絶縁診断装置
【課題】診断中に、検出部と制御部との間の配線が切断する絶縁診断装置を提供する。
【解決手段】診断対象の電気機器から電磁波を検出する部分放電検出センサと、部分放電検出センサが検出した信号を信号処理して、信号処理された信号から部分放電を含む信号を検出する信号処理部と、少なくとも部分放電を含む信号を無線で送信する第1の無線通信部と、を有する部分放電検出部と、部分放電検出部から送信される信号を受信する第2の無線通信部を有する信号制御部と、を有する絶縁診断装置が提供される。
【解決手段】診断対象の電気機器から電磁波を検出する部分放電検出センサと、部分放電検出センサが検出した信号を信号処理して、信号処理された信号から部分放電を含む信号を検出する信号処理部と、少なくとも部分放電を含む信号を無線で送信する第1の無線通信部と、を有する部分放電検出部と、部分放電検出部から送信される信号を受信する第2の無線通信部を有する信号制御部と、を有する絶縁診断装置が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変圧器、及び遮断器などの高圧電力、及び特別高圧電力用電気機器、又は特別高圧用電力ケーブルの絶縁状態を監視する絶縁診断装置および絶縁診断方法に関し、特に、機器内部の絶縁劣化時などに発生する部分放電により生じる電磁波を検出することによって、絶縁診断を行う絶縁診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
遮断器、及び変圧器などの高圧(交流にあって600ボルトを超え、7000ボルト以下のもの)、及び特別高圧(交流にあって7000ボルトを超えるもの)用電気機器において、六フッ化硫黄(SF6)ガスが絶縁媒体として多く使用される。これは、SF6ガスが、大気圧で空気の2.5倍程度の優れた絶縁性能を有するためである。例えば、ガス遮断器においては、空気の代わりにSF6ガスをアーク消弧用に使用することにより、小型化、及び消音化が実現される。また、ガス変圧器においては、絶縁油の代わりにSF6ガスを絶縁媒体として使用することにより、安全性、及び保守性が向上する。さらに、遮断器ガス絶縁開閉装置(GIS:Gas Insulated Switch−gear)では、遮断器、断路器、接地開閉器、避雷器、及び検電装置などの電気機器を、SF6ガスが充填された容器内に配置することにより、受変電設備を小型化し、保守性、安全性を向上させることが可能になる。
【0003】
しかしながら、電気機器の高電圧化、コンパクト化が要求される中、これら機器の高電界化が進み、要求される絶縁性能は、厳しくなっている。また、使用を開始してから長い年月を経た機器も増加しており、経年劣化による絶縁性能の低下も懸念される。このため、機器の絶縁破壊を未然に防ぐために、絶縁劣化を早期に検出し評価することを目的として、絶縁破壊の前駆現象の1つである部分放電信号の測定が行われる。部分放電信号の測定方法には、絶縁劣化時に生じる部分放電により二次的に発生する電磁波を検出することにより、運転中の電気機器の内部に絶縁劣化が発生しているか否かを診断する絶縁診断装置、及び絶縁診断方法が提案されている。
【0004】
このような絶縁診断装置においては、部分放電により発生する電磁波は、部分放電検出アンテナなどにより検出される。しかしながら、部分放電検出アンテナは、電気機器内部からの電磁波だけではなく、外部ノイズとして他の電磁波も検出するおそれがある。このため、外部ノイズによる誤判定が生じる可能性を除去する必要がある。
【0005】
外部ノイズによる誤判定が生じる可能性を除去するため、部分放電により生じる電磁波と、外部ノイズによる電磁波とを分離する絶縁診断装置がいくつか提案されている。例えば、電気機器の周囲の電磁波を検出する第1のアンテナと、外部ノイズによる電磁波のみを検出する第2のアンテナとを有し、双方のアンテナが検出する電磁波間の差を演算することで、外部ノイズを除去し、この差動演算したデータから周期的ピーク点と、診断対象機器の電圧周期の1/4サイクル点を算出して、比較することにより部分放電の有無を判定する絶縁診断装置が開示されている(特許文献1および特許文献2)。
【0006】
また、保持部材と、この保持部材の一端に取り付けられ、かつ、スロット部の両端にプローブ部を有する前面部および前面部の一方のプローブ部と接続され前記スロット部を覆う後面部を備えるスロットアンテナセンサと、このスロットアンテナセンサと所定距離をもって、前記保持部材に取り付けられるコネクタと、前記コネクタに交換可能に取り付けられるアンテナセンサと、前記スロットアンテナセンサが検出した信号、及び前記アンテナセンサが検出した信号を外部に導出する手段とを具備する絶縁診断装置が開示されている。この装置では、スロットアンテナセンサによりGISなどの電気機器の内部から漏出する電磁波を検出するため、良好な感度で電磁波を検出することができる(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−249156号公報
【特許文献2】特開2001−249157号公報
【特許文献3】特許第3901045号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、部分放電検出センサと診断装置本体との間に信号線を配線する必要があったため、診断中に、配線が切断するおそれがあるという不具合があった。
【0009】
また、絶縁診断装置の長さが一定であるため、小スペースにおける診断が困難である一方、診断部が比較的遠方にあるときには、診断が困難、又は不可能になるという不具合があった。
【0010】
さらに、部分放電検出センサ、及び診断装置本体などの電子機器を有する部分と、絶縁部とが一体で形成されるため、絶縁部の絶縁性能の自主点検が難しいという不具合があった。
【0011】
そこで、本発明は、上述した不具合を解決することが可能な絶縁診断装置を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、部分放電信号検出部と、制御部との間の通信を無線通信とすることにより、診断中に、検出部と制御部との間の配線が切断するおそれがない絶縁診断装置を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、着脱可能な支持体に結合するための結合部を有することにより、診断部の配置に関わらず、絶縁診断を可能にする絶縁診断装置を提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、絶縁操作棒に結合するための結合部を有することにより、絶縁部の絶縁性能の自主点検を要しない絶縁診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題の解決を意図する実施形態は、下記の(1)〜(7)に記載のようなものである。
(1)診断対象の電気機器から電磁波を検出する部分放電検出センサと、前記部分放電検出センサが検出した信号を信号処理して、前記信号処理された信号から部分放電を含む信号を検出する信号処理部と、少なくとも前記部分放電を含む信号を無線で送信する第1の無線通信部と、を有する部分放電検出部と、
前記部分放電検出部から送信される信号を受信する第2の無線通信部を有する信号制御部と、
を有することを特徴とする絶縁診断装置。
(2)前記信号処理部は、前記部分放電検出センサが検出した信号から第1の周波数帯を抽出する信号処理を行い、前記第1の無線通信部は、前記第1の周波数帯と重複しない第2の周波数帯で信号を送信する(1)に記載の絶縁診断装置。
(3)前記部分放電検出部は、着脱可能な支持体に結合するための結合部をさらに有する(1)又は(2)に記載の絶縁診断装置。
(4)前記支持体は、絶縁操作棒である3に記載の絶縁診断装置。
(5)前記部分放電検出部は、アナログ−デジタル変換部を有し、前記無線通信はデジタル通信である(1)〜(4)のいずれか一項に記載の絶縁診断装置。
(6)診断対象の電気機器から電磁波を検出する部分放電検出センサと、前記部分放電検出センサが検出した信号を無線で送信する第1の無線通信部と、を有する部分放電検出部と、
前記部分放電検出部から送信される信号を受信する第2の無線通信部と、前記受信した信号を信号処理して、前記信号処理された信号から部分放電を含む信号を検出する信号処理部と、を有する信号制御部と、
を有することを特徴とする絶縁診断装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る絶縁診断装置では、部分放電検出部は、処理信号を無線通信により伝送する第1の無線通信部を有し、信号制御部は、部分放電検出部から伝送される信号を受信する第2の無線通信部を有するので、部分放電検出部と信号制御部との間の配線を無くすることが可能となった。
【0017】
また、本発明に係る絶縁診断装置では、着脱可能な支持体に結合するための結合部を有するので、診断部の配置に関わらず、絶縁診断をすることが可能となった。
【0018】
さらに、本発明に係る絶縁診断装置では、絶縁操作棒に結合するための結合部を有するので、絶縁診断装置は、絶縁部の絶縁性能の自主点検を必要としなくなった。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る絶縁診断装置の一実施形態における外形を示す図である。
【図2】本発明に係る絶縁診断装置の一実施形態におけるブロックを示す図である。
【図3】本発明に係る絶縁診断装置の一実施形態における外形を示す図である。
【図4】本発明に係る絶縁診断装置の一実施形態における外形を示す図である。
【図5】本発明に係る絶縁診断装置の一実施形態における外形を示す図である。
【図6】本発明に係る絶縁診断装置の一実施形態における外形を示す図である。
【図7】本発明に係る絶縁診断装置の一実施形態における外形を示す図である。
【図8】本発明に係る絶縁診断装置の一実施形態における外形を示す図である。
【図9】本発明に係る絶縁診断装置の一実施形態における外形を示す図である。
【図10】本発明に係る絶縁診断装置の一実施形態における外形を示す図である。
【図11】本発明に係る絶縁診断装置の一実施形態における外形を示す図である。
【図12】本発明に係る絶縁診断装置の使用方法の例を示す図である。
【図13】本発明に係る絶縁診断装置の使用方法の例を示す図である。
【図14】絶縁操作棒の一例を示す図である。
【図15】本発明に係る絶縁診断装置の一実施形態におけるブロックを示す図である。
【図16】本発明の一実施形態におけるフローを示す図である。
【図17】電磁波の時間−周波数特性を示す図である。
【図18】図11に示す特性をソートしたデータ群を図である。
【図19】図12にデータ群からデータの抽出を示す図である。
【図20】本発明に係るアルゴリズムにより決定された代表値の例を示す図である。
【図21】本発明に係るアルゴリズムにより決定された代表値の例を示す図である。
【図22】本発明に係るアルゴリズムにより決定された代表値の例を示す図である。
【図23】本発明に係るアルゴリズムにより決定された代表値の例を示す図である。
【図24】本発明に係るアルゴリズムにより決定された代表値の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、本発明の一実施形態による絶縁診断装置の回路構成を説明する。
【0021】
図1において、本発明に係る絶縁診断装置の外形を示す。絶縁診断装置1は、部分放電検出センサ2と、部分放電検出部4と、信号制御部6と、部分放電検出部4に着脱可能な絶縁性支持体7とを有する。部分放電検出センサ2は、部分放電検出部4に着脱可能な絶縁性支持体7を持つ作業者(図示せず)によって、GIS装置などの診断対象の電気機器のフランジ部などの診断部に近接して配置される。これにより、部分放電検出センサ2は、診断対象の電気機器から漏出する電磁波などの電磁的に検出可能な信号を検出する。
【0022】
部分放電検出部4は、部分放電検出センサ2が検出した信号を処理して、以下に詳細に説明する方法により、診断対象の電気機器の絶縁部に絶縁劣化に伴う部分放電が生じているか否かを判定する。そして、部分放電検出部4は、無線通信を介して信号制御部6に部分放電検出部4が処理した信号を送信する。信号制御部6は、無線通信を介して部分放電検出部4が送信した信号を受信する。そして、信号制御部6は、受信した信号の記憶、又は表示などの処理を実行する。以下、それぞれの各構成の構成、及び機能について説明する。
【0023】
まず、部分放電検出センサ2について説明する。部分放電検出センサ2は、両端部に折曲部を備えるスロットアンテナを有する。スロットアンテナの両端部を折曲することにより、GIS装置の絶縁スペーサ部に部分放電検出センサ2を近接して配置するときに、部分放電検出センサ2は、GIS装置の絶縁部から漏出する電磁波を効率良く検出することができる。図2に、スロットアンテナを有する部分放電検出センサ2の正面図を示す。部分放電検出センサ2は、検出部20と、給電部21a、及び21bとを有する。スロットアンテナを採用することにより、部分放電検出センサ2は、電磁波の垂直偏波及び水平偏波を検出することが可能になる。さらにスロットアンテナは、コンデンサ結合により部分放電発生時に生じるGISフランジ間の電位変動も効率よく捕らえられる構造にすることができる。例えば、本実施形態のように、スロットアンテナの両端部を折曲することができる。なお、本実施形態では、部分放電検出センサ2は、スロットアンテナを有するが、ループアンテナ、ダイポールアンテナ、又はモノポールアンテナなどを有する構造を採用することができる。
【0024】
次に、図3を参照して、部分放電検出部4について説明する。図3において、本発明に係る絶縁診断装置の一実施形態におけるブロック図を示す。部分放電検出部4は、入力アンプ部40と、A/D変換部41と、検出部CPU42と、記憶部43と、検出部無線インタフェース44とを有する。
【0025】
入力アンプ部40は、部分放電検出センサ2から検出信号を受信し、受信した検出信号を、適当な信号レベル(電圧)のアナログ信号に変換して、A/D変換部41に出力する回路である。A/D変換部41は、入力アンプ40から受信したアナログ信号を、デジタル信号に変換する回路である。検出部CPU42は、所望のサンプリング周期でアナログ信号をサンプリングするようにA/D変換部41を制御する。
【0026】
記憶部43は、検出部CPU42が実行するためのプログラム又はデータを記憶する。
【0027】
検出部CPU42は、サンプリングされたデータをA/D変換部41から取得すると、記憶部43に記憶する。そして、検出部CPU42は、記憶部43に記憶されたプログラムを実行して、部分放電に伴う電磁波が検出されているか否かを判定する機能を実現する。部分放電の判定方法は、図16〜24を参照して、後述する。
【0028】
検出部無線インタフェース44は、光ファイバなどの有線通信手段を介さずに無線通信手段を介して、信号制御部6が有する制御部無線インタフェース60と、データを通信する。検出部無線インタフェース44と、制御部無線インタフェース60との間のデータの通信は、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)、Wi−Fi(商標)などの近距離無線規格に基づいて実行することができる。Bluetooth(登録商標)では、2.4GHzの周波数帯を使用し、部分放電検出部4と、信号制御部6との間の距離は、数mから数十m程度にできる。また、ZigBee(登録商標)、及びWi−Fi(商標)はそれぞれ、2.4GHz、および5.2GHzの周波数帯を使用する。また、検出部無線インタフェース44と、制御部無線インタフェース60との間の通信は、IrDA DATAなど赤外線通信にできる。
【0029】
いずれの無線通信規格を採用する場合でも、データを通信する無線通信の周波数帯は、部分放電検出部4が処理する信号の周波数帯と重複しないことがないことが好ましい。無線通信の周波数帯と処理信号の周波数帯とが、重複すると、部分放電検出部4の処理に影響を与えるおそれがあるためである。例えば、部分放電検出部4が300MHz〜800MHzの信号を処理する場合は、それぞれの近距離無線規格、及び赤外線通通信規格とは重複しない。
【0030】
部分放電検出部4と、信号制御部6との間の通信を無線通信にすることで、部分放電検出部4と、信号制御部6とを電気的に接続する光ファイバなどの信号線が不要になり、機械的に分離することができる。このため、部分放電検出部4と、信号制御部6との間に従来配線されていた光ファイバなどの信号線が断線する問題は生じない。
【0031】
さらに、部分放電検出部4に結合する絶縁性支持体7の長さを、種々の長さにすることにより、部分放電検出センサ2、及び部分放電検出部4は、信号制御部6に関わりなく、様々な位置に配置できる。例えば、診断部となるGISの絶縁スペーサが、遮断器部と、断路器部との間などの狭い空間に位置する場合には、短尺形の絶縁性支持体7を部分放電検出部4に結合することにより、絶縁診断を容易に実施できる。一方、ガス遮断器のブッシングが数mの高所に配置されるなど診断部が高所にある場合には、長尺形の絶縁性支持体7を部分放電検出部4に結合することにより、容易に絶縁診断できる。このように、種々の形状、及び長さを有する絶縁性支持体7を部分放電検出センサ2に結合することにより、診断部が様々な位置に配置される場合での診断が可能になる。
【0032】
信号制御部6は、制御部無線インタフェース60とバスを介して接続される接続される制御部CPU61と、記憶部62と、入力部63と、表示部64と、記憶媒体インタフェース65とを有する。
【0033】
記憶部62は、部分放電検出部4が検出及び/又は処理したデータ、及び信号制御部6を制御するためのプログラム又はデータを記憶する。
【0034】
制御部CPU61は、記憶部62に記憶されるプログラムを実行して、制御部無線インタフェース60、及び入力部63から入力されるデータを表示部64に表示する機能、及び/又は記憶部62に記憶するなど信号制御部6の内部で実行される様々な制御機能を、実現する。
【0035】
また、以後、部分放電の判定は、図16〜24を参照して、部分放電検出部4が有する検出部CPU42が行うこととして説明するが、当該部分放電の判定は、制御部CPU61が実行してもよい。その場合、部分放電検出部4の検出部CPU42は、A/D変換部41によりサンプリングされたデータを無線送信するように、無線I/F44を制御する。部分放電の判定方法は、図16〜24を参照して、後述する。
【0036】
入力部63は、キーボード、マウス、タッチパネル、ボタン、及びキーなどを有することができる。入力部63は、これらの使用者による入力操作を検出し、検出した入力操作に基づき、入力された情報を制御部CPU61に提供する。例えば、使用者は、入力部63から診断対象機器の電圧周波数(50Hz、又は60Hz)、及びサンプリング周波数などのデータを入力できる。
【0037】
表示部64は、LCD(Liquid Crystal Display)などで形成されるフラットディスプレイ、LED(Light Emitting Diode)などで形成される表示灯などを有することができる。表示部64のディスプレイには、検出部CPU42が処理したデータなどを表示できる。
【0038】
記憶媒体インタフェース65は、信号制御部6と、記憶部カード、又はハードディスク等の記憶媒体8とをインタフェースする。コネクタ66は、信号制御部6と、記憶媒体8とを接続する。なお本実施の形態では、信号制御部6が、記憶媒体8を取り付けるためのインタフェース及びコネクタを1系統のみ備えるが、記憶媒体8を取り付けるためのインタフェース及びコネクタを1つ、又は複数の何れの系統数を備えても良い。また、異なる規格のインタフェース及びコネクタを組み合わせて備えることも可能である。インタフェース及びコネクタとしては、PCMCIA(Personal Computer Memory Card International Association)カード、コンパクトフラッシュ(登録商標)、スマート媒体、記憶部スティック、MMC、SD、又はXD記憶部カードフォーマットなどの周知のフォーマットに適合した記憶部カードを含むことができる。
【0039】
図1を再び参照すると、部分放電検出部4は、検出部無線インタフェース44と、回転機構部45と、絶縁性支持体接続部46とを有する。回転機構部45は、部分放電検出部の一端部に配置され、部分放電検出センサ2の方向を調整することができる。また絶縁性支持体接続部46は、部分放電検出部4と、絶縁性支持体7とを機械的に接続する構造にできる。図4〜11を参照して、回転機構部45、及び絶縁性支持体接続部46について、詳細に説明する。
【0040】
図4は、図1に示した部分放電検出センサ2と、部分放電検出部4とを拡大した図である。部分放電検出部4は、部分放電検出センサ2と可動ロッド47を介して機械的に接続される。また、部分放電検出部4は、給電部21、及び配線25などを介して、部分放電検出センサ2と電気的に接続される。絶縁性支持体接続部46は、部分放電検出部4が絶縁性支持体7から診断中に誤って落脱しないような構造が採用される。例えば、絶縁性支持体接続部46が有する凹部と、絶縁性支持体7が有する凸部とを嵌合することにより結合できる。また、安全鍵、又は安全錠などのロック機構を有する構造にすることができる。
【0041】
図5は、図4に示した部分放電検出部4の回転機構部45が回転した状態を示す図である。回転機構部45は、可動ロッド47を90度回転させることにより、部分放電検出センサ2の検出部20を90度回転させる。部分放電検出センサ2の検出部20の方向を90度回転させることにより、様々な高さ、及び位置に配置される絶縁スペーサなどの診断部分に、部分放電検出センサ2を近接して配置することが可能になる。
【0042】
図6〜11を参照して、回転機構部45の回転機構の1つの実施形態を示す。図6〜9は、図5の矢印Aの方向からの回転機構部45の正面図である。図6において、回転機構部45が固定される状態を示す。図6では、可動軸48に接続される可動ロッド47a、及び47bはそれぞれ、回転機構部45に形成される空隙の凹部に配置される。また、可動ロッド47a、及び47bは、荷重がかからない限り空隙の凹部に配置されるように構成される。このため、可動ロッド47a、及び47bは、固定される。
【0043】
次に、図7〜9を参照して、回転機構部45を回転させる動作を説明する。図7に示すように、回転機構部45を回転させるときは、可動軸48に接続される可動ロッド47a、及び47bはそれぞれ、回転機構部45に形成される空隙の凹部から移動して、空隙の長辺方向に移動可能な位置に配置される。このとき、可動ロッド47a、及び47bは、使用者により移動方向に加重が加えられるなど、何らかの荷重が加えられる。可動ロッド47a、及び47bは、図7に示す位置に移動した後に、空隙の長辺方向に移動する(図8を参照のこと)。そして、回転機構部45の他の面に形成される空隙の凹部(図示せず)に配置される(図9を参照のこと)。この結果、可動ロッド47a、及び47bは、90度移動して、他の面の上方に固定される。
【0044】
図10、及び11を参照して、可動ロッドの動作原理の一例を説明する。図10、及び11は、破線矢印B−B´の横断面図である。可動ロッド47a、及び47bは、可動軸48に接続される。また可動軸48の一端には、弾性部49が配置される。図10において、弾性部49は、いずれの応力も受けておらず、弾性力が生じていない定常状態である(図6、及び9に対応する)。一方、図11において、弾性部49は、応力を受けて圧縮される(図7、及び8に対応する)。これは、絶縁診断装置を使用する作業者が弾性部49を圧縮する方向に応力を加えるなどにより、実現される。この状態では、可動ロッド47a、及び47bは、空隙の長辺方向に移動可能になっている。使用者が、可動ロッド47a、及び47bを移動した後に、弾性部49に加えていた応力が除荷されると、弾性部49は、図10に示す定常状態に戻る。以上、回転機構部45の回転機構の1つの実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではなく、90度回転あるいは0〜90度の範囲で任意の角度に回転する構造を採用しても良い。
【0045】
図12、及び13を参照して、回転機構部45による診断実施例を説明する。図12、及び13において、ロッドアンテナを備える部分放電検出センサ2を有する絶縁診断装置1により、GIS装置の高所にある絶縁スペーサを診断する例を示す。図12において、作業者100は、GIS設備のフランジ112a、及び112bの間に位置する絶縁スペーサ110から漏出する電磁波の垂直偏波成分を診断する。一方、図13において、作業者100は、GIS設備のフランジ112a、及び112bの間に位置する絶縁スペーサ110から漏出する電磁波の水平偏波成分を診断する。図12、及び13から明らかなように、回転機構部45を可動させることのみによって、電磁波の垂直偏波成分と、水平偏波成分との診断を切り替えることができる。
【0046】
図1を再び参照すると、絶縁性支持体7は、絶縁部71と、握り部72と、絶縁性支持体接続部46に包含されるため図1では可視されない付設部70とを有する。絶縁性支持体7は、具体的には、JIS C−4510に準拠した絶縁操作棒にすることができる。一般に絶縁操作棒は、充電されている高圧、又は特別高圧受変電設備、又は送電設備など電路における作業、いわゆる活線作業において、作業者と充電部との間の距離を確保するために使用される。
【0047】
図14に絶縁操作棒の一例を示す。絶縁操作棒9は、付設部90と、絶縁部91と、握り部92とを有する。付設部90は、金属など導体、又は絶縁体の堅牢な材質で形成され、アース線が接続される接地金具、又は活線作業用の様々な活線用器具が取り付けられる凸部94を有する。絶縁部91は、表面がウレタン塗装されたガラスFRP(Fiber Reinforced Plastic、GFRP)、塩化ビニル、又は絶縁強化木などにより形成される。絶縁部91の長さは、労働安全衛生規則第344条に規定される接近限界距離に基づいて、充電電路の使用電圧に応じて様々に規定される。例えば、充電電路の電圧が交流であり、154kVを超えて187kV以下の電圧の場合には、作業者は、充電電路との間に140cmの接近限界距離を保つ必要がある。握り部92は、活線作業に従事する者が作業の際に手でつかむ部分であり、凹凸を有する絶縁性材料が用いられる。
【0048】
絶縁操作棒9は、絶縁診断装置1が診断するガス遮断器、又はGIS設備などが配置される高圧、又は特別高圧受変電設備に、一般的には少なくとも1つ配置される。そして、一般的には、受変電設備には、その設備に要求される接近限界距離を確保することができる絶縁操作棒9が配置されている。このため、絶縁性支持体7として絶縁操作棒9を利用することが考えられる。部分放電検出部4の絶縁性支持体接続部46の形状を、絶縁操作棒9と接続できる形状にすることにより、本発明に係る絶縁診断装置1は、絶縁性支持体7として絶縁操作棒9を利用することが可能になる。絶縁診断装置1が絶縁性支持体7として絶縁操作棒9を利用することにより、様々な利点を奏する。
【0049】
第1に、絶縁診断装置1を小型化することが可能になる。活線作業に使用される従来の絶縁診断装置では、接近限界距離を確保するための長さを有する絶縁部を備えることが必須であった。しかしながら、絶縁性支持体7として絶縁操作棒9を利用することにより、絶縁診断装置1は、接近限界距離を確保する長さを有する絶縁部を有しない構造にすることが可能になる。このため、絶縁診断装置1を小型化することが可能になる。
【0050】
第2に、診断対象の電気機器の大きさに応じて、様々な高さに位置する診断部に近接するように、部分放電検出部4を配置することが可能になる。受変電設備に配置される絶縁操作棒9は、接近限界距離を確保する長さを有することは当然であるが、受変電設備内に配置される全ての電気機器に対応可能な長さを有することが一般的である。したがって、受変電設備内に配置される絶縁操作棒9を絶縁性支持体7として使用することにより、受変電設備内の電気機器の診断が良好な条件で実施できる。
【0051】
第3に、絶縁診断装置1の保守性が向上する。絶縁診断装置1を活線作業で使用する場合は、絶縁性能についての6ヶ月に1度の自主点検が義務付けられる(労働安全衛生法第45条、労働安全衛生規則第351条)。自主点検のときには、1000V以上の交流電圧が対象機器に印加される。このため、絶縁部と一体化される従来の絶縁診断装置では、センサ装置などの機器が破壊されることを防止するために、自主点検時には、これらの機器を絶縁部から電気的、及び機械的に分離させる必要があった。しかしながら、本発明に係る絶縁診断装置1では、絶縁性支持体7は、部分放電検出部4と着脱可能であるので、絶縁性支持体7のみを単体で点検することができる。さらに、受変電設備に配置される絶縁操作棒9を、絶縁性支持体7として使用する場合は、絶縁診断装置1において絶縁性能についての自主点検を実施する必要がない。受変電設備の管理者が絶縁操作棒9の自主点検を別途実施するためである。
【0052】
図15を参照して、本発明に係る絶縁診断装置の他の実施形態を説明する。図15において、本発明に係る絶縁診断装置の一実施形態におけるブロック図を示す。部分放電検出部4は、図3に示す実施形態と同様に、部分放電検出センサ2と、部分放電検出部4と、信号制御部6とを有する。本実施形態と、図3に示す実施形態とは、部分放電検出部4の構成のみが異なるので、本実施形態における部分放電検出部4の構成、及び機能について、以下に説明する。
【0053】
入力アンプ部40は、BPF(バンドパスフィルタ)10と、プリアンプ11と、ミキサ12と、中間周波フィルタ13と、ログアンプ14と、PLL(位相同期回路)シンセサイザ15と、発振器16とを有する。入力アンプ部40は、部分放電検出センサ2から検出信号を受信し、受信した検出信号を、検出部CPU42からの制御信号に従って、特定の周波数を有する適当な信号レベル(電圧)のアナログ信号に変換して、A/D変換部41に出力する回路である。
【0054】
BPF10は、部分放電検出センサ2が検出した信号から特定の周波数帯を有する信号のみを通過させるフィルタ回路である。例えばBPF10の通過帯域は、300MHz〜800MHzを通過帯域とすることができる。これは、300MHz〜800MHzの周波数帯よりも低い周波数帯では、検出信号は、外部ノイズが混在する比率が大きい一方、この帯域よりも高い周波数帯域では、検出信号は、減衰する傾向が大きいことが、実験から明らかになっているためである。しかしながら、BPF10の通過帯域は、300MHz〜800MHzの周波数帯域に限定されず、部分放電検出センサ2が配置される場所、又は診断対象の電気機器以外の電気機器の配置など周囲の電磁的な環境により、適当に設定することができる。ただし、検出部無線インタフェース44と、制御部無線インタフェース60との間のデータ無線通信の周波数帯と重複しないことは、上述の通りである。
【0055】
プリアンプ11は、BPF10を通過した信号の電圧を増幅して、ミキサ12に適当な信号を出力する増幅器である。PLLシンセサイザ15は、検出部CPU42から入力する制御信号に基づいて、発振器16の周波数を適当に制御した周波数信号をミキサ12に出力する回路である。ミキサ12は、プリアンプ22からの信号と、PLLシンセサイザ15からの信号を合成して1つの信号として出力する回路である。中間周波フィルタ13は、ミキサ12からの入力信号から中間周波数の信号成分を取り出すフィルタ回路である。中間周波フィルタ13の通過周波数を適当な幅にすることで、所望の周波数帯近傍の信号を獲得できる。例えば、中間周波フィルタ13は、1kHz〜50kHz程度の通過帯域を有する。ログアンプ14は、中間周波フィルタ13からの入力信号の電圧を、A/D変換部41への適切な電圧に出力する増幅器であり、例えば、プリアンプ11からの出力信号の電圧に相当する電圧のアナログ信号を出力する。
【0056】
このように、入力アンプ部40は、部分放電検出センサ2から検出信号を受信し、検出部CPU42が出力する制御信号に基づいて、特定の周波数を有するアナログ信号をA/D変換部41に出力する。入力アンプ部40は、検出部CPU42からの制御信号に基づいて、同様な操作を複数回繰り返して実行することができる。検出部CPU42は、この帯域内の任意の周波数を有する電磁波が入力アンプ部40を通過するように制御することができる。例えば、BPF10が300MHz〜800MHzの通過帯域を有する場合、検出部CPU42は、周波数が5MHzずつ異なる100個の電磁波が入力アンプ部40を通過するように制御することができる。
【0057】
A/D変換部41は、ログアンプ14から受信したアナログ信号を、デジタル信号に変換する回路である。検出部CPU42は、所望のサンプリング周期でアナログ信号をサンプリングするようにA/D変換部41を制御する。例えば、アナログ信号のサンプリング周期は、診断対象機器の電圧周期の2サイクルの1/100にできる。すなわち、診断対象機器の電圧周波数が50Hzの場合には、アナログ信号のサンプリング周期は、400μmにすることができる。これにより、A/D変換部41は、診断対象機器の電圧周期の2サイクルを100個のサンプリング点に分割できる。検出部CPU42は、A/D変換部41からこのようにサンプリングタイミング点における周波数の電界強度を取得すると、取得した信号レベルを、サンプリング点ごとに、記憶部43に記憶する。
【0058】
次に、検出部CPU42における部分放電の有無の判定手順の1つの実施形態について、図16〜24を参照して、詳細に説明する。図16に検出部CPU42が部分放電の有無を判定するフローを示す。以下、このフローに従って、説明する。
【0059】
ステップ1において、検出部CPU42は、記憶部43に記憶された電界強度を、サンプリング点(時間軸)、及び周波数ごとに配列する。図17に、配列された電界強度の一例を示す。時間軸Tは、診断対象機器の電圧周期の2サイクル分の電磁波を100点のサンプリング点でサンプリングした電界強度であり、サンプリング点ごとに1〜100の番号を付す。周波数軸[MHz]は、300[MHz]から800[MHz]までの周波数を任意の周波数で入力アンプ部40を通過させたデータである。この例では、300[MHz]から800[MHz]までの周波数を、5MHzずつ異なる周波数で入力アンプ部40を通過させた100個のデータが配置される。電界強度[−dBm]は、時間軸、及び周波数軸にそれぞれ配置される電磁波の電界強度を示す。したがって、この例では、時間軸方向、及び周波数方向にそれぞれ100個ずつ、合計で10000個のサンプリング点での電界強度を示す。検出部CPU42は、この10000個のポイントにおける電界強度をキャッシュなどに記憶する。
【0060】
次いで図16のステップ2において、検出部CPU42は、時間軸上の同一のサンプリング点における電界強度を、周波数の大きさに関わらず、電界強度の大きさ順に配列(ソート)する。図18に、検出部CPU42が、時間軸上の同一のサンプリング点における電界強度を大きさ順に配列した結果を示す。一般的に、部分放電により生じる電磁波は、診断対象の電気機器、又は他の電気機器などから発生する外部ノイズによる電磁波に比較して小さい。したがって、時間軸上の同一のサンプリング点において電界強度が大きい1つ、又は複数のデータは、部分放電による電磁波ではなく、診断対象の電気機器、又は架空送電線などの他の電気機器、通信機器、若しくは他の周辺環境から発生する外部ノイズであると考えることができる。
【0061】
次いでステップ3において、検出部CPU42は、ソートした配列において、所定の順位に位置するデータをそれぞれのサンプリング点から抽出する。例えば、検出部CPU42は、それぞれのサンプリング点において電界強度の大きい方から15番目に位置するデータを抽出することができる。図19に、抽出されるデータの例を示す。図19において、断面形状で示される面が、抽出されるデータに該当する。このようにして抽出したデータを使用して、検出部CPU42は、データの代表値を形成する。
【0062】
次いでステップ4において、検出部CPU42は、バックグラウンドノイズ電界強度GBNを決定する。図20に、バックグラウンドノイズ電界強度GBNを決定するために使用する代表値の一例を示す。これは、図19に示す抽出データと同等なデータである。次に、検出部CPU42は、図21に示すように、代表値を前半部と、後半部とに分割する。上述のように、これらのデータは、診断対象機器の電圧周期の2サイクル分のサンプリング点を含むため、前半部は、1サイクル目に該当し、後半部は、2サイクル目に該当する。次に検出部CPU42は、前半部、及び後半部を重ね合わせて1サイクル化する(図22、及び23を参照のこと)。すなわち、前半部、及び後半部の同一のサンプリング点(この例では、前半部の1番目の時点D1と、後半部の一番目の時点D51など)の電界強度を比較して、小さい値をその時点の電界強度とする。これにより、さらにノイズを除去することが可能である。
【0063】
次いで、検出部CPU42は、上述のようにして獲得した診断対象機器の電圧周期の1サイクルに相当するデータから、部分放電による電磁波が検出されるサイクル内の位置を決定する。一般的に、1サイクルの中で、電界強度が最大となっている点の近傍で、部分放電による電磁波が検出されると考えることができる。図24に示すように、この例では、検出部CPU42は、電界強度が最大値を示す「DD_35」において、部分放電による電磁波が検出されると決定する。この決定に基づき、検出部CPU42は、バックグラウンドノイズ電界強度BGNを決定する。当業者に周知のように、絶縁ガス中に生じる部分放電は、印加電圧の正負のいずれかの半サイクルの波高値付近で生じる(電気協同研究 第44巻 第2号「ガス絶縁機器の信頼性向上対策」を参照のこと)。一方、診断対象の電気機器の電圧は、一般的にほぼ正弦波である。このため、部分放電を検出するサンプリング点から1/4サイクル離れたサンプリング点近傍(この例では、12又は13個ずれたサンプリング点であり、図24の「DD_22」、及び「DD_22」の近傍)が、ゼロクロス点(ノイズがない場合に電界強度がゼロになる点)であると考えられる。したがって、検出部CPU42は、部分放電から1/4サイクル離れたサンプリング点近傍の電界強度に基づいて、バックグラウンドノイズ電界強度BGNを決定する。例えば、検出部CPU42は、図24の「DD_22」と、「DD_22」とにおける電界強度を比較して、小さい方をバックグラウンドノイズ電界強度BGNにできる。また「DD_22」と、「DD_22」との近傍のいくつかの電界強度の平均値をバックグラウンドノイズ電界強度GBNにできる。
【0064】
次いで図16に示すフローのステップ5において、検出部CPU42は、算出したバックグラウンドノイズ電界強度GBNと、所定のしきい値TH_BGNとの比較をする。ステップ4において算出したバックグラウンドノイズ電界強度GBNが、しきい値TH_BGNよりも大きい場合は、ステップ7において、代表値を抽出するための順位を1つ、又は複数個小さい方へ移動する。そして処理は、ステップ4に戻り、バックグラウンドノイズ電界強度BGNを算出し直す。そして、ステップ5において、算出したバックグラウンドノイズ電界強度BGNと、しきい値TH_BGNとを再び比較する。このとき、しきい値TH_BGNは、最初の値と同一の値でもよく、また当初の値にバイアス値を加減算した値にすることができる。このように、検出部CPU42は、算出されたバックグラウンドノイズの電界強度BGNがしきい値TH_BGNよりも小さくなるまで同様の処理を続ける。
【0065】
ステップ5において、検出部CPU42が、算出されたバックグラウンドノイズBGNが、しきい値TH_BGNよりも小さいと判定した場合、ステップ8において、検出部CPU42は、部分放電による電磁波の電界強度DEFを算出する。例えば、部分放電による電磁波の電界強度DEFは、図24の「DD_35」の電界強度から、ステップ4において算出したバックグラウンドノイズの電界強度BGNを減じたものにできる。また部分放電による電磁波の電界強度DEFは、「DD_35」の近傍のいくつかの時点の電界強度の平均値から、バックグラウンドノイズの電界強度BGNを減じたものにできる。
【0066】
次いでステップ9において、検出部CPU42は、部分放電による電磁波の電界強度DEFと、しきい値TH_DEFとの比較を行う。しきい値TH_DEFは、所定の値にできる。また、しきい値TH_DEFは、ステップ5の判定結果に依存した値にすることができる(ステップ6参照のこと)。例えば、しきい値TH_DEFは、バックグラウンドノイズBGNを再演算するごとに、所定の値を減算した値にすることができる。部分放電による電磁波の電界強度DEFが、しきい値TH_DEFよりも大きい場合は、検出部CPU42は、診断対象の電気機器の絶縁部に部分放電が発生していると判定する。また部分放電による電磁波の電界強度DEFが、しきい値TH_DEFよりも大きくない場合は、検出部CPU42は、診断対象の電気機器の絶縁部に部分放電が発生していないと判定する。
【0067】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明してきたが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態では、単一の部分放電検出センサ2のみを用いて、信号を検出するが、絶縁診断装置は、外部ノイズ検出用センサを有することができる。外部ノイズ検出用センサは、部分放電検出部4及び/又は信号制御部6に配置できる。この場合、特開2001−249156号公報に記載された方法などにより、絶縁診断を実行できる。
【0068】
検出部CPU42において、部分放電の有無の判定するときに、診断対象機器の電圧周期の2サイクル分の電磁波を判定対象としているが、3サイクル以上の電磁波を判定対象とすることができる。この場合、診断時間は増加するが、バックグラウンドノイズ電界強度GBNの決定精度が向上する。
【符号の説明】
【0069】
1 絶縁診断装置
2 部分放電検出センサ
4 部分放電検出部
6 信号制御部
7 絶縁性支持体
8 記録媒体
9 絶縁操作棒
【技術分野】
【0001】
本発明は、変圧器、及び遮断器などの高圧電力、及び特別高圧電力用電気機器、又は特別高圧用電力ケーブルの絶縁状態を監視する絶縁診断装置および絶縁診断方法に関し、特に、機器内部の絶縁劣化時などに発生する部分放電により生じる電磁波を検出することによって、絶縁診断を行う絶縁診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
遮断器、及び変圧器などの高圧(交流にあって600ボルトを超え、7000ボルト以下のもの)、及び特別高圧(交流にあって7000ボルトを超えるもの)用電気機器において、六フッ化硫黄(SF6)ガスが絶縁媒体として多く使用される。これは、SF6ガスが、大気圧で空気の2.5倍程度の優れた絶縁性能を有するためである。例えば、ガス遮断器においては、空気の代わりにSF6ガスをアーク消弧用に使用することにより、小型化、及び消音化が実現される。また、ガス変圧器においては、絶縁油の代わりにSF6ガスを絶縁媒体として使用することにより、安全性、及び保守性が向上する。さらに、遮断器ガス絶縁開閉装置(GIS:Gas Insulated Switch−gear)では、遮断器、断路器、接地開閉器、避雷器、及び検電装置などの電気機器を、SF6ガスが充填された容器内に配置することにより、受変電設備を小型化し、保守性、安全性を向上させることが可能になる。
【0003】
しかしながら、電気機器の高電圧化、コンパクト化が要求される中、これら機器の高電界化が進み、要求される絶縁性能は、厳しくなっている。また、使用を開始してから長い年月を経た機器も増加しており、経年劣化による絶縁性能の低下も懸念される。このため、機器の絶縁破壊を未然に防ぐために、絶縁劣化を早期に検出し評価することを目的として、絶縁破壊の前駆現象の1つである部分放電信号の測定が行われる。部分放電信号の測定方法には、絶縁劣化時に生じる部分放電により二次的に発生する電磁波を検出することにより、運転中の電気機器の内部に絶縁劣化が発生しているか否かを診断する絶縁診断装置、及び絶縁診断方法が提案されている。
【0004】
このような絶縁診断装置においては、部分放電により発生する電磁波は、部分放電検出アンテナなどにより検出される。しかしながら、部分放電検出アンテナは、電気機器内部からの電磁波だけではなく、外部ノイズとして他の電磁波も検出するおそれがある。このため、外部ノイズによる誤判定が生じる可能性を除去する必要がある。
【0005】
外部ノイズによる誤判定が生じる可能性を除去するため、部分放電により生じる電磁波と、外部ノイズによる電磁波とを分離する絶縁診断装置がいくつか提案されている。例えば、電気機器の周囲の電磁波を検出する第1のアンテナと、外部ノイズによる電磁波のみを検出する第2のアンテナとを有し、双方のアンテナが検出する電磁波間の差を演算することで、外部ノイズを除去し、この差動演算したデータから周期的ピーク点と、診断対象機器の電圧周期の1/4サイクル点を算出して、比較することにより部分放電の有無を判定する絶縁診断装置が開示されている(特許文献1および特許文献2)。
【0006】
また、保持部材と、この保持部材の一端に取り付けられ、かつ、スロット部の両端にプローブ部を有する前面部および前面部の一方のプローブ部と接続され前記スロット部を覆う後面部を備えるスロットアンテナセンサと、このスロットアンテナセンサと所定距離をもって、前記保持部材に取り付けられるコネクタと、前記コネクタに交換可能に取り付けられるアンテナセンサと、前記スロットアンテナセンサが検出した信号、及び前記アンテナセンサが検出した信号を外部に導出する手段とを具備する絶縁診断装置が開示されている。この装置では、スロットアンテナセンサによりGISなどの電気機器の内部から漏出する電磁波を検出するため、良好な感度で電磁波を検出することができる(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−249156号公報
【特許文献2】特開2001−249157号公報
【特許文献3】特許第3901045号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、部分放電検出センサと診断装置本体との間に信号線を配線する必要があったため、診断中に、配線が切断するおそれがあるという不具合があった。
【0009】
また、絶縁診断装置の長さが一定であるため、小スペースにおける診断が困難である一方、診断部が比較的遠方にあるときには、診断が困難、又は不可能になるという不具合があった。
【0010】
さらに、部分放電検出センサ、及び診断装置本体などの電子機器を有する部分と、絶縁部とが一体で形成されるため、絶縁部の絶縁性能の自主点検が難しいという不具合があった。
【0011】
そこで、本発明は、上述した不具合を解決することが可能な絶縁診断装置を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、部分放電信号検出部と、制御部との間の通信を無線通信とすることにより、診断中に、検出部と制御部との間の配線が切断するおそれがない絶縁診断装置を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、着脱可能な支持体に結合するための結合部を有することにより、診断部の配置に関わらず、絶縁診断を可能にする絶縁診断装置を提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、絶縁操作棒に結合するための結合部を有することにより、絶縁部の絶縁性能の自主点検を要しない絶縁診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題の解決を意図する実施形態は、下記の(1)〜(7)に記載のようなものである。
(1)診断対象の電気機器から電磁波を検出する部分放電検出センサと、前記部分放電検出センサが検出した信号を信号処理して、前記信号処理された信号から部分放電を含む信号を検出する信号処理部と、少なくとも前記部分放電を含む信号を無線で送信する第1の無線通信部と、を有する部分放電検出部と、
前記部分放電検出部から送信される信号を受信する第2の無線通信部を有する信号制御部と、
を有することを特徴とする絶縁診断装置。
(2)前記信号処理部は、前記部分放電検出センサが検出した信号から第1の周波数帯を抽出する信号処理を行い、前記第1の無線通信部は、前記第1の周波数帯と重複しない第2の周波数帯で信号を送信する(1)に記載の絶縁診断装置。
(3)前記部分放電検出部は、着脱可能な支持体に結合するための結合部をさらに有する(1)又は(2)に記載の絶縁診断装置。
(4)前記支持体は、絶縁操作棒である3に記載の絶縁診断装置。
(5)前記部分放電検出部は、アナログ−デジタル変換部を有し、前記無線通信はデジタル通信である(1)〜(4)のいずれか一項に記載の絶縁診断装置。
(6)診断対象の電気機器から電磁波を検出する部分放電検出センサと、前記部分放電検出センサが検出した信号を無線で送信する第1の無線通信部と、を有する部分放電検出部と、
前記部分放電検出部から送信される信号を受信する第2の無線通信部と、前記受信した信号を信号処理して、前記信号処理された信号から部分放電を含む信号を検出する信号処理部と、を有する信号制御部と、
を有することを特徴とする絶縁診断装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る絶縁診断装置では、部分放電検出部は、処理信号を無線通信により伝送する第1の無線通信部を有し、信号制御部は、部分放電検出部から伝送される信号を受信する第2の無線通信部を有するので、部分放電検出部と信号制御部との間の配線を無くすることが可能となった。
【0017】
また、本発明に係る絶縁診断装置では、着脱可能な支持体に結合するための結合部を有するので、診断部の配置に関わらず、絶縁診断をすることが可能となった。
【0018】
さらに、本発明に係る絶縁診断装置では、絶縁操作棒に結合するための結合部を有するので、絶縁診断装置は、絶縁部の絶縁性能の自主点検を必要としなくなった。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る絶縁診断装置の一実施形態における外形を示す図である。
【図2】本発明に係る絶縁診断装置の一実施形態におけるブロックを示す図である。
【図3】本発明に係る絶縁診断装置の一実施形態における外形を示す図である。
【図4】本発明に係る絶縁診断装置の一実施形態における外形を示す図である。
【図5】本発明に係る絶縁診断装置の一実施形態における外形を示す図である。
【図6】本発明に係る絶縁診断装置の一実施形態における外形を示す図である。
【図7】本発明に係る絶縁診断装置の一実施形態における外形を示す図である。
【図8】本発明に係る絶縁診断装置の一実施形態における外形を示す図である。
【図9】本発明に係る絶縁診断装置の一実施形態における外形を示す図である。
【図10】本発明に係る絶縁診断装置の一実施形態における外形を示す図である。
【図11】本発明に係る絶縁診断装置の一実施形態における外形を示す図である。
【図12】本発明に係る絶縁診断装置の使用方法の例を示す図である。
【図13】本発明に係る絶縁診断装置の使用方法の例を示す図である。
【図14】絶縁操作棒の一例を示す図である。
【図15】本発明に係る絶縁診断装置の一実施形態におけるブロックを示す図である。
【図16】本発明の一実施形態におけるフローを示す図である。
【図17】電磁波の時間−周波数特性を示す図である。
【図18】図11に示す特性をソートしたデータ群を図である。
【図19】図12にデータ群からデータの抽出を示す図である。
【図20】本発明に係るアルゴリズムにより決定された代表値の例を示す図である。
【図21】本発明に係るアルゴリズムにより決定された代表値の例を示す図である。
【図22】本発明に係るアルゴリズムにより決定された代表値の例を示す図である。
【図23】本発明に係るアルゴリズムにより決定された代表値の例を示す図である。
【図24】本発明に係るアルゴリズムにより決定された代表値の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、本発明の一実施形態による絶縁診断装置の回路構成を説明する。
【0021】
図1において、本発明に係る絶縁診断装置の外形を示す。絶縁診断装置1は、部分放電検出センサ2と、部分放電検出部4と、信号制御部6と、部分放電検出部4に着脱可能な絶縁性支持体7とを有する。部分放電検出センサ2は、部分放電検出部4に着脱可能な絶縁性支持体7を持つ作業者(図示せず)によって、GIS装置などの診断対象の電気機器のフランジ部などの診断部に近接して配置される。これにより、部分放電検出センサ2は、診断対象の電気機器から漏出する電磁波などの電磁的に検出可能な信号を検出する。
【0022】
部分放電検出部4は、部分放電検出センサ2が検出した信号を処理して、以下に詳細に説明する方法により、診断対象の電気機器の絶縁部に絶縁劣化に伴う部分放電が生じているか否かを判定する。そして、部分放電検出部4は、無線通信を介して信号制御部6に部分放電検出部4が処理した信号を送信する。信号制御部6は、無線通信を介して部分放電検出部4が送信した信号を受信する。そして、信号制御部6は、受信した信号の記憶、又は表示などの処理を実行する。以下、それぞれの各構成の構成、及び機能について説明する。
【0023】
まず、部分放電検出センサ2について説明する。部分放電検出センサ2は、両端部に折曲部を備えるスロットアンテナを有する。スロットアンテナの両端部を折曲することにより、GIS装置の絶縁スペーサ部に部分放電検出センサ2を近接して配置するときに、部分放電検出センサ2は、GIS装置の絶縁部から漏出する電磁波を効率良く検出することができる。図2に、スロットアンテナを有する部分放電検出センサ2の正面図を示す。部分放電検出センサ2は、検出部20と、給電部21a、及び21bとを有する。スロットアンテナを採用することにより、部分放電検出センサ2は、電磁波の垂直偏波及び水平偏波を検出することが可能になる。さらにスロットアンテナは、コンデンサ結合により部分放電発生時に生じるGISフランジ間の電位変動も効率よく捕らえられる構造にすることができる。例えば、本実施形態のように、スロットアンテナの両端部を折曲することができる。なお、本実施形態では、部分放電検出センサ2は、スロットアンテナを有するが、ループアンテナ、ダイポールアンテナ、又はモノポールアンテナなどを有する構造を採用することができる。
【0024】
次に、図3を参照して、部分放電検出部4について説明する。図3において、本発明に係る絶縁診断装置の一実施形態におけるブロック図を示す。部分放電検出部4は、入力アンプ部40と、A/D変換部41と、検出部CPU42と、記憶部43と、検出部無線インタフェース44とを有する。
【0025】
入力アンプ部40は、部分放電検出センサ2から検出信号を受信し、受信した検出信号を、適当な信号レベル(電圧)のアナログ信号に変換して、A/D変換部41に出力する回路である。A/D変換部41は、入力アンプ40から受信したアナログ信号を、デジタル信号に変換する回路である。検出部CPU42は、所望のサンプリング周期でアナログ信号をサンプリングするようにA/D変換部41を制御する。
【0026】
記憶部43は、検出部CPU42が実行するためのプログラム又はデータを記憶する。
【0027】
検出部CPU42は、サンプリングされたデータをA/D変換部41から取得すると、記憶部43に記憶する。そして、検出部CPU42は、記憶部43に記憶されたプログラムを実行して、部分放電に伴う電磁波が検出されているか否かを判定する機能を実現する。部分放電の判定方法は、図16〜24を参照して、後述する。
【0028】
検出部無線インタフェース44は、光ファイバなどの有線通信手段を介さずに無線通信手段を介して、信号制御部6が有する制御部無線インタフェース60と、データを通信する。検出部無線インタフェース44と、制御部無線インタフェース60との間のデータの通信は、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)、Wi−Fi(商標)などの近距離無線規格に基づいて実行することができる。Bluetooth(登録商標)では、2.4GHzの周波数帯を使用し、部分放電検出部4と、信号制御部6との間の距離は、数mから数十m程度にできる。また、ZigBee(登録商標)、及びWi−Fi(商標)はそれぞれ、2.4GHz、および5.2GHzの周波数帯を使用する。また、検出部無線インタフェース44と、制御部無線インタフェース60との間の通信は、IrDA DATAなど赤外線通信にできる。
【0029】
いずれの無線通信規格を採用する場合でも、データを通信する無線通信の周波数帯は、部分放電検出部4が処理する信号の周波数帯と重複しないことがないことが好ましい。無線通信の周波数帯と処理信号の周波数帯とが、重複すると、部分放電検出部4の処理に影響を与えるおそれがあるためである。例えば、部分放電検出部4が300MHz〜800MHzの信号を処理する場合は、それぞれの近距離無線規格、及び赤外線通通信規格とは重複しない。
【0030】
部分放電検出部4と、信号制御部6との間の通信を無線通信にすることで、部分放電検出部4と、信号制御部6とを電気的に接続する光ファイバなどの信号線が不要になり、機械的に分離することができる。このため、部分放電検出部4と、信号制御部6との間に従来配線されていた光ファイバなどの信号線が断線する問題は生じない。
【0031】
さらに、部分放電検出部4に結合する絶縁性支持体7の長さを、種々の長さにすることにより、部分放電検出センサ2、及び部分放電検出部4は、信号制御部6に関わりなく、様々な位置に配置できる。例えば、診断部となるGISの絶縁スペーサが、遮断器部と、断路器部との間などの狭い空間に位置する場合には、短尺形の絶縁性支持体7を部分放電検出部4に結合することにより、絶縁診断を容易に実施できる。一方、ガス遮断器のブッシングが数mの高所に配置されるなど診断部が高所にある場合には、長尺形の絶縁性支持体7を部分放電検出部4に結合することにより、容易に絶縁診断できる。このように、種々の形状、及び長さを有する絶縁性支持体7を部分放電検出センサ2に結合することにより、診断部が様々な位置に配置される場合での診断が可能になる。
【0032】
信号制御部6は、制御部無線インタフェース60とバスを介して接続される接続される制御部CPU61と、記憶部62と、入力部63と、表示部64と、記憶媒体インタフェース65とを有する。
【0033】
記憶部62は、部分放電検出部4が検出及び/又は処理したデータ、及び信号制御部6を制御するためのプログラム又はデータを記憶する。
【0034】
制御部CPU61は、記憶部62に記憶されるプログラムを実行して、制御部無線インタフェース60、及び入力部63から入力されるデータを表示部64に表示する機能、及び/又は記憶部62に記憶するなど信号制御部6の内部で実行される様々な制御機能を、実現する。
【0035】
また、以後、部分放電の判定は、図16〜24を参照して、部分放電検出部4が有する検出部CPU42が行うこととして説明するが、当該部分放電の判定は、制御部CPU61が実行してもよい。その場合、部分放電検出部4の検出部CPU42は、A/D変換部41によりサンプリングされたデータを無線送信するように、無線I/F44を制御する。部分放電の判定方法は、図16〜24を参照して、後述する。
【0036】
入力部63は、キーボード、マウス、タッチパネル、ボタン、及びキーなどを有することができる。入力部63は、これらの使用者による入力操作を検出し、検出した入力操作に基づき、入力された情報を制御部CPU61に提供する。例えば、使用者は、入力部63から診断対象機器の電圧周波数(50Hz、又は60Hz)、及びサンプリング周波数などのデータを入力できる。
【0037】
表示部64は、LCD(Liquid Crystal Display)などで形成されるフラットディスプレイ、LED(Light Emitting Diode)などで形成される表示灯などを有することができる。表示部64のディスプレイには、検出部CPU42が処理したデータなどを表示できる。
【0038】
記憶媒体インタフェース65は、信号制御部6と、記憶部カード、又はハードディスク等の記憶媒体8とをインタフェースする。コネクタ66は、信号制御部6と、記憶媒体8とを接続する。なお本実施の形態では、信号制御部6が、記憶媒体8を取り付けるためのインタフェース及びコネクタを1系統のみ備えるが、記憶媒体8を取り付けるためのインタフェース及びコネクタを1つ、又は複数の何れの系統数を備えても良い。また、異なる規格のインタフェース及びコネクタを組み合わせて備えることも可能である。インタフェース及びコネクタとしては、PCMCIA(Personal Computer Memory Card International Association)カード、コンパクトフラッシュ(登録商標)、スマート媒体、記憶部スティック、MMC、SD、又はXD記憶部カードフォーマットなどの周知のフォーマットに適合した記憶部カードを含むことができる。
【0039】
図1を再び参照すると、部分放電検出部4は、検出部無線インタフェース44と、回転機構部45と、絶縁性支持体接続部46とを有する。回転機構部45は、部分放電検出部の一端部に配置され、部分放電検出センサ2の方向を調整することができる。また絶縁性支持体接続部46は、部分放電検出部4と、絶縁性支持体7とを機械的に接続する構造にできる。図4〜11を参照して、回転機構部45、及び絶縁性支持体接続部46について、詳細に説明する。
【0040】
図4は、図1に示した部分放電検出センサ2と、部分放電検出部4とを拡大した図である。部分放電検出部4は、部分放電検出センサ2と可動ロッド47を介して機械的に接続される。また、部分放電検出部4は、給電部21、及び配線25などを介して、部分放電検出センサ2と電気的に接続される。絶縁性支持体接続部46は、部分放電検出部4が絶縁性支持体7から診断中に誤って落脱しないような構造が採用される。例えば、絶縁性支持体接続部46が有する凹部と、絶縁性支持体7が有する凸部とを嵌合することにより結合できる。また、安全鍵、又は安全錠などのロック機構を有する構造にすることができる。
【0041】
図5は、図4に示した部分放電検出部4の回転機構部45が回転した状態を示す図である。回転機構部45は、可動ロッド47を90度回転させることにより、部分放電検出センサ2の検出部20を90度回転させる。部分放電検出センサ2の検出部20の方向を90度回転させることにより、様々な高さ、及び位置に配置される絶縁スペーサなどの診断部分に、部分放電検出センサ2を近接して配置することが可能になる。
【0042】
図6〜11を参照して、回転機構部45の回転機構の1つの実施形態を示す。図6〜9は、図5の矢印Aの方向からの回転機構部45の正面図である。図6において、回転機構部45が固定される状態を示す。図6では、可動軸48に接続される可動ロッド47a、及び47bはそれぞれ、回転機構部45に形成される空隙の凹部に配置される。また、可動ロッド47a、及び47bは、荷重がかからない限り空隙の凹部に配置されるように構成される。このため、可動ロッド47a、及び47bは、固定される。
【0043】
次に、図7〜9を参照して、回転機構部45を回転させる動作を説明する。図7に示すように、回転機構部45を回転させるときは、可動軸48に接続される可動ロッド47a、及び47bはそれぞれ、回転機構部45に形成される空隙の凹部から移動して、空隙の長辺方向に移動可能な位置に配置される。このとき、可動ロッド47a、及び47bは、使用者により移動方向に加重が加えられるなど、何らかの荷重が加えられる。可動ロッド47a、及び47bは、図7に示す位置に移動した後に、空隙の長辺方向に移動する(図8を参照のこと)。そして、回転機構部45の他の面に形成される空隙の凹部(図示せず)に配置される(図9を参照のこと)。この結果、可動ロッド47a、及び47bは、90度移動して、他の面の上方に固定される。
【0044】
図10、及び11を参照して、可動ロッドの動作原理の一例を説明する。図10、及び11は、破線矢印B−B´の横断面図である。可動ロッド47a、及び47bは、可動軸48に接続される。また可動軸48の一端には、弾性部49が配置される。図10において、弾性部49は、いずれの応力も受けておらず、弾性力が生じていない定常状態である(図6、及び9に対応する)。一方、図11において、弾性部49は、応力を受けて圧縮される(図7、及び8に対応する)。これは、絶縁診断装置を使用する作業者が弾性部49を圧縮する方向に応力を加えるなどにより、実現される。この状態では、可動ロッド47a、及び47bは、空隙の長辺方向に移動可能になっている。使用者が、可動ロッド47a、及び47bを移動した後に、弾性部49に加えていた応力が除荷されると、弾性部49は、図10に示す定常状態に戻る。以上、回転機構部45の回転機構の1つの実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではなく、90度回転あるいは0〜90度の範囲で任意の角度に回転する構造を採用しても良い。
【0045】
図12、及び13を参照して、回転機構部45による診断実施例を説明する。図12、及び13において、ロッドアンテナを備える部分放電検出センサ2を有する絶縁診断装置1により、GIS装置の高所にある絶縁スペーサを診断する例を示す。図12において、作業者100は、GIS設備のフランジ112a、及び112bの間に位置する絶縁スペーサ110から漏出する電磁波の垂直偏波成分を診断する。一方、図13において、作業者100は、GIS設備のフランジ112a、及び112bの間に位置する絶縁スペーサ110から漏出する電磁波の水平偏波成分を診断する。図12、及び13から明らかなように、回転機構部45を可動させることのみによって、電磁波の垂直偏波成分と、水平偏波成分との診断を切り替えることができる。
【0046】
図1を再び参照すると、絶縁性支持体7は、絶縁部71と、握り部72と、絶縁性支持体接続部46に包含されるため図1では可視されない付設部70とを有する。絶縁性支持体7は、具体的には、JIS C−4510に準拠した絶縁操作棒にすることができる。一般に絶縁操作棒は、充電されている高圧、又は特別高圧受変電設備、又は送電設備など電路における作業、いわゆる活線作業において、作業者と充電部との間の距離を確保するために使用される。
【0047】
図14に絶縁操作棒の一例を示す。絶縁操作棒9は、付設部90と、絶縁部91と、握り部92とを有する。付設部90は、金属など導体、又は絶縁体の堅牢な材質で形成され、アース線が接続される接地金具、又は活線作業用の様々な活線用器具が取り付けられる凸部94を有する。絶縁部91は、表面がウレタン塗装されたガラスFRP(Fiber Reinforced Plastic、GFRP)、塩化ビニル、又は絶縁強化木などにより形成される。絶縁部91の長さは、労働安全衛生規則第344条に規定される接近限界距離に基づいて、充電電路の使用電圧に応じて様々に規定される。例えば、充電電路の電圧が交流であり、154kVを超えて187kV以下の電圧の場合には、作業者は、充電電路との間に140cmの接近限界距離を保つ必要がある。握り部92は、活線作業に従事する者が作業の際に手でつかむ部分であり、凹凸を有する絶縁性材料が用いられる。
【0048】
絶縁操作棒9は、絶縁診断装置1が診断するガス遮断器、又はGIS設備などが配置される高圧、又は特別高圧受変電設備に、一般的には少なくとも1つ配置される。そして、一般的には、受変電設備には、その設備に要求される接近限界距離を確保することができる絶縁操作棒9が配置されている。このため、絶縁性支持体7として絶縁操作棒9を利用することが考えられる。部分放電検出部4の絶縁性支持体接続部46の形状を、絶縁操作棒9と接続できる形状にすることにより、本発明に係る絶縁診断装置1は、絶縁性支持体7として絶縁操作棒9を利用することが可能になる。絶縁診断装置1が絶縁性支持体7として絶縁操作棒9を利用することにより、様々な利点を奏する。
【0049】
第1に、絶縁診断装置1を小型化することが可能になる。活線作業に使用される従来の絶縁診断装置では、接近限界距離を確保するための長さを有する絶縁部を備えることが必須であった。しかしながら、絶縁性支持体7として絶縁操作棒9を利用することにより、絶縁診断装置1は、接近限界距離を確保する長さを有する絶縁部を有しない構造にすることが可能になる。このため、絶縁診断装置1を小型化することが可能になる。
【0050】
第2に、診断対象の電気機器の大きさに応じて、様々な高さに位置する診断部に近接するように、部分放電検出部4を配置することが可能になる。受変電設備に配置される絶縁操作棒9は、接近限界距離を確保する長さを有することは当然であるが、受変電設備内に配置される全ての電気機器に対応可能な長さを有することが一般的である。したがって、受変電設備内に配置される絶縁操作棒9を絶縁性支持体7として使用することにより、受変電設備内の電気機器の診断が良好な条件で実施できる。
【0051】
第3に、絶縁診断装置1の保守性が向上する。絶縁診断装置1を活線作業で使用する場合は、絶縁性能についての6ヶ月に1度の自主点検が義務付けられる(労働安全衛生法第45条、労働安全衛生規則第351条)。自主点検のときには、1000V以上の交流電圧が対象機器に印加される。このため、絶縁部と一体化される従来の絶縁診断装置では、センサ装置などの機器が破壊されることを防止するために、自主点検時には、これらの機器を絶縁部から電気的、及び機械的に分離させる必要があった。しかしながら、本発明に係る絶縁診断装置1では、絶縁性支持体7は、部分放電検出部4と着脱可能であるので、絶縁性支持体7のみを単体で点検することができる。さらに、受変電設備に配置される絶縁操作棒9を、絶縁性支持体7として使用する場合は、絶縁診断装置1において絶縁性能についての自主点検を実施する必要がない。受変電設備の管理者が絶縁操作棒9の自主点検を別途実施するためである。
【0052】
図15を参照して、本発明に係る絶縁診断装置の他の実施形態を説明する。図15において、本発明に係る絶縁診断装置の一実施形態におけるブロック図を示す。部分放電検出部4は、図3に示す実施形態と同様に、部分放電検出センサ2と、部分放電検出部4と、信号制御部6とを有する。本実施形態と、図3に示す実施形態とは、部分放電検出部4の構成のみが異なるので、本実施形態における部分放電検出部4の構成、及び機能について、以下に説明する。
【0053】
入力アンプ部40は、BPF(バンドパスフィルタ)10と、プリアンプ11と、ミキサ12と、中間周波フィルタ13と、ログアンプ14と、PLL(位相同期回路)シンセサイザ15と、発振器16とを有する。入力アンプ部40は、部分放電検出センサ2から検出信号を受信し、受信した検出信号を、検出部CPU42からの制御信号に従って、特定の周波数を有する適当な信号レベル(電圧)のアナログ信号に変換して、A/D変換部41に出力する回路である。
【0054】
BPF10は、部分放電検出センサ2が検出した信号から特定の周波数帯を有する信号のみを通過させるフィルタ回路である。例えばBPF10の通過帯域は、300MHz〜800MHzを通過帯域とすることができる。これは、300MHz〜800MHzの周波数帯よりも低い周波数帯では、検出信号は、外部ノイズが混在する比率が大きい一方、この帯域よりも高い周波数帯域では、検出信号は、減衰する傾向が大きいことが、実験から明らかになっているためである。しかしながら、BPF10の通過帯域は、300MHz〜800MHzの周波数帯域に限定されず、部分放電検出センサ2が配置される場所、又は診断対象の電気機器以外の電気機器の配置など周囲の電磁的な環境により、適当に設定することができる。ただし、検出部無線インタフェース44と、制御部無線インタフェース60との間のデータ無線通信の周波数帯と重複しないことは、上述の通りである。
【0055】
プリアンプ11は、BPF10を通過した信号の電圧を増幅して、ミキサ12に適当な信号を出力する増幅器である。PLLシンセサイザ15は、検出部CPU42から入力する制御信号に基づいて、発振器16の周波数を適当に制御した周波数信号をミキサ12に出力する回路である。ミキサ12は、プリアンプ22からの信号と、PLLシンセサイザ15からの信号を合成して1つの信号として出力する回路である。中間周波フィルタ13は、ミキサ12からの入力信号から中間周波数の信号成分を取り出すフィルタ回路である。中間周波フィルタ13の通過周波数を適当な幅にすることで、所望の周波数帯近傍の信号を獲得できる。例えば、中間周波フィルタ13は、1kHz〜50kHz程度の通過帯域を有する。ログアンプ14は、中間周波フィルタ13からの入力信号の電圧を、A/D変換部41への適切な電圧に出力する増幅器であり、例えば、プリアンプ11からの出力信号の電圧に相当する電圧のアナログ信号を出力する。
【0056】
このように、入力アンプ部40は、部分放電検出センサ2から検出信号を受信し、検出部CPU42が出力する制御信号に基づいて、特定の周波数を有するアナログ信号をA/D変換部41に出力する。入力アンプ部40は、検出部CPU42からの制御信号に基づいて、同様な操作を複数回繰り返して実行することができる。検出部CPU42は、この帯域内の任意の周波数を有する電磁波が入力アンプ部40を通過するように制御することができる。例えば、BPF10が300MHz〜800MHzの通過帯域を有する場合、検出部CPU42は、周波数が5MHzずつ異なる100個の電磁波が入力アンプ部40を通過するように制御することができる。
【0057】
A/D変換部41は、ログアンプ14から受信したアナログ信号を、デジタル信号に変換する回路である。検出部CPU42は、所望のサンプリング周期でアナログ信号をサンプリングするようにA/D変換部41を制御する。例えば、アナログ信号のサンプリング周期は、診断対象機器の電圧周期の2サイクルの1/100にできる。すなわち、診断対象機器の電圧周波数が50Hzの場合には、アナログ信号のサンプリング周期は、400μmにすることができる。これにより、A/D変換部41は、診断対象機器の電圧周期の2サイクルを100個のサンプリング点に分割できる。検出部CPU42は、A/D変換部41からこのようにサンプリングタイミング点における周波数の電界強度を取得すると、取得した信号レベルを、サンプリング点ごとに、記憶部43に記憶する。
【0058】
次に、検出部CPU42における部分放電の有無の判定手順の1つの実施形態について、図16〜24を参照して、詳細に説明する。図16に検出部CPU42が部分放電の有無を判定するフローを示す。以下、このフローに従って、説明する。
【0059】
ステップ1において、検出部CPU42は、記憶部43に記憶された電界強度を、サンプリング点(時間軸)、及び周波数ごとに配列する。図17に、配列された電界強度の一例を示す。時間軸Tは、診断対象機器の電圧周期の2サイクル分の電磁波を100点のサンプリング点でサンプリングした電界強度であり、サンプリング点ごとに1〜100の番号を付す。周波数軸[MHz]は、300[MHz]から800[MHz]までの周波数を任意の周波数で入力アンプ部40を通過させたデータである。この例では、300[MHz]から800[MHz]までの周波数を、5MHzずつ異なる周波数で入力アンプ部40を通過させた100個のデータが配置される。電界強度[−dBm]は、時間軸、及び周波数軸にそれぞれ配置される電磁波の電界強度を示す。したがって、この例では、時間軸方向、及び周波数方向にそれぞれ100個ずつ、合計で10000個のサンプリング点での電界強度を示す。検出部CPU42は、この10000個のポイントにおける電界強度をキャッシュなどに記憶する。
【0060】
次いで図16のステップ2において、検出部CPU42は、時間軸上の同一のサンプリング点における電界強度を、周波数の大きさに関わらず、電界強度の大きさ順に配列(ソート)する。図18に、検出部CPU42が、時間軸上の同一のサンプリング点における電界強度を大きさ順に配列した結果を示す。一般的に、部分放電により生じる電磁波は、診断対象の電気機器、又は他の電気機器などから発生する外部ノイズによる電磁波に比較して小さい。したがって、時間軸上の同一のサンプリング点において電界強度が大きい1つ、又は複数のデータは、部分放電による電磁波ではなく、診断対象の電気機器、又は架空送電線などの他の電気機器、通信機器、若しくは他の周辺環境から発生する外部ノイズであると考えることができる。
【0061】
次いでステップ3において、検出部CPU42は、ソートした配列において、所定の順位に位置するデータをそれぞれのサンプリング点から抽出する。例えば、検出部CPU42は、それぞれのサンプリング点において電界強度の大きい方から15番目に位置するデータを抽出することができる。図19に、抽出されるデータの例を示す。図19において、断面形状で示される面が、抽出されるデータに該当する。このようにして抽出したデータを使用して、検出部CPU42は、データの代表値を形成する。
【0062】
次いでステップ4において、検出部CPU42は、バックグラウンドノイズ電界強度GBNを決定する。図20に、バックグラウンドノイズ電界強度GBNを決定するために使用する代表値の一例を示す。これは、図19に示す抽出データと同等なデータである。次に、検出部CPU42は、図21に示すように、代表値を前半部と、後半部とに分割する。上述のように、これらのデータは、診断対象機器の電圧周期の2サイクル分のサンプリング点を含むため、前半部は、1サイクル目に該当し、後半部は、2サイクル目に該当する。次に検出部CPU42は、前半部、及び後半部を重ね合わせて1サイクル化する(図22、及び23を参照のこと)。すなわち、前半部、及び後半部の同一のサンプリング点(この例では、前半部の1番目の時点D1と、後半部の一番目の時点D51など)の電界強度を比較して、小さい値をその時点の電界強度とする。これにより、さらにノイズを除去することが可能である。
【0063】
次いで、検出部CPU42は、上述のようにして獲得した診断対象機器の電圧周期の1サイクルに相当するデータから、部分放電による電磁波が検出されるサイクル内の位置を決定する。一般的に、1サイクルの中で、電界強度が最大となっている点の近傍で、部分放電による電磁波が検出されると考えることができる。図24に示すように、この例では、検出部CPU42は、電界強度が最大値を示す「DD_35」において、部分放電による電磁波が検出されると決定する。この決定に基づき、検出部CPU42は、バックグラウンドノイズ電界強度BGNを決定する。当業者に周知のように、絶縁ガス中に生じる部分放電は、印加電圧の正負のいずれかの半サイクルの波高値付近で生じる(電気協同研究 第44巻 第2号「ガス絶縁機器の信頼性向上対策」を参照のこと)。一方、診断対象の電気機器の電圧は、一般的にほぼ正弦波である。このため、部分放電を検出するサンプリング点から1/4サイクル離れたサンプリング点近傍(この例では、12又は13個ずれたサンプリング点であり、図24の「DD_22」、及び「DD_22」の近傍)が、ゼロクロス点(ノイズがない場合に電界強度がゼロになる点)であると考えられる。したがって、検出部CPU42は、部分放電から1/4サイクル離れたサンプリング点近傍の電界強度に基づいて、バックグラウンドノイズ電界強度BGNを決定する。例えば、検出部CPU42は、図24の「DD_22」と、「DD_22」とにおける電界強度を比較して、小さい方をバックグラウンドノイズ電界強度BGNにできる。また「DD_22」と、「DD_22」との近傍のいくつかの電界強度の平均値をバックグラウンドノイズ電界強度GBNにできる。
【0064】
次いで図16に示すフローのステップ5において、検出部CPU42は、算出したバックグラウンドノイズ電界強度GBNと、所定のしきい値TH_BGNとの比較をする。ステップ4において算出したバックグラウンドノイズ電界強度GBNが、しきい値TH_BGNよりも大きい場合は、ステップ7において、代表値を抽出するための順位を1つ、又は複数個小さい方へ移動する。そして処理は、ステップ4に戻り、バックグラウンドノイズ電界強度BGNを算出し直す。そして、ステップ5において、算出したバックグラウンドノイズ電界強度BGNと、しきい値TH_BGNとを再び比較する。このとき、しきい値TH_BGNは、最初の値と同一の値でもよく、また当初の値にバイアス値を加減算した値にすることができる。このように、検出部CPU42は、算出されたバックグラウンドノイズの電界強度BGNがしきい値TH_BGNよりも小さくなるまで同様の処理を続ける。
【0065】
ステップ5において、検出部CPU42が、算出されたバックグラウンドノイズBGNが、しきい値TH_BGNよりも小さいと判定した場合、ステップ8において、検出部CPU42は、部分放電による電磁波の電界強度DEFを算出する。例えば、部分放電による電磁波の電界強度DEFは、図24の「DD_35」の電界強度から、ステップ4において算出したバックグラウンドノイズの電界強度BGNを減じたものにできる。また部分放電による電磁波の電界強度DEFは、「DD_35」の近傍のいくつかの時点の電界強度の平均値から、バックグラウンドノイズの電界強度BGNを減じたものにできる。
【0066】
次いでステップ9において、検出部CPU42は、部分放電による電磁波の電界強度DEFと、しきい値TH_DEFとの比較を行う。しきい値TH_DEFは、所定の値にできる。また、しきい値TH_DEFは、ステップ5の判定結果に依存した値にすることができる(ステップ6参照のこと)。例えば、しきい値TH_DEFは、バックグラウンドノイズBGNを再演算するごとに、所定の値を減算した値にすることができる。部分放電による電磁波の電界強度DEFが、しきい値TH_DEFよりも大きい場合は、検出部CPU42は、診断対象の電気機器の絶縁部に部分放電が発生していると判定する。また部分放電による電磁波の電界強度DEFが、しきい値TH_DEFよりも大きくない場合は、検出部CPU42は、診断対象の電気機器の絶縁部に部分放電が発生していないと判定する。
【0067】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明してきたが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態では、単一の部分放電検出センサ2のみを用いて、信号を検出するが、絶縁診断装置は、外部ノイズ検出用センサを有することができる。外部ノイズ検出用センサは、部分放電検出部4及び/又は信号制御部6に配置できる。この場合、特開2001−249156号公報に記載された方法などにより、絶縁診断を実行できる。
【0068】
検出部CPU42において、部分放電の有無の判定するときに、診断対象機器の電圧周期の2サイクル分の電磁波を判定対象としているが、3サイクル以上の電磁波を判定対象とすることができる。この場合、診断時間は増加するが、バックグラウンドノイズ電界強度GBNの決定精度が向上する。
【符号の説明】
【0069】
1 絶縁診断装置
2 部分放電検出センサ
4 部分放電検出部
6 信号制御部
7 絶縁性支持体
8 記録媒体
9 絶縁操作棒
【特許請求の範囲】
【請求項1】
診断対象の電気機器から電磁波を検出する部分放電検出センサと、前記部分放電検出センサが検出した信号を信号処理して、前記信号処理された信号から部分放電を含む信号を検出する信号処理部と、少なくとも前記部分放電を含む信号を無線で送信する第1の無線通信部と、を有する部分放電検出部と、
前記部分放電検出部から送信される信号を受信する第2の無線通信部を有する信号制御部と、
を有することを特徴とする絶縁診断装置。
【請求項2】
前記信号処理部は、前記部分放電検出センサが検出した信号から第1の周波数帯を抽出する信号処理を行い、前記第1の無線通信部は、前記第1の周波数帯と重複しない第2の周波数帯で信号を送信する請求項1に記載の絶縁診断装置。
【請求項3】
前記部分放電検出部は、着脱可能な支持体に結合するための結合部をさらに有する請求項1又は2に記載の絶縁診断装置。
【請求項4】
前記支持体は、絶縁操作棒である請求項3に記載の絶縁診断装置。
【請求項5】
前記部分放電検出部は、アナログ−デジタル変換部を有し、前記無線通信はデジタル通信である請求項1〜4のいずれか一項に記載の絶縁診断装置。
【請求項6】
診断対象の電気機器から電磁波を検出する部分放電検出センサと、前記部分放電検出センサが検出した信号を無線で送信する第1の無線通信部と、を有する部分放電検出部と、
前記部分放電検出部から送信される信号を受信する第2の無線通信部と、前記受信した信号を信号処理して、前記信号処理された信号から部分放電を含む信号を検出する信号処理部と、を有する信号制御部と、
を有することを特徴とする絶縁診断装置。
【請求項1】
診断対象の電気機器から電磁波を検出する部分放電検出センサと、前記部分放電検出センサが検出した信号を信号処理して、前記信号処理された信号から部分放電を含む信号を検出する信号処理部と、少なくとも前記部分放電を含む信号を無線で送信する第1の無線通信部と、を有する部分放電検出部と、
前記部分放電検出部から送信される信号を受信する第2の無線通信部を有する信号制御部と、
を有することを特徴とする絶縁診断装置。
【請求項2】
前記信号処理部は、前記部分放電検出センサが検出した信号から第1の周波数帯を抽出する信号処理を行い、前記第1の無線通信部は、前記第1の周波数帯と重複しない第2の周波数帯で信号を送信する請求項1に記載の絶縁診断装置。
【請求項3】
前記部分放電検出部は、着脱可能な支持体に結合するための結合部をさらに有する請求項1又は2に記載の絶縁診断装置。
【請求項4】
前記支持体は、絶縁操作棒である請求項3に記載の絶縁診断装置。
【請求項5】
前記部分放電検出部は、アナログ−デジタル変換部を有し、前記無線通信はデジタル通信である請求項1〜4のいずれか一項に記載の絶縁診断装置。
【請求項6】
診断対象の電気機器から電磁波を検出する部分放電検出センサと、前記部分放電検出センサが検出した信号を無線で送信する第1の無線通信部と、を有する部分放電検出部と、
前記部分放電検出部から送信される信号を受信する第2の無線通信部と、前記受信した信号を信号処理して、前記信号処理された信号から部分放電を含む信号を検出する信号処理部と、を有する信号制御部と、
を有することを特徴とする絶縁診断装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2011−242368(P2011−242368A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117242(P2010−117242)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(000003942)日新電機株式会社 (328)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(000003942)日新電機株式会社 (328)
【Fターム(参考)】
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