説明

網場設備

【課題】 設備を大がかりなものにすることなく、網場に漂着した塵芥を必要に応じて下流側へ円滑に流すことのできる網場設備を提供することを課題とする。
【解決手段】 取水路に塵芥が流れ込むのを阻止するべく、取水口の前方を横切るように配置された長尺な網場と、該網場を吊り上げるための吊上手段とを備え、前記網場が、長尺方向に並んで連結された複数のフロートを備えるとともに、長尺方向と交差する方向で迂曲可能に構成された網場設備において、前記網場は、長尺方向の途中位置に該長尺方向に延びる骨部材を備え、該骨部材は、長手方向の長さが二つ以上のフロートに対応する長さに設定され、前記吊上手段は、骨部材を吊り上げるように構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取水路に塵芥が流れ込むのを阻止すべく、取水路の取水口近傍に設けられる網場設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、発電設備や製造工場(以下、発電設備等という)に水を引き込むべく、ダムや河川から分岐して発電設備等に繋がる取水路が設けられている。そして、ダムや河川から引き込まれる水に混ざる落ち葉や、小枝、廃棄物(以下、これらを総称して塵芥という)が発電設備等の各種装置(例えば、発電装置におけるタービン等)を破損させる虞があるとして、取水路の取水口には、水の流通を許容しつつ塵芥の通過を阻止するスクリーンと、スクリーンに堆積した塵芥を取り除く堆積物除去装置とが設けられている。
【0003】
ところで、台風や大雨の後の河川やダムには、流木等の大きな塵芥が浮遊することが多く、その大きな塵芥が取水口にまで流れてくると、該塵芥がスクリーンに衝突して該スクリーンを破壊したり、スクリーンを目詰まりさせたりする虞がある。
【0004】
そのため、取水路の前段(上流側)には、大型の塵芥(浮遊物)が取水路(取水口)に到達するのを阻止するための網場設備が設けられている。かかる網場設備は、取水口の前方を横切るように配置された長尺な網場を備えている。網場は、長尺方向に並ぶようにロープ等の変形自在な部材を介して互いに連結された複数のフロートを備えている。これにより、上記構成の網場は、取水口の前方を横切るように複数のフロートが一列になって水面上で浮遊し、水面上を浮遊する塵芥の通過を阻止しつつ取水口への水の供給が可能となっている。また、この種の網場には、複数のフロートの下方に長尺方向に延びる網材を備えたものがある。かかる網場は、水面上の塵芥だけでなく、水面下にある塵芥の通過を網材で阻止しつつ、取水口への水の供給が可能となっている。
【0005】
しかしながら、上記何れの網場においても、取水口の前方を横切るように配置されるため、流木等の大きな塵芥の通過だけでなく、スクリーンで受け止められるべき小さな塵芥の通過も阻害されてしまい、網場に漂着した大小の塵芥が取水路に向けての水の流通を阻害するといった問題がある。そのため、網場に漂着した塵芥を除去する必要があるが、一般的に護岸の上面から水面までの距離が遠いため、作業者が船に乗って網場に漂着した塵芥を除去することになるが、網場に漂着した塵芥が大量であることから、人手による塵芥の除去作業は、煩雑である上に作業者に多大な負担を負わせるものである。
【0006】
そこで、網場の全体を吊り上げるようにしたものや、網場の一端部を吊り上げるようにした網場設備が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。これらの網場設備は、網場を吊り上げることで、網場に漂着していた塵芥を下流側に流し、その塵芥をスクリーンで受け止めて堆積物除去装置で取り除くようにしている。すなわち、上記何れの網場設備においても、網場に漂着していた本来スクリーンで受け止められるべき塵芥を、スクリーンで受けて既設の堆積物除去装置で除去するようにしている。
【0007】
これにより、上記網場設備は、大量に堆積した塵芥を作業者が手作業で除去する必要がなく、塵芥を円滑に除去することができるとされている。なお、スクリーンを破損させる虞のある大きな塵芥(流木)については、網場を吊り上げる前に、作業者が船に乗って除去を行ったり、主流に流したりして取水口に到達しないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−170123号公報
【特許文献2】特許第4067919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述の如く、網場全体を均一に吊り上げるようにすると、網場全体に(長尺方向の全長に亘って)剛性を付与する必要があるが、網場には長尺方向の長さが非常に長いものがあり、このような網場に対して長尺方向の全長に亘って剛性を付与するには限界がある。そのため、網場の長さによって網場全体を均一に吊り上げることができないことがある。
【0010】
また、網場に対して長尺方向の全長に亘って剛性を付与できたとしても、網場の両端部を案内するガイドが必要であったり、網場に剛性を付与する骨組み(梁材等)の存在や、網場の重量化に伴うフロートの数の増加、フロートの大型化等が構造を複雑化させてしまったりするため、網場設備の設置コストを高騰させてしまうといった問題がある。
【0011】
他方、網場の一端部を吊り上げるようにすると、網場が一端側に先上がりした姿勢(傾斜した姿勢)になるため、網場に漂着した塵芥を確実に下流側に流すには、網場の一端側を非常に高くまで吊り上げる必要がある。すなわち、網場の一端部を吊り上げるようにすると、網場の他端側に向かうにつれて水面と網場の下端との間の間隔が狭まるため、塵芥が網場に引っ掛かりやすくなることから、網場の他端側に塵芥の流通できる流路を確保するのに、網場の一端側を必要以上に持ち上げる必要がある。そのため、網場の一端部を吊り上げるようにした網場設備は、網場を吊り上げるための吊上手段が必要以上に大型化したり複雑化したりする分、設備コストを高騰させてしまうといった問題がある。
【0012】
そこで、本発明は、斯かる実情に鑑み、設備を大がかりなものにすることなく、網場に漂着した塵芥を必要に応じて下流側へ円滑に流すことのできる網場設備を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る網場設備は、取水口の前方を横切るように配置された長尺な網場と、該網場を吊り上げるための吊上手段とを備え、前記網場が、長尺方向に並んで連結された複数のフロートを備えるとともに、長尺方向と交差する方向で迂曲可能に構成された網場設備において、前記網場は、長尺方向の途中位置に該長尺方向に延びる骨部材を備え、該骨部材は、長手方向の長さが二つ以上のフロートに対応する長さに設定され、前記吊上手段は、骨部材を吊り上げるように構成されていることを特徴とする。
【0014】
上記構成の網場設備によれば、骨部材の存在で網場の途中位置が迂曲することが阻止されるため、吊上手段で骨部材を吊り上げると、網場の途中位置(骨部材の存在する部分)と水面とが均一又は略均一な間隔をあけた状態になる。これにより、網場を必要以上に吊り上げなくても水面と網場との間に網場に漂着していた塵芥を下流側に流すことのできる十分な流路を確保することができる。従って、本発明に係る網場設備は、大がかりなものにならず、また、網場に漂着した塵芥を必要に応じて下流側へ円滑に流すことができる。
【0015】
本発明の一態様として、前記網場は、複数のフロートの下方に長尺方向の略全長に亘って延びる網材を更に備え、前記骨部材は、網材又はフロートの少なくとも何れか一方に対し、全長に亘って又は長手方向に間隔をあけた少なくとも二箇所が固定されていることが好ましい。このようにすれば、フロートの下方側に存在する塵芥が不用意に下流側に流れるのを阻止することができ、管理者の意思によって吊上手段で骨部材を吊り上げたときに、塵芥を下流側へ円滑に流すことのできる十分な流路を確保することができる。
【0016】
この場合、前記骨部材は、網材の下端に沿うように配設されていることが好ましい。このようにすれば、骨部材が錘としても機能することになるため、網場を取水口の前方に配置した状態で、網材をフロートの下方で確実に垂下した姿勢にすることができ、塵芥の通過を確実に阻止することができる。
【0017】
また、前記吊上手段は、網場の上方に配設された支持体と、支持体に取り付けられた一対の第一滑車と、網場の上端側に固定された第二滑車と、索条を巻き上げるウインチとを備え、前記ウインチから引き出された索条は、一対の第一滑車及び第二滑車に対し、一方の第一滑車、第二滑車、他方の第一滑車の順で巻き掛けられ、先端が骨部材に連結されていることが好ましい。このようにすると、骨部材を吊り上げると、網材が上方に捲り上げられた後、網場全体が吊り上げられることになる。従って、網場の吊り上げ量を大きくすることなく、網場の下方に塵芥を下流側に流すための流路を形成することができる。また、上記構成の吊上手段は、第二滑車が動滑車になるため、吊上手段を吊り上げるのに必要となる索条の引っ張り力(巻き付け力)を小さくすることができ、吊上手段(ウインチ)の動力を小さくすることができる。
【0018】
そして、前記吊上手段は、一対の第一滑車及び第二滑車を一組備えるとともに、前記ウインチは、一本の索条を巻き上げ可能に構成され、第一滑車及び第二滑車は、骨部材の長手方向の中央又は略中央に対応する位置に配置され、ウインチから引き出された索条は、一対の第一滑車及び第二滑車に対し、一方の第一滑車、第二滑車、他方の第一滑車の順で巻き掛けられ、先端が骨部材の長手方向に中間位置又は略中間位置に連結されてもよい。このようにすれば、吊上手段を必要最小限の構成にしつつ網場(骨部材)を円滑に吊り上げることができる。
【0019】
また、別の態様として、前記吊上手段は、一対の第一滑車及び第二滑車を少なくとも二組備えるとともに、前記ウインチは、同期をとって少なくとも二本の索条を巻き上げ可能に構成され、各組の第一滑車及び第二滑車は、他の組の第一滑車及び第二滑車と網場の長尺方向と対応する方向で所定の間隔をあけて配置され、ウインチから引き出された各索条は、各組の一対の第一滑車及び第二滑車に対し、一方の第一滑車、第二滑車、他方の第一滑車の順で巻き掛けられ、先端が骨部材の長手方向に間隔をあけた位置に連結されてもよい。このようにすれば、網場(骨部材)をバランスよく吊り上げることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る網場設備によれば、設備を大がかりなものにすることなく、網場に漂着した塵芥を必要に応じて下流側へ円滑に流すことができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第一実施形態に係る網場設備の概略部分平面図を示す。
【図2】第一実施形態に係る網場設備を構成する網場及び吊上手段の概略正面図を示す。
【図3】図2の部分拡大図を示す。
【図4】第一実施形態に係る網場設備の作動を説明するための説明図であって、網場を部分的に吊り上げた状態の概略正面図を示す。
【図5】本発明の第二実施形態に係る網場設備の概略部分平面図を示す。
【図6】図5の部分拡大図を示す。
【図7】第二実施形態に係る網場設備の作動を説明するための説明図であって、網場を部分的に吊り上げた状態の概略正面図を示す。
【図8】本発明の他実施形態に係る網場設備を構成する網場及び吊上手段の部分正面図を示す。
【図9】本発明の他実施形態に係る網場設備を構成する網場及び吊上手段の部分正面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の第一実施形態に係る網場設備について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0023】
本実施形態に係る網場設備は、水力発電設備に水を供給するために河川やダムから分岐した取水路に塵芥が流れ込むことを阻止するためのもので、図1に示す如く、取水路Rの取水口Eの前段に設置される。なお、取水路Rの取水口E内には、落ち葉や小枝等の小さな塵芥の通過を阻止しつつ水の流通を許容したスクリーン(図示しない)と、スクリーンに堆積した塵芥を除去する堆積物除去装置(図示しない)とが設置されている。なお、前記スクリーンは、複数の桟が所定間隔をあけて並設されたり、桟を縦横に組んで格子状に形成されたりするもので、複数の桟によって塵芥の通過を阻止し、桟の間から水が流れるようになっている。これに対し、堆積物除去装置は、スクリーンに沿って移動する除去部材を備えており、スクリーンに堆積した塵芥を除去部材で除去するようになっている。
【0024】
そして、本実施形態に係る網場設備1は、塵芥Fが取水口E(スクリーン)に到達するのを阻止するべく、取水口Eの前方を横切るように配置された長尺な網場2と、該網場2を吊り上げるための吊上手段5とを備えている。
【0025】
前記網場2は、図2及び図3に示す如く、長尺方向に並んで連結された複数のフロート20…と、複数のフロート20…の下方に長尺方向の略全長に亘って延びる網材(以下、第一網材という)21とを備えており、長尺方向と交差する方向で迂曲可能に構成されている。また、本実施形態に係る網場2は、長尺方向の途中位置に該長尺方向に延びる骨部材22をさらに備えている。すなわち、前記網場2は、長尺方向の途中位置で迂曲するのを阻止するための骨部材22を備えている。
【0026】
複数のフロート20…は、一般的に中空の樹脂成形品で構成されている。各フロート20…は、必要な浮力を得るために、サイズや形状が設定されている。本実施形態に係るフロート20…は、それぞれ外形が俵状に形成されており、これに伴って、長径方向が網場2の長尺方向と一致するように配置されている。
【0027】
そして、複数のフロート20…は、網場2の長尺方向の全長以上の長さに設定された迂曲可能なロープ(以下、メインロープという)23が挿通されており、該メインロープ23を介して長尺方向に並んだ状態で連結されている。このように、複数のフロート20…に対して共通する一本のメインロープ23が挿通されることで、フロート20…間でメインロープ23が曲がることができるため、網場2全体が長尺方向と交差する方向で迂曲可能になっている。なお、本実施形態に係る網場2は、複数のフロート20…の真上及び真下を通るように網場2の長尺方向の全長以上の長さに設定された迂曲可能なロープ24,25が配置されている(以下、フロート20…の真上を通るロープ24を上段固定用ロープといい、フロート20…の真下を通るロープ25を中段固定用ロープという)。
【0028】
また、本実施形態に係る網場2は、各フロート20…の両側に上段固定用ロープ24と中段固定用ロープ25との間で上下方向に延びるロープ(以下、補助ロープという)26…が設けられている。これに伴い、本実施形態に係る網場2は、各フロート20…が上段固定用ロープ24、中段固定用ロープ25、及び一対の補助ロープ26…に固定されている。
【0029】
本実施形態に係る網場2は、複数のフロート20…が長尺方向に所定間隔をあけて配置されている。これに伴い、本実施形態に係る網場2は、塵芥Fがフロート20…間を通過するのを防止すべく、各フロート20…間に網材(以下、第二網材という)27…が張設されている。第二網材27…は、変形自在な網材で構成されている。そして、第二網材27…は、上段固定用ロープ24、中段固定用ロープ25、及び補助ロープ26…が画定する方形領域に対応した形状に形成されており、上下端部が上段固定用ロープ24及び中段固定用ロープ25に固定され、網場2の長尺方向の両端部が補助ロープ26…に固定されている。なお、本実施形態において、各ロープ24,25,26に対するフロート20…の固定や、各ロープ24,25,26,28,29に対する網材(第一網材21、第二網材27…)の固定は、番線やロープ等で結束する(括り付ける)ことで行っているが、例えば、番線やロープ等に代えて専用の金具等で固定するようにしても勿論よい。
【0030】
前記第一網材21は、変形自在な網材で構成されている。そして、本実施形態に係る第一網材21は、帯状に形成されており、長手方向が網場2の長尺方向と一致するように配置されている。すなわち、本実施形態に係る第一網材21は、帯状をなすように形成された一枚の網材で構成されている。そして、第一網材21は、長手方向と直交する短手方向の一端が中段固定用ロープ25に固定されている。これにより、第一網材21は、中段固定用ロープ25に沿うように配置されている。本実施形態に網場2は、第一網材21の短手方向の他端に網場2の長尺方向の全長以上の長さに設定された迂曲可能なロープ(以下、下段固定用ロープという)28が配置されている。
【0031】
そして、本実施形態に係る網場2は、両端が中段固定用ロープ25と下段固定用ロープ28に連結されて上下方向に延びる補強用ロープ29…を備えている。そして、補強用ロープ29…は、第一網材21の長手方向に間隔をあけて複数設けられている。このように複数の補強用ロープ29…は、第一網材21の上下端部が固定される中段固定用ロープ25と下段固定用ロープ28との間で上下方向に延びた状態になっているため、前記第一網材21は、各補強用ロープ29…にも結束されている。
【0032】
骨部材22は、網場2を部分的に吊り上げる範囲を決定する部材であり、山型鋼やC型鋼等の型鋼、角管や丸管等の鋼管等で構成される。
【0033】
本実施形態に係る骨部材22は、長手方向の長さが二つ以上のフロート20…に対応する長さに設定されている。すなわち、骨部材22は、網場2の長尺方向で間隔をあけて配置された複数のフロート20…のうち、少なくとも二つのフロート20…に対向することのできる長さに設定されている。なお、網場2の設置場所によって、塵芥Fの漂着状態も異なるため、骨部材22の長手方向の長さ(網場2の長尺方向と対応する方向の長さ)は、(1)少なくとも二つのフロート20…に対向することのできる長さ以上に設定されること、(2)網場2の長尺方向の全長よりも短く設定されること、(3)骨部材22を吊り上げたときにその骨部材22の両側で網場2が斜めに垂れ下がることを許容した長さであること、の三つの条件を満足した上で、設置される場所(塵芥Fの漂着範囲)に応じた長さに適宜設定される。
【0034】
そして、骨部材22は、網材又はフロート20…の少なくとも何れか一方に対し、長手方向の全長に亘って又は長手方向に間隔をあけた少なくとも二箇所が固定される。本実施形態に係る骨部材22は、第一網材21の下端に沿うように配置されており、長手方向に間隔をあけた複数箇所が第一網材21の下端部に直接的又は間接的に固定されている。本実施形態においては、第一網材21の下端に沿って下段固定用ロープ28が設けられているため、骨部材22は、長手方向の複数箇所が下段固定用ロープ28に対して固定されている。
【0035】
そして、本実施形態に係る骨部材22は、吊上手段5の後述するウインチ54の索条(本実施形態においてはワイヤーロープ)W1,W2を連結するための被連結体30が上部に固定されている。被連結体30は、環状に形成されたいわゆるアイで構成されている。そして、本実施形態に係る網場2は、前記被連結体30が骨部材22の長手方向に間隔をあけて二つ設けられている。すなわち、前記網場2は、骨部材22の長手方向の中央位置を基準に対称位置となる二箇所に被連結体30が配置されている。
【0036】
また、本実施形態に係る網場2は、ウインチ54の索条W1,W2を案内するガイド体31がフロート20…の上方側に固定され、また、このガイド体31と隣り合うように、後述する第二滑車53がフロート20…の上方側に固定されている。前記ガイド体31は、環状に形成されており、骨部材22に固定された被連結体30の配置に対応するように配置される。従って、本実施形態に係る網場2は、被連結体30が骨部材22の長手方向に間隔をあけて二つ設けられているため、ガイド体31については網場2の長尺方向(骨部材22の長手方向と対応する方向)に間隔をあけて二つ設けられ、各ガイド体31に隣り合うように第二滑車53が設けられている。各ガイド体31及び第二滑車53は、上段固定用ロープ24に固定されている。
【0037】
本実施形態に係る網場2は、以上の構成からなり、図1及び図2に示す如く、取水路Rの両側にある一対の護岸S1,S2に長尺方向の両端が連結されている。これにより、網場2は、取水口Eの前方を横切るように配置されている。なお、本実施形態に係る網場2は、水の流通に伴って沈殿する土砂を排出すべく取水口Eの近傍に設けられた排砂門Gの前方も横切るように配置されている(図1参照)。
【0038】
前記吊上手段5は、図2に示す如く、網場2の上方に配設された支持体50と、支持体50に取り付けられた一対の第一滑車51,52と、網場2の上端側に固定された前記第二滑車53と、索条W1,W2を巻き上げるウインチ54とを備えている。
【0039】
前記支持体50は、水面よりも上方に配置されるもので、取水路Rの両側にある一対の護岸S1,S2のうちの少なくとも何れか一方から網場2の上方に向けて延びるように配置される。すなわち、支持体50は、網場2の骨部材22(索条W1,W2の連結位置)の上方位置(真上の位置)或いは上方位置の近傍を少なくとも通るように配置される(図1参照)。
【0040】
本実施形態に係る支持体50は、一対の護岸S1,S2間に架設されたワイヤーロープで構成されている。具体的には、本実施形態にかかる支持体50は、ワイヤーロープで構成されており、その途中位置がウインチ54の索条W1,W2を連結する位置(被連結体30)の上方位置近傍を通るように、一端部が一方の護岸S1に連結され、他端部が他方の護岸S2に連結されている。これにより、本実施形態に係る支持体50(ワイヤーロープ)は、水面を基準にして所定高さ位置(本実施形態においては、網場2を吊り上げるときの吊上量(最大吊上量)に余裕代を加えた高さ位置)に配置されている。
【0041】
そして、図3に示す如く、一対の第一滑車51,52は、骨部材22に対する索条W1,W2の連結位置の上方位置の近傍で支持体50に取り付けられている。なお、第一滑車51,52は、支持体50に対して一定位置で固定しもよいし、本実施形態のように支持体50をワイヤーロープで構成する場合においては、ワイヤーロープの延びる方向に移動可能に設けてもよい。本実施形態において、前記第一滑車51,52は、支持体(ワイヤーロープ)50が挿通され、該支持体50の延びる方向に移動可能に設けられたリング(採番しない)に固定されている。これにより、本実施形態に係る第一滑車51,52は、水の流れに対応して迂曲する網場2の姿勢の変更(骨部材22に対する索条W1,W2の連結位置の移動)に対応するように、支持体(ワイヤーロープ)50の延びる方向で移動できるようになっている。
【0042】
前記ウインチ54は、図2に示す如く、何れか一方の護岸S1に固定されている。そして、ウインチ54から引き出された索条W1,W2は、図3に示す如く、一対の第一滑車51,52及び第二滑車53に対して一方の第一滑車51、第二滑車53、他方の第一滑車52の順で巻き掛けられ、先端が骨部材22に連結されている。本実施形態に係る網場2は、上述の如く、フロート20…の上方側にガイド体31が設けられ、骨部材22に被連結体30が設けられているため、他方の第一滑車52に巻き掛けられた索条W1,W2は、ガイド体31に挿通された上で先端部が被連結体30に連結されている。
【0043】
本実施形態に係る吊上手段5は、前記一対の第一滑車51,52及び第二滑車53を二組A,B備えている。これに伴い、前記ウインチ54は、同期をとって二本の索条W1,W2を巻き上げ可能に構成されている。すなわち、本実施形態に係る吊上手段5に採用されるウインチ54は、図1及び図2に示す如く、二本の索条W1,W2を巻き取り可能なドラムDを備えており、そのドラムDを回転させることで二本の索条W1,W2が同期をとりつつ巻き上げられるようになっている。
【0044】
各組A,Bの一対の第一滑車51,52及び第二滑車53は、図2及び図3に示す如く、他の組A,Bの一対の第一滑車51,52及び第二滑車53と網場2の長尺方向で所定の間隔をあけて配置されている。すなわち、二組A,Bの第一滑車及び第二滑車53は、骨部材22に固定した被連結体30の配置に対応するように設けられている。
【0045】
そして、ウインチ54から引き出された各索条W1,W2は、各組A,Bの一対の第一滑車51,52及び第二滑車53に対し、一方の第一滑車51、第二滑車53、他方の第一滑車52の順で巻き掛けられ、先端が骨部材22の長手方向に間隔をあけた位置に連結されている。
【0046】
すなわち、図3に示す如く、ウインチ54から引き出された一方の索条W1は、二組A,Bのうちの一方の組Aの一対の第一滑車51,52及び第二滑車53に対し、一方の第一滑車51、第二滑車53、他方の第一滑車52の順で巻き掛けられ、先端が骨部材22に固定された一方の被連結体30に連結され、ウインチ54から引き出された他方の索条W2は、二組A,Bのうちの他方の組Bの一対の第一滑車51,52及び第二滑車53に対し、一方の第一滑車51、第二滑車53、他方の第一滑車52の順で巻き掛けられ、先端が骨部材22に固定された他方の被連結体30に連結されている。なお、各索条W1,W2は、被連結体30に対応して配置されたガイド体31に挿通された上で、被連結体30に連結されている。
【0047】
本実施形態に係る網場設備1は、以上の構成からなり、次に作動について説明することとする。
【0048】
本実施形態に係る網場設備1は、上述の如く、取水路Rの前段に網場2を浮揚させているため、大雨や台風等で流れてくる流木や不法投棄された廃棄物のような大型の塵芥が取水口Eに向けて流れることを阻止することができる。これにより、下流側の取水口Eに設けられたスクリーンや堆積物除去装置が大型の塵芥との接触で故障してしまうことを防止することができる。
【0049】
そして、網場2は、大雨や台風等でない場合であっても常設されている(浮揚している)ため、本来スクリーンで下流側への流通が阻止され、堆積物除去装置によって回収(除去)されるべき小型の塵芥(例えば、落ち葉)Fが漂着してしまう。そして、これらの塵芥Fの漂着(堆積)が多くなると、その塵芥Fをスクリーンに向けて流すようにする。すなわち、網場2に漂着した塵芥Fが多くなると、ウインチ54を駆動して網場2を吊り上げる。
【0050】
このとき、ウインチ54を駆動すると、索条W1,W2がドラムDに巻き取られていくに伴い、まず、骨部材22のみが上方側に移動することになる。そして、骨部材22がガイド体31まで移動すると、これらが干渉する結果、次に骨部材22とともに第一網材21及びフロート20…も一緒に吊り上げられることになる。そうすると、網場2は、図4に示す如く、骨部材22の配置された部分だけが水面と平行又は略平行になった姿勢で吊り上げられる。すなわち、網場2は、骨部材22の配置された部分が水面に対して略一定の間隔をあけるように部分的に持ち上げられる。本実施形態おいては、同期をとって骨部材22の両端側を吊り上げるようにしているため、長尺な骨部材22を吊り上げるようにしても、骨部材22が横方向に延びた姿勢を維持しつつ吊り上げられることになる。これにより、網場2の中央部分(骨部材22のある部分)は、安定して吊り上げられることになる。
【0051】
また、網場2が吊り上げられる際、第二滑車53が動滑車になるため、ウインチ54の巻き上げに必要な駆動源(電力)が少なくなり、無駄なエネルギの消費をすることなく網場2が吊り上げられることになる。
【0052】
そして、網場2の途中位置(骨部材22のある部分)の配置が、網場2に漂着していた塵芥Fを下流側に流通させることのできる配置になるとウインチ54を止め、網場2をその状態で維持させる。このように網場2が部分的に吊り上げられると、網場2は骨部材22の両側にある部分が長尺方向の端に向かって先下りに傾斜した状態になるが、上述の如く、骨部材22の存在する部分が塵芥Fを円滑に流通させることのできる配置になるため、網場2が水に浸かった部分があっても、その部分に塵芥が漂着することが防止される。
【0053】
そして、このように網場2を部分的に吊り上げると、該網場2に漂着していた塵芥が下流側に流れ、スクリーンで受け止められることになるので、そのスクリーンに堆積した塵芥を堆積物除去装置で除去する。
【0054】
そして、網場2に漂着していた塵芥Fの殆どが下流側に流れると、ウインチ54を逆転駆動する。そうすると、網場2全体が下方に降りていき、フロート20…が水面上に到達すると浮揚した状態になる。そして、骨部材22が型鋼で構成されているため、錘になり、上述の如くウインチ54を逆転駆動させ続けると、第一網材21が徐々に垂下した状態になる。そして、第一網材21が完全に垂下した姿勢になると、ウインチ54を止める。これにより、塵芥Fが下流側に流れてしまうのを防止した状態に復帰することになる。
【0055】
以上のように、本実施形態に係る網場設備1は、前記網場2が長尺方向の途中位置に該長尺方向に延びる骨部材22を備え、該骨部材22は、長手方向の長さが二つ以上のフロート20…に対応する長さに設定され、前記吊上手段5が骨部材22を吊り上げるように構成されているため、大がかりなものにならず、また、網場2に漂着した塵芥Fを必要に応じて下流側へ円滑に流すことができる。
【0056】
また、前記網場2が複数のフロート20…の下方に長尺方向の略全長に亘って延びる第一網材21を備え、前記骨部材22が第一網材21又はフロート20…の少なくとも何れか一方に対し、全長に亘って又は長手方向に間隔をあけた少なくとも二箇所が固定されているので、フロート20…の下方側(水面下)に存在する塵芥Fが不用意に下流側に流れるのを阻止することができ、管理者の意思によって吊上手段5で骨部材22を吊り上げたときに、塵芥Fを下流側へ円滑に流すことのできる十分な流路を確保することができる。
【0057】
また、記骨部材22は、第一網材21の下端に沿うように配設されているので、骨部材22が錘としても機能することになり、網場2を取水口Eの前方に配置した状態で、網材をフロート20…の下方で確実に垂下した姿勢にすることができ、塵芥Fの通過を確実に阻止することができる。
【0058】
そして、前記吊上手段5は、網場2の上方に配設された支持体50と、支持体50に取り付けられた一対の第一滑車51,52と、網場2の上端側に固定された第二滑車53と、索条W1,W2を巻き上げるウインチ54とを備え、前記ウインチ54から引き出された索条W1,W2は、一対の第一滑車51,52及び第二滑車53に対し、一方の第一滑車51、第二滑車53、他方の第一滑車52の順で巻き掛けられ、先端が骨部材22に連結されているので、第二滑車53が動滑車になり、吊上手段5を吊り上げるのに必要となる索条W1,W2の引っ張り力(巻き付け力)を小さくすることができ、吊上手段5(ウインチ54)の動力を小さくすることができる。
【0059】
特に、前記吊上手段5は、一対の第一滑車51,52及び第二滑車53を二組A,B備えるとともに、前記ウインチ54は、同期をとって二本の索条W1,W2を巻き上げ可能に構成され、各組A,Bの第一滑車51,52及び第二滑車53は、他の組A,Bの第一滑車51,52及び第二滑車53と網場2の長尺方向と対応する方向で所定の間隔をあけて配置され、ウインチ54から引き出された各索条W1,W2は、各組の一対の第一滑車51,52及び第二滑車53に対し、一方の第一滑車51、第二滑車53、他方の第一滑車52の順で巻き掛けられ、先端が骨部材22の長手方向に間隔をあけた位置に連結されているので、網場2の骨部材22の設けられた部分をバランスよく吊り上げることができる。
【0060】
次に、本発明の第二実施形態に係る網場設備について説明する。なお、本実施形態に係る網場設備は、第一実施形態に係る網場設備1と基本的な構成が共通しているため、第一実施形態に係る網場設備1の構成と同一の構成又は相当する構成については、同一名称及び同一符号を付してここでの説明を割愛し、相違する構成を中心に説明することとする。
【0061】
本実施形態に係る網場設備1は、第一実施形態と同様に、前記取水路Rの取水口Eを対象に設けられるもので、図5に示す如く、取水路R(取水口E)に塵芥Fが流れ込むのを阻止するべく、取水口Eの前方を横切るように配置された長尺な網場2と、該網場2を吊り上げるための吊上手段5とを備えている。
【0062】
本実施形態に係る網場2は、図5及び図6に示す如く、第一実施形態と同様に、複数のフロート20…、第一網材21、第二網材27…、及び骨部材22を備えている。そして、本実施形態に係る網場2は、フロート20…、第一網材21第二網材27…、骨部材22の配置や素材が第一実施形態と同一に設定されている。
【0063】
本実施形態に係る網場2は、ウインチ54の索条Wを接続する位置が一箇所に設定されている。具体的には、本実施形態に係る骨部材22は、吊上手段5のウインチ54の索条(ワイヤーロープ)Wを連結するための被連結体30が一つ固定されている。そして、索条Wを接続する位置が骨部材22の長手方向の中央になるよう、前記被連結体30は、骨部材22の中央位置の上部に固定されている。これに伴い、本実施形態に係る網場2は、ウインチ54の索条Wを案内するガイド体31が被連結体30の配置に対応するようにフロート20…の上方側に固定され、また、このガイド体31と隣り合うように、第二滑車53がフロート20…の上方側に固定されている。なお、本実施形態においてもガイド体31、及び第二滑車53は、上段固定用ロープ24に固定されている。
【0064】
そして、吊上手段5は、第一実施形態と同様に、網場2の上方に配設された支持体50と、支持体50に取り付けられた一対の第一滑車51,52と、網場2の上端側に固定された前記第二滑車53と、索条Wを巻き上げるウインチ54とを備えているが、本実施形態においては、索条Wの連結箇所が一箇所になっているため、一対の第一滑車51,52及び第二滑車53は、索条Wの連結箇所に対応するように一組設けられている。また、このように一対の第一滑車51,52及び第二滑車53が一組設けられるに伴い、ウインチ54は一本の索条Wを巻き取るように構成されている。すなわち、本実施形態に係るウインチ54には、一本の索条Wを巻き取るドラムDを備えたものが採用されている。
【0065】
そして、ウインチ54は、何れか一方の護岸S1に固定されている。そして、ウインチ54から引き出された索条Wは、図6に示す如く、一対の第一滑車51,52及び第二滑車53に対して一方の第一滑車51、第二滑車53、他方の第一滑車52の順で巻き掛けられ、先端が骨部材22の中央位置(被連結体30)に連結されている。なお、本実施形態においても、ガイド体31が設けられているため、他方の第一滑車52に巻き掛けられた索条Wは、ガイド体31に挿通された上で先端部が被連結体30に連結されている。
【0066】
本実施形態に係る網場設備1は、以上の構成からなり、骨部材22に対して連結する索条Wが一本で、これに伴って、第一滑車及び第二滑車53が一組設けられた以外、第一実施形態の網場設備1と同様の構成であるため、骨部材22の存在で網場2の迂曲が規制されることになり、図7に示す如く、吊上手段5で骨部材22を吊り上げて網場2を部分的に水面から引き上げたときに、網場2に漂着していた塵芥Fを下流側に流すことのできる十分な流路を形成することができる。
【0067】
すなわち、本実施形態に係る網場設備1は、前記網場2が長尺方向の途中位置に該長尺方向に延びる骨部材22を備え、該骨部材22は、長手方向の長さが二つ以上のフロート20…に対応する長さに設定され、前記吊上手段5が骨部材22を吊り上げるように構成されているため、大がかりなものにならず、また、網場2に漂着した塵芥Fを必要に応じて下流側へ円滑に流すことができる。
【0068】
また、前記網場2が複数のフロート20…の下方に長尺方向の略全長に亘って延びる第一網材21を備え、前記骨部材22が第一網材21又はフロート20…の少なくとも何れか一方に対し、全長に亘って又は長手方向に間隔をあけた少なくとも二箇所が固定されているので、フロート20…の下方側(水面下)に存在する塵芥Fが不用意に下流側に流れるのを阻止することができ、管理者の意思によって吊上手段5で骨部材22を吊り上げたときに、塵芥Fを下流側へ円滑に流すことのできる十分な流路を確保することができる。
【0069】
また、前記骨部材22は、第一網材21の下端に沿うように配設されているので、骨部材22が錘としても機能することになり、網場2を取水口Eの前方に配置した状態で、網材をフロート20…の下方で確実に垂下した姿勢にすることができ、塵芥Fの通過を確実に阻止することができる。
【0070】
そして、前記吊上手段5は、網場2の上方に配設された支持体50と、支持体50に取り付けられた一対の第一滑車51,52と、網場2の上端側に固定された第二滑車53と、索条Wを巻き上げるウインチ54とを備え、前記ウインチ54から引き出された索条Wは、一対の第一滑車51,52及び第二滑車53に対し、一方の第一滑車51、第二滑車53、他方の第一滑車52の順で巻き掛けられ、先端が骨部材22に連結されているので、第二滑車53が動滑車になり、吊上手段5を吊り上げるのに必要となる索条Wの引っ張り力(巻き付け力)を小さくすることができ、吊上手段5(ウインチ54)の動力を小さくすることができる。また、一対の第一滑車51,52及び第二滑車53を一組設けるとともに、これらの滑車51,52,53に巻き掛けた索条Wの先端を骨部材22の長手方向に中間位置又は略中間位置の一箇所に連結するようにしたので、吊上手段5を必要最小限の構成にしつつ網場(骨部材)を円滑に吊り上げることができる。
【0071】
尚、本発明の網場設備は、上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0072】
上記各実施形態において、フロート20…の下方に第一網材21を備えた網場2について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、第一網材21を設けることなく複数のフロート20…を横並びに配置した網場2であってもよい。このようにしても、水面上で複数のフロート20…が浮くため、そのフロート20…で大型の塵芥Fの通過を阻止することができる。但し、水面下にある塵芥Fが下流側に流れる可能性が高まるため、フロート20…の下方に第一網材21を設けることが好ましいことは言うまでもない。
【0073】
上記各実施形態において、複数のフロート20…を網場2の長尺方向に間隔をあけて配置し、その間に第二網材27…を配置するようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、図8に示す如く、フロート20…同士を接近させるように配置するようにしてもよい。但し、この場合においても、網場2全体が長尺方向と交差する方向で迂曲可能に構成されることが前提である。
【0074】
上記各実施形態において、骨部材22を第一網材21の下端に沿うように配置したが、これに限定されるものではなく、例えば、図9に示す如く、骨部材22を網場2の上部(上段固定用ロープ24)に沿うように設けてもよい。但し、上記各実施形態のように網場2に第一網材21を設けていると、フロート20…から第一網材21が垂れ下がった状態になるため、骨部材22を吊り上げて網場2を部分的に水面から引き上げるときの網場2の引き上げ量が多くなることから、上記各実施形態のように、骨部材22を第一網材21の下端部に沿わせるように配置するとともに、一対の第一滑車51,52及び第二滑車53を備えた吊上手段5を採用することが好ましいことは言うまでもない。
【0075】
そして、上記各実施形態において、一対の第一滑車51,52及び第二滑車53を設けることで、骨部材22が網場2の上部にまで吊り上げられた後に、網場2が引き上げられるように構成したが、例えば、図9に示す如く、網場2の上部又は下部に骨部材22を配置し、吊上手段5で骨部材22を連続的に吊り上げて網場2を引き上げるようにしてもよい。すなわち、支持体50に滑車(採番しない)を取り付け、ウインチ54から引き出した索条W1,W2,Wを前記滑車に巻き掛けた上で網場2の骨部材22に連結するようにしてもよい。但し、このようにすると、網場2に第一網材21を設けたときに、網場2を水面から引き上げるための吊り上げ量が多くなるため、網場2に第一網材21を設ける場合には、上記各実施形態と同様に、第一網材21の下端部に沿うように骨部材22を設け、一対の第一滑車51,52、第二滑車53、及びウインチ54を備えた吊上手段5を採用することが好ましいことは言うまでもない。
【0076】
上記各実施形態において、第二網材27…を第一網材21に対して別体で構成したが、これに限定されるものではなく、フロート20…を網場2の長尺方向に間隔をあけて配置する場合には、第一網材21と第二網材27…とを一体的に成形し、第一網材21をフロート20…の下方に配置するとともに、第二網材27…をフロート20…間に配置するようにしてもよい。
【0077】
上記各実施形態において、吊上手段5のウインチ54が巻き上げる索条W1,W2,Wとしてワイヤーロープを一例に挙げたが、これに限定されるものではなく、例えば、索条W1,W2,Wとしてのリングチェーンを巻き上げるウインチ54であってもよい。この場合、第一滑車51,51や第二滑車53をリングチェーン用のものを採用することは言うまでもない。
【0078】
上記各実施形態において、第一滑車51,52を支持する支持体50として、一対の護岸S1,S2間に架設したワイヤーロープを採用したが、支持体50はこれに限定されるものではなく、例えば、何れか一方の護岸S1,S2から網場2(骨部材22に対する索条W1,W2,Wの連結位置)の上方位置又はその近傍に延びるアームであってもよい。
【0079】
上記各実施形態において、支持体50、第一滑車51,52、第二滑車53、及びウインチ54で吊上手段5を構成したが、これに限定されるものではなく、例えば、吊上手段5は、護岸S1,S2から網場2の上方位置又は上方位置近傍に向けて延出した支持体50としてのアームと、アームに固定された駆動機構と、該駆動機構によって上下方向に昇降する昇降体とを備え、該昇降体を骨部材22に連結するようにしたものであってもよい。そして、この場合、昇降体の少なくとも一部をラック又は雄ネジで構成し、駆動機構にラックに噛合するギア又は雄ネジに螺動する雌ネジ部材を設け、ギア又はねじ部材をモータ駆動させるようにしてもよい。
【0080】
上記各実施形態において、複数のフロート20…にメインロープ23を挿通することでフロート20…同士を連結するようにしたが、これに限定されるものではなく、複数のフロート20…にメインロープ23を挿通することなく、各フロート20…を上段固定用ロープ24及び中段固定用ロープ25に固定し、これらのロープ24,25を介して複数のフロート20…を連結するようにしてもよい。また、隣り合うフロート20…同士を鎖やロープ等で直接連結するようにしてもよい。すなわち、網場2は、複数のフロート20…を連結するための手段がフロート20…間で変形可能に構成され、長尺方向と交差する方向に迂曲可能に構成されればよい。
【0081】
上記各実施形態に係る第一網材21は、帯状をなすように形成された一枚の網材で構成するようにしたが、これに限定されるものではなく、第一網材21は、一枚の網材で構成されたものに限定されるものではなく、例えば、中段固定用ロープ25、下段固定用ロープ28、及び補強用ロープ29…で画定される複数の方形領域のそれぞれに四角形状の網材を張設したり、四角形状の網材を繋いだりすることで、複数のフロート20…の下方で網場2の長尺方向に延びる第一網材21を形成するようにしてもよい。
【0082】
上記各実施形態において、中段固定用ロープ25と下段固定用ロープ28との間に補強用ロープ29…を設け、第一網材21を補強するようにしたが、補強用ロープ29…は第一網材21の強度等を考慮して必要に応じて設ければよい。また、その他のロープ24,25,26,28を設けるかどうかも、網場2の強度等を考慮して適宜変更すればよい。
【0083】
上記各実施形態において、取水口Eにスクリーンと堆積物除去装置とを備えた設備を前提に説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、取水口Eにスクリーンのみが設置された設備であってもよい。すなわち、上記実施形態のように、取水口E近傍に排砂門Gがあるような設備や、取水路R近傍に別の水路が形成されているような設備の場合、取水路Rへの取水を停止した状態で、排砂門Gを開いたり、別の水路で水を流したりすることで、網場2に漂着していた塵芥Fは、取水路R側に流れることなく、水の流れにのって排砂門Gや別の水路から流れ出ることになり、網場2に漂着していた塵芥Fがスクリーンに堆積することがない、或いは堆積する量が少ないため、網場設備2を設置する設備は、必ずしも堆積物除去装置を備えた設備を対象とするものではない。
【0084】
上記第一実施形態において、骨部材22の二箇所を吊り上げるようにしたが、これに限定されるものではなく、骨部材22の長手方向に間隔をあけた三箇所以上で骨部材22を吊り上げるようにしてもよい。この場合、吊り上げ箇所の数に応じて一対の第一滑車51,52及び第二滑車53を三組以上設ければよい。これに伴い、三本以上の索条を同期をとって巻き上げるようにしたウインチ54を採用してもよい。そして、第一実施形態において、一台のウインチ54で二本の索条W1,W2を巻き上げるようにしたが、これに限定されるものではなく、一台のウインチ54で一本の索条Wを巻き上げるようにし、吊り上げ箇所の数に応じた台数(巻き上げる索条W1,W2の本数に応じた台数)のウインチ54で骨部材22の複数箇所を吊り上げるようにしても勿論よい。
【符号の説明】
【0085】
1…網場設備、2…網場、5…吊上手段、20…フロート、21…第一網材、22…骨部材、23…メインロープ、24…上段固定用ロープ、25…中段固定用ロープ、26…補助ロープ、27…第二網材、28…下段固定用ロープ、29…補強用ロープ、30…被連結体、31…ガイド体、50…支持体、51,52…第一滑車、53…第二滑車、54…ウインチ、A,B…組、E…取水口、F…塵芥、G…排砂門、R…取水路、S1,S2…護岸、W1,W2,W…索条

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取水口の前方を横切るように配置された長尺な網場と、該網場を吊り上げるための吊上手段とを備え、前記網場が、長尺方向に並んで連結された複数のフロートを備えるとともに、長尺方向と交差する方向で迂曲可能に構成された網場設備において、前記網場は、長尺方向の途中位置に該長尺方向に延びる骨部材を備え、該骨部材は、長手方向の長さが二つ以上のフロートに対応する長さに設定され、前記吊上手段は、骨部材を吊り上げるように構成されていることを特徴とする網場設備。
【請求項2】
前記網場は、複数のフロートの下方に長尺方向の略全長に亘って延びる網材を更に備え、前記骨部材は、網材又はフロートの少なくとも何れか一方に対し、全長に亘って又は長手方向に間隔をあけた少なくとも二箇所が固定されている請求項1記載の網場設備。
【請求項3】
前記骨部材は、網材の下端に沿うように配設されている請求項2に記載の網場設備。
【請求項4】
前記吊上手段は、網場の上方に配設された支持体と、支持体に取り付けられた一対の第一滑車と、網場の上端側に固定された第二滑車と、索条を巻き上げるウインチとを備え、前記ウインチから引き出された索条は、一対の第一滑車及び第二滑車に対し、一方の第一滑車、第二滑車、他方の第一滑車の順で巻き掛けられ、先端が骨部材に連結されている請求項3記載の網場設備。
【請求項5】
前記吊上手段は、一対の第一滑車及び第二滑車を一組備えるとともに、前記ウインチは、一本の索条を巻き上げ可能に構成され、第一滑車及び第二滑車は、骨部材の長手方向の中央又は略中央に対応する位置に配置され、ウインチから引き出された索条は、一対の第一滑車及び第二滑車に対し、一方の第一滑車、第二滑車、他方の第一滑車の順で巻き掛けられ、先端が骨部材の長手方向に中間位置又は略中間位置に連結されている請求項4記載の網場設備。
【請求項6】
前記吊上手段は、一対の第一滑車及び第二滑車を少なくとも二組備えるとともに、前記ウインチは、同期をとって少なくとも二本の索条を巻き上げ可能に構成され、各組の第一滑車及び第二滑車は、他の組の第一滑車及び第二滑車と網場の長尺方向と対応する方向で所定の間隔をあけて配置され、ウインチから引き出された各索条は、各組の一対の第一滑車及び第二滑車に対し、一方の第一滑車、第二滑車、他方の第一滑車の順で巻き掛けられ、先端が骨部材の長手方向に間隔をあけた位置に連結されている請求項4記載の網場設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−255216(P2010−255216A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−103801(P2009−103801)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】