説明

組成物並びにその製造方法、該組成物を利用した電極及び該電極を採用した燃料電池

【課題】組成物並びにその製造方法、該組成物を利用した電極及び該電極を採用した燃料電池を提供する。
【解決手段】ポリオキサジン系化合物が、アルコール、水、酸及び炭化水素系溶媒からなる群から選択される一つ以上の分散媒に均一に分散され、該粒径が、0.5ないし10μmである分散組成物であり、該組成物が、オキサジン系モノマーを酸と混合し、オキサジン系モノマーの酸溶液を準備する工程と、オキサジン系モノマーの酸溶液を熱処理して重合生成物を得る工程と、前記重合生成物からポリオキサジン系化合物を分離する工程と、前記ポリオキサジン系化合物を分散媒に分散させる工程により製造される方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物並びにその製造方法、該組成物を利用した電極及び該電極を採用した燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
高温(150ないし200℃)で作動させるリン酸型燃料電池では、電解質として、液体であるリン酸を使用するが、この液状のリン酸が電極内に多量で存在し、ガス拡散を阻害させるという問題点が生じる。従って、電極触媒に撥水剤であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を混合し、電極内の細孔が、リン酸によって塞がることを防止できる電極触媒層が使われている。
【0003】
高温無加湿の高分子電解質型燃料電池(PEMFC)は、150ないし200℃の温度で運転される。かかる温度で長時間の運転期間の間作動するためには、電極の材料も長寿命を保有しなければならない。
【0004】
電極を形成するのに使われるバインダーは、電極内のリン酸分布と構造形成に重要な役割を果たし、運転期間の間に電極の性能を維持するのに重要な役割を果たす。電極のバインダーとしては、PTFEのような撥水性ポリマーが使われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/256296A号
【特許文献2】大韓民国公開特許公報2009−0045655号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、これまで知られたバインダーは、耐リン酸性及び耐熱性が満足すべきレベルに達しておらず、改善の余地が多い。
【0007】
本発明は、分散性にすぐれた組成物並びにその製造方法、該組成物を利用した電極及び該電極を採用した燃料電池を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面によって、ポリオキサジン系化合物粒子と、前記ポリオキサジン系化合物粒子が分散されている分散媒とを含む組成物が提供される。
【0009】
本発明の他の側面によって、オキサジン系モノマーを酸と混合し、オキサジン系モノマーの酸溶液を準備する工程と、前記オキサジン系モノマーの酸溶液を熱処理して重合する工程と、前記重合の生成物からポリオキサジン系化合物を分離する工程と、前記ポリオキサジン系化合物を分散媒に分散させる工程と、を含む前述の組成物の製造方法が提供される。
【0010】
本発明のさらに他の側面によって、支持体と、前記支持体上に形成され、前述の組成物のコーティング生成物を含有する触媒層とを含む電極、並びにこれを採用した燃料電池が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一具現例による組成物は、小さな平均粒径を有するポリオキサジン系化合物粒子が分散媒に均一に分散された状態であり、これは、電極触媒層に均一に分散可能であり、これを利用すれば、リン酸保有力、並びに高温及び酸に対する耐久性が改善された電極を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、実施例1によって得たポリベンゾオキサジン系化合物の平均粒径分析写真である。
【図2】図2は、実施例1,3,4によって製造したポリベンゾオキサジン系化合物における熱重量分析グラフである。
【図3】図3は、製造例1、比較製造例1及び2によって製造した燃料電池において、カソード反応に使われる白金触媒面積を分析したグラフである。
【図4】図4は、製造例1、比較製造例1及び2によって製造した燃料電池において、電流密度によるセル電圧特性を示したグラフである。
【図5】図5は、製造例2−4及び比較製造例1によって製造した燃料電池において、電流密度によるセル電圧特性を示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ポリオキサジン系化合物粒子と、前記ポリオキサジン系化合物粒子が分散されている分散媒と、を含むポリオキサジン系化合物の組成物を提供する。
【0014】
前記「ポリオキサジン系化合物粒子が分散されている」ということは、ポリオキサジン系化合物粒子が分散媒に溶解されていない状態で存在することを意味する。このように、ポリオキサジン系化合物粒子が分散媒に溶解されずに分散された状態で存在すれば、多様な分散媒を使用できるというメリットがある。
【0015】
前記分散媒は、ポリオキサジン系化合物粒子を分散する溶媒であり、密度が0.5ないし2.0mg/cmである有機化合物を使用できる。
もし分散媒の密度が前記範囲であるとき、ポリオキサジン系化合物粒子の分散性が優秀である。
【0016】
前記分散媒としては、アルコール、水、酸及び炭化水素系溶媒からなる群から選択される一つ以上を使用できる。
前記炭化水素系溶媒の例としては、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、トルエン、ベンゼン、キシレンなどがあり、前記アルコールの例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどがある。
前記酸としては、リン酸系物質を使用する。
前記リン酸系物質の例としては、ポリリン酸、ホスホン酸(HPO)、有機ホスホン酸、オルトリン酸(HPO)、ピロリン酸(H)、トリリン酸(H10)メタリン酸、またはその誘導体などを挙げることができる。
前記酸の濃度は、少なくとも80重量%、90重量%、95重量%または98重量%でありうる。例えば、酸の濃度は、80ないし98重量%である。
【0017】
前記ポリオキサジン系化合物の組成物で、ポリオキサジン系化合物粒子の含有量は、ポリオキサジン系化合物の組成物の総重量を基準として、1ないし80重量%である。
【0018】
前記組成物は、電極触媒層形成用の組成物、例えば、燃料電池の電極触媒層の形成時に利用可能である。
【0019】
前記組成物の製造過程について説明する。
【0020】
ポリオキサジン系化合物は、オキサジン系モノマーを重合して形成され、耐酸性と耐熱性とを有する。ところで、ポリオキサジン系化合物は、強度が大きく、小径を有する粉末に加工し難い。オキサジン系モノマーからポリオキサジン系化合物を形成する高分子形成過程で、小粒子サイズに分散された高分子を得るために、酸触媒工程を使用する。
【0021】
まず、オキサジン系モノマーを酸に溶解し、オキサジン系モノマーの酸溶液を準備する。
前記オキサジン系モノマーを酸に溶解する工程は、50ないし100℃で行う。オキサジン系モノマーの酸溶解が、前記温度で行うとき、オキサジン系モノマーの溶解度が高まって重合反応の収率が高まる。
【0022】
次に、このオキサジン系モノマーの酸溶液を熱処理して重合反応を実施する。
前記酸溶液は、酸と水とからなる。
前記酸としては、リン酸系物質を使用できる。
前記リン酸系物質としては、ポリリン酸、ホスホン酸、有機ホスホン酸、オルトリン酸、ピロリン酸、トリリン酸、メタリン酸、またはその誘導体などを例に挙げることができる。
ポリリン酸は、例えば、Riedel-de Haen社から入手可能な一般的なポリリン酸である。前記ポリリン酸(Hn+2PnO3n+1(n>1)は、一般的に少なくとも85%P濃度として計算される(酸滴定(acidimetry)による)。
【0023】
前記酸の濃度は、少なくとも80重量%、90重量%、95重量%または98重量%でありうる。例えば、酸の濃度は、80ないし98重量%である。
【0024】
前記酸の含有量は、オキサジン系モノマー100重量部を基準として、1,000ないし100,000重量部、例えば、6,000ないし20,000重量部である。酸の含有量が前記範囲であるとき、オキサジン系モノマーの重合反応の反応性が優秀である。
【0025】
前記熱処理は、150ないし250℃、例えば、150ないし200℃で行われる。熱処理温度が前記範囲であるとき、最終的に得たポリオキサジン系化合物の組成物内に含まれたポリオキサジン系化合物の粒子サイズが小さくて収率が優秀である。
【0026】
前記重合の生成物をワークアップ処理し、ポリオキサジン系化合物を分離する。
前記ワークアップ過程は、例えば、重合生成物に水を添加し、遠心分離機を使用して遠心分離を実施し、酸成分を除去して固体を分離する過程である。
【0027】
前記分離したポリベンゾオキサジン系化合物に水を添加し、ポリオキサジン系化合物の組成物を得ることができる。
【0028】
前記組成物は、1ないし80重量%のポリオキサジン系化合物を含み、前記ポリオキサジン系化合物の平均粒径は、0.5ないし10μmである。
前述の組成物で、ポリオキサジン系化合物の含有量が前記範囲であるとき、分散性が優秀である。そして、前述のポリオキサジン系化合物の組成物で、ポリオキサジン系化合物が前述の粒径範囲を有するとき、電極触媒層での分散性が優秀である。
【0029】
前記ポリオキサジン系化合物は、300℃までの温度で耐熱性にすぐれ、約150ないし200℃、例えば、約180℃の温度でリン酸のような酸に溶解されない。そして、リン酸のような酸の保有能が優秀である。また、従来のオキサジン系モノマーを利用して電極を形成する場合、未反応オキサジン系モノマーが電極内で不純物として存在し、電極の性能が低下するという問題点を未然に予防することができる。
【0030】
前記過程によって得られた組成物は、燃料電池用電極のバインダーとして使用可能である。
【0031】
前記オキサジン系モノマーは、特別に制限されるものではなく、例えば、下記化学式1ないし6で表示される化合物のうちから選択された一つ以上を使用できる。
【0032】
【化1】

【0033】
(前記化学式1で、R,R,R及びRは互いに独立して、水素、置換または非置換のC−C20アルキル基、置換または非置換のC−C20アルコキシ基、置換または非置換のC−C20アルケニル基、置換または非置換のC−C20アルキニル基、置換または非置換のC−C20アリール基、置換または非置換のC−C20アリールオキシ基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリール基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリールオキシ基、置換または非置換のC−C20炭素環基、置換または非置換のC−C20炭素環オキシ基、置換または非置換のC−C20ヘテロ環基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、またはシアノ基であり、Rは、置換または非置換のC−C20アルキル基、置換または非置換のC−C20アルコキシ基、置換または非置換のC−C20アルケニル基、置換または非置換のC−C20アルキニル基、置換または非置換のC−C20アリール基、置換または非置換のC−C20アリールオキシ基、置換または非置換のC−C20アリールアルキル基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリール基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリールオキシ基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリールアルキル基、置換または非置換のC−C20炭素環基、置換または非置換のC−C20炭素環アルキル基、置換または非置換のC−C20ヘテロ環基、または置換または非置換のC−C20ヘテロ環アルキル基である);
【0034】
【化2】

【0035】
(前記化学式2で、R’は、置換または非置換のC−C20アルキル基、置換または非置換のC−C20アルコキシ基、置換または非置換のC−C20アルケニル基、置換または非置換のC−C20アルキニル基、置換または非置換のC−C20アリール基、置換または非置換のC−C20アリールオキシ基、置換または非置換のC−C20アリールアルキル基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリール基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリールオキシ基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリールアルキル基、置換または非置換のC−C20炭素環基、置換または非置換のC−C20炭素環アルキル基、置換または非置換のC−C20ヘテロ環基、または置換または非置換のC−C20ヘテロ環アルキル基であり、Rは、置換または非置換のC−C20アルキレン基、置換または非置換のC−C20アルケニレン基、置換または非置換のC−C20アルキニレン基、置換または非置換のC−C20アリーレン基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリーレン基、−C(=O)−、−SO−からなる群から選択される);
【0036】
【化3】

【0037】
(前記化学式3で、A,B,C,D,Eは、いずれも炭素であるか、またはA,B,C,D,Eのうちから選択された一つまたは二つは窒素(N)であり、その残りは炭素(C)であり、R及びRは、互いに連結されて環を形成し、前記環が、C−C10シクロアルキル基、C−C10ヘテロアリール基、C−C10ヘテロ縮合アリール基、C−C10ヘテロ環基またはC3−C10ヘテロ縮合環基である);
【0038】
【化4】

【0039】
(前記化学式4で、A’は、置換または非置換のC−C20ヘテロ環基、置換または非置換のC−C20シクロアルキル基、または置換または非置換のC−C20アルキル基であり、RないしR16は互いに独立して、水素、C−C20アルキル基、C−C20アルコキシ基、C−C20アリール基、C−C20アリールオキシ基、C−C20ヘテロアリール基、C−C20ヘテロアリールオキシ基、C−C20シクロアルキル基、C−C20ヘテロ環基、ハロゲン原子、シアノ基、またはヒドロキシ基である);
【0040】
【化5】

【0041】
(前記化学式5で、R17及びR18は互いに独立して、C−C20アルキル基、C−C20アルコキシ基、C−C20アリール基、C−C20アリールオキシ基、または下記化学式5Aで表示される基である);
【0042】
【化5A】

【0043】
(前記化学式5及び5Aで、R19及びR19’は互いに独立して、水素、C−C20アルキル基、C−C20アルコキシ基、C−C20アリール基、C−C20アリールオキシ基、ハロゲン化されたC−C20アリール基、ハロゲン化されたC−C20アリールオキシ基、C−C20ヘテロアリール基、C−C20ヘテロアリールオキシ基、ハロゲン化されたC−C20ヘテロアリール基、ハロゲン化されたC−C20ヘテロアリールオキシ基、C−C20シクロアルキル基、ハロゲン化されたC−C20シクロアルキル基、C−C20ヘテロ環基、またはハロゲン化されたC−C20ヘテロ環基である);
【0044】
【化6】

【0045】
(前記化学式6で、R20,R21及びR22のうちから選択された隣接した二つ以上の基は、互いに連結され、下記化学式6Aで表示される基であり、前記R20,R21及びR22のうちから選択されていない残りの基は、水素、C−C20アルキル基、C−C20アルコキシ基、C−C20アリール基、C−C20アリールオキシ基、ハロゲン化されたC−C20アリール基、ハロゲン化されたC−C20アリールオキシ基、C−C20ヘテロアリール基、C−C20ヘテロアリールオキシ基、ハロゲン化されたC−C20ヘテロアリール基、ハロゲン化されたC−C20ヘテロアリールオキシ基、C−C20炭素環基、ハロゲン化されたC−C20炭素環基、C−C20ヘテロ環基、またはハロゲン化されたC−C20ヘテロ環基であり、R23,R24及びR25のうちから選択された隣接した二つ以上の基は、互いに連結され、下記化学式6Aで表示される基であり、前記R23,R24及びR25のうちから選択されていない残りの基は、C−C20アルキル基、C−C20アルコキシ基、C−C20アリール基、C−C20アリールオキシ基、ハロゲン化されたC−C20アリール基、ハロゲン化されたC−C20アリールオキシ基、C−C20ヘテロアリール基、C−C20ヘテロアリールオキシ基、ハロゲン化されたC−C20ヘテロアリール基、ハロゲン化されたC−C20ヘテロアリールオキシ基、C−C20炭素環基、ハロゲン化されたC−C20炭素環基、C−C20ヘテロ環基、またはハロゲン化されたC−C20ヘテロ環基である);
【0046】
【化6A】

【0047】
(前記化学式6Aで、R’は、置換または非置換のC−C20アルキル基、置換または非置換のC−C20アルコキシ基、置換または非置換のC−C20アルケニル基、置換または非置換のC−C20アルキニル基、置換または非置換のC−C20アリール基、置換または非置換のC−C20アリールオキシ基、置換または非置換のC−C20アリールアルキル基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリール基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリールオキシ基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリールアルキル基、置換または非置換のC−C20炭素環基、置換または非置換のC−C20炭素環アルキル基、置換または非置換のC−C20ヘテロ環基、または置換または非置換のC−C20ヘテロ環アルキル基であり、*は、化学式6のR20,R21及びR22のうちから選択された隣接した二つ以上の基と、R23,R24及びR25のうちから選択された隣接した二つ以上の基とにそれぞれ連結される位置を表示し、
【0048】
前記化学式6Aで、R’は、下記構造式で表示される基のうちから選択された一つである)。
【化7】

【0049】
前記化学式1で表示される化合物の例として、下記化学式7ないし56で表示される化合物を挙げることができる。
【0050】
【化8A】

【化8B】

【化8C】

【化8D】

【化8E】

【化8F】

【0051】
前記化学式2で表示される化合物の例として、下記化学式56ないし60で表示される化合物を挙げることができる。
【0052】
【化9】

【0053】
(前記化学式56−60で、Rは、4−tert−ブチルフェニル基、−CH−CH=CH、または下記化学式61で表示される基のうちから選択される。)
【0054】
【化10】

【0055】
例えば、前記化学式2の化合物は、下記化学式62,63,64,65及び66で表示される化合物のうちから選択されうる。
【0056】
【化11】

【0057】
前記化学式3で表示される化合物の例として、下記化学式67ないし70で表示される化合物がある。
【0058】
【化12】

(前記化学式67で、R”’は、水素またはC1−C10アルキル基である);
【0059】
【化13】

【0060】
(前記化学式67ないし70で、前記:
【化14】

は、下記化学式71:
【化15】

で表示される基のうち一つである。)
【0061】
前記化学式3で表示される化合物の例は、下記化学式72ないし94で表示される化合物のうちから選択される。
【0062】
【化16A】

【化16B】

【化16C】

【0063】
前記化学式4で表示される化合物で、A’は、下記化学式95または96で表示される基のうち一つでありうる。
【0064】
【化17】

【0065】
(前記化学式95及び96で、Rは、水素、C−C20アルキル基、C−C20アルコキシ基、C−C20アリール基、C−C20アリールオキシ基、ハロゲン化されたC−C20アリール基、ハロゲン化されたC−C20アリールオキシ基、C−C20ヘテロアリール基、C−C20ヘテロアリールオキシ基、ハロゲン化されたC−C20ヘテロアリール基、ハロゲン化されたC−C20ヘテロアリールオキシ基、C−C20炭素環基、ハロゲン化されたC−C20炭素環基、C−C20ヘテロ環基、またはハロゲン化されたC−C20ヘテロ環基である。)
【0066】
前記化学式4の化合物は、下記化学式97または98で表示される化合物でありうる。
【0067】
【化18】

【0068】
(前記化学式97及び98で、Rは、下記化学式99で表示される基のうちから選択された一つである。)
【0069】
【化19】

【0070】
前記化学式4の化合物の例としては、下記化学式100ないし106で表示される化合物のうちから選択された一つを挙げることができる。
【0071】
【化20A】

【化20B】

【0072】
前記化学式5で表示される化合物の例として、下記化学式107,108または110で表示される化合物がある。
【0073】
【化21】

【0074】
(前記化学式107及び108で、R17’は、C−C10アルキル基、C−C10アルコキシ基、C−C10アリール基、またはC−C10アリールオキシ基であり、R19’は、下記化学式109で表示される基のうちから選択される。)
【化22】

【0075】
【化23】

【0076】
(前記化学式110で、R17’は、C−C10アリール基であり、R19’は、下記化学式111で表示される基のうちから選択される。)
【0077】
【化23A】

【0078】
前記化学式5の化合物は、下記化学式112ないし116,117または118で表示される化合物でありうる。
【0079】
【化24】

【0080】
前記化学式6で表示される化合物の例として、下記化学式119ないし121で表示される化合物を挙げることができる。
【0081】
【化25】

【0082】
(前記化学式119ないし121で、Rは、下記化学式122で表示される基のうち一つである。)
【0083】
【化26】

【0084】
前記化学式6の化合物の具体的な例として、下記化学式123ないし130で表示される化合物を挙げることができる。
【0085】
【化27A】

【化27B】

【0086】
前記組成物に含有させるポリオキサジン系化合物としては、下記化学式16の化合物(4FPh2AP)、下記化学式28の化合物(3,4−FPh4FA)、下記化学式66の化合物、下記化学式62の化合物(HF−a)、下記化学式89の化合物(3HP2AP)、下記化学式115の化合物(PPO)のうちから選択された一つ以上を使用する。
【0087】
【化28】

【0088】
本発明の一具現例によれば、前述の組成物のコーティング生成物を含む触媒層を有する電極が提供される。
【0089】
前記用語「組成物のコーティング生成物」は、ポリオキサジン系化合物の組成物をコーティングして得た生成物、またはコーティング及び熱処理して得た生成物を指し、前記コーティング及び/または熱処理温度によってポリオキサジン系化合物の組成物の中に含まれた分散媒だけ除去された状態、すなわち、ポリオキサジン系化合物自体を指すこともあり、前記ポリオキサジン系化合物の硬化生成物を示すこともできる。
【0090】
以下、前記組成物を利用して電極を製造する過程について説明する。
前記電極は、例えば、燃料電池用電極として使用可能である。
【0091】
触媒、前述の組成物及び溶媒を混合して、電極触媒層形成用の組成物を準備する。
【0092】
前記溶媒としては、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、水、酸などを使用し、前述の化学式1で表示される化合物および前述の化学式2で表示される化合物から選択された一つ以上の含有量は、触媒1重量部を基準として、0.001ないし0.5重量部であり、例えば、0.001ないし0.1重量部である。前述の化学式1で表示される化合物および前述の化学式2で表示される化合物から選択される一つ以上の含有量が前記範囲であるとき、支持体に対する電極触媒層の結着力が優秀である。
【0093】
前記触媒としては、白金(Pt)単独;または金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、スズ、モリブデン、コバルト、クロムからなる群から選択された一種以上の金属と白金との合金または混合物を使用する。または、前記触媒は、前述の白金(Pt)単独;または金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、スズ、モリブデン、コバルト、クロムからなる群から選択された一種以上の金属と白金との合金または混合物が、カーボン系担体に担持された担持触媒でありうる。
【0094】
前記電極触媒層形成用の組成物を支持体上に塗布し、かつ乾燥させて触媒層を形成させ、燃料電池用電極を形成する。
【0095】
前記組成物のポリオキサジン系化合物の含有量は、触媒1重量部を基準として、0.001ないし20重量部である。
ポリオキサジン系化合物の含有量が前記範囲である場合、支持体に対する電極触媒層の結着力が優秀である。
【0096】
前記コーティング液をカーボン支持体表面にコーティングして、電極を完成する。ここで、カーボン支持体は、ガラス基板上に固定することが、コーティング作業するのに容易である。そして、前記コーティング法としては、特別に制限されるものではないが、ドクターブレードを利用したコーティング、バーコーティング(bar coating)、スクリーン・プリンティングのような方法を利用できる。
【0097】
前記コーティング液をコーティング後に乾燥させる過程を経るが、溶媒を除去する過程として、20ないし150℃の温度範囲で実施する。そして、乾燥時間は、乾燥温度によって異なり、10分ないし60分の範囲内で実施する。
【0098】
前記電極を、酸に含浸させる工程をさらに経ることもできる。
【0099】
また、前述の電極触媒層形成用の組成物は、架橋性化合物をさらに含むことができる。
【0100】
前記架橋性化合物は、前記化学式1で表示される化合物と、化学式2で表示される化合物とのうち選択された一つ以上と架橋できる官能基を有している化合物であるならば、いずれも使用可能である。
前記架橋性化合物は、例えば、窒素含有芳香族化合物であるならば、いずれも使用可能であり、具体的には、五員環(five membered cycle)の窒素含有芳香族化合物、ポリピリミジンのような六員環(six membered cycle)の窒素含有芳香族化合物などが使用可能である。
前記架橋性化合物の例としては、ポリアゾール系物質、ポリイミド及びポリオキサゾールのうち選択された一つ以上の高分子を挙げることができる。
【0101】
前記架橋性化合物の含有量は、ポリオキサジン系化合物100重量部を基準として、10ないし500重量部である。架橋性化合物の含有量が前記範囲であるとき、ポリオキサジン系化合物の耐熱性に、ポリアゾールの追加的なリン酸含浸力が加えられる。
前記架橋性化合物として、ポリアゾール系物質を使用する場合、最終的に得られる生成物は、前記化学式1で表示される化合物および化学式2で表示される化合物から選択された一つ以上の重合体と、ポリアゾール系物質とのグラフト重合によって得られたグラフト共重合体を形成する。
【0102】
前記用語「化学式1で表示される化合物と、化学式2で表示される化合物とのうち選択された一つ以上と、ポリアゾール系物質との重合反応生成物」は、前述の構造を含む意味として用いる。
【0103】
前記ポリアゾール系物質は、高分子内の反復単位が少なくとも、1つの窒素元素を有するアリール環一つ以上を含む高分子をいう。
【0104】
前記アリール環は、1個ないし3個の窒素原子を有する五員環または六員環が、他の環、例えば、他のアリール環またはヘテロアリール環に縮合(fused)した構造を有することができる。これと関連して、前記窒素原子は、酸素原子、リン原子及び/または硫黄原子によって置換可能である。前記アリール環の代表的な例として、フェニル、ナフチル、ヘキサヒドロインジル(hexahydroindyl)、インダニル(indanyl)、またはテトラヒドロナフチルである。
【0105】
前記ポリアゾール系物質は、前述のように、反復単位内に少なくとも1つのアミノ基を有する。これと関連して、アミノ基は、アリール環の一部分、またはアリール・ユニットの置換基部分であり、一級アミノ基、二級アミノ基または三級アミノ基として存在しうる。
【0106】
前記用語「アミノ基」は、窒素原子が、少なくとも1つの炭素またはヘテロ原子に共有結合された場合を示す。アミノ基は、例えば、−NH及び置換された分子部分(substituted moieties)を含む。
【0107】
前記用語「アルキルアミノ基」は、窒素が少なくとも1つのアルキル基に結合されたアルキルアミノ、窒素が少なくとも一つまたは二つ以上独立して選択されたアリール基に結合された「アリールアミノ」基及び「ジアリールアミノ」基を含む。
【0108】
ポリアゾール系物質及びこれを含有した高分子フィルムの製造方法は、US2005/256296A号に公示されている。
【0109】
本発明の一具現例によれば、前記ポリアゾール系物質としては、下記化学式131ないし144で表示されるアゾール・ユニットを含むポリアゾール系物質である。
【0110】
【化29A】

【化29B】

【0111】
前記化学式131ないし144で、
Arは、互いに同一であるか、あるいは異なっており、単環または多環である二価のC−C20アリール基またはC−C20ヘテロアリール基であり、
Arは、互いに同一であるか、あるいは異なっており、それらそれぞれは、単環または多環である四価のC−C20アリール基またはC−C20ヘテロアリール基であり、
Arは、互いに同一であるか、あるいは異なっており、それらそれぞれは、単環または多環である二価のC−C20アリール基またはC−C20ヘテロアリール基であり、Ar2は、互いに同一であるか、あるいは異なっており、それらそれぞれは、単環または多環である二価または三価のC−C20アリール基またはC−C20ヘテロアリール基であり、
Arは、互いに同一であるか、あるいは異なっており、単環または多環である三価のC−C20アリール基またはC−C20ヘテロアリール基であり、
Arは、互いに同一であるか、あるいは異なっており、それらそれぞれは、単環または多環である三価のC−C20アリール基またはC−C20ヘテロアリール基であり、
Arは、互いに同一であるか、あるいは異なっており、それらそれぞれは、単環または多環である四価のC−C20アリール基またはC−C20ヘテロアリール基であり、
Arは、互いに同一であるか、あるいは異なっており、単環または多環である二価のC−C20アリール基またはC−C20ヘテロアリール基であり、
Arは、互いに同一であるか、あるいは異なっており、単環または多環である二価のC−C20アリール基またはC−C20ヘテロアリール基であり、
Arは、互いに同一であるか、あるいは異なっており、単環または多環である三価のC−C20アリール基またはC−C20ヘテロアリール基であり、
Arは、互いに同一であるか、あるいは異なっており、単環または多環である二価、三価または四価のC−C20アリール基またはC−C20ヘテロアリール基であり、
Ar10は、互いに同一であるか、あるいは異なっており、単環または多環である二価または三価のC−C20アリール基またはC−C20ヘテロアリール基であり、
Ar11は、互いに同一であるか、あるいは異なっており、単環または多環である二価のC−C20アリール基またはC−C20ヘテロアリール基であり、
ないしX11は、同一であるか、あるいは異なっており、酸素、硫黄または−N(R’)であり、前記R’は、水素、C−C20アルキル基、C−C20アルコキシ基、C−C20アリール基であり、
は同一であるか、あるいは異なっており、水素、C−C20アルキル基またはC−C20アリール基を示し、
,nないしn16及びmは互いに独立して、10以上の整数であり、例えば、100以上の整数であり、100ないし100,000である。
【0112】
前記アリール基またはヘテロアリール基は、例えば、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルメタン、ジフェニルジメチルメタン、ビスフェノン、ジフェニルスルホン、キノリン、ピリジン、ビピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、テトラアジン、ピロール、ピラゾール、アントラセン、ベンゾピロール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサチアゾール、ベンゾオキサチアゾール、ベンゾピリジン、ベンゾピラジン、ベンゾピラジジン、ベンゾピリミジン、ベンゾトリアジン、インドラジン、キノリジン、ピリドピリジン、イミダゾピリミジン、ピラジノピリミジン、カルバゾール、アジリジン、フェナジン、ベンゾキノリン、フェノキサジン、フェノチアジン、アクリジジン、ベンゾプテリジン、フェナントロリンまたはフェナントレンであり、それらは置換基を有することができる。
【0113】
前記Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar10、Ar11は、あらゆる可能な置換パターンを有することができる。例えば、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar10及びAr11がフェニレンである場合には、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar10及びAr11は、オルトフェニレン、メタフェニレンまたはパラフェニレンである。
【0114】
前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基及びt−ブチル基のようなC−C単鎖アルキル基であり、前記アリール基は、例えば、フェニル基またはナフチル基である。
【0115】
前記置換基としては、フッ素のようなハロゲン原子;アミノ基;ヒドロキシ基;またはメチル、エチルのような単鎖アルキル基である。
【0116】
前記ポリアゾール系物質の具体的な例として、ポリイミダゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリオキサチアゾール、ポリキノキサリン、ポリチアジアゾール、ポリピリジン、ポリピリミジンまたはポリテトラアザピレンを挙げることができる。
【0117】
前記ポリアゾール系物質は、前記化学式131ないし144のうち、少なくとも2個のユニットを含むコーポリマーまたはブレンドでありうる。前記ポリアゾール系物質は、化学式131ないし144のうち、少なくとも2個のユニットを含むブロック・コーポリマー(ジブロック、トリブロック)、ランダム共重合体、周期共重合体(periodic copolymer)または交互ポリマー(alternating polymer)である。
【0118】
前記化学式131及び/または132のユニットだけを含むポリアゾール系物質を使用することができる。
【0119】
前記ポリアゾール系物質の例としては、下記化学式145ないし171で表示される高分子を挙げることができる。
【0120】
【化30A】

【化30B】

【化30C】

【化30D】

【化30E】

【化30F】

【0121】
(前記化学式145ないし化学式171で、l、n17ないしn43、及びmないしmは、それぞれ10以上の整数、例えば、100以上の整数であり、Zは、化学結合を示したり、あるいは−(CH−、−C(=O)−、−SO−、−C(CH−、または−C(CF−であり、sは、1ないし5の整数である。)
【0122】
前記ポリアゾール系物質としては、下記化学式172の化合物(m−PBI)、または下記化学式173の化合物(p−PBI)を有する化合物を使用できる。
【0123】
【化31】

(前記化学式172で、n1は、10以上の整数である。)
【0124】
【化32】

(前記化学式173で、nは、10以上の整数である。)
【0125】
前記化学式172または173で表示される高分子の数平均分子量は、100万以下である。
【0126】
前記ポリアゾール系物質として、下記化学式174で表示されるベンズイミダゾール系高分子を使用することも可能である。
【0127】
【化33】

【0128】
前記化学式174で、
26及びR27は互いに独立して、水素、置換または非置換のC−C20アルキル基、置換または非置換のC−C20アルコキシ基、置換または非置換のC−C20アリール基、置換または非置換のC−C20アリールオキシ基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリール基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリールオキシ基、またはR26及びR27は互いに連結され、C−C20炭素環またはC−C20ヘテロ環を形成し、
Ar12は、置換または非置換のC−C20アリーレン基、または置換または非置換のC−C20ヘテロアリーレン基であり、
28ないしR30は、それぞれ一置換または多置換の置換基を示し、水素、置換または非置換のC−C20アルキル基、置換または非置換のC−C20アルコキシ基、置換または非置換のC−C20アリール基、置換または非置換のC−C20アリールオキシ基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリール基、または置換または非置換のC−C20ヘテロアリールオキシ基であり、
Lは、リンカ(linker)を示し、mは、0.01ないし1であり、aは、0または1であり、nは、0ないし0.99であり、kは、10ないし250の数である。
【0129】
前記ベンズイミダゾール系高分子は、下記化学式175または化学式176で表示される化合物でありうる。
【0130】
【化34】

【0131】
(前記化学式175で、kは、重合度であり、10ないし300の数である。)
【0132】
【化35】

【0133】
(前記化学式176で、mは、0.01ないし1であり、一実施例によれば、1または0.1ないし0.9であり、n44は、0ないし0.99であり、例えば、0または0.1ないし0.9であり、kは、10ないし250の数である。)
【0134】
前記過程によって得られた燃料電池用電極は、電解質膜と結合され、膜電極接合体を形成する。
【0135】
前記膜電極接合体を、燃料電池セルに入れ、空気と水素燃料とを投入した後、これを作動させる。燃料電池の作動温度は、例えば、150ないし180℃である。
【0136】
電解質膜は、燃料電池で一般的に使われる電解質膜であるならば、いずれも使用可能である。例えば、ポリベンズイミダゾール電解質膜、ポリベンゾオキサジン−ポリベンズイミダゾール共重合体電解質膜、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)多孔質膜などを使用することができる。または、前記電極と同様に、前記化学式1の化合物と、化学式2の化合物とのうちから選択された一つ以上のオキサジン系モノマーの重合反応生成物を利用する電解質膜を使用することも可能である。
【0137】
前記電解質膜には、プロトン伝導体をさらに含浸することができる。
前記プロトン伝導体としては、ポリリン酸、ホスホン酸、オルトリン酸、ピロリン酸、トリリン酸、メタリン酸またはその誘導体を例に挙げることができる。前記プロトン伝導体の濃度は、少なくとも80重量%、90重量%、95重量%、98重量%でありうる。
【0138】
前記1種または2種のオキサジン系モノマーの重合反応生成物を利用して、電解質膜を製造する過程は、大韓民国公開特許公報2009−0045655号に記載の方法によって製造可能である。
【0139】
化学式中の置換基の定義ついて述べれば、次の通りである。
【0140】
化学式の説明で用いる用語「アルキル」は、完全に飽和の分枝型または非分枝型(または直鎖または線形)の炭化水素をいう。
前記「アルキル」の非制限的な例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、iso−アミル、n−ヘキシル、3−メチルヘキシル、2,2−ジメチルペンチル、2,3−ジメチルペンチル、n−ヘプチルなどを挙げることができる。
前記「アルキル」のうち一つ以上の水素原子は、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されたC−C20アルキル基(例:CCF、CHCF、CHF、CClなど)、C−C20アルコキシ、C−C20アルコキシアルキル、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アミジノ基、ヒドラジン、ヒドラゾン、カルボン酸基やその塩、スルホニル基、スルファモイル(sulfamoyl)基、スルホン酸基やその塩、リン酸やその塩、C−C20アルキル基、C−C20アルケニル基、C−C20アルキニル基、C−C20ヘテロアルキル基、C−C20アリール基、C−C20アリールアルキル基、C−C20ヘテロアリール基、C−C20ヘテロアリールアルキル基、C−C20ヘテロアリールオキシ基、C−C20ヘテロアリールオキシアルキル基、またはC−C20ヘテロアリールアルキル基で置換されうる。
【0141】
用語「ハロゲン原子」は、フッ素、臭素、塩素、ヨウ素などを含む。
用語「ハロゲン原子で置換されたC−C20アルキル基」は、一つ以上のハロ基が置換されたC−C20アルキル基をいい、非制限的な例として、モノハロアルキル、ジハロアルキルまたはパーハロアルキルを含有したポリハロアルキルを挙げることができる。
モノハロアルキルは、アルキル基内に1つのヨウ素、臭素、塩素またはフッ素を有する場合であり、ジハロアルキル及びポリハロアルキルは、2つ以上の同一であるか、または異なるハロ原子を有するアルキル基を示す。
【0142】
化学式の説明で用いる用語「アルコキシ」は、アルキル−O−を示し、前記アルキルは、前述の通りである。前記アルコキシの非制限的な例として、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、2−プロポキシ、ブトキシ、tert−ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロプロポキシ、シクロヘキシルオキシなどがある。前記アルコキシ基のうち一つ以上の水素原子は、前述のアルキル基の場合と同じ置換基で置換可能である。
化学式の説明で用いる用語「アルコキシアルキル」は、アルキル基が前述のアルコキシによって置換された場合をいう。前記アルコキシアルキルのうち一つ以上の水素原子は、前述のアルキル基の場合と同じ置換基で置換可能である。このように、前記用語「アルコキシアルキル」は、置換されたアルコキシアルキル・部分を含む。
【0143】
化学式の説明で用いる用語「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する分枝型または非分枝型の炭化水素をいう。アルケニル基の非制限的な例としては、ビニル、アリル、ブテニル、イソプロフェニル、イソブテニルなどを挙げることができ、前記アルケニルのうち一つ以上の水素原子は、前述のアルキル基の場合と同じ置換基で置換されうる。
【0144】
化学式の説明で用いる用語「アルキニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を有する分枝型または非分枝型の炭化水素をいう。前記「アルキニル」の非制限的な例としては、エチニル、ブチニル、イソブチニル、イソプロピニルなどを挙げることができる。
前記「アルキニル」のうち一つ以上の水素原子は、前述のアルキル基の場合と同じ置換基で置換されうる。
【0145】
化学式の説明で用いる用語「アリール」は、単独または組み合わせて使われ、一つ以上の環を含む芳香族炭化水素を意味する。
前記用語「アリール」は、芳香族環が一つ以上のシクロアルキル環に縮合された基も含む。
前記「アリール」の非制限的な例として、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチルなどがある。
また、前記「アリール」のうち一つ以上の水素原子は、前述のアルキル基の場合と同じ置換基で置換可能である。
【0146】
用語「アリールアルキル」は、アリールで置換されたアルキルを意味する。アリールアルキルの例として、ベンジルまたはフェニル−CHCH−を挙げることができる。
化学式の説明で用いる用語「アリールオキシ」は、−O−アリールを意味し、アリールオキシ基の例として、フェノキシなどがある。前記「アリールオキシ」のうち一つ以上の水素原子は、前述のアルキル基の場合と同じ置換基で置換可能である。
【0147】
化学式の説明で用いる用語「ヘテロアリール」は、N、O、PまたはSのうちから選択された一つ以上のヘテロ原子を含み、残りの環原子が炭素である、単環(monocyclic)または二環(bicyclic)の有機化合物を意味する。前記ヘテロアリール基は、例えば、1ないし5個のヘテロ原子を含むことができ、5員環(ring member)ないし10員環を含むことができる。前記SまたはNは、酸化されて、さまざまな酸化状態を有することができる。
【0148】
単環ヘテロアリール基としては、チエニル、フリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル基、1,2,3−チアジアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、イソチアゾール−3−イル、イソチアゾール−4−イル、イソチアゾール−5−イル、オキサゾール−2−イル、オキサゾール−4−イル、オキサゾール−5−イル、イソオキサゾール−3−イル、イソオキサゾール−4−イル、イソオキサゾール−5−イル、1,2,4−トリアゾール−3−イル、1,2,4−トリアゾール−5−イル、1,2,3−トリアゾール−4−イル、1,2,3−トリアゾール−5−イル、テトラゾリル、ピリド−2−イル、ピリド−3−イル、2−ピラジン−2−イル、ピラジン−4−イル、ピラジン−5−イル、2−ピリミジン−2−イル、4−ピリミジン−2−イル、または5−ピリミジン−2−イルを挙げることができる。
【0149】
用語「ヘテロアリール」は、ヘテロ芳香族環が、一つ以上のアリール、脂環族(cyclyaliphatic)またはヘテロサイクルに縮合された場合を含む。
【0150】
二環ヘテロアリールの例としては、インドリル(indolyl)、イソインドリル(isoindolyl)、インダゾリル(indazolyl)、インドリジニル(indolizinyl)、プリニル(purinyl)、キノリジニル(quinolizinyl)、キノリニル(quinolinyl)、イソキノリニル(isoquinolinyl)、シノリニル(cinnolinyl)、プタラジニル(phthalazinyl)、ナフチリジニル(naphthyridinyl)、キナゾリニル(quinazolinyl)、キノキサゾリニル(quinoxalinyl)、フェナントリジニル(phenanthridinyl)、フェナントロリニル(phenathrolinyl)、フェナジニル(phenazinyl)、フェノチアジニル(phenothiazinyl)、フェノキサジニル(phenoxazinyl)、ベンゾイソキノリニル(benzisoqinolinyl)、チエノ[2,3−b]フラニル(thieno[2,3−b]furanyl)、フロ[3,2−b]−ピラニル(furo[3,2−b]−pyranyl)、5H−ピリド[2,3−d]−o−オキサジニル(5H−pyrido[2,3−d]−o−oxazinyl)、1H−ピラゾロ[4,3−d]−オキサゾリル(1H−pyrazolo[4,3−d]−oxazolyl)、4H−イミダゾ[4,5−d]チアゾリル(4H−imidazo[4,5−d]thiazolyl)、ピラジノ[2,3−d]ピリダジニル(pyrazino[2,3−d]pyridazinyl)、イミダゾ[2,1−b]チアゾリル(imidazo[2,1−b]thiazolyl)、イミダゾ[1,2−b][1,2,4]トリアジニル(imidazo[1,2−b][1,2,4]triazinyl)、7−ベンゾ[b]チエニル(7−benzo[b]thienyl)、ベンゾオキサゾリル(benzoxazolyl)、ベンズイミダゾリル(benzimidazolyl)、ベンゾチアゾリル(benzothiazolyl)、ベンゾオキサピニル(benzoxapinyl)、ベンゾオキサジニル(benzoxazinyl)、1H−ピロロ[1,2−b][2]ベンズアザピニル(1H−pyrrolo[1,2−b][2]benzazapinyl)、ベンゾフリル(benzofuryl)、ベンゾチオフェニル(benzothiophenyl)、ベンゾトリアゾリル(benzotriazolyl)、ピロロ[2,3−b]ピリジル(pyrrolo[2,3−b]pyridinyl)、ピロロ[3,2−c]ピリジニル(pyrrolo[3,2−c]pyridinyl)、ピロロ[3,2−b]ピリジニル(pyrrolo[3,2−b]pyridinyl)、イミダゾ[4,5−b]ピリジニル(imidazo[4,5−b]pyridinyl)、イミダゾ[4,5−c]ピリジニル(imidazo[4,5−c]pyridinyl)、ピラゾロ[4,3−d]ピリジニル(pyrazolo[4,3−d]pyridinyl)、ピラゾロ[4,3−c]ピリジニル(pyrazolo[4,3−c]pyridinyl)、ピラゾロ[3,4−c]ピリジニル(pyrazolo[3,4−c]pyridinyl)、ピラゾロ[3,4−d]ピリジニル(pyrazolo[3,4−d]pyridinyl)、ピラゾロ[3,4−b]ピリジニル(pyrazolo[3,4−b]pyridinyl)、イミダゾ[1,2−a]ピリジニル(imidazo[1,2−a]pyridinyl)、ピラゾロ[1,5−a]ピリジニル(pyrazolo[1,5−a]pyridinyl)、ピロロ[1,2−b]ピリダジニル(pyrrolo[1,2−b]pyridazinyl)、イミダゾ[1,2−c]ピリミジニル(imidazo[1,2−c]pyrimidinyl)、ピリド[3,2−d]ピリミジニル(pyrido[3,2−d]pyrimidinyl、ピリド[4,3−d]ピリミジニル(pyrido[4,3−d]pyrimidinyl)、ピリド[3,4−d]ピリミジニル(pyrido[3,4−d]pyrimidinyl)、ピリド[2,3−d]ピリミジニル(pyrido[2,3−d]pyrimidinyl)、ピリド[2,3−b]ピラジニル(pyrido[2,3−b]pyrazinyl)、ピリド[3,4−b]ピラジニル(pyrido[3,4−b]pyrazinyl)、ピリミド[5,4−d]ピリミジニル(pyrimido[5,4−d]pyrimidinyl)、ピラジノ[2,3−b]ピラジニル(pyrazino[2,3−b]pyrazinyl)、またはピリミド[4,5−d]ピリミジニル(pyrimido[4,5−d]pyrimidinyl)を挙げることができる。
【0151】
前記「ヘテロアリール」のうち一つ以上の水素原子は、前述のアルキル基の場合と同じ置換基で置換可能である。
【0152】
用語「ヘテロアリールアルキル」は、ヘテロアリールで置換されたアルキルを意味する。
用語「ヘテロアリールオキシ」は、−O−ヘテロアリール・部分を意味する。前記ヘテロアリールオキシのうち一つ以上の水素原子は、前述のアルキル基の場合と同じ置換基で置換可能である。
用語「ヘテロアリールオキシアルキル」は、ヘテロアリールオキシで置換されたアルキルを意味する。前記ヘテロアリールオキシアルキルのうち一つ以上の水素原子は、前述のアルキル基の場合と同じ置換基で置換可能である。
【0153】
化学式で使用される「炭素環」は、飽和または部分的に不飽和の非芳香族単環,二環または三環の炭化水素基をいう。
前記単環炭化水素の例として、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニルなどがある。
前記二環炭化水素の例として、ボルニル(bornyl)、デカヒドロナフチル(decahydronaphthyl)、ビシクロ[2.1.1]ヘキシル(bicyclo[2.1.1]hexyl)、ビシクロ[2.1.1]ヘプチル(bicyclo[2.2.1]heptyl)、ビシクロ[2.2.1]ヘプテニル(bicyclo[2.2.1]heptenyl)、またはビシクロ[2.2.2]オクチル(bicyclo[2.2.2]octyl)がある。
前記三環炭化水素の例として、アダマンチル(adamantly)などがある。
前記「炭素環」のうち一つ以上の水素原子は、前述のアルキル基の場合と同じ置換基で置換可能である。
【0154】
化学式の説明で用いる「ヘテロ環」は、窒素、硫黄、リン、酸素のようなヘテロ原子を含有している5ないし10の原子からなる環基を指し、具体的な例として、ピリジルなどがあり、このようなヘテロ環基のうち一つ以上の水素原子は、前述のアルキル基の場合と同じ置換基で置換可能である。
【0155】
用語「ヘテロ環オキシ」は、−O−ヘテロ環を意味し、ヘテロ環オキシ基のうち一つ以上の水素原子は、前述のアルキル基の場合と同じ置換基で置換可能である。
【0156】
用語「スルホニル」は、R”−SO−を意味し、R”は、水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール−アルキル、ヘテロアリール−アルキル、アルコキシ、アリールオキシ、シクロアルキルまたはヘテロ環基である。
【0157】
用語「スルファモイル」は、HNS(O)−、アルキル−NHS(O)−、(アルキル)NS(O)−、アリール−NHS(O)−、アルキル−(アリール)−NS(O)−、(アリール)NS(O)−、ヘテロアリール−NHS(O)−、(アリール−アルキル)−NHS(O)−、または(ヘテロアリール−アルキル)−NHS(O)−を含む。
前記スルファモイルのうち一つ以上の水素原子は、前述のアルキル基の場合と同じ置換基で置換可能である。
【0158】
前記用語「アミノ」は、窒素原子が、少なくとも1つの炭素またはヘテロ原子に共有結合された場合を示す。アミノ基は、例えば、−NH及び置換された部分(substituted moieties)を含む。
前記用語「アミノ」は、窒素が少なくとも1つのアルキル基に結合されたアルキルアミノ、窒素が少なくとも一つまたは二つ以上の独立して選択されたアリール基に結合された「アリールアミノ」基及び「ジアリールアミノ」基を含む。
【0159】
用語「アルキレン」、「アルケニレン」、「アルキニレン」、「アリーレン」及び「ヘテロアリーレン」は、それぞれ一価の「アルキル」,「アルケニル」,「アルキニル」,「アリール」及び「ヘテロアリール」が二価の基(divalent group)に変更されたことを除いては、同一に定義される。
前記「アルキレン」、「アルケニレン」、「アルキニレン」、「アリーレン」及び「ヘテロアリーレン」のうち一つ以上の水素原子は、、前述のアルキル基の場合と同じ置換基で置換可能である。
【0160】
以下、下記実施例を挙げて説明するが、下記実施例にのみ限定されることを意味するものではない。
【実施例】
【0161】
実施例1:化学式16の化合物(4FPh2AP)を利用したポリベンゾオキサジン系化合物の組成物の製造
化学式16の化合物(4FPh2AP)2gに、85重量%のリン酸200gを添加し、これを80℃で1時間混合して4FPh2APのリン酸溶液を得て、これを160℃で熱処理して重合反応を実施した。
前記重合反応の生成物を遠心分離してリン酸を除去し、これを水で洗浄し、水を添加して、約3.4重量%のポリベンゾオキサジン系化合物の粒子を含むポリベンゾオキサジン系化合物の組成物を得た。
前記実施例1によって得たポリベンゾオキサジン系化合物の組成物内に含まれたポリベンゾオキサジン系化合物の粒子の粒径は、光学顕微鏡を利用して調べ、その結果を、図1に示した。
図1から、ポリベンゾオキサジン系化合物の粒子の粒径は、約1μmであることが分かった。
【0162】
実施例2:化学式62の化合物(HF−a)を利用したポリベンゾオキサジン系化合物の組成物の製造
化学式62の化合物(HF−a)1gに、85重量%のリン酸200gを添加し、これを80℃で1時間混合してHF−aのリン酸溶液を得て、これを180℃で24時間以上熱処理して重合反応を実施した。
前記重合反応の生成物を遠心分離してリン酸を除去し、これを水で洗浄し、水を添加して、約3.4重量%のポリベンゾオキサジン系化合物の粒子を含有する組成物を得た。前記組成物の中に含まれたポリベンゾオキサジン系化合物の粒子の粒径は、約1μmであることが分かった。
【0163】
実施例3:化学式28の化合物(3,4−DPh4FA)を利用したポリベンゾオキサジン系化合物の組成物の製造
化学式28の化合物(3,4−DPh4FA)2gに、85重量%のリン酸200gを添加し、これを80℃で1時間混合して3,4−DPh4FAのリン酸溶液を得て、これを160℃で3時間熱処理して重合反応を実施した。
前記重合反応の生成物を遠心分離してリン酸を除去し、これを水で洗浄し、水を添加して、約3.4重量%のポリベンゾオキサジン系化合物の粒子を含有する組成物を得た。前記組成物の中に含まれたポリベンゾオキサジン系化合物の粒子の粒径は、約1μmであることが分かった。
【0164】
実施例4:化学式89の化合物(3HP2AP)を利用したポリベンゾオキサジン系化合物の組成物の製造
化学式89の化合物(3HP2AP)2gに、85重量%のリン酸200gを添加し、これを80℃で1時間混合して3HP2APのリン酸溶液を得て、これを180℃で24時間以上熱処理して重合反応を実施した。
前記重合反応の生成物を遠心分離してリン酸を除去し、これを水で洗浄し、水を添加して、約3.4重量%のポリベンゾオキサジン系化合物の粒子を含有するポリベンゾオキサジン系化合物の組成物を得た。
前記実施例1,3及び4によって製造したポリベンゾオキサジン系化合物において、熱重量分析機を使用してそれらの熱重量分析特性を調べ、その結果は、図2に示した通りである。
図2から、実施例1,3及び4によって製造したポリベンゾオキサジン系化合物は、300℃まで熱安定性にすぐれていることが分かった。
【0165】
製造例1:燃料電池の製造
前記実施例1によって得たポリベンゾオキサジン系化合物の組成物を利用して、2重量%のポリベンゾオキサジン系化合物の組成物を得て、前記2重量%のポリベンゾオキサジン系化合物の組成物0.5g、Pt/C1g及びN−メチルピロリドン4gを混合し、電極触媒層形成用の組成物を製造した。
カーボンペーパー上に、前記カソード触媒層形成用組成物をコーティングし、これを常温で1時間乾燥させ、80℃で1時間乾燥させ、120℃で30分乾燥させて150℃で15分間乾燥させてカソードを製造した。完成したカソードでのPtローディング量は、1.57mg/cmであった。
アノードとしては、下記過程によって得た電極を利用した。
撹拌容器に、カーボンに50重量%Ptが担持された触媒2g及び溶媒NMP(N-methylpyrrolidone)9gを添加し、これを高速撹拌機を利用して2分間撹拌した。次に、前記混合物に、ポリフッ化ビニリデン0.05gをNMP 0.95gに溶解させた溶液を添加し、2分間さらに撹拌して、アノード触媒層形成用スラリを製造した。これを、微細多孔層(microporous layer)がコーティングされたカーボンペーパー上に、バーコータ(bar coater)でコーティングして製造した。完成したアノードの白金ローディング量は、0.9mg/cmであった。
【0166】
これと別途に、下記化学式115で表示される化合物(PPO)50重量部と、下記化学式172のポリベンズイミダゾール(m−PBI)50重量部とをブレンドした後、これに対して、80ないし220℃の範囲で硬化反応を実施した。
【0167】
【化36】

【0168】
前記化学式172で、nは130である。次に、これに、85重量%リン酸を80℃で4時間以上含浸して電解質膜を形成させた。ここで、リン酸の含有量は、電解質膜総重量100重量部に対して、約500重量部であった。
【0169】
前記カソードとアノードとの間に、前記電解質膜を介在させてMEA(membrane electrode assembly)を製造した。ここで、前記カソードとアノードは、リン酸の含浸なしに使用した。
【0170】
前記カソードとアノードとの間のガス透過を防止するために、主ガスケット用として200μm厚のテフロン(登録商標)(ポリテトラフルオロエチレン膜)膜と、サブガスケット用として20μm厚のテフロン(登録商標)膜とを、電極と電解質膜との界面に重ねて使用した。そして、MEAに加えられる圧力は、トルクレンチを使用して調節し、1,2,3N−m Torqueまで工程的に増大させつつ組み立てた。
【0171】
温度150℃、電解質膜に対して加湿しない条件で、アノードに水素(流速:100ccm)、カソードに空気(250ccm)を流通させて発電させ、電池特性の測定を行った。このとき、リン酸をドーピングさせた電解質を使用するので、経時的に燃料電池の性能が向上するので、作動電圧が最高点に達するまでエイジングさせた後で最終評価する。そして、前記カソードとアノードとの面積は、2.8cm×2.8cm=7.84cmに固定し、カソード及びアノードの厚さは、それぞれ約430μm、390μmであった。
【0172】
製造例2ないし4:燃料電池の製造
前記実施例1によって得たポリベンゾオキサジン系化合物の組成物の代わりに、実施例2ないし4によって得たポリベンゾオキサジン系化合物の組成物を使用したことを除いては、製造例1と同じ方法によって実施した。
【0173】
比較製造例1:燃料電池の製造
カソード及びアノードの製造時に、バインダーとしてポリベンゾオキサジン系化合物の組成物0.5gの代わりに、ポリフッ化ビニリデン0.01gを使用し、完成したカソードでのPtローディング量は、1.51mg/cmであることを除いては、製造例1と同じ方法によって実施して、燃料電池を製造した。
【0174】
比較製造例2:燃料電池の製造
撹拌容器にPt/C 2g及び溶媒NMP 9gを添加し、これを高速撹拌機を利用して2分間撹拌した。ここに、4FPh2AP 0.05gをNMP 0.5gに溶解させた溶液を添加して、2分間さらに撹拌した。
次に、前記混合物に、ポリフッ化ビニリデン0.05gをNMP 0.95gに溶解させた溶液を添加して2分間さらに撹拌し、カソード触媒層形成用スラリを製造した。
カーボンペーパーを4×7cmに切ってガラス板上に固定し、ドクターブレード(Sheen Instrument Ltd)でコーティングした。このとき、ギャップ間隔は、850μmに調節した。
カーボンペーパー上に、前記カソード触媒層形成用スラリをコーティングし、これを、常温で1時間乾燥させ、80℃で1時間乾燥させ、120℃で30分乾燥させて150℃で15分間乾燥させて、カソードを製造した。完成したカソードでのPtローディング量は、2.28mg/cmであった。
【0175】
アノードとしては、下記過程によって得た電極を利用した。
撹拌容器にPt 2g及び溶媒NMP 9gを添加し、これを高速撹拌機を利用して2分間撹拌した。次に、前記混合物に、ポリフッ化ビニリデン0.05gをNMP 0.95gに溶解させた溶液を添加して2分間さらに撹拌し、アノード触媒層形成用スラリを製造した。これを、微細多孔層がコーティングされたカーボンペーパー上にバーコータでコーティングして製造した。完成したアノードの白金ローディング量は、1.4mg/cmであった。
【0176】
これと別途に、下記化学式115で表示される化合物(PPO)50重量部と、下記化学式172のポリベンズイミダゾール(m−PBI)50重量部をブレンドした後、80ないし220℃の範囲で硬化反応を実施した。
【0177】
【化37】

【0178】
前記化学式172で、nは130である。次に、これに、85重量%リン酸を含浸して電解質膜を形成した。ここで、リン酸の含有量は、電解質膜総重量100重量部に対して、約500重量部であった。
【0179】
前記カソードとアノードとの間に、前記電解質膜を介在させてMEAを製造した。ここで、前記カソードとアノードは、リン酸の含浸なしに使用した。
【0180】
前記カソードとアノードとの間のガス透過を防止するために、主ガスケット用として200μm厚のテフロン(登録商標)(ポリテトラフルオロエチレン膜)膜と、サブガスケット用として20μm厚のテフロン(登録商標)膜とを、電極と電解質膜との界面に重ねて使用した。そして、MEAに加えられる圧力は、トルクレンチを使用して調節し、1,2,3N−m Torqueまで工程的に増大させつつ組み立てた。
【0181】
温度150℃、電解質膜に対して加湿しない条件で、アノードに水素(流速:100ccm)、カソードに空気(250ccm)を流通させて発電させ、電池特性の測定を行った。このとき、リン酸をドーピングさせた電解質を使用するので、経時的に燃料電池の性能が向上するので、作動電圧が最高点に達するまでエイジングさせた後で最終評価する。そして、前記アノードとカソードとの面積は2.8×2.8=7.84cmに固定し、カソードとアノードとの厚さは、カーボンペーパーの散布のために変化があるが、カソードの電極厚は、約430μmに、アノード厚は、約390μmであった。
【0182】
前記製造例1、比較製造例1及び2によって製造した燃料電池において、カソード反応に関与する白金触媒の表面積を調べ、その結果を、図3に示した。ここで、カソード反応に関与する白金触媒の表面積は、サイクリックボルタンメトリ(cyclic voltammetry)法によって評価する。アノードには、水素をパージし、カソードには窒素をパージした状態で、前記カソードを0.08Vから1Vの範囲までスキャンすれば、0.08Vと0.4Vとの間で水素脱着ピーク(desorption peak)が生じる。このピークによって形成されたサイクルの総面積は、白金の表面積と比例するため、この方法で白金/リン酸の接触面積を計算することができる。
【0183】
白金利用率、前述のように計算した白金/リン酸の接触面積は、カソードに使いた総白金量と比較して得ることができる。
製造例1の場合には、白金利用率が26%であり、比較製造例1の場合には、白金利用率が22%であり、比較製造例2の場合には、白金利用率が22%であり、製造例1によるカソードは、比較製造例1及び2のカソードに比べて、白金の利用率が高いことが分かった。
【0184】
前記製造例1、比較製造例1及び2によって製造した燃料電池において、電流密度によるセル電圧特性を評価し、その結果を図4に示した。
図4から、製造例1の燃料電池は、比較製造例1及び2の場合と比較して、セル電圧特性が改善することが分かった。
【0185】
前記製造例2ないし4及び比較製造例1によって製造した燃料電池において、電流密度によるセル電圧特性を評価し、その結果を図5に示した。
図5から、製造例2ないし4の燃料電池は、比較製造例1の燃料電池に比べて、セル電圧にすぐれていることが分かった。
【0186】
本発明の一具現例による組成物は、小さな平均粒径を有するポリオキサジン系化合物粒子が分散媒に均一に分散された状態であり、これは、電極触媒層に均一に分散可能であり、これを利用すれば、リン酸保有力、並びに高温及び酸に対する耐久性が改善された電極を製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオキサジン系化合物粒子と、前記ポリオキサジン系化合物粒子が分散されている分散媒とを含む組成物。
【請求項2】
前記ポリオキサジン系化合物粒子の含有量が、組成物の総重量を基準として、1ないし80重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記分散媒が、アルコール、水、酸及び炭化水素系溶媒からなる群から選択された一つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリオキサジン系化合物粒子の粒径が、0.5ないし10μmであることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載の組成物の製造方法であって、
オキサジン系モノマーを酸と混合し、オキサジン系モノマーの酸溶液を準備する工程と、
前記オキサジン系モノマーの酸溶液を熱処理して重合生成物を得る工程と、
前記重合生成物からポリオキサジン系化合物を分離する工程と、
前記ポリオキサジン系化合物を分散媒に分散させる工程と
を含む、組成物の製造方法。
【請求項6】
前記酸が、リン酸系物質であることを特徴とする、請求項5に記載の組成物の製造方法。
【請求項7】
前記オキサジン系モノマーの酸溶液が、オキサジン系モノマー100重量部を基準として、1,000ないし100,000重量部の酸を含有することを特徴とする、請求項5に記載の組成物の製造方法。
【請求項8】
前記熱処理を、150ないし250℃の温度で行うことを特徴とする、請求項5に記載の組成物の製造方法。
【請求項9】
前記重合生成物からポリオキサジン系化合物を分離する工程が、
前記重合生成物に水を添加して遠心分離する工程と、
前記遠心分離された物から固体を分離する工程と
を含むことを特徴とする、請求項5に記載の組成物の製造方法。
【請求項10】
前記オキサジン系モノマーと酸との混合工程を、50ないし100℃の温度で実施することを特徴とする、請求項5に記載の組成物の製造方法。
【請求項11】
前記オキサジン系モノマーが、下記化学式1ないし6で表示される化合物のうちから選択された一つ以上であることを特徴とする請求項5に記載の組成物の製造方法:
【化1】

(化学式1中、R,R,R及びRは互いに独立して、水素、置換または非置換のC−C20アルキル基、置換または非置換のC−C20アルコキシ基、置換または非置換のC−C20アルケニル基、置換または非置換のC−C20アルキニル基、置換または非置換のC−C20アリール基、置換または非置換のC−C20アリールオキシ基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリール基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリールオキシ基、置換または非置換のC−C20炭素環基、置換または非置換のC−C20炭素環オキシ基、置換または非置換のC−C20ヘテロ環基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、またはシアノ基であり、
は、置換または非置換のC−C20アルキル基、置換または非置換のC−C20アルコキシ基、置換または非置換のC−C20アルケニル基、置換または非置換のC−C20アルキニル基、置換または非置換のC−C20アリール基、置換または非置換のC−C20アリールオキシ基、置換または非置換のC−C20アリールアルキル基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリール基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリールオキシ基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリールアルキル基、置換または非置換のC−C20炭素環基、置換または非置換のC−C20炭素環アルキル基、置換または非置換のC−C20ヘテロ環基、または置換または非置換のC−C20ヘテロ環アルキル基である);
【化2】

(化学式2中、R’は、置換または非置換のC−C20アルキル基、置換または非置換のC−C20アルコキシ基、置換または非置換のC−C20アルケニル基、置換または非置換のC−C20アルキニル基、置換または非置換のC−C20アリール基、置換または非置換のC−C20アリールオキシ基、置換または非置換のC−C20アリールアルキル基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリール基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリールオキシ基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリールアルキル基、置換または非置換のC−C20炭素環基、置換または非置換のC−C20炭素環アルキル基、置換または非置換のC−C20ヘテロ環基、または置換または非置換のC−C20ヘテロ環アルキル基であり、
は、置換または非置換のC−C20アルキレン基、置換または非置換のC−C20アルケニレン基、置換または非置換のC−C20アルキニレン基、置換または非置換のC−C20アリーレン基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリーレン基、−C(=O)−、−SO−からなる群から選択される);
【化3】

(化学式3中、A,B,C,D,Eは、いずれも炭素であるか、またはA,B,C,D,Eのうちから選択された一つまたは二つは、窒素(N)であり、その残りは、炭素(C)であり、
及びRは、互いに連結して環を形成し、
前記環が、C−C10シクロアルキル基、C−C10ヘテロアリール基、C−C10ヘテロ縮合アリール基、C−C10ヘテロ環基、またはC−C10ヘテロ縮合環基である);
【化4】

(化学式4中、A’は、置換または非置換のC−C20ヘテロ環基、置換または非置換のC−C20シクロアルキル基、または置換または非置換のC−C20アルキル基であり、
ないしR16は互いに独立して、水素、C−C20アルキル基、C−C20アルコキシ基、C−C20アリール基、C−C20アリールオキシ基、C−C20ヘテロアリール基、C−C20ヘテロアリールオキシ基、C−C20シクロアルキル基、C−C20ヘテロ環基、ハロゲン原子、シアノ基、またはヒドロキシ基である);
【化5】

(化学式5中、R17及びR18は、互いに独立して、C−C20アルキル基、C−C20アルコキシ基、C−C20アリール基、C−C20アリールオキシ基、または下記化学式5Aで表示される基である);
【化5A】

(化学式5及び5A中、R19及びR19’は互いに独立して、水素、C−C20アルキル基、C−C20アルコキシ基、C−C20アリール基、C−C20アリールオキシ基、ハロゲン化されたC−C20アリール基、ハロゲン化されたC−C20アリールオキシ基、C−C20ヘテロアリール基、C−C20ヘテロアリールオキシ基、ハロゲン化されたC−C20ヘテロアリール基、ハロゲン化されたC−C20ヘテロアリールオキシ基、C−C20シクロアルキル基、ハロゲン化されたC−C20シクロアルキル基、C−C20ヘテロ環基、またはハロゲン化されたC−C20ヘテロ環基である);
【化6】

(化学式6中、R20,R21及びR22のうちから選択された隣接した二つ以上の基は、互いに連結され、下記化学式6Aで表示される基であり、
前記R20,R21及びR22のうちから選択されていない残りの基は、水素、C−C20アルキル基、C−C20アルコキシ基、C−C20アリール基、C−C20アリールオキシ基、ハロゲン化されたC−C20アリール基、ハロゲン化されたC−C20アリールオキシ基、C−C20ヘテロアリール基、C−C20ヘテロアリールオキシ基、ハロゲン化されたC−C20ヘテロアリール基、ハロゲン化されたC−C20ヘテロアリールオキシ基、C−C20炭素環基、ハロゲン化されたC−C20炭素環基、C−C20ヘテロ環基、またはハロゲン化されたC−C20ヘテロ環基であり、
23,R24及びR25のうちから選択された隣接した二つ以上の基は、互いに連結され、下記化学式6Aで表示される基であり、
前記R23,R24及びR25のうちから選択されていない残りの基は、C−C20アルキル基、C−C20アルコキシ基、C−C20アリール基、C−C20アリールオキシ基、ハロゲン化されたC−C20アリール基、ハロゲン化されたC−C20アリールオキシ基、C−C20ヘテロアリール基、C−C20ヘテロアリールオキシ基、ハロゲン化されたC−C20ヘテロアリール基、ハロゲン化されたC−C20ヘテロアリールオキシ基、C−C20炭素環基、ハロゲン化されたC−C20炭素環基、C−C20ヘテロ環基、またはハロゲン化されたC−C20ヘテロ環基である);
【化6A】

(化学式6A中、R’は、置換または非置換のC−C20アルキル基、置換または非置換のC−C20アルコキシ基、置換または非置換のC−C20アルケニル基、置換または非置換のC−C20アルキニル基、置換または非置換のC−C20アリール基、置換または非置換のC−C20アリールオキシ基、置換または非置換のC−C20アリールアルキル基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリール基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリールオキシ基、置換または非置換のC−C20ヘテロアリールアルキル基、置換または非置換のC−C20炭素環基、置換または非置換のC−C20炭素環アルキル基、置換または非置換のC−C20ヘテロ環基、または置換または非置換のC−C20ヘテロ環アルキル基であり、
*は、化学式6のR20,R21及びR22のうちから選択された隣接した二つ以上の基と、R23,R24及びR25のうちから選択された隣接した二つ以上の基とにそれぞれ連結される位置を表示する)。
【請求項12】
前記オキサジン系モノマーが、下記化学式16の化合物(4FPh2AP)、下記化学式28の化合物(3,4−FPh4FA)、下記化学式66の化合物、下記化学式62の化合物(HF−a)、下記化学式89の化合物(3HP2AP)、及び下記化学式115の化合物(PPO)のうちから選択された一つ以上であることを特徴とする、請求項5に記載の組成物の製造方法:
【化7】

【請求項13】
支持体と、
前記支持体上に形成され、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の組成物のコーティング生成物を含む触媒層と、を含む電極。
【請求項14】
前記組成物が架橋性化合物をさらに含むことを特徴とする、請求項13に記載の電極。
【請求項15】
前記触媒層が触媒をさらに含み、
前記触媒層で、ポリオキサジン系化合物の含有量は、触媒1重量部を基準として、0.001ないし20重量部であることを特徴とする、請求項13に記載の電極。
【請求項16】
請求項13から請求項15のうちいずれか1項に記載の電極を含む燃料電池。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【公開番号】特開2011−178998(P2011−178998A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46347(P2011−46347)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do,Republic of Korea
【出願人】(510217013)ベーアーエスエフ・エスエー (3)
【Fターム(参考)】