説明

細長く平らな串に串ざしした焼きおにぎり

【課題】 単純な構造の串で串ざしした結着剤が入っていない焼きおにぎりの提供。串を持つことにより簡単に米飯を食することができ、しかも摂食中に容易に米飯が崩れたり串から外れることがなく、かつ食感も良好で、炊飯した米飯を結着剤などを入れずそのままの状態で串に固定した串ざし焼きおにぎりの提供。
【解決手段】 串ざし焼きおにぎりであって、その串が細長く平らな形状であり、その平らな面で食感が固すぎない焼きおにぎりを強く固定している串ざし焼きおにぎり。細長く平らな形状の串を採用して、串を持って摂食中に串から外れることがない強さであるが、焼きおにぎりの食感を犠牲にすることがなく、すなわちかたく固めすぎることなくしっかりと固定した串ざし焼きおにぎり。焼いたおにぎりに細長く平らな串を刺すこと、串を刺す際に型に入れ圧力をかけながら刺すこと、串を刺した後に、米粒が復元しないように再度圧力をかけることにより製造された串ざし焼きおにぎり。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、細長く平らな串を持つことにより、簡単に米飯を食することのできる細長く平らな串に串ざしした焼きおにぎりに関する。より詳しくは本発明は、米飯に結着剤を入れなでおにぎりにしたものであって、電子レンジで加熱することにより串を持って軽く20回振る虐待テストでも、おにぎりが串から外れることも割れることもない串ざし焼きおにぎりに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、携行便利な米飯として、握り棒付き米飯が開発されている。米飯を結着剤を入れなでそのままの状態で握り棒に固定するには、米飯自体の結着力が弱いとともに、握り棒への固定力が弱いため、米飯が崩れたり握り棒から外れ易く、固定力及び結着力を強くするために強く握りしめると食感が固すぎて、食品としての価値を喪失する。さらに、米飯が調味料や具を混入した場合には、米飯自体の結着や握り棒への固定が一層困難である。そこで、特開平2−276544号では、米飯中に結着剤として乾燥粉末卵白を混合したり、握り棒の挿入される部分に液状卵白を塗布したりして卵白層を凝固させて結着させており、握り棒の固定に結着剤を用いている。また、実願昭62−54959号のマイクロフィルム(実開昭63−163186号公報参照)では、粘性の米飯を用い、二股串を差して、その柄を持ち、おむすびを繰返し裏返しするなどして万遍なく焼き、その表面を均一に焼き固めることにより結着させており、ここでも米飯に粘性をもたせたり、特殊な構造の串を利用したりしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、単純な構造の串で串ざしした結着剤が入っていない焼きおにぎり及びその製造方法を提供することを目的としている。より詳細には本発明は、串を持つことにより簡単に米飯を食することができ、しかも摂食中に容易に米飯が崩れたり串から外れることがなく、かつ食感も良好で、炊飯した米飯に結着剤を添加することなくそのままの状態で串に固定した串ざし焼きおにぎり及びその製造方法を提供することを目的としている。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記従来技術を解決するため、本発明者らは鋭意研究し、串の形状を平らにすることおよび焼きおにぎりにした後串ざしすることにより、米飯を結着剤を入れないでそのままの状態で串ざしした場合、固定力及び結着力の強さがほどほどの強さで食感が固すぎることのない状態でも、串への固定力を強くした食感の良い串ざしおにぎりが得られることを見いだし、本発明を完成させたものである。
【0005】本発明は、串ざし焼きおにぎりであって、その串が細長く平らな形状であり、その平らな面で食感が固すぎない焼きおにぎりを強く固定していることを特徴とする串ざし焼きおにぎりを要旨としている。言い換えると本発明は、米飯に結着力を入れていない串ざし焼きおにぎりであって、その串が細長く平らな形状であり、その平らな面で食感が固すぎない焼きおにぎりを強く固定していることを特徴とする串ざし焼きおにぎりを要旨としている。上記固定の強さは、串を持って摂食中に串から外れることがない強さであるが、焼きおにぎりの食感を犠牲にすることがなく、すなわちかたく固めすぎることなくしっかりと固定する強さである。そのような固定する強さを実現できるのは、細長く平らな形状の串を採用したからである。また、焼きおにぎりにした後串ざし、圧し固定したからである。すなわち、本発明は、焼いたおにぎりに細長く平らな串を刺すこと、串を刺す際に型に入れ圧力をかけながら刺すこと、串を刺した後に、米粒が復元しないように再度圧力をかけることにより製造されたことを特徴とする串ざし焼きおにぎりを要旨としている。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明の串ざし焼きおにぎりに用いる串は細長く平らな形状であり、細長く平らに削った竹串、細長く平らに作った木串などが例示される。具体的な大きさは使用目的に応じ適宜変更できる。例えば、遊園地などの使用目的では、1個が焼きあがり50gの三角形の焼きおにぎり2個を串ざしする場合、幅10mm、長さ140mm、厚み2mmの木串が使用される。料理店などの使用目的では、1個が焼きあがり50gの三角形の焼きおにぎり2個を串ざしする場合、幅9mm、長さ140mm、厚み2mmの竹串が使用される。
【0007】本発明の原料焼きおにぎりは、任意の形状のおにぎりを一次焼き、二次焼きと2回焼きされた焼きおにぎりである。串ざし焼きだんごではなく、串ざし焼きおにぎりであるので、焼きおにぎりはある程度の大きさを持っているほうが好ましい。1個が焼きあがり50gなどのある程度の大きさを持っている焼きおにぎりを複数個、例えば2個串ざししたものが串ざし焼きおにぎりらしくて好ましい。形状は任意であるが、細長く平らな串の平らな面に対して成形時に加圧して固定力を高めるために、三角形などの表裏両面にほぼ平らな面を有する偏平な形状が好ましい。
【0008】任意の形状のおにぎりは炊飯後風乾、真空冷却などで飯粒子の表面の水分を飛ばし60%前後に調整した米飯の通常の成形機による成形品である。炊飯によって美味しく炊き上った、水分が約65%程度含まれる米飯を、風乾、真空冷却などで飯粒子の表面の水分を飛ばし60%前後に調整するときの消失水分は、好ましくは米粒の全重量中の3重量%前後の水分が消失されるようにする。上記消失水分が多すぎると米粒間の結着性を失い、成形性、強度が低下し、食感も悪くなる傾向がある。また上記消失水分が少なすぎると、米粒に柔らかさが残るため、混合、成形時に練られることによる米粒内の澱粉の流出が起こり、成形性、米粒の残存性が低下する傾向がある。このように炊飯後表面水分を調整すると、米飯粒子表面が適度な弾性力を持った硬さを有するようになり、混合成形時の外部応力への抵抗性が高められ、米飯粒子内の澱粉の溶出が押さえられるため、おにぎり成形時に加圧してものり部分が露出することなく、大巾に成形性が向上する。上記表面の乾燥手段は、例えば、150℃の熱風乾燥機、真空冷却機や冷風冷却機等が挙げられ、真空冷却機の場合は、減圧状態で急速に冷却しながら上記範囲の水分に調節することができるので、米粒表面が適度に弾性力のある硬さを保持し、かつ衛生的であるので好適である。
【0009】本発明の串ざし焼きおにぎりは串の平らな面で食感が固すぎない焼きおにぎりを強く固定している。その固定の強さは、串を持って摂食中に串から外れることがない強さであるが、焼きおにぎりの食感を犠牲にすることがなく、すなわちかたく固めすぎることなくしっかりと固定する強さである。具体的には本発明の串ざし焼きおにぎりは、串ざし焼きおにぎりの食感が官能テストで普通または固すぎないという評価を受けるものであって、次のように実施する虐待テストに耐え得る程度の固着力と結着力を有しているものである。虐待テストは、1個が焼きあがり50gの三角形の焼きおにぎり2個を、幅10mm、長さ150mm、厚み2mmの木串に串ざししたものの冷凍品を、500Wの電子レンジで2分30秒解凍し、串を持って軽く20回振る、という方法で行う。サンプル数150の結果は、本発明品は100%が割れない、というものであった。
【0010】本発明の串ざし焼きおにぎりの製造方法について説明すると、原料焼きおにぎりに細長く平らな串を刺すこと、串を刺す際に型に入れ圧力をかけながら刺すこと、串を刺した後に、米粒が復元しないように再度圧力をかけること、により串ざし焼きおにぎりが製造される。上記製造に使用する製造装置は本出願前市販されている自動串刺機を、串を刺す際に原料焼きおにぎりを入れる型を設け、串を刺した後に、米粒が復元しないように再度圧力をかける押圧手段を付加するなど串ざし焼きおにぎり用に改良したものである。
【0011】本発明の串焼きおにぎりは、冷凍焼きおにぎりの変形した商品であり、通常、冷凍にて流通される。一般に、市販のおにぎりは、常温、チルド温域、または冷凍にて流通されている。上記おにぎりは、人手であるいは成形機を用いて製造される。この場合、おにぎりが適度な食感を持ち、形状を保つためには、米飯がつぶれない程度に外部応力をくわえて米飯表面のα化デンプンの結着性を適度に強めることが必要である。しかし、このようにして製造されたおにぎりは、冷凍保存すると、米粒同志の結着力が低下し、解凍したときに保型性、食感が悪くなるという欠点があった。また、米飯表面の結着性とその形状を保つためにくわえられる外部応力の強さの調整はその形状、米質などによって変わってくる。しかし、本発明の串ざし焼きおにぎりは冷凍しても、冷凍品を解凍し食すると、食感が官能テストで普通または固すぎないという評価を受けるものであって、虐待テストに耐え得る程度の固着力と結着力を有しているものであるから、長時間保存に耐えられるものである。
【0012】
【作用】細長く平らな形状の串を採用することにより、串の平らな面とおにぎりの表裏両面のほぼ平らな面とが平行になり、押圧が効果的に作用し固めすぎることなく串の平らな面に米飯をしっかりと固定することができる。米飯そのものの粘着力のみによって米飯と串とに安定な固定力を生じて、米飯のくずれや串からのはずれを防止することができ、安定した状態で形状を保持し、しかも串を持つことにより簡単に食感良好な米飯を食することができ、米飯に手を触れることなく食することができて衛生的であり、また携行に便利である。また、焼きおにぎりにした後串ざし、圧し固定することにより、特に型に入れ圧力をかけながら刺すことにより、米飯全体を固めすぎることなく串の平らな面に米飯をしっかりと固定することができる。また、米飯に結着剤など余分の添加剤を入れていないことにより、米飯そのものの美味しさが味わうことができるし、醤油の香ばしさを生かすことができる。
【0013】
【実施例】本願発明の詳細を実施例で説明する。本願発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
【0014】実施例1以下、本発明の実施例を図1及び図2により説明する。図1は本発明の一実施例を示すものであり、1個が焼きあがり50gの三角形の焼きおにぎり2個を串ざしした焼きおにぎりの上面図である。串として、幅10mm、長さ140mm、厚み2mmの細長く平らな形状の木串が使用されている。図2の断面図に示されるように串は2個の焼きおにぎりの中心部を突き抜けほぼ頂点に達しており、串とおにぎりの固着面積を大きくしている。
【0015】図1の三角形の焼きおにぎり2個を串ざしした焼きおにぎりの製造方法を説明する。洗米した粳米を常法により炊飯する。炊き上がった米飯をほぐし真空冷却で飯粒子の表面の水分を飛ばし60%前後に調整する。次に、成形工程において、米飯を適量、例えば60グラム程度に型枠に詰めて三角形のおにぎりに成形する。三角形のおにぎりを一次焼きし、二次焼きのとき表裏両面に醤油をぬって香ばしく焼き上げ、焼きあがり50gの三角形の焼きおにぎりを得る。串ざしは、上記の細長い平らな杉串を使用する。串ざし焼きおにぎりは、1個のおにぎりを成形する型を2個並べて有する成形型に焼き上がり50gの焼きおにぎりを2ケ入れ、上記杉串を成形型の串挿入部より挿し込み焼き上がり50gの焼きおにぎりを2ケ串ざしにする。再成形に際しては、(a)2次焼きしたものに串を刺すこと、(b)串を刺す際に型に入れて、圧力をかけながら刺すこと、(c)串を刺した後に、米粒が復元せぬよう再度圧力をかけることを実行した。
【0016】比較例1「2次焼きしたものに串を刺すこと」を実行せず、表面を焼かないおにぎりについて、「串を刺す際に型に入れて、圧力をかけながら刺すこと」および「串を刺した後に、米粒が復元せぬよう再度圧力をかけること」を実行したもの。
【0017】比較例2「2次焼きしたものに串を刺すこと」および「串を刺す際に型に入れて、圧力をかけながら刺すこと」は実行したが、「串を刺した後に、米粒が復元せぬよう再度圧力をかけること」を実行しなかったもの。
【0018】虐待テストおよび官能テストの結果虐待テストは、上述のとおりの方法で行った。サンプル数150の虐待テストの結果は、本発明の実施例品は100%が虐待テストを克服した。比較例1は0%、比較例2は60%が克服し、40%に割れが発生した。官能テストは、虐待テストを克服した本発明の実施例品について、よく訓練されたパネラー10名によって食感を調べた。評価は、軟らかい、普通、やや固い、固い、固すぎる)の5段階評価で行った。全員10名が普通の結果であった。
【0019】
【発明の効果】本発明は、摂食中に米飯がくずれたり串からはずれることがなく、かつ食感も良好で、炊飯した米飯そのままの状態で串に固定した串ざし焼きおにぎりを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の串ざし焼きおにぎりの斜め上方からの上面図である。
【図2】図1の串ざし焼きおにぎりの厚さ半分のところでの断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 串ざし焼きおにぎりであって、その串が細長く平らな形状であり、その平らな面で食感が固すぎない焼きおにぎりを強く固定していることを特徴とする串ざし焼きおにぎり。
【請求項2】 固定の強さが、串を持って摂食中に串から外れることがない強さである請求項1の串ざし焼きおにぎり。
【請求項3】 2回焼きされた焼きおにぎりである請求項1または2の串ざし焼きおにぎり。
【請求項4】 2個の焼きおにぎりを串ざししたものである請求項1、2または3の串ざし焼きおにぎり。
【請求項5】 焼きおにぎりが三角形の焼きおにぎりである請求項1ないし4のいずれかの串ざし焼きおにぎり。
【請求項6】 串が、細長く平らに削った竹串である請求項1ないし5のいずれかの串焼きおにぎり。
【請求項7】 串が、細長く平らに作った削った木串である請求項1ないし5のいずれかの串焼きおにぎり。
【請求項8】 焼いたおにぎりに細長く平らな串を刺すこと、串を刺す際に型に入れ圧力をかけながら刺すこと、串を刺した後に、米粒が復元しないように再度圧力をかけることにより製造された請求項1ないし7のいずれかの串焼きおにぎり。
【請求項9】 冷凍品である請求項1ないし8のいずれかの串ざし焼きおにぎり。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開平10−234321
【公開日】平成10年(1998)9月8日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−57062
【出願日】平成9年(1997)2月25日
【出願人】(000004189)日本水産株式会社 (119)