説明

給湯機

【課題】熱媒体と被熱交換媒体が熱交換したときに発生する中温の熱媒体を、高温の熱媒体を溜めるタンクの温度境界層を乱すことなく溜めるとともに、溜めた中温水を有効に利用できるタンク式の給湯機を提供する。
【解決手段】貯湯タンク11に溜まっている高温水HWと浴槽水BWが熱交換器13で熱交換する場合、熱交換で高温水HWの温度が下がって生成される中温水MWをサブタンク12の上部に流入させ、貯湯タンク11にはサブタンク12の下部に溜まる低温水を流入させる。サブタンク12から取り出される中温水は、貯湯タンク11から取り出される高温水HWと混合して高温水HWの温度を低下させ、浴槽30への足し湯や給湯栓31からの給湯などに利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンクに溜まる熱媒体と被熱交換媒体が熱交換する給湯機に関する。
【背景技術】
【0002】
タンクに溜まる熱媒体と被熱交換媒体が熱交換器で熱交換するタンク式の熱交換装置は広く知られ、このような熱交換装置を利用したタンク式の給湯機には、浴槽の追い焚き機能を有するものがある。
浴槽の追い焚き機能を有するタンク式の給湯機は、タンクに貯湯される熱媒体である湯水と、被熱交換媒体となる浴槽の湯を熱交換器で熱交換して浴槽の湯を加熱するように構成される(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−240342号公報
【特許文献2】特開2007−139345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1、2に示される給湯装置は、浴槽の湯(浴槽水)を追い焚きする場合、タンクの頭頂部に溜まっている高温水(高温の熱媒体)をポンプで熱交換器に送り、浴槽水と熱交換して浴槽水を加熱する。そして、高温水は浴槽水と熱交換して温度が低下し、中温水(中温の熱媒体)となってタンクに戻る。このとき、タンク内の温度境界層を乱し、タンク内に、給湯に利用できない中温水が溜まってしまう場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、熱媒体と被熱交換媒体が熱交換したときに発生する中温の熱媒体を、高温の熱媒体を溜めるタンクの温度境界層を乱すことなく溜めるとともに、溜めた中温の熱媒体を有効に利用できるタンク式の給湯機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明の請求項1は、加熱装置で加熱された高温の熱媒体を溜める第1のタンクと、前記高温の熱媒体と被熱交換媒体が熱交換する熱交換器と、前記熱媒体が前記熱交換器から前記第1のタンクに戻る経路に配置される第2のタンクと、を備え、前記第1のタンクの下部および前記第2のタンクの下部に、加熱されていない低温の前記熱媒体が供給され、前記第1のタンクの下部に溜まる前記低温の熱媒体を前記加熱装置で加熱する給湯機とする。そして、前記被熱交換媒体と前記熱媒体が熱交換するときには、前記第1のタンクの上部から前記高温の熱媒体が取り出されて前記熱交換器に送られ、前記被熱交換媒体と熱交換して温度が低下した中温の前記熱媒体が前記第2のタンクの上部に流入するとともに、前記第2のタンクの下部に溜まっている前記低温の熱媒体が前記第1のタンクの下部に流入するように構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、熱媒体と被熱交換媒体が熱交換したときに発生する中温の熱媒体を、高温の熱媒体を溜めるタンクの温度境界層を乱すことなく溜めるとともに、溜めた中温の熱媒体を有効に利用できるタンク式の給湯機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態に係る給湯機の構成を示す図である。
【図2】追い焚き時の高温水、中温水、低温水、浴槽水の流れを示す図である。
【図3】追い焚き時に中温水が貯湯タンクに戻る状態を示す図である。
【図4】足し湯時の高温水、中温水、低温水、浴槽水の流れを示す図である。
【図5】給湯時の高温水、中温水、低温水の流れを示す図である。
【図6】給湯時に高温水と中温水を混合する状態を示す図である。
【図7】給湯時に高温水と低温水を混合する状態を示す図である。
【図8】湯張り時に中温水と低温水を混合する状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、適宜図を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る給湯機1は、第1のタンク(貯湯タンク11)に溜まっている湯水(熱媒体)のうち、上部に溜まっている高温水HW(高温の熱媒体)で、浴槽30の浴槽水BW(被熱交換媒体)を追い焚きする貯湯タンクユニット10と、貯湯タンク11の下部に溜まっている低温水CW(低温の熱媒体)を沸き上げる加熱装置(ヒートポンプユニット20)と、を含んで構成され、制御装置40によって制御される。
さらに、給湯機1は、熱媒体となる湯水を、予め設定される設定温度(給湯設定温度)と一致させて供給先(給湯栓31)に供給可能に構成される。そして、給湯栓31から、給湯設定温度の給湯水を利用者に提供できる。
【0010】
貯湯タンク11の底部はヒートポンプ往き管20aを介してヒートポンプユニット20に接続され、貯湯タンク11の頭頂部はヒートポンプ戻り管20bを介してヒートポンプユニット20と接続される。
ヒートポンプユニット20が駆動すると貯湯タンク11の下部に溜まる低温水CWがヒートポンプ往き管20aを流通してヒートポンプユニット20に取り込まれ、沸き上げられて高温水HWとなる。そして、ヒートポンプユニット20で沸き上げられた高温水HWはヒートポンプ戻り管20bを流通して貯湯タンク11の頭頂部に戻される。
貯湯タンク11の内部に高温水HWと低温水CWが存在する場合、高温水HWと低温水CWの境界部分に温度境界層(以下、境界層BLと称する)が形成され、高温水HWと低温水CWは混合することなく、上部に高温水HW、下部に低温水CWが溜まる状態が維持される。
【0011】
貯湯タンク11には、複数の温度センサ(図1には5つの温度センサ11a〜11e)が頭頂部から底部に向かって配設され、貯湯タンク11に溜まっている湯水(高温水HW、低温水CWおよび境界層BL)の温度を計測する。
制御装置40は、温度センサ11a〜11eが計測する温度に基づいて貯湯タンク11の上下方向の温度分布を取得することができ、必要に応じてヒートポンプユニット20を駆動して下部に溜まっている低温水CWを沸き上げる。
【0012】
温度センサ11aは貯湯タンク11の頭頂部近傍に溜まる湯水の温度を計測するセンサであり、温度センサ11eは貯湯タンク11の底部近傍に溜まる湯水の温度を計測するセンサである。そして、温度センサ11b〜11dは、温度センサ11aと温度センサ11eの間で貯湯タンク11に溜まる湯水の温度を計測するセンサであり、特に、温度センサ11cは、後記する貯湯タンク11の上下方向中央部近傍に溜まる湯水の温度を計測するセンサである。なお、上下方向中央部近傍とは、貯湯タンク11の頭頂部と底部の略中間の位置であって、頭頂部または底部のどちらか一方に極端に近くないと認められる位置であればよく、厳密な上下方向の中間位置を示すものではない。
【0013】
ヒートポンプユニット20は、ヒートポンプ往き管20aを介して取り込まれる低温水CWをポンプ201で水側熱交換器202に送り込み、冷媒で加熱された高温水HWをヒートポンプ戻り管20bを介して貯湯タンク11に戻す水側回路と、圧縮機205で圧縮された高温高圧の冷媒が水側熱交換器202で低温水CWを加熱した後に膨張弁203で膨張し、ファン206によって空気側熱交換器204に取り込まれる外気との熱交換で気化して圧縮機205に戻る冷媒回路と、を含んで構成される。
【0014】
図1に示すように、貯湯タンク11の頭頂部から底部に向かって5つの温度センサ11a〜11eが配置される場合、例えば、制御装置40は、温度センサ11aが計測する温度が所定の温度以下になったときに、温度センサ11aの位置まで低温水CWが溜まったと判定する。
そして、制御装置40は、温度センサ11aの位置まで低温水CWが溜まったときに、ヒートポンプユニット20の圧縮機205を駆動するとともにポンプ201を駆動し、冷媒回路を循環する冷媒で水側回路を流通する低温水CWを沸き上げ、高温水HWとして貯湯タンク11の頭頂部に戻す。なお、温度センサ11aの位置まで低温水CWが溜まったときに沸き上げを開始するのは沸き上げを行なう際の条件の一例であり、他の条件であっても沸き上げを開始する場合がある。
制御装置40は、例えば、温度センサ11eが計測する温度が所定の温度以上になったときに、温度センサ11eの位置まで高温水HWが溜まったと判定し、ヒートポンプユニット20を停止する。
【0015】
本実施形態に係る給湯機1に備わるヒートポンプユニット20は公知の構成のものを利用することができ、その詳細な動作等についての説明は適宜省略する。
なお、貯湯タンク11の下部に溜まっている低温水CWを所定の温度に沸き上げられる加熱装置であればヒートポンプユニット20に限定するものではない。ヒートポンプユニット20に替わる加熱装置として、例えばボイラが考えられる。
【0016】
次に、貯湯タンクユニット10の構成を説明する。
貯湯タンク11の頭頂部は給湯管110を介して給湯栓31と接続され、貯湯タンク11の底部は低温水取込管111を介して第2のタンク(サブタンク12)の底部と接続される。
給湯管110からは高温側入口管113aが分岐して熱交換器13の高温側入口に接続され、熱交換器13の高温側出口には高温側出口管113bが接続される。高温側出口管113bは、低温水取込管111から分岐する低温水分岐管112に、混合弁(第1混合弁14)を介して接続される。また、高温側出口管113bには、貯湯タンク11の上下方向中央部近傍に接続される中温水取出管114が接続され、中温水取出管114は、混合弁(第2混合弁15)を介して、サブタンク12の頭頂部に接続される中温水取込管115と接続される。
【0017】
この構成によると、高温側出口管113b、中温水取出管114、中温水取込管115および低温水取込管111は、貯湯タンク11に溜められる湯水(熱媒体)が熱交換器13で熱交換した後に貯湯タンク11に戻る経路を形成し、中温水取込管115と低温水取込管111の間に配設されるサブタンク12は、湯水(熱媒体)が熱交換器13から貯湯タンク11に戻る経路に配置されることになる。
【0018】
中温水取出管114が接続される位置である上下方向中央部近傍とは、貯湯タンク11の頭頂部と底部の略中間の位置であって、頭頂部または底部のどちらか一方に極端に近くないと認められる位置であればよく、厳密な上下方向の中間位置を示すものではない。
【0019】
なお、貯湯タンク11は、上下が閉じた密閉式のタンクに限定されず、例えば上部が開放した開放式のタンクであってもよい。この場合、貯湯タンク11の上部に給湯管110およびヒートポンプ戻り管20bが接続される。
【0020】
サブタンク12には、複数の温度センサ(図1には、2つの温度センサ12a,12b)が取り付けられてサブタンク12に溜まる湯水の温度を計測し、制御装置40に温度信号を入力する。例えば2つの温度センサ12a,12bの1つ(温度センサ12a)がサブタンク12の頭頂部近傍に配設され、他の1つ(温度センサ12b)がサブタンク12の底部近傍に配設される構成とすれば、制御装置40は、温度センサ12a,12bが計測する湯水の温度によって、サブタンク12に溜まる湯水の温度および上下方向の温度分布を取得できる。
【0021】
さらに、貯湯タンク11とサブタンク12の底部に接続される低温水取込管111には、水道などの給水源50から加熱されていない低温水CWを供給するための給水管119が接続される。給水管119には減圧弁50aが備わり、給水源50から供給される高圧の低温水CWが減圧弁50aで減圧され、給水管119、低温水取込管111を介して貯湯タンク11およびサブタンク12の底部に供給されるように構成される。
【0022】
浴槽30は、熱交換器13の低温側出口と低温側出口管116aを介して接続され、熱交換器13の低温側入口と低温側入口管116bを介して接続される。また、低温側入口管116bと給湯管110は足し湯管117で接続され、足し湯管117には、混合弁(第3混合弁16)を介して低温水分岐管112が接続される。さらに、足し湯管117には第3混合弁16と低温側入口管116bの間に開閉弁18が備わり、開閉弁18には、湯水の流れを第3混合弁16から浴槽30に向かう方向に規制する図示しない逆止弁が備わっている。
また、低温水分岐管112からは、第1混合弁14と第3混合弁16の間で給湯接続管118が分岐し、給湯接続管118は混合弁(第4混合弁17)を介して給湯管110に接続される。
【0023】
給湯管110と足し湯管117の分岐点は、給湯管110と高温側入口管113aの分岐点と給湯栓31の間に形成され、第4混合弁17は、給湯管110と足し湯管117の分岐点と給湯栓31の間に配設される。
【0024】
高温側出口管113bには、貯湯タンク11に溜まる湯水を、貯湯タンク11、サブタンク12、熱交換器13の間で循環させるポンプ(高温側ポンプ13a)が備わり、低温側入口管116bには、浴槽水BWを浴槽30と熱交換器13の間で循環させるポンプ(低温側ポンプ13b)が備わる。そして、高温側出口管113bには、高温水HWの流れを熱交換器13から中温水取出管114に向かう方向に規制する逆止弁19が備わっている。
【0025】
また、給湯機1には必要に応じて複数の温度センサが配設される。温度センサS1は給水管119に備わって給水源50から供給される低温水CWの温度を計測し、温度センサS2は給湯管110に備わって、給湯栓31から利用者に提供される給湯水の温度を計測する。
温度センサS3および温度センサS4は高温側出口管113bに備わって熱交換器13で熱交換した後の高温水HWの温度を計測する。温度センサS3は、高温側出口管113bと中温水取出管114の分岐点と第1混合弁14の間に備わり、温度センサS4は、高温側出口管113bと中温水取出管114の分岐点と熱交換器13の間に備わっている。
温度センサS5は低温側出口管116aに備わって熱交換器13から浴槽30に戻る浴槽水BWの温度を計測し、温度センサS6は低温側入口管116bに備わって浴槽30から取り出される浴槽水BWの温度を計測する。
【0026】
以上のように、貯湯タンクユニット10は構成され、制御装置40によって制御される。具体的に制御装置40は、4つの混合弁(第1混合弁14〜第4混合弁17)、開閉弁18、高温側ポンプ13a、低温側ポンプ13bを制御して貯湯タンクユニット10を流れる水の流れを制御し、給湯機1の動作を制御する。
【0027】
給湯機1の動作として、浴槽30に溜まる浴槽水BWの温度を高める「追い焚き」と、浴槽30に浴槽水BWを補給する「足し湯」と、給湯水を給湯栓31から利用者に提供する「給湯」と、空の浴槽30に湯水を溜める「湯張り」がある。以下、各動作について説明する。
【0028】
《追い焚き》
図2に示すように、追い焚きは、浴槽30に溜まっている浴槽水BWを予め設定される温度(追い焚き温度)まで加熱する動作である。追い焚き温度は、例えば制御装置40に備わる図示しない温度設定部で利用者が設定する温度である。
浴槽30の浴槽水BWを追い焚きする場合、制御装置40は、中温水取出管114の貯湯タンク11側を遮断し中温水取出管114の高温側出口管113bと中温水取込管115が連通するように第2混合弁15を設定し、さらに、高温側出口管113bおよび低温水分岐管112を遮断するように第1混合弁14を設定する。また、給湯管110を遮断するように第4混合弁17を設定し、給湯管110から足し湯管117へ高温水HWが流入しないように第3混合弁16を設定する。そして、開閉弁18を閉弁して高温側ポンプ13aおよび低温側ポンプ13bを駆動する。
【0029】
図2に示すように、浴槽水BWは低温側入口管116bを流通して熱交換器13に取り込まれ、低温側出口管116aを通流して浴槽30に戻る。
また、貯湯タンク11の頭頂部に溜まっている高温水HWは、給湯管110から高温側入口管113aに流れ込んで熱交換器13に取り込まれる。
【0030】
熱交換器13では、浴槽30から取り込まれる浴槽水BWと貯湯タンク11の頭頂部から取り出される高温水HWが熱交換し、浴槽水BWが加熱される。
一方、高温水HWは温度が低下して中温水MW(中温の熱媒体)となって、高温側出口管113b、中温水取出管114、中温水取込管115を流通してサブタンク12の頭頂部に流れ込む。例えば、追い焚き温度が40℃で、高温水HWの温度が80℃のとき、高温水HWは浴槽水BWと熱交換して、例えば42℃まで温度低下し、42℃の中温水MWとなってサブタンク12の頭頂部に流れ込む。
また、貯湯タンク11の底部にはサブタンク12の底部に溜まる低温水CW(例えば10℃)が低温水取込管111を流通して流れ込む。この構成によって、貯湯タンク11は上部に高温水(例えば80℃)、下部に低温水(例えば10℃)が溜まる。
また、浴槽水BWは熱交換器13で高温水HWと熱交換して40℃まで加熱され、低温側出口管116aを流通して浴槽30に戻る。
【0031】
なお、サブタンク12の上部に中温水MWが溜まり下部に低温水CWが溜まる場合、その境界には図示しない境界層が形成されて、中温水MWと低温水CWの混合が防止される。
【0032】
制御装置40は、温度センサS6が計測する、低温側入口管116bにおける浴槽水BWの温度が追い焚き温度(例えば40℃)になったときに、高温側ポンプ13aおよび低温側ポンプ13bを停止して追い焚きを終了する。
【0033】
貯湯タンク11の下部には、サブタンク12の底部から流れ込んだ低温水CW(例えば10℃)が溜まり、中温水MW(例えば42℃)が下部に溜まることが回避される。
一般的にヒートポンプは、沸き上げる低温水の温度が低いほど効率が良い。そして、本実施形態の給湯機1は、貯湯タンク11の下部に低温の水(低温水CW)が溜まり、ヒートポンプユニット20に低温水CWを取り込んで沸き上げることから、ヒートポンプユニット20で低温水CWを沸き上げるときの効率を高く維持することができる。
また、貯湯タンク11に中温水MWが流入しないため、貯湯タンク11に形成される境界層BLが乱れることがなく、貯湯タンク11内に中温水が溜まることを防止できる。
【0034】
サブタンク12の容量は、例えば、数回の追い焚きで生成される中温水MWを溜められる容量が好ましい。例えば、貯湯タンク11に溜まっている高温水HWの温度が80℃、浴槽30の容量が200L、40℃の浴槽水BWを42℃に追い焚きする場合、1回の追い焚きに必要となるサブタンク12の容量は次式(1)で示される。

サブタンクの容量=(42−40)×200/(80−40)=10L・・・(1)

したがって、例えば5回の追い焚きに必要となるサブタンク12の容量は50L(10L×5)になる。
【0035】
従来、サブタンク12は備わらず、高温水HW(例えば80℃)が熱交換器13で浴槽水BWと熱交換して温度低下した中温水MW(例えば42℃)が貯湯タンク11の下部に溜まるように構成される。この場合、ヒートポンプユニット20は、中温水MW(例えば42℃)を高温水HW(例えば80℃)に沸き上げるため効率が低下する。
【0036】
本実施形態においては、図2に示すようにサブタンク12を備え、高温水HWが温度低下した中温水MWをサブタンク12に溜めるとともに、サブタンク12に溜まっている低温水CW(例えば10℃)が貯湯タンク11の底部に流れ込む構成とした。この構成によって、貯湯タンク11の下部に低温水CW(例えば10℃)を溜めることができ、貯湯タンク11から低温水CWをヒートポンプユニット20に取り込むことができる。そして、ヒートポンプユニット20で低温水CWを沸き上げるときの効率を高く維持することができる。
【0037】
なお、図3に示すように、サブタンク12が中温水MWで満たされた場合に追い焚きするとき、制御装置40は、中温水取込管115を遮断して中温水取出管114を開通するように第2混合弁15を設定変更して追い焚きを実行する。熱交換器13で浴槽水BWと熱交換した高温水HWの温度が低下して生成される中温水MWは、高温側出口管113b、中温水取出管114を流通して貯湯タンク11の上下方向中央部近傍に流れ込む。この構成によって、中温水MWが貯湯タンク11の底部に流れ込むことを回避できる。
【0038】
このように、第2混合弁15は、貯湯タンク11とサブタンク12の一方を選択して高温側出口管113bを流通する中温水MWを流入させることができる選択手段として機能する。
【0039】
下部に低温水CWが溜まっている貯湯タンク11の底部に中温水MWが流れ込むと、貯湯タンク11内に対流が発生して貯湯タンク11内の高温水HW、中温水MW、低温水CWが混合し、高温水HWを取り出すことができなくなる。したがって、サブタンク12が中温水MWで満たされた状態のときは、熱交換器13で高温水HWの温度が低下して生成される中温水MWを貯湯タンク11の上下方向中央部近傍に戻し、貯湯タンク11内に対流が発生することを防止する。
【0040】
なお、制御装置40は、サブタンク12の底部近傍に取り付けられる温度センサ12bが計測する温度が中温水MWを示す温度になったとき、サブタンク12が中温水MWで満たされたことを判定できる。
【0041】
また、制御装置40は、温度センサ11eの計測値が温度センサ12bの計測値より低い場合や、温度センサ11cの計測値が温度センサS4の計測値と等しい場合に、図3に示すように熱交換器13で生成される中温水MWを中温水取出管114を流通させて、貯湯タンク11の上下方向中央部近傍に戻すように構成してもよい。
温度センサ11cは、貯湯タンク11に中温水取出管114が接続される位置(上下方向中央部近傍)における湯水の温度を計測する温度センサである。
【0042】
温度センサ11eの計測値が温度センサ12bの計測値より低い場合、サブタンク12の底部に溜まる低温水CWの温度が貯湯タンク11の底部に溜まる低温水CWの温度より高いことになる。したがって、サブタンク12の底部に溜まる低温水CWを貯湯タンク11の底部に戻すと、貯湯タンク11の内部に対流が発生する。このような対流の発生を防止するため、温度センサ11eの計測値が温度センサ12bの計測値より低い場合は、高温側出口管113bを流通する中温水MWを貯湯タンク11の上下方向中央部近傍に戻す。
【0043】
また、温度センサ11cの計測値が温度センサS4の計測値と等しい場合、貯湯タンク11の上下方向中央部近傍に溜まる湯水の温度と高温側出口管113bを流通する中温水MWの温度が等しいことになり、高温側出口管113bを流通する中温水MWを貯湯タンク11の上下方向中央部近傍に戻しても貯湯タンク11に対流が発生しない。したがって、高温側出口管113bを流通する中温水MWを貯湯タンク11の上下方向中央部近傍に戻すことができる。そして、サブタンク12における中温水MWの増加を抑えることができる。
【0044】
また、温度センサ11cの計測値が温度センサS4の計測値以下のときに、高温側出口管113bを流通する中温水MWを中温水取出管114を流通させて貯湯タンク11の上下方向中央部近傍に流入させ、温度センサ11cの計測値が温度センサS4の計測値より高いときに、高温側出口管113bを流通する中温水MWを中温水取込管115を流通させてサブタンク12の上部に流入させるように、制御装置40が第2混合弁15を制御する構成であってもよい。
【0045】
温度センサ11cの計測値が温度センサS4の計測値以下のとき、貯湯タンク11の上下方向中央部近傍に溜まっている湯水の温度が高温側出口管113bを流通する中温水MWの温度以下であり、中温水MWを中温水取出管114を流通させて貯湯タンク11の上下方向中央部近傍に流入させても温度の高い中温水MWが上昇し貯湯タンク11の上部に溜まる。
そして、サブタンク12における中温水MWの増加を抑えることができる。
【0046】
一方、温度センサ11cの計測値が温度センサS4の計測値より高いとき、貯湯タンク11の上下方向中央部近傍に溜まっている湯水の温度が高温側出口管113bを流通する中温水MWの温度より高い。したがって、中温水MWを貯湯タンク11の上下方向中央部近傍に流入させると中温水MWが沈降し、貯湯タンク11の下部に溜まる。
そこで温度センサ11cの計測値が温度センサS4の計測値より高いとき、制御装置40は、中温水取出管114の貯湯タンク11側を遮断するとともに中温水取込管115を開放するように第2混合弁15を設定し、中温水MWをサブタンク12の頭頂部に流入させる。
【0047】
このような構成としても、貯湯タンク11には上部に高温水HWが溜まり、下部に低温水CWが溜まる状態を維持することができ、ヒートポンプユニット20の効率を向上させることができる。
【0048】
なお、サブタンク12の底部には給水管119、低温水取込管111を介し、所定の圧力で給水源50から低温水CWが供給される構成である。したがって、高温側ポンプ13aの吐出圧は、減圧弁50aで減圧された給水源50の圧力より大きいことが好ましい。この構成によって、サブタンク12の底部に供給される低温水CWに打ち勝って、サブタンク12の頭頂部に中温水MWを流入させることができる。
【0049】
《足し湯》
予め設定される温度(足し湯温度)の浴槽水BWを浴槽30に給湯(補給)する足し湯の場合、本実施形態に係る給湯機1は、貯湯タンク11の頭頂部から取り出した高温水HWに、サブタンク12の頭頂部から取り出した中温水MWを混合して足し湯温度の浴槽水BWとし、浴槽30に給湯する。足し湯温度は、例えば制御装置40に備わる図示しない温度設定部で利用者が設定する温度である。
浴槽30に足し湯する場合、制御装置40は、図4に示すように、給湯管110および給湯接続管118を遮断するように第4混合弁17を設定し、さらに、足し湯管117を開通して低温水分岐管112が足し湯管117と連通するように第3混合弁16を設定する。そして開閉弁18を開弁する。また、中温水取出管114の貯湯タンク11側を遮断するとともに中温水取出管114の高温側出口管113b側と中温水取込管115が連通するように第2混合弁15を設定する。
さらに、低温水分岐管112の低温水取込管111側を遮断するとともに低温水分岐管112の第3混合弁16側と高温側出口管113bが連通するように第1混合弁14を設定する。
【0050】
図4に示すように、貯湯タンク11の底部に給水源50の圧力で低温水CWが供給されて頭頂部の高温水HWが給湯管110に押し出され、給湯管110、足し湯管117を流通して第3混合弁16に到達する。また、サブタンク12の底部に給水源50の圧力で低温水CWが供給されて頭頂部の中温水MWが中温水取込管115に押し出されて中温水取出管114、低温水分岐管112を流通し、第3混合弁16に到達する。
そして、第3混合弁16で低温水分岐管112を流通する中温水MWと足し湯管117を流通する高温水HWが混合して浴槽水BWとなり、浴槽30に給湯される。
【0051】
このとき制御装置40は、温度センサS6で低温側入口管116bを流通する浴槽水BWの温度を計測する。そして、制御装置40は第3混合弁16を制御して、低温側入口管116bを流通する浴槽水BWの温度が予め設定される足し湯温度と一致するように低温水分岐管112または足し湯管117の開度を調節する。したがって、第3混合弁16は、低温水分岐管112または足し湯管117の開度を調節可能な流量調節弁であることが好ましい。
【0052】
このように、本実施形態に係る給湯機1は、中温水MWとの混合によって温度が低下する高温水HWを浴槽水BWとして浴槽30に供給する。
この構成によると、サブタンク12に溜まっている中温水MWを有効に利用して消費することができる。
【0053】
なお、サブタンク12が低温水CWで満たされている場合、貯湯タンク11に溜まっている湯水を利用することもできる。この場合、制御装置40は、中温水取込管115を遮断して中温水取出管114が開通するように第2混合弁15を設定する。貯湯タンク11の上下方向中央部近傍に溜まる湯水が中温水取出管114、低温水分岐管112を流通して第3混合弁16に到達し、高温水HWと混合する。
このとき、貯湯タンク11の上下方向中央部近傍に境界層BLが形成されていると、境界層BLの湯水と高温水HWが混合して浴槽30に足し湯される。さらにこの状態から第3混合弁16で足し湯管117の給湯管110側を遮断すると、境界層BLの湯水のみを浴槽30に足し湯できる。
【0054】
また、サブタンク12に溜まる中温水MWのみを浴槽30に足し湯する場合、制御装置40は、図4に示す状態から第3混合弁16で足し湯管117の給湯管110側を遮断し、貯湯タンク11に溜まる高温水HWのみを浴槽30に足し湯する場合は、図4に示す状態から第3混合弁16で低温水分岐管112を遮断する。
【0055】
また、制御装置40が、サブタンク12に溜まる中温水MWのみを浴槽30に足し湯する状態から低温水分岐管112の低温水取込管111側を開放するように第1混合弁14を設定すると、給水源50から供給される低温水CWとサブタンク12に溜まっている中温水MWを混合して浴槽30に足し湯できる。
さらに、この状態から、制御装置40が第2混合弁15で中温水取込管115を遮断すると、給水源50から供給される低温水CWのみを浴槽30に足し湯できる。
【0056】
また、制御装置40が、サブタンク12に溜まる中温水MWのみを浴槽30に足し湯する状態から、中温水取出管114の貯湯タンク11側を開放するように第2混合弁15を設定すると、サブタンク12に溜まる中温水MWと貯湯タンク11の上下方向中央部近傍に形成される境界層BLの湯水を混合して浴槽30に足し湯できる。
また、制御装置40が、貯湯タンク11の上下方向中央部近傍に形成される境界層BLの湯水のみを浴槽30に足し湯する状態から、低温水分岐管112の低温水取込管111側を開放するように第1混合弁14を設定すると、給水源50から供給される低温水CWと境界層BLの湯水を混合して浴槽30に足し湯できる。
【0057】
このように、制御装置40が、第1混合弁14、第2混合弁15、第3混合弁16を適宜設定することで、貯湯タンク11に溜まる高温水HW、サブタンク12に溜まる中温水MW、給水源50から供給される低温水CW、およびこれらを適宜混合して浴槽30に足し湯できる。
【0058】
《給湯》
給湯は、貯湯タンク11に溜められる湯水の温度を、予め設定される温度(給湯設定温度)と一致させ、給湯設定温度の給湯水として給湯栓31から利用者に提供する動作である。給湯設定温度は、例えば制御装置40に備わる図示しない温度設定部で利用者が設定する温度である。
給湯設定温度の給湯水を給湯栓31から利用者に提供する場合、本実施形態に係る給湯機1は、給水源50から供給される低温水CWにサブタンク12に溜まっている中温水MWを混合して給湯栓31から吐出する。
【0059】
例えば、利用者が給湯栓31を開いたとき、制御装置40は、図5に示すように、低温水分岐管112を開通するとともに高温側出口管113bが低温水分岐管112と連通するように第1混合弁14を設定し、中温水取出管114の貯湯タンク11側を遮断するとともに中温水取出管114の高温側出口管113b側と中温水取込管115が連通するように第2混合弁15を設定する。
また、給湯管110の貯湯タンク11側を遮断するとともに給湯管110の給湯栓31側と給湯接続管118が連通するように第4混合弁17を設定し、足し湯管117と低温水分岐管112を遮断するように第3混合弁16を設定する。
例えば、給湯栓31が開いたことを検出する図示しないセンサが備わる構成とすれば、制御装置40は、当該センサによって給湯栓31が開いたことを検出できる。
【0060】
図5に示すように、給水源50から供給される低温水CWは低温水取込管111、低温水分岐管112を流通して第1混合弁14に到達する。また、サブタンク12の底部に給水源50の圧力で低温水CWが供給されて頭頂部の中温水MWが中温水取込管115に押し出されて中温水取出管114を流通し、第1混合弁14に到達する。そして、低温水CWと中温水MWが混合し、給湯栓31から利用者に給湯される給湯水(以下、給湯水SW)となって低温水分岐管112、給湯接続管118、給湯管110を流通して給湯栓31に到達する。
【0061】
このとき制御装置40は、温度センサS2で給湯管110を流通する給湯水SWの温度を計測する。そして、制御装置40は第1混合弁14を制御して、給湯管110を流通する給湯水SWの温度が給湯設定温度と一致するように中温水取込管115または低温水分岐管112の開度を調節する。したがって、第1混合弁14は、中温水取込管115または低温水分岐管112の開度を調節可能な流量調節弁であることが好ましい。
【0062】
このように、本実施形態に係る給湯機1は、中温水MWとの混合によって温度が上昇する低温水CWを給湯水SWとして給湯栓31から利用者に提供する。
この構成によると、サブタンク12に溜まっている中温水MWを有効に利用して消費することができる。
【0063】
なお、サブタンク12が低温水CWで満たされている場合、貯湯タンク11に溜まっている中温水MW(境界層BLの湯水)を利用することもできる。この場合、制御装置40は、図5に示す状態から、中温水取込管115を遮断して中温水取出管114を開通するように第2混合弁15を設定する。貯湯タンク11の上下方向中央部近傍に溜まる中温水MW(境界層BLの湯水)が中温水取出管114を流通して第1混合弁14に到達し、低温水CWと混合する。
【0064】
また、給湯設定温度が温度センサS3の計測値より高い場合、中温水MWと低温水CWを混合すると、給湯設定温度の給湯水SWを利用者に提供することができない。このような場合、貯湯タンク11の頭頂部に溜まっている高温水HWを中温水MWと混合して給湯水SWを生成する構成も可能である。このとき、制御装置40は、図5に示す状態から、低温水分岐管112の低温水取込管111側を遮断するように第1混合弁14を設定する。さらに、給湯管110が開通するように第4混合弁17を設定する。
【0065】
図6に示すように、貯湯タンク11の底部に給水源50の圧力で低温水CWが供給されて頭頂部の高温水HWが給湯管110に押し出され、給湯管110を流通して第4混合弁17に到達する。そして、給湯接続管118を流通する中温水MWと混合して給湯水SWとなって、給湯栓31から利用者に給湯される。
このとき制御装置40は、温度センサS2で給湯管110を流通する給湯水SWの温度を計測する。そして、制御装置40は第4混合弁17を制御して、給湯管110を流通する給湯水SWの温度が給湯設定温度と一致するように、給湯管110または給湯接続管118の開度を調節する。したがって、第4混合弁17は、給湯管110または給湯接続管118の開度を調節可能な流量調節弁であることが好ましい。
【0066】
また、例えば、サブタンク12および貯湯タンク11に中温水MWが存在しない場合、貯湯タンク11の頭頂部に溜まっている高温水HWを、供給源50から供給される低温水CWと混合して給湯水SWを生成する構成も可能である。
制御装置40は、例えば、温度センサS3の計測値と温度センサS1の計測値が等しいとき、サブタンク12および貯湯タンク11に中温水MWが存在しないと判定する。
【0067】
このとき、制御装置40は、図6に示す状態から、中温水取込管115および中温水取出管114を遮断するように第2混合弁15を設定するとともに、低温水分岐管112の低温水取込管111側を開放するように第1混合弁14を設定する。
【0068】
図7に示すように、貯湯タンク11の底部に給水源50の圧力で低温水CWが供給されて頭頂部の高温水HWが給湯管110に押し出され、給湯管110を流通して第4混合弁17に到達する。また、給水源50から供給される低温水CWは、低温水取込管111、低温水分岐管112、給湯接続管118を流通して第4混合弁17に到達する。そして、高温水HWと低温水CWが混合して給湯水SWとなり、給湯栓31から利用者に給湯される。
【0069】
このような設定によって、サブタンク12および貯湯タンク11に中温水MWが存在しない場合であっても、給湯設定温度の給湯水SWを利用者に提供できる。
【0070】
なお、制御装置40が、第1混合弁14、第2混合弁15、第3混合弁16、および第4混合弁17を適宜設定することで、足し湯の場合と同様に、貯湯タンク11に溜まる高温水HW、サブタンク12に溜まる中温水MW、給水源50から供給される低温水CW、およびこれらを適宜混合して給湯栓31から利用者に給湯できる。
【0071】
例えば、サブタンク12に溜まる中温水MWのみを給湯栓31から利用者に給湯する場合、制御装置40は、図5に示す状態から低温水分岐管112の低温水取込管111側を遮断するように第1混合弁14を設定する。
さらに、制御装置40は、サブタンク12に溜まる中温水MWのみを給湯栓31から利用者に給湯する状態から、中温水取込管115を遮断して中温水取出管114の貯湯タンク側を開放するように第2混合弁15を設定して、貯湯タンク11の上下方向中央部近傍に形成される境界層BLの湯水のみを給湯栓31から利用者に給湯できる。
【0072】
また、サブタンク12に溜まる中温水MWと貯湯タンク11の上下方向中央部近傍に形成される境界層BLの湯水を混合して給湯栓31から利用者に給湯する場合、制御装置40は、中温水MWのみを給湯栓31から利用者に給湯する状態から、中温水取出管114の貯湯タンク11側を開放するように第2混合弁15を設定する。
【0073】
また、制御装置40は、図6に示す状態から中温水取込管115を遮断して中温水取出管114の貯湯タンク11側を開放するように第2混合弁15を設定し、貯湯タンク11に溜まる高温水HWと貯湯タンク11の上下方向中央部近傍に形成される境界層BLの湯水を混合して給湯栓31から利用者に給湯する。
また、制御装置40は、図6に示す状態から給湯接続管118を遮断するように第4混合弁17を設定して貯湯タンク11に溜まる高温水HWのみを給湯栓31から利用者に給湯する。
【0074】
さらに、制御装置40は、図7に示す状態から給湯管110の貯湯タンク11側を遮断するように第4混合弁17を設定して、給水源50から供給される低温水CWのみを給湯栓31から利用者に給湯する。
【0075】
《湯張り》
例えば空の浴槽30に、設定された温度(湯張り温度)の浴槽水BWを溜める湯張りの場合、制御装置40は、図4に示す足し湯の場合と同じ状態に給湯機1を設定する。湯張り温度は、例えば制御装置40に備わる図示しない温度設定部で利用者が設定する温度である。
しかしながら、湯張りの場合は設定された湯張り温度が中温水MWの温度より低い場合がある。この場合、サブタンク12の頭頂部から取り出される中温水MWと給水源50から供給される低温水CWを混合して浴槽30に給湯する。
【0076】
制御装置40は、図4に示す足し湯の状態から、足し湯管117の給湯管110側を遮断するように第3混合弁16を設定し、さらに、低温水分岐管112の低温水取込管111側が開放するように第1混合弁14を設定する。
図8に示すように、給水源50から供給される低温水CWは低温水取込管111、低温水分岐管112を流通して第1混合弁14に到達し、サブタンク12の頭頂部から取り出されて中温水取込管115、中温水取出管114、高温側出口管113bを流通する中温水MWと混合して浴槽水BWになる。その後、低温水分岐管112、足し湯管117、低温側入口管116bを流通して浴槽30に給湯される。
【0077】
このとき制御装置40は、温度センサS6で低温側入口管116bを流通する浴槽水BWの温度を計測する。そして、制御装置40は第1混合弁14を制御して、低温側入口管116bを流通する浴槽水BWの温度が設定された湯張り温度と一致するように低温水分岐管112の開度を調節する。したがって、第1混合弁14は、低温水分岐管112の開度を調節可能な流量調節弁であることが好ましい。
【0078】
また、サブタンク12が低温水CWで満たされている場合、貯湯タンク11に溜まっている中温水MWを利用することもできる。この場合、制御装置40は、図8に示す状態から、中温水取込管115を遮断して中温水取出管114を開通するように第2混合弁15を設定する。貯湯タンク11の上下方向中央部近傍に溜まる中温水MW(境界層BLの湯水)が中温水取出管114、高温側出口管113bを流通して第1混合弁14に到達し、低温水CWと混合する。
【0079】
以上のように、本実施形態に係る給湯機1(図1参照)は、熱交換器13(図1参照)で浴槽水BWと熱交換して高温水HWの温度が低下した中温水MWを溜めるサブタンク12(図1参照)を備える。そして、浴槽水BWを追い焚きするとき、熱交換器13で生成される中温水MWをサブタンク12に溜めるとともに、サブタンク12に溜まっている低温水CWを貯湯タンク11(図1参照)の底部に流入させる。
【0080】
この構成によって、貯湯タンク11(第1のタンク)に溜まっている高温水HW(高温の熱媒体)と浴槽30の浴槽水BW(被熱交換媒体)が熱交換したときに生じる中温水MW(中温の熱媒体)の熱を有効に利用することができる。
具体的には、サブタンク12に溜まっている中温水MWを、足し湯、給湯、湯張りのときに利用して消費することができる。例えば、足し湯のとき、設定温度(足し湯温度)が中温水MWより少し高い温度であれば、サブタンク12から取り出す中温水MWに少量の高温水HWを混合することによって足し湯温度の浴槽水BWを得ることができる。したがって、高温水HWの消費を抑えることができる。
【0081】
また、貯湯タンク11の下部に中温水MWが溜まることがなくなり、貯湯タンク11の下部に低温水CWを溜めることができ、ヒートポンプユニット20に低温水CWを取り込める。したがって、ヒートポンプユニット20で効率よく低温水CWを沸き上げることができる。
【0082】
なお、本実施形態に係る給湯機1(図1参照)に備わる混合弁(第1混合弁14〜第4混合弁17)は、それぞれ3つの開閉弁(流量調節弁)に替えることも可能である。
例えば、第1混合弁14(図1参照)に替えて、低温水分岐管112の低温水取込管111側の開度を調節する流量調節弁と、低温水分岐管112の第3混合弁16側の開度を調節する流量調節弁と、高温側出口管113bの開度を調節する流量調節弁の3つの流量調節弁を備える構成としても、第1混合弁14を備える場合と同様の効果を得ることができる。
【0083】
また、本実施形態は、貯湯タンク11(図1参照)に溜められる湯水を熱媒体とする給湯機1(図1参照)に本発明を適用した例を示したが、湯水以外の冷媒をタンクに溜めて被熱交換媒体と熱交換する給湯機にも本発明を適用できる。
【0084】
また、本実施形態に係る給湯機1(図1参照)は、ヒートポンプユニット20(図1参照)で低温水CWを加熱する構成であるが、例えば電気で駆動するヒータで低温水CWを加熱する給湯機(電気温水器等)にも本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0085】
1 給湯機
10 貯湯タンクユニット
11 貯湯タンク(第1のタンク)
12 サブタンク(第2のタンク)
13 熱交換器
15 第2混合弁(選択手段)
20 ヒートポンプユニット(加熱装置)
30 浴槽
31 給湯栓(供給先)
40 制御装置
50 給水源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱装置で加熱された高温の熱媒体を溜める第1のタンクと、
前記高温の熱媒体と被熱交換媒体が熱交換する熱交換器と、
前記熱媒体が前記熱交換器から前記第1のタンクに戻る経路に配置される第2のタンクと、を備え、
前記第1のタンクの下部および前記第2のタンクの下部に、加熱されていない低温の前記熱媒体が供給され、前記第1のタンクの下部に溜まる前記低温の熱媒体を前記加熱装置で加熱する給湯機であって、
前記被熱交換媒体と前記熱媒体が熱交換するときには、
前記第1のタンクの上部から前記高温の熱媒体が取り出されて前記熱交換器に送られ、前記被熱交換媒体と熱交換して温度が低下した中温の前記熱媒体が前記第2のタンクの上部に流入するとともに、前記第2のタンクの下部に溜まっている前記低温の熱媒体が前記第1のタンクの下部に流入するように構成されることを特徴とする給湯機。
【請求項2】
前記中温の熱媒体が前記第1のタンクの上下方向中央部近傍に流入するように構成されて前記第1のタンクと前記第2のタンクの一方を選択して前記中温の熱媒体を流入させる選択手段が備わり、
前記第1のタンクの前記上下方向中央部近傍に溜まっている前記熱媒体の温度が前記中温の熱媒体の温度より高いとき、前記選択手段が前記中温の熱媒体を前記第2のタンクに流入させ、
前記第1のタンクの前記上下方向中央部近傍に溜まっている前記熱媒体の温度が前記中温の熱媒体の温度以下のとき、前記選択手段が前記中温の熱媒体を前記第1のタンクに流入させることを特徴とする請求項1に記載の給湯機。
【請求項3】
前記熱媒体の温度を予め設定される設定温度と一致させて供給先に供給する場合に前記設定温度が前記高温の熱媒体の温度より低いとき、
前記中温の熱媒体を前記第2のタンクの上部から取り出し、前記第1のタンクの上部から取り出される前記高温の熱媒体と混合して前記熱媒体の温度を前記設定温度と一致させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の給湯機。
【請求項4】
前記設定温度が前記中温の熱媒体の温度より低いとき、
前記低温の熱媒体を、前記第2のタンクの上部から取り出される前記中温の熱媒体と混合して前記熱媒体の温度を前記設定温度と一致させることを特徴とする請求項3に記載の給湯機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−242088(P2011−242088A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116545(P2010−116545)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】