説明

結合システム及び結合用部品

【課題】被結合体の結合用開口部に断面が円形の棒状体を挿通して被結合体と棒状体を気密に結合する結合システムであって、挿通された棒状体がその長さ方向の軸の周りに回転するのを防止することができ、高い気密性を維持できる結合システム、及び、内部縦方向に第一の貫通孔を有するボルト状又はナット状の結合用部品であって、第一の貫通孔に挿通された棒状体がその長さ方向の軸の周りに回転するのを防止することができるという特徴を有する結合用部品を供給する。
【解決手段】棒状体が挿通されたフェラルを用いて前記の気密を保ち、かつ結合後の棒状体がその軸の周りに回転するのを防止する機構を有する結合システム、及び、内部縦方向に第一の貫通孔を有するボルト状又はナット状の結合用部品であって、第一の貫通孔に挿通された棒状体がその長さ方向の軸の周りに回転するのを防止することができる結合用部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結合システム及び結合用部品に関するものである。更に詳しくは、本発明のうち第一の発明は、被結合体の結合用開口部に断面が円形の棒状体を挿通して被結合体と棒状体を気密に結合する結合システムであって、挿通された棒状体がその長さ方向の軸の周りに回転するのを防止することができ、よって高い気密性を維持することができるという特徴を有する結合システムに関するものである。また、本発明のうち第二の発明は、内部縦方向に第一の貫通孔を有するボルト状又はナット状の結合用部品であって、第一の貫通孔に挿通された棒状体がその長さ方向の軸の周りに回転するのを防止することができるという特徴を有する結合用部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば、種々の反応容器においては、反応容器の開口部に、流体通路用のパイプや反応容器内の温度測定のための熱電対などの断面が円形の棒状体が挿入され、かつ挿入部において容器内部と容器外部の気密性を維持する必要がある場合がある。このような場合、フェラルを用いる技術が知られている(たとえば、特許文献1及び非特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−304370号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】株式会社島津ジーエルシー GC・GCMS周辺部品、[online]、[平成23年6月8日検索]、インターネット<https://solutions.shimadzu.co.jp/glc/catalog/pdf/660−665.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来の方法によると、フェラルを用いて気密に結合閉止した後、棒状体に種々の加工を施す場合、気密性が低下するという問題があった。
【0006】
本発明者らは、気密性が低下する原因について検討した。その結果、加工時に棒状体がその長さ方向の軸の周りに回転し、その回転にともなって気密に結合した部分が相対的に摺動し、それにより気密性が低下するためであるという結論に達した。
【0007】
次に、本発明者らは、気密性の低下を防止する方法について検討し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明が解決しようとする課題は、前記の特徴を有する結合システム及び結合用部品を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明のうち第一の発明は、被結合体の結合用開口部に断面が円形の棒状体を挿入して被結合体と棒状体を気密に結合する結合システムであって、棒状体が挿通されたフェラルを用いて前記の気密を保ち、かつ結合後の棒状体がその軸の周りに回転するのを防止する機構を有する結合システムに係るものである。
【0010】
また、本発明のうち第二の発明は、内部縦方向に第一の貫通孔を有するボルト状又はナット状の結合用部品であって、第一の貫通孔に挿通された棒状体がその長さ方向の軸の周りに回転するのを防止することができるという特徴を有する結合用部品に係るものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、前記の特徴を有する結合システム及び結合用部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1で用いた結合システムの外観を示す斜視図である。
【図2】比較例1で用いた結合システム(特に、結合部封止部品と結合用開口部の近傍)の断面図である。
【図3】実施例1で用いた結合システム(結合部封止部品がボルト状の場合)(特に、結合部封止部品と結合用開口部の近傍。平面120度の切断面で切断)の断面図である。
【図4】結合部封止部品がナット状の場合の結合システム(特に、結合部封止部品と結合用開口部の近傍。平面120度の切断面で切断)の断面図である。
【図5】実施例1で用いた結合部封止部品(ボルト状の場合)の平面図及び側面一部切断図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、( )内の数字は、添付図中の数字に対応する。
【0014】
本発明のうち第一の発明は、被結合体(1)の結合用開口部(2)に断面が円形の棒状体(3)を挿入して被結合体(1)と棒状体(3)を気密に結合する結合システムであって、棒状体(3)が挿通されたフェラル(4)を用いて前記の気密を保ち、かつ結合後の棒状体(3)がその軸の周りに回転するのを防止する機構を有する結合システムである。
【0015】
被結合体(1)としては、各種の金属製の反応容器をあげることができる。被結合体(1)には結合用開口部(2)が設けられており、この結合用開口部(2)を介して断面が円形の棒状体(3)が挿入される。棒状体(3)としては、流体通路としての内孔を有するパイプ(管)、素子とリード線が封入された熱電対等を例示することができる。
【0016】
本発明おいては、被結合体(1)と棒状体(3)を気密に結合するためにフェラル(4)(ferrule、「フェルール」と呼ばれることがある。)が用いられる。フェラル(4)はかかる用途に汎用される結合用の部品である。フェラル(4)には種々のタイプのものがあるが、その代表的なものとして、内部に貫通孔を有する短筒状のものであって、その上面は水平な円滑平面であり、その下面は筒の外側から貫通孔に向けて細くなるテーパー面を有するものがある。
【0017】
本発明においては、結合後の棒状体(3)がその軸の周りに回転するのを防止する機構が用いられる。かかる構造とすることにより、高い気密性を維持することができる。ここで、「軸の周りの回転」とは、断面が円形の棒状体(3)の長さ方向に垂直な円形断面の中心を通る長さ方向の軸を中心にして棒状体(3)が回転(自転)することをいう。
【0018】
回転を防止する機構の詳細については後記する。
【0019】
本発明の好ましい実施態様は、下記(A)及び(B)の特徴を有するものである。
(A):フェラルの上方向にフェラルの上平面に接して配置され、棒状体が挿通され、外面に雄ねじの溝を有するボルト状の結合部封止部品又は内面に雌ねじの溝を有するナット状の結合部封止部品を有すること
(B):被結合体(1)の結合用開口部(2)は、その内面に上記結合部封止部品(5)の雄ねじと螺合可能な雌ねじの溝又はその外面に上記結合部封止部品(5)の雌ねじと螺合可能な雄ねじの溝を有し、かつフェラルの下部テーパー面(6)に対応してフェラルの下部テーパー面(6)に当接し得る結合用開口部のテーパー面(7)を有すること
【0020】
なお、「フェラル(4)の上」とは、棒状体(3)を垂直方向に配置した場合の被結合体(1)側の反対側をいう。
【0021】
フェラルの下部テーパー面(6)のテーパーの角度と結合用開口部のテーパー面(7)の角度については、前者の角度が後者の角度より2〜10度だけ鋭角であることが、高い気密性を実現する点で好ましい。ここで、該「角度」とは、各テーパー面とフェラル(4)に挿通された棒状体(3)の中心軸で形成される角度である。
【0022】
結合部封止部品(5)の好ましい実施態様として、内部縦方向に第一の貫通孔(8)を有するボルト状又はナット状のものであって、その外部から前記第一の貫通孔(8)に達する第二の貫通孔(9)を具備し、該第二の貫通孔(9)の内面に雌ねじの溝を有し、該第二の貫通孔(9)の雌ねじに押圧用雄ねじ(10)を螺号挿入し、該押圧用雄ねじ(10)の先端にて棒状体(3)を横方向から押圧することにより棒状体(3)の回転を防止するものをあげることができる。
【0023】
第二の貫通孔(9)は、第一の貫通孔(8)を中心軸として対象の位置に配された3本の貫通孔(すなわち、相互に120度の角度で交差する貫通孔)であることが好ましい。非対象位置に配すると棒状体(3)を均一に押圧できず、気密性が低下する場合がある。また、第二の貫通孔(9)が多すぎると、結合部封止部品(5)の加工コストが増加し、また装置の組み立ての手間の点で好ましくない。
【0024】
次に、本発明の好ましい実施態様を例にとり、本発明を実施する方法と本発明の作用機構について、説明する。
【0025】
フェラル(4)が挿通された棒状体(3)を、被結合体(1)の結合用開口部(2)に挿入し、下降させる。フェラルの下部テーパー面(6)が結合用開口部のテーパー面(7)と当接した後、結合部封止部品(5)を棒状体(3)の上方向から挿通させて下降させる。結合部封止部品(5)のねじ溝と結合用開口部(2)のねじ溝が接したら、両ねじを螺合させつつ締め付ける。締め付けが進行するに従い、フェラル(4)の上平面が結合部封止部品(5)によって押圧され、フェラルの下部テーパー面(6)の下部が棒状体(3)側に若干変形して密接する。これにより、気密性が発現される。なお、ここまでは、汎用されているフェラルの使用例と同じである。
【0026】
次に、結合部封止部品(5)の第二の貫通孔(9)に押圧用雄ねじ(10)を挿入し、第二の貫通孔(9)内面の雌ねじと螺合させて進行させ、押圧用雄ねじ(10)の先端にて棒状体(3)を横方向から押圧する。この押圧力により棒状体(3)の回転が防止できるのである。
【実施例】
【0027】
次に、実施例を用いて本発明を説明する。なお、寸法は概略値である。
【0028】
比較例1
図2に比較例1で用いた結合システム(従来例)を示す。
フェラル(4)(内部の貫通孔の口径1.7mm、長さ4mm)が挿通された棒状体(3)(流体通路用パイプ、外径1.7mm)を、被結合体(1)(反応容器)の結合用開口部(2)(開放先端部内径10mm)に挿入し、下降させた。フェラルの下部テーパー面(6)(テーパーの角度14度)が結合用開口部のテーパー面(7)(テーパーの角度20度)と当接した後、結合部封止部品(5)を棒状体(3)の上方向から挿通させて下降させた。結合部封止部品(5)のねじ溝と結合用開口部(2)のねじ溝が接したら、両ねじを螺合させつつ締め付けることにより、被結合体(1)と棒状体(3)を気密に結合した。なお、結合部封止部品(5)としては、外面に雄ねじの溝を有する六角ボルト状のもの(ボルトの頭部は一辺の長さが13mmの正六角形、雄ねじ部の外径10mm、雄ねじ部の長さ15mm、第一の貫通孔(8)の内径1.7mm、第二の貫通孔は具備せず)を用いた。また、被結合体の結合用開口部(2)は、その内面に上記結合部封止部品(5)の雄ねじと螺合可能な雌ねじの溝を有し、かつフェラルの下部テーパー面(6)に対応してフェラルの下部テーパー面(6)に当接し得る結合用開口部のテーパー面(7)を有するもの(雌ねじ部の内径10mm、雌ねじ部の長さ7mm)を用いた。なお、材質はすべてステンレスとした。
【0029】
フェラル(4)により棒状体(3)を被結合体(1)に密接結合した後、棒状体(3)であるパイプをとおして圧縮空気を被結合体(1)である反応容器(内容量3cc)の内部に供給し、パイプの上端(被結合体(1)の反対側)を閉止して、棒状体(3)及び被結合体(1)からなる系を密封状態にした。被結合体(1)の内部の圧力を測定するために設けられた圧力計(図示せず)により、被結合体(1)の内部圧力を測定したところ4.0MPaであった。
【0030】
次に、棒状体(3)の上端付近において棒状体(3)に別のパイプを接続するための作業を実施した。すなわち、棒状体(3)と別のパイプをフェラル(4)を用いた通常の結合用の部品により結合した。結合用の部品をねじ締めする際に棒状体(3)がその軸を中心に回転(自転)した。この時点で被結合体(1)の内部圧力は3.0MPaに低下し、更に継続して低下した。また、結合部封止部品(5)に棒状体(3)が挿通された部分に石鹸液を塗布してリークテストを実施したところ、泡が発生し棒状体(3)及び被結合体(1)からなる系の密封状態が破れていることがわかった。
【0031】
実施例1(図1、図3、図4及び図5参照。)
結合部封止部品(5)として、第二の貫通孔(9)(M1.6、深さ5mm、第一の貫通孔(8)を中心軸として対象の位置に配された3本設けられている)を具備するものを用いたこと以外、比較例1と同様に行った。すなわち、結合部封止部品(5)のねじと結合用開口部(2)のねじを螺合させつつ締め付けることにより、被結合体(1)と棒状体(3)を気密に結合した。続いて、結合部封止部品(5)の第二の貫通孔(9)(3本)の雌ねじに押圧用雄ねじ(10)(M1.6、長さ4mmのセットねじ)を螺号挿入し、該押圧用雄ねじ(10)の先端にて棒状体(3)を押圧することにより棒状体(3)の回転を防止した。その後、比較例1と同様に棒状体(3)と別のパイプとを結合させた。この際、比較例1と異なり、棒状体(3)の回転は起こらず、また被結合体(1)の内部圧力の低下も観測されず、観測時間(2時間)中、初期の圧力(4.0MPa)が維持され、結合部封止部品(5)に棒状体(3)が挿通された部分における石鹸液によるリークテストにおいても泡の発生は見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、被結合体の結合用開口部に断面が円形の棒状体を挿通して被結合体と棒状体を気密に結合する結合システムであって、挿通された棒状体がその長さ方向の軸の周りに回転するのを防止することができ、よって高い気密性を維持することができるという特徴を有する結合システム、及び、内部縦方向に第一の貫通孔を有するボルト状又はナット状の結合用部品であって、第一の貫通孔に挿通された棒状体がその長さ方向の軸の周りに回転するのを防止することができるという特徴を有する結合用部品に利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 被結合体
2 被結合体の結合用開口部
3 棒状体
4 フェラル
5 結合部封止部品
6 フェラルの下部テーパー面
7 結合用開口部のテーパー面
8 第一の貫通孔
9 第二の貫通孔
10 押圧用雄ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被結合体の結合用開口部に断面が円形の棒状体を挿入して被結合体と棒状体を気密に結合する結合システムであって、棒状体が挿通されたフェラルを用いて前記の気密を保ち、かつ結合後の棒状体がその軸の周りに回転するのを防止する機構を有する結合システム。
【請求項2】
下記(A)及び(B)の特徴を有する請求項1記載の結合システム。
(A):フェラルの上方向にフェラルの上平面に接して配置され、棒状体が挿通され、外面に雄ねじの溝を有するボルト状の結合部封止部品又は内面に雌ねじの溝を有するナット状の結合部封止部品を有すること
(B):被結合体の結合用開口部は、その内面に上記結合部封止部品の雄ねじと螺合可能な雌ねじの溝又はその外面に上記結合部封止部品の雌ねじと螺合可能な雄ねじの溝を有し、かつフェラルの下部テーパー面に対応してフェラルの下部テーパー面に当接し得る結合用開口部のテーパー面を有すること
【請求項3】
結合部封止部品が、内部縦方向に第一の貫通孔を有するボルト状又はナット状のものであって、その外部から前記第一の貫通孔に達する第二の貫通孔を具備し、該第二の貫通孔の内面に雌ねじの溝を有し、該第二の貫通孔の雌ねじに押圧用雄ねじを螺号挿入し、該押圧用雄ねじの先端にて棒状体を押圧することにより棒状体の回転を防止するものである請求項2記載の結合システム。
【請求項4】
内部縦方向に第一の貫通孔を有するボルト状又はナット状の結合用部品であって、その外部から前記第一の貫通孔に達する第二の貫通孔を具備し、該第二の貫通孔の内面に雌ねじの溝を有する結合用部品。
【請求項5】
第二の貫通孔が、第一の貫通孔を中心軸として対象の位置に配された3本の貫通孔である請求項4記載の結合用部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−36600(P2013−36600A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180939(P2011−180939)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000230250)日本メジフィジックス株式会社 (75)
【出願人】(511118090)エヌ・エム・ピイビジネスサポート株式会社 (4)
【Fターム(参考)】