説明

経口投与剤

【課題】経口摂取により、血液又はリンパ液中のプラスマローゲンを効率的に増加させることができる、保存性良好な経口投与剤を提供する。
【解決手段】1−アルキルエーテル型リン脂質を有効成分として含むことを特徴とする血液又はリンパ液中の経口投与剤によって解決することができる。本発明の経口投与剤により、プラスマローゲンの増加によって予防又は治療可能な疾患を効果的に予防又は治療することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1−アルキルエーテル型リン脂質を有効成分として含有する経口投与剤、及び飲食品に関する。本発明の経口投与剤、及び飲食品は保存性が良好である。本発明によれば、経口摂取により、生体内のプラスマローゲン量を増加させることができる。
【背景技術】
【0002】
プラスマローゲンとはsn−1位にビニルエーテル結合による炭化水素鎖を持ち、sn−2位には脂肪酸が結合しているグリセロリン脂質のサブクラスであり、アルケニルアシル型リン脂質ともいう。動物では脳、心臓、脾臓などに比較的多く含まれる。極性基はエタノールアミンとコリンがほとんどで、sn−2位にはヒトの場合、アラキドン酸やドコサヘキサエン酸等の多価不飽和脂肪酸に富むこと等が知られている。
プラスマローゲンの機能は未だ不明な点が多いが、プラスマローゲン合成部位であるペルオキシソームに障害を持つペルオキシソーム病では、精神遅滞を初めとする種々の重篤な症状を呈することから、プラスマローゲンが正常な細胞や生体の機能維持に重要な役割を果たしていることが推測される。
また、このような先天的な異常がなくても、血液又はリンパ液中のプラスマローゲンが加齢と共に減少すること、アルツハイマー病患者では脳のプラスマローゲンが減少していること、プラスマローゲンがLDLコレステロールの酸化を抑制すること等、プラスマローゲンが加齢や酸化ストレスが関与する疾病と関係していることが明らかになりつつある(非特許文献1及び非特許文献2)。
【0003】
つまり、生体内のプラスマローゲンが減少することがさまざまな疾患の原因となっていると考えられている。従って、生体内のプラスマローゲン量を増加させることは種々の疾病の改善、予防に有効と思われることから、血液又はリンパ液中のプラスマローゲンを増加させる方法が求められている。
特に飲食品や経口医薬品は、継続的に且つ簡易に摂取可能なことから、経口摂取により血液又はリンパ液中のプラスマローゲン含量を増加させることができるプラスマローゲン増加剤が提案されている。
【0004】
現在までに報告されている生体内でプラスマローゲンを増加させる効果のあるものとして、例えば、アルキルグリセロール(非特許文献3及び特許文献1)、プラスマローゲンに富む牛脳リン脂質(非特許文献4)、イノシトール(特許文献2)、コリン型プラスマローゲン(特許文献3)、炭素数16以上の直鎖モノ不飽和脂肪酸化合物(特許文献4)等が開示されている。
しかし、アルキルグリセロール、イノシトール、炭素数16以上の直鎖モノ不飽和脂肪酸化合物摂取によるプラスマローゲン増加は1.5倍程度と弱かった。また、牛脳リン脂質摂取ではプラスマローゲンやコリン型プラスマローゲンの摂取では数倍に増加するが、これらは風味が悪く飲食品に対し多量に添加することが困難であることに加え、酸化安定性が低いため長期保存の飲食品、特に常温保管の飲食品における保存性の低さが問題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6177476号明細書
【特許文献2】特開2007−51132号公報
【特許文献3】特開2009−269865号公報
【特許文献4】特開2009−062364号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「オレオサイエンス(Oleoscience)2002年、(日本)第2巻、p.27−36
【非特許文献2】「オレオサイエンス(Oleoscience)2005年、(日本)第5巻、p.405−415
【非特許文献3】「リピッド(Lipids)」1991年、(米国)第26巻、p.166−169
【非特許文献4】「リピッド(Lipids)」2003年、(米国)第38巻、p.1227−1235
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、風味、保存性が良好であり、癌、動脈硬化症、アルツハイマー症などの酸化ストレスの関与する疾患を予防、あるいは改善するために、体内のプラスマローゲン量を効率的に増加させる経口投与剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、プラスマローゲンを構成する成分とその作用について研究を重ねる過程で、従来はプラスマローゲンを構成するアシル鎖やリン酸に結合する塩基部分についての検討のみであったのに対し、プラスマローゲンではなく、その基本骨格の一部を改変した組成物を試作し、その比較検討を行ったところ、ある特定の部位の結合基を改変した場合に、前記問題を解決可能であることを見出した。
すなわち、リン脂質は、ジアシル型リン脂質、アルケニルアシル型リン脂質(プラスマローゲン)、及び1−アルキルエーテル型リン脂質(アルキル型リン脂質)のサブクラスに分けることができる。ジアシル型リン脂質は、sn−1位及びsn−2位にエステル結合を有するリン脂質である。プラスマローゲンは、sn−1位に、ビニルエーテル結合を有し、sn−2位にはアシル結合を有する脂肪酸残基を有するリン脂質であり、極性基として、エタノールアミン又はコリンを有している。1−アルキルエーテル型リン脂質は、sn−1位にエーテル結合及びアルキル基を有するリン脂質である。従って、ジアシル型リン脂質、プラスマローゲン、及び1−アルキルエーテル型リン脂質は、その基本骨格が異なっている。
特許文献3又は非特許文献4では、前記リン脂質のうち、コリン型プラスマローゲン又はプラスマローゲンに富む牛脳リン脂質によって、生体内のプラスマローゲンが増加することが開示されている。一方、本発明者らは、プラスマローゲンとは、その基本骨格が異なっている1−アルキルエーテル型リン脂質を投与することによって、生体内のプラスマローゲンが増加すること見出した。
本発明は、前記知見に基づくものであり、1−アルキルエーテル型リン脂質を有効成分とし、好ましくは医薬組成物や飲食品の形態により、血液又はリンパ液中のプラスマローゲンを効率的に増加させることができる経口投与剤を提供するものである。
従って、本発明は、1−アルキルエーテル型リン脂質を有効成分として含むことを特徴とする、経口投与剤に関する。
また、本発明は、1−アルキルエーテル型リン脂質を有効成分として含むことを特徴とする、飲食品に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の経口投与剤は、1−アルキルエーテル型リン脂質を有効成分として含んでおり、風味、保存安定性が良好であり、経口摂取により、血液やリンパ液中のプラスマローゲン含量を増加させることが可能である。従って、本発明の経口投与剤は、保存性良好なプラスマローゲン増加剤として用いることが可能である。また、本発明の経口投与剤を含有する医薬組成物は、プラスマローゲンの増加によって予防又は治療可能な疾患を効果的に予防又は治療することができる。
更に、本発明による飲食品は1−アルキルエーテル型リン脂質を含むことにより、風味、保存安定性が良好であり、生体内、特にリンパ液や血液中のリン脂質中の、プラスマローゲン含量を増加させることが可能である。従って、飲食品の摂取のみで、血液又はリンパ液中のプラスマローゲン含量の低下又は消失に起因する疾患の予防又は治療に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[1]経口投与剤
(1−アルキルエーテル型リン脂質)
本発明の、経口投与剤は、一般式(I)
【化1】

[式中、Rは、炭素数1から21の炭化水素基であり、Rは、炭素数1〜26の脂肪酸残基、または水素原子であり、Rはコリン(−CHCHN(CH)、エタノールアミン(−CHCHNH)、セリン(−CH−CH(NH)−COOH)、グリセロール(−CH−CH(OH)−CHOH)、イノシトール(−CH−C(OH))、又は水素原子である]
で表される1−アルキルエーテル型リン脂質を有効成分として含む。
ここで、sn−1位がエステル結合であるリン脂質、例えば一般的なジアシル型リン脂質(すなわち「レシチン」)や、前記レシチンをホスホリパーゼ等で処理したリゾリン脂質を有効成分として用いた場合は本発明の効果は得られない。
【0011】
前記Rの炭化水素基はアルキル基、又はアルケニル基でもよく、具体的には、ペンタデシル基、ヘプタデシル基、又はヘプタデセル基を挙げることができる。なお、本明細書において、「sn−1位の脂肪酸残基」とは、脂肪酸からカルボキシル基(−COOH)を除いたものを意味し、具体的には一般式(1)のRとエーテル基の炭素を含む「−CH−R」を意味し、16:0、18:0、又は18:1(炭素数:不飽和結合数)などと表記する。
また、前記Rの脂肪酸残基としては、具体的には、パルミトイル基、オレイル基、アラキドイル基、又はドコサヘキサエノイル基等を挙げることができる。なお、本明細書において、「sn−2位の脂肪酸残基」とは、脂肪酸から−OHを除いたものを意味し、16:0、18:1、20:4、又は22:6(炭素数:不飽和結合数)などと表記する。また、本明細書において、sn−2位のアシル基とは、脂肪酸からカルボキシル基の水素原子(−H)を除いた基を意味する。
【0012】
本発明の経口投与剤に用いる1−アルキルエーテル型リン脂質は、従来、疾患の治療、又は食品に使用されていたプラスマローゲンと比較して、保存安定性が良好であり、この観点からも有用である。
【0013】
(1−アルキルエーテル型リン脂質の化学合成)
本発明に用いることのできる1−アルキルエーテル型リン脂質は、グリセリンを1−アルキルエーテルグリセロールに変換し、エステル化やリン酸化を行うことにより、化学合成することも可能であり、化学合成の1−アルキルエーテル型リン脂質を用いることも可能であるが、入手の容易性や生産性から、天然物より抽出精製したものが好ましい。
【0014】
(1−アルキルエーテル型リン脂質の製造原料)
前記1−アルキルエーテル型リン脂質を抽出、分離する天然物としては、一般的に1−アルキルエーテル型リン脂質含量が高いことが知られている各種の動物、植物、微生物、例えば、マグロ、イワシなどの魚類、ホタテ、カキ、ムール貝などの貝類、タコ、イカなどの頭足類、エビ、フジツボ、オキアミ、カラヌスなどの甲殻類、ウシ、ブタ、ニワトリなどの家禽動物などの、その個体そのもの、その筋肉組織や、脂肪組織、あるいは脳などの神経組織、腸などの内臓組織、更にはその卵などを使用することができる。なかでも本発明では、1−アルキルエーテル型リン脂質含量が高く、且つ、プラスマローゲン含量が極めて少ない天然物であること、更には、組織を分離することなく生体そのものを直接抽出源とすることができ、更には資源量が豊富であり、入手が容易であることに加え、更にはアスタキサンチンを含有することから保存安定性が良好である経口投与剤を得ることが可能であることから、オキアミを用いることが特に好ましい。
【0015】
なお、ここで、抽出源とする前記天然物において、1−アルキルエーテル型リン脂質とプラスマローゲンの合計量(すなわちエーテル型リン脂質量)に占める1−アルキルエーテル型リン脂質含量が50%以上である天然物を使用することが好ましく、より好ましくは80%以上、更に好ましくは95%以上である天然物を使用することが好ましい。なお、該天然物は、プラスマローゲンをなるべく含有しないことが好ましく、好ましくはエーテル型リン脂質中のプラスマローゲン比が50%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以下、更に好ましくは5%以下である天然物を使用する。
なお、ここで、抽出源とする前記天然物として1−アルキルエーテル型リン脂質とプラスマローゲンを共に含有する天然物を使用する場合は、弱酸溶液処理等の方法により、あらかじめプラスマローゲンを除去するか、あるいは、下記の分画・濃縮・精製の操作に加え、前記プラスマローゲンを除去する操作を行うことが好ましい。
【0016】
(1−アルキルエーテル型リン脂質の抽出方法)
本発明の経口投与剤では、これら各種動物、植物、微生物から、溶剤抽出などによって抽出された、1−アルキルエーテル型リン脂質含有脂質、更には、必要に応じて、該脂質から液々抽出やカラムクロマトグラフィー、酵素処理などでリン脂質を分離した、リン脂質画分や、更に1−アルキルエーテル型リン脂質を濃縮した濃縮物、また、更に精製した、精製1−アルキルエーテル型リン脂質を使用することができる。
【0017】
前記各種動物、植物、微生物等の組織からの抽出方法としては、Folch法(Folch et al.:J. Biol. Chem., 226, 497-505, 1957)、Bligh & Dyer法(Bligh et al.:Can. J. Biochem. Physiol., 37, 911-917, 1959)、あるいは安全性の高い有機溶媒であるヘキサンや低級アルコールを用いた混合溶媒を用いる方法(Hara et al.:Anal. Biochem., 90(1):420-6,1978、特開2005-179340)、また、安全性が高く、かつ液液抽出の界面分離性が優れるヘキサンとエタノールの混合溶媒を用いる方法(特開2009-227765)などがある。また、抽出効率を高めるために、前記動物組織を脱水処理したものを用いてもよい。
【0018】
また、前記分離方法としては、アセトン沈殿法(山川民夫監修:生化学実験講座3,脂質の化学(日本生化学会編),p.19−20,1963,東京化学同人)、カラムクロマトグラフィー法(James et al.:Lipids, 23, 1146-1149, 1988)等によるトリグリセリドや部分グリセリドを除去し、1−アルキルエーテル型リン脂質を含むリン脂質画分のみを分離精製することができる。
【0019】
更に、前記濃縮方法としては、弱アルカリ処理(Hanahan et al.:J. Biol. Chem. 236, 59-60, 1961)、あるいは哺乳動物膵臓由来リパーゼ又は微生物由来のホスホリパーゼA1処理によるジアシル型リン脂質の分解(Woelk et al.:Z Physiol. Chem. 354, 1265-70, 1973)の方法を用いて、1−アルキルエーテル型リン脂質を濃縮することができる。
【0020】
ホスホリパーゼA1を用いて濃縮する場合、具体的には、1−アルキルエーテル型リン脂質含有脂質に対し、ホスホリパーゼA1、好ましくはActinomadura sp.由来のホスホリパーゼA1を添加し、好ましくは少量のジエチルエーテルと弱酸性緩衝液下で、分解反応させ、分解生成物を親水性溶媒と疎水性溶媒の混合溶媒、例えば、ヘキサン/エタノール混合溶媒により再抽出することで得ることができる。
【0021】
更に詳しく述べると、1−アルキルエーテル型リン脂質含有脂質1gにホスホリパーゼA1を0.1〜2.0U、酢酸緩衝液pH5.0〜6.0を2〜20%、好ましくは5〜10%添加し、30〜60℃で、2〜100時間、攪拌しながら分解反応させる。反応溶液にヘキサン/エタノール/水の混合溶媒、例えばヘキサン65〜90に対し、エタノール5〜20、水4〜10、好ましくはヘキサン75〜85、エタノール10〜18、水5〜8の比の混合溶媒を加えて再抽出することで、ホスホリパーゼA1反応で生じた1−リゾリン脂質は下層の水層に、1−アルキルエーテル型リン脂質は上層のヘキサン層に分離することができる。ここで、上層のヘキサン層を分取し、定法によりヘキサンを除去することで、1−アルキルエーテル型リン脂質を濃縮することができる。
なお、前記1−アルキルエーテル型リン脂質の濃縮の前又は後、好ましくは後に、トリグリセリドに代表される中性脂質を分画除去することが好ましい。この中性脂質の除去方法としては、アセトン沈殿法やカラムクロマトグラフィーなどの公知の方法を採ることができる。
【0022】
更には、シリカゲルクロマトグラフィーによってSn−3位の塩基の種類別に濃縮することも可能である。例えば、シリカゲルをヘキサン/エタノール混合溶媒、好ましくは95:5〜60:40の混合溶媒で充填したカラムに、1−アルキルエーテル型リン脂質含有脂質や1−アルキルエーテル型リン脂質含有リン脂質を充填し、同溶媒をカラム体積の2〜8倍量通液させて中性脂質を溶出させた後、ヘキサン/エタノール混合溶媒、好ましくは5:95〜0:100、あるいはエタノール/水の混合溶媒、好ましくは100:0〜95:5をカラム体積の6〜15倍量通液させることにより、エタノールアミン型やホスファチジン酸型を分画することができ、続いてエタノール/水の混合溶媒、好ましくは90:10〜70:30をカラム体積の8〜20倍量通液させることにより、コリン型を分画することができる。
【0023】
本発明の経口投与剤における1−アルキルエーテル型リン脂質含有量は、好ましくは2〜100%、より好ましくは5〜100%、更に好ましくは50〜100%である。
また、本発明の経口投与剤は、1−アルキルエーテル型リン脂質以外のリン脂質、例えばジアシル型リン脂質、スフィンゴリン脂質、プラスマローゲン等を含むこともできるが、リン脂質の全量に対する1−アルキルエーテル型リン脂質の比率は、1−アルキルエーテル型リン脂質が5%以上であり、好ましくは、50%以上である。なお、前記のとおり、酸化安定性が低いプラスマローゲンはなるべく含有しないことが好ましく、好ましくはリン脂質の全量に対するプラスマローゲン比率が10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下、更に好ましくは3%以下とする。
【0024】
(その他の成分)
本発明の経口投与剤では、前記以外のその他の成分を含有することができる。前記その他の成分としては、例えば、食用油脂、部分グリセリド、リン脂質以外の複合脂質、水、グリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等の乳化剤、ローカストビーンガム、カラギーナン、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、寒天、グルコマンナン、ゼラチン、澱粉、化工澱粉等の増粘安定剤、食塩、塩化カリウム等の塩味剤、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、糖類や糖アルコール類、ステビア、アスパルテーム等の甘味料、ベータカロチン、カラメル、紅麹色素等の着色料、トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤、着香料、pH調整剤、食品保存料、又は日持ち向上剤等の食品素材や食品添加物を挙げることができる。また、各種ビタミンやコエンザイムQ、植物ステロール、乳脂坊球皮膜等の機能素材を含有させることも可能である。
これらのその他の成分の含有量は、本発明の経口投与剤中、合計で好ましくは80質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは20質量%以下とする。
本発明の経口投与剤は、広範な各種飲食品や医薬品に配合・添加することができ、その摂取量としては、成人の場合、1−アルキルエーテル型リン脂質として1日あたり、好ましくは100mg〜40g、より好ましくは200mg〜20gを摂取することが望ましい。
また、本発明の経口投与剤は、通常経口で用いるものであるが、消化管から吸収させるために、カテーテルなどを用いて、直接、胃や十二指腸などに投与することも可能である。
【0025】
本発明の経口投与剤によって、生体内で増加するプラスマローゲンの種類は、特に限定されるものではない。具体的には、コリン型プラスマローゲン、ホスファチジン酸型プラスマローゲン、又はエタノール型プラスマローゲンを挙げることができる。
本発明の経口投与剤によって、プラスマローゲンは、生体内で増加する。本明細書において「生体内」とは、特に限定されるものではない。具体的には、体液、例えば、血液(血漿、血清を含む)、髄液、尿、唾液、若しくは組織液、又は組織、若しくは臓器を挙げることができるが、プラスマローゲンが生体内のすべての組織に運ばれ、その効果が得られることから、血液中で増加することが好ましい。
【0026】
(対象疾患)
本発明の経口投与剤は、癌、動脈硬化症、糖尿病、及びアルツハイマー病などの酸化ストレスの関与する疾患を予防、あるいは改善することが可能である。
【0027】
[2]飲食品
本発明の飲食品は、1−アルキルエーテル型リン脂質を有効成分として含有する。また、本発明の飲食品は、前記の1−アルキルエーテル型リン脂質を有効成分として含有する経口投与剤を含有することもできる。
本発明の飲食品における、1−アルキルエーテル型リン脂質の含有量は、使用する飲食品により異なるが、成人の場合、1−アルキルエーテル型リン脂質として1日当たり100mg〜40g、より好ましくは200mg〜20g摂取できる量の経口投与剤を飲食物中に含有できれば良い。具体的には、飲食品中0.1〜100質量%であることが好ましい。
なお、本発明における飲食品としては、特に限定されるものではなく、例えば味噌、醤油、めんつゆ、たれ、だし、パスタソース、ドレッシング、マヨネーズ、トマトケチャップ、ウスターソース、とんかつソース、又はふりかけ等の調味料、お吸い物の素、カレールウ、ホワイトソース、お茶漬けの素、又はスープの素等の即席調理食品、味噌汁、お吸い物、コンソメスープ、又はポタージュスープ等のスープ類、焼肉、ハム、又はソーセージ等の畜産加工品、かまぼこ、干物、塩辛、佃煮、又は珍味等の水産加工品、漬物等の野菜加工品、ポテトチップス、又は煎餅等のスナック類、食パン、菓子パン、又はクッキー等のベーカリー食品類、煮物、揚げ物、焼き物、カレー、シチュー、グラタン、ごはん、おかゆ、又はおにぎり等の調理食品、パスタ、うどん、又はラーメン等の麺類食品、マーガリン、ショートニング、ファットスプレッド、又は風味ファットスプレッド等の油脂加工食品、フラワーペースト、餡等の製菓製パン用素材、パン用ミックス粉、ケーキ用ミックス粉、又はフライ食品用ミックス粉等のミックス粉、チョコレート、キャンディ、ゼリー、アイスクリーム、又はガム等の菓子類、饅頭、又はカステラ等の和菓子類、コーヒー、コーヒー牛乳、紅茶、ミルクティー、豆乳、栄養ドリンク、野菜飲料、食酢飲料、ジュース、コーラ、ミネラルウォーター、又はスポーツドリンク等の飲料、ビール、ワイン、カクテル、又はサワー等のアルコール飲料類、牛乳、ヨーグルト、又はチーズ等の乳や乳製品等が挙げられる。
【0028】
本発明の1−アルキルエーテル型リン脂質を含有する飲食品は、1−アルキルエーテル型リン脂質を原料として含むこと以外は、公知の飲食品の製造方法を用いて製造することができる。
本発明の飲食品は、1−アルキルエーテル型リン脂質を含有することにより、生体内においてプラスマローゲン含量を増加させることが可能であり、機能性食品又は健康食品(飲料も含む)として用いることができる。また動物には、飼料として与えることができる。本発明の飲食品は、例えば、動物、植物、微生物から、好ましくはオキアミから分離した1−アルキルエーテル型リン脂質を含むことが好ましい。
【0029】
[3]医薬組成物
医薬組成物は、1−アルキルエーテル型リン脂質を有効成分として含有するため、血液又はリンパ液中のプラスマローゲンを増加させることが可能である。前記の1−アルキルエーテル型リン脂質を有効成分として含有する経口投与剤を使用することもできる。
医薬組成物における、本発明の経口投与剤の含有量は、使用する医薬組成物により異なるが、成人の場合、1−アルキルエーテル型リン脂質として1日当たり100mg〜40g、より好ましくは200mg〜20g摂取できる量の経口投与剤を医薬組成物中に含有できれば良い。具体的には、1−アルキルエーテル型リン脂質量は医薬組成物中、0.1〜100質量%であることが好ましく、0.5〜99質量%であることが好ましく、1〜80質量%であることが最も好ましい。
医薬組成物は、1−アルキルエーテル型リン脂質を単独で、あるいは、好ましくは薬剤学的又は獣医学的に許容することができる通常の担体又は希釈剤とともに、プラスマローゲンの低下又は消失に起因する疾患の治療及び/又は予防が必要な対象[例えば、動物、好ましくは哺乳動物(特にヒト)]に有効量で投与することができる。
医薬組成物は、プラスマローゲンの濃度を上昇させることのできる物質を含むこともできる。このような物質としては、例えばアルキルグリセロール、イノシトールを挙げることができる。
【0030】
医薬組成物の投与剤型としては、特に限定がないが、例えば、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁剤、エマルジョン剤、シロップ剤、エキス剤、若しくは丸剤等の経口剤が好ましい。
【0031】
経口剤は、例えば、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、澱粉、コーンスターチ、白糖、乳糖、ブドウ糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、ポリビニルピロリデン、結晶セルロース、大豆レシチン、ショ糖、脂肪酸エステル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、ケイ酸マグネシウム、無水ケイ酸、又は合成ケイ酸アルミニウムなどの賦形剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、希釈剤、保存剤、着色剤、香料、矯味剤、安定化剤、保湿剤、防腐剤、又は酸化防止剤等を用いて、常法に従って製造することができる。
本発明の医薬組成物を用いる場合の投与量は、例えば、使用する有効成分の種類、病気の種類、患者の年齢、性別、体重、生上の程度、又は投与方法に応じて適宜決定することができ、経口的に又はカテーテルなどを用いて直接消化管に投与することが可能である。
更に、投与形態も医薬品に限定されるものではなく、種々の形態、例えば、機能性食品や健康食品(飲料も含む)、又は飼料として飲食物の形態で与えることも可能である。
【0032】
本発明の経口投与剤を含有する医薬組成物の製造方法は、前記1−アルキルエーテル型リン脂質を有効成分として含むこと以外は、公知の医薬品の製造方法を用いて製造することができる。
【0033】
プラスマローゲンは、LDLコレステロールの酸化を抑制する。LDLコレステロールの酸化は、動脈硬化症を誘導するため、プラスマローゲンを増加させることによって、動脈硬化症を予防又は治療することが可能である。更に、動脈硬化を基礎疾患とする、心筋梗塞及び脳梗塞を予防又は治療することが可能である。更に、加齢及び酸化ストレスがプラスマローゲンにより、抑制されると考えられている。加齢及び酸化ストレスが関与する疾患として癌、動脈硬化症、糖尿病、及びアルツハイマー病があり、プラスマローゲンを増加させることにより、癌、動脈硬化症、糖尿病、及びアルツハイマー病を予防又は治療することが可能である。従って本発明による経口投与剤、飲食品、又は医薬組成物が、予防又は治療することのできるプラスマローゲンの低下又は消失に起因する疾患としては、癌、動脈硬化症、糖尿病、及びアルツハイマー病を挙げることができる。更に加齢を抑制することも可能である。
【0034】
本発明の経口投与剤、飲食品、又は医薬組成物を生体内に投与、特には経口投与することにより、生体内特にリンパ液や血液中のプラスマローゲンを増加させることが可能である。すなわち、1−アルキルエーテル型リン脂質を有効成分として含有する本発明の経口投与剤、飲食品、又は医薬組成物を生体内に投与、特には経口投与することにより、生体内においてプラスマローゲンを増加させる方法を提供することが可能である。
本発明の飲食品や医薬組成物を経口摂取する場合の摂取量は、前記のとおり、例えば成人の場合、1−アルキルエーテル型リン脂質として1日当たり100mg〜40g、より好ましくは200mg〜20g摂取できる量の経口投与剤を医薬組成物中に含有できる量である。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0036】
<1>1−アルキルエーテル型リン脂質含有試料の製造
〔製造例1〕
オキアミを利用して1−アルキルエーテル型リン脂質含有脂質を製造した。
冷凍ボイルオキアミの捏練品(オキアミCPM−MD、ADEKAファインフーズ)60kg(水分含有量87質量%)に、ヘキサン:エタノール=60:40で混合した混合溶媒216Lを加え、10分間攪拌した。その後、吸引濾過により得たろ液の上層であるヘキサン層を脂質抽出液として回収した。続いて、ろ液下層とろ過残渣を合わせ、それに新たにヘキサン130Lを加え、10分間攪拌して脂質画分を抽出後、同様に抽出液を回収した。更に、ろ液下層とろ過残渣に同一の操作をもう1回繰り返し、回収した合計3回分の抽出液を併せ、エバポレーターを使用して混合溶媒を除去し、残渣として1−アルキルエーテル型リン脂質含有脂質である2.2kgのオキアミ油を得た。
得られたオキアミ油は、下記の分析方法に従い、リン脂質含量、1−アルキルエーテル型リン脂質含量を測定し、その結果を表1に記載した。また、リン脂質中の塩基のタイプ(コリン型、エタノールアミン型、ホスファチジン酸型)の含量についても、下記の分析方法に従って測定し、その結果を併せて表1に記載した。
【0037】
〔製造例2〕
製造例1で得られたオキアミ油200gにアセトン2.5Lを添加し、4℃で1時間静置した。上清を除去し、更にアセトン2.5Lを添加し、同様に処理した。残った沈殿物を乾固し、中性脂質を除去し、1−アルキルエーテル型リン脂質含有リン脂質画分である、87gのオキアミ油リン脂質画分を得た。
得られたオキアミ油リン脂質画分は、製造例1同様、リン脂質含量、1−アルキルエーテル型リン脂質含量、リン脂質中の塩基のタイプ(コリン型、エタノールアミン型、ホスファチジン酸型)の含量を測定し、その結果を併せて表1に記載した。
【0038】
〔製造例3〕
実施例1で得られたオキアミ油2000gにジエチルエーテル96mL及び0.2M酢酸緩衝液(pH5.0)205mLに混濁させたLecitaseUltra(Novozymes)100kUを添加し、40℃で70時間攪拌した。反応溶液にヘキサン/エタノール/水(80:14:6)18Lを添加し、10分攪拌混合後、上層を採取した。続いて、下層に新たにヘキサン14Lを加え、10分間攪拌して、同様に脂質画分を回収した。更に、下層に同一の操作をもう1回繰り返し、回収した合計3回分の抽出液を併せ、エバポレーターを使用して混合溶媒を除去し、残渣分1950gを得た。
残渣分200gについて、ヘキサン/エタノール=80:20の混合溶媒300mLに溶解したものを、ヘキサン/エタノール=80:20の混合溶媒でけん濁したシリカゲル(Wakosil200)400gを充填したガラスカラム(100cm×3cm)に添加した。ヘキサン/エタノール=80:20の混合溶媒を4L通液させて中性脂質を溶出した後、エタノール8Lを通液させてエタノールアミンリン脂質を溶出させた。更にエタノール/水=80:20の混合溶媒11Lを通液させてコリンリン脂質を溶出させた。
得られた溶出液をエバポレーターで濃縮し、残渣として、sn−3位の塩基がコリン型である1−アルキルエーテル型リン脂質が濃縮された、7.2gのオキアミ油コリンリン脂質画分を得た。
得られたオキアミ油コリンリン脂質画分は、製造例1同様、リン脂質含量、1−アルキルエーテル型リン脂質含量、リン脂質中の塩基のタイプ(コリン型、エタノールアミン型、ホスファチジン酸型)の含量を測定し、その結果を併せて表1に記載した。
【0039】
〔製造例4〕
製造例3で得られたオキアミ油コリンリン脂質画分14gにジエチルエーテル28mL、1M塩化カルシウム溶液6mL、酢酸緩衝液(pH6.0)144mL、塩化エタノールアミン20g、Actinomadura sp.由来ホスホリパーゼD1.2g(1200U、名糖産業)を添加し、45℃で40時間攪拌した。ヘキサン/エタノール(60:40)600mLを添加し、10分攪拌混合後、上層を採取した。続いて、下層に新たにヘキサン360mLを加え、10分間攪拌して、同様に脂質画分を回収した。更に、下層に同一の操作をもう1回繰り返し、回収した合計3回分の抽出液を併せ、エバポレーターを使用して混合溶媒を除去し、残渣分11gを得た。
残渣をヘキサン/エタノール=80:20の混合溶媒300mLに溶解したものを、ヘキサン/エタノール=80:20の混合溶媒でけん濁したシリカゲル(Wakosil200)400gを充填したガラスカラム(100cm×3cm)に添加した。ヘキサン/エタノール=80:20の混合溶媒を4L通液させて中性脂質を溶出した後、エタノール8Lを通液させてエタノールアミン型リン脂質を溶出させた。
得られた溶出液をエバポレーターで濃縮し、残渣として、sn−3位の塩基がエタノールアミン型である1−アルキルエーテル型リン脂質が濃縮された、10gのオキアミ油エタノールアミンリン脂質画分を得た。
得られたオキアミ油エタノールアミンリン脂質画分は、製造例1同様、リン脂質含量、1−アルキルエーテル型リン脂質含量、リン脂質中の塩基のタイプ(コリン型、エタノールアミン型、ホスファチジン酸型)の含量を測定し、その結果を併せて表1に記載した。
【0040】
〔製造例5〕
製造例3で得られたオキアミ油コリンリン脂質画分14gにジエチルエーテル28mL、1M塩化カルシウム溶液6mL、酢酸緩衝液(pH6.0)144mL、Actinomadura sp.由来ホスホリパーゼD1.2g(1200U、名糖産業)を添加し、45℃で40時間攪拌した。ヘキサン/エタノール(60:40)600mLを添加し、10分攪拌混合後、上層を採取した。続いて、下層に新たにヘキサン360mLを加え、10分間攪拌して、同様に脂質画分を回収した。更に、下層に同一の操作をもう1回繰り返し、回収した合計3回分の抽出液を併せ、エバポレーターを使用して混合溶媒を除去し、残渣分13gを得た。
残渣をヘキサン/エタノール=80:20の混合溶媒300mLに溶解したものを、ヘキサン/エタノール=80:20の混合溶媒でけん濁したシリカゲル(Wakosil200)400gを充填したガラスカラム(100cm×3cm)に添加した。ヘキサン/エタノール=80:20の混合溶媒を4L通液させて中性脂質を溶出した後、エタノール8Lを通液させてホスファチジン酸型リン脂質を溶出させた。
得られた溶出液をエバポレーターで濃縮し、残渣として、sn−3位の塩基がホスファチジン酸型である1−アルキルエーテル型リン脂質が濃縮された、12gのオキアミ油ホスファチジン酸リン脂質画分を得た。
得られたオキアミ油ホスファチジン酸リン脂質画分は、製造例1同様、リン脂質含量、1−アルキルエーテル型リン脂質含量、リン脂質中の塩基のタイプ(コリン型、エタノールアミン型、ホスファチジン酸型)の含量を測定し、その結果を併せて表1に記載した。
【0041】
【表1】

【0042】
<2>動物試験(摂食試験)
〔実施例1〜4、比較例1〜2〕
5週齢の雄Wistar-ST系ラットを、6群(1群6匹)に分け、飼料及び水を自由に摂取させた。飼料はAIN93Gに準じた精製飼料(基本飼料:大豆油7%を含む)を用いた。なお、基本飼料は毎日交換し、飲水の水道水は3日毎に交換した。前記条件で7日間飼育した後、基本飼料の大豆油7%の代わりに製造例2で得られたオキアミ油リン脂質画分1%と大豆油6%の混合脂質を使用した飼料(実施例1)、製造例3で得られたオキアミ油コリンリン脂質画分1%と大豆油6%の混合脂質を使用した飼料(実施例2)、製造例4で得られたオキアミ油エタノールアミンリン脂質画分1%と大豆油6%の混合脂質を使用した飼料(実施例3)、製造例5で得られたオキアミ油ホスファチジン酸リン脂質画分1%と大豆油6%の混合脂質を使用した飼料(実施例4)、基本餌料(比較例1)、卵黄コリンリン脂質1%・魚油1%・大豆油5%の混合脂質を使用した飼料(比較例2)を与え、8日間飼育した。なお、卵黄コリンリン脂質は、全脂質中にジアシル型コリンリン脂質が98%含まれ、1−アルキルエーテル型リン脂質は1%以下であった。
なお、基本飼料の配合を表2に記載する。
なお、試験期間中、各群のラットの体重増加量及び餌の摂取量への影響は認められなかった。
【0043】
【表2】

【0044】
8日間の給餌後、採血し、その血清画分の脂質を抽出し、血清中の総プラスマローゲン含量、コリン型プラスマローゲン含量、及び、エタノールアミン型プラスマローゲン含量をLC−MS/MSにより測定し、その結果を表3に記載した。
また、比較例1(大豆油のみ)を1とした場合の増加率を表4に示した。
【0045】
【表3】

【0046】
【表4】

【0047】
表3からわかるように、血清中の総プラスマローゲン量は、基本飼料(比較群1)に対し、製造例2で得られたオキアミ油リン脂質画分1%と大豆油6%の混合脂質を使用した飼料(実施例1)は1.28倍、製造例3で得られたオキアミ油コリンリン脂質画分1%と大豆油6%の混合脂質を使用した飼料(実施例2)は1.87倍、製造例4で得られたオキアミ油エタノールアミンリン脂質画分1%と大豆油6%の混合脂質を使用した飼料(試験群3)は1.79倍、製造例5で得られたオキアミ油ホスファチジン酸リン脂質画分1%と大豆油6%の混合脂質を使用した飼料(実施例4)は2.09倍となった。しかし、卵黄コリンリン脂質1%・魚油1%・大豆油5%の混合脂質を使用した飼料(比較例2)は1.12倍にすぎなかった。
この結果から、1−アルキルエーテル型リン脂質は、塩基の種類が変わってもプラスマローゲン増加剤としての機能を有することがわかる。すなわち、天然物の1−アルキルエーテル型リン脂質の塩基はこの3種のいずれかであることから、オキアミ油以外の1−アルキルエーテル型リン脂質であってもプラスマローゲン増加剤としての機能を有することがわかる。
【0048】
<3>保存試験
〔製造例6〕
凍結乾燥したブタ脳1.4kgを、ヘキサン:エタノール=60:40で混合した混合溶媒で脂質を抽出した。得られた粗脂質は溶剤蒸留後、ヘキサン:エタノール=80:20で混合した混合溶媒(8:2)に溶解し、あらかじめヘキサン:エタノール=80:20で混合した混合溶媒(8:2)で平衡化したシリカゲルカラム(400g)にアプライした。引き続きシリカゲルカラムに、ヘキサン:エタノール=80:20で混合した混合溶媒(8:2)4Lで中性脂質を溶出後、エタノール8Lで溶出させ、プラスマローゲンを54%含有するリン脂質画分24gを得た。なお、塩基のタイプは90%以上がエタノールアミン型であった。
【0049】
〔製造例7〕
凍結乾燥したウシ心臓3.6kgを、ヘキサン:エタノール=60:40で混合した混合溶媒で脂質を抽出した。得られた粗脂質は溶剤蒸留後、ヘキサン:エタノール=80:20で混合した混合溶媒に溶解し、あらかじめヘキサン:エタノール=80:20で混合した混合溶媒で平衡化したシリカゲルカラム(400g)にアプライした。引き続きシリカゲルカラムに、ヘキサン:エタノール=80:20で混合した混合溶媒4Lで中性脂質を溶出後、次いでエタノール8Lでエタノールアミン型グリセロリン脂質を溶出、更にエタノール:水=80:20で混合した混合溶媒11Lで溶出させ、プラスマローゲンを59%含有するリン脂質画分8.0gを得た。なお、塩基のタイプは90%以上がコリン型であった。
前記<2>動物試験(摂食試験)で使用した、実施例1〜4の飼料、及び、基本飼料の大豆油7%の代わりに製造例6で得られたプラスマローゲン含有リン脂質画分1%と大豆油6%の混合脂質を使用した飼料(比較例3)、製造例7で得られたプラスマローゲン含有リン脂質画分1%と大豆油6%の混合脂質を使用した飼料(比較例4)を用意し、下記の保存性試験を実施した。
【0050】
〔実施例5〜8、比較例3〜4〕
前記飼料をそれぞれ、30℃の恒温槽に入れ、10日後に風味を確認し、下記の基準に従いその風味劣化度合いを評価し、その結果を表5に記載した。
(評価基準)
◎:極めて良好である
○:良好である
△:酸化劣化臭を感じる
×:酸化劣化臭が激しい
【0051】
【表5】

【0052】
この結果から、1−アルキルエーテル型リン脂質を使用した飼料は風味安定性が良好であるのに対し、プラスマローゲンを使用した飼料は風味安定性が不良であることがわかる。なお、1−アルキルエーテル型リン脂質の塩基の種類が変わっても風味安定性は同様に良好であることがわかる。すなわち、天然物の1−アルキルエーテル型リン脂質の塩基はこの3種のいずれかであることから、オキアミ油来以外の1−アルキルエーテル型リン脂質であっても良好な風味安定性を有することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の経口投与剤、及び飲食品は、学癌、動脈硬化症、糖尿病、及びアルツハイマー病などの酸化ストレスの関与する疾患を予防、あるいは改善することに用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1−アルキルエーテル型リン脂質を有効成分として含むことを特徴とする、経口投与剤。
【請求項2】
1−アルキルエーテル型リン脂質を有効成分として含むことを特徴とする、飲食品。

【公開番号】特開2013−53110(P2013−53110A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193267(P2011−193267)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 日本農芸化学会2011年度(平成23年度)大会、社団法人日本農芸化学会主催、平成23年3月5日発行 第65回日本栄養・食糧学会大会、社団法人日本栄養・食糧学会主催、平成23年4月25日発行
【出願人】(399086263)学校法人帝京大学 (21)
【出願人】(504173471)国立大学法人北海道大学 (971)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】