を増大させる。
本実施例は前駆細胞増殖の増大したレベルに伴って海馬GIP遺伝子発現がアップレギュレートされること、および、前駆細胞の近接部においてDG中にGIPが存在することを明らかにするものである。
【0126】
方法
増殖試験。海馬前駆細胞をヒトFGF−2(20ng/ml)を含有する培地中に24穴プレート上で0.2x104細胞/cm2で播種し、48時間生育させた。FGF−2非存在下で更に48時間生育させた後、細胞を種々の濃度のブタGIP(Sigma)、FGF−2単独またはGIP(1nM)およびFGF−2両方の組み合わせと共に48時間インキュベートした。細胞増殖試験はCyQUANT細胞増殖キット(Molecular Probes, Eugene, OR)およびGENiosマイクロプレートリーダー(TECAN Austria GmbH, Grodig, Austria)を用いて、製造元の取扱説明書に従って実施した。
【0127】
チミジン試験。海馬前駆細胞を培地中48穴プレート上で0.5x104細胞/cm2で播種し、48時間生育させた。次に細胞をメチル−[3H]−チミジンで標識し、24時間GIP(1nM)またはFGF−2(20ng/ml)と共にインキュベートした。細胞を0.4M NaOH中で溶解し、シンチレーションバイアルに移し、0.4MHClと混合し、シンチレーションスペクトル分析によりDNA合成について調べた。各実験の平均は4つの異なる培養ウェルから計算し、各実験は12回実施した。
【0128】
結果
結果は、前駆細胞増殖の増大したレベルに伴って海馬GIP遺伝子発現がアップレギュレートされること、および、前駆細胞の近接部においてDG中にGIPが存在することを示している。前駆細胞はGIP受容体を次々と発現し、これによりペプチドに応答することができる。その後の試験はニューロン前駆細胞の増殖の調節にGIPが関与しているかどうかを調べるために設定した。これは市販の増殖試験を用いて実施できた。培養成熟海馬前駆細胞を種々の濃度の合成ブタGIPと共にインキュベートし、対照と比較した。GIPは1pM〜0.1μMの用量で用量依存的な態様で細胞増殖速度を増大させ、図4aに示す通り顕著な増大をもたらした。最大の作用は1nMのGIP濃度で達成された(対照と比較して74.5±14.4%の増大;n=8)が、0.1pMでは増殖作用は無かった。細胞はまたFGF−2(20ng/ml)単独、および、GIP(1nM)とFGF−2(20ng/ml)との組み合わせで処置した。FGF−2単独では対照と比較して112.3±20%(n=4)の増大がもたらされた。実験開始時において、約6x103個の細胞をウェルに播種し、実験終了時には、FGF非存在の対照ウェル中には約1.5x105個、FGF含有ウェルには3x105個、GIP含有ウェルには2.5x105個の細胞が存在していた。FGF−2に加えてGIPと共に細胞をインキュベートした場合、増殖に対する相乗効果が観察され、細胞生育の増大は対照と比較して171.8%±16.1%(n=8)であった(図4b参照)。これらの実験によればGIPはFGF−2の増殖作用の半分より僅かに高い作用を有することが分かる。この結果はまた、メチル−[3H]−チミジン取り込み試験を用いた場合にも確認され、その際、1nMのGIPは対照と比較して32.4±3.3%(n=12)、FGF−2は60.1±7.1%(n=12)チミジン取り込みを増大させた。実際、GIPは培養成熟海馬前駆細胞において増殖に対して作用する。
【実施例5】
【0129】
GIPは培養成熟海馬前駆細胞における細胞死の速度に影響しない。
方法
Apop−Tag。海馬前駆細胞を1x104細胞/cm2でカバーガラスに播種し、増殖試験と同様の方法で処置し、GIP(1nM)またはFGF−2(20ng/ml)と共にインキュベートした。細胞を固定し、ApopTagキットユーザーマニュアル(ApopTagS160ダイレクト、Intergene Company, Purchase, NY,USA)に従ってアポトーシスに関して染色した。TdT酵素無添加の陰性対照、並びに、H22(100μMおよび1mM)およびDNaseI(1μg/ml)を添加した陽性対照も検討した。最終洗浄工程において、細胞を核染料ビスベンズイミド(Hoechst33258, Sigma)と共に30分間インキュベートした。アポトーシスまたは死滅細胞は核内の緑色蛍光により識別し、ヘキスト核染料を用いて細胞の総数を判別した。4回の異なる実験から、実験当たり3枚のカバーガラスを染色した。陽性細胞は各カバーガラス中の6非重複視野中に系統的に観察される細胞1000〜3000個の免疫反応性を評点することにより定量した。
【0130】
LDH活性。死滅中の細胞からのラクテートデヒドロゲナーゼ(LDH)の放出を通常の光学分析的方法を用いて測定した(Dept. of Clinical Chemistry, Sahlgrenska University Hospital, Sweden)。細胞培養用の培地をApopTag染色のために播種された培養ウェルから収集した(上記参照)。各実験の平均を3個の異なる培養ウェルから計算し、各実験は4回実施した。試験の変動係数は1.7%であり、試験の標準曲線は0.1〜20μkat/dm3の間で酵素活性と線形であった。
【0131】
結果
GIPが有糸分裂促進作用ではなくむしろ生存作用を有するのかを検討するために、死滅細胞検出のためのApopTagキットを用いた。培養成熟海馬前駆細胞を増殖実験と同様の方法で処置し、最終日に固定した。陽性対照としてDNaseI処置(1μg/ml)を固定化の後10分間使用するか、固定化の前30分間、100μMおよび1mMのH22を使用して細胞死を誘導した。この処置は、免疫蛍光により判断したところ、大部分の細胞の細胞死を誘導した。FGF−2(20ng/ml)またはGIP(1nM)非存在下の対照実験における細胞死は3.31±0.67%であり、GIP処置細胞における細胞死とは統計学的な差は無かった。FGF−2は細胞死に対する弱い低減作用を有しており、死細胞はわずか0.96±0.21%であった。各実験において、死滅中の細胞から放出されたラクテートデヒドロゲナーゼ(LDH)の細胞外レベルも測定した。結果によれば、対照とGIPまたはFGF−2処置細胞との間には統計学的な差は無く、GIPがこれらの細胞の生存性には影響しないが増殖を刺激する作用を有する可能性が最も高いという推定を確認するものであった。
【実施例6】
【0132】
成熟ラットDGにおいてGIPは増殖を増大させる。
本実験はGIPが海馬前駆細胞の増殖に対する作用をその天然の環境において有することを示すものである。
【0133】
方法
脳室内GIP注入。成体雄性SDラット(260〜280g;B&K Universal, Sweden)に挿管し、O2/N2O混合物(30:70)中イソフルランで換気した。浸透圧ポンプ(Alzet脳注入キットIIおよびAlzet2001浸透圧ポンプ、Alza Scientific Products, Palo Alto, CA)に連結した注入カニューレを第3脳室(頭蓋表面から5mm下部の正中線に沿ったブレグマ後方0.3mm)内に設置した。各ラットにはGIP(1.92nmol/日;n=5)または溶媒(0.1MPBS;n=6)のいずれかを5日間注入(1μl/hr)し、最終日に屠殺した。全動物にブロモデオキシウリジン(BrdU;50mg/kg体重;Boehringer Mannheim;Scandinavia AB, Bromma,Sweden) を毎日単回腹腔内注射した。
【0134】
免疫組織化学および細胞計数。脳を切片化し、以前に報告されている通り11マウス抗BrdU一次抗体(1:400;Boeringer Mannheim)およびビオチニル化ウマ抗マウスIgG(1:125)二次抗体(Vector Laboratories, Burlingame, CA)を用いてBrdUについて染色した。各動物に付き、顆粒下層を含む顆粒細胞層中のBrdU陽性細胞の総数およびその相当する組織容量を、240μm間隔で採取したイムノペルオキシダーゼ染色した12枚の厚み40μmの冠状切片において測定した。断面積はデジタル画像化システム(Nikon,Sweden)に連結したCCDカメラを用いて求めた。結果を組織容量あたりのBrdU陽性細胞として表示する。
【0135】
統計学的分析。群間の比較は、適宜試験中を通じて、一元配置分散分析、次いでフィッシャーのpost hoc検定を用いて行った。p値<0.05を統計学的に有意とみなした。全ての数値は平均±SEMで表示する。
【0136】
結果
In vivo の成熟DGにおける細胞増殖をGIPが増大させるか否かを確認するために、GIPの長期i.c.v.注入後のラット顆粒細胞下層中に新しく形成された細胞の数を分析した。成体雄性SDラットに対し、5日間、毎日のBrdU注射と組み合わせて、GIPまたは溶媒を注射し、分裂中の細胞を標識した。成熟顆粒細胞下層内の新しく発生した細胞の数は、DGにおけるBrdU陽性細胞の数の立体的分析により求めた(図4c〜d参照)。GIP処置を受けた動物においては、顆粒細胞層中のBrdU+細胞の数は27969±5795細胞/mm3(n=5)であったのに対し、PBS投与動物では14986±1831細胞/mm3(n=6)であり、これは図4eに示される通りGIP処置動物における86%(p<0.05)増加に相当している。この実験はGIPがその天然の環境において海馬前駆細胞の増殖に対する作用も有することも示している。成熟細胞および前駆細胞の両方がGIP受容体を発現するが、GIPそのものは図4fに示される通り全GCL中の成熟顆粒細胞により生産される。前駆細胞はGIPが生産される環境に位置し、細胞増殖の増大によりペプチドに応答する。成熟顆粒細胞に対するGIPの作用もまた検討しなければならない。
【0137】
実施例1〜6の結果の考察
CNS発達中の神経前駆細胞の増殖および分化の調節は広範に研究されている29ものの、成熟神経形成に影響する因子に関する知見はより限定されている。成熟脳におけるニューロン前駆細胞の増殖および漸増に影響する手掛りおよび刺激の検討は神経形成と関連した細胞の多様性および考えられる病理学的な状態を更に理解するために重要である。本発明においては、増殖ペプチドとしてのGIPの発見を説明するのみならず、哺乳類脳におけるその存在も初めて明らかにした。
【0138】
本発明においては、成体哺乳類における活動性の増殖および神経形成の領域である1,4,10海馬顆粒細胞層におけるGIPの発現が観察された。更にまた、GIPが実際に海馬前駆細胞の細胞増殖に影響するという説得力のある証拠が提示された。GIPは、歯状回中の前駆細胞増殖のより高い速度を本来示すラットの群において、アップレギュレートされた海馬遺伝子発現を示す場合に初めて検出された。このことは後に、半定量的PCRおよび顆粒細胞層のGIP免疫反応性のレベルの比較の両方により確認された。海馬前駆細胞はGIP受容体遺伝子および蛋白質を培養系およびin vivo の両方で発現することが示された。成熟ラット海馬において、前駆細胞はGIP生産細胞に近接して位置し、恐らくはペプチドに曝露される(図4f)。GIPが前駆細胞の増殖に影響するかもしれないという仮説は合成GIPの投与後の培養において確認された。GIPは培養成熟海馬前駆細胞の増殖速度を用量依存的態様で増大させた。更にまた、培養細胞中のGIP受容体RNAの発現はより分化した形態への成熟が許された細胞よりも未分化の前駆細胞においてより高値であり、細胞が分化する際、受容体はダウンレギュレートされることを示唆しており、ここでもまた、増殖の刺激におけるGIPの役割が指摘される。興味深いことに、GIPおよびFGF−2は培養前駆細胞の増殖に関して、相乗作用的に機能した。このことは恐らくはインスリン様成長因子I受容体に対するFGF−2の作用と同様に、FGF−2により誘導されたGIP受容体RNAのアップレギュレーションにより、GIPに対する細胞の応答性が増大することにより説明できると考えられる30。更にまた、成体ラットへのGIPのi.c.v.注入はBrdU取り込みにより検出される海馬の顆粒細胞層における細胞の増殖の有意な増大をもたらし、これにより、培養時と同様、in vivo においてもこれらの細胞の増殖にGIPが影響することが示された。
【0139】
その結果は休止期の副腎腫瘍細胞31における[3H]チミジン取り込みの増大により示される増殖を誘導するGIPの能力、およびβ(INS−1)細胞32に対する成長因子として機能することと合致している。これは非神経起源の細胞型においても有糸分裂促進的にGIPが作用するということを示している。実際に神経ペプチドのこのファミリーの他のメンバーは成育刺激の特性を有する24。PACAPは発達中の小脳由来の培養顆粒細胞33および交感神経芽細胞34,35において増殖を増大することが報告されているが、発達中の大脳皮質においては前駆細胞の有糸分裂を抑制することもわかっている38。更にまた、VIPは胎児の脳の発達中の強力な有糸分裂促進物質として機能し37,38、GHRHはソマトトロピン生成細胞の増殖を刺激し39,40、GLP−2は腸における細胞増殖を刺激する41,42。GIPの末梢作用の多くが同化過程として観察でき21,22、これは、ニューロン組織では、GIPの生産および分泌が、消失細胞の代替としての新細胞の合成により脳内のニューロン細胞の持続的なターンオーバーに寄与することでニューロン成分を維持する開始シグナルであるという考えに一致する。
【0140】
胃腸調節ポリペプチドのセクレチン−グルカゴンファミリーの他のメンバーの発現は脳において記載されているが24、脳内のGIPmRNAを検出する以前の試みは成功していない15,16。GIPの検出がこれまで成功していない理由は不明であるが、本発明の試験ではその存在に関する決定的な証拠が得られた。
【0141】
現在の試験が初めて成熟ラット脳におけるGIP発現の存在およびGIP免疫反応性を説明している。GIPは脳内に発見されるべき胃腸ペプチドのセレクチン−グルカゴンファミリーの群の最後のものである。更にまた、GIPは海馬前駆細胞増殖に影響し、従って成熟哺乳類脳における神経前駆細胞の増殖のための重要な調節分子であることも示された。この知見は異なる起源の細胞型に関してGIPが潜在的な同化および成長刺激因子としても機能するかどうかの検討を促すものである。
【実施例7】
【0142】
記憶/学習に対するGIPの作用
方法
成体雄性Sprague-Dawleyラット(260〜280g;B&K Universal, Sweden)に挿管し、O2/N2O混合物(30:70)中イソフルランで換気した。浸透圧ポンプ(Alzet脳注入キットIIおよびAlzet2001浸透圧ポンプ、Alza Scientific Products, Palo Alto, CA)に連結した注入カニューレを第3脳室(頭蓋表面から5mm下部の正中線に沿ったブレグマ後方0.3mm)内に設置した。各ラットにはGIP(1.92nmol/日;n=15)または溶媒(0.1MPBS;n=15)のいずれかを1週間注入(1μl/hr)し、最初の5日間は更にブロモデオキシウリジン(BrdU;50mg/kg体重;Boehringer Mannheim; Scandinavia AB, Bromma, Sweden)も毎日単回腹腔内注射した。次にラットを麻酔し、ポンプをはずし、ラットを20日間回復させた。次にラットを4日連続でビデオ追跡システムを有するMorriz水迷路において試験した。プラットホームに到達するまでの時間(潜時)および遊泳路長をモニタリングした。退避プラットホームは固定された位置において水面下1cmに隠蔽した。乾燥粉ミルクを添加することにより水は不透明とし、試験期間中を通じて22℃の一定温度に維持した。各ラットを各日4試行で試験した。試行はプールの周囲に等間隔に置かれた4箇所の出発地点の1箇所において手作業でラットを水中に入れることにより構成されていた。4試行の1ブロックは出発地点の各々から1試行を含むものとした。各試行は45秒継続した。45秒以内に隠蔽されたプラットホームを発見できなかったラットは45秒潜時を有するものとし、プラットホーム上においてそこに15秒間滞在させた。
【実施例8】
【0143】
体重増加に対するGIPの作用
方法
ラット(雄性Sprague-Dawley)にGIP(6匹、1.92nmol/日)または対照溶液としてリン酸塩緩衝食塩水(PBS)(7匹)を脳中の脳室内に浸透圧ミニポンプを用いて与えた。ラットは5日間物質を投与後、屠殺した。各ラットの体重を記録し、5日間の総体重増加を計算した。
【0144】
結果
ラットは通常は約5g/日の体重増加を示す。PBSを与えたラットは5日間で平均28.5g増加したのに対し、GIPを与えたラットは僅か17.9g増加、即ちPBS処置したラットで観察された体重増加の63%であった。結果は図5に示し、GIP処置ラットにおける低い体重増加を示している。


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【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】図1は成熟ラット海馬中のGIPmRNAの発現を示し;(a)マイクロアレイ法の模式図である。矢印は3つの群のアレイ上のGIPmRNAを示す遺伝子ドットを示し、相当する遺伝子ドットはパネルの右下において拡大し;(b)海馬中のGIP遺伝子のPCR分析(レーン2)は220bpに相当するバンドを示し、小腸のmRNAにおける陽性対照も同様である(レーン4)。RPL27Aの発現を内部標準として用いた。陰性対照はcDNA非存在(レーン1)またはRT非存在下海馬mRNA(レーン3)であり;(c)GIPmRNAに対するプローブを用いたin situハイブリダイゼーションによれば歯状回の顆粒細胞層並びにCA1−CA3領域における弱いが特異的な局在化を示しており;(d)SHR雄性、SD雄性およびSD雌性由来の海馬mRNAの半定量的PCR比較はマイクロアレイと同様の発現パターンを示している。30サイクルのみを用いた場合には、GIPのバンドはSD雌性中に検出できなかった。
【図2】図2は成熟海馬のGIP免疫反応性顆粒細胞ニューロンの存在を示しており;(a)顆粒細胞ニューロンにおける細胞質染色としてGIPの免疫反応性を検出したことを示しており;(b)海馬顆粒細胞層におけるGIP免疫反応性(緑)およびカルビンジン(赤)の同時局在を示し;(c)GIP(赤)およびNeuN(緑)の同時局在を示し;(d)顆粒下層がここではBrdU免疫反応性(緑)により検出された前駆細胞を含むことを示しており、顆粒細胞はカルビンジン(赤)で染色されている。門細胞領域に面する顆粒細胞層の内部の部分はGIP陽性であるのみであり、カルビンジン陽性ではなく;(e)SHR雄性、SD雄性およびSD雌性の脳切片における免疫反応性のレベルの比較;(f)SHR雄性からの脳切片の免疫反応性;(g)SD雄性からの脳切片の免疫反応性;(h)SD雌性からの脳切片の免疫反応性である。目盛りバーは、a〜dは50μm、f〜hは100μmである。
【図3】図3はGIP受容体遺伝子が成熟海馬組織中の前駆細胞および成熟ニューロンの両方に存在することを示しており;(a)GIP受容体のPCR分析によれば培養成熟海馬前駆細胞から単離されたmRNA中の540bpに相当するバンドが明らかになった。レーン1(+)はFGF−2と共に培養されており、従って未分化状態に維持されている細胞からのRNAを示す。細胞はまたFGF−2の除去により4日間、6日間、10日間および14日間(レーン2〜5)分化させた。海馬からのRNAを陽性対照(レーンH)として用い、脾臓のmRNA(レーンS)を陰性対照として用いた。RPL27Aを内部標準として用い;(b)GIP受容体に対するプローブを用いたin situハイブリダイゼーションは歯状回中、特に顆粒細胞層中の、弱いが特異的な発現を示しており;(c)培養成熟海馬前駆細胞はGIP受容体に対する免疫反応性を示し;(d)GIP受容体(赤)は未分化ニューロン細胞をマークするネスチン(緑)を発現する細胞中に検出されたことを示しており;(e)Map2ab(緑)として、より成熟したマーカーを発現する細胞においてもGIP受容体(赤)が観察されたことを示しており;(f)海馬蛋白質(H)および成熟海馬前駆細胞からの蛋白質(P)両方のウエスタンブロットを示している。70kDa、即ちGIP受容体のサイズに相当するバンドが観察され;(g)NeuN(緑)でマークされた顆粒細胞層;(h)顆粒細胞層はまたGIP受容体(赤)をも発現する細胞も含有しており;(i)NeuNおよびGIP受容体の同時局在の複合像を示し;(j)ここではBrdU(緑)およびGIP受容体(赤)の同時局在を介して明らかにされる通り、顆粒細胞層内の新生した細胞もまたGIP受容体を発現することを示している。目盛りバーは、(j)では10μm、それ以外は25μmである。
【図4】図4はGIPが培養物中およびin vivo の両方において成熟海馬前駆細胞の増殖を誘導することを示しており;(a)48時間GIPの種々の濃度と共にインキュベートした後の培養成熟海馬前駆細胞におけるDNAの量を示しており;(b)FGF−2(20ng/ml)およびGIP(1nM)の組み合わせで処置した細胞におけるDNAの量を示している。細胞は陰性対照としてFGF−2非存在下で培養し、100%の基礎量とした。DNA含量はFGF−2非存在下に生育させた細胞から得た含量のパーセントとして計算する。数値は8回(GIPおよびGIP+FGF−2)または4回(FGF−2)の異なる実験の平均±SEMである(各実験は4種の異なる培養ウェルの平均を示す)。*P<0.05;**P<0.01;***P<0.001(一元配置分散分析、次いでフィッシャーのpost hoc検定);(c)PBSをi.c.v.投与されたラットにおけるBrdUに対する免疫組織化学的に染色された脳切片を示し;(d)GIPをi.c.v.投与されたラットにおけるBrdUに対する免疫組織化学的に染色された脳切片を示し;(e)立体的に測定された顆粒細胞中のBrdU陽性細胞の密度(組織容量の立方ミリメートル当たりの細胞)を示す。成熟ラット海馬中のBrdU陽性細胞の定量によれば、GIP処置動物(n=5)がPBS処置動物(0.1M;n=6)よりも86%高値のBrdU免疫反応性細胞を示すことが明らかであった。平均±SEMは*p<0.05(一元配置分散分析、次いでフィッシャーのpost hoc);(f)は成熟細胞並びに前駆細胞の両方がGIP受容体を発現したが、GIPそのものは全GCL中の成熟顆粒細胞により生産されることを示している。前駆細胞はGIPが生産される環境に位置し、細胞増殖の増大によりペプチドに応答する。目盛りバーは100μmである。
【図5】図5はラットにおける体重増加に対するGIPの作用を示す。
【配列表】





【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞の異常消失によって引き起こされる、またはそれを特徴とする状態の予防および/または治療用医薬組成物の製造のための、in vitro 増殖試験において試験した場合に同じ条件下で同じ試験において試験すると配列番号2の活性の少なくとも約50%に相当する活性を有する化合物の使用。
【請求項2】
細胞の異常消失がニューロン細胞の変性、または星状細胞もしくはオリゴデンドロサイトの消失である、請求項1記載の使用。
【請求項3】
細胞の異常消失が外傷性、窒息性、低酸素性、虚血性、毒性、感染性、変性性または代謝性の傷害により生じるものである、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
状態がパーキンソン病、アルツハイマー病、脳卒中、多発性硬化症、窒息または低酸素、心疾患、心筋梗塞、関節症または関節炎、皮膚疾患および熱傷性傷害、糖尿病、肝疾患または肝不全、筋肉の疾患または損傷、すい臓の機能不全、ならびにプリオンにより引き起こされる疾患、例えばクロイツフェルト−ヤコブ病、スクレイピーおよびウシ海綿状脳炎(BSE)を含む群から選択されるものである、請求項1〜3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
細胞の異常消失が中枢または末梢の神経系に対する傷害により生じるものである、前記請求項のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
状態がパーキンソン病、アルツハイマー病、脳卒中、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、窒息または低酸素、癲癇ならびにプリオンにより引き起こされる疾患、例えばクロイツフェルト−ヤコブ病、スクレイピーおよびウシ海綿状脳炎(BSE)よりなる群から選択されるものである、請求項4記載の使用。
【請求項7】
化合物が配列番号2の活性の少なくとも約55%、例えば少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約92%、少なくとも約94%、少なくとも約96%、少なくとも約98%または少なくとも約99%に相当する活性を有する、前記請求項のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
化合物が配列番号2の活性の少なくとも約100%、例えば少なくとも約110%、少なくとも約120%、少なくとも約130%、少なくとも約140%、少なくとも約150%、少なくとも約160%、少なくとも約170%、少なくとも約180%、少なくとも約190%または少なくとも約200%に相当する活性を有する、前記請求項のいずれかに記載の使用。
【請求項9】
化合物が配列番号2と同一である、前記請求項のいずれかに記載の使用。
【請求項10】
化合物が配列番号2に対し、少なくとも約75%、例えば少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%に相当する同一性を有する、請求項1〜8のいずれかに記載の使用。
【請求項11】
化合物が配列番号2と同様である、請求項1〜8または10のいずれかに記載の使用。
【請求項12】
化合物が配列番号2に対し、少なくとも約75%、例えば少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%に相当する同様性を有する、請求項1〜8または10のいずれかに記載の使用。
【請求項13】
化合物が配列番号2、その類縁体またはそのフラグメントである、請求項1〜8のいずれか記載の使用。
【請求項14】
in vitro 増殖試験において試験した場合に同じ条件下で同じ試験において試験すると配列番号2の活性の少なくとも約50%に相当する活性を有するが、配列番号2または塩基性線維芽細胞成長因子bFGFではない化合物。
【請求項15】
医薬用途のための請求項14記載の化合物。
【請求項16】
細胞の異常消失により引き起こされる状態の予防および/または治療における使用のための、請求項14記載の化合物。
【請求項17】
細胞の増殖亢進により引き起こされる、またはそれを特徴とする状態の予防および/または治療のためのGIPに対するアンタゴニストの使用。
【請求項18】
細胞の増殖亢進により引き起こされる、またはそれを特徴とする状態の予防および/または治療のためのGIPに対する抗体の使用。
【請求項19】
細胞の増殖亢進により引き起こされる、またはそれを特徴とする状態の予防および/または治療用医薬組成物製造のためのGIP受容体に対するアンタゴニストの使用。
【請求項20】
状態が新生物または癌の疾患、例えば黒色腫、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、肺癌、肝癌、網膜芽細胞腫、星状細胞腫、神経膠芽細胞腫、白血病、神経芽細胞腫、前新生物病変、例えば腺腫性過形成および前立腺上皮内新生物、上皮内癌、歯肉、舌、頭部、頸部、乳房、すい臓、前立腺、腎臓、肝臓、骨、甲状腺、精巣、卵巣、中皮、頸部、胃腸管、リンパ腫、脳、結腸、肉腫および膀胱の癌から選択される、請求項17〜19のいずれかに記載の使用。
【請求項21】
状態が腫瘍関連疾患、慢性関節リウマチ、炎症性腸疾患、変形性関節症、平滑筋腫、腺腫、脂肪腫、血管腫、腺維腫、血管閉塞、再狭窄、アテローム性動脈硬化症、口腔毛髪状白斑、良性前立腺過形成または乾癬から選択されるものである、請求項17〜19のいずれかに記載の使用。
【請求項22】
体重過剰および/または肥満の予防または治療用医薬組成物の製造において、ラットに化合物を脳において脳室内投与し、その後各ラットの体重を記録する実施例9に記載の試験において試験すると、対照として配列番号2または配列番号4を有する化合物を用いて同じ条件下で同じ試験において試験された場合の配列番号2または配列番号4の体重増加低減における活性の少なくとも約50%に相当する活性を有する化合物の使用。
【請求項23】
医薬組成物が血液脳関門を通過する化合物の輸送を可能にする担体を更に含む、請求項22記載の化合物の使用。
【請求項24】
化合物が配列番号2または配列番号4の活性の少なくとも約55%、例えば少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約92%、少なくとも約94%、少なくとも約96%、少なくとも約98%または少なくとも約99%に相当する活性を有する、請求項22または23に記載の使用。
【請求項25】
化合物が配列番号2または4の活性の少なくとも約100%、例えば少なくとも約110%、少なくとも約120%、少なくとも約130%、少なくとも約140%、少なくとも約150%、少なくとも約160%、少なくとも約170%、少なくとも約180%、少なくとも約190%または少なくとも約200%に相当する活性を有する、請求項22〜24のいずれかに記載の使用。
【請求項26】
化合物が配列番号2または配列番号4と同一である、請求項22〜25のいずれかに記載の使用。
【請求項27】
化合物が配列番号2または配列番号4に対し、少なくとも約75%、例えば少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%に相当する同一性を有する、請求項22〜25のいずれかに記載の使用。
【請求項28】
化合物が配列番号2または配列番号4と同様である、請求項22〜25または27のいずれかに記載の使用。
【請求項29】
化合物が配列番号2または配列番号4に対し、少なくとも約75%、例えば少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%に相当する同様性を有する、請求項22〜25または27のいずれかに記載の使用。
【請求項30】
化合物が配列番号2もしくは配列番号4、その類縁体またはそのフラグメントである、請求項22〜29のいずれかに記載の使用。
【請求項31】
ラットに化合物または配列番号2もしくは配列番号4を有する化合物を脳において脳室内投与し、その後各ラットの体重を記録する実施例9に記載の試験において試験した場合に、同じ条件下で同じ試験において試験すると配列番号2または配列番号4の体重増加低減における活性の少なくとも約50%に相当する活性を有する化合物。
【請求項32】
医薬用途のための請求項31記載の化合物。
【請求項33】
体重過剰および/または肥満の予防および/または治療における使用のための、請求項32記載の化合物。
【請求項34】
方法が脳室内経路により請求項31〜33のいずれかに記載の化合物を含有する医薬組成物を投与することを含む、体重過剰および/または肥満の予防および/または治療の方法。
【請求項35】
方法が請求項31〜33のいずれかに記載の化合物を含有する組成物を投与することを含む、体重減少のための美容上の方法。
【請求項36】
異常に低い体重により引き起こされる、またはこれを特徴とする状態の予防および/または治療用医薬組成物製造のためのGIPに対するアンタゴニストの使用。
【請求項37】
異常に低い体重により引き起こされる、またはこれを特徴とする状態の予防および/または治療のための、請求項36記載のGIPに対する抗体の使用。
【請求項38】
異常に低い体重により引き起こされる、またはこれを特徴とする状態の予防および/または治療用医薬組成物製造のためのGIP受容体に対するアンタゴニストの使用。
【請求項39】
状態が食欲不振、悪液質、AIDSまたは癌に関連する消耗、ならびに、新生児および小児における成長障害症候群から選択されるものである、請求項36〜38のいずれかに記載の使用。
【請求項40】
薬学的に許容しうる1種以上の賦形剤と共に請求項14〜16または31〜33のいずれかに記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項41】
鬱病および/または気分障害の予防および/または治療用医薬組成物製造のための、配列番号2またはその類縁体、機能的類縁体もしくはそのフラグメントを有する化合物の使用。
【請求項42】
哺乳類の脳内のGIPの異常なレベルを測定するための方法。
【請求項43】
脳内のGIPの異常な量を特徴とする疾患の診断、疾患モニタリングおよび/または治療モニタリングのための、請求項42記載の方法。
【請求項44】
被検者の脳内GIPレベルが健常者と比べて低い、請求項42または43に記載の方法。
【請求項45】
被検者の脳内GIPレベルが健常者と比べて高い、請求項42または43に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−502100(P2006−502100A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−510816(P2004−510816)
【出願日】平成15年6月11日(2003.6.11)
【国際出願番号】PCT/EP2003/006207
【国際公開番号】WO2003/103697
【国際公開日】平成15年12月18日(2003.12.18)
【出願人】(000000217)エーザイ株式会社 (102)
【Fターム(参考)】