説明

細胞増殖阻害剤及び抗癌剤

【課題】新規化合物若しくはその薬理学的に許容される塩、及びそれらを有効成分として含有する細胞増殖阻害剤及び抗癌剤の提供。
【解決手段】式(I)


[式中、Aは水素原子、アルキル基、水酸基、−COOR(Rは水素原子又はシクロアルキルで置換されてもよいアルキル基を示す)、−CONR10(R及びR10はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を示す)又はハロゲンであり、qは1〜4の整数であり、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基であり、Rはアルキル基又はハロゲンであり、Rは特定のベンゾチオフェンを示す]で表される化合物又はその薬理学的に許容される塩。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規化合物又はその薬理学的に許容される塩、それらを有効成分として含有する細胞増殖阻害剤及び抗癌剤に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1及び非特許文献2には、各々ベンゾチオフェン系化合物が記されている。しかしながら、これらには下記式(I)で表される本発明化合物は具体的には開示されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Journal of Organic Chemistry(1979)44(16)2887−2892
【非特許文献2】Chemical & Pharmaceutical Bulletein(1982)30(3)899−902
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、新規化合物又はその薬理学的に許容される塩、それらを有効成分として含有する細胞増殖阻害剤及び抗癌剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、細胞増殖阻害活性を有する新規化合物を見出した。該新規化合物から細胞増殖阻害活性剤及び抗癌剤として有用である化合物を種々検討した結果、本発明を完成するに至った。即ち本発明は、式(I);
【化1】

[式中、Aは水素原子、アルキル基、水酸基、−COOR(Rは水素原子又はシクロアルキルで置換されてもよいアルキル基を示す)、−CONR10(R及びR10はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を示す)又はハロゲンであり、qは1〜4の整数であり、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基であり、Rはアルキル基又はハロゲンであり、
は式(II−1)又は(II−2);
【化2】

(式中、R及びRは前述の通りであり、R11はアルキル基又はハロゲンであり、mは1〜3の整数である)]で表される化合物又はその薬理学的に許容される塩、それらを有効成分として含有する細胞阻害活性剤及び抗癌剤に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、新規化合物又はその薬理学的に許容される塩、それらを有効成分として含有する細胞増殖阻害剤及び抗癌剤を提供することできる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
次に、本発明の式(I)の化合物のうち、望ましい実施形態のいくつかを記載するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、前記式(I)の化合物には、後記式(I
−a)、(I−1)、(I−2)及び(I−3)の化合物が含まれる。
式(I)中に含まれるアルキルとしてはC1-6アルキルが望ましく、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル等の直鎖又は分枝状のものが挙げられる。
式(I)中に含まれるシクロアルキルとしては、C3-6シクロアルキルが望ましく、例えばシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。
式(I)中に含まれるハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素が用いられ、望ましくは例えばフッ素、塩素又は臭素が用いられる。
前記式(I)の化合物又はその薬理学的に許容される塩のうち、式(I−a);
【化3】

[式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、水酸基、−COOR(Rは水素原子又はシクロアルキルで置換されてもよいアルキル基を示す)又はハロゲンであり、Rは水素原子又はハロゲンであり、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基であり、Rはアルキル基又はハロゲンであり、R
式(II−1)又は(II−2);
【化4】

(式中、R及びRは前述の通りであり、R11はアルキル基又はハロゲンであり、mは1〜3の整数である)]で表される化合物又はその薬理学的に許容される塩が望ましい。
前記した式(I−a)の化合物中、以下の化合物が更に望ましい。
(1) Rが−COOR(Rはシクロアルキルで置換されてもよいアルキル基を示す)であり、Rがアルキル基又はハロゲンであり、Rが水素原子又はハロゲンである式(I−a)の化合物又はその薬理学的に許容される塩。
(2) Rが−COOR(Rはシクロアルキルで置換されてもよいアルキル基を示す)であり、Rがアルキル基であり、Rが水素原子である(1)に記載の化合物又はその薬理学的に許容される塩。
(3) Rが水素原子であり、Rが−COOR(Rはシクロアルキルで置換されてもよいアルキル基を示す)であり、Rが水素原子である(1)に記載の化合物又はその薬理学的に許容される塩。
【0008】
前記式(I)の化合物又はその塩は、公知の類似化合物の製造方法又はそれらに準じた方法によって製造できるが、以下に製法1〜3を例示する。
【0009】
【化5】


式中、nは1〜3の整数であり、A、R、R及びR11は前述の通りであり、Rはハロゲンである。Aについては、アルキル基である場合には、炭素数が1から4であることが望ましい。R12は水素原子又はシクロアルキルで置換されてもよいアルキル基である。
【0010】
製法1において、第1工程で式(III)の化合物と等モル以上のアルコールとを脱水剤を用いて反応させ式(IV)の化合物を製造し、第2工程で式(IV)の化合物と塩基を反応させたあと、更にハロゲン化剤を反応させることにより、式(I−1)の化合物を得る。
【0011】
第1工程で用いるアルコールとしては、エタノール、2−プロパノール、n−ブチルアルコール、シクロプロピルカルビノール等が挙げられる。
前記アルコールは、式(III)の化合物に対して1〜2倍モル、望ましくは1.5倍モル使用する。
第1工程で用いる脱水剤としては、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド、1,1−カルボニルジイミダゾール、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロヒル)カルボジイミド、N−クロロスクシンイミドが挙げられる。
前記脱水剤は、式(III)の化合物に対して1〜2倍モル、望ましくは1.2倍モル使用する。
第1工程の反応は必要に応じて塩基の存在下で行うことができる。塩基としては、例えば、4−ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、N,N−ジメチルアニリンなどの有機塩基;リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属の炭酸水素塩;水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウムなどのアルカリ金属の水素化物から1種又は2種以上を適宜選択することができる。
前記塩基は、式(III)の化合物に対して0.1〜0.5倍モル、望ましくは0.1倍モル使用する。
第1工程の反応は、通常0〜50℃、望ましくは10〜30℃で行い、その反応時間は、通常2〜5時間程度である。
【0012】
第2工程で用いる塩基としては、例えば、4−ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、N,N−ジメチルアニリンなどの有機塩基;リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属の炭酸水素塩;水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウムなどのアルカリ金属の水素化物;n−ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)から1種又は2種以上を適宜選択することができる。
前記塩基は、式(IV)の化合物に対して1〜1.5倍モル、望ましくは1.1倍モル使用する。
第2工程で用いるハロゲン化剤としては、1−クロロメチル−4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタンビス(テトラフルオロボレート)(一般名;F−TEDA)、N,N’−ジフルオロ−2,2’−ビピリジニウムビステトラフルオロボレート等が挙げられる。
前記ハロゲン化剤は、式(IV)の化合物に対して1〜1.5当量、望ましくは1.1当量使用する。
第2工程の反応は、通常−100〜0℃、望ましくは−78〜−20℃で行い、その反応時間は、通常0.5〜2時間程度である。
【0013】
製法1において、式(I−2)の化合物は、式(I−1)の化合物に酸を反応させることにより製造できる。
前記酸としては、塩酸、トリフルオロ酢酸を適宜選択することができる。
前記酸は、式(I−1)の化合物に対して大過剰使用する。
この反応は、通常50〜150℃、望ましくは100〜120℃で行い、その反応時間は、通常6〜12時間程度である。
【0014】
製法1の反応は、適当な溶媒の存在下で行うことができる。溶媒としては、反応に不活性な溶媒であればいずれのものでもよく、例えば、ジエチルエーテル、ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタンのようなエーテル類;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロエチレンのようなハロゲン化炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素類;アセトニトリル、プロピオニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、スルホラン、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸のような極性溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、t−ブタノールのようなアルコール類及び水から1種又は2種以上を適宜選択することができる。
製法1の反応は,必要に応じ不活性ガスの存在下で行うことができる。該不活性ガスは、例えば窒素ガス、アルゴンガスなどから適宜選択することができる。
【0015】
【化6】

式中、nは1〜3の整数であり、A、R、R及びR11は前述の通りであり、Rはハロゲンである。Aについては、アルキル基である場合には、炭素数が1から4であることが望ましい。R13はシクロアルキルで置換されてもよいアルキル基である。
【0016】
製法2において、第1工程で式(IV)の化合物と塩基を反応させて式(V)の化合物を製造し、第2工程で式(V)の化合物と酸を反応させて式(VI)の化合物を製造し、第3工程で式(VI)の化合物とアルコールとを脱水剤を用いて反応させて式(V)の化合物を製造し、第4工程で式(V)の化合物に塩基の存在下でハロゲン化剤を反応させることにより、式(I−1)の化合物を得る。
【0017】
第1工程で用いられる塩基としては、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)、n−ブチルリチウム等が挙げられる。
前記塩基は、式(IV)の化合物に対して1倍モル、望ましくは1.1倍モル使用する。
この反応は、通常−100〜0℃、望ましくは−78〜−20℃で行い、その反応時間は、通常0.5〜2時間程度である。
【0018】
第2工程で用いる酸としては、塩酸、トリフルオロ酢酸を適宜選択することができる。
前記酸は、式(V)の化合物に対して大過剰使用する。
この反応は、通常50〜150℃、望ましくは100〜120℃で行い、その反応時間は、通常6〜12時間程度である。
【0019】
第3工程で用いるアルコールとしては、エタノール、2−プロパノール、n−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、シクロプロピルカルビノール等が挙げられる。
前記アルコールは、式(VI)の化合物に対して1〜2倍モル、望ましくは1.5倍モル使用する。
第3工程で用いる脱水剤としては、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド、1,1−カルボニルジイミダゾール、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロヒル)カルボジイミドが挙げられる
前記脱水剤は、式(III)の化合物に対して1〜2倍モル、望ましくは1.2倍モル使用する。
第3工程は、必要に応じて塩基の存在下で行うことができる。塩基としては、例えば、4−ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、N,N−ジメチルアニリンなどの有機塩基;リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属の炭酸水素塩;水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウムなどのアルカリ金属の水素化物から1種又は2種以上を適宜選択することができる。
前記塩基は、式(VI)の化合物に対して0.1〜0.5倍モル、望ましくは0.5倍モル使用する。
この反応は、通常0〜50℃、望ましくは10〜30℃で行い、その反応時間は、通常2〜5時間程度である。
【0020】
第4工程で用いるハロゲン化剤としては、1−クロロメチル−4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタンビス(テトラフルオロボレート)(一般名;F−TEDA)、N,N’−ジフルオロ−2,2’−ビピリジニウムビステトラフルオロボレート、N−クロロスクシンイミド等が挙げられる。
前記ハロゲン化剤は、式(V)の化合物に対して1〜6当量、望ましくは2〜4当量使用する。
第4工程で用いる塩基としては、例えば、4−ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、N,N−ジメチルアニリンなどの有機塩基;リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属の炭酸水素塩;水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウムなどのアルカリ金属の水素化物等から1種又は2種以上を適宜選択することができる。
前記塩基は、式(VI)の化合物に対して1〜5倍モル、望ましくは2〜4倍モル使用する。
この反応は、通常0〜50℃、望ましくは10〜30℃で行い、その反応時間は、通常2〜4時間程度である。
【0021】
製法2の工程は、製法1の溶媒で使用したものが使用できる。
製法2の工程は、製法1と同じ不活性ガスが使用できる。
【0022】
【化7】

式中、nは1〜3の整数であり、A、R、R及びR11は前述の通りであり、Rはアルキル基である。Aについては、アルキル基である場合には、炭素数が1から4であることが望ましい。R13はシクロアルキルで置換されてもよいアルキル基である。
【0023】
製法3において、塩基の存在下で式(V)の化合物とハロゲン化アルキルを反応させることにより、式(I−3)の化合物を得る。
【0024】
前記ハロゲン化アルキルとしては、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル等が挙げられる。
前記ハロゲン化アルキルは、式(V)の化合物に対して2〜5倍モル、望ましくは3〜4倍モル使用する。
前記塩基としては、例えば、4−ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、N,N−ジメチルアニリンなどの有機塩基;リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属の炭酸水素塩;水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウムなどのアルカリ金属の水素化物等から1種又は2種以上を適宜選択することができる。
前記塩基は、式(V)の化合物に対して1〜2倍モル、望ましくは1〜1.5倍モル使用する。
この反応は、通常0〜100℃、望ましくは20〜60℃で行い、その反応時間は、通常2〜4時間程度である。
【0025】
製法3の反応は、製法1の溶媒で使用したものが使用できる。
製法3の反応は、製法1と同じ不活性ガスが使用できる。
【0026】
前記式(I)及び(I−a)の化合物は、細胞増殖阻害活性を有する新規な化合物であり、細胞増殖阻害剤として有効である。前記式(I)及び(I−a)の化合物を有効成分として含む抗癌剤として用いる場合、例えば前立腺癌、転移性肺癌、乳腺癌等の上皮系悪性腫瘍に加え、悪性黒色腫、悪性神経鞘腫等の非上皮系悪性腫瘍の治療薬として有用である。
【0027】
本発明の式(I)及び(I−a)の化合物は通常、一般的な医薬製剤の形態(例えば、第12改正日本薬局方に規定する方法)で用いられる。この医薬製剤は通常使用される充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤等の希釈剤あるいは賦形剤を用いて調製される。医薬製剤としては各種の形態が治療目的に応じて選択でき、錠剤、丸剤、散剤、粉剤、顆粒剤、カプセル剤、坐剤、液剤、懸濁剤、乳剤、注射剤(液剤、懸濁剤等)、スプレー、エアロゾル、クリーム、軟膏、ローション、経皮剤(パッチ剤、マトリクス剤、テープ)等が一例として挙げられる。
【0028】
錠剤の形態に成形するに際しては、担体としてこの分野で公知のものを広く使用でき、例えば乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸等の賦形剤、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、セラック、メチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドン等の結合剤、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、乳糖等の崩壊剤、白糖、ステアリン、カカオバター、水素添加油等の崩壊抑制剤、第4級アンモニウム塩基、ラウリル硫酸ナトリウム等の吸収促進剤、グリセリン、デンプン等の保湿剤、デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸等の吸着剤、精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ酸末、ポリエチレングリコール等の滑沢剤等が例示できる。更に錠剤は必要に応じ通常の剤皮を施した錠剤、例えば糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フィルムコーティング錠あるいは二重錠、多層錠とすることができる。
【0029】
丸剤の形態に成形するに際しては、担体としてこの分野で従来公知のものを広く使用でき、例えばブドウ糖、乳糖、デンプン、カカオ脂、硬化植物油、カオリン、タルク等の賦形剤、アラビアゴム末、トラガント末、ゼラチン、エタノール等の結合剤、ラミナランカンテン等の崩壊剤等が例示できる。
【0030】
坐剤の形態に成形するに際しては、担体として従来公知のものを広く使用でき、例えばポリエチレングリコール、カカオ脂、高級アルコール、高級アルコールのエステル類、ゼラチン、半合成グリセライド等を挙げることができる。
【0031】
注射剤として調製される場合には、液剤、乳剤及び懸濁剤は殺菌され、かつ血液と等張であるのが望ましく、これら液剤、乳剤及び懸濁剤の形態に成形するに際しては、希釈剤としてこの分野において慣用されているものを全て使用でき、例えば水、乳酸水溶液、エチルアルコール、プロピレングリコール、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等を挙げることができる。なお、この場合等張性の溶液を調製するに充分な量の食塩、ブドウ糖あるいはグリセリンを医薬製剤中に含有せしめてもよく、また通常の溶解補助剤、緩衝剤、無痛化剤等を添加してもよい。更に必要に応じて着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤等や他の医薬品を医薬製剤中に含有せしめてもよい。
【0032】
本発明の式(I)及び(I−a)の化合物の投与方法は特に制限はなく、各種製剤形態、患者の年齢、性別その他の条件、疾患の程度等に応じた方法で経口的又は非経口的に投与される。例えば経口的に投与される場合には、錠剤、丸剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤及びカプセル剤等が望ましい態様として挙げられる。非経口的には、局所投与剤、注射剤、経皮剤、経鼻剤、経肺剤、坐剤等の形で投与することができる。注射剤の場合には単独であるいはブドウ糖、アミノ酸等の通常の補液と混合して静脈内投与され、更には必要に応じて単独で筋肉内、皮内、皮下もしくは腹腔内投与されるのが望ましい態様である。また、坐剤の場合には直腸内投与されるのが望ましい態様である。
【0033】
本発明の式(I)及び(I−a)の化合物の投与量は用法、患者の年齢、性別その他の条件、疾患の程度等により適宜選択される。
【0034】
(実施例)
以下に本発明の実施例を説明する。但し、本発明はこれらのみに限られるものではない。
【0035】
実施例1
2−フルオロ−3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2−(3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ6−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボニル)−2,3−ジヒドロ−1H−1λ6−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボン酸 エチルエステル(化合物No.1)の製造
(1)3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボン酸1.00g(3.94mmol、1当量)を窒素雰囲気下で乾燥クロロホルム9.4mlに溶解し、これにエチルアルコール0.272g(5.90mmol、1.5当量)、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド0.976g(4.73mmol、1.2当量)及び4−ジメチルアミノピリジン0.048g(0.39mmol、0.1当量)を加えて、室温で150分間攪拌した。反応液のろ過を行い、そのろ液から溶媒を留去した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:n−ヘキサン=1:3)で精製して、無色油状の3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λベンゾ[b]チオフェン−5−カルボン酸 エチルエステル0.78g(収率70%;HPLC純度94.1%)を得た。
H−NMR(重クロロホルム溶媒;TMS標準)の分析結果
1.39(t,3H)ppm、1.68(s,6H)ppm、2.62(s,3H)ppm、3.35(s,2H)ppm、4.37(q,2H)ppm、7.59(d,1H)ppm、7.77(d,1H)ppm
【0036】
(2)別反応容器に窒素雰囲気下で、実施例1(1)で得られた3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λベンゾ[b]チオフェン−5−カルボン酸 エチルエステル0.78g(2.76mmol、1当量)を乾燥テトラヒドロフラン21.3mlに溶かし、ドライアイス−アセトン浴を用いて−78℃まで冷却を行い、これにリチウムジイソプロピルアミン溶液を約3分間滴下した。−78℃で20分間攪拌した後、浴を氷浴に変更し、30分間攪拌した。その後、再びドライアイス−アセトン浴を用いて、−78℃まで冷却を行い、1−クロロメチル−4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタンビス(テトラフルオロボレート)(Selectfluor〔商品名〕aldrich社製)0.978g(2.76mmol、1当量)を投入した。−78℃で50分間攪拌した後、浴を氷浴に変更し、60分間攪拌した。水15ml、酢酸エチル30mlを加え、15分間攪拌し抽出を行った。抽出物を二層分離して、得られた有機層を1規定塩酸、水、飽和食塩水の順で洗浄を行い、無水硫酸ナトリウムで乾燥して減圧濃縮した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:n−ヘキサン=1:1.5)で精製し、更にジエチルエーテルで懸濁分散洗浄を3回行い、ろ過、乾燥した後に、目的物である2−フルオロ−3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2−(3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボニル)−2,3−ジヒドロ−1H−1λ−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボン酸 エチルエステル0.21g(収率28%;HPLC純度95.4%)を得た。
H−NMR(重クロロホルム溶媒;TMS標準)による分析結果
1.41(t,3H)ppm、1.68(m,12H)ppm、2.54(s,3H)ppm、2.63(s,3H)ppm、3.36(s,2H)ppm、4.40(q,2H)ppm、7.77(m,4H)ppm
【0037】
実施例2
2,3,3,4−テトラメチル−1,1−ジオキソ−2−(3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ6−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボニル)−2,3−ジヒドロ−1H−1λ6−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボン酸 メチルエステル(化合物No.2)の製造
(1)3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ6−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボン酸14.8g(0.058mol、1当量)を窒素雰囲気下で乾燥クロロホルム139mlに溶かし、これにメチルアルコール3.5ml(0.085mol、1.5当量)、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド14.4g(0.070mol、1.2当量)及び4−ジメチルアミノピリジン0.7g(0.006mol、0.1当量)を加えて、室温で2時間攪拌した。反応液のろ過を行い、そのろ液から溶媒を留去した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:n−ヘキサン=1:2)で精製し、乾燥した後、白色固体の3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ6−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボン酸 メチルエステル12.7g(収率81%;HPLC純度82.2%)を得た。
H−NMR(重クロロホルム溶媒;TMS標準)による分析結果
1.68(s,6H)ppm、2.63(s,3H)ppm、3.35(s,2H)ppm、3.94(s,3H)ppm、7.60(d,1H)ppm、7.79(d,1H)ppm
【0038】
(2)別反応容器に窒素雰囲気下で、実施例2(1)で得られた3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ6−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボン酸 メチルエステル4.00g(0.015mol、1当量)を乾燥テトラヒドロフラン117mlに溶かし、ドライアイス−アセトン浴を用いて、−78℃まで冷却を行い、リチウムジイソプロピルアミン溶液を約15分間滴下した。−78℃で60分間攪拌した後、浴を氷浴に変更し、120分間攪拌した。その後、再びドライアイス−アセトン浴を用いて、−78℃まで冷却を行い、水5mlを加えた。−78℃で30分間攪拌した後、浴を氷浴に変更し、60分間攪拌した。次いで、水30ml、酢酸エチル50mlを加え抽出を行った。抽出物を二層分離して、得られた有機層を1規定塩酸、水、飽和食塩水の順で洗浄を行い、無水硫酸ナトリウムで乾燥して減圧濃縮した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:n−ヘキサン=1:1.5)で精製し、更にジエチルエーテルで懸濁分散洗浄を3回行い、ろ過、乾燥した後に、3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2−(3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ6−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボニル)−2,3−ジヒドロ−1H−1λ6−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボン酸 メチルエステル0.46g(収率12%;HPLC純度96.1%)を得た。
H−NMR(重クロロホルム溶媒;TMS標準)による分析結果
1.68(d,6H)ppm、1.81(d,6H)ppm、2.56(s,3H)ppm、2.65(s,3H)ppm、3.37(s,2H)ppm、3.96(s,3H)ppm、4.89(s,1H)ppm、7.59(d,1H)ppm、7.68(d,1H)ppm、7.71(d,1H)ppm、7.80(d,1H)
【0039】
(3)別反応容器に窒素雰囲気下で、実施例2(2)で得た3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2−(3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ6−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボニル)−2,3−ジヒドロ−1H−1λ6−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボン酸 メチルエステル100mg(0.20mmol、1当量)を乾燥N,N−ジメチルホルムアミド6mlに溶かし、室温で水素化ナトリウム(60%含有品)10mg(0.25mmol、1.25当量)を加えて、2時間攪拌した。次いで、乾燥N,N−ジメチルホルムアミド700mgにヨウ化メチル100mg(0.70mmol、3.5当量)を溶解させた溶液を注ぎ加えた。室温で1時間攪拌した後、40℃から50℃で1時間攪拌した。水6ml、酢酸エチル10mlを加え抽出を行った。抽出物を二層分離して、得られた有機層は1規定濃度塩酸、水、飽和食塩水で洗浄を行い、無水硫酸ナトリウムで乾燥して減圧濃縮した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:n−ヘキサン=1:1)で精製し、更に容量比が酢酸エチル1、n−へキサン1の混合溶媒を用いて分散洗浄を行い、ろ過、乾燥した後、目的物である2,3,3,4−テトラメチル−1,1−ジオキソ−2−(3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ6−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボニル)−2,3−ジヒドロ−1H−1λ6−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボン酸 メチルエステルが32mg(収率31%;HPLC純度95.1%)を得た。
H−NMR(重クロロホルム溶媒;TMS標準)による分析結果
1.70(d,6H)ppm、1.92(d,6H)ppm、2.50(s,3H)ppm、2.70(s,3H)ppm、3.37(d,2H)ppm、3.47(s,3H)ppm、3.93(s,3H)ppm、7.49(d,1H)ppm、7.55(d,1H)ppm、7.69(d,1H)ppm、7.75(d,1H)ppm
【0040】
実施例3
2−フルオロ−3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2−(3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ6−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボニル)−2,3−ジヒドロ−1H−1λ6−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボン酸 tert−ブチルエステル(化合物No.3)の製造
(1)実施例2(2)で得た3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2−(3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ6−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボニル)−2,3−ジヒドロ−1H−1λ6−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボン酸 メチルエステル30mg(0.060mmol)をジオキサン2mlに加えてから、濃塩酸2mlを注ぎ加え、120℃で8時間攪拌した。更に濃塩酸2ml加えてから、120℃で3時間攪拌した。室温まで冷却を行った後、水5ml、酢酸エチル5mlを加え抽出を行った。抽出物を二層分離して、得られた有機層は飽和食塩水で2回洗浄を行い、無水硫酸ナトリウムで乾燥して減圧濃縮し、油状物質の3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2−(3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ6−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボニル)−2,3−ジヒドロ−1H−1λ6−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボン酸281mgを得た。(HPLC純度92.5%)
【0041】
(2)別反応容器に窒素雰囲気下で、実施例3(1)で得られた3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2−(3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ6−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボニル)−2,3−ジヒドロ−1H−1λ6−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボン酸281mgを乾燥クロロホルム5mlに溶解し、これにtert−ブチルアルコール154mg、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド420mg及び4−ジメチルアミノピリジン16mgを加え、室温で24時間攪拌した。反応液のろ過を行い、そのろ液から溶媒を留去した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:n−ヘキサン=1:1)で精製し、油状物質の3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2−(3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ6−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボニル)−2,3−ジヒドロ−1H−1λ6−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボン酸 tert−ブチルエステル50mg(収率154%;HPLC純度90.7%)を得た。
H−NMR(重クロロホルム溶媒;TMS標準)による分析結果
1.59−1.80(m,21H)ppm、2.52(s,3H)ppm、2.55(s,3H)ppm、3.37(d,2H)ppm、4.88(s,1H)ppm、7.35(d,1H)ppm、7.60(d,1H)ppm、7.67(d,1H)ppm、7.71(d,1H)ppm
【0042】
(3)別反応容器に窒素雰囲気下で、実施例3(2)で得られた3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2−(3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ6−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボニル)−2,3−ジヒドロ−1H−1λ6−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボン酸 tert−ブチルエステル50mgを乾燥N,N−ジメチルホルムアミド5mlに溶かし、これに水素化ナトリウム(60%含有品)10mg(0.25mmol、4当量)を室温で添加した。室温で2時間攪拌を行った後、1−クロロメチル−4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタンビス(テトラフルオロボレート)(Selectfluor〔商品名〕aldrich社製)84mg(0.24mmol、4当量)を添加した。室温で2時間攪拌した後、水3ml、酢酸エチル10mlを加えて抽出を行った。抽出物を二層分離して、得られた有機層を1規定塩酸、飽和食塩水の順で2回洗浄を行い、無水硫酸ナトリウムで乾燥して減圧濃縮した。残さをジエチルエーテルで分散懸濁洗浄を4回行って精製し、乾燥した後、目的物である2−フルオロ−3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2−(3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ6−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボニル)−2,3−ジヒドロ−1H−1λ6−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボン酸 tert−ブチルエステル27mg(収率80%;HPLC純度95.1%)を得た。
H−NMR(重クロロホルム溶媒;TMS標準)による分析結果
1.62−1.78(m,21H)ppm、2.54(s,3H)ppm、2.54(s,3H)ppm、3.36(s,2H)ppm、7.45−7.73(m,4H)ppm
【0043】
実施例4
4−クロロ−2−(4−クロロ−3,3−ジメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボニル)−2−フルオロ−3,3−ジメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボン酸 メチルエステル(化合物No.4)の合成
(1)2,4−ジクロロアセトフェノン23g、S−アリルイソチウロニウム塩酸塩24.3g及びテトラ(n−ブチル)アンモニウムヨージド4.1gをトルエン94ml中70℃で攪拌しながら水酸化ナトリウム水溶液(20wt%、63.3g)を約20分かけて滴下した。滴下終了後、温度を90℃まで昇温し90分攪拌した。更に水酸化ナトリウム水溶液(20wt%、63.3g)を約20分かけて滴下して、滴下終了後2時間攪拌した。反応溶液を室温まで冷却した後、反応溶液を分液ロートに移し1規定塩酸で中和した後、酢酸エチルで2回抽出を行った。抽出物を二層分離し、得られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥して減圧下濃縮した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:n−ヘキサン=1:19)で精製し、油状物質の2−クロロ−4−(2−メチルアリルチオ)アセトフェノン21.7gを得た。
H−NMR(重クロロホルム溶媒;クロロホルム標準)による分析結果
1.82(3H,s),2.61(3H,s),3.57(2H,s),4.89(1H,s),4.95(1H,s),7.16(1H,dd,J=8.4,2.0Hz),7.27(1H,d,J=2.0Hz),7.50(1H,d,J=8.4Hz).
【0044】
(2)無水塩化アルミニウム(16.2g)をクロロホルム33ml中で攪拌しながら、実施例4(1)で得られた2−クロロ−4−(2−メチルアリルチオ)アセトフェノン9.8g及び氷酢酸2.4gのクロロホルム22ml溶液を氷冷下で滴下した。滴下終了後、氷浴を除き、反応混合物を室温で6時間攪拌した後、氷中へ投入した。混合物を分液ロートへ移し、クロロホルムで3回抽出を行った。抽出物を二層分離し、得られた有機層を飽和食塩水で1回洗浄を行い、無水硫酸ナトリウムで乾燥して減圧濃縮した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:19)で精製し、油状物質の1−(4−クロロ−3,3−ジメチル−2,3−ジヒドロベンゾ[b]チオフェン−5−イル)エタノン3.3gを得た。
H−NMR(重クロロホルム溶媒;クロロホルム標準)による分析結果
1.57(6H,s),2.59(3H,s),3.20(2H,s),7.09(1H,d,J=8.0Hz),7.25(1H,d,J=8.0Hz).
【0045】
(3)実施例4(2)で得られた1−(4−クロロ−3,3−ジメチル−2,3−ジヒドロベンゾ[b]チオフェン−5−イル)エタノン(3.3g)を氷酢酸(20ml)に溶解し、30%過酸化水素水(4.7ml)を室温で加えた。混合物を90℃まで加熱し、4時間攪拌した。更に30%過酸化水素水1.6gを加え2時間攪拌した後、室温まで冷却した。反応混合物をチオ硫酸ナトリウム水に投入し、水酸化ナトリウムで中和した後、酢酸エチルで3回抽出を行った。抽出物を二層分離して、得られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥して減圧濃縮した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:n−ヘキサン=1:9〜3:7)で精製し、白色固体の1−(4−クロロ−3,3−ジメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ−ベンゾ[b]チオフェン−5−イル)エタノン1.9gを得た。
H−NMR(重クロロホルム溶媒;クロロホルム標準)による分析結果
1.73(6H,s),2.61(3H,s),3.38(2H,s),7.43(1H,d,J=8.0Hz),7.66(1H,d,J=8.0Hz).
【0046】
(4)氷冷下で次亜塩素酸ナトリウム水溶液に25%水酸化ナトリウム水溶液3.3gを滴下し、室温まで昇温した後、テトラ(n−ブチル)アンモニウムヨージド0.25gを加えた。実施例4(3)で得られた化合物1.9gをクロロホルム20mlに溶かした溶液を滴下し、室温で2時間攪拌した。更にテトラ(n−ブチル)アンモニウムヨージド0.12g及び次亜塩素酸ナトリウム水溶液11.8gを加え室温で20時間攪拌した後、チオ硫酸ナトリウム水溶液−氷へゆっくりと投入した。混合物を分液ロートに移し、クロロホルムで1回洗浄を行った。水層を分離し、クロロホルム層を水酸化ナトリウム水溶液(1規定)で抽出した後、合わせた水層に氷冷下で濃塩酸をゆっくりと加えpH1に調整した。この混合物を酢酸エチルで1回抽出した。抽出物を二層分離して、得られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥して減圧濃縮し、4−クロロ−3,3−ジメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボン酸(1.3g)を得た。
H−NMR(400MHz,DMSO−d6)による分析結果
1.62(6H,s),3,64(2H,s),7.78(2H,s),14.0(1H,brs).
【0047】
(5)実施例4(4)で得られた4−クロロ−3,3−ジメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボン酸(1.3g)、メタノール(0.225g)、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.16g)及び4−ジメチルアミノピリジン(0.057g)をクロロホルム(20ml)に加え、室温で3時間攪拌した。反応液のろ過を行い、そのろ液を減圧濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:n−ヘキサン=2:4)で精製し、白色固体の4−クロロ−3,3−ジメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボン酸 メチルエステル(0.76g)を得た。
H−NMR(重クロロホルム溶媒;クロロホルム標準)による分析結果
1.73(6H,s),3.38(2H,s),3.95(3H,s),7.64(1H,d,J=7.6Hz),7.72(1H,d,J=7.6Hz).
【0048】
(6)別反応容器に窒素雰囲気下で、実施例4(5)で得られた4−クロロ−3,3−ジメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボン酸 メチルエステル(0.45g)を乾燥テトラヒドロフラン(20ml)に溶解し、リチウムジイソプロピルアミン溶液を−78℃で約5分間滴下した。30分攪拌した後、温度を0℃まで昇温し、1時間攪拌した。再度−78℃まで冷却し、1−クロロメチル−4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタンビス(テトラフルオロボレート)(Selectfluor〔商品名〕aldrich社製)(0.556g)を加え30分攪拌した後、温度を0℃まで昇温した。30分攪拌した後、氷浴を除き、室温で30分攪拌した。少量の水を加え反応を停止させ、酢酸エチルを加え抽出を行った。抽出物を二層分離して、得られた有機層を1規定の塩酸、飽和食塩水の順で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥して減圧濃縮した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:n−ヘキサン=1:4〜1:1)で精製し、目的物である4−クロロ−2−(4−クロロ−3,3−ジメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボニル)−2−フルオロ−3,3−ジメチル−1,1−ジオキソ−2,3−時ヒドロ−1H−1λ−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボン酸メチルエステル(12.4mg)を得た。
H−NMR(重クロロホルム溶媒;クロロホルム標準)による分析結果
1.74(9H,s),1.89(3H,s),3.40(2H,s),3.97(3H,s),7.2−7.7(4H,m).
【0049】
実施例5
2−(3,3−ジメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ−ベンゾ[b]チオフェン−4−カルボニル)−2−フルオロ−3,3−ジメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ−ベンゾ[b]チオフェン−4−カルボン酸 メチルエステル(化合物No.5)の合成
(1)3,3−ジメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ−ベンゾ[b]チオフェン−4−カルボン酸(参考文献:WO2006009734)(4g)をクロロホルム(20ml)に溶解し、メタノール(0.8g)、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド(4.1g)及び4−ジメチルアミノピリジン(0.2g)を室温で加え1時間攪拌した。反応液のろ過を行い、そのろ液を減圧濃縮した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:n−ヘキサン=1:2)で精製し、白色固体の3,3−ジメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ−ベンゾ[b]チオフェン−4−カルボン酸メチルエステル(0.96g)を得た。
H−NMR(重クロロホルム溶媒;クロロホルム標準)による分析結果
1.66(6H,s),3.32(2H,s),3.93(3H,s),7.52(1H,t,J=7.6Hz),7.82(1H,dd,J=7.6,1.6Hz),7.85(1H,dd,J=7.6,1.6Hz).
【0050】
(2)窒素雰囲気下で、実施例5(1)で得られた3,3−ジメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ−ベンゾ[b]チオフェン−4−カルボン酸 メチルエステル(0.4g)を乾燥テトラヒドロキシフラン(20ml)に溶解し、リチウムジイソプロピルアミン溶液を−78℃を約3分間滴下した。−78℃で30分攪拌した後、0℃で30分、室温で30分攪拌した。再度−78℃まで冷却し、1−クロロメチル−4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタンビス(テトラフルオロボレート)(Selectfluor〔商品名〕aldrich社製)(0.836g)を加え30分攪拌した後、温度を0℃まで昇温した。30分攪拌した後、氷浴を取り除き、室温で30分攪拌した。1Nの塩酸(10ml)を加え反応停止させ、酢酸エチルで3回抽出を行った。抽出物を二層分離して、得られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥して減圧濃縮した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:n−ヘキサン=1:1)及び分取用薄層クロマトグラフィーで精製し、目的物である2−(3,3−ジメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ−ベンゾ[b]チオフェン−4−カルボニル)−2−フルオロ−3,3−ジメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ−ベンゾ[b]チオフェン−4−カルボン酸 メチルエステル31mgを得た。
H−NMR(重クロロホルム溶媒;クロロホルム標準)による分析結果
1.6−1.8(12H,m),3.27(2H,s),3.92(3H,s),7.4−8.1(6H,m).
【0051】
実施例6
2−(3,3−ジメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ6−ベンゾ[b]チオフェン−4−カルボニル)−2−フルオロ−3,3−ジメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ−ベンゾ[b]チオフェン−4−カルボン酸 エチルエステル(化合物No.6)の合成
(1)実施例5(1)の工程にて、メタノールの代わりにエタノールを用い、4−クロロ−3,3−ジメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボン酸 エチルエステルを得た。
H−NMR(重クロロホルム溶媒;クロロホルム標準)による分析結果
1.39(3H,t,J=7.4Hz),1.67(6H,s),3.31(2H,s),4.38(2H,q,J=7.4Hz),7.51(1H,t,J=7.6Hz),7.81(1H,dd,J=7.6,1.6Hz),7.83(1H,dd,J=7.6,1.6Hz).
【0052】
(2)実施例5(2)の工程と同様にして、2−(3,3−ジメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ−ベンゾ[b]チオフェン−4−カルボニル)−2−フルオロ−3,3−ジメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ−ベンゾ[b]チオフェン−4−カルボン酸 エチルエステルを得た。
H−NMR(重クロロホルム溶媒;クロロホルム標準)による分析結果
1.41(3H,t,J=7.2Hz),1.6−1.8(12H,m),3.32(2H,s),4.41(2H,q,J=7.2Hz),7.59(1H,t,J=7.8Hz),7.65(1H,t,J=7.8Hz),7.9(3H,m),8.1(1H,m).
【0053】
実施例7
2−フルオロ−3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2−(3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ6−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボニル)−2,3−ジヒドロ−1H−1λ6−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボン酸 iso−プロピルエステル(化合物No.7)の合成
(1)3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボン酸1.00g(3.94mmol、1当量)を窒素雰囲気下で乾燥クロロホルム9.5mlに溶かし、これに2−プロパノール0.355g(5.90mmol、1.5当量)、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド0.976g(4.73mmol、1.2当量)及び4−ジメチルアミノピリジン0.048g(0.39mmol、0.1当量)を加えて、室温で240分間攪拌した。反応液のろ過を行い、そのろ液から溶媒を留去した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:n−ヘキサン=1:3)で精製し、融点104〜108℃の3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λベンゾ[b]チオフェン−5−カルボン酸 iso−プロピルエステル0.79g(収率68%;HPLC純度83.7%)を得た。
H−NMR(重クロロホルム溶媒;TMS標準)による分析結果
1.29(d,6H)ppm、1.68(s,6H)ppm、2.61(s,3H)ppm、3.34(s,2H)ppm、5.27(m,1H)ppm、7.59(d,1H)ppm、7.72(d,1H)ppm
【0054】
(2)別反応容器に窒素雰囲気下で、実施例7(1)で得た3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λベンゾ[b]チオフェン−5−カルボン酸 iso−プロピルエステル0.76g(2.56mmol、1当量)を乾燥テトラヒドロフラン20.0mlに溶かし、ドライアイス−アセトン浴を用いて−78℃まで冷却を行い、これにリチウムジイソプロピルアミン溶液を約3分間で滴下した。−78℃で20分間攪拌した後、浴を氷浴に変更し、30分間攪拌した。その後、再びドライアイス−アセトン浴を用いて、−78℃まで冷却を行い、1−クロロメチル−4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタンビス(テトラフルオロボレート)(Selectfluor〔商品名〕aldrich社製)0.907g(2.56mmol、1当量)を投入した。−78℃で1時間攪拌した後、浴を氷浴に変更し、60分間攪拌した。水15ml、酢酸エチル30mlを加え、15分間攪拌し抽出を行った。抽出物を二層分離して、得られた有機層を1規定塩酸、水、飽和食塩水の順で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥して減圧濃縮した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:n−ヘキサン=1:1.5)で精製し、得られた目的フラクションをジエチルエーテルで懸濁分散洗浄を4回行い、ろ過、乾燥した後、目的物である2−フルオロ−3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2−(3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボニル)−2,3−ジヒドロ−1H−1λ−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボン酸 iso−プロピルエステル0.21g(収率7%;HPLC純度95.9%)を得た。
H−NMR(重クロロホルム溶媒;TMS標準)による分析結果
1.40(d,6H)ppm、1.68(m,12H)ppm、2.54(s,3H)ppm、2.62(s,3H)ppm、3.36(s,2H)ppm、5.30(m,1H)ppm、7.71(m,4H)ppm
【0055】
実施例8
2−フルオロ−3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2−(3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ6−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボニル)−2,3−ジヒドロ−1H−1λ6−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボン酸 n−ブチルエステル(化合物No.8)の合成
(1)3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボン酸1.00g(3.94mmol、1当量)を窒素雰囲気下で乾燥クロロホルム9.5mlに溶かし、これに1−ブタノール0.437g(5.90mmol、1.5当量)、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド0.976g(4.73mmol、1.2当量)及び4−ジメチルアミノピリジン0.048g(0.39mmol、0.1当量)を加えて、室温で255分間攪拌した。反応液のろ過を行い、そのろ液から溶媒を留去した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:n−ヘキサン=1:2)で精製し、無色油状の3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λベンゾ[b]チオフェン−5−カルボン酸 n−ブチルエステル1.04g(収率85%;HPLC純度96.6%)を得た。
H−NMR(重クロロホルム溶媒;TMS標準)による分析結果
0.99(t,3H)ppm、1.48(m,2H)ppm、1.75(m,2H)ppm、2.62(s,3H)ppm、3.35(s,2H)ppm、4.33(t,2H)ppm、7.59(d,1H)ppm、7.77(d,1H)ppm
【0056】
(2)別反応容器に窒素雰囲気下で、実施例8(1)で得た、3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λベンゾ[b]チオフェン−5−カルボン酸 n−ブチルエステル1.04g(3.35mmol、1当量)を乾燥テトラヒドロフラン27mlに溶かし、ドライアイス−アセトン浴を用いて−78℃まで冷却を行い、これにリチウムジイソプロピルアミン溶液を約8分間で滴下した。−78℃で20分間攪拌した後、浴を氷浴に変更し、30分間攪拌を行った。その後、再びドライアイス−アセトン浴を用いて、−78℃まで冷却を行い、1−クロロメチル−4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタンビス(テトラフルオロボレート)(Selectfluor〔商品名〕aldrich社製)1.78g(5.03mmol、1.5当量)を投入した。−78℃で1時間攪拌した後、浴を氷浴に変更し、60分間攪拌した。水15ml、酢酸エチル35mlを加え、15分間攪拌し抽出を行った。抽出物を二層分離して、得られた有機層を1規定塩酸、水、飽和食塩水の順で洗浄を行い、無水硫酸ナトリウムで乾燥して減圧濃縮した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:n−ヘキサン=1:1.5)で精製し、得られた目的フラクションをジエチルエーテルで懸濁分散洗浄を3回行い、ろ過、乾燥した後、目的物である2−フルオロ−3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2−(3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボニル)−2,3−ジヒドロ−1H−1λ−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボン酸 n−ブチルエステル0.21g(収率21%;HPLC純度95.6%)を得た。
H−NMR(重クロロホルム溶媒;TMS標準)により分析した結果
1.00(t,3H)ppm、1.48(m,2H)ppm、1.70(m,12H)ppm、1.75(m,2H)ppm、2.54(s,3H)ppm、2.63(s,3H)ppm、3.36(s,2H)ppm、4.37(t,2H)ppm、7.71(m,3H)ppm、7.80(d,1H)ppm
【0057】
実施例9
7−クロロ−2−(7−クロロ−3,3,3−トリメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボニル)−2−フルオロ−3,3,3−トリメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボン酸 メチルエステル(化合物No.9)の合成
窒素雰囲気下、7−クロロ−3,3,3−トリメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボン酸 メチルエステル2.0gを無水テトラヒドロキシフラン59mlに溶かし、ドライアイス−アセトン浴を用いて−78℃まで冷却を行い、これにリチウムジイソプロピルアミン溶液を注射器でゆっくりと加えた。−78℃で30分攪拌した後、0℃まで昇温し、1時間攪拌した。その後、再びドライアイス−アセトン浴を用いて−78℃まで冷却し、1−クロロメチル−4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタンビス(テトラフルオロボレート)(Selectfluor〔商品名〕aldrich社製)(2.34g)を加え、1時間攪拌した後、温度を0℃まで昇温した。1時間攪拌した後、氷浴を除き、室温まで昇温し、30分攪拌した。少量の水を加え反応を停止させ、酢酸エチルを加え抽出を行った。抽出物を二層分離して、得られた有機層を1規定の塩酸、飽和食塩水の順で洗浄を行い、無水硫酸ナトリウムで乾燥して減圧濃縮した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:n−ヘキサン=1:2)で精製し、目的物である7−クロロ−2−(7−クロロ−3,3,3−トリメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボニル)−2−フルオロ−3,3,3−トリメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボン酸 メチルエステル270mgを得た。
H−NMR(重クロロホルム溶媒;TMS標準)による分析結果
1.57(3H,s),1.6(6H,m),1.78(3H,m),2.49(3H,s),2.59(3H,s),3.41(2H,s),3.96(3H,s),7.58(1H,d,J=4.0Hz),7.76(3H,s).
【0058】
実施例10
2−クロロ−3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2−(3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ6−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボニル)−2,3−ジヒドロ−1H−1λ6−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボン酸 メチルエステル(化合物No.10)の合成
実施例2(2)で得た3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2−(3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ6−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボニル)−2,3−ジヒドロ−1H−1λ6−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボン酸 メチルエステル30mg(0.0595mmol、1当量)を窒素雰囲気下で乾燥N,N−ジメチルホルムアミド5mlに溶かし、水素化ナトリウム(60%含有品)10mg(7.94mmol、4.2当量)を加え、室温で2時間攪拌した。次いで、N−クロロスクシンイミド32mg(7.94mmol、4.2当量)を加え、室温で1時間攪拌した。水3ml、酢酸エチル10mlを加え抽出を行った。抽出物を二層分離して、得られた有機層は1規定濃度塩酸、水、飽和食塩水の順で洗浄を行い、無水硫酸ナトリウムで乾燥して減圧濃縮した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:n−ヘキサン=1:1)で精製し、目的フラクションをジエチルエーテルで懸濁分散洗浄を4回行い、ろ過、乾燥した後、目的物である2−クロロ−3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2−(3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ6−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボニル)−2,3−ジヒドロ−1H−1λ6−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボン酸 メチルエステルが3.4mg(収率11%;HPLC純度94.9%)得た。
H−NMR(重クロロホルム溶媒;TMS標準)による分析結果
1.68(m,12H)ppm、2.45(s,3H)ppm、2.66(s,3H)ppm、3.35(s,2H)ppm、3.97(s,3H)ppm、7.63(d,1H)ppm、7.69(d,1H)ppm、7.79(d,1H)ppm、7.97(d,1H)ppm、
【0059】
実施例11
2−フルオロ−3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2−(3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ6−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボニル)−2,3−ジヒドロ−1H−1λ6−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボン酸 シクロプロピルメチルエステル(化合物No.11)の合成
(1)3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボン酸39mg(0.079mmol、1当量)を窒素雰囲気下で乾燥クロロホルム5mlに溶かし、これにシクロプロピルカルビノール114mg(1.58mmol)、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド327mg(1.58mmol)及び4−ジメチルアミノピリジン19mg(0.16mmol)を加え、室温で210分間攪拌した。反応物のろ過を行い、そのろ液から溶媒を留去した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:n−ヘキサン=1:1)で精製し、融点135〜139℃の3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λベンゾ[b]チオフェン−5−カルボン酸 シクロプロピルメチルエステル32mg(収率60%;HPLC純度92.4%)を得た。
H−NMR(重クロロホルム溶媒;TMS標準)による分析結果
0.40(m,2H)ppm、0.66(m,2H)ppm、1.31(m,1H)ppm、1.68(s,3H)ppm、1.69(s,3H)ppm、1.81(s,3H)ppm、1.82(s,3H)ppm、2.56(s,3H)ppm、2.65(s,3H)ppm、3.63(d,2H)ppm、4.24(m,2H)ppm、4.91(s,1H)ppm、7.60(d,1H)ppm、7.71(m,2H)ppm、7.80(d,1H)ppm
【0060】
(2)窒素雰囲気下で、実施例11(1)で得た3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λベンゾ[b]チオフェン−5−カルボン酸 シクロプロピルメチルエステル23mg(0.0422mmol)を乾燥N,N−ジメチルホルムアミド2mlに溶かし、これに水素化ナトリウム(60%含有品)3.4mgを室温条件下で添加し、室温で1時間攪拌した。更にこれに水素化ナトリウム(60%含有品)4.6mgを添加した後、1−クロロメチル−4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタンビス(テトラフルオロボレート)(Selectfluor〔商品名〕aldrich社製) 70mgを添加し、室温で約4時間攪拌した。その後、水2ml、酢酸エチル4mlを加え抽出を行った。抽出物を二層分離して、得られた有機層を1規定塩酸、飽和食塩水の順で洗浄を行い、無水硫酸ナトリウムで乾燥して減圧濃縮した。残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:n−ヘキサン=1:1)で精製し、無色油状の目的物である2−フルオロ−3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2−(3,3,4−トリメチル−1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ6−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボニル)−2,3−ジヒドロ−1H−1λ6−ベンゾ[b]チオフェン−5−カルボン酸 シクロプロピルメチルエステル4mg(収率17%;HPLC純度77.1%)を得た。
H−NMR(重クロロホルム溶媒;TMS標準)による分析結果
0.40(m,2H)ppm、0.66(m,2H)ppm、1.31(m,1H)ppm、1.55(s,6H)ppm、1.69(m,6H)ppm、2.54(s,3H)ppm、2.64(s,3H)ppm、3.36(s,2H)ppm、4.20(d,2H)ppm、7.71(m,3H)ppm、7.82(d,1H)ppm
【0061】
前記製法1〜3又はそれらに準じた方法で製造した実施例1〜11の化合物及びその物性を表1に示した。
【0062】
【表1】

【0063】
前記製法1〜3又はそれらに準じた方法で製造した実施例1〜11の化合物の細胞増殖阻害活性について以下の評価試験を行い、その評価を表2に示した。
【0064】
[三次元培養による細胞増殖阻害活性の評価試験]
ヒト前立腺癌細胞株(PC−3)、ヒト肺癌リンパ節転移細胞株(COR−L279)及びヒト乳腺癌細胞株(MCF−7)に対する実施例の化合物の細胞増殖阻害活性の評価試験を行った。
PC−3細胞は10%牛胎児血清(FBS)(HyClone社製、カタログ番号SH30070.03)を含むF−12Kaighn’s modification培地(ギブコ社、カタログ番号21127−022)で培養した。
COR−L279細胞は10%FBS(HyClone社製、カタログ番号SH30070.03)を含むRoswell Park Memorial Institute’s Medium(RPMI)1640培地(シグマ社製、カタログ番号R8758−500ML)で培養した。
MCF−7は10%FBS(HyClone社製、カタログ番号SH30070.03)を含むMINIMUM ESSENTIAL MEDIUM EAGLE(シグマ社製、カタログ番号M5650−500ML)で培養した。
次に、培養したそれぞれの細胞を、BDマトリゲル(GFR)グロースファクターリディュースト(日本ベクトン・デッィキンソン社製、カタログ番号354230)と96well培養プレート(MICROPLATE 96well〔商品名〕、IWAKI社製)を用いて三次元培養した。
96well培養プレートにbase layerとして50μlのゲルを形成し、その上にcell layerとして1×10個/mlに調製したそれぞれの培養細胞を等容量のマトリゲルと懸濁させ、細胞混合懸濁ゲルとして50μl重層させた。ゲルが完全に固まったのを確認した後、化合物処理群としてNo.1乃至11の化合物の含まれる培養培地100μlを添加し、PC−3細胞は37℃で5日間、COR−L279細胞及びMCF−7細胞は37℃で3日間培養した。なお、化合物処理群の各化合物の最終濃度は0.1、1及び10μMとなるように調整し、細胞に添加した。
コントロール群として、化合物を含まない培養培地を前記と同様に細胞に処理し、培養した。
【0065】
三次元培養後の化合物処理群及びコントロール群の培地にCell Count Reagent SF(ナカライテスク社製)を20μL添加し、37℃で1〜6時間反応させた。
コントロール群の吸光度が1程度になった時点で化合物処理群の吸光度を測定し、細胞増殖阻害活性の評価を行った。吸光度は、マイクロプレート分光光度計Spectra MAX M2(モレキュラーデバイス社製)を用いて、450nmで測定した。
細胞増殖阻害活性は、コントロール群の値を生存率100%とし、以下の式で細胞増殖阻害率として算出した。
細胞増殖阻害率が10%以上の場合、細胞増殖阻害活性があるものとし、20%以上の場合、強い細胞増殖阻害活性があるものとした。
【0066】
細胞増殖阻害率(%)={100−(化合物処理群の吸光度/コントロール群の吸光度)}×100
【0067】
【表2】

【0068】
すべての化合物は、COR−L279の癌細胞株に対して細胞増殖阻害効果がみられた。化合物No.1、2、4、7、10及び11は、3種類のすべての癌細胞株に対して細胞増殖阻害率が10%以上を示し細胞増殖阻害効果がみられた。また、化合物No.1、2、4、7及び10は3種類すべての癌細胞株に対して細胞増殖阻害率が20%以上を示しており、強い細胞増殖阻害活性がみられた。本発明の化合物は、細胞増幅阻害活性剤又は抗癌剤としての有用性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、細胞増殖阻害剤又は抗癌剤をはじめとして広く産業上利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I);
【化1】



[式中、Aは水素原子、アルキル基、水酸基、−COOR(Rは水素原子又はシクロアルキルで置換されてもよいアルキル基を示す)、−CONR10(R及びR10はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を示す)又はハロゲンであり、qは1〜4の整数であり、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基であり、Rはアルキル基又はハロゲンであり、

式(II−1)又は(II−2);
【化2】



(式中、R及びRは前述の通りであり、R11はアルキル基又はハロゲンであり、mは1〜3の整数である)]で表される化合物又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項2】
式(I−a);
【化3】


[式中、R及びRは水素原子、アルキル基、水酸基、−COOR(Rは水素原子又はシクロアルキルで置換されてもよいアルキル基を示す)又はハロゲンであり、Rは水素原子又はハロゲンであり、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基であり、Rはアルキル基又はハロゲンであり、Rは式(II−1)又は(II−2);
【化4】


(式中、R及びRは前述の通りであり、R11はアルキル基又はハロゲンであり、mは1〜3の整数である)]で表される請求項1に記載の化合物又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項3】
が−COOR(Rはシクロアルキルで置換されてもよいアルキル基を示す)であり、Rがアルキル基又はハロゲンであり、Rが水素原子又はハロゲンである請求項2に記載の化合物又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項4】
が−COOR(Rはシクロアルキルで置換されてもよいアルキル基を示す)であり、Rがアルキル基であり、Rが水素原子である請求項3に記載の化合物又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項5】
が水素原子であり、Rが−COOR(Rはシクロアルキルで置換されてもよいアルキル基を示す)であり、Rが水素原子である請求項2に記載の化合物又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の化合物又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する細胞増殖阻害剤。
【請求項7】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の化合物又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する抗癌剤。
【請求項8】
前記抗癌剤が前立腺癌、転移性肺癌及び乳腺癌からなる群から選択される少なくとも一つの疾患に使用される請求項7に記載の抗癌剤。

【公開番号】特開2011−16780(P2011−16780A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−164181(P2009−164181)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(000000354)石原産業株式会社 (289)
【Fターム(参考)】