説明

給湯システム

【課題】熱交換器で冷やされた湯水の貯湯タンクへの流入により、貯湯タンク内の湯水が温度降下するのを抑制する給湯システムを提供する。
【解決手段】給湯システム10は、水道水を入れる水道水入口16を底部に備え、貯留された湯を上部から送り出す第1、第2のタンク11、12と、第1のタンク11の下部に備えられた出水口67に配管接続され、浴槽38の湯を循環させて、出水口67から出水される湯水を加熱する熱交換器56と、第1のタンク11の下部に備えられた取水口17から取り出された湯水を加熱し、第2のタンク12の上部に給湯する外部加熱手段20と、熱交換器56による湯水の加熱及び外部加熱手段20による湯水の加熱をそれぞれ制御する制御装置34とを有し、第1のタンク11の下部に、熱交換器56によって加熱された湯が入水する入水口65を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽の湯を熱源にした熱交換器による湯水の加熱が可能な給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浴槽の湯を加熱源に貯湯タンクの湯水を加熱する給湯システムが提案されており、その具体例が例えば特許文献1に記載されている。
特許文献1に記載の給湯システムは、循環ポンプを作動して貯湯タンク下部から湯水を取り出し、浴槽の湯を加熱源に熱交換器でその湯水を加熱した後に貯湯タンク上部に戻している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−111574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この給湯システムでは、循環ポンプ(P2、P3)が停止したとき、熱交換器に貯まっている湯が冷やされることで、貯湯タンクの上部と下部を接続する配管内で対流が生じる。そして、貯湯タンク上部の湯が下部の湯水に比べて高温で比重が異なるため、貯湯タンクの上部と下部を接続する配管内の湯全体が低温の湯水となったとき、その低温の湯水が貯湯タンクの下部から貯湯タンク内に流入することとなり、貯湯タンク内の湯水の温度が降下する。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされるもので、熱交換器で湯が冷やされることに起因して貯湯タンク内の湯水の温度が降下するのを抑制する給湯システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的に沿う本発明に係る給湯システムは、水道水を入れる水道水入口を底部に備え、貯留された湯を上部から送り出す貯湯タンクと、前記貯湯タンクの下部に備えられた出水口に配管接続され、浴槽の湯を循環させて、前記出水口から出水される湯水を加熱する熱交換器と、前記貯湯タンクの下部に備えられた取水口から取り出された湯水を加熱し、前記貯湯タンクの上部に給湯する外部加熱手段と、前記熱交換器による湯水の加熱及び前記外部加熱手段による湯水の加熱をそれぞれ制御する制御装置とを有し、前記貯湯タンクの下部に、前記熱交換器によって加熱された湯が入水する入水口を設けている。
【0006】
本発明に係る給湯システムにおいて、前記貯湯タンクは並列配置された第1、第2のタンクからなり、該第1のタンクの上部が該第2のタンクの下部に連結管を介して連結されて、前記貯湯タンクの上部が前記第2のタンクの上部として、前記貯湯タンクの下部が前記第1のタンクの下部としてそれぞれ機能するのが好ましい。
【0007】
本発明に係る給湯システムにおいて、前記制御装置は、前記浴槽の湯の温度A及び前記出水口から出水される湯水の温度Bを検知し、温度Aが温度Bより所定温度以上高いことを条件にして、前記熱交換器による湯水の加熱を行う制御手段1を有するのが好ましい。
【0008】
本発明に係る給湯システムにおいて、前記制御装置は、熱回収開始入力のあったことを条件として、深夜電力割引時間帯に前記熱交換器による湯水の加熱を開始する制御手段2を有することができる。
【0009】
本発明に係る給湯システムにおいて、前記制御装置は、深夜電力割引時間帯の前に待機時間帯が設定され、該待機時間帯に熱回収開始入力があった場合には、深夜電力割引時間帯まで待って、前記熱交換器による湯水の加熱を行い、前記待機時間帯前に熱回収開始入力があった場合には、熱回収開始入力があった時点で前記熱交換器による湯水の加熱を行う制御手段3を有することができる。
【0010】
本発明に係る給湯システムにおいて、前記入水口は、前記取水口に対して前記出水口より近くに配置され、前記外部加熱手段による湯水の加熱と同期して前記熱交換器による湯水の加熱を行い、該熱交換器によって加熱された湯を積極的に前記取水口から取り出すことができる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1〜6記載の給湯システムは、貯湯タンクの下部に、熱交換器へ湯水を出水する出水口と熱交換器により加熱された湯が入水する入水口とを設けているので、貯湯タンクの入水口及び出水口の高さ位置に存する湯水の温度差は小さく、熱交換器での湯水の加熱が実行されずに熱交換器内の湯が冷えて入水口と出水口を接続する回路内全体が低温な湯水を有するようになっても、この低温な湯水が入水口又は出水口から流入するのを防止し、貯湯タンクに貯えられた湯水全体の温度降下を抑制可能である。
【0012】
特に、請求項2記載の給湯システムは、貯湯タンクが並列配置された第1、第2のタンクからなるので、貯湯タンクの設置について省スペース化が可能である。
【0013】
請求項3記載の貯湯システムは、浴槽の湯の温度Aが出水口から出水される湯水の温度Bより所定温度以上高いことを条件にして、熱交換器による湯水の加熱を行うので、加熱ができない状況、あるいは加熱効率が低い状況下での湯水の加熱動作の実行を回避することが可能である。
【0014】
請求項4記載の貯湯システムは、深夜電力割引時間帯に熱交換器による湯水の加熱を開始するので、湯水の加熱に要する電力コストを低減することが可能である。
【0015】
請求項5記載の貯湯システムは、待機時間帯に熱回収開始入力があった場合、深夜電力割引時間帯まで待って、熱交換器による湯水の加熱を行うので、湯水の加熱に要する電力コストを低減することが可能であり、また、待機時間帯前に熱回収開始入力があった場合は、その時点で熱交換器による湯水の加熱を行い、浴槽の湯の温度が大幅に低下する前に熱交換器による湯水の加熱が可能である。
【0016】
請求項6記載の貯湯システムは、熱交換器によって加熱された湯水を積極的に取水口から取り出すので、貯湯タンク内の湯水の温度上昇を抑制して熱交換器に低温の貯湯タンクを送り出し、熱交換器の加熱効率を上げることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態に係る給湯システムを示す概略説明図である。
【図2】同給湯システムの制御装置の接続を示すブロック図である。
【図3】同給湯システムの熱回収の開始時を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1、図2に示すように、本発明の一実施の形態に係る給湯システム10は、水道水を入れる水道水入口16を底部に備え、貯留された湯を上部から送り出す貯湯タンク13と、浴槽38の湯を循環させて、貯湯タンク13の下部に備えられた出水口67から出水される湯水を加熱する熱交換器56と、貯湯タンク13の下部に備えられた取水口17から取り出された湯水を加熱し、貯湯タンク13の上部に給湯する外部加熱手段20と、熱交換器56による湯水の加熱及び外部加熱手段20による湯水の加熱をそれぞれ制御する制御装置34とを有している。
【0019】
貯湯タンク13は、湯水を貯留する並列配置された第1、第2のタンク11、12からなり、第1のタンク11の上部は、連結管14を介して第2のタンク12の下部に連結されており、第1のタンク11内の湯水と第2のタンク12内の湯水は連結管14を経由して行き来可能である。
水道管15に接続され第1のタンク11へ水道水を入れる水道水入口16が第1のタンク11の底部(下部)に備えられている。
第1のタンク11の下部に取水口17が備えられ、取水口17は加熱用循環ポンプ18とヒートポンプ用熱交換器19を介して第2のタンク12の上部に配管接続されている。
【0020】
加熱用循環ポンプ18、ヒートポンプ用熱交換器19及びヒートポンプ式熱源器23を有する外部加熱手段20は、加熱用循環ポンプ18を作動して取水口17から湯水を取り出し、取り出した湯水をヒートポンプ用熱交換器19に送り込む。ヒートポンプ用熱交換器19は、熱媒体が循環する熱媒体循環回路22を介して熱源器の一例であるヒートポンプ式熱源器23に接続されており、ヒートポンプ式熱源器23で加熱された熱媒体を加熱源とした熱交換により第1のタンク11から送り込まれた湯水を加熱する。
【0021】
そして、ヒートポンプ用熱交換器19によって加熱された湯は、第2のタンク12の上部に給湯され、第2のタンク12は上部に最も高温の湯水を有し上部から下部に近づくにつれ湯水の温度が低くなり下部に最も低温の湯水を有する状態になる。また、第2のタンク12に内在する湯水は、ヒートポンプ用熱交換器19により加熱された湯水が第2のタンク12へ給湯されるのに伴って、第2のタンク12の下部に連結された連結管14を経由し第1のタンク11へ流れ込み、第1のタンク11も第2のタンク12と同様に上部に最も高温の湯水を有し上部から下部に近づくにつれ湯水の温度が低くなり下部に最も低温の湯水を有する状態になる。
【0022】
第1のタンク11には水温を計測する温度センサの一例である第1、第2、第3、第4の残湯サーミスタ24、25、26、27が、第1のタンク11の上部から下部に向かって順に異なる高さ位置で取付けられ、それぞれ取付け位置に存する湯水の温度を計測する。また、第2のタンク12には上部から下部に向かって順に異なる高さ位置で、第5、第6、第7の残湯サーミスタ28、29、30が取付けられ、それぞれ取付け位置に存する湯水の温度を計測する。
【0023】
ヒートポンプ用熱交換器19と第2のタンク12の上部との間に加熱用三方弁32が配置され、加熱用三方弁32はバイパス管33を介して第1のタンク11の下部に配管接続されており、加熱用三方弁32はヒートポンプ用熱交換器19から流れ込む湯水を第2のタンク12に流すか、あるいは、バイパス管33を介して第1のタンク11の下部に流すかを切換え可能である。
【0024】
加熱用三方弁32及び加熱用循環ポンプ18には外部加熱手段20による湯水の加熱を制御する制御装置34が接続され、制御装置34はヒートポンプ式熱源器23が作動直後で熱媒体循環回路22を循環する熱媒体が取水口17から取り出された湯水を加熱可能な温度まで達していないとき、加熱用三方弁32を切換えてヒートポンプ用熱交換器19から流れ込む湯水を第1のタンク11の下部に流し、低温の湯水が第2のタンク12の上部に供給され、第2のタンク12に在する湯水の温度が低下するのを防止する。
【0025】
また、制御装置34は熱媒体循環回路22を循環する熱媒体が取水口17から取り出された湯水を加熱可能な温度となったとき、外部加熱手段20による湯水の加熱を実行すると共に、加熱用三方弁32を切換えてヒートポンプ用熱交換器19から送られた湯を第2のタンク12の上部に送る。
第1のタンク11の上部及び第2のタンク12の上部に配管接続された貯湯タンク用混合弁35が設けられ、貯湯タンク用混合弁35は第1のタンク11の上部及び第2のタンク12の上部から送り出されたそれぞれの湯を混合し、所定温度T以上の湯となるように調整する。
【0026】
第1のタンク11及び第2のタンク12の湯の温度がいずれも所定温度T以上の場合は、第1のタンク11の湯を優先して使用し、第2のタンク12の湯を温存するので、第2のタンク12が後述の追焚き運転が可能な高温の湯を有する状態になり易くしている。
なお、貯湯タンク用混合弁35を介して送り出された湯には、水道水が混合され、1)台所及び洗面台の蛇口等へ供給する湯水の温度として設定された給湯設定温度の湯水、及び2)浴槽38へ湯張りする湯水の温度として設定された湯張り設定温度の湯水とされて供給されるので、この給湯設定温度と湯張り設定温度のうちで温度が高いほうを所定温度Tとする。
【0027】
また、貯湯タンク用混合弁35の出口36側近傍に湯温を計測する温度センサの一例である第1のサーミスタ37が取付けられており、第1のサーミスタ37は貯湯タンク用混合弁35から送り出される湯の温度を計測するので、貯湯タンク用混合弁35から送り出された湯の温度が実際に所定温度T以上であるか否かが検知可能である。
【0028】
貯湯タンク用混合弁35の出口36側の水路は分岐し、分岐したうち一方が給湯混合弁42の入口43側に向かう水路を形成し、他方が浴槽用混合弁39の入口40側に向かう水路を形成する。
給湯混合弁42には、水道管15が接続され、給湯混合弁42は貯湯タンク用混合弁35を経由して流れ込む第1のタンク11及び第2のタンク12の湯に水道水を混合して給湯設定温度の湯水とし、この給湯設定温度の湯水を台所、洗面台の蛇口等に接続された給湯管44へ送り出す。
【0029】
また、浴槽用混合弁39にも、水道管15が接続され、浴槽用混合弁39は貯湯タンク用混合弁35を経由して流れ込む第1のタンク11及び第2のタンク12の湯に水道水を混合して湯張り設定温度の湯水とし、この湯張り設定温度の湯水を浴槽38に供給(湯張り)する。
【0030】
給湯混合弁42の入口43側近傍には、それぞれ給湯混合弁42から貯湯タンク用混合弁35に湯水が流れないようにする第1の逆止弁45及び給湯混合弁42から水道管15に向かって湯水が流れないようにする第2の逆止弁46が設けられ、また、浴槽用混合弁39と貯湯タンク用混合弁35の間には浴槽用混合弁39から貯湯タンク用混合弁35に向かって湯水が流れないように第3の逆止弁47が設けられている。
【0031】
浴槽用混合弁39を始点として開閉弁48、第4の逆止弁49、浴槽用循環ポンプ50を経由して浴槽38まで達する湯張り回路52が形成され、給湯システム10は、開閉弁48を開いた状態にすることによって、浴槽用混合弁39で温度調整がなされた湯水を浴槽38に供給する。なお、開閉弁48及び浴槽用循環ポンプ50は制御装置34に接続され、制御装置34は、開閉弁48の開閉及び浴槽用循環ポンプ50の作動、停止をそれぞれ制御する。また、第4の逆止弁49は、浴槽38側から浴槽用混合弁39へ湯水が流れるのを防ぐ。
【0032】
浴槽38には、湯張り回路52と一部を共有し浴槽38内の湯(湯水)が循環する浴槽循環回路53が接続されている。浴槽循環回路53には、浴槽38近傍に浴槽38内の湯の温度を計測する第2のサーミスタ54及び浴槽38内の湯の量を計測する水位センサ55が取付けられると共に、浴槽循環回路53内で浴槽38の湯を循環させる浴槽用循環ポンプ50が配設されている。
【0033】
浴槽循環回路53内で浴槽38の湯を循環させ、この湯を熱源に貯湯タンク13(第1のタンク11)から出水される湯水を加熱する熱回収と、貯湯タンク13(第2のタンク12)から出水される湯水を熱源に浴槽38の湯を加熱する追焚きとを行う熱交換器56が設けられ、熱交換器56内に形成された浴槽38の湯が流れる浴槽側流路57は、浴槽循環回路53の一部を構成する。
【0034】
制御装置34により開閉弁48を閉じた状態にし浴槽用循環ポンプ50を作動することで浴槽38から湯が取り出され、取り出された湯は、浴槽循環回路53を循環して浴槽38に流入する。
第2のタンク12の上部には、湯を出湯する追焚き用出湯口58が備えられ、第2のタンク12の追焚き用出湯口58から出湯した湯は、熱交換用三方弁63に送られる。
【0035】
熱交換用三方弁63は、追焚き用出湯口58に配管接続された追焚き側入口59と第1のタンク11から湯水が供給される熱回収側入口60とを有し、追焚き側入口59及び熱回収側入口60のうち一方を熱交換用三方弁63に備えられた熱交換側出口61側に湯水(又は湯)が通過する状態にし、他方を熱交換側出口61側に湯水が通過しない状態にする。熱交換側出口61は、熱交換器56及び熱交換用循環ポンプ64を経由して第1のタンク11の下部に備えられた入水口65に配管接続されている。
【0036】
追焚き側入口59が湯を通過可能な状態で、熱交換用循環ポンプ64が作動すると、第2のタンク12内上部の湯が追焚き用出湯口58から出湯し入水口65へ送られる。
また、第1のタンク11の下部に湯水を出水する出水口67が備えられ、出水口67は熱回収側入口60に配管接続され、熱交換用三方弁63を介して熱交換器56に配管接続されている。
【0037】
なお、入水口65は、取水口17に対して水道水入口16及び出水口67より近い位置に配置、例えば取水口17に隣接して配置されているので、給湯システム10は、熱交換器56による熱回収と同期して外部加熱手段20による湯水の加熱が実行されると、熱交換器56で加熱され入水口65を介して第1のタンク11に流入する湯を積極的に取水口17から取り出すことができる。
【0038】
出水口67を始点に熱交換用三方弁63、熱交換器56、熱交換用循環ポンプ64を経由して入水口65を終点とする回路を熱回収回路68とし、追焚き用出湯口58を始点に熱交換用三方弁63、熱交換器56、熱交換用循環ポンプ64を経由して入水口65を終点とする回路を追焚き回路66とすると、追焚き回路66及び熱回収回路68は熱交換側出口61から入水口65までの部位を共有する。
【0039】
また、熱交換器56の内部には、追焚き回路66及び熱回収回路68を構成する貯湯タンク側流路69が形成されており、熱交換側出口61から流れ出る湯水は、貯湯タンク側流路69を通過する。
熱交換用三方弁63及び熱交換用循環ポンプ64は、制御装置34に接続されており、制御装置34は、第2のタンク12から出湯される湯の熱によって浴槽38内の湯を所定の温度まで追焚き(加熱)するのを要求する追焚き要求信号を外部から受信可能である。
【0040】
制御装置34は、追焚き要求信号を受信すると熱交換用三方弁63の追焚き側入口59を湯の通過する状態にし、更に熱交換用循環ポンプ64を作動し追焚き用出湯口58から第2のタンク12の湯を取り出し、この湯を貯湯タンク側流路69を経由して入水口65から第1の貯湯タンク11に流し込む。また、制御装置34は、浴槽用循環ポンプ50にも接続されており、追焚き要求信号を受信すると浴槽用循環ポンプ50を作動し、浴槽38内の湯を浴槽循環回路53内で循環させ、貯湯タンク側流路69に流れる第2のタンク12の湯を熱源にした熱交換により浴槽側流路57を流れる浴槽38の湯を加熱する。
【0041】
熱交換は熱源が加熱対象に比べ高温であることが成立条件であり、その温度差が大きいほど効率的となり短時間で加熱対象を加熱することができるので、制御装置34は、非効率な熱交換を避けるべく追焚き用出湯口58から出湯される湯の温度Cが浴槽38の湯の温度として設定されたふろ設定温度に比べて高温であってもその温度差が予め設定された設定温度差X、例えば5deg(℃)より小さければ追焚きを実行しない。
【0042】
ここで、第5の残湯サーミスタ28は第2のタンク12の追焚き用出湯口58の配置位置と同一の高さに配置されており、温度Cは第5の残湯サーミスタ28によって計測され、温度Aは第2のサーミスタ54によって計測される。また、追焚きは、熱交換器56での浴槽38の湯の加熱により温度Cがふろ設定温度になった時点で終了する。なお、追焚きがなされていない時、追焚き側入口59は湯が通過しない状態となっている。
【0043】
制御装置34は、浴槽38内の湯を熱源に出水口67から出水される第1のタンク11の湯水を所定の温度まで加熱するのを開始する熱回収開始入力の信号を外部から受信可能であり、この熱回収開始入力を基にして熱交換器56による湯水の加熱を制御する。制御装置34は、この熱回収開始入力を受信すると熱交換用三方弁63の熱回収側入口60を湯水が通過する状態にし、更に熱交換用循環ポンプ64を作動し出水口67を介して第1のタンク11から湯水を取り出し、この湯水を貯湯タンク側流路69を経由して入水口65から第1の貯湯タンク11に流し込むと共に、浴槽用循環ポンプ50を作動し浴槽38内の湯を浴槽循環回路53内で循環させ、浴槽側流路57を流れる湯を熱源にした熱交換により貯湯タンク側流路69を流れる第1の貯湯タンク11の湯水を加熱する熱回収を行う。
【0044】
制御装置34は浴槽38の湯の温度Aが出水口67から出水される湯水の温度Bに比べて予め設定された設定温度Y(例えば7deg)高いことを条件にして熱交換器56による湯水の加熱、即ち熱回収を行う。第4の残湯サーミスタ27は第1のタンク11の出水口67の配置位置と同一の高さに配置されており、温度Bは第4の残湯サーミスタ27によって計測される。また、熱回収は、熱交換器56での貯湯タンク13の湯水の加熱により温度Aが温度Bに比べて予め設定された設定温度Z(例えば5deg)以上高温でなくなった時点で終了する。
なお、制御装置34は、例えばマイクロコンピュータにより構成され、第2のサーミスタ54、及び第4、第5の残湯サーミスタ27、28で計測された温度を検知でき、また、加熱用循環ポンプ18、浴槽用循環ポンプ50及び熱交換用循環ポンプ64の運転や、加熱用三方弁32、開閉弁48、熱交換用三方弁63の動作を制御するプログラムが格納されている。
【0045】
熱回収により熱交換器56で加熱された湯は、入水口65から第1のタンク11内に流れ込むので、この流れ込んだ湯水は第1のタンク11内を下部から上部に流動しながら第1のタンク11に内在する湯水全体に拡散する。
ここで、入水口65は取水口17に隣接して配置されているので、制御装置34が外部加熱手段20による湯水の加熱と同期して熱回収を行うことで、入水口65から流入する加熱された湯を積極的に取水口17から取り出し、入水口65から流入する湯が第1のタンク11内で拡散して第1のタンク11の湯水全体が温度上昇するのを抑制し、熱回収(熱交換)の効率を上げることができる。
【0046】
更に、外部加熱手段20による湯水の加熱がなされている時、取水口17から取り出された第1のタンク11の湯水が第2のタンク12に送り込まれるのに伴って第2のタンク12の下部の湯水が連結管14を経由して第1のタンク11の上部へ流れ込み、第2のタンク12の下部の湯水は、第1のタンク11の上部の温度より低温であるので、この作用によっても第1のタンク11に内在する湯水が熱回収により温度上昇するのを抑制する。
【0047】
追焚き又は熱回収が行われていない時、熱回収側入口60は湯水が通過する状態で追焚き側入口59は湯が通過しない状態であり、更に入水口65及び出水口67は共に第1のタンク11の下部に配置され、入水口65の近傍及び出水口67の近傍に存する湯水の温度差は微差であるので、貯湯タンク側流路69内の湯水が時間経過により冷やされ熱回収回路68内を流動して入水口65又は出水口67から第1のタンク11に流入する湯水量を制限することができる。
【0048】
図3に示すように、制御装置34は熱回収開始入力があったことを条件(ステップS1)に、外部加熱手段20による湯水の加熱が実行中か否かを検知し(ステップS2)、外部加熱手段20による湯水の加熱が実行中であれば、温度Aが温度Bに比べて設定温度Y以上高くかつ浴槽38に一定以上の湯があることを条件に直ちに熱回収を開始する(ステップS3)。なお、制御装置34は、温度Aが温度Bに比べて設定温度Y以上高いことを条件にして、熱回収を行う制御手段1を有する。
【0049】
また、制御装置34は、ステップS2で外部加熱手段20による湯水の加熱が実行されていないことを検知した際には、現在時刻が電力料が安価となる深夜電力割引時間帯であるか否かを検知し(ステップS4)、深夜電力割引時間帯である場合、温度Aが温度Bに比べて設定温度Y以上高温であり浴槽38に一定以上の湯があることを条件に直ちに熱回収を開始する(ステップS5)。なお、制御装置34は、熱回収開始入力があったことを条件として、深夜電力割引時間帯に熱回収を行う制御手段2を有する。
【0050】
ここで、制御装置34は、深夜電力割引時間帯の開始時刻(以下「N時」ともいう)及び終了時刻が予め設定可能であり、通常23時〜7時が深夜電力割引時間帯として設定される。なお、制御装置34は、ステップS3で直ちに熱回収を開始することなく、N時に熱回収を開始することが設定可能であり、また、ステップS4で外部加熱手段20による湯水の加熱の開始時まで熱回収を開始せず、外部加熱手段20による湯水の加熱の開始時に熱回収の実行を開始することも設定可能である。
【0051】
更に、制御装置34は、深夜電力割引時間の前で熱回収を実行しない待機時間帯Wを設定することができる制御手段3を有し、制御手段3は熱回収開始入力があったとき、かつ温度Aが温度Bに比べて設定温度差Y以上高温であっても待機時間帯Wでは熱回収を開始しない。なお、待機時間帯Wの終了時は常に制御装置34に設定された深夜電力割引時間帯の開始時刻であり、待機時間帯Wを設定する具体的な設定値は、時間長(例えば3時間)となる。
【0052】
また、待機時間帯Wの設定値として設定可能な最長値を予め定めることができ、設定可能な最長値を定めた場合、熱回収開始入力があった時刻からN時までの時間間隔が長く、浴槽38の湯の温度が時間の経過と共に低下して、熱回収できない温度、すなわち温度Aが温度Bに比べて設定温度Y以上高温でない温度となることを回避することができる。
【0053】
制御装置34の制御手段3は、ステップS4で現在時刻が深夜電力割引時間帯でないことを検知した場合、現在時刻が待機時間帯Wであるか否かを検知し(ステップS6)、待機時間帯Wである場合、N時まで熱回収をせずに、N時に熱回収を開始する(ステップS7)。
【0054】
一方、制御装置34の制御手段3は、ステップS6で現在時刻が待機時間帯Wでない(待機時間帯Wの前で、深夜電電力時間帯でない)ことを検知した場合、熱回収開始入力があった時点で直ちに熱回収を開始する(ステップS8)。例えば、朝風呂に入り、深夜電力割引時間帯まで待って熱回収すると、浴槽38の湯が冷めてしまうような場合がこれに相当する。
また、制御装置34は、ステップS5、ステップS7、ステップS8で熱回収を開始する際、外部加熱手段20による湯水の加熱を開始するか否かを予め設定でき、外部加熱手段20による湯水の加熱と同期して熱交換器による湯水の加熱を実行することも可能である。
【0055】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、外部加熱手段は熱源としてヒートポンプ式熱源器を備える代わりに、電熱ヒータや、ガス又は石油を燃料とした熱源装置を用いることができる。また、貯湯タンクは2体のタンクを有することなく1体のタンクとすることもでき、この場合、貯湯タンクは上部の一箇所に設けられた給湯口から給湯設定温度及び湯張り設定温度以上の温度の湯水を出水する。
【符号の説明】
【0056】
10:給湯システム、11:第1のタンク、12:第2のタンク、13:貯湯タンク、14:連結管、15:水道管、16:水道水入口、17:取水口、18:加熱用循環ポンプ、19:ヒートポンプ用熱交換器、20:外部加熱手段、22:熱媒体循環回路、23:ヒートポンプ式熱源器、24:第1の残湯サーミスタ、25:第2の残湯サーミスタ、26:第3の残湯サーミスタ、27:第4の残湯サーミスタ、28:第5の残湯サーミスタ、29:第6の残湯サーミスタ、30:第7の残湯サーミスタ、32:加熱用三方弁、33:バイパス管、34:制御装置、35:貯湯タンク用混合弁、36:出口、37:第1のサーミスタ、38:浴槽、39:浴槽用混合弁、40:入口、42給湯混合弁、43:入口、44:給湯管、45:第1の逆止弁、46:第2の逆止弁、47:第3の逆止弁、48:開閉弁、49:第4の逆止弁、50:浴槽用循環ポンプ、52:湯張り回路、53:浴槽循環回路、54:第2のサーミスタ、55:水位センサ、56:熱交換器、57:浴槽側流路、58:追焚き用出湯口、59:追焚き側入口、60:熱回収側入口、61:熱交換側出口、63:熱交換用三方弁、64:熱交換用循環ポンプ、65:入水口、66:追焚き回路、67:出水口、68:熱回収回路、69:貯湯タンク側流路





【特許請求の範囲】
【請求項1】
水道水を入れる水道水入口を底部に備え、貯留された湯を上部から送り出す貯湯タンクと、
前記貯湯タンクの下部に備えられた出水口に配管接続され、浴槽の湯を循環させて、前記出水口から出水される湯水を加熱する熱交換器と、
前記貯湯タンクの下部に備えられた取水口から取り出された湯水を加熱し、前記貯湯タンクの上部に給湯する外部加熱手段と、
前記熱交換器による湯水の加熱及び前記外部加熱手段による湯水の加熱をそれぞれ制御する制御装置とを有し、
前記貯湯タンクの下部に、前記熱交換器によって加熱された湯が入水する入水口を設けたことを特徴とする給湯システム。
【請求項2】
請求項1記載の給湯システムにおいて、前記貯湯タンクは並列配置された第1、第2のタンクからなり、該第1のタンクの上部が該第2のタンクの下部に連結管を介して連結されて、前記貯湯タンクの上部が前記第2のタンクの上部として、前記貯湯タンクの下部が前記第1のタンクの下部としてそれぞれ機能することを特徴とする給湯システム。
【請求項3】
請求項1及び2のいずれか1項に記載の給湯システムにおいて、前記制御装置は、前記浴槽の湯の温度A及び前記出水口から出水される湯水の温度Bを検知し、温度Aが温度Bより所定温度以上高いことを条件にして、前記熱交換器による湯水の加熱を行う制御手段1を有することを特徴とする循環型給湯システム。
【請求項4】
請求項3記載の給湯システムにおいて、前記制御装置は、熱回収開始入力のあったことを条件として、深夜電力割引時間帯に前記熱交換器による湯水の加熱を開始する制御手段2を有することを特徴とする給湯システム。
【請求項5】
請求項3記載の給湯システムにおいて、前記制御装置は、深夜電力割引時間帯の前に待機時間帯が設定され、該待機時間帯に熱回収開始入力があった場合には、深夜電力割引時間帯まで待って、前記熱交換器による湯水の加熱を行い、前記待機時間帯前に熱回収開始入力があった場合には、熱回収開始入力があった時点で前記熱交換器による湯水の加熱を行う制御手段3を有することを特徴とする給湯システム。
【請求項6】
請求項1及び2のいずれか1項に記載の給湯システムにおいて、前記入水口は、前記取水口に対して前記出水口より近くに配置され、前記外部加熱手段による湯水の加熱と同期して前記熱交換器による湯水の加熱を行い、該熱交換器によって加熱された湯を積極的に前記取水口から取り出すことを特徴とする給湯システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−276220(P2010−276220A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−126742(P2009−126742)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(390002886)株式会社長府製作所 (197)
【Fターム(参考)】