説明

給油装置

【構成】 給油ノズルにより油液を供給する給油対象タンク内の油蒸気を吸引する吸引手段と吸引手段により吸引された油蒸気を排出させ油蒸気検出手段をクリーニングする排出手段とを加熱し保温する加熱保温手段42,46を設けてなる。
【効果】 加熱保温手段42,46が吸引手段および排出手段を加熱し保温することになるため、寒冷地における使用に際しても、これらが受ける温度低下による影響を排除することができ、吸引手段の吸引性能および排出手段の排出性能を低下させることがない。したがって、低温時における吸引手段および排出手段の性能低下を防止でき、低温時における給油作動開始までの遅延を防止しかつ油蒸気検出手段のクリーニングを十分に行うことができることになる。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は給油装置に係り、特に寒冷地等における使用に適した給油装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
給油装置には、誤給油防止の目的から、給油ノズルにより油液を供給する給油対象タンク内の油蒸気を吸引する吸引手段と、該吸引手段により吸引した油蒸気を検出する油蒸気検出手段と、前記吸引手段により吸引された油蒸気を排出させ前記油蒸気検出手段をクリーニングする排出手段とを具備するものが採用されている。すなわち、これは、吸引手段により給油対象タンク内の油蒸気を吸引し、この吸引された油蒸気の種別を油蒸気検出手段により検出して、この検出結果が油液貯溜タンクの油液の種別と合致した場合に給油作動させ、一方で吸引された油蒸気を排出手段により排出させ油蒸気検出手段をクリーニングする構成のものである。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
しかしながら、上記構成の給油装置においては、上記吸引手段および排出手段として一般にダイアフラムポンプが採用されているため、このダイアフラムポンプは、例えば−10℃以下の低温時になると通常ゴム材質からなるダイアフラムが硬化してしまうことになる。このため、吸引手段においては、吸引流速等の吸引性能が低下して、油蒸気が給油ノズルから油蒸気検出手段に達するまでの時間が長くなり、該油蒸気検出手段による検出結果に応じて開始される給油作動までの時間が長くなるという問題があった。また、同様の理由により、排出手段による排出性能も低下するため、油蒸気検出手段のクリーニングが十分に行えなくなるという問題があった。さらに、低温時に限らず湿度が高い場合には、排出手段は湿ったの空気によって油蒸気検出手段をクリーニングすることになるため、すばやく該油蒸気検出手段の油蒸気のクリーニングを行うことができないという問題があった。
【0004】
したがって、本考案の目的は、低温時における吸引手段および排出手段の性能低下を防止しかつ高湿度時における排出手段の性能低下を防止することにより、低温時における給油作動開始までの遅延を防止しかつ油蒸気検出手段のクリーニングを十分に行うことができて、しかも高湿度時にすばやく該油蒸気検出手段の油蒸気のクリーニングを行うことができる給油装置を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本考案の給油装置は、給油ノズルと、該給油ノズルへ油液貯溜タンクの油液を送液する送液手段とを有し、前記給油ノズルにより油液を供給する給油対象タンク内の油蒸気を吸引する吸引手段と、該吸引手段により吸引した油蒸気を検出する油蒸気検出手段と、前記吸引手段により吸引された油蒸気を排出させ前記油蒸気検出手段をクリーニングする排出手段とを具備するものであって、前記吸引手段および排出手段を加熱し保温する加熱保温手段を設けてなることを特徴としている。
【0006】
【作用】
本考案の給油装置によれば、加熱保温手段が吸引手段および排出手段を加熱し保温することになるため、寒冷地における使用に際しても、これらが受ける温度低下による影響を排除することができ、吸引手段の吸引性能および排出手段の排出性能を低下させることがない。しかも、湿度に応じてヒータを作動させれば、高湿度の条件下における使用に際しても排出手段近傍を通過する空気が暖められてドライ状態となり、油蒸気検出手段の油蒸気のクリーニングを良好に行うことができる。
【0007】
【実施例】
本考案の一実施例による給油装置について、図面を参照して以下に説明する。
【0008】
まず、本実施例の給油装置の全体構成について図1を参照して説明する。
本実施例の給油装置は、地下油液貯溜タンク(図示略)から吸上管(図示略)
に接続される配管1と、該配管1を介して油液を汲上げるポンプ部2・気液を分離するエアセパレータ部3を備えたポンプユニット4と、該ポンプ部2を駆動するポンプモータ5と、前記配管1とエアセパレータ部3との間に設けられたリリーフ配管6と、流量を計測する流量計7と、流量に比例したパルスを出力する流量パルス発信器8と、配管1の下流側に接続された給油ホース9と、該給油ホース9の先端部に接続された給油ノズル10と、該給油ノズル10のノズル収納部11に対する掛け/外しに伴いOFF/ON信号を出力するノズルスイッチ12とを有している。また一端部が給油ノズル10の吐出パイプ10A先端に開口すると共に他端部が後述の吸気配管へ連通し油蒸気の吸気/排気を行う吸気ホース13と、該吸気ホース13へ連通した吸気配管14と、該吸気配管14の途中に設けられ検出基準タンク(地下タンク油種判定用のタンク)あるいは車両燃料タンク等の給油対象タンク内から吸気ホース13・吸気配管14を介して吸気した油蒸気の濃度を検出する、油蒸気検出手段である油蒸気センサ15と、油蒸気吸気用の吸引手段である吸気ポンプ16・残留油蒸気排気用の排出手段である排気ポンプ17・吸排気動作に応じて切換わる電磁三方弁18を備えた吸排ユニット19とを有している。さらに給油量等を表示する給油表示器20と、給油装置の設定油種を表示する設定表示器21・給油装置を自己学習モード(地下タンクの油種を識別し識別油種を給油装置の設定油種とするモード)とするための設定スイッチ22・リセット給油モード(油種判定機能を解除状態とし、給油ノズル10がノズル収納部11から外されたことだけを条件にポンプモータ5を駆動し給油可能とする状態)とするためのリセットスイッチ23を備えた自己学習設定操作部24と、リセットフラグ(セット状態:油種判定機能を解除状態とし、給油ノズル10がノズル収納部11から外されたことだけを条件に給油可能とするリセット給油状態。リセット状態:油種判定機能を作動状態とし、燃料タンク油種と設定油種とが合致した段階で給油可能とする通常給油状態)を内蔵し給油装置各部を制御する制御部25とを有している。なお、上記したポンプユニット4のポンプ部2およびポンプモータ5が送液手段を構成している。
【0009】
次に、上記構成による給油装置の給油処理を図2に基づき説明する。
作業者が車両等の燃料タンクへの給油を開始すべく給油装置の給油ノズル10をノズル収納部11から取外すと、ノズルスイッチ12がONとなるに伴い(ステップSA1)、制御部25はリセットフラグの状態を判定する(ステップSA2)。制御部25はリセットフラグがセット状態(油種判定機能を解除して給油を行う状態)にある場合は後述のステップSA6へ移行し、ポンプモータ5を駆動してポンプ部2により地下タンクからの油液の汲上げを開始させ給油可能状態とする一方、リセットフラグがリセット状態(油種判定機能を作動して給油を行う状態)にある場合は吸排ユニット19を吸気駆動させる(ステップSA3)。
これにより、作業者が給油ノズル10を車両燃料タンク内へ挿入すると、燃料タンク内の油蒸気が吸気ホース13・吸気配管14を介し油蒸気センサ15へ向けて吸気されるため、制御部25は油蒸気センサ15による検出結果に基づき燃料タンク油種と給油装置の設定油種とが合致するか否かを判定する(ステップSA4)。制御部25は燃料タンク油種と設定油種とが合致すると判定した場合は、吸排ユニット19の吸気駆動を停止させ(ステップSA5)、ポンプモータ5を駆動してポンプ部2により地下タンクからの油液の汲上げを開始させ給油可能状態とする(ステップSA6)。作業者による車両等への給油作業に伴い、制御部25は流量パルス発信器8から出力される流量パルスに基づき給油量の計測演算等を行う(ステップSA7)。他方、上記ステップSA4で制御部25は燃料タンク油種と設定油種とが合致しないと判定した場合は、ポンプモータ5は駆動されることはなく、その後、作業者が給油ノズル10をノズル収納部11へ掛戻すことによりノズルスイッチ12がOFFとなった場合に(ステップSA8)、後述のステップSA12へ移行し吸排ユニット19を所定時間排気駆動して、油蒸気センサ15並びに吸気ホース13のクリーニングが行われる。
【0010】
次に、制御部25はノズルスイッチ12がONかOFFか、即ち作業者が給油作業終了に伴い給油ノズル10をノズル収納部11へ掛戻したか否かを判定し(ステップSA9)、給油ノズル10をノズル収納部11へ掛戻した場合はポンプモータ5の駆動を停止しポンプ部2による地下タンクからの油液の汲上げを停止させる(ステップSA10)。次に、制御部25はリセットフラグの状態を判定し(ステップSA11)、リセットフラグがリセット状態(油種判定機能を作動して給油を行う状態)にある場合は、吸排ユニット19の吸気駆動を停止させ逆に所定時間排気駆動し、油蒸気センサ15並びに吸気ホース13のクリーニングを行う(ステップSA12)。これにより、吸気ホース13・吸気配管14・油蒸気センサ15の残留油蒸気が給油装置外部へ排気される結果、両者のクリーニングが行われる。他方、上記ステップSA11で制御部25はリセットフラグがセット状態(油種判定機能を解除して給油を行う状態)にある場合は、次回の給油に備えるべくリセットフラグをリセット状態とする(ステップSA13)。この後、制御部25は油蒸気センサ15が上記クリーニングにより次回給油時における油蒸気検出可能な状態に復帰したか否かを確認し(ステップSA14)、復帰していない場合は上記ステップSA12へ戻り吸排ユニット19の排気駆動を所定時間行う一方、復帰している場合は上記一連の処理を終了する。尚、前記リセットスイッチ23は通常、例えば燃料タンクが浅い単車等への給油時に使われるものである。
【0011】
ここで、本実施例においては、上記した吸気ポンプ16および排気ポンプ17としてダイアフラムポンプが用いられており、これらは、図3に示すように、一つのユニット30としてケーシング31内に組み込まれている。即ち、このユニット30は、その外郭をなすとともに4カ所の外部連通部32〜35が側面部に、開口部36が上面部にそれぞれ設けられた上記ケーシング31と、該ケーシング31内に組み込まれた吸気ポンプ16および排気ポンプ17と、該ケーシング31内に、前記吸気ポンプ16を途上に介在させた状態で二カ所の外部連通部32,34同士を連通させる吸気チューブ37aと、前記排気ポンプ17を途上に介在させた状態で他のニカ所の外部連通部33,35同士を連通させる排気チューブ37bと、吸気ポンプ16および排気ポンプ17に外部電源から導電するポンプ電源供給部38とを有している。そして、吸気ポンプ16は内部の図示せぬゴム製ダイアフラムの駆動により外部連通部34側から外部連通部32側に気体を流すようになっており、排気ポンプ17は同様に内部の図示せぬゴム製ダイアフラムの駆動により外部連通部33側から外部連通部35側に気体を流すようになっている(図3に気体の流れを破線矢印で示す)。加えて、外部連通部34,35はそれぞれ上述した電磁三方弁18に接続しており、外部連通部32,33は外気に接続している。
【0012】
また、図4に示すようにユニット30は、ケーシング31の図4における下側の面部に、その開口部36を外側から閉塞すべくボルト等により取り付けられる、メンテナンス等用のカバー39を具備している。このカバー39には、ケーシング31取付時に該ケーシング31の開口部36に対応する中央位置に、取付方向逆方(図4における下方)に一段凹んだ概略長方形状をなす凹部40が設けられており、図5に示すように、この凹部40の底面部41には、その一方の長辺、これに連続する一方の短辺およびこれに連続する他方の長辺に沿うように、ヒータ42が埋め込まれている。なお、カバー39はアルミニウムの鋳造により製造されており、上記ヒータ42はこのカバー39の鋳造時に該カバー39内に上記状態をなすように鋳込まれる。そして、ヒータ42の両端部には、図5および図6に示すように、カバー39の中央に設けられ外部電源から導電するヒータ電源供給部43に一端が接続する一対のケーブル44,45の他端がそれぞれ接続されている。また、これらのうち一方のケーブル44の途上には、凹部40の底面部41の内側に固定された検出器46が接続されており、この検出器46は、温度を検出する検出素子46aと回路基板47(図7参照)とから主に構成されている。そして、回路基板47は、検出素子46aにより検知された温度を予め設定された値と比較し検知された温度が設定値以下である場合に後述のスイッチ回路48に信号を出力する比較回路49と、この比較回路49からの出力信号を受けてヒータ42を通電させるスイッチ回路48とからなっている。ここで、上記ヒータ42および検出器46が本実施例の加熱保温手段を構成するものである。
【0013】
以上に述べたように、本実施例の給油装置は、吸気ポンプ16と排気ポンプ17とを収納するケーシング31の開口部36を閉塞するカバー39にヒータ42を具備しており、ケーシング31内の温度を検出器46の検出素子46aで検出し比較回路49で常に予め設定された設定値と比較して、該ケーシング31内の温度がこの設定値以下になった場合に比較回路49からスイッチ回路48に信号
が出力されることにより、上記ヒータ42は通電状態となってケーシング31内を加温することになる。これによって、ケーシング31内は常に所定の温度範囲内に維持されることになり、寒冷地における使用に際しても、これらが受ける温度低下による影響を排除することができ、吸気ポンプ16の吸引性能および排気ポンプ17の排出性能を低下させることがない。したがって、低温時における吸気ポンプ16および排気ポンプ17の、特にこれらのダイアフラムの硬化による性能低下を防止でき、低温時における給油作動開始までの遅延を防止しかつ油蒸気センサ15のクリーニングを十分に行うことができることになる。なお、ここで、ヒータ42を作動させる温度は、当然のことながら吸気ポンプ16および排気ポンプ17の作動が良好に行われることになる値に設定されることになる。
【0014】
また、上記検出器46の検出素子46aを温度を検出するものでなく湿度を検出するものとし比較回路49を湿度が予め設定された所定値を超えた場合に信号
を出力するものにかえることにより、湿度に応じてヒータ42を作動させれば、高湿度の条件下における使用に際しても排気ポンプ17の近傍を通過する空気が暖められてドライ状態となる。したがって、高湿度時における排気ポンプ17の性能低下を防止し、高湿度時にすばやく油蒸気センサ15の油蒸気のクリーニングを行うことができる。
【0015】
さらに、メンテナンス用としてケーシング31の開口部36を閉塞するように設けられているカバー39に、上記ヒータ42および検出器46等を設ける構成としているため、寒冷地等において使用する上記構成の給油装置と、ヒータ42等を設ける必要がない通常の給油装置とを、カバー39の変更等のみで簡単にその仕様を変更することができる。また、従来から使用されている給油装置にも上記ヒータ42を具備するカバー39を変更等するだけで容易に寒冷地対策等を施すことができる。
【0016】
なお、上記検出器46として、検出素子46aおよび回路基板47の代りにサーミスタを設け、このサーミスタにより温度を一定に保つことも勿論可能である。
【0017】
【考案の効果】
以上説明したように、本考案の給油装置によれば、加熱保温手段が吸引手段および排出手段を加熱し保温することになるため、寒冷地における使用に際しても、これらが受ける温度低下による影響を排除することができ、吸引手段の吸引性能および排出手段の排出性能を低下させることがない。したがって、低温時における吸引手段および排出手段の性能低下を防止でき、低温時における給油作動開始までの遅延を防止しかつ油蒸気検出手段のクリーニングを十分に行うことができることになる。しかも、湿度に応じてヒータを作動させれば、高湿度の条件下における使用に際しても排出手段近傍を通過する空気が暖められてドライ状態となり、油蒸気検出手段の油蒸気のクリーニングを迅速かつ良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の一実施例による給油装置の構成図である。
【図2】本考案の一実施例による給油装置の給油処理のフローチャートである。
【図3】本考案の一実施例による給油装置の吸引手段および排出手段が収納されたユニットのカバー非装着時の状態を示す平面図である。
【図4】本考案の一実施例による給油装置の吸引手段および排出手段が収納されたユニットのカバー装着時の状態を示す図3におけるX−X線に沿う断面図である。
【図5】本考案の一実施例による給油装置のカバーを示す図4におけるY方向から見た図である。
【図6】本考案の一実施例による給油装置のカバーを示す図5におけるZ−Z線に沿う断面図である。
【図7】本考案の一実施例による給油装置の加熱保温手段を示すブロック図である。
【符号の説明】
2 ポンプ部(送液手段)
4 ポンプユニット(送液手段)
5 ポンプモータ(送液手段)
10 給油ノズル
15 油蒸気センサ(油蒸気検出手段)
16 吸気ポンプ(吸引手段)
17 排気ポンプ(排出手段)
42 ヒータ(加熱保温手段)
46 検出器(加熱保温手段)

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 給油ノズルと、該給油ノズルへ油液貯溜タンクの油液を送液する送液手段とを有し、前記給油ノズルにより油液を供給する給油対象タンク内の油蒸気を吸引する吸引手段と、該吸引手段により吸引した油蒸気を検出する油蒸気検出手段と、前記吸引手段により吸引された油蒸気を排出させ前記油蒸気検出手段をクリーニングする排出手段とを具備する給油装置において、前記吸引手段および排出手段を加熱し保温する加熱保温手段を設けてなることを特徴とする給油装置。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【図7】
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【図3】
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【公開番号】実開平5−75199
【公開日】平成5年(1993)10月12日
【考案の名称】給油装置
【国際特許分類】
【出願番号】実願平4−14962
【出願日】平成4年(1992)3月19日
【出願人】(000003056)トキコ株式会社 (17)