説明

線区集中電子連動装置

【課題】駅間の中間閉そく区間に軌道回路が設けられていない区間で、簡単な構成で故障モードを減らして駅間の列車を確実に検知する。
【解決手段】伝送回線2を介して電子端末部4a,4bに接続された電子連動論理部3の駅間進入判定部6は駅10から出発した列車30が出発信号機105Rの第1内方軌道回路132Tと第2内方軌道回路105CTにまたがった時に、列車30が駅間に進入したと判断する。駅間進出判定部7は駅間に進出した列車30が駅20構内にある場内信号機202Rの第1内方軌道回路202CTから第2内方軌道回路221Tに進入して第1内方軌道回路202CTを抜けた時に、列車30が駅間から進出したと判断する。駅間在線処理部8は、列車30が駅間に進入したと判断したとき、単線運転区間の閉そくを確保し、列車30が駅間から進出したと判断したとき、単線運転区間の閉そくを解除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、単線運転又は単線並列運転をする駅間に進入して進出する列車を検知して自動的に閉そくを確保する線区集中電子連動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
運行列車本数が比較的少ない単線運転の区間では、後続列車の追突防止とともに対向列車との正面衝突を防ぐため、タブレットやスタフを使用した非自動の閉そく方式を採用している場合がある。この非自動閉そく装置(軌道回路検知方式)の区間の輸送能率と保安度の向上を図るため、非特許文献1に示すように、特殊自動閉そく装置が開発されて、一部の線区で使用されている。この特殊自動閉そく装置は、図5に示すように、A駅10とB駅20の駅構内にある場内信号機102R,202Rと出発信号機105R,205Rの4つの信号機の間をそれぞれ1閉そく区間とし、A駅10の出発信号機105RとB駅20の場内信号機202Rの間を中間閉そく区間とし、A駅10とB駅20の各駅構内には列車30を検知する軌道回路を連続的に設けて自動的に駅構内の閉そくを確保する。このA駅10の駅構内の両端にある場内信号機(102R,105L)とB駅20の駅構内の両端にある場内信号機(202R,205L)の両側に2種類の検知軌道回路すなわち閉電路式軌道回路(CT)と開電路式軌道回路(OT)を設け、閉電路式軌道回路(CT)と開電路式軌道回路(OT)により駅間の中間閉そく区間への列車の進入と進出を検知して自動的に駅間の閉そくを確保するようにしている。
【非特許文献1】「民鉄信号保安装置概説」社団法人日本鉄道電気技術協会発行 平成7年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記特殊自動閉そく装置では、駅間の中間閉そく区間には軌道回路が設けられていないため、その駅間に列車が在線していることを、どのように検出して管理するかが肝要となる。しかし、従来の特殊自動閉そく装置では、駅間両側に独立して設置された連動装置が、わずか2本の閉そく回線でのみ結ばれ、この閉そく回線が運転方向リレー回路を構成し、この回路により駅間の列車在線検知と閉そく制御を行うため、限られた情報に基づいた論理構成となっており、その回路が複雑で理解しづらいという短所がある。
【0004】
また、駅構内に設備する軌道回路以外に、駅間の端部に開電路式軌道回路(OT)を設けるため、それに対応する列車検知機器や装置を設置する必要があり、故障モードが増えることによる信頼性と検証性への影響が出てくるという短所もある。
【0005】
この発明は、このような短所を改善し、簡単な構成で故障モードを減らして駅間の列車を確実に検知し、列車の輸送能率と保安度の向上を図ることができる線区集中電子連動装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の線区集中電子連動装置は、伝送回線を介して接続された電子端末部と電子連動論理部を有し、電子端末部は、単線運転区間の駅構内に設けられた軌道回路や信号機及び転てつ器等の現場機器の動作状態を取り込み、前記伝送回線を介して前記電子連動論理部に送るとともに、前記電子連動論理部からの制御情報により前記単線運転区間の駅構内に設けられた信号機や転てつ器を制御し、電子連動論理部は、駅間進入判定部と駅間進出判定部及び駅間在線処理部を有し、駅間進入判定部は、単線運転区間の駅から出発した列車が単線運転区間の駅構内にある出発信号機の第1内方軌道回路と第2内方軌道回路にまたがった時に、列車が駅間に進入したと判断し、駅間進出判定部は、駅間に進出した列車が単線運転区間の駅構内にある場内信号機の第1内方軌道回路に進入した後に第2内方軌道回路に進入して第1内方軌道回路を抜けた時に、列車が駅間から進出したと判断し、駅間在線処理部は、駅間進入判定部で列車が駅間に進入したと判断したとき、単線運転区間の閉そくを確保し、駅間進出判定部で列車が駅間から進出したと判断したとき、単線運転区間の閉そくを解除することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明の線区集中電子連動装置は、線区全体を1つの駅構内とみなして連動処理できるという特徴を利用し、列車が各駅の出発信号機の第1内方軌道回路と第2内方軌道回路にまたがった時に、列車が駅間に進入したと判断し、駅間に進出した列車が各駅の場内信号機の第1内方軌道回路に進入した後に第2内方軌道回路に進入して第1内方軌道回路を抜けた時に、列車が駅間から進出したと判断し、列車が駅間に進入したと判断したとき、単線運転区間の閉そくを継続し、列車が駅間から進出したと判断したとき、単線区間の閉そくを解除するから、閉そく回線や運転方向リレー回路及び方向てこを不要にして、簡単な論理構成で駅間の列車在線検知と閉そく制御を行うことができる。
【0008】
また、列車が各駅の出発信号機の第1内方軌道回路と第2内方軌道回路にまたがった時に、列車が駅間に進入したと判断し、駅間に進出した列車が各駅の場内信号機の第1内方軌道回路に進入した後に第2内方軌道回路に進入して第1内方軌道回路を抜けた時に、列車が駅間から進出したと判断するから、駅間の端部に開電路式軌道回路(OT)を設ける必要がなく、構成を単純化して故障モードを減らし、駅間の列車を確実に検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1はこの発明の線区集中電子連動装置の構成を示すブロック図である。線区集中電子連動装置1は、駅構内に列車を検知する軌道回路を連続的に設けて自動的に閉そくを確保するA駅10とB駅20の間の軌道回路設備がない駅間の閉そくを確保し、A駅10とB駅20を含む線区全体で列車を安全に運行させるものであり、伝送回線2を介して接続された電子連動論理部3と電子端末部4a,4bを有する。電子端末部4aはA駅10の構内に設けられた軌道回路や信号機及び転てつ器等の現場機器の動作状態を取り込み、伝送回線2を介して電子連動論理部3に送るとともに、電子連動論理部3からの制御情報によりA駅10内の信号機や転てつ器を制御する。電子端末部4bはB駅20の構内に設けられた軌道回路や信号機及び転てつ器等の現場機器の動作状態を取り込み、伝送回線2を介して電子連動論理部3に送るとともに、電子連動論理部3からの制御情報によりB駅20内の信号機や転てつ器を制御する。電子連動論理部3は、電子端末部4aから送られるA駅10の現場機器の動作状態と、電子端末部4bから送られるB駅20の現場機器の動作状態を表示制御部5に表示するとともに、A駅10とB駅20の現場機器の動作状態により、A駅10とB駅20を含む線区全体の閉そくを確保し、A駅10とB駅20の信号機や転てつ器などの相互間を関連付けて、A駅10とB駅20の信号機や転てつ器の制御情報を生成してA駅10とB駅20の信号機や転てつ器の動作を制御する。
【0010】
この電子連動論理部3には、A駅10とB駅20の駅間における列車の進入と進出を検出する論理部として駅間進入判定部6と駅間進出判定部7及び駅間在線処理部8を有する。駅間進入判定部6は、A駅10とB駅20を出発した列車がA駅10とB駅20の駅間に進入したことを検知する。駅間進出判定部7は、A駅10とB駅20の駅間に進入した列車が駅間を進出したことを検知する。駅間在線処理部8は、列車が駅間に進入したとき、信号機等を駅間列車在線状態に遷移し、列車が駅間から進出したときに、信号機等を駅間列車なし状態に遷移する。
【0011】
この電子連動論理部3で、列車が例えばA駅10からB駅10に進行するときの処理を図2のフローチャートと図3の列車の運転状況遷移図を参照して説明する。
【0012】
図3(a)に示すように、列車30の運転方向がA駅10からB駅20の方向であるとき、電子連動論理部3は、A駅10に停車している列車30を出発させる場合、A駅10の出発信号機105Rを進行(G)現示にする(ステップS1)。この出発信号機105RのG現示により列車30はB駅20に向けて進行する(ステップS2)。この列車30が出発信号機105Rの第1内方軌道回路132Tに進入して、第1内方軌道回路132Tで列車30を検知すると、電子端末部4aから電子連動処理部3に、A駅10の出発信号機105Rの第1内方軌道回路132Tに列車30が進入したことを示す列車検知信号を送る(ステップS3)。電子連動処理部3の駅間進入判定部6は、送られた列車検知信号を駅間在線処理部8に送る。駅間在線処理部8は、A駅10の出発信号機105Rの第1内方軌道回路132Tに列車30が進入したこと示す列車検知信号が送られると、A駅10の出発信号機105Rを停止(R)現示にして出発信号機105Rの閉そく区間の閉そくを開始する(ステップS4)。この状態で列車40が進行し、図3(b)に示すように、列車30が出発信号機105Rの第1内方軌道回路132Tと第2内方軌道回路105CTにまたがり、第2内方軌道回路105CTで列車30を検知すると、電子端末部4aから電子連動処理部3にA駅10の出発信号機105Rの第2内方軌道回路105CTに列車30が進入したことを示す列車検知信号を送る(ステップS5)。電子連動論理部3の駅間進入判定部6は、A駅10の出発信号機105Rの第1内方軌道回路132Tから列車検知信号が送られているときに第2内方軌道回路105CTから列車検知信号が送られると、その時点で、列車30がA駅10とB駅20の駅間に進入したと判定して、駅間進入信号を駅間在線処理部8に送る(ステップS6)。駅間在線処理部8は駅間進入信号が送られると、A駅10の出発信号機105Rを停止(R)現示を保持し、図4に示すように、A駅10の出発信号機105RとB駅20の場内信号機202Rの間を1閉そく区間とする出発信号機105Rの閉そく区間の閉そくを確保する(ステップS7)。
【0013】
この状態で図3(c)に示すように、列車30がA駅10とB駅20の駅間を進行してB駅20の場内信号機202Rの第1内方軌道回路202CTに進入して、第1内方軌道回路202CTで列車30を検知すると、電子端末部4bから電子連動処理部3に、B駅20の場内信号機202Rの第1内方軌道回路202CTに列車30が進入したことを示す列車検知信号を送る(ステップS8)。電子連動処理部3の駅間進出判定部7は、駅間在線処理部8で駅間の閉そくを確保しているとき、電子端末部4bから送られた場内信号機202Rの第1内方軌道回路202CTの列車検知信号を駅間在線処理部8に送る。駅間在線処理部8は、B駅20の場内信号機202Rの第1内方軌道回路202CTに列車30が進入したことを示す列車検知信号が送られると、図4に示すように、A駅10の出発信号機105RとB駅20の場内信号機202Rの間を1閉そく区間とするA駅10の出発信号機105Rの閉そく区間の閉そくを確保した状態で、B駅20の場内信号機202Rと出発信号機205Rとの間を1閉そく区間とする場内信号機202Rを停止(R)現示にして場内信号機202Rの閉そく区間の閉そくを確保して、場内信号機202Rによる防護を開始する(ステップS9)。この状態で列車30がさらに進行し、図3(d)に示すように、場内信号機202Rの第2内方軌道回路221Tに進入して、電子連動論理部3に電子端末部4bから第2内方軌道回路221Tの列車検知信号が送られ(ステップS10)、その後、第1内方軌道回路202CTから列車進出の検知信号が送られると(ステップS11)、駅間進出判定部7は、その時点で列車30が駅間から進出したと判断し、駅間在線処理部8に駅間進出信号を送る(ステップS12)。駅間在線処理部8は、駅間進出信号が送られると、A駅10の出発信号機105Rの閉そく区間である駅間の閉そくを解除して駅間列車なし状態に遷移し、A駅10の出発信号機105Rによる防護を解除する(ステップS13)。
【0014】
この処理を列車30がA駅10からB駅20方向に出発したり、B駅20からA駅10方向に出発するたびに繰り返す(ステップS14,S1〜S13)。
【0015】
このように線区集中電子連動装置は、A駅10とB駅20及びその駅間を含む線区全体を1つの駅構内とみなして連動処理するから、図4に示すように、A駅10の出発信号機105Rの防護区間であるA駅10の出発信号機105RからB駅20の場内信号機202Rの第2内方軌道回路221Tまでの区間と、B駅20の場内信号機202Rの防護区間であるB駅20の場内信号機202Rから出発信号機205Rまでの区間に対して、閉そく回線や運転方向リレー回路及び方向てこを不要にして、簡単な論理構成で駅間の列車在線検知と閉そく制御を行うことができる。
【0016】
前記説明ではA駅10から出発した列車30がB駅20に到着する場合について説明したが、例えば列車30の駅間途中折返しのため、A駅10から出発して駅間に進入した列車30がA駅10に戻る場合も、列車30がA駅の場内信号機105Lの第1内方軌道回路105CTから第2内方軌道回路132Tに進入して第1内方軌道回路105CTを抜けた時点で、列車30が駅間から進出したと判断して出発信号機105Rによる閉そくを解除し、場内信号機105Lによる閉そくを確保することもできる。
【0017】
前記説明ではA駅10とB駅20を有する単線区間について説明したが、3駅以上あって複数の駅間を有する場合も、1台の電子連動論理部3により同様に駅間の閉そくを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の線区集中電子連動装置の構成を示すブロック図である。
【図2】電子連動論理部の処理を示すフローチャートである。
【図3】列車の運転状況を示す運転状況遷移図である。
【図4】A駅とB駅及び駅間を含む線区の閉そく区間と防護区間を示す模式図である。
【図5】従来のA駅とB駅及び駅間を含む線区の閉そく区間を示す模式図である。
【符号の説明】
【0019】
1;線区集中電子連動装置、2;伝送回線、3;電子連動論理部、4;電子端末部、
5;表示制御部、6;駅間進入判定部、7;駅間進出判定部、8;駅間在線処理部、
10;A駅、20;B駅、30;列車。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝送回線を介して接続された電子端末部と電子連動論理部を有し、
前記電子端末部は、単線運転区間の駅構内に設けられた軌道回路や信号機及び転てつ器等の現場機器の動作状態を取り込み、前記伝送回線を介して前記電子連動論理部に送るとともに、前記電子連動論理部からの制御情報により前記単線運転区間の駅構内に設けられた信号機や転てつ器を制御し、
前記電子連動論理部は、駅間進入判定部と駅間進出判定部及び駅間在線処理部を有し、
前記駅間進入判定部は、前記単線運転区間の駅から出発した列車が駅構内にある出発信号機の第1内方軌道回路と第2内方軌道回路にまたがった時に、列車が駅間に進入したと判断し、
前記駅間進出判定部は、駅間に進出した列車が前記単線運転区間の駅構内にある場内信号機の第1内方軌道回路に進入した後に第2内方軌道回路に進入して第1内方軌道回路を抜けた時に、列車が駅間から進出したと判断し、
前記駅間在線処理部は、前記駅間進入判定部で列車が駅間に進入したと判断したとき、前記単線運転区間の閉そくを確保し、前記駅間進出判定部で列車が駅間から進出したと判断したとき、前記単線運転区間の閉そくを解除することを特徴とする線区集中電子連動装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−1332(P2006−1332A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−177687(P2004−177687)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(000001292)株式会社京三製作所 (324)