説明

線材の模様付け加工方法および装置

【課題】眼鏡枠用の線材などの長尺の線材に対してレーザ光によって連続的に自動運転で高精度の模様付け加工を行うための方法および装置を提供する。
【解決手段】長尺の線材3の曲がりを直線矯正部11により直線状に矯正する手順と、前記線材を線材移動部14により保持してその軸線方向に所定量だけ移動させる手順と、前記線材を前記線材移動部による保持位置よりも後方の位置で線材固定部13により保持して固定する手順と、前記線材固定部および前記線材移動部によって保持された両保持位置の中間部分の前記線材の表面に対して、レーザ加工部15によりレーザ光を照射して模様付け加工を行う手順と、前記線材固定部による前記線材の保持を解放する手順とを順次繰り返すことにより、前記線材に周期的な模様を形成するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レンズ保持用溝が形成された眼鏡枠用の線材などに模様付け加工を行うための方法および装置に関し、詳しくは、長尺の線材に対してレーザ光によって連続的に模様付け加工を行うための方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
眼鏡フレームにおけるレンズ保持部は、レンズ保持用溝が形成された長尺の線材(溝線)から作成される。まず、長尺の溝線を所定の長さに切断する。その切断した溝線をレンズ保持用溝が内側になるようにして曲げ、レンズ外周形状に合致するように成形する。また、この眼鏡フレームのレンズ保持部には、外観の意匠性や消費者の嗜好などを考慮してその外周部などに模様が形成されることも多い。
【0003】
従来は、眼鏡フレームのレンズ保持部に模様を形成するために、次のような方法が実施されていた。一般的に、長尺の溝線はロール型による圧延加工によって製造される。そのロール型には溝線の断面形状を成形するための凹凸形状が形成されている。そして、ロール型の、溝線の模様を形成する部分に対応する個所の表面に予め模様を形成しておく。このような模様を形成したロール型による圧延加工により溝線を製造すると、模様付きの溝線が製造できるのである。
【0004】
また、製品の表面にレーザ光によりエッチングやマーキング等の加工を行うレーザ加工装置も知られている。このようなレーザ加工装置としては、下記の特許文献1のようなものがある。特許文献1には、複数の半透明ミラーを備え、短時間で精度よくエッチング加工等のレーザ加工を行うようにしたレーザ加工装置が記載されている。
【特許文献1】特開2001−062582号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の溝線の模様付け加工方法、すなわち、予めロール型の表面に模様を形成しておき、そのロール型により圧延加工を行って溝線を製造する方法では、以下のような問題点があった。まず、ロール型の表面を削り取るか、転写などによって表面に凹部の模様を形成するため、このロール型によって製造された溝線の模様は逆に表面から突出した凸部となる。このような凸模様は、表面から突出しているために削り取られて消えやすい。実際、溝線の表面に研磨加工などを施すと、模様が薄れたり消えてしまったりする。
【0006】
転写加工によってロール型に模様を形成するには、鋼材からなるロール型に模様を転写した後、焼き入れ処理によりロール型を硬化する必要がある。この焼き入れ処理の際にロール型に歪みが生じてしまうという問題点がある。また、転写加工によってロール型に模様を形成すると、ロール型が1周する位置での模様の繋ぎ目が不自然になってしまいやすい。
【0007】
次に、1種類の模様ごとに異なるロール型を作成する必要があるため、ロール型の製造コストが上昇してしまい、ひいては溝線の製造コストも上昇してしまう。特に、多品種少量生産の場合に製造コストの増大が著しい。
【0008】
また、ロール型は、耐久性を考慮して超硬合金などを使用することが望ましいが、そのような硬度の高い材料に模様を加工することは非常に困難であり加工コストが上昇してしまう。また、ロール型が破損した場合、そのロール型と全く同じ模様を新しいロール型に再現することが困難である。また、ロール型による圧延加工では微細な模様の加工が非常に難しい。
【0009】
また、長尺の段階で溝線に模様付けを行うのでなく、溝線を所定長さに切断した後で、特許文献1のようなレーザ加工装置により模様付け加工を行うことも考えられる。しかし、その場合には、切断した短尺の溝線を正確に加工位置に位置決めして保持する機構や作業などが必要となり、自動加工が困難となってしまう。また、模様付け加工を施した短尺の溝線を眼鏡フレームに成形する工程では、ベンディングマシンによる自動加工が不可能になってしまう。このため、手巻きによって眼鏡フレームに成形することになるため、熟練作業者による成形作業が必要となる。これらの理由により、眼鏡フレームの製造コストが大幅に上昇してしまう。
【0010】
そこで、本発明は、眼鏡枠用の線材などの長尺の線材に対してレーザ光によって連続的に自動運転で高精度の模様付け加工を行うための方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の線材の模様付け加工方法は、長尺の線材の曲がりを直線状に矯正する手順と、前記線材を線材移動部により保持してその軸線方向に所定量だけ移動させる手順と、前記線材を前記線材移動部による保持位置よりも後方の位置で線材固定部により保持して固定する手順と、前記線材固定部および前記線材移動部によって保持された両保持位置の中間部分の前記線材の表面に対して、レーザ光を照射して模様付け加工を行う手順と、前記線材固定部による前記線材の保持を解放する手順とを順次繰り返すことにより、前記線材に周期的な模様を形成するものである。
【0012】
また、上記の線材の模様付け加工方法において、前記線材は、レンズ保持用溝が形成された眼鏡枠用の線材とすることができる。
【0013】
また、本発明の線材の模様付け加工装置は、長尺の線材が供給され、当該線材の曲がりを直線状に矯正するための直線矯正部と、前記線材を保持してその位置を固定するための線材固定部と、前記線材を保持してその軸線方向に所定量だけ移動させる線材移動部と、前記線材の軸線方向の移動量を検出するための検出部と、前記線材固定部および前記線材移動部によって保持された両保持位置の中間部分の前記線材の表面に対して、レーザ光を照射して模様付け加工を行うレーザ加工部と、前記線材固定部、前記線材移動部および前記レーザ加工部を制御して前記線材に周期的な模様を形成する制御部とを有するものである。
【0014】
また、上記の線材の模様付け加工装置において、前記レーザ加工部は、前記線材との相対位置を調整可能に設けられているものであることが好ましい。
【0015】
また、上記の線材の模様付け加工装置において、前記レーザ加工部は、前記線材までの距離を調整可能に設けられているものであることが好ましい。
【0016】
また、上記の線材の模様付け加工装置において、前記レーザ加工部は、前記線材の加工位置と、それ以外の工作物の加工位置のそれぞれの位置に切り換え固定することが可能なものであることが好ましい。
【0017】
また、上記の線材の模様付け加工装置において、前記線材は、レンズ保持用溝が形成された眼鏡枠用の線材とすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、以上のように構成されているので、以下のような効果を奏する。
【0019】
ロール型を使用せずに、レーザ加工によって溝線に連続模様を加工するため、時間やコストのかかるロール型への模様形成が不要となり、模様付け加工のコストを大幅に低減することができる。また、レーザ加工によって形成される模様は凸部にならないため消えにくい。また、模様の図柄も正確に加工することができる。連続模様とした場合にも、繋ぎ目に不連続が現れず自然な模様が形成できる。さらに、任意の図柄の模様を短時間で加工することができ、図柄の変更も即座に行えるため、多品種少量生産にも適している。
【0020】
模様付け加工を行う線材としては、レンズ保持用溝が形成された眼鏡枠用の線材の場合に特に効果的である。模様の図柄は微細模様も含めて正確に美しく加工でき、図柄の種類も多種類の変化に富んだバリエーションが可能となる。図柄の変更にも即応でき、短時間で多種類の模様付け加工を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1および図2は、本発明の模様付け加工装置1の主要部の構成を示す概略図である。図1は模様付け加工装置1の正面図であり、図2は平面図である。模様付け加工装置1によって模様付け加工を行う工作物としては、具体的には、眼鏡フレームを形成するための溝線がある。溝線とはレンズ保持用溝が形成された長尺の線材であり、この溝線から眼鏡フレームのレンズ保持部を形成するのである。
【0022】
眼鏡フレームのレンズ保持部には、外観の意匠性や消費者の嗜好などを配慮した模様が施されることも多い。模様付きのレンズ保持部を形成するために、模様付けされた溝線が使用されるのである。なお、本発明の模様付け加工装置1は、溝線の模様付け加工を行うには最適なものであるが、もちろん、その他の線材の模様付け加工を行うこともできる。ここでは、溝線に模様付け加工を行う場合について説明する。
【0023】
模様付け加工装置1によって、実際に長尺の溝線に模様付け加工を行う際には、連続的に溝線を供給するための線材供給装置21と、加工済みの溝線を巻き取るための線材巻取装置22を模様付け加工装置1に組み合わせて使用する。線材供給装置21には、長尺の未加工の溝線がドラムに巻き取られた状態にあり、このドラムから溝線3が模様付け加工装置1に連続的に供給される。また、線材巻取装置22は、模様付け加工を行った加工済みの溝線3を巻き取るための装置であり、逐次、加工済みの溝線3をドラムに巻き取って行くものである。
【0024】
模様付け加工装置1は、ベースとしての基台10上に各部が設置されている。模様付け加工装置1の基台10の上面は水平な天板となっており、その天板上に模様付け加工装置1の各部が設置されている。基台10の天板下方も各種機器の収納空間として利用できるようになっており、この収納空間にレーザ制御部18や制御コンピュータ19などを収納することができる。なお、レーザ制御部18などは収納空間に収納せずに設置施設の床面上に直接載置するようにしてもよい。
【0025】
基台10最下部には、キャスター101が設けられており、模様付け加工装置1を容易に移動することができる。また、実際に模様付け加工を行う場合は、固定足部102を突出させて、模様付け加工装置1を床面上に固定する。
【0026】
基台10上に設置された直線矯正部11は、線材供給装置21から供給された溝線の曲がりを矯正して直線状にするためのものである。溝線3はドラムに巻かれた状態で線材供給装置21にセットされ模様付け加工装置1に供給されるので、溝線3には巻きぐせによる曲がりが生じてしまっている。直線矯正部11には複数の矯正ローラが設けられており、溝線3がこれらの矯正ローラに押圧されながらこれらの間を通過する間に、溝線3の曲がりが矯正される。
【0027】
検出部12には、溝線3が所定の走行位置に存在しているか否かを検出する線材検出センサと溝線の移動距離を検出するためのロータリーエンコーダが設けられている。この検出部12により、溝線が所定の走行位置にセットされているかどうかを検出でき、所定位置にセットされていない場合には加工が開始できないように安全対策がなされている。また、検出部12により溝線の移動量も正確に検出することができる。なお、溝線3は図の矢印方向に移動される。
【0028】
線材固定部13は、模様付け加工を行うために溝線3を固定する台である。線材移動部14は、溝線3を所定のピッチで間欠的に移動させるための機構である。これらの線材固定部13および線材移動部14の構成に関しては後に詳しく説明する。溝線3は、線材固定部13に固定されて、所定長さ分の模様付け加工がなされる。次に、溝線3は、模様付け加工を行った所定長さ分だけ、線材移動部14によって移動される。このような動作を繰り返して、溝線3に連続的な模様付け加工がなされるのである。
【0029】
レーザ加工部15は、線材固定部13に固定された溝線3の表面に、レーザ光により模様付け加工を行うものである。レーザ加工部15は、内部のガルバノミラーによってレーザ光を2次元走査し、溝線3の表面に任意の形状の模様を加工することができる。水平位置調整部16は、レーザ加工部15を溝線3の加工位置に調整するためのものである。水平位置調整部16により、レーザ加工部15を水平面内の直交する2直線方向(X,Y軸方向)に移動させて水平面内の位置調整を行う。
【0030】
垂直位置調整部17は、レーザ加工部15を水平面と直交する垂直方向(Z軸方向)に移動させて垂直方向の位置調整を行うものである。垂直位置調整部17により垂直方向の位置調整を行い、レーザ光の焦点位置が溝線3の表面に一致するように調整する。レーザ加工部15、水平位置調整部16および垂直位置調整部17付近の構成に関しては後に詳しく説明する。
【0031】
基台10の収納空間に置かれているレーザ制御部18は、レーザ加工部15に電源および制御信号を供給して、レーザ加工部15を直接的に制御する部分である。また、制御コンピュータ19は、以上の各部分と信号ケーブル等で接続され、各部からの検出信号を参照しながら、各部の制御を総合的に行うためのコンピュータである。制御コンピュータ19には、表示操作部191が接続されており、操作者は表示操作部191によって模様付け加工装置1の操作を行う。
【0032】
表示操作部191には、液晶表示パネル等の表示画面に透明な平面位置検出器(いわゆるタッチパネル)が重ね合わされたものであり、各種情報の表示とともに入力操作が可能である。表示画面に種々の情報や操作ボタン等が表示され、その表示画面上でタッチペンや指によって操作ボタン等の操作や入力操作を行うことにより、模様付け加工装置1の各種操作や情報の入力を行うことができる。
【0033】
なお、図2に示すように、レーザ加工部15は、突出板151の上面に固定されている。この突出板151は垂直位置調整部17の上部に対して回動可能に設けられている。突出板151は回動軸152を中心として水平面内で回動させることができ、また、図示のような所定位置で固定することもできる。図2の実線で示す、レーザ加工部15が正面側に突出した状態(正面位置)は、溝線3の模様付け加工を行うための位置である。
【0034】
その他に、突出板151を正面位置から左右に90度回動させた位置にも、突出板151を固定することができる。二点鎖線で示すレーザ加工部15a,15bがこれらの90度回動させた状態を表している。これらの2位置では、溝線3以外の単品製品に模様付け加工を行うことができる。例えば、眼鏡フレームの他の部品(例えば、テンプルなど)に対して単品ごとに模様付け加工を行ったり、指輪などの単品製品に模様付け加工を行うためにこれらの2位置を使用することができる。
【0035】
図3から図5は、線材固定部13の構成を示す図である。図3は線材固定部13を正面側(図1と同方向)から拡大して見た正面図である。また、図4は線材固定部13を上方から見た平面図であり、図5は線材固定部13を左側面方向から見た側面図である。
【0036】
線材固定部13の本体には段部が形成されその上面が溝線3を固定するための固定面131とされている。固定面131の上方には保持部材133が上下方向に移動可能に設けられており、保持部材133は固定駆動部134によって上下方向に駆動される。なお、保持部材133の駆動には電磁力や流体圧力などを利用した任意のアクチュエータを使用できる。
【0037】
保持部材133を下方に駆動して溝線3を把持することにより、溝線3を固定面131に固定することができる。保持部材133を上方に駆動すれば、溝線3は解放されて長さ方向(X軸方向)に移動可能となる。また、線材固定部13本体の段部は、保持部材133より右側が幅広に形成されており、その幅広段部の上面にガイド板132が設けられている。ガイド板132の上面は固定面131よりわずかに上方に突出するように配置されている。
【0038】
ガイド板132の上面は基準面として機能する。溝線3はガイド板132の上面に押し付けられ、上下方向(Z軸方向)の位置を正確に基準位置に位置決めされる。また、ガイド板132の上面は高精度の平面に形成されているので、溝線3がガイド板132の上面に倣って直線状態となる。ガイド板132の上面に位置する溝線3部分に対して、レーザ加工部15による模様付け加工を行う。
【0039】
溝線3は、2つの押圧ローラ135によって下方に押圧されてガイド板132の上面に押し付けられる。それぞれの押圧ローラ135は、上下方向に移動可能に設けられており、調整ダイヤル136によって上下方向の位置を調整することができる。この調整ダイヤル136により押圧ローラ135の押圧位置および押圧力を調整することができる。
【0040】
図6および図7は、線材移動部14の構成を示す図である。図6は線材移動部14を正面側(図1と同方向)から拡大して見た正面図であり、図7は線材移動部14を左側面方向から見た側面図である。線材移動部14のベース141の上面には移動ガイド142が設けられており、移動ガイド142上には移動台143がX軸方向に移動可能に設けられている。
【0041】
移動台143には、上保持部材144と下保持部材145がそれぞれ上下方向に移動可能に設けられている。これらの上保持部材144および下保持部材145は、移動台143内部の駆動部によって接近方向または離反方向に駆動され、溝線3を両保持部材によって把持したり、把持した溝線3を解放することが可能である。
【0042】
また、移動台143を移動ガイド142方向(X軸方向)に移動させる駆動機構がベース141内に設けられている。駆動機構は高精度の送りねじ機構等を使用し、移動台143の移動量を高精度に設定することができる。移動台143の上保持部材144と下保持部材145によって溝線3を把持した状態で、移動台143をX軸方向に移動させることにより、溝線3を正確な移動量だけ前方(右方向)に送ることができる。溝線3の移動量は0.01mm単位で高精度に設定することができる。
【0043】
次に、レーザ加工部15のレーザ照射位置および焦点位置を調整するための水平位置調整部16および垂直位置調整部17について説明する。図8は、水平位置調整部16および垂直位置調整部17の構成を示す正面図である。図9は、水平位置調整部16および垂直位置調整部17の構成を示す側面図である。
【0044】
水平位置調整部16は、基台10の上面に固定されたベースに対してY軸方向に移動可能に設けられたY軸移動台と、そのY軸移動台に対してX軸方向に移動可能に設けられたX軸移動台とから構成される。X軸移動台のX軸方向の位置はX軸調整ハンドル161によって調整され、Y軸移動台のY軸方向の位置はY軸調整ハンドル162によって調整される。なお、X軸移動台およびY軸移動台はそれぞれの調整ハンドルによって回転される送りねじによって移動される。
【0045】
また、X軸調整ハンドル161およびY軸調整ハンドル162には、図示しないロック機構が設けられている。レーザ加工部15のX,Y軸方向の位置調整が完了したら、これらのロック機構によりX軸調整ハンドル161およびY軸調整ハンドル162が回転しないようにロックされる。
【0046】
垂直位置調整部17は、水平位置調整部16のX軸移動台の上面に設置されている。垂直位置調整部17の上部板は、パンタグラフ状のリンク機構と駆動ねじ機構によって上下位置の調整が可能となっている。この位置調整機構は、乗用車などに車載で備えられる小型ジャッキ(いわゆるパンタグラフジャッキ)と同様の駆動機構である。垂直位置調整部17の上部板のZ軸方向の位置(レーザ光焦点位置)はZ軸調整ハンドル171によって調整される。
【0047】
また、Z軸調整ハンドル171にも図示しないロック機構が設けられている。レーザ加工部15のZ軸方向の位置調整が完了したら、このロック機構によりZ軸調整ハンドル171が回転しないようにロックされる。なお、レーザ加工部15からのレーザ光は、図8および図9の点線で示す範囲を中心としてその近傍に照射される。X軸方向には溝線3の所定長さ(例えば、100mm)にわたってレーザ光が走査され模様付けが行われる。
【0048】
前述のように、レーザ加工部15および突出板151は回動軸152を中心として回動させることができ、図示の位置から90度回動させた位置でも単品製品などの模様付け加工を行うことができる。
【0049】
次に、模様付け加工装置1を使用して、溝線3の模様付け加工を行う手順を説明する。まず、模様付け加工装置1の電源をオンにして、レーザ制御部18、レーザ加工部15などの各部に電源電圧を供給する。次に制御コンピュータ19の電源を投入して、模様付け加工装置1の制御プログラムを起動する。
【0050】
制御プログラムにおいて、最初に、模様付け加工装置1の初期化動作を行う。初期化動作により、線材固定部13の保持部材133は上昇して解放状態となり、線材移動部14は移動台143がX軸方向の原点位置(図6のストローク左端位置)に復帰するとともに上保持部材144と下保持部材145が離反方向に移動して解放状態となる。
【0051】
その後、模様付け加工装置1に溝線3をセットして模様付け加工を行う。図10は、溝線3に連続的に模様付け加工を行う手順を示すフローチャートである。まず、手順201において、模様付け加工装置1に溝線3を挿通し、溝線3が所定の走行経路を通るようにセットする。
【0052】
次に、手順202において、線材移動部14の上保持部材144および下保持部材145を接近方向に駆動して、溝線3を把持する。溝線3を把持後、線材巻取装置22を動作させる。線材巻取装置22は、溝線3を一定の張力によって巻き取る動作を行うが、溝線3が線材移動部14によって把持され動きが止められているので、溝線3に一定の張力を加えるだけに止まっている。
【0053】
次に、手順203において、線材固定部13の溝線3の把持を解放する。すでに解放状態にある場合にはそのままである。そして、手順204において、線材移動部14の移動台143をX軸正方向(図6の右方向)に移動させる。線材移動部14は溝線3を把持した状態なので、溝線3もX軸正方向に移動する。そして、線材巻取装置22は移動した分の溝線3を巻き取る。
【0054】
このとき、溝線3の移動量は検出部12のロータリーエンコーダによって正確に検出される。溝線3の移動量が予め設定されている所定値に一致したら、移動台143の移動を停止し溝線3も停止させる。また、この手順204で溝線3が移動される際に、溝線3が直線矯正部11を通過して曲がりが矯正され直線状になる。
【0055】
次に、手順205において、線材固定部13の保持部材133を下降させ溝線3を把持して固定する。このとき溝線3の加工部は、2つの押圧ローラ135によってガイド板132の基準面に押し付けられており、溝線3の加工面がレーザ加工部15の焦点位置になるように調整されている。
【0056】
次に、手順206において、レーザ加工部15により、溝線3の加工面(上面)にレーザ光が照射され、そのレーザ光の走査により溝線3に所定の模様が加工される。この模様は、例えば、唐草模様やチェック模様などの任意の模様を描くことができる。また、この模様は、溝線3の所定の長さ(例えば、100mm)にわたって描かれ、この所定の長さを周期(ピッチ)とする繰り返し模様が設定される。手順204における溝線3の移動量は、このこの所定の長さと等しくなるようにされている。したがって、溝線3にはこの繰り返し模様が切れ目なく連続的に描かれる。
【0057】
次に、手順207において、線材移動部14の上保持部材144および下保持部材145を離反方向に移動して、溝線3の把持を解放する。そして、手順208において、線材移動部14の移動台143をX軸方向の原点位置に復帰させる。このとき、溝線3は線材固定部13により把持され固定されているので静止したままである。
【0058】
次に、手順209において、線材移動部14の上保持部材144および下保持部材145を接近方向に駆動して溝線3を把持する。ここで、溝線3の模様付け加工の1サイクルが完了する。この模様付け加工のサイクルを連続的に繰り返せば、繰り返し模様を切れ目なく連続的に描くことができる。また、この模様付け加工のサイクルは、1回、2回のように回数を指定して実行させることもできる。
【0059】
次の手順210は、模様付け加工のサイクルの終了条件を判定するものである。例えば、回数が指定されて実行された場合には、指定回数に達したか否かが判定される。または、溝線3の模様付け長さを指定して終了条件を設定することもできる。手順210において、終了条件に達していなければ、手順203に戻って、手順203から手順210を繰り返し実行する。手順210で終了条件に達していると判定された場合には、模様付け加工の動作を終了する。
【0060】
このように、模様付け加工装置1によって、溝線3に連続的な模様を切れ目なく加工することができる。なお、図10の各手順のうち、手順201は操作者が行うものであるが、手順202から手順210は制御コンピュータ19内の制御プログラムが自動的に行うものであり、溝線3の連続模様加工を自動運転によって行うことができる。模様の図柄も種々のデータを制御コンピュータ19内に記録しておくことができるので、いつでも任意の図柄の模様を加工することができる。
【0061】
なお、図10に示すような手順によって、溝線3に連続模様を加工する際には、予め、線材移動部14による溝線3の移動量を模様のピッチと正確に一致させておく必要がある。そのためには、まず、テスト加工として、模様付け加工のサイクルを2回に回数指定して実行する。そして、模様のピッチ接続部を観察し、切れ目や不連続があるようなら、溝線3の移動量を調節する。溝線3の移動量は0.01mm単位で調整可能である。模様が連続するように溝線3の移動量を調節できたら、本加工を実行する。
【0062】
また、ここでは模様のピッチおよび溝線3の移動量として100mmの例を挙げたが、100mmに限らず任意の値に設定することができる。ただし、その設定値はレーザ加工部15によるレーザ光の走査可能な距離の範囲内とする必要がある。
【0063】
以上のように、本発明では、ロール型を使用せずに、レーザ加工によって溝線に連続模様を加工するため、時間やコストのかかるロール型への模様形成が不要となり、模様付け加工のコストを大幅に低減することができる。また、レーザ加工によって形成される模様は凸部にならないため消えにくい。また、模様の図柄も正確に加工することができる。連続模様とした場合にも、繋ぎ目に不連続が現れず自然な模様が形成できる。さらに、任意の図柄の模様を短時間で加工することができ、図柄の変更も即座に行えるため、多品種少量生産にも適している。
【0064】
なお、以上の説明では、線材として眼鏡枠に使用するための溝線を例にとって説明したが、本発明の模様付け加工方法および装置は、溝線以外の任意の線材の模様付け加工にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明によれば、眼鏡枠用の線材などの長尺の線材に対してレーザ光によって高精度の連続模様を加工することができ、その模様付け加工を自動運転で行うことができる。そして、模様付け加工のコストを大幅に低減することができる。図柄の変更にも即応できるため多品種少量生産にも適している。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の模様付け加工装置1の主要部の構成を示す正面図である。
【図2】模様付け加工装置1の主要部の構成を示す平面図である。
【図3】線材固定部13のみを拡大した正面図である。
【図4】線材固定部13を上方から見た平面図である。
【図5】線材固定部13を左側面方向から見た側面図である。
【図6】線材移動部14のみを拡大した正面図である。
【図7】線材移動部14を左側面方向から見た側面図である。
【図8】水平位置調整部16および垂直位置調整部17の構成を示す正面図である。
【図9】水平位置調整部16および垂直位置調整部17の構成を示す側面図である。
【図10】溝線3に連続的に模様付け加工を行う手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0067】
1 模様付け加工装置
3 溝線
10 基台
11 直線矯正部
12 検出部
13 線材固定部
14 線材移動部
15 レーザ加工部
16 水平位置調整部
17 垂直位置調整部
18 レーザ制御部
19 制御コンピュータ
21 線材供給装置
22 線材巻取装置
101 キャスター
102 固定足部
131 固定面
132 ガイド板
133 保持部材
134 固定駆動部
135 押圧ローラ
136 調整ダイヤル
141 ベース
142 移動ガイド
143 移動台
144 上保持部材
145 下保持部材
151 突出板
152 回動軸
161 X軸調整ハンドル
162 Y軸調整ハンドル
171 Z軸調整ハンドル
191 表示操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の線材(3)の曲がりを直線状に矯正する手順と、
前記線材(3)を線材移動部(14)により保持してその軸線方向に所定量だけ移動させる手順と、
前記線材(3)を前記線材移動部(14)による保持位置よりも後方の位置で線材固定部(13)により保持して固定する手順と、
前記線材固定部(13)および前記線材移動部(14)によって保持された両保持位置の中間部分の前記線材(3)の表面に対して、レーザ光を照射して模様付け加工を行う手順と、
前記線材固定部(13)による前記線材(3)の保持を解放する手順とを
順次繰り返すことにより、前記線材(3)に周期的な模様を形成する線材の模様付け加工方法。
【請求項2】
請求項1に記載した線材の模様付け加工方法であって、
前記線材(3)は、レンズ保持用溝が形成された眼鏡枠用の線材である線材の模様付け加工方法。
【請求項3】
長尺の線材(3)が供給され、当該線材(3)の曲がりを直線状に矯正するための直線矯正部(11)と、
前記線材(3)を保持してその位置を固定するための線材固定部(13)と、
前記線材(3)を保持してその軸線方向に所定量だけ移動させる線材移動部(14)と、
前記線材(3)の軸線方向の移動量を検出するための検出部(12)と、
前記線材固定部(13)および前記線材移動部(14)によって保持された両保持位置の中間部分の前記線材(3)の表面に対して、レーザ光を照射して模様付け加工を行うレーザ加工部(15)と、
前記線材固定部(13)、前記線材移動部(14)および前記レーザ加工部(15)を制御して前記線材(3)に周期的な模様を形成する制御部(18,19)とを有する線材の模様付け加工装置。
【請求項4】
請求項3に記載した線材の模様付け加工装置であって、
前記レーザ加工部(15)は、前記線材(3)との相対位置を調整可能に設けられているものである線材の模様付け加工装置。
【請求項5】
請求項4に記載した線材の模様付け加工装置であって、
前記レーザ加工部(15)は、前記線材(3)までの距離を調整可能に設けられているものである線材の模様付け加工装置。
【請求項6】
請求項5に記載した線材の模様付け加工装置であって、
前記レーザ加工部(15)は、前記線材(3)の加工位置と、それ以外の工作物の加工位置のそれぞれの位置に切り換え固定することが可能なものである線材の模様付け加工装置。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれか1項に記載した線材の模様付け加工装置であって、
前記線材(3)は、レンズ保持用溝が形成された眼鏡枠用の線材である線材の模様付け加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−172918(P2010−172918A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−16765(P2009−16765)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(509029209)
【Fターム(参考)】