組電池及びその製造方法
【課題】 一方の密閉形電池の外装缶の底部と蓋部とを溶接により接続するための接続体として、リング状の接続部品を介在させることによって、コストを抑えた組電池及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 少なくとも2個以上の密閉形電池の内の一方の蓋部12と他方の密閉形電池の外装缶10の底部11とを接続した組電池であって、前記蓋部12には、リング状の接続部品20の一方の面が溶接され、前記外装缶10の底部11には、前記接続部品20の他方の面を溶接されている組電池。
【解決手段】 少なくとも2個以上の密閉形電池の内の一方の蓋部12と他方の密閉形電池の外装缶10の底部11とを接続した組電池であって、前記蓋部12には、リング状の接続部品20の一方の面が溶接され、前記外装缶10の底部11には、前記接続部品20の他方の面を溶接されている組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個のセルを接続した組電池およびその製造方法に関し、特に、セル間を接続するリード部材を改善した組電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の組電池としては以下のものが知られている。(例えば、特許文献1参照)
図7の従来の組電池は複数の二次電池10を直列に接続して直線状に連結している。この構造の組電池は、複数個を直列に接続して、主としてハイブリッドカー等の電気自動車に使用される。ただ、本発明の組電池は、電動車両以外の用途であって、大出力が要求される用途にも使用できる。図の組電池は、円筒型電池である二次電池を直線状に連結して直列に接続している。ただし、組電池は、角型電池である二次電池を直線状に連結して直列に接続することもできる。
【0003】
二次電池10は、ニッケル−水素電池、リチウムイオン二次電池、ニッケル−カドミウム電池等の充電できる全ての電池を使用することができる。ただ、電気自動車用の組電池に使用される二次電池には、ニッケル−水素電池が適している。体積と重量に対する出力が大きくて、優れた大電流特性を有するからである。
【0004】
二次電池10は、図8の断面図に示すように、外装缶11の開口部を封口板12で気密に密閉している。外装缶11と封口板12は金属板である。外装缶11は、金属板を底のある筒状にプレス成形して製作される。封口板12は、中央に凸部電極13を溶接している。外装缶11の内部には、電極(図示せず)が内蔵される。さらに、電解液も充填される。外装缶11は、開口部の端部をかしめ加工して封口板12を気密に固定している。封口板12は、ガスケット14を介して外装缶11のかしめ部に挟着されて気密に固定される。ガスケット14は絶縁材のゴム状弾性体で、封口板12と外装缶11とを絶縁すると共に、封口板12と外装缶11との隙間を気密に閉塞する。この構造の二次電池10は、封口板12をかしめて挟着するために、封口板12を設けている端部に、周囲に沿って溝部15が設けられる。さらに、封口板12の周縁にはカシメ凸条16が設けられる。この二次電池10は、封口板12を第1の電極として、外装缶11を第2の電極としている。ニッケル−水素電池は、第1の電極を正極として第2の電極を負極としている。二次電池は、第1の電極を負極として第2の電極を正極とすることもできる。
【0005】
図7の組電池は、複数の二次電池10を直線状に連結して、直列に接続している。これらの組電池は、直線状に連結している二次電池10の端面の間に、二次電池10を電気接続する接続体20と、この接続体20を定位置に配設する保持キャップ30とを配設している。図8の組電池は、一方の二次電池10の封口板12と他方の二次電池10の外装缶11とを接続体20で接続している。二次電池10は、封口板12を第1の電極、外装缶11を第2の電極としているので、封口板12に接続される接続体20が外装缶11の一部であるカシメ凸条16に接触するとショートする。したがって、図8の組電池は、接続体20とカシメ凸条16とを保持キャップ30で絶縁している。
【0006】
これ等の図に示す接続体20は、金属板をプレス成形して製作される。接続体20は、鉄板等の下地金属板の両面に金属メッキ層を設けている。金属メッキ層は、導電性に優れた電気抵抗の小さい導電メッキ層と、この導電メッキ層の表面に積層している溶接に適した抵抗メッキ層とからなる。導電メッキ層は、銅や銀、あるいはこれ等の合金であって、下地金属板と抵抗メッキ層よりも電気抵抗の小さいメッキ層である。抵抗メッキ層は、ニッケルやクローム、あるいはこれらの合金であって、導電メッキ層よりも電気抵抗が大きいメッキ層である。この接続体20は、抵抗メッキ層で発熱しやすく、電池端面に速やかに溶接される。また導電メッキ層によって電気抵抗が小さく、二次電池10を低抵抗な状態で直列に接続できる。
【0007】
接続体20は、対向して配設される隣接二次電池10の電池端面に溶接して接続されて、二次電池10を直列に電気接続している。図9と図10は、接続体20を示している。図9は、図7に示す組電池の接続体20の平面図、図10は断面図である。これ等の接続体20は、金属板を穴のあるリング状に成形して、両面に突出して電池端面に溶接される複数の溶接凸部22を設けている。両面に突出している溶接凸部22は、対向する電池端面の第1の電極と第2の電極に溶接されて、隣接して配設している二次電池10を直列に接続する。さらに、図の接続体20は中心孔21を設けて、ここに凸部電極13を配設している。接続体は、中心孔を開口することなく、凸部電極を案内する部分を突出させる形状とすることもできる。
【0008】
図9と図10に示す接続体20は、図8に示すように、電池端面に設けられているカシメ凸条16の内形よりも外形を小さくしている。この接続体20は、外周縁とカシメ凸条16との間に隙間を設けて、接続体20がカシメ凸条16に接触してショートするのを阻止している。接続体20は、位置がずれるとカシメ凸条16に接触するので、接続体20を保持キャップ30で定位置に保持している。この接続体20は、同一の円周上に複数の溶接凸部22を設けている。溶接凸部22は、交互に反対面、図10において上下に突出している。反対面に突出する溶接凸部22は、対向して配設される電池端面に溶接して接続される。
【特許文献1】特開2003−223879号公報 (図5,6,8,9 (0014)〜(0020))
【特許文献2】特開2000−100416号公報 (0028)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の組電池に使用される接続体は、金属板をプレス成形して穴のあるリング状に成形して、両面に突出して電池端面に溶接される複数の溶接凸部22を設けている。
このため、該接続体は、鉄板等の下地金属板の両面に金属メッキ層を設けており、金属メッキ層は、導電性に優れた電気抵抗の小さい導電メッキ層と、この導電メッキ層の表面に積層している溶接に適した抵抗メッキ層とからなるように構成している。
しかしながら、全体としての接続抵抗は大きく低減できないという問題があった。
また、特許文献2には、組電池接続する方法として、放電させる方向に、1対の溶接用電極棒で240Vの電圧を印加し、1kAの電流を15ミリ秒間流す方法が開示されている。1kAで15ミリ秒の放電方向の電流により溶接部は溶接されるものの、溶接強度は十分でなく、放電側の大きな分極によって発生したガスが、開放状態の電池から放出され、負極の有する充電リザーブと放電リザーブのバランスが崩れ、過放電に弱い電池が形成されてしまう可能性もある。逆に、充電方向も同様で、充電側の大きな分極によって発生したガスが、解法状態の電池から放出され、負極の有する充電リザーブと放電リザーブのバランスが崩れ、サイクル寿命に弱い電池が形成されてしまう欠点を有している。
【0010】
本発明の課題(目的)は、一方の電池の外装缶の底部と蓋部とを溶接により接続するための接続体として、リング状の接続部品を介在させることによって、極めて低抵抗の組電池及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、少なくとも2個以上の密閉形電池の内の一方の蓋板と他方の密閉形電池の外装缶の底部とを接続した組電池であって、前記蓋部には、リング状の接続部品の一方の面Xが溶接され、前記外装缶の底部には、前記リング状の接続部品の他方の面Yを溶接されていることを特徴とする組電池。(請求項1)
【0012】
また、前記リング状の接続部品の溶接面には、それぞれ複数の突起が形成されていることを特徴とする。(請求項2)
また、前記リング状の接続部品に形成された突起の数は、一方及び他方の面で突起の数が異なることを特徴とする。(請求項3)
【0013】
少なくとも2個以上の密閉形電池の内の一方の蓋板と他方の密閉形電池の外装缶の底部とを接続する組電池の製造方法であって、前記一方の密閉形電池の蓋部と他方の密閉形電池の外装缶の底部との間にリング状の接続部品を介在させ、前記一方及び他方の密閉形電池間に電流を流すことによって一方及び他方の密閉形電池を溶接して直列接続することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の組電池の製造方法。(請求項4)
また、少なくとも2個以上の密閉形電池の内の一方の蓋板と他方の密閉形電池の外装缶の底部とを接続する組電池の製造方法であって、一方の密閉形電池の蓋の外面とリング状の接続部品の突起数の多い面を予め溶接する工程と、前記予め溶接されたリング状の接続部品の他の面を他方の密閉形電池の外装缶の底部に密閉形電池を介して電流を流して溶接して直列接続することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の組電池の製造方法。(請求項5)
また、前記一方及び他方の密閉形電池間に電流を流す電流が、充電と放電を1セットとした交流パルスであることを特徴とする請求項4又は5に記載の組電池の製造方法。(請求項6)
また、前記請求項4〜6のいずれか1項に記載の製造方法を用いてなる組電池。(請求項7)
【発明の効果】
【0014】
請求項1〜7に記載の本発明では、一方の密閉形電池の外装缶の底部と蓋部とを溶接により接続するための接続体として、リング状の接続部品を介在させることによって、低抵抗で高率放電特性に優れた組電池を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の組電池の構造を図1を用いて説明する。
図1の組電池は、図1(a)に示す如く一方の二次密閉形電池10の蓋板12と他方の二次密閉形電池10の外装缶1底部のとをリード板で接続している。
二次密閉形電池10は、ガスケット14で絶縁された蓋板12を第1の電極、外装缶11を第2の電極としているので、蓋板12に接続される接続体としてのリング状の接続部品20が外装缶11の一部であるカシメ凸条16に接触するとショートする。したがって、図6の組電池は、接続体20とカシメ凸条16とを保持キャップ30で絶縁している。
【0016】
前記リング状の接続部品の1例は、図1(b)の平面図及び(c)の側面図に示す構成である。
以下、図2〜4を用いて、本発明で使用されるリング状の接続部品について詳細に説明する。
【0017】
本発明の外装缶の底部と蓋部との溶接に使用するリング状の接続部品の第1の例を、図2を用いて以下に説明する。
図2において、(a)は、リング状の接続部品(20)であって、厚さ0.4〜1.0mmの金属板(c)をリング状に曲げ加工したものである。
該金属板の材質は特に限定されるものではないが、Ni,Fe,NiFe(Niメッキ鋼板)やCu(銅)を用いることができる。又、腐食を防止するためにSn,Ag,Ni等のメッキを施すこともできる。(図2の例では、厚さ0.7mmのニッケル板を打ち抜き
好ましくは、Niもしくは、CuとNiの貼り合わせによるクラッド鋼板を用いると極めて低い抵抗が実現できることから望ましい。
またはワイヤカットで加工後に、リング状に曲げ加工されており、その直径は約19mm、高さは約2.7mmである)
(b)は、その側面図であり、(d)は図(c)の2点鎖線部分の拡大図である。
(a)に示す如く、リード板の形状はリング状の他に、多角形などでも良いが、構造が簡易なほぼ円形のリング状に曲げ加工されるのが望ましい。
また、図2では、円形のリングに切れ目a−1が存在しているが、この切れ目は、板状の素材を円形に加工したためであって、密閉形電池の排気弁から排出されたガスが系外へ排出される隙間を有していれば切れ目は必ずしも存在しなくても良い。
また、図2に記載のリング状の接続部品には、リード板の上部及び下部にそれぞれ複数の突起(20a)が形成されている。
【0018】
また、本発明の外装缶の底部と蓋部との溶接に使用するリング状の接続部品第2の例を、図3を用いて以下に説明する。
図3において、(a)は、リング状の接続部品(20)であって、厚さ0.4〜1.0mmのNiまたはFeNi(ニッケルメッキ鋼板)(c)をリング状に曲げ加工したものである。(図4の例では、厚さ0.7mmのニッケル板をワイヤカットで加工後に、リング状に曲げ加工されており、その直径は約19mm、高さは約2.7mmである)
(b)は、側面図であり、(d)は図(c)の2点鎖線部分の拡大図である。
(a)に示す如く、リード板の形状はリング状の他に、多角形などでも良いが、構造が簡易なほぼ円形のリング状に曲げ加工されるのが望ましい。
また、図4では、円形のリングに切れ目a−1が存在しているが、この切れ目は、板状の素材を円形に加工したためであって、切れ目は必ずしも存在しなくても良い。
【0019】
また、図3に記載のリング状の接続部品には、リード板の上部及び下部にそれぞれ複数の突起(20a,20b)が形成されている。
また、図3の突起はリード板の上部と下部とでは異なった形状(下部の突起が長い)に形成されているが、必ずしも異なった形状とする必要はない。(図4の例では、長い突起は約2.0mm、短い突起は約0.5mm)
また、図3のリード板に形成されている突起の数は、上部と下部で異なった数になっている。(図3の例では、下部に4個、上部に8個の突起が形成されている。)
リード板に形成されている突起の数(又は突起の総面積)は、上部と下部とで異なった数にする理由は、蓋部が外装缶の底部よりも厚い部品を使うことが一般的であり、リード板との溶接時には発熱量が大きくても溶接熱が周囲に逃げ、溶接が容易でないため、リード板を蓋部と集電板とに溶接するに際して、本発明では、先ず蓋部にリード板の突起の数の多い面を溶接することによって、リード板が強固に溶接でき、次にリード板の他方の面(突起の数の少ない面)を外装缶の底部に溶接するために電流を流した際に、先に溶接された部分に溶接電流が流れることによって破断することがなくなる。
【0020】
突起の高さは、0.5mm以上が望ましい。(0.5mm未満では、溶接強度が得られない虞れがある。)(図3の例では、長い突起は約2.0mm、短い突起は約0.5mm)
実施例のD形密閉形電池においては、突起の数は、電気抵抗を小さく抑えるため、片方の面の数は8点以上(多い方)が好ましい。(片方は、例えば、一方のセルの外装缶(電漕)の底面に先に溶接しておく際には、溶接電流を密閉形電池内を流れないので、突起の数は多くても良い。)
また、他方の面の数は、前記片方の面より少なく、かつ4〜8が好ましい。(4点未満では電気抵抗がおおきくなる虞れがあり、8点を超えると溶接に必要な電流(密閉形電池内を流れる)が大きすぎて密閉形電池が損傷を受ける虞がある。
なお、他のサイズの密閉形電池においては、密閉形電池容量に比例して突起の数は適宜調整する事ができる。
【0021】
図4は、図3に示す第2のリング状の接続部品の斜視図である。(図4では、リング状の接続部品の上部と下部の突起の形状が異なっているが、必ずしも異ならせる必要はない。)
また、リード板に形成される突起には、溶接を確実に行うために高抵抗部分を形成するプロジェクションとするのが望ましい。
【0022】
次に、本発明におけるリード板を用いて一方の密閉形電池の外装缶の底部と他方の密閉形電池の蓋部との溶接の手順を説明する。
・本発明の特徴は、一方の密閉形電池の外装缶の底部と他方の密閉形電池の蓋部との溶接をリング状の接続部品を介して、両密閉形電池間に電流を流して溶接することにある。
なお、一方のセルの蓋の外面にリング状の接続部品を予め溶接しておくことが好ましいが、リード板と蓋、リード板と外装缶の底部を一括して溶接することもできる。
その際には、溶接電流を密閉形電池内を流れないので、突起の数は多くても良い。)
【0023】
一方の密閉形電池の外装缶の底部と他方の密閉形電池の蓋部との溶接に際して、上記の図2〜4に記載のリング状の接続部品を適宜選択して両密閉形電池間に電流を流して溶接するものであるが、リング状の接続部品の選択によって溶接の強度が異なってくるので、密閉形電池の外装缶、蓋部及びリング状の接続部品の材料に応じて、突起の数を変更したり、図2または3に記載のものから最適のものを選択するのが望ましい。
【0024】
図5、図6は、本発明に係る組電池の組立工程のうち、密閉形電池間を接続するための前記リング状の接続部品20の一方の溶接面と外装缶10の底面を溶接する工程を示す図である。
図5に示すように、2個の密閉形電池を直列接続できるように一方の密閉形電池(図の下側の密閉形電池)の蓋12の外面に溶接したリング状の接続部品20の溶接面に設けた突起を他方の密閉形電池(図の上側の密閉形電池)の外装缶10の底面に当接するように配置する。なお、2つの密閉形電池の間に絶縁リング12を配置する。
前記一方の密閉形電池(図の下側の密閉形電池)及び他方の密閉形電池の外装缶に溶接用外部電源の出力端子AおよびBを当接させ両出力端子A、B間に交流パルスを通電して、前記リード板20と外装缶10を溶接する。
【0025】
また、図6に示すように、溶接用外部電源の出力端子Aを他方の密閉形電池(図の上側の密閉形電池)の正極端子に当接させて、両出力端子A、B間に交流パルスを通電して、前記リード板20と外装缶10を溶接することもできる。
なお、図5及び図6に示した方法によれば、密閉形電池数が2個に限定されることなく、複数個直列に配列した密閉形電池の両端の密閉形電池のうち、一方の密閉形電池の負極端子(外装缶)に溶接用外部電源の出力端子Aを、他方の密閉形電池の正極端子に溶接用外部電源の出力端子Bを当接し、交流パルスを通電することによって、複数個の密閉形電池間を一度に溶接することもできる。
【0026】
通電する交流パルスの電流値の大きさは、外装缶10とリング状の接続部品20の突起20aが溶接可能な大きさに適宜選択すればよい。電流値が小さすぎると溶接しようとする接点における発熱量が不足して溶接できず、電流値が大きすぎると突起20aが焼き切れてしまい溶接できない虞がある。
【0027】
なお、放電方向又は充電方向の一方電流による方法では、溶接部は溶接されるものの、溶接強度は強くない。また、電流を大きくすると放電側のおおきな分極によって発生したガスが、解放状態の密閉形電池から放出され、負極の有する充電リザーブと放電リザーブのバランスが崩れ、過放電い弱い密閉形電池が形成されてしまう。
逆に、充電方向も同様で、充電側の大きな分極によって発生したガスが、解放状態の密閉形電池から放出され、負極の有する充電リザーブと放電リザーブのバランスが崩れ、サイクル寿命に弱い密閉形電池が形成されてしまう。
【0028】
電流による接点の溶接電流を通電する際に充電と放電を1セットとした交流パルスを用いると、正負極からガス発生が極めて少なくでき、大きな電流を通電することができる。
このことによって、溶接接点が安定して低抵抗な溶接とすることができる。
これは、密閉形電池の静電容量を超えないように、打ち消し合う電流を流すことによって、ガス発生が抑えられたものと考えられる。
なお、ここでいう静電容量とは、密閉形電池が電解液を分解し、密閉形電池内部の圧力が密閉形電池の開弁圧を超えない範囲で受電可能な電気容量を指し、厳密には正極板および負極板の二重層容量以外に密閉形電池の充放電反応に伴う電気容量とガス発生による電気容量を含んでいる。
【実施例】
【0029】
以下に、円筒形ニッケル水素蓄密閉形電池を対象とした実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の記載により限定されるものではなく、試験方法や構成する密閉形電池の正極活物質、負極材料、正極、負極、電解質、セパレータ並びに密閉形電池形状等は任意である。
【0030】
(実施例1)
(正極板の作製)
硫酸ニッケルと硫酸亜鉛および硫酸コバルトを所定比で溶解した水溶液に硫酸アンモニウムと苛性ソーダ水溶液を添加してアンミン錯体を生成させた。反応系を激しく撹拌しながら更に苛性ソーダを滴下し、反応系のpHを10〜13に制御して芯層母材となる球状高密度水酸化ニッケル粒子を水酸化ニッケル:水酸化亜鉛:水酸化コバルト=88.45:5.12:1.1の比となるように合成した。
【0031】
前記高密度水酸化ニッケル粒子を、苛性ソーダでpH10〜13に制御したアルカリ水溶液に投入した。該溶液を撹拌しながら、所定濃度の硫酸コバルト、アンモニアを含む水溶液を滴下した。この間、苛性ソーダ水溶液を適宜滴下して反応浴のpHを10〜13の範囲に維持した。約1時間pHを10〜13の範囲に保持し、水酸化ニッケル粒子表面にCoを含む混合水酸化物から成る表面層を形成させた。該混合水酸化物の表面層の比率は芯層母粒子(以下単に芯層と記述する)に対して、4.0wt%であった。
【0032】
前記混合水酸化物から成る表面層を有する水酸化ニッケル粒子50gを、温度110℃の30wt%(10N)の苛性ソーダ水溶液に投入し、充分に攪拌した。続いて表面層に含まれるコバルトの水酸化物の当量に対して過剰のK2S2O8を添加し、粒子表面から酸素ガスが発生するのを確認した。活物質粒子をろ過し、水洗、乾燥した。
【0033】
前記活物質粒子にカルボキシメチルセルローズ(CMC)水溶液を添加して前記活物質粒子:CMC溶質=99.5:0.5のペースト状とし、該ペーストを450g/m2のニッケル多孔体(住友電工(株)社製ニッケルセルメット#8)に充填した。その後80℃で
乾燥した後、所定の厚みにプレスし、表面にテフロン(登録商標)コーティングを行い幅47.5mm(内、無塗工部1mm)長さ1150mmの容量6500mAhのニッケル正極板とした。
【0034】
(負極板の作製)
粒径30μmのAB5型希土類系のMmNi3.6Co0.6Al0.3Mn0.35の組成を有する水素吸蔵合金を水素吸蔵処理後の水素吸蔵合金粉末を20℃の比重で48重量%のNaOH水溶液に浸漬し、100℃の水溶液に浸漬し4時間の処理を行った。
その後、加圧濾過して処理液と合金を分離した後、純水を合金重量と同重量添加して28KHzの超音波を10分間かけた。その後、緩やかに攪拌しつつ純水を攪拌層下部より注入し、排水をフローさせて合金より遊離する希土類水酸化物を除去した。その後、PH10以下になるまで水洗した後、加圧濾過した。
この後、80℃温水に暴露して水素脱離を行った。温水を加圧濾過して、再度の水洗を行い合金を25℃に冷却し、攪拌下4%過酸化水素を合金重量と同量加え、水素脱離を行って、電極用水素吸蔵合金を得た。
得られた水素吸蔵合金粉末とスチレンブタジエン共重合体とを99.35:0.65の固形分重量比で混合し、水で分散してペースト状にし、ブレードコーターを用いて、鉄にニッケルメッキを施したパンチング鋼板に塗布した後、80℃で乾燥した後、所定の厚みにプレスして幅47.5mm長さ1175mmの容量11000mAhの水素吸蔵負極板とした。
【0035】
(単電池の作製)
前記水素吸蔵合金負極板とスルフォン化処理を施した厚さ120μmのポリプロピレン不織布製セパレータと前記ニッケル極板とを組み合わせてロール状に巻回し、該捲回式極板群の一方の捲回端面に突出させた正極基板の端面に0.4mm厚さのニッケル板からなる円板状の正極集電板を、他方の捲回端面に突出させた負極基板の端面に負極集電板を抵抗溶接し、負極集電板の中央部分を外装缶の内面に抵抗溶接した。
厚さが0.4mm、幅が2.5mm、長さ66mmで、一方の長手方向先の側辺端面に高さが0.5mmの突起を10個、長手方向の他方の端面に高さが2mmの突起を8個設けたニッケル板をリング状に巻いた直径21mmのリング状のリード板を用意した。該リング状のリード板の高さが0.5mmの突起を10個設けた端面を蓋の内面に抵抗溶接により接合した。
なお、リング状のリード板には、電池間の接続部品と同じものを適用しても良い。
6.8Nの水酸化カリウムおよび0.8Nの水酸化リチウムを溶解したアルカリ電解液を所定量注液した後、前記リング状のリード板を接合した蓋を、ガスケットを介して外装缶の開放端に載置し、外装缶の開放端をかしめてクリンプシールした。なお、該シールを行った後に正極集電板に当接した8個の突起に1個当たりそれぞれ約200gfの荷重が加わるように突起の外側への張り出し角度を調整した。
【0036】
シールした単電池に、充電方向に3.5kA、通電時間4.5msec、放電方向に3.5kA、通電時間4.5msecの通電を1サイクルとする交流パルスからなる溶接電流を2サイクル通電して、円形状リード板の、高さ2mm、8個の突起を設けた端面と蓋に接合させた正極集電板を溶接し、蓋の内面と正極集電板が円形状のリード板によって接続されたDサイズの密閉形の円筒形ニッケル水素電池を作製した。
【0037】
(単電池の化成)
前記単電池を25℃12時間の保管処理の後、0.02ItAにて1200mAh充電し、0.1ItAで10時間充電した後、0.2ItAで1Vまで放電した後、0.1ItAで12時間充電、0.2ItAで1Vまで放電する操作を2回繰り返した。
この後、0.1ItAで16時間充電、0.2ItAで1Vまで放電する操作を2回繰り返し行った。
【0038】
(組電池の作製)
前記単電池6個を以下のようにシリーズ接続して、Dサイズの円筒形ニッケル水素密閉形電池6個からなる組電池を作製した。
厚さが0.6mm、幅が2.5mm、長さ66mmで、一方の長手方向先の側辺端面に高さが0.5mmの突起を10個、他方の長手方向の端面に高さが0.5mmの突起を8個設けたニッケル板をリング状に巻いた直径21mmのリング状の接続部品を作製した。
【0039】
前記載の単電池を2個用い、リング状の接続部品の10点の突起がある側を1個の密閉形電池の蓋に抵抗溶接で溶接した。
リング状の接続部品と、蓋体に取付けたリード板の8個の突起が2個目の外装缶に当節するように載置し、図5の様にして、1個目の密閉形電池の負極端子と、2個目の密閉形電池の負極端子とに外部電源を接続し、充電方向に3.5kA、通電時間4.5msec、放電報告3.5kA、通電時間4.5msecの通電を1サイクルとする交流パルスからなる溶接電流を2サイクル通電して、セル間をリング状の接続部品で接続した。
このようにして密閉形電池と密閉形電池がリング状の接続部品で接続された2個直列のニッケル水素組電池を作成した。
同様にして、この2個の密閉形電池にもう1個の密閉形電池を接続し、これを続けて6個直列のニッケル水素組電池を作成した。
【0040】
(比較例)
セル間接続用部品として図9に示した部品を適用した。該部材は厚さ0.3mmのニッケル板を絞り加工したものであって、抵抗溶接により該部材の一端を単電池の蓋の外面に、他端を単電池の外装缶の底部側面に接合させた。それ以外の単電池の構成・構造は、実施例と同じとした。
【0041】
(内部インピーダンスおよび高率放電特性)
周囲温度25℃において1kHzの交流を用いて前記実施例および比較例に係る6個直列の組電池のインピーダンスを測定したところ、比較例の6個直列の組電池が8.4ミリオーム(mΩ)であるのに対して実施例組電池が5.9ミリオーム(mΩ)という低い値であった。
これは、図10に示した如く、22の上面の突起と下面の突起の突起間距離が、実施例に比較して明らかに長い事が原因であると考えられる。
このため、実施例においては比較例に比べてセル間接続が短くでき、該接続の電気抵抗を低くすることができる事によって、6個直列の組電池のインピーダンスが低い値を示したものと考えられる。
【0042】
前記実施例および比較例に係る6個直列の組電池を、周囲温度25℃において充電レート0.2ItAにて150%充電し1時間放置後、放電レート200A(30.8ItA相当)、放電カット電圧4.0Vにて放電した。該放電の放電曲線を図11に示す。
図11に示す如く、実施例に係る6個直列の組電池は、比較例に係る6個直列の組電池に比べて放電特性が極めて良好であることが分かった。実施例および比較例に係る6個直列の組電池の高率放電特性の差は、前記のようにインピーダンスに大きな差があることによって生じたものと考えられる。
【0043】
なお、本発明においては単電池内部の集電の構造は特に限定されるものではなく、例えば正極集電板と蓋を接続するためのリードに従来広く用いられているリボン状のリード板を適用することも可である。しかし、該リボン状のリード板は、細くて長く電気抵抗が大きい欠点がある。リードの電気抵抗を出来るだけ小さくするためには、前記実施例に示したように単電池の正極集電板と蓋を結ぶリードにもリング状リードを適用して集電板と蓋を短距離で結ぶことが好ましい。
また、前記実施例においては捲回式極板群を適用した円筒形の単電池を直列にした組電池について記述したが、単電池の構成についてはこれに限定されるものではなく、本発明は、複数枚の正極、負極およびセパレータを積層させた積層式極板群を適用した角形密閉形電池にも適用できる。
また、実施例は2個及び6個の組電池について記載したが、より多くの組電池でも良い。
なお、本発明の実施例は密閉形の円筒形ニッケル水素2次密閉形電池を用いたが、本発明はニッケル水素密閉形電池に限定されるものではなく、ニッケルカドミウム密閉形電池、リチウムイオン密閉形電池、リチウムポリマー密閉形電池(ゲルも含む)、制御弁式鉛密閉形電池などの2次密閉形電池や、アルカリ1次密閉形電池、リチウムコイン密閉形電池など密閉形の1次及び2次密閉形電池に適用できる。
なお、実施例には、密閉形電池内接続と密閉形電池間接続とを同じ条件で溶接した例を記載したが、本発明においては、実施例に記載の溶接条件の他に、適宜他の条件を選択しても良い。
また、本発明に適用する正極板、正極集電板、セパレータ、負極板、負極集電板の形状、材質は、実施例に記載のものに限定されることはない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
請求項1〜7に記載の本発明では、一方の密閉形電池の外装缶の底部と蓋部とを溶接により接続するための接続体として、リング状の接続部品を介在させることによって、極めて低抵抗な組電池を実現できるので、産業上の利用可能性は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の組電池の構造を示す図である。
【図2】本発明で外装缶の底部と蓋部との溶接に用いるリング状の接続部品の第1の例を示す図である。
【図3】本発明で外装缶の底部と蓋部との溶接に用いるリング状の接続部品の第2の例を示す図である。
【図4】図3に示すリング状の接続部品の斜視図である。
【図5】リング状の接続部品を介して密閉形電池間を接続する方法を示す図であって、リング状の接続部品の溶接面と外装缶の底部を溶接する方法を示す図である。
【図6】リング状の接続部品を介して密閉形電池間を接続する方法を示す図であって、リング状の接続部品の溶接面と外装缶の底部を溶接する方法を示す図である。
【図7】従来の組電池の構成を示す図である。
【図8】従来の組電池の接続部の断面を示す図である。
【図9】従来の組電池の接続に用いる接続体の平面図である。
【図10】従来の組電池の接続に用いる接続体の側面図である。
【図11】本発明の組電池と従来の組電池の放電特性を比較した図である。
【符号の説明】
【0046】
10 密閉形電池の外装缶
11 底部
12 蓋部
16 カシメ凸部
20 リング状の接続部品
20−a、20−b 突部
30 保持キャップ
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個のセルを接続した組電池およびその製造方法に関し、特に、セル間を接続するリード部材を改善した組電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の組電池としては以下のものが知られている。(例えば、特許文献1参照)
図7の従来の組電池は複数の二次電池10を直列に接続して直線状に連結している。この構造の組電池は、複数個を直列に接続して、主としてハイブリッドカー等の電気自動車に使用される。ただ、本発明の組電池は、電動車両以外の用途であって、大出力が要求される用途にも使用できる。図の組電池は、円筒型電池である二次電池を直線状に連結して直列に接続している。ただし、組電池は、角型電池である二次電池を直線状に連結して直列に接続することもできる。
【0003】
二次電池10は、ニッケル−水素電池、リチウムイオン二次電池、ニッケル−カドミウム電池等の充電できる全ての電池を使用することができる。ただ、電気自動車用の組電池に使用される二次電池には、ニッケル−水素電池が適している。体積と重量に対する出力が大きくて、優れた大電流特性を有するからである。
【0004】
二次電池10は、図8の断面図に示すように、外装缶11の開口部を封口板12で気密に密閉している。外装缶11と封口板12は金属板である。外装缶11は、金属板を底のある筒状にプレス成形して製作される。封口板12は、中央に凸部電極13を溶接している。外装缶11の内部には、電極(図示せず)が内蔵される。さらに、電解液も充填される。外装缶11は、開口部の端部をかしめ加工して封口板12を気密に固定している。封口板12は、ガスケット14を介して外装缶11のかしめ部に挟着されて気密に固定される。ガスケット14は絶縁材のゴム状弾性体で、封口板12と外装缶11とを絶縁すると共に、封口板12と外装缶11との隙間を気密に閉塞する。この構造の二次電池10は、封口板12をかしめて挟着するために、封口板12を設けている端部に、周囲に沿って溝部15が設けられる。さらに、封口板12の周縁にはカシメ凸条16が設けられる。この二次電池10は、封口板12を第1の電極として、外装缶11を第2の電極としている。ニッケル−水素電池は、第1の電極を正極として第2の電極を負極としている。二次電池は、第1の電極を負極として第2の電極を正極とすることもできる。
【0005】
図7の組電池は、複数の二次電池10を直線状に連結して、直列に接続している。これらの組電池は、直線状に連結している二次電池10の端面の間に、二次電池10を電気接続する接続体20と、この接続体20を定位置に配設する保持キャップ30とを配設している。図8の組電池は、一方の二次電池10の封口板12と他方の二次電池10の外装缶11とを接続体20で接続している。二次電池10は、封口板12を第1の電極、外装缶11を第2の電極としているので、封口板12に接続される接続体20が外装缶11の一部であるカシメ凸条16に接触するとショートする。したがって、図8の組電池は、接続体20とカシメ凸条16とを保持キャップ30で絶縁している。
【0006】
これ等の図に示す接続体20は、金属板をプレス成形して製作される。接続体20は、鉄板等の下地金属板の両面に金属メッキ層を設けている。金属メッキ層は、導電性に優れた電気抵抗の小さい導電メッキ層と、この導電メッキ層の表面に積層している溶接に適した抵抗メッキ層とからなる。導電メッキ層は、銅や銀、あるいはこれ等の合金であって、下地金属板と抵抗メッキ層よりも電気抵抗の小さいメッキ層である。抵抗メッキ層は、ニッケルやクローム、あるいはこれらの合金であって、導電メッキ層よりも電気抵抗が大きいメッキ層である。この接続体20は、抵抗メッキ層で発熱しやすく、電池端面に速やかに溶接される。また導電メッキ層によって電気抵抗が小さく、二次電池10を低抵抗な状態で直列に接続できる。
【0007】
接続体20は、対向して配設される隣接二次電池10の電池端面に溶接して接続されて、二次電池10を直列に電気接続している。図9と図10は、接続体20を示している。図9は、図7に示す組電池の接続体20の平面図、図10は断面図である。これ等の接続体20は、金属板を穴のあるリング状に成形して、両面に突出して電池端面に溶接される複数の溶接凸部22を設けている。両面に突出している溶接凸部22は、対向する電池端面の第1の電極と第2の電極に溶接されて、隣接して配設している二次電池10を直列に接続する。さらに、図の接続体20は中心孔21を設けて、ここに凸部電極13を配設している。接続体は、中心孔を開口することなく、凸部電極を案内する部分を突出させる形状とすることもできる。
【0008】
図9と図10に示す接続体20は、図8に示すように、電池端面に設けられているカシメ凸条16の内形よりも外形を小さくしている。この接続体20は、外周縁とカシメ凸条16との間に隙間を設けて、接続体20がカシメ凸条16に接触してショートするのを阻止している。接続体20は、位置がずれるとカシメ凸条16に接触するので、接続体20を保持キャップ30で定位置に保持している。この接続体20は、同一の円周上に複数の溶接凸部22を設けている。溶接凸部22は、交互に反対面、図10において上下に突出している。反対面に突出する溶接凸部22は、対向して配設される電池端面に溶接して接続される。
【特許文献1】特開2003−223879号公報 (図5,6,8,9 (0014)〜(0020))
【特許文献2】特開2000−100416号公報 (0028)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の組電池に使用される接続体は、金属板をプレス成形して穴のあるリング状に成形して、両面に突出して電池端面に溶接される複数の溶接凸部22を設けている。
このため、該接続体は、鉄板等の下地金属板の両面に金属メッキ層を設けており、金属メッキ層は、導電性に優れた電気抵抗の小さい導電メッキ層と、この導電メッキ層の表面に積層している溶接に適した抵抗メッキ層とからなるように構成している。
しかしながら、全体としての接続抵抗は大きく低減できないという問題があった。
また、特許文献2には、組電池接続する方法として、放電させる方向に、1対の溶接用電極棒で240Vの電圧を印加し、1kAの電流を15ミリ秒間流す方法が開示されている。1kAで15ミリ秒の放電方向の電流により溶接部は溶接されるものの、溶接強度は十分でなく、放電側の大きな分極によって発生したガスが、開放状態の電池から放出され、負極の有する充電リザーブと放電リザーブのバランスが崩れ、過放電に弱い電池が形成されてしまう可能性もある。逆に、充電方向も同様で、充電側の大きな分極によって発生したガスが、解法状態の電池から放出され、負極の有する充電リザーブと放電リザーブのバランスが崩れ、サイクル寿命に弱い電池が形成されてしまう欠点を有している。
【0010】
本発明の課題(目的)は、一方の電池の外装缶の底部と蓋部とを溶接により接続するための接続体として、リング状の接続部品を介在させることによって、極めて低抵抗の組電池及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、少なくとも2個以上の密閉形電池の内の一方の蓋板と他方の密閉形電池の外装缶の底部とを接続した組電池であって、前記蓋部には、リング状の接続部品の一方の面Xが溶接され、前記外装缶の底部には、前記リング状の接続部品の他方の面Yを溶接されていることを特徴とする組電池。(請求項1)
【0012】
また、前記リング状の接続部品の溶接面には、それぞれ複数の突起が形成されていることを特徴とする。(請求項2)
また、前記リング状の接続部品に形成された突起の数は、一方及び他方の面で突起の数が異なることを特徴とする。(請求項3)
【0013】
少なくとも2個以上の密閉形電池の内の一方の蓋板と他方の密閉形電池の外装缶の底部とを接続する組電池の製造方法であって、前記一方の密閉形電池の蓋部と他方の密閉形電池の外装缶の底部との間にリング状の接続部品を介在させ、前記一方及び他方の密閉形電池間に電流を流すことによって一方及び他方の密閉形電池を溶接して直列接続することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の組電池の製造方法。(請求項4)
また、少なくとも2個以上の密閉形電池の内の一方の蓋板と他方の密閉形電池の外装缶の底部とを接続する組電池の製造方法であって、一方の密閉形電池の蓋の外面とリング状の接続部品の突起数の多い面を予め溶接する工程と、前記予め溶接されたリング状の接続部品の他の面を他方の密閉形電池の外装缶の底部に密閉形電池を介して電流を流して溶接して直列接続することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の組電池の製造方法。(請求項5)
また、前記一方及び他方の密閉形電池間に電流を流す電流が、充電と放電を1セットとした交流パルスであることを特徴とする請求項4又は5に記載の組電池の製造方法。(請求項6)
また、前記請求項4〜6のいずれか1項に記載の製造方法を用いてなる組電池。(請求項7)
【発明の効果】
【0014】
請求項1〜7に記載の本発明では、一方の密閉形電池の外装缶の底部と蓋部とを溶接により接続するための接続体として、リング状の接続部品を介在させることによって、低抵抗で高率放電特性に優れた組電池を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の組電池の構造を図1を用いて説明する。
図1の組電池は、図1(a)に示す如く一方の二次密閉形電池10の蓋板12と他方の二次密閉形電池10の外装缶1底部のとをリード板で接続している。
二次密閉形電池10は、ガスケット14で絶縁された蓋板12を第1の電極、外装缶11を第2の電極としているので、蓋板12に接続される接続体としてのリング状の接続部品20が外装缶11の一部であるカシメ凸条16に接触するとショートする。したがって、図6の組電池は、接続体20とカシメ凸条16とを保持キャップ30で絶縁している。
【0016】
前記リング状の接続部品の1例は、図1(b)の平面図及び(c)の側面図に示す構成である。
以下、図2〜4を用いて、本発明で使用されるリング状の接続部品について詳細に説明する。
【0017】
本発明の外装缶の底部と蓋部との溶接に使用するリング状の接続部品の第1の例を、図2を用いて以下に説明する。
図2において、(a)は、リング状の接続部品(20)であって、厚さ0.4〜1.0mmの金属板(c)をリング状に曲げ加工したものである。
該金属板の材質は特に限定されるものではないが、Ni,Fe,NiFe(Niメッキ鋼板)やCu(銅)を用いることができる。又、腐食を防止するためにSn,Ag,Ni等のメッキを施すこともできる。(図2の例では、厚さ0.7mmのニッケル板を打ち抜き
好ましくは、Niもしくは、CuとNiの貼り合わせによるクラッド鋼板を用いると極めて低い抵抗が実現できることから望ましい。
またはワイヤカットで加工後に、リング状に曲げ加工されており、その直径は約19mm、高さは約2.7mmである)
(b)は、その側面図であり、(d)は図(c)の2点鎖線部分の拡大図である。
(a)に示す如く、リード板の形状はリング状の他に、多角形などでも良いが、構造が簡易なほぼ円形のリング状に曲げ加工されるのが望ましい。
また、図2では、円形のリングに切れ目a−1が存在しているが、この切れ目は、板状の素材を円形に加工したためであって、密閉形電池の排気弁から排出されたガスが系外へ排出される隙間を有していれば切れ目は必ずしも存在しなくても良い。
また、図2に記載のリング状の接続部品には、リード板の上部及び下部にそれぞれ複数の突起(20a)が形成されている。
【0018】
また、本発明の外装缶の底部と蓋部との溶接に使用するリング状の接続部品第2の例を、図3を用いて以下に説明する。
図3において、(a)は、リング状の接続部品(20)であって、厚さ0.4〜1.0mmのNiまたはFeNi(ニッケルメッキ鋼板)(c)をリング状に曲げ加工したものである。(図4の例では、厚さ0.7mmのニッケル板をワイヤカットで加工後に、リング状に曲げ加工されており、その直径は約19mm、高さは約2.7mmである)
(b)は、側面図であり、(d)は図(c)の2点鎖線部分の拡大図である。
(a)に示す如く、リード板の形状はリング状の他に、多角形などでも良いが、構造が簡易なほぼ円形のリング状に曲げ加工されるのが望ましい。
また、図4では、円形のリングに切れ目a−1が存在しているが、この切れ目は、板状の素材を円形に加工したためであって、切れ目は必ずしも存在しなくても良い。
【0019】
また、図3に記載のリング状の接続部品には、リード板の上部及び下部にそれぞれ複数の突起(20a,20b)が形成されている。
また、図3の突起はリード板の上部と下部とでは異なった形状(下部の突起が長い)に形成されているが、必ずしも異なった形状とする必要はない。(図4の例では、長い突起は約2.0mm、短い突起は約0.5mm)
また、図3のリード板に形成されている突起の数は、上部と下部で異なった数になっている。(図3の例では、下部に4個、上部に8個の突起が形成されている。)
リード板に形成されている突起の数(又は突起の総面積)は、上部と下部とで異なった数にする理由は、蓋部が外装缶の底部よりも厚い部品を使うことが一般的であり、リード板との溶接時には発熱量が大きくても溶接熱が周囲に逃げ、溶接が容易でないため、リード板を蓋部と集電板とに溶接するに際して、本発明では、先ず蓋部にリード板の突起の数の多い面を溶接することによって、リード板が強固に溶接でき、次にリード板の他方の面(突起の数の少ない面)を外装缶の底部に溶接するために電流を流した際に、先に溶接された部分に溶接電流が流れることによって破断することがなくなる。
【0020】
突起の高さは、0.5mm以上が望ましい。(0.5mm未満では、溶接強度が得られない虞れがある。)(図3の例では、長い突起は約2.0mm、短い突起は約0.5mm)
実施例のD形密閉形電池においては、突起の数は、電気抵抗を小さく抑えるため、片方の面の数は8点以上(多い方)が好ましい。(片方は、例えば、一方のセルの外装缶(電漕)の底面に先に溶接しておく際には、溶接電流を密閉形電池内を流れないので、突起の数は多くても良い。)
また、他方の面の数は、前記片方の面より少なく、かつ4〜8が好ましい。(4点未満では電気抵抗がおおきくなる虞れがあり、8点を超えると溶接に必要な電流(密閉形電池内を流れる)が大きすぎて密閉形電池が損傷を受ける虞がある。
なお、他のサイズの密閉形電池においては、密閉形電池容量に比例して突起の数は適宜調整する事ができる。
【0021】
図4は、図3に示す第2のリング状の接続部品の斜視図である。(図4では、リング状の接続部品の上部と下部の突起の形状が異なっているが、必ずしも異ならせる必要はない。)
また、リード板に形成される突起には、溶接を確実に行うために高抵抗部分を形成するプロジェクションとするのが望ましい。
【0022】
次に、本発明におけるリード板を用いて一方の密閉形電池の外装缶の底部と他方の密閉形電池の蓋部との溶接の手順を説明する。
・本発明の特徴は、一方の密閉形電池の外装缶の底部と他方の密閉形電池の蓋部との溶接をリング状の接続部品を介して、両密閉形電池間に電流を流して溶接することにある。
なお、一方のセルの蓋の外面にリング状の接続部品を予め溶接しておくことが好ましいが、リード板と蓋、リード板と外装缶の底部を一括して溶接することもできる。
その際には、溶接電流を密閉形電池内を流れないので、突起の数は多くても良い。)
【0023】
一方の密閉形電池の外装缶の底部と他方の密閉形電池の蓋部との溶接に際して、上記の図2〜4に記載のリング状の接続部品を適宜選択して両密閉形電池間に電流を流して溶接するものであるが、リング状の接続部品の選択によって溶接の強度が異なってくるので、密閉形電池の外装缶、蓋部及びリング状の接続部品の材料に応じて、突起の数を変更したり、図2または3に記載のものから最適のものを選択するのが望ましい。
【0024】
図5、図6は、本発明に係る組電池の組立工程のうち、密閉形電池間を接続するための前記リング状の接続部品20の一方の溶接面と外装缶10の底面を溶接する工程を示す図である。
図5に示すように、2個の密閉形電池を直列接続できるように一方の密閉形電池(図の下側の密閉形電池)の蓋12の外面に溶接したリング状の接続部品20の溶接面に設けた突起を他方の密閉形電池(図の上側の密閉形電池)の外装缶10の底面に当接するように配置する。なお、2つの密閉形電池の間に絶縁リング12を配置する。
前記一方の密閉形電池(図の下側の密閉形電池)及び他方の密閉形電池の外装缶に溶接用外部電源の出力端子AおよびBを当接させ両出力端子A、B間に交流パルスを通電して、前記リード板20と外装缶10を溶接する。
【0025】
また、図6に示すように、溶接用外部電源の出力端子Aを他方の密閉形電池(図の上側の密閉形電池)の正極端子に当接させて、両出力端子A、B間に交流パルスを通電して、前記リード板20と外装缶10を溶接することもできる。
なお、図5及び図6に示した方法によれば、密閉形電池数が2個に限定されることなく、複数個直列に配列した密閉形電池の両端の密閉形電池のうち、一方の密閉形電池の負極端子(外装缶)に溶接用外部電源の出力端子Aを、他方の密閉形電池の正極端子に溶接用外部電源の出力端子Bを当接し、交流パルスを通電することによって、複数個の密閉形電池間を一度に溶接することもできる。
【0026】
通電する交流パルスの電流値の大きさは、外装缶10とリング状の接続部品20の突起20aが溶接可能な大きさに適宜選択すればよい。電流値が小さすぎると溶接しようとする接点における発熱量が不足して溶接できず、電流値が大きすぎると突起20aが焼き切れてしまい溶接できない虞がある。
【0027】
なお、放電方向又は充電方向の一方電流による方法では、溶接部は溶接されるものの、溶接強度は強くない。また、電流を大きくすると放電側のおおきな分極によって発生したガスが、解放状態の密閉形電池から放出され、負極の有する充電リザーブと放電リザーブのバランスが崩れ、過放電い弱い密閉形電池が形成されてしまう。
逆に、充電方向も同様で、充電側の大きな分極によって発生したガスが、解放状態の密閉形電池から放出され、負極の有する充電リザーブと放電リザーブのバランスが崩れ、サイクル寿命に弱い密閉形電池が形成されてしまう。
【0028】
電流による接点の溶接電流を通電する際に充電と放電を1セットとした交流パルスを用いると、正負極からガス発生が極めて少なくでき、大きな電流を通電することができる。
このことによって、溶接接点が安定して低抵抗な溶接とすることができる。
これは、密閉形電池の静電容量を超えないように、打ち消し合う電流を流すことによって、ガス発生が抑えられたものと考えられる。
なお、ここでいう静電容量とは、密閉形電池が電解液を分解し、密閉形電池内部の圧力が密閉形電池の開弁圧を超えない範囲で受電可能な電気容量を指し、厳密には正極板および負極板の二重層容量以外に密閉形電池の充放電反応に伴う電気容量とガス発生による電気容量を含んでいる。
【実施例】
【0029】
以下に、円筒形ニッケル水素蓄密閉形電池を対象とした実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の記載により限定されるものではなく、試験方法や構成する密閉形電池の正極活物質、負極材料、正極、負極、電解質、セパレータ並びに密閉形電池形状等は任意である。
【0030】
(実施例1)
(正極板の作製)
硫酸ニッケルと硫酸亜鉛および硫酸コバルトを所定比で溶解した水溶液に硫酸アンモニウムと苛性ソーダ水溶液を添加してアンミン錯体を生成させた。反応系を激しく撹拌しながら更に苛性ソーダを滴下し、反応系のpHを10〜13に制御して芯層母材となる球状高密度水酸化ニッケル粒子を水酸化ニッケル:水酸化亜鉛:水酸化コバルト=88.45:5.12:1.1の比となるように合成した。
【0031】
前記高密度水酸化ニッケル粒子を、苛性ソーダでpH10〜13に制御したアルカリ水溶液に投入した。該溶液を撹拌しながら、所定濃度の硫酸コバルト、アンモニアを含む水溶液を滴下した。この間、苛性ソーダ水溶液を適宜滴下して反応浴のpHを10〜13の範囲に維持した。約1時間pHを10〜13の範囲に保持し、水酸化ニッケル粒子表面にCoを含む混合水酸化物から成る表面層を形成させた。該混合水酸化物の表面層の比率は芯層母粒子(以下単に芯層と記述する)に対して、4.0wt%であった。
【0032】
前記混合水酸化物から成る表面層を有する水酸化ニッケル粒子50gを、温度110℃の30wt%(10N)の苛性ソーダ水溶液に投入し、充分に攪拌した。続いて表面層に含まれるコバルトの水酸化物の当量に対して過剰のK2S2O8を添加し、粒子表面から酸素ガスが発生するのを確認した。活物質粒子をろ過し、水洗、乾燥した。
【0033】
前記活物質粒子にカルボキシメチルセルローズ(CMC)水溶液を添加して前記活物質粒子:CMC溶質=99.5:0.5のペースト状とし、該ペーストを450g/m2のニッケル多孔体(住友電工(株)社製ニッケルセルメット#8)に充填した。その後80℃で
乾燥した後、所定の厚みにプレスし、表面にテフロン(登録商標)コーティングを行い幅47.5mm(内、無塗工部1mm)長さ1150mmの容量6500mAhのニッケル正極板とした。
【0034】
(負極板の作製)
粒径30μmのAB5型希土類系のMmNi3.6Co0.6Al0.3Mn0.35の組成を有する水素吸蔵合金を水素吸蔵処理後の水素吸蔵合金粉末を20℃の比重で48重量%のNaOH水溶液に浸漬し、100℃の水溶液に浸漬し4時間の処理を行った。
その後、加圧濾過して処理液と合金を分離した後、純水を合金重量と同重量添加して28KHzの超音波を10分間かけた。その後、緩やかに攪拌しつつ純水を攪拌層下部より注入し、排水をフローさせて合金より遊離する希土類水酸化物を除去した。その後、PH10以下になるまで水洗した後、加圧濾過した。
この後、80℃温水に暴露して水素脱離を行った。温水を加圧濾過して、再度の水洗を行い合金を25℃に冷却し、攪拌下4%過酸化水素を合金重量と同量加え、水素脱離を行って、電極用水素吸蔵合金を得た。
得られた水素吸蔵合金粉末とスチレンブタジエン共重合体とを99.35:0.65の固形分重量比で混合し、水で分散してペースト状にし、ブレードコーターを用いて、鉄にニッケルメッキを施したパンチング鋼板に塗布した後、80℃で乾燥した後、所定の厚みにプレスして幅47.5mm長さ1175mmの容量11000mAhの水素吸蔵負極板とした。
【0035】
(単電池の作製)
前記水素吸蔵合金負極板とスルフォン化処理を施した厚さ120μmのポリプロピレン不織布製セパレータと前記ニッケル極板とを組み合わせてロール状に巻回し、該捲回式極板群の一方の捲回端面に突出させた正極基板の端面に0.4mm厚さのニッケル板からなる円板状の正極集電板を、他方の捲回端面に突出させた負極基板の端面に負極集電板を抵抗溶接し、負極集電板の中央部分を外装缶の内面に抵抗溶接した。
厚さが0.4mm、幅が2.5mm、長さ66mmで、一方の長手方向先の側辺端面に高さが0.5mmの突起を10個、長手方向の他方の端面に高さが2mmの突起を8個設けたニッケル板をリング状に巻いた直径21mmのリング状のリード板を用意した。該リング状のリード板の高さが0.5mmの突起を10個設けた端面を蓋の内面に抵抗溶接により接合した。
なお、リング状のリード板には、電池間の接続部品と同じものを適用しても良い。
6.8Nの水酸化カリウムおよび0.8Nの水酸化リチウムを溶解したアルカリ電解液を所定量注液した後、前記リング状のリード板を接合した蓋を、ガスケットを介して外装缶の開放端に載置し、外装缶の開放端をかしめてクリンプシールした。なお、該シールを行った後に正極集電板に当接した8個の突起に1個当たりそれぞれ約200gfの荷重が加わるように突起の外側への張り出し角度を調整した。
【0036】
シールした単電池に、充電方向に3.5kA、通電時間4.5msec、放電方向に3.5kA、通電時間4.5msecの通電を1サイクルとする交流パルスからなる溶接電流を2サイクル通電して、円形状リード板の、高さ2mm、8個の突起を設けた端面と蓋に接合させた正極集電板を溶接し、蓋の内面と正極集電板が円形状のリード板によって接続されたDサイズの密閉形の円筒形ニッケル水素電池を作製した。
【0037】
(単電池の化成)
前記単電池を25℃12時間の保管処理の後、0.02ItAにて1200mAh充電し、0.1ItAで10時間充電した後、0.2ItAで1Vまで放電した後、0.1ItAで12時間充電、0.2ItAで1Vまで放電する操作を2回繰り返した。
この後、0.1ItAで16時間充電、0.2ItAで1Vまで放電する操作を2回繰り返し行った。
【0038】
(組電池の作製)
前記単電池6個を以下のようにシリーズ接続して、Dサイズの円筒形ニッケル水素密閉形電池6個からなる組電池を作製した。
厚さが0.6mm、幅が2.5mm、長さ66mmで、一方の長手方向先の側辺端面に高さが0.5mmの突起を10個、他方の長手方向の端面に高さが0.5mmの突起を8個設けたニッケル板をリング状に巻いた直径21mmのリング状の接続部品を作製した。
【0039】
前記載の単電池を2個用い、リング状の接続部品の10点の突起がある側を1個の密閉形電池の蓋に抵抗溶接で溶接した。
リング状の接続部品と、蓋体に取付けたリード板の8個の突起が2個目の外装缶に当節するように載置し、図5の様にして、1個目の密閉形電池の負極端子と、2個目の密閉形電池の負極端子とに外部電源を接続し、充電方向に3.5kA、通電時間4.5msec、放電報告3.5kA、通電時間4.5msecの通電を1サイクルとする交流パルスからなる溶接電流を2サイクル通電して、セル間をリング状の接続部品で接続した。
このようにして密閉形電池と密閉形電池がリング状の接続部品で接続された2個直列のニッケル水素組電池を作成した。
同様にして、この2個の密閉形電池にもう1個の密閉形電池を接続し、これを続けて6個直列のニッケル水素組電池を作成した。
【0040】
(比較例)
セル間接続用部品として図9に示した部品を適用した。該部材は厚さ0.3mmのニッケル板を絞り加工したものであって、抵抗溶接により該部材の一端を単電池の蓋の外面に、他端を単電池の外装缶の底部側面に接合させた。それ以外の単電池の構成・構造は、実施例と同じとした。
【0041】
(内部インピーダンスおよび高率放電特性)
周囲温度25℃において1kHzの交流を用いて前記実施例および比較例に係る6個直列の組電池のインピーダンスを測定したところ、比較例の6個直列の組電池が8.4ミリオーム(mΩ)であるのに対して実施例組電池が5.9ミリオーム(mΩ)という低い値であった。
これは、図10に示した如く、22の上面の突起と下面の突起の突起間距離が、実施例に比較して明らかに長い事が原因であると考えられる。
このため、実施例においては比較例に比べてセル間接続が短くでき、該接続の電気抵抗を低くすることができる事によって、6個直列の組電池のインピーダンスが低い値を示したものと考えられる。
【0042】
前記実施例および比較例に係る6個直列の組電池を、周囲温度25℃において充電レート0.2ItAにて150%充電し1時間放置後、放電レート200A(30.8ItA相当)、放電カット電圧4.0Vにて放電した。該放電の放電曲線を図11に示す。
図11に示す如く、実施例に係る6個直列の組電池は、比較例に係る6個直列の組電池に比べて放電特性が極めて良好であることが分かった。実施例および比較例に係る6個直列の組電池の高率放電特性の差は、前記のようにインピーダンスに大きな差があることによって生じたものと考えられる。
【0043】
なお、本発明においては単電池内部の集電の構造は特に限定されるものではなく、例えば正極集電板と蓋を接続するためのリードに従来広く用いられているリボン状のリード板を適用することも可である。しかし、該リボン状のリード板は、細くて長く電気抵抗が大きい欠点がある。リードの電気抵抗を出来るだけ小さくするためには、前記実施例に示したように単電池の正極集電板と蓋を結ぶリードにもリング状リードを適用して集電板と蓋を短距離で結ぶことが好ましい。
また、前記実施例においては捲回式極板群を適用した円筒形の単電池を直列にした組電池について記述したが、単電池の構成についてはこれに限定されるものではなく、本発明は、複数枚の正極、負極およびセパレータを積層させた積層式極板群を適用した角形密閉形電池にも適用できる。
また、実施例は2個及び6個の組電池について記載したが、より多くの組電池でも良い。
なお、本発明の実施例は密閉形の円筒形ニッケル水素2次密閉形電池を用いたが、本発明はニッケル水素密閉形電池に限定されるものではなく、ニッケルカドミウム密閉形電池、リチウムイオン密閉形電池、リチウムポリマー密閉形電池(ゲルも含む)、制御弁式鉛密閉形電池などの2次密閉形電池や、アルカリ1次密閉形電池、リチウムコイン密閉形電池など密閉形の1次及び2次密閉形電池に適用できる。
なお、実施例には、密閉形電池内接続と密閉形電池間接続とを同じ条件で溶接した例を記載したが、本発明においては、実施例に記載の溶接条件の他に、適宜他の条件を選択しても良い。
また、本発明に適用する正極板、正極集電板、セパレータ、負極板、負極集電板の形状、材質は、実施例に記載のものに限定されることはない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
請求項1〜7に記載の本発明では、一方の密閉形電池の外装缶の底部と蓋部とを溶接により接続するための接続体として、リング状の接続部品を介在させることによって、極めて低抵抗な組電池を実現できるので、産業上の利用可能性は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の組電池の構造を示す図である。
【図2】本発明で外装缶の底部と蓋部との溶接に用いるリング状の接続部品の第1の例を示す図である。
【図3】本発明で外装缶の底部と蓋部との溶接に用いるリング状の接続部品の第2の例を示す図である。
【図4】図3に示すリング状の接続部品の斜視図である。
【図5】リング状の接続部品を介して密閉形電池間を接続する方法を示す図であって、リング状の接続部品の溶接面と外装缶の底部を溶接する方法を示す図である。
【図6】リング状の接続部品を介して密閉形電池間を接続する方法を示す図であって、リング状の接続部品の溶接面と外装缶の底部を溶接する方法を示す図である。
【図7】従来の組電池の構成を示す図である。
【図8】従来の組電池の接続部の断面を示す図である。
【図9】従来の組電池の接続に用いる接続体の平面図である。
【図10】従来の組電池の接続に用いる接続体の側面図である。
【図11】本発明の組電池と従来の組電池の放電特性を比較した図である。
【符号の説明】
【0046】
10 密閉形電池の外装缶
11 底部
12 蓋部
16 カシメ凸部
20 リング状の接続部品
20−a、20−b 突部
30 保持キャップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2個以上の密閉形電池の内の一方の蓋板と他方の密閉形電池の外装缶の底部とを接続した組電池であって、
前記蓋部には、リング状の接続部品の一方の面Xが溶接され、
前記外装缶の底部には、前記リング状の接続部品の他方の面Yが溶接されている、
ことを特徴とする組電池。
【請求項2】
前記リング状の接続部品の溶接面には、それぞれ複数の突起が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の組電池。
【請求項3】
前記リング状の接続部品に形成された突起の数は、一方及び他方の面で突起の数が異なることを特徴とする請求項2に記載の組電池。
【請求項4】
少なくとも2個以上の密閉形電池の内の一方の蓋板と他方の密閉形電池の外装缶の底部とを接続する組電池の製造方法であって、
前記一方の密閉形電池の蓋部と他方の密閉形電池の外装缶の底部との間にリング状の接続部品を介在させ、前記一方及び他方の密閉形電池間に電流を流すことによって一方及び他方の密閉形電池を溶接して直列接続することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の組電池の製造方法。
【請求項5】
少なくとも2個以上の密閉形電池の内の一方の蓋板と他方の密閉形電池の外装缶の底部とを接続する組電池の製造方法であって、
一方の密閉形電池の蓋の外面とリング状の接続部品の突起数の多い面を予め溶接する工程と、
前記予め溶接されたリング状の接続部品の他の面を他方の密閉形電池の外装缶の底部に密閉形電池を介して電流を流して溶接して直列接続することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の組電池の製造方法。
【請求項6】
前記一方及び他方の密閉形電池間に流す電流が、充電と放電を1セットとした交流パルスであることを特徴とする請求項4又は5に記載の組電池の製造方法。
【請求項7】
前記請求項4〜6のいずれか1項に記載の製造方法を用いてなる組電池。
【請求項1】
少なくとも2個以上の密閉形電池の内の一方の蓋板と他方の密閉形電池の外装缶の底部とを接続した組電池であって、
前記蓋部には、リング状の接続部品の一方の面Xが溶接され、
前記外装缶の底部には、前記リング状の接続部品の他方の面Yが溶接されている、
ことを特徴とする組電池。
【請求項2】
前記リング状の接続部品の溶接面には、それぞれ複数の突起が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の組電池。
【請求項3】
前記リング状の接続部品に形成された突起の数は、一方及び他方の面で突起の数が異なることを特徴とする請求項2に記載の組電池。
【請求項4】
少なくとも2個以上の密閉形電池の内の一方の蓋板と他方の密閉形電池の外装缶の底部とを接続する組電池の製造方法であって、
前記一方の密閉形電池の蓋部と他方の密閉形電池の外装缶の底部との間にリング状の接続部品を介在させ、前記一方及び他方の密閉形電池間に電流を流すことによって一方及び他方の密閉形電池を溶接して直列接続することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の組電池の製造方法。
【請求項5】
少なくとも2個以上の密閉形電池の内の一方の蓋板と他方の密閉形電池の外装缶の底部とを接続する組電池の製造方法であって、
一方の密閉形電池の蓋の外面とリング状の接続部品の突起数の多い面を予め溶接する工程と、
前記予め溶接されたリング状の接続部品の他の面を他方の密閉形電池の外装缶の底部に密閉形電池を介して電流を流して溶接して直列接続することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の組電池の製造方法。
【請求項6】
前記一方及び他方の密閉形電池間に流す電流が、充電と放電を1セットとした交流パルスであることを特徴とする請求項4又は5に記載の組電池の製造方法。
【請求項7】
前記請求項4〜6のいずれか1項に記載の製造方法を用いてなる組電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−49096(P2006−49096A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−228542(P2004−228542)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【出願人】(000006688)株式会社ユアサコーポレーション (21)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【出願人】(000006688)株式会社ユアサコーポレーション (21)
【Fターム(参考)】
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