説明

組立式バスダクトおよびバスダクト用函体

【課題】絶縁導体を収納するケース(函体)を長尺の絶縁導体に取り付ける際に、組立が容易で、絶縁導体への損傷を軽減することができる組立式バスダクトおよびバスダクト用函体を提供する。
【解決手段】平らな底面部と、底面部と直角に一体的に形成された下部垂直面部と、下部垂直面部に設けられた下側嵌合部と、底面部の長手方向の一方の端部に接続された平らな板材からなる接続用下側板材とを備えた下板部材と、平らな上面部と、上面部と直角に一体的に形成された上部垂直面部と、上部垂直面部の下側嵌合部に対応する部位に設けられた上側嵌合部と、上面部および上部垂直面部の長手方向の一方の端部の外表面に接続された断面コの字形の接続用上側板材とを備えた上板部材とからなり、下板部材および上板部材が対向して組み合わされ、下板部材の下部垂直面部の外表面に上板部材の上部垂直面部の内表面が重ね合わされて組み立てられるバスダクト用函体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力供給幹線または配電用幹線として使用されるバスダクトおよびバスダクト用函体に関する。
【背景技術】
【0002】
バスダクトはビル、工場等の電力供給幹線または配電用幹線として使用され、銅、アルミニウム等の帯状導体を絶縁物で被覆したものを、鉄またはアルミニウム等で作製された箱状のケース(函体)に収納したものである。
【0003】
バスダクトの布設に際しては、先ず、長尺の絶縁導体を現場で所定の長さに布設し、その後、布設した絶縁導体を囲むように鉄またはアルミニウム製のケース(函体)を取り付けて、所定の長さにわたってバスダクトを布設する。ケース(函体)は通常3mの長さのユニットとして形成され、所望の長さの絶縁導体をカバーするためには、現場で、ケース(函体)同士を所望の数だけ組み合わせている。ケース(函体)同士の組立は、ケース(函体)同士を突合せて、付き合わせた部分にボルト止めによる固定バンドを取り付けて、ケース(函体)同士を組立ている。また、従来、ケース(函体)同士の組立は、直線的に行われていた。
【0004】
図13は、従来のバスダクト用函体の接続を説明する図である。バスダクト用函体を形成する上板部材103と下板部材102の外周部を覆うように帯状部材104を所定間隔で配置し、帯状部材の端部に形成された孔部を重ね合わせて、ネジによって固定している。バスダクト用函体の一方の端部には、幅広の別の帯状部材119が配置されて、バスダクト用函体同士を接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−78729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、バスダクトの導体を覆うケース(函体)を固定するためには、3mの長さのユニットで7箇所の固定バンドを取り付ける必要があり、現場での施工では非常に手間がかかる。また、ケース(函体)の端部は、接続に際してケース(函体)同士を突合せするため、継ぎ目が生じ、継ぎ目にも上述した固定バンドを取り付ける必要があった。従来、ケース(函体)同士の組立は、直線的に行われていて、屈曲した布設は困難であった。
【0007】
従って、この発明の目的は、絶縁導体を収納するケース(函体)を長尺の絶縁導体に取り付ける際に、組立が容易で、絶縁導体への損傷を軽減することができる組立式バスダクトおよびバスダクト用函体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者は従来の問題点を解決するため、鋭意研究を重ねた。その結果、それぞれ断面コの字形の下板部材および上板部材を対向して組み合わせ、それぞれの垂直面部に設けた凹部を嵌合させることによって、ワンタッチ式の嵌合式のバスダクト用函体を形成することができ、更に、バスダクト用函体の一方の端部に他方の端部が嵌合する型式の接続部を設けると、複数組の短尺のバスダクト用函体同士を組み合わせて、所望の長さの組立式バスダクトを形成することができることが判明した。この発明は上述した研究結果に基づいてなされたものである。
【0009】
この発明のバスダクト用函体の第1の態様は、平らな底面部と、前記底面部の両側端部に前記底面部と直角に一体的に上方に向かって形成された下部垂直面部と、前記下部垂直面部のそれぞれの長手方向の両端部に設けられた下側嵌合部と、前記底面部の長手方向の一方の端部の外表面に接続された平らな板材からなる接続用下側板材とを備えた下板部材と、平らな上面部と、前記上面部の両側端部に前記上面部と直角に一体的に下方に向かって形成された上部垂直面部と、前記上部垂直面部のそれぞれの長手方向の両端部の前記下側嵌合部に対応する部位に設けられた上側嵌合部と、前記上面部および前記上部垂直面部の長手方向の一方の端部の外表面に接続された断面コの字形の接続用上側板材とを備えた上板部材とからなり、前記下板部材および前記上板部材が対向して組み合わされ、前記下板部材の前記下部垂直面部の外表面に前記上板部材の前記上部垂直面部の内表面が重ね合わされて組み立てられるバスダクト用函体である。
【0010】
この発明のバスダクト用函体の第2の態様は、前記下側嵌合部が、内側に向かって突出して形成された下部凹部からなっており、前記上側嵌合部が、内側に向かって突出して形成され、前記下部凹部と嵌合する上部凹部からなっていることを特徴とする、バスダクト用函体である。
【0011】
この発明のバスダクト用函体の第3の態様は、前記下側嵌合部が、開口部からなっており、前記上側嵌合部が、内側に向かって突出して形成され、前記開口部と嵌合する上部凹部からなっていることを特徴とする、バスダクト用函体である。
【0012】
この発明の組立式バスダクトの第1の態様は、内部に複数の導体を収容する組立式バスダクトであって、平らな底面部と、前記底面部の両側端部に前記底面部と直角に一体的に上方に向かって形成された下部垂直面部と、前記下部垂直面部のそれぞれの長手方向の両端部に設けられた下側嵌合部と、前記底面部の長手方向の一方の端部の外表面に接続された平らな板材からなる接続用下側板材とを備えた下板部材と、平らな上面部と、前記上面部の両側端部に前記上面部と直角に一体的に下方に向かって形成された上部垂直面部と、前記上部垂直面部のそれぞれの長手方向の両端部の前記下側嵌合部に対応する部位に設けられた上側嵌合部と、前記上面部および前記上部垂直面部の長手方向の一方の端部の外表面に接続された断面コの字形の接続用上側板材とを備えた上板部材とからなり、前記下板部材および前記上板部材が対向して組み合わされ、前記下板部材の前記下部垂直面部の外表面に前記上板部材の前記上部垂直面部の内表面が重ね合わされて組み立てられるバスダクト用函体を備えていることを特徴とする組立式バスダクトである。
【0013】
この発明の組立式バスダクトの第2の態様は、1つの組立式バスダクトの組み合わされた前記接続用下側板材および前記接続用上側板材によって形成された接続部が遊び部を備え、前記接続用下側板材および前記接続用上側板材の内側に、他の1つの組立式バスダクトの組み合わされた端部が、所定の角度で屈折可能に接続されることを特徴とする、組立式バスダクトである。
【0014】
この発明のバスダクト用函体の他の態様は、平らな底面部と、前記底面部の両側端部に前記底面部と直角に一体的に上方に向かって形成された下部垂直面部と、前記下部垂直面部のそれぞれの長手方向の両端部に設けられ、内側に向かって突出して形成された下部突起部と、前記底面部の長手方向の一方の端部の外表面に接続された平らな板材からなる接続用下側板材とを備えた下板部材と、平らな上面部と、前記上面部の両側端部に前記上面部と直角に一体的に下方に向かって形成された上部垂直面部と、上部垂直面部のそれぞれの下端部に前記上面部と並行に一体的に形成された平らな側部と、前記平らな側部の外側端部に前記上部垂直面部と並行に一体的に上方に向かって形成された側部垂直面部と、前記上面部の長手方向の一方の端部の外表面に接続された断面コの字形の接続用上側板材とを備えた上板部材とからなり、前記下板部材および前記上板部材が対向して組み合わされ、前記下板部材の上に、前記上板部材の前記平らな側部が載置され、前記上板部材の断面コの字形の接続用上側板材の垂直な部分の内表面と、前記下板部材の下部垂直面部の外表面と重ね合わされて組み立てられるバスダクト用函体である。
【0015】
この発明のバスダクト用函体の他の態様は、前記下板部材に前記上板部材を載置した後、前記下部突起部が、前記上板部材の側部垂直面部の上方への移動を阻止するストッパとして機能することを特徴とする、バスダクト用函体である。
【0016】
この発明の組立式バスダクトの他の態様は、内部に複数の導体を収容する組立式バスダクトであって、平らな底面部と、前記底面部の両側端部に前記底面部と直角に一体的に上方に向かって形成された下部垂直面部と、前記下部垂直面部のそれぞれの長手方向の両端部に設けられ、内側に向かって突出して形成された下部突起部と、前記底面部の長手方向の一方の端部の外表面に接続された平らな板材からなる接続用下側板材とを備えた下板部材と、平らな上面部と、前記上面部の両側端部に前記上面部と直角に一体的に下方に向かって形成された上部垂直面部と、上部垂直面部のそれぞれの下端部に前記上面部と並行に一体的に形成された平らな側部と、前記平らな側部の外側端部に前記上部垂直面部と並行に一体的に上方に向かって形成された側部垂直面部と、前記上面部の長手方向の一方の端部の外表面に接続された断面コの字形の接続用上側板材とを備えた上板部材とからなり、前記下板部材および前記上板部材が対向して組み合わされ、前記下板部材の上に、前記上板部材の前記平らな側部が載置され、前記上板部材の断面コの字形の接続用上側板材の垂直な部分の内表面と、前記下板部材の下部垂直面部の外表面と重ね合わされて組み立てられるバスダクト用函体を備えることを特徴とする組立式バスダクトである。
【発明の効果】
【0017】
この発明のバスダクト用函体によると、嵌合方式のため、煩わしいボルト締めによる固定バンドの取り付けの必要がなく、現場での作業が容易になる。即ち、それぞれ断面コの字形の下板部材および上板部材を対向して組み合わせ、それぞれの垂直面部に設けた凹部を嵌合させることによって、ワンタッチ式の嵌合式のバスダクト用函体を形成することができ、更に、バスダクト用函体の一方の端部に他方の端部が嵌合する型式の接続部を設けると、複数組の短尺のバスダクト用函体同士を組み合わせて、所望の長さの組立式バスダクトを形成することができる。
【0018】
この発明によると、バスダクト用函体の接続部には、若干のあそびを備えて、他のバスダクト用函体の端部が挿入されるので、接続部の断面矩形の空洞部の大きさを調整することによって、バスダクト用函体同士の接続が、直線的でなく、所定の角度で屈折して接続することが可能になり、複数のバスダクト用函体同士を多角形状の断面に沿って概ね湾曲して接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、この発明のバスダクト用函体を説明する分解図である。
【図2】図2は、下板部材および上板部材が対向して組み合わされて形成されたバスダクト用函体を示す斜視図である。
【図3】図3は、重ね合わされた下側嵌合部および上側嵌合部の詳細を示す断面図である。
【図4】図4は、図2に示すバスダクト用函体1の接続部を説明する部分斜視図である。
【図5】図5は、2つのバスダクト用函体1を屈曲して接続する状態を説明する、下板部材の底面部と平行な面に沿った長手方向断面図である。
【図6】図6は、図2に示すバスダクト用函体を別の角度から見た斜視図である。
【図7】図7は、この発明の他の態様のバスダクト用函体を説明する分解図である。
【図8】図8は、下板部材および上板部材が対向して組み合わされて形成されたバスダクト用函体を示す斜視図である。
【図9】図9は、図8に示すバスダクト用函体を別の角度から見た斜視図である。
【図10】図10は、図7から図9を参照して説明した態様と別の態様のバスダクト用函体を説明する図である。
【図11】図11は、図1および2を参照して説明した態様のバスダクト用函体を2つ接続した状態を説明する図である。
【図12】図12は、図10を参照して説明した態様のバスダクト用函体を2つ接続した状態を説明する図である。
【図13】図13は、従来のバスダクト用函体の接続を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明のこの発明の組立式バスダクトおよびバスダクト用函体を、図面を参照しながら説明する。
図1は、この発明のバスダクト用函体を説明する分解図である。この発明のバスダクト用函体1は、下板部材2と、上板部材3とからなっており、下板部材2および上板部材3が対向して組み合わされて形成される。
【0021】
下板部材2は、平らな底面部5と、底面部5の両側端部に底面部5と直角に一体的に上方に向かって形成された下部垂直面部6と、下部垂直面部6のそれぞれの長手方向の両端部に設けられた下側嵌合部7と、底面部5の長手方向の一方の端部の外表面に接続された平らな板材からなる接続用下側板材8とを備えている。
【0022】
下板部材と対向して組み合わされる上板部材3は、平らな上面部9と、上面部9の両側端部に上面部9と直角に一体的に下方に向かって形成された上部垂直面部10と、上部垂直面部10のそれぞれの長手方向の両端部の、上述した下板部材3の下側嵌合部7に対応する部位に設けられた上側嵌合部11と、上面部9および上部垂直面部9の長手方向の一方の端部の外表面に接続された断面コの字形の接続用上側板材12とを備えている。
【0023】
即ち、上述した下板部材2の平らな底面部5と上板部材3の平らな上面部9とは概ね同じ大きさ(長さ・幅)であり、下板部材2の下部垂直面部6と、上板部材3の上部垂直面部10は概ね同じ大きさ(高さ・長さ・幅)である。
【0024】
図2は、下板部材2および上板部材3が対向して組み合わされて形成されたバスダクト用函体1を示す斜視図である。即ち、図1を参照して説明した下板部材2および上板部材3が対向して組み合わされ、下板部材2の下部垂直面部6の外表面に上板部材3の上部垂直面部10の内表面が重ね合わされて組み立てられたバスダクト用函体1である。
【0025】
上述した下側嵌合部7は、例えば、下部垂直面部6の長手方向の両端部の一部が内側に向かって突出して形成された下部凹部からなっている。更に、上述した上側嵌合部11は、例えば、上部垂直面部10の長手方向の両端部の一部が内側に向かって突出して形成された上部凹部からなっている。上側嵌合部11である上部凹部は、下側嵌合部7である下部凹部に対応する部位に設けられ、上部凹部と下部凹部に重なるようにして組み立てられる。上述した下側嵌合部が、開口部(例えば、矩形)からなっており、上述した上側嵌合部が、内側に向かって突出して形成され、開口部と嵌合する上部凹部からなっていてもよい。
【0026】
図3は、重ね合わされた下側嵌合部7および上側嵌合部11の詳細を示す断面図である。図3に示すように、上部垂直面部10の上部凹部11と、下部垂直面部6の下部凹部7とは、同じ方向に向かって、断面が概ね半楕円形状に突き出るように加工されて、上部凹部11と下部凹部7が重なり合って固定されている。このような上部凹部11と下部凹部7が4箇所設けられている。このように少なくとも4箇所に嵌合部が設けられていることで、下板部材2および上板部材3で形成された空間に配置される導体(図示しない)が、熱により膨張した場合であっても、下板部材2と上板部材3の接合が外れることがなく、強固で信頼性の高い接合を実現することが可能となる。
【0027】
下板部材2、上板部材3を組立てた時の幅、高さおよび長さの一例は次の通りである。幅に関しては、内部に収容する導体の幅が150mmの場合、バスダクトの幅は165mm程度であり、高さに関しては、内部に収容する導体の高さが6mmで3枚の導体を収容する場合、バスダクトの高さは、30mm程度であり、長さに関しては、従来は3mであったのが、本発明では概ね400mm程度である。
【0028】
嵌合部のサイズに関しては、両端に設ける嵌合部は、200mm以下(バスダクト長さ方向の約半分以下)離して設けることが好ましい。このように200mm以下離して設けることによって、バスダクトを組立てたときの接続強度が向上する。接続強度を考慮して、嵌合部のサイズは以下が好ましい。即ち、嵌合部のサイズ(ダボの場合):10mm×30mm×深さ5mm程度が好ましい。嵌合部のサイズ(孔の場合):10mm×30mm程度が好ましい。
【0029】
図4は、図2に示すバスダクト用函体1の接続部を説明する部分斜視図である。バスダクト用函体1の接続部15は、接続用下側板材8と断面コの字形の接続用上側板材12とを組み合わせて形成される断面矩形の空洞部である。接続部15に、バスダクト用函体1の接続部15と反対側の端部が挿入されて、バスダクト用函体1同士が接続される。
【0030】
図4に示すように、平らな上面16と平らな上面16の両端部から垂直に一体的に下方に延びる垂直面13とからなる断面コの字形の接続用上側板材12と、平らな板材からなる接続用下側板材8とが組み合わされて断面矩形の空洞部を形成している。接続用下側板材8の幅方向の両端部が、接続用上側板材12の垂直面13の下端部を支持している。
【0031】
このように組み合わされて形成された接続部15の内部には、下板部材2の一方の端部(図2では左側の端部)である平らな底面部5と下部垂直面部6とによって形成される角部と、下部垂直面部6を外側から密着して覆う上板部材3の上部垂直面部10が位置している。接続部15の断面矩形の空洞部には、下板部材2と上板部材3が組み合わされた端部が挿入されて、バスダクト用函体1同士が接続される。
【0032】
図5は、2つのバスダクト用函体1を屈曲して接続する状態を説明する、下板部材の底面部と平行な面に沿った長手方向断面図である。図5に示すように、バスダクト用函体1の接続部15の上下に若干の遊び部37を備えて、下板部材2と上板部材3が組み合わされた端部が挿入されている。即ち、接続用上側板材12の垂直な両端面に挟まれた平らな板材からなる接続用下側板材8の上に、下板部材2の底面部5と両側の重ね合わされた下部垂直面部6と上部垂直面部10が遊び部37を備えて載置されている。このように接続部15の断面矩形の空洞部の大きさを調整し遊び部37を形成することで、バスダクト用函体1同士の接続が、直線的でなく、所定の角度θで屈折して接続することが可能になり、複数のバスダクト用函体1同士を多角形状の断面に沿って概ね湾曲して接続することができる。上述したように、接続部に遊び部を形成し、遊び部があることで、端部を屈折可能に接続することができる。
【0033】
図6は、図2に示すバスダクト用函体を別の角度から見た斜視図であり、上面部9の一端側中央部に窪み部35が形成され、接続用上側板材12の内側中央部に突起部36が形成されている。接続用上側板材12と、接続用下側板材8とが組み合わされて形成された断面矩形の空洞部に、下板部材2と上板部材3が組み合わされた端部が挿入される際、窪み部35に突起部36が嵌合することで、バスダクト用函体1同士の接続確認を容易に実現するとともに、接続強度も高くすることが可能となる。さらに、窪み部35、突起部36の長手方向断面を半円形状とすることで、バスダクト用函体1同士を屈折させて接続する際、スムーズな接続を実現することが可能となる。なお、上述した態様においては、窪み部35、突起部36は上面に設けられているが、下面に設けてもよいし、側面に設けてもよい。
【0034】
図7は、この発明の他の態様のバスダクト用函体1を説明する分解図である。この態様のバスダクト用函体1も、図1および図2を参照して説明した態様と同様に、下板部材20と、上板部材30とからなっており、下板部材20および上板部材30が対向して組み合わされて形成される。
【0035】
下板部材20は、平らな底面部25と、底面部25の幅方向の両側端部に底面部25と直角に一体的に上方に向かって形成された下部垂直面部26と、下部垂直面部26のそれぞれの長手方向の両端部に設けられ、内側に向かって突出して形成された下部突起部27と、底面部の長手方向の一方の端部の外表面に接続された平らな板材からなる接続用下側板材28とを備えている。
【0036】
下板部材20と対向して組み合わされる上板部材30は、平らな上面部29と、上面部29の幅方向の両側端部に上面部29と直角に一体的に下方に向かって形成された上部垂直面部31と、上部垂直面部31のそれぞれの下端部に上面部29と並行に一体的に形成された平らな側部33と、平らな側部33の外側端部に上部垂直面部31と並行に一体的に上方に向かって形成された側部垂直面部32と、上面部の長手方向の一方の端部の外表面に接続された断面略コの字形の接続用上側板材22とを備えている。
【0037】
この態様のバスダクト用函体1においては、下板部材20および上板部材30が対向して組み合わされ、下板部材30の上に、上板部材30の平らな側部33が載置される。
図8は、下板部材および上板部材が対向して組み合わされて形成されたバスダクト用函体を示す斜視図である。即ち、図7を参照して説明した下板部材20および上板部材30を対向して組み合わせる際に、下板部材20の平らな底面部25上に上板部材30の平らな側部33が載置され、上板部材30の側部垂直面部32が下板部材20の下部垂直面部26と相互に接して配置される。
【0038】
このとき、下部垂直面部26に設けられた内側に向かって突出して形成された下部突起部27によって上板部材の側部垂直面部32の上端部が押さえられて固定される。図に示す態様では、下部垂直面部26は断面概ね逆L字形であるが、垂直な板材であってもよい。下板部材20に対して上方から上板部材30を下方に向かって概ね垂直に移動させて、下板部材20および上板部材30が組み合わされる。接続用下側板材28と接続用上側板材22とによって、接続部15が形成され、バスダクト用函体1の接続部とは反対側の端部が接続部15に挿着される。
【0039】
図9は、図8に示すバスダクト用函体を別の角度から見た斜視図である。図9に示すように、下板部材20の平らな底面部25上に上板部材30の平らな側部33が載置され、上板部材30の側部垂直面部32が下板部材20の下部垂直面部26と相互に接して配置される。下部垂直面部26に設けられた内側に向かって突出して形成された下部突起部27によって上板部材30の側部垂直面部32の上端部が押さえられて、上板部材30が下板部材20に固定される。接続用下側板材28と接続用上側板材22とによって、接続部15が形成されている。
【0040】
このように上板部材30を単純な断面略コの字形状ではなく、上部垂直面部31、側部垂直面部32、平らな側部33を形成することで、バスダクト用函体の機械的強度が強くなり、下板部材20および上板部材30で形成された空間に配置される導体(図示しない)が、熱により膨張した場合であっても、下板部材20と上板部材30の接合が外れることがなく、強固で信頼性の高い接合を実現することが可能となる。
【0041】
なお、この態様においても、上面部29の一端側中央部に窪み部35が形成され、接続用上側板材22の内側中央部に突起部36が形成される。接続用上側板材22と、接続用下側板材28とが組み合わされて形成された断面矩形の空洞部に、下板部材20と上板部材30が組み合わされた端部が挿入される際、窪み部35に突起部36が嵌合することで、バスダクト用函体1同士の接続確認を容易に実現するとともに、接続強度も高くすることが可能となる。さらに、窪み部35、突起部36の長手方向断面を半円形状とすることで、バスダクト用函体1同士を屈折させて接続する際、スムーズな接続を実現することが可能となる。上述したように、この態様においても、窪み部35、突起部36は、上面に設けられているが、下面に設けても良く、側面に設けても良い。
【0042】
更に、この態様においても、バスダクト用函体1の接続部15に遊び部37を備えている。遊び部37を備えた接続部15には、下板部材20と上板部材30が組み合わされた端部が挿入される。即ち、接続用上側板材22の垂直な両端面に挟まれた平らな板材からなる接続用下側板材28の上に、下板部材20の底面部25と組み合わされた上部垂直面部31と上面29とが、遊び部37を備えて載置される。このように接続部15の断面矩形の空洞部の大きさを調整し遊び部37を形成することで、バスダクト用函体1同士の接続が、直線的でなく、所定の角度θで屈折して接続することが可能になり、複数のバスダクト用函体1同士を多角形状の断面に沿って概ね湾曲して接続することができる。上述したように、接続部に遊び部を形成し、遊び部があることで、端部を屈折可能に接続することができる。
【0043】
図10は、図7から図9を参照して説明した態様と別の態様のバスダクト用函体を説明する図である。図10に示す態様では、上板部材30および下板部材20を上下逆方向に配置し、上下方向ではなく、水平方向に上板部材30を移動して、下板部材20に嵌合する。なお、接続部を形成する接続用下側板材28は、下板部材20の底面部25および下部垂直面部26の外周面に沿って形成されている。接続部を形成する接続用上側板材22も同様に上板部材の上面29および上部垂直面部31の外周面に沿って形成されている。
【0044】
図11は、図1および2を参照して説明した態様のバスダクト用函体をバスダクトの長手方向に2つ接続した状態を説明する図である。図11に示すように、接続部15の断面矩形の空洞部には、下板部材2と上板部材3が組み合わされた端部が挿入されて、バスダクト用函体1同士が接続される。
【0045】
図12は、図10を参照して説明した態様のバスダクト用函体をバスダクトの長手方向に2つ接続した状態を説明する図である。図12に示すように、接続用下側板材28と接続用上側板材22とを組み合わせて形成される断面矩形の空洞部である接続部15の断面矩形の空洞部には、下板部材20と上板部材30が組み合わされた端部が挿入されて、バスダクト用函体1同士が接続される。なお、図11、図12のように、バスダクトの長手方向に複数のバスダクト用函体を接続することによって所定の長さで任意の形状をした組立式バスダクトを作製することが可能となる。
【0046】
図1から図12を参照して説明したバスダクト用函体の中に、絶縁体を介して導体を配置して組立式バスダクトが形成される。即ち、内部に複数の導体を収容する組立式バスダクトであって、例えば、図1を参照して説明したように、下板部材2と、上板部材3とからなり、下板部材2および上板部材3が対向して組み合わされ、下板部材2の下部垂直面部6の外表面に上板部材3の上部垂直面部10の内表面が重ね合わされて組み立てられるバスダクト用函体1を備えている。なお、バスダクト用函体の中に配置される絶縁導体は、薄板導体を積層し、絶縁体で覆うようにした薄板積層絶縁導体で構成することで、組立式バスダクトがより屈曲し易いものとなる。
【0047】
なお、組立式バスダクト同士の接続のために、図6に示すように、バスダクト函体1の接続部15の内壁に突起部36を設け、バスダクト用函体1の接続部15と反対側の端部の外壁に突起部36に対応する窪み部35を設けてもよい。このように、突起部36および窪み部35を設けることによって、接続されたバスダクト函体1同士が外れるのを防止することができる。
【0048】
上述したように、この発明によると、絶縁導体を収納するケース(函体)を長尺の絶縁導体に取り付ける際に、組立が容易で、絶縁導体への損傷を軽減することができる組立式バスダクトおよびバスダクト用函体を提供することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 バスダクト用函体
2 下板部材
3 上板部材
4 帯状部材
5 底面部
6 下部垂直面部
7 下側嵌合部、下部凹部
8 接続用下側板材
9 上面部
10 上部垂直面部
11 上側嵌合部、上部凹部
12 接続用上側板材
13 垂直面
14 開閉可能な接続部
15 接続部
16 上面
17 上側部材
18 下側部材
19 別の帯状部材
24 固定部
35 窪み部
36 突起部
37 遊び部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平らな底面部と、前記底面部の両側端部に前記底面部と直角に一体的に上方に向かって形成された下部垂直面部と、前記下部垂直面部のそれぞれの長手方向の両端部に設けられた下側嵌合部と、前記底面部の長手方向の一方の端部の外表面に接続された平らな板材からなる接続用下側板材とを備えた下板部材と、
平らな上面部と、前記上面部の両側端部に前記上面部と直角に一体的に下方に向かって形成された上部垂直面部と、前記上部垂直面部のそれぞれの長手方向の両端部の前記下側嵌合部に対応する部位に設けられた上側嵌合部と、前記上面部および前記上部垂直面部の長手方向の一方の端部の外表面に接続された断面コの字形の接続用上側板材とを備えた上板部材とからなり、
前記下板部材および前記上板部材が対向して組み合わされ、前記下板部材の前記下部垂直面部の外表面に前記上板部材の前記上部垂直面部の内表面が重ね合わされて組み立てられるバスダクト用函体。
【請求項2】
前記下側嵌合部が、内側に向かって突出して形成された下部凹部からなっており、前記上側嵌合部が、内側に向かって突出して形成され、前記下部凹部と嵌合する上部凹部からなっていることを特徴とする、請求項1に記載のバスダクト用函体。
【請求項3】
前記下側嵌合部が、開口部からなっており、前記上側嵌合部が、内側に向かって突出して形成され、前記開口部と嵌合する上部凹部からなっていることを特徴とする、請求項1に記載のバスダクト用函体。
【請求項4】
内部に複数の導体を収容する組立式バスダクトであって、平らな底面部と、前記底面部の両側端部に前記底面部と直角に一体的に上方に向かって形成された下部垂直面部と、前記下部垂直面部のそれぞれの長手方向の両端部に設けられた下側嵌合部と、前記底面部の長手方向の一方の端部の外表面に接続された平らな板材からなる接続用下側板材とを備えた下板部材と、
平らな上面部と、前記上面部の両側端部に前記上面部と直角に一体的に下方に向かって形成された上部垂直面部と、前記上部垂直面部のそれぞれの長手方向の両端部の前記下側嵌合部に対応する部位に設けられた上側嵌合部と、前記上面部および前記上部垂直面部の長手方向の一方の端部の外表面に接続された断面コの字形の接続用上側板材とを備えた上板部材とからなり、
前記下板部材および前記上板部材が対向して組み合わされ、前記下板部材の前記下部垂直面部の外表面に前記上板部材の前記上部垂直面部の内表面が重ね合わされて組み立てられるバスダクト用函体を備えていることを特徴とする組立式バスダクト。
【請求項5】
1つの組立式バスダクトの組み合わされた前記接続用下側板材および前記接続用上側板材によって形成された接続部が遊び部を備え、前記接続用下側板材および前記接続用上側板材の内側に、他の1つの組立式バスダクトの組み合わされた端部が、所定の角度で屈折可能に接続されることを特徴とする、請求項4に記載の組立式バスダクト。
【請求項6】
平らな底面部と、前記底面部の両側端部に前記底面部と直角に一体的に上方に向かって形成された下部垂直面部と、前記下部垂直面部のそれぞれの長手方向の両端部に設けられ、内側に向かって突出して形成された下部突起部と、前記底面部の長手方向の一方の端部の外表面に接続された平らな板材からなる接続用下側板材とを備えた下板部材と、
平らな上面部と、前記上面部の両側端部に前記上面部と直角に一体的に下方に向かって形成された上部垂直面部と、上部垂直面部のそれぞれの下端部に前記上面部と並行に一体的に形成された平らな側部と、前記平らな側部の外側端部に前記上部垂直面部と並行に一体的に上方に向かって形成された側部垂直面部と、前記上面部の長手方向の一方の端部の外表面に接続された断面コの字形の接続用上側板材とを備えた上板部材とからなり、
前記下板部材および前記上板部材が対向して組み合わされ、前記下板部材の上に、前記上板部材の前記平らな側部が載置され、前記上板部材の断面コの字形の接続用上側板材の垂直な部分の内表面と、前記下板部材の下部垂直面部の外表面と重ね合わされて組み立てられるバスダクト用函体。
【請求項7】
前記下板部材に前記上板部材を載置した後、前記下部突起部が、前記上板部材の側部垂直面部の上方への移動を阻止するストッパとして機能することを特徴とする、請求項6に記載のバスダクト用函体。
【請求項8】
内部に複数の導体を収容する組立式バスダクトであって、平らな底面部と、前記底面部の両側端部に前記底面部と直角に一体的に上方に向かって形成された下部垂直面部と、前記下部垂直面部のそれぞれの長手方向の両端部に設けられ、内側に向かって突出して形成された下部突起部と、前記底面部の長手方向の一方の端部の外表面に接続された平らな板材からなる接続用下側板材とを備えた下板部材と、
平らな上面部と、前記上面部の両側端部に前記上面部と直角に一体的に下方に向かって形成された上部垂直面部と、上部垂直面部のそれぞれの下端部に前記上面部と並行に一体的に形成された平らな側部と、前記平らな側部の外側端部に前記上部垂直面部と並行に一体的に上方に向かって形成された側部垂直面部と、前記上面部の長手方向の一方の端部の外表面に接続された断面コの字形の接続用上側板材とを備えた上板部材とからなり、
前記下板部材および前記上板部材が対向して組み合わされ、前記下板部材の上に、前記上板部材の前記平らな側部が載置され、前記上板部材の断面コの字形の接続用上側板材の垂直な部分の内表面と、前記下板部材の下部垂直面部の外表面と重ね合わされて組み立てられるバスダクト用函体を備えることを特徴とする組立式バスダクト。
【請求項9】
組み合わされた前記接続用下側板材および前記接続用上側板材によって形成された接続部が遊び部を備え、前記接続部に前記端部が屈折可能に接続されることを特徴とする請求項8に記載の組立式バスダクト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−176960(P2011−176960A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39649(P2010−39649)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】