説明

線条体巻付けボビン、線条体巻取り方法、及び、線条体巻取り装置

【課題】低耐力化した線条体をボビンに対して負荷をかけずに巻き付けても、巻き緩みや巻き崩れなどが生じることなく所望の整列巻きした状態に保つことができ、低耐力化した線条体をボビンに巻き付けた状態からスムーズに送り出すことができる線条体巻付けボビン、線条体巻取り方法、及び、線条体巻取り装置の提供を目的とする。
【解決手段】低耐力化した線条体1bをボビン胴部201に対して所定のトラバースピッチPでトラバース巻きすることにより、線条体1bをボビン200の半径方向へ巻き重ねた線条体巻付けボビン10であって、所定のトラバースピッチPを、定格ピッチpの1.0倍となる値を除く値、且つ、線条体1bを巻き付けたボビン周方向における少なくとも一部分に、ボビン周方向の他の部分と比較して線条体1bが嵩張った巻き太り部分を構成しない巻き態様となる値に設定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、太陽電池のリード線として用いるのに好適な低耐力特性を有する線条体をボビンに対して巻き付けた線条体巻付けボビン、線条体巻取り方法、及び、線条体巻取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、太陽電池セルとしてのシリコン結晶ウェハの所定の領域に接続用リード線を半田接合し、これを通じて電力を伝送する構成としている。太陽電池用リード線は、太陽電池セルとの接続部分が太陽電池セルの変形に追従する必要があるため、0.2%耐力値を低下させることが重要となる。このことから、太陽電池用リード線としては、0.2%耐力値が低いという低耐力特性を有することが要求され、0.2%耐力値を低下させた線条体(以下、「低耐力化した線条体」ともいう。)が用いられる。
【0003】
最近では、太陽電池セルの構成材料となるシリコンの供給不足の影響を緩和するためや、材料コストの削減を図るため、太陽電池セルは薄型化が求められている。
【0004】
しかし、太陽電池セルが薄型化すると強度が弱くなり、太陽電池セルにおける太陽電池用リード線を半田接続した接続部分は、互いの膨張率の違いにより太陽電池セルに反りや破損が発生し易くなるという問題があった。
このことから太陽電池用リード線は、太陽電池セルとの接続部分が太陽電池セルの変形に追従するため、0.2%耐力値をより一層低下させることが重要となる
このような低耐力化した線条体は、0.2%耐力値を低い値に保つために、製造時において0.2%耐力値を低下させていない通常の線条体とは全く異なる巻き付け方法でボビンに対して巻き付ける必要がある。
【0005】
詳しくは、0.2%耐力値を低下させていない通常の線条体の巻取り方法、及び巻取り装置として、例えば、特許文献1に記載の線条体巻取り方法及び装置が提案されている。
特許文献1に記載の線条体巻取り方法及び巻取り装置は、線条体の巻取り時に、線条体の外周に加圧接触する押えローラユニットを設け、該押えローラユニットで線条体巻き付け層の外周を押え、巻付けピッチがずれようとしてもこれを修正して線条体を拘束しながら整列巻きするための巻取り方法及び巻取り装置である。
【0006】
このように巻き取った線条体は、トラバースピッチを線条体の幅の約1.0倍の値の設定の下でボビンに対して巻き付けた巻き態様とすることができる。すなわち、巻き層を複数層に亘って積層した巻き態様となり、それぞれの巻き層は、線条体をボビン軸方向に沿って配列した複数の配列部分により構成される。線条体の配列部分は、隙間なくボビン軸方向に沿って配列され、且つ、複数の巻き層ごとにボビン軸方向に一致した態様で配列される。
【0007】
上述した特許文献1に記載の線条体巻取り方法及び巻取り装置のように、低耐力化していない通常の線条体の場合、巻き付けテンションを十分に付与しながら巻き付けたり、押えローラユニットで線条体巻き付け層の外周を押えるなどしながら巻き付けることができるため、トラバースピッチが線条体の幅に相当する長さの約1.0倍の値の場合でも、巻きずれ、巻き緩みの影響を受けない。
【0008】
しかし、低耐力化した線条体をボビンに対して巻き付ける際に、該線条体に負荷が作用すると0.2%耐力値を低い値に保つことができないため、通常の低耐力化していない線条体を巻き付ける場合と比較して、低い巻き付けテンションの下でボビンに対して巻き付ける必要がある。
【0009】
さらに、低耐力化した線条体を、上述した特許文献1に記載の線条体巻取り方法及び装置を用いてボビンに対して巻き付ける場合、例えば、押えローラユニットで線条体巻き付け層の外周を押え付けながら巻き付けるなどによって線条体に負荷が加わり、0.2%耐力値を低い値に保つことができないというという課題も生じる。
【0010】
ところが、上述したように、押えローラユニットで線条体巻き付け層の外周を押え付けず、或いは、線条体を低い巻き付けテンションで巻き付けた場合、ボビン軸方向に沿って螺旋状に巻き付けたリード角が小さくなるようにボビン軸方向にずれる巻きずれが発生し、この巻きずれは、線条体の巻き緩み(巻き解け)や巻き崩れの要因となる。
【0011】
特に、特許文献1に記載の線条体巻取り方法及び巻取り装置のように、トラバースピッチが線条体の幅に相当する長さの約1.0倍の値の場合、すなわち、線条体のボビン軸方向における複数の配列部分の隙間が略無い状態で整列した場合、複数の配列部分の配列によって構成される巻き層表面は、略平坦状になる。
【0012】
そうすると、ボビン半径方向に複数層に積層され、半径方向の内側と外側とで隣り合う巻き層のうち、外側の巻き層は、略平坦状の面を構成する内側の巻き層に対してスライドし易くなり、上述したボビン軸方向への巻き緩み、巻き崩れが特に発生し易くなる。
【0013】
このように、低耐力化した線条体の場合、0.2%耐力値を低い値に保つために、低い巻き付けテンションの下で巻き付けたり、押えローラユニットで線条体巻き付け層の外周を押えることができず、特に、トラバースピッチが線条体の幅に相当する長さの約1.0倍の値の場合であれば、上述した作用により巻きずれが発生し、巻きずれの影響により巻き緩みや巻き崩れが発生し易くなる。
【0014】
巻き緩みが発生すると、ボビンに対する巻き付け状態を維持できないことになり、線条体が互いに擦れ合うことや、ボビン鍔部などの周辺の部材に接触し易くなるため、線条体が傷付いたり、負荷が加わるなどして線条体の品質を確保することが困難となる。そして、このような巻き緩みが一旦発生すると、例えば、線条体巻付けボビン運搬の際に、振動などによって巻き緩み具合がより進行することになる。
【0015】
一方、巻き崩れが発生すると、線条体をボビンに巻き付けた状態から送り出す際に、線条体の送出し部分が例えば、巻き崩れ部分と干渉するなどして送り出そうとする線条体が引掛かる事態が発生する。
【0016】
このように線条体をボビンに巻き付けた状態から送り出す際に、線条体が引掛かると線条体に負荷が加わるため、0.2%耐力値の低い優れた品質を確保することができないといった問題が生じる。
さらに、線条体をボビンに巻き付けた状態から送り出す際に、線条体が引掛かると、線条体が断線したり、線条体のスムーズな送り出しに支障をきたし、その後の連続する生産ラインの全てを中断する必要があり、生産効率を著しく低下させることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2002−241053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
そこでこの発明は、低耐力化した線条体をボビンに対して負荷をかけずに巻き付けても、巻き緩みや巻き崩れなどが生じることなく所望の整列巻きした状態に保つことができ、低耐力化した線条体をボビンに巻き付けた状態からスムーズに送り出すことができる線条体巻付けボビン、線条体巻取り方法、及び、線条体巻取り装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、低耐力化した線条体をボビン胴部に対して所定のトラバースピッチでボビン軸方向の一端側から他端側へ向けて整列巻きするとともに、整列巻きした巻き層の外側に、ボビン軸方向の他端側から一端側へ向けて整列巻きを繰り返すトラバース巻きにより、線条体をボビンの半径方向へ巻き重ねた線条体巻付けボビンであって、前記所定のトラバースピッチを、定格ピッチの1.0倍より大きい値に設定し、且つ、線条体を巻き付けたボビン周方向における少なくとも一部分に、ボビン周方向の他の部分と比較して線条体が嵩張った巻き太り部分の発生を防止する値に設定したことを特徴とする。
【0020】
換言すると、前記所定のトラバースピッチは、定格ピッチの1.0倍となる値を除く値、且つ、線条体を巻き付けたボビン周方向における少なくとも一部分に、ボビン周方向の他の部分と比較して線条体が嵩張った巻き太り部分を構成しない巻き態様となる値に設定したことを特徴とする。
【0021】
前記線条体巻付けボビンとは、低耐力化した線条体をボビンの胴部に巻き付けた状態のボビンを示す。
【0022】
前記低耐力化した線条体とは、引張り試験における0.2%耐力値が60MPa以下の線条体であり、例えば、断面平角状、断面円形状に形成した太陽電池用平角導体として用いる線条体である。
【0023】
前記定格ピッチとは、ボビン軸方向に沿って配列する線条体の配列間隔のうち、線条体の幅に相当する値(線条体の幅の1倍)、或いは、線条体の長さ方向における線条体の幅のクリアランスや、ボビン胴部の軸方向のクリアランスを考慮して設定した値(線条体の幅の+α倍)を線条体の幅に相当する値に加算した値(線条体の幅の(1+α)倍)を示す。
【0024】
前記巻き太り部分とは、線条体を巻き付けたボビン周方向における少なくとも一部分が、ボビン周方向の他の部分と比較して線条体が嵩張った部分であり、例えば、ボビン周方向における少なくとも一部分がボビン周方向の他の部分と比較してボビン軸方向の略全体が膨んだ膨らみ部分に限らず、例えば、凹部分と凸部分とがボビン軸方向に沿って交互に繰り返す構成の凹凸状巻き太り部分など、ボビン軸方向の少なくとも一部分がボビン軸方向の他の部分より凸状である部分を含むものとする。
【0025】
なお、前記巻き太り部分が、凹部分と凸部分とがボビン軸方向に沿って交互に繰り返す構成である場合には、ボビンが振動するなどした際に、凸部分の線条体が、凹部分にスライドして落ち込むなどして、巻き緩み、巻き崩れ、巻きずれが発生することからこのような前記巻き太り部分は、巻き緩み、巻き崩れ、巻きずれの発生の要因となる。
【0026】
前記線条体は、その形状、サイズは限定しないが、平角線であることが好ましい。前記線条体を、上述した純銅系導体材料により平角線で形成することにより、表面にメッキ処理を施すことで、シリコン結晶ウェハ(Siセル)の所定領域に接続する接続用リード線として、すなわち、太陽電池用半田メッキ線として用いることができるからである。
【0027】
前記線条体は、純銅系材料で形成することが好ましい。前記純銅系材料とは、不純物が少なく、導電率が高い純銅系導体材料であれば特に限定せず、例えば、無酸素銅(OFC)、タフピッチ銅、リン脱酸銅といった酸化物などの不純物を含まない純度が99.9%以上である銅系材料であることが好ましい。
【0028】
上述した構成により、低耐力化した線条体をボビンに対して負荷をかけずに巻き付けても、巻き緩みや巻き崩れなどが生じることなく所望の整列巻きした状態に保つことができ、低耐力化した線条体をボビンに巻き付けた状態からスムーズに送り出すことができる。
【0029】
詳しくは、前記所定のトラバースピッチPを定格ピッチpの1.0倍より大きな値に設定することで、定格ピッチpの1.0倍の場合と比較して、線条体の巻き付け部分同士の間隔を確保して、巻き層の表面が凹凸形状となる巻き付け状態とすることができるため、巻き層間の摩擦抵抗を向上させることができる。
【0030】
これにより、線条体に負荷が加わらないよう低い巻き付けテンションの下で線条体を巻き付けても、該低耐力化した線条体に巻きずれ、巻き解けが生じることなくボビンに対して巻き付けることができるため、低耐力化した線条体の巻き付けに好適な巻き態様を実現することができる。
【0031】
また、前記所定のトラバースピッチPを定格ピッチpの1.0倍より大きな値に設定することで、上述したように、低耐力線に巻き付けテンションがかからずに、且つ、巻きずれ、巻き崩れが生じることなくボビンに対して巻き付けることができる一方で、このようなトラバースピッチPの場合、トラバースピッチPの値によっては、ボビンの周方向における少なくとも一部分に、周方向の他の部分と比較して嵩張った巻き太り部分が発生するおそれがある。
【0032】
このため、本発明によれば、上述したように、前記所定のトラバースピッチPを、線条体を巻き付けたボビンの周方向における少なくとも一部分に、周方向の他の部分と比較して嵩張った巻き太り部分の発生を防止する値に設定することにより、巻き崩れや巻き解けの要因となる巻き太り部分の発生を防止することができる。
【0033】
従って、巻き緩みや巻き崩れなどが生じることなく所望の整列巻きした状態に保つことができ、低耐力化した線条体をボビンに巻き付けた状態からスムーズに送り出すことができる。
【0034】
この発明の態様として、前記トラバースピッチをP、前記定格ピッチをpとしたとき、1.0×p<P<3.0×pに設定することができる。
【0035】
上述したように、前記トラバースピッチPを、1.0倍×p<Pに設定することにより、例えば、1.0×p>Pに設定した場合のように、整列巻きした線条体をボビン軸方向に沿って配列した複数の巻き付け部分のうち、少なくともいずれかの巻き付け部分が隣り合う巻き付け部分に対して乗り上げるなどして傾くことがなく、安定した巻付け態様で巻き付けることができる。
【0036】
また、上述したように、前記トラバースピッチPを、1.0倍×p<Pに設定することにより、例えば、P=1.0×pに設定した場合のように、ボビンに対して複数層に亘って巻き付けた線条体が略隙間なく整列することで、巻き層間における摩擦抵抗が低くなるという巻き態様を防ぐことができるため、巻きずれ、巻き解けの発生を防ぐことができる。
【0037】
よって、巻きずれ、巻き解けが発生しないため、スムーズにボビンから送り出すことができるとともに、該線条体に歪や曲げの発生や、0.2%耐力値が高くなることを防ぐことができ、太陽電池用接続リード線としての優れた品質を確保することができる。
【0038】
また上述したように、前記トラバースピッチPを、P<3.0倍×pに設定することにより、ボビンに巻き付けた線条体のボビン軸方向に対する傾斜角度(ボビン軸方向の直交方向に対する螺旋のリード角)が大きくなりすぎることを防ぐことができる。すなわち、ボビンに対する線条体の巻き付け軌道を、螺旋のリード角が小さくなる巻き付け軌道に抑制することができる。
【0039】
これにより、ボビンに対して低いテンションの下で巻き付けた線条体であっても、ボビンに対して巻き緩みが生じることなく、また、巻きずれの影響による巻き崩れの発生を防止することができる。
なお、上記の低いテンションとは、低耐力化した線条体の0.2%耐力値が60MPa以下を保つテンションよりも低いテンションであることを示す
【0040】
さらに、ボビンに対して線条体を巻き付ける際に、該線条体に負荷が加わることを抑制することができ、ボビンに対して巻き付けた線条体が捩れる、捩れクセが付く、さらには、線条体の角部が凹むなどの変形が生じることを防ぐことができる。
【0041】
またこの発明の態様として、1.0×p<P<2.0×p、且つ、2.0×p<P<3.0×pに設定することができる。
【0042】
換言すると、前記トラバースピッチPを、前記定格ピッチpの2.0倍の値を除く値に設定することができる。
【0043】
このように、前記トラバースピッチPを前記定格ピッチpの2.0倍の値を除く値に設定することで、ボビンに巻き付けた巻き付け線条体に凹凸状巻き太り部分が形成され難く、巻き崩れが発生しない巻き態様で巻き付けることができる。
【0044】
よって、ボビンに巻き付けた線条体を送り出す送出し部分が、例えば、巻き太り部分が巻き崩れることによって覆われ、送出し部分の線条体と巻き太り部分の線条体とが干渉し、送出し部分を送り出す途中で線条体が引掛かることがないため、線条体をボビンに対して負荷が加わることなく送り出すことができる。
【0045】
従って、ボビンに対して線条体を送り出す際に、線条体に対して過大な負荷が加わることがないため、0.2%耐力値の低い優れた品質を確保することができる。
【0046】
またこの発明の態様として、前記トラバースピッチPを、P<1.5×pに設定することができる。
【0047】
上述した構成により、例えば、P>1.5×pのように、トラバースピッチPが大きい値の場合、線条体は、ボビン軸方向において、ボビンに対する巻き付け軌道がより最短のトラバースピッチPとなる方向へスライドする巻きずれが生じ易くなるが、前記トラバースピッチPを、P<1.5×pに設定することにより、このような事態を防ぐことができ、より好ましい巻き態様の線条体巻付けボビンを構成することができる。
【0048】
さらに、線条体をボビンに対してトラバース巻きする際に、線条体に対して、ボビンの軸方向へ配索することにより加わるテンションが大きくなることや、巻きズレや線条体に対して負荷が加わることを確実に防止できる。
【0049】
さらにまた、前記トラバースピッチPを、P<1.5倍×pに設定することで、同一の長さの線条体をボビンに対して巻き付けたとき、前記トラバースピッチPがP>1.5倍×pの場合と比較して、嵩張らずにボビンに対して巻き付けることができ、コンパクトな線条体巻付けボビンを構成することができる。
【0050】
また本発明は、低耐力化した線条体をボビン胴部に対して所定のトラバースピッチでボビン軸方向の一端側から他端側へ向けて整列巻きするとともに、整列巻きした巻き層の外側に、ボビン軸方向の他端側から一端側へ向けて整列巻きを繰り返すトラバース巻きにより、線条体をボビンの半径方向へ巻き重ねた線条体巻付けボビンであって、前記トラバース巻きによって、ボビン半径方向の内側と外側とで隣り合う巻き層のうち、外側の巻き層を構成する線条体の配列部分が、内側の巻き層を構成する線条体の配列部分を跨ぐ跨ぎ部分がボビン軸方向に沿って並んだ軸方向跨ぎラインが巻き層ごとに形成され、前記所定のトラバースピッチを、1.0×p<P<1.5×pを満たす範囲において、前記軸方向跨ぎラインが巻き層ごとにボビン周方向において分散する値に設定したことを特徴とする。
【0051】
上述した構成によれば、低耐力化した線条体であっても、線条体に過大な負荷が加わることなく、且つ、巻き緩みが生じることなく巻き付けることができるとともに、巻き太り部分の発生を防止することができるため、巻き崩れや巻き緩みが発生することのない巻き態様を実現することができる。
【0052】
詳述すると、低耐力化していない通常の線条体の場合であれば、しっかりと巻き付けテンションを付与しながらボビンに対してトラバース巻きすることができるため、トラバースピッチP=1.0×pの設定でトラバース巻きしても、層間の摩擦抵抗が低いことにより巻き緩みが発生するという事態を最小限に留めることができる。そして、トラバースピッチP=1.0×pの設定でトラバース巻きすることで、ボビン軸方向に沿った線条体の配列部分同士の隙間が小さいため、ボビン軸方向において、前記跨ぎ部分が該跨ぎ部分以外の部分に対して嵩高(凸形状)となる事態は生じない。
【0053】
一方、低耐力化した線条体の場合、線条体にテンションをかけずに、且つ、巻き崩れが生じないよう巻き付けるため、上述したように、トラバースピッチPが定格ピッチpの1.0倍より大きな値に設定する。
【0054】
ところで、トラバース巻きにより、ボビンに対して複数層に亘って巻き重ねた場合、このような前記跨ぎ部分がボビン軸方向に沿って並んだ前記軸方向跨ぎラインが巻き層ごとに形成される。
【0055】
しかし、トラバースピッチPが定格ピッチpの1.0倍より大きな値によっては、特に、軸方向跨ぎラインが巻き層ごとにボビン周方向において一致するような巻き態様となる場合があり、このような巻き態様の場合、該軸方向跨ぎラインが巻き層ごとにボビン周方向において一致した部分が、ボビン周方向の他の部分と比較して線条体が嵩張った巻き太り部分となり、巻き崩れが発生し易い巻き態様となる。
【0056】
よって、前記所定のトラバースピッチを、1.0×p<P<1.5×pを満たす範囲において、前記軸方向跨ぎラインが巻き層ごとにボビン周方向において分散する値に設定することで、低耐力化した線条体であっても、負荷をかけずに、且つ、巻き緩みが生じることなく巻き付けることができるとともに、巻き太り部分の発生を防止することができ、巻き崩れが発生することのない巻き態様を実現することができる。
【0057】
ここで、前記跨ぎ部分とは、前記外側の巻き層を構成する線条体の配列部分が、前記内側の巻き層を構成する線条体の配列部分を跨ぐ部分である。
【0058】
詳しくは、トラバース巻きにより、ボビンに対して複数層に亘って巻き重ねた複数の巻き層のうち、ボビン半径方向の内側と外側とで隣り合う巻き層のうち、外側の巻き層を構成する線条体の配列部分と、内側の巻き層を構成する線条体の配列部分とは、いずれも螺旋状の配列となるが、それぞれの配列部分の配列方向を示す螺旋のリード角は、外側の巻き層を構成する線条体の配列部分と、内側の巻き層を構成する線条体の配列部分とで、正負逆になる。
【0059】
このため、トラバース巻きにより、ボビンに対して複数層に亘って巻き重ねたとき、複数の巻き層において、外側の巻き層を構成する線条体は、内側の巻き層を構成する線条体の配列部分を跨ぐように配列され、外側の巻き層を構成する線条体の配列部分には、内側の巻き層を構成する線条体の配列部分を跨ぐ部分が必然的に構成され、該跨ぐ部分を、上述した跨ぎ部分に設定している。
【0060】
また、上述したボビン軸方向に沿ってとは、ボビン軸方向に平行な方向に限らず、ボビン軸方向に対して傾いた方向であってもよく、少なくともボビン軸方向の成分を含む方向を示す。
【0061】
また本発明は、低耐力化した線条体をボビン胴部に対して所定のトラバースピッチでボビン軸方向の一端側から他端側へ向けて整列巻きするとともに、整列巻きした巻き層の外側に、ボビン軸方向の他端側から一端側へ向けて整列巻きを繰り返すトラバース巻きにより、線条体をボビンの半径方向へ巻き重ねる線条体巻取り方法であって、前記所定のトラバースピッチを定格ピッチの1.0倍より大きい値に設定し、且つ、線条体を巻き付けたボビン周方向における少なくとも一部分に、ボビン周方向の他の部分と比較して線条体が嵩張った巻き太り部分の発生を防止する値に設定することを特徴とする。
【0062】
また本発明は、低耐力化した線条体をボビン胴部に対して所定のトラバースピッチでボビン軸方向の一端側から他端側へ向けて整列巻きするとともに、整列巻きした巻き層の外側に、ボビン軸方向の他端側から一端側へ向けて整列巻きを繰り返すトラバース巻きにより、線条体をボビンの半径方向へ巻き重ねる線条体巻取り方法であって、前記トラバース巻きによって、ボビン半径方向の内側と外側とで隣り合う巻き層のうち、外側の巻き層を構成する線条体の配列部分が、内側の巻き層を構成する線条体の配列部分を跨ぐ跨ぎ部分がボビン軸方向に沿って並んだ軸方向跨ぎラインが巻き層ごとに形成され、前記所定のトラバースピッチを、1.0×p<P<1.5×pを満たす範囲において、前記軸方向跨ぎラインが巻き層ごとにボビン周方向において分散する値に設定する線条体巻取り方法であることを特徴とする。
【0063】
また本発明は、
低耐力化した線条体をボビン胴部に対して所定のトラバースピッチでボビン軸方向の一端側から他端側へ向けて整列巻きするとともに、整列巻きした巻き層の外側に、ボビン軸方向の他端側から一端側へ向けて整列巻きを繰り返すトラバース巻きにより、線条体をボビンの半径方向へ巻き重ねる線条体巻取り装置であって、前記所定のトラバースピッチを定格ピッチの1.0倍より大きい値に設定し、且つ、線条体を巻き付けたボビン周方向における少なくとも一部分に、ボビン周方向の他の部分と比較して線条体が嵩張った巻き太り部分の発生を防止する値に設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0064】
この発明によれば、低耐力化した線条体をボビンに対して負荷をかけずに巻き付けても、巻き緩みや巻き崩れなどが生じることなく所望の整列巻きした状態に保つことができ、低耐力化した線条体をボビンに巻き付けた状態からスムーズに送り出すことができる線条体巻付けボビン、線条体巻取り方法、及び、線条体巻取り装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】半田メッキ線の製造装置の概略図。
【図2】巻取り手段の説明図。
【図3】本実施形態のボビントラバース方式巻取り機の説明図。
【図4】P=p×2.0倍の設定の下でメッキ線をボビンに巻き付ける様子を模式的に説明する説明図。
【図5】図5(b)中のA−A線端面図(a)、及び、B−B線端面図(b)。
【図6】P=p×2.5倍の設定の下でメッキ線をボビンに巻き付ける様子を模式的に説明する説明図。
【図7】図6(b)中のA−A線端面図(a)、及び、B−B線端面図(b)。
【図8】ボビン落下試験の様子を示す説明図。
【図9】ボビン落下試験の結果を示すグラフ。
【図10】P=p×1.2倍の場合のメッキ線の巻付け態様を示す写真。
【図11】P=p×1.2倍の場合のメッキ線の巻付け態様を示す写真。
【図12】P=p×1.2倍の場合のメッキ線の巻付け態様を示す写真。
【図13】P=p×2.0倍の場合のメッキ線の巻付け態様を示す写真。
【図14】P=p×2.0倍の場合のメッキ線の巻付け態様を示す写真。
【発明を実施するための形態】
【0066】
この発明の一実施形態を、以下図面を用いて説明する。
本実施形態の半田メッキ線の製造装置11は、図1に示すように、被メッキ線1aに対してメッキ前処理を行うメッキ前処理手段2と、被メッキ線1aの表面に半田メッキを施すメッキ手段61と、表面にメッキを施したメッキ線1bを巻取る巻取り手段71とで構成している。
なお、図1は、半田メッキ線の製造装置11を模式的に示した説明図である。
【0067】
被メッキ線1aには、別途備えた平角線製造機(図示せず)により、無酸素銅(OFC)を厚みが0.05〜0.5mm、幅が0.8〜10mmに、より好ましくは、厚みが0.08〜0.24mm、幅が1〜2mmに圧延した平角銅線を用いている。
【0068】
前記メッキ前処理手段2は、主にサプライヤ12、加熱処理炉22、酸洗浄槽31、超音波水洗浄槽41、及び、軟化焼鈍炉51で構成している。
サプライヤ12は、ドラムに巻き付けた状態の被メッキ線1aをドラムが回転することで、順に解いていきながら製造ラインに供給する。サプライヤ12は、必要に応じてダンサー機能付きの構成であってもよく、また、通常の横繰り出しで繰り出す構成であってもよい。
【0069】
加熱処理炉22は、後述する軟化焼鈍炉51と略同様の構成であり、厚み方向に対して走行方向に長い直方体形状をした外観形状で構成している。加熱処理炉22は、走行方向に沿って走行方向の下流側端部が上流側端部よりも低位置になるよう傾斜配置している。加熱処理炉22の内部を、約200℃の設定温度の蒸気雰囲気となるよう設定する。
【0070】
また、加熱処理炉22に対して走行方向の下流側には、加熱処理炉22の内部を通過した被メッキ線1aを冷却する冷却水槽23を設置している。加熱処理炉22の下流側端部と冷却水槽23は、加熱処理炉22から導出した被メッキ線1aが空気に触れないよう冷却水槽23まで案内する連結管24で互いに連結されている。
【0071】
洗浄手段30としての酸洗浄槽31は、被メッキ線1aの表面を酸洗浄するリン酸系洗浄液32を貯溜している。
洗浄手段30としての超音波水洗浄槽41では、被メッキ線1aの表面に付着した水溶性潤滑剤やその他の不純物を、別途備えた超音波水洗浄機42を用いて洗浄するための水43を貯溜している。超音波水洗浄槽41の底面には、被メッキ線1aの走行方向に沿って超音波水洗浄機42の一部を構成する超音波振動板42aを配置している。なお、超音波水洗浄槽41の上方には、被メッキ線1aの走行する軌道上の側方から被メッキ線1aに向けてエアを吹き付けるエアワイパ45を設置している。
【0072】
前記軟化焼鈍炉51は、走行方向の上流側端部よりも下流側端部が徐々に低位置になるよう傾斜配置している。前記軟化焼鈍炉51は、加熱処理炉22と同様に直方体形状で構成した軟化焼鈍炉本体52と、該軟化焼鈍炉本体52を貫通するように配置し、被メッキ線1aの挿入を許容する内径を有するパイプ状の鞘管53と、軟化焼鈍炉本体52の内部に配置され、該内部を加熱するヒータ(図示省略)とで構成している。
鞘管53の内部は、還元ガス供給部57から還元ガスGを流入することで内部を還元ガス雰囲気としている。
【0073】
メッキ手段61は、溶融半田メッキ液63が貯溜された溶融半田メッキ槽62で構成し、溶融半田メッキ液63は、260℃の設定温度とし、溶融錫(Sn−3.0Ag−0.5Cu)を用いている。
【0074】
溶融半田メッキ槽62の内部には、表面に溶融半田メッキ液63が付着したメッキ線1bの走行方向を鉛直上方へ方向転換する槽中方向転換ローラ64を配置している。
【0075】
さらに、槽中方向転換ローラ64の鉛直上方には、メッキ線1bを鉛直上方への走行方向から巻取り手段71に向かう方向へ転換する槽上方向転換ローラ65を備えている。
【0076】
槽中方向転換ローラ64、及び、槽上方向転換ローラ65は、通常のφ20mm程度のローラよりも大径である例えば、φ100mm程度のローラで構成している。さらに、槽中方向転換ローラ64、及び、槽上方向転換ローラ65は、それぞれに備えた図示しない駆動モータによって、巻取り手段71に備えた後述するボビン200の回転速度と略同じ回転速度で自ら積極的に能動回転し、巻取り手段71による巻取り速度と同調するように、メッキ線1bの方向転換を行う。
【0077】
続いて巻取り手段71について図2、及び、図3を用いて説明する。
なお、図2は、巻取り手段71を模式的に示した説明図であり、図3は、巻取り手段71に備えたトラバース方式巻取りユニット80を模式的に示した説明図である。
【0078】
巻取り手段71は、トラバース方式巻取りユニット80と、トラバース方式巻取りユニット80の上流側で、該トラバース方式巻取りユニット80側へメッキ線1bを供給する供給ユニット90とで構成している。
【0079】
供給ユニット90は、メッキ線1bをトラバース方式巻取りユニット80に向けてガイドするよう配置された複数のガイドローラ91(91a,91b,91c,91d,91e)と、ガイドローラ91を介して走行するメッキ線1bを引き取る引取りキャプスタン92とで構成している。
なお、供給ユニット90には、メッキ線1bを引き取る際に、メッキ線1bに加わるテンションを調節する巻取り張力調節機としてのダンサーローラを備えた構成であってもよい。
【0080】
引取りキャプスタン92は、モータを備え(図示省略)、該モータの駆動によって能動的に回転し、メッキ前手段2からメッキ手段61に亘って走行するメッキ線1b(被メッキ線1a)の走行速度を決定する。
【0081】
引取りキャプスタン92は、メッキ線1bを引き取るとともに、下流側へ送り出すことで、トラバース方式巻取りユニット80側へメッキ線1bを供給する。
【0082】
トラバース方式巻取りユニット80は、制御部と、図3に示すように、ボビン200を軸回りに回転させるボビン回転手段110と、ボビン200をボビン軸方向へ往復移動させる往復移動手段120とで構成し、メッキ線1bをボビン軸方向の一端側から他端側へ向けて整列巻きするとともに、整列巻きした巻き付け層の外側に、ボビン軸方向の他端側から一端側へ向けて整列巻きを繰り返すトラバース巻きにより、メッキ線1bをボビン半径方向へ巻き重ねたメッキ線巻付けボビン10を構成する。
【0083】
制御部は、図示しないが、ボビン回転手段110によりボビン200を軸回りに回転させながら往復移動手段120によりボビン200を軸方向の両側へ往復する動作を繰り返し、ボビン胴部201に対して低耐力化したメッキ線1bを所定のトラバースピッチでトラバース巻きする制御を実行する。
【0084】
ボビン回転手段110は、ボビン200をその軸周りに回転させる巻取り駆動部111と、巻取り駆動部111の回転をボビン200側へ伝達する動力伝達手段としての巻取り軸112と、該巻取り軸112を回転自在に支持する支持台113とで構成している。
巻取り軸112の先端部には、上流側に配置したガイドローラ91eの軸方向とボビン軸方向とが一致するようボビン200の装着を許容するボビン装着部112aを備えている。
【0085】
往復移動手段120は、少なくともボビン軸方向長さを備えたネジ軸121と、往復可動部122と、往復移動駆動部123とで構成している。
【0086】
往復可動部122は、ボビン回転手段110の支持台113と一体に固定され、往復移動駆動部123の駆動によってネジ軸121に沿って往復移動する。これにより、ボビン200は、ボビン回転手段110ごとボビン軸方向の長さに相当するストローク分だけ往復動作する。
【0087】
なお、往復移動手段120は、ネジ軸121におけるボビン胴部201の長さに対応する間隔を隔てたボビン胴部端部対応位置に、往復可動部122が当該ボビン胴部端部対応位置に到達したことを検出する端部到達検出センサ124(図3参照)を適宜、備えてもよい。
【0088】
続いて上述したように構成した半田メッキ線の製造装置11を用いた半田メッキ線の製造方法について説明する。
半田メッキ線の製造方法は、被メッキ線1aに対してメッキ前処理を行うメッキ前処理工程と、被メッキ線1aの表面に半田メッキを施すメッキ工程を経てメッキ線1bを製造し、メッキ前処理工程とメッキ工程とを行っている間、メッキ線1bを巻取る巻取り工程とを行う製造方法である。
【0089】
メッキ前処理工程は、加熱処理工程、酸洗浄工程、水洗浄工程、及び、軟化焼鈍工程をこの順で行う工程である。
加熱処理工程では、蒸気雰囲気とした加熱処理炉22の内部において被メッキ線1aを走行させることで、被メッキ線1aの表面を蒸気洗浄する工程である。この蒸気洗浄により、被メッキ線1aの表面に付着した水溶性潤滑剤やその他の不純物を除去し易いよう表面から分離させることができる。
【0090】
加熱処理炉22を通過後の被メッキ線1aは、連結管24を通過後に冷却水槽23の内部に貯溜した冷却水を走行することにより、所定の温度まで冷却される。
【0091】
酸洗浄工程では、酸洗浄槽31に貯溜したリン酸系の洗浄液32中を走行させることで、この中を走行した被メッキ線1aの表面の酸洗浄を行う。
【0092】
水洗浄工程では、超音波水洗浄槽41において、被メッキ線1aの表面を超音波水洗浄し、該被メッキ線1aの表面に付着した水溶性潤滑剤やその他の不純物を除去する。
【0093】
軟化焼鈍工程では、内部を還元ガス雰囲気とするとともに、約800℃程度にまで加熱した軟化焼鈍炉51における内部に被メッキ線1aを走行させることで該被メッキ線1aを軟化焼鈍して低耐力化するとともに、被メッキ線1aの表面の酸化層を還元する工程である。
【0094】
続くメッキ工程では、被メッキ線1aが、溶融半田メッキ槽62に貯溜された溶融半田メッキ液63中を走行することで、被メッキ線1aの表面に溶融錫を付着させる。
軟化焼鈍炉51の内部から導出された被メッキ線1aは、溶融半田メッキ液63中に浸入するまで案内される。
【0095】
溶融半田メッキ液63に浸入した被メッキ線1aは、表面に溶融半田メッキ液63が付着し、表面全体が溶融半田メッキ液63で被覆されたメッキ線1bとなる。メッキ線1bは、溶融半田メッキ槽62の内部を走行する過程で溶融半田メッキ槽62中に備えた槽中方向転換ローラ64により、溶融半田メッキ槽62を走行する過程で鉛直上方に方向転換され、溶融半田メッキ槽62から鉛直上方に向けて導出される。
【0096】
メッキ線1bは、溶融半田メッキ槽62から導出された後、槽上方向転換ローラ65により方向転換され、巻取り手段71側へ走行する。
【0097】
巻取り工程では、図2、及び、図3に示すように、被メッキ線1aに対して上述したメッキ前処理工程及びメッキ工程を行っている間、これら工程を経たメッキ線1bを、巻取り手段71において供給ユニット90の引取りキャプスタン92がメッキ線1bを引き取るとともに、トラバース方式巻取りユニット80においてボビン200に整列巻していく。
【0098】
詳しくは、巻き付け工程では、往復移動手段120の往復移動駆動部123(モータ)の速度、或いはトルクを適宜、変更することで、ボビン胴部201にメッキ線をトラバース巻きする際のトラバースピッチを任意の値に設定可能としている。
【0099】
巻取り工程では、
前記所定のトラバースピッチを、
定格ピッチの1.0倍より大きい値に設定し、且つ、メッキ線1bを巻き付けたボビン周方向における少なくとも一部分に、ボビン周方向の他の部分と比較して線条体が嵩張った巻き太り部分の発生を防止する値に設定の下で、ボビン胴部201に対してメッキ線1bをトラバース巻きしている。
【0100】
詳しくは、前記トラバースピッチをP、前記定格ピッチをpとしたとき、トラバースピッチPを、1.0×p<P<2.0×p、且つ、2.0×p<P<3.0×pに設定している。
【0101】
すなわち、トラバースピッチPを、1.0倍×p<P<3.0倍×pの範囲内で、且つ、定格ピッチpの2.0倍の値を除く値となるよう設定している。
【0102】
また、巻取り工程では、往復可動部122がネジ軸121を移動する速度が略等速となるよう設定することで、ボビン200は、ボビン胴部201に巻き付けるメッキ線1bがボビン胴部201の軸方向の一端側から他端側、或いは、他端側から一端側へ達するまでの間、略等速でボビン軸方向へ移動しながらメッキ線1bを巻き付けている。
【0103】
なお、往復可動部122は、ボビン軸方向に沿って所定のトラバースピッチごとに小刻みに移動と停止を繰り返す断続的な移動も可能であるが、上述したように、略等速で移動するよう設定することにより、ボビン200に対して所定のトラバースピッチごとに整列巻きする場合において、ボビン200が加減速を繰り返すことによって低耐力化したメッキ線1bに加わる負荷を軽減している。
【0104】
上述した半田メッキ線の製造装置11および製造方法は、以下のように様々な作用、効果を得ることができる。
半田メッキ線の製造装置11は、メッキ前処理手段2としてのサプライヤ12、加熱処理炉22、酸洗浄槽31、超音波水洗浄槽41、及び、軟化焼鈍炉51と、メッキ手段61としての溶融半田メッキ槽62と、巻取り手段71を、それぞれメッキ線1bの走行方向の上流側から下流側へこの順にタンデムで配置、すなわち、一連配置している。
【0105】
このように各手段を一連配置し、各工程を連続して行うことで、製造中に低耐力化したメッキ線1bが無駄な距離を走行することを防ぐことができ、走行中にメッキ線1bにかかる負荷を低減することができる。
【0106】
従って、0.2%耐力値を十分に低下させた所望の品質のメッキ線1bを得ることができ、このようなメッキ線1bを安定して得ることで、製品歩留まりを向上させることができ、また、製造効率を向上させることができる。
【0107】
また、上述した巻取り装置11、及び、巻取り工程において、メッキ線1bのボビン胴部201に対する所定のトラバースピッチPを、定格ピッチpの1.0倍より大きい値に設定し、且つ、メッキ線1bを巻き付けたボビン周方向における少なくとも一部分に、周方向の他の部分と比較して嵩張った巻き太り部分発生を防止する値となる設定の下で、メッキ線1bのボビン胴部201に対してトラバース巻きする。
【0108】
これにより、メッキ線1bの巻きずれの影響を大幅に回避することができ、巻き崩れや巻き緩みが生じることを防ぐことができる。
【0109】
詳しくは、メッキ線1bの0.2%耐力値を低い値に保つためには、メッキ線1bを低いテンションの下でボビン200に巻き付ける必要があるが、このように低テンションの下でメッキ線1bをボビン200に巻き付けた場合、巻き緩み、巻きずれが生じ易いという課題がより顕著に生じることになる。
【0110】
例えば、前記所定のトラバースピッチPが定格ピッチpの1.0倍である場合、前記所定のトラバースピッチPが定格ピッチpの1.0倍より大きい場合と比較してボビン軸方向におけるメッキ線1bの配列部分同士の隙間が小さくなるため、前記複数の配列部分が配列することによって構成される巻き層表面は、メッキ線1bの配列部分同士の隙間が殆どない状態となり、該隙間を有することによる凹凸の影響が緩和され、略平坦形状となる。
【0111】
メッキ線1bが平角線である場合には、メッキ線1bをボビン軸方向に複数配列した構成の巻き層の表面は、特に、摩擦抵抗の少ない平滑面として構成されることになる。
【0112】
そして、一般に、低耐力化したメッキ線1bをボビン200にトラバース巻きする際には、低耐力化したメッキ線1bに負荷がかからないよう、低耐力化していない通常のメッキ線と比較して低い巻き付けテンションの下でボビン200に対してトラバース巻きする。
【0113】
そうすると、メッキ線1bをボビン200に巻き重ねたとき、複数に亘って積層する巻き層のうち、所定の巻き層を構成するメッキ線1bは、巻き緩み、巻き解けなどが発生するという課題が生じていた。
【0114】
これに対して、前記所定のトラバースピッチPを定格ピッチpの1.0倍よりも大きな値に設定することで、定格ピッチpの1.0倍の場合と比較して、メッキ線1bの配列部分同士の間隔を確保して、巻き層の表面が適度な凹凸形状となる巻き付け状態とすることができるため、巻き層間の摩擦抵抗を向上させることができる。
【0115】
これにより、メッキ線1bの巻きずれの影響を大幅に回避することができ、巻き解けや巻き緩みが生じることを防ぐことができる。
【0116】
また、上述したように、前記所定のトラバースピッチPを定格ピッチpの1.0倍よりも大きな値に設定した場合において、トラバースピッチPによっては、前記所定のトラバースピッチPを、メッキ線1bを巻き付けたボビン周方向における少なくとも一部分に、周方向の他の部分と比較して嵩張った巻き太り部分が発生することが経験的に明らかになっている。そこで、トラバースピッチPを定格ピッチpの1.0倍よりも大きな値の中でも、巻き太り部分が発生しない値に設定することにより、巻き崩れや巻き解けが生じ難い巻き態様とすることができる。
【0117】
詳しくは、巻き太り部分は、トラバースピッチPの設定値に応じて発生し、例えば、所定のトラバースピッチPごとに、メッキ線1bをボビン軸方向に沿って配列した配列部分が干渉したり、巻き乱れた状態で巻き付けられるなど様々な要因により発生する。
【0118】
巻き太り部分が発生すると、その部分でメッキ線1bをボビン200から送り出す際に引掛かり易くなり、また、巻き崩れが発生し易くなる。巻き崩れが発生すると、巻き崩れ部分が送り出し部分を覆うことで干渉し、メッキ線1bをボビン200から送り出す際により一層、引っ掛かり易くなる。
【0119】
このため、トラバースピッチPを適切に設定することが巻き太りを回避する上で重要となる。
【0120】
これに対して、前記所定のトラバースピッチPを、メッキ線1bを巻き付けたボビン周方向における少なくとも一部分に、周方向の他の部分と比較して嵩張った巻き太り部分の発生を防止する値に設定することにより、巻き乱れなどが生じることなく、安定した巻き態様となるため、巻き崩れが発生し難くなる。
【0121】
よって、メッキ線1bをボビン200に巻き付けた状態から送り出す際に、メッキ線1bの送出し部分が例えば、巻き崩れ部分と干渉し、引掛かることがないため、メッキ線1bをボビン200に対して負荷が加わることなく送り出すことができる。
【0122】
従って、メッキ線1bをボビン200に巻き付けた状態から送り出す際に、メッキ線1bに対して過大な負荷が加わることがないため、メッキ線1bが座屈することがなく、また、メッキ線1bの品質を0.2%耐力値の低い優れた品質に確保することができる。
【0123】
さらにメッキ線1bをボビン200に巻き付けた状態から送り出す際に、メッキ線1bの送出し部分が巻き崩れ部分に引掛かることで、メッキ線1bの送り出しを中断し、例えば、メッキ線1bの送出し部分と巻き崩れ部分との干渉を解消したり、別異のボビン200と交換したりする手間を必要とせず、太陽電池の生産効率を向上させることができる。
【0124】
また、上述した巻き取り工程では、前記トラバースピッチをP、前記定格ピッチをpとしたとき、
1.0倍×p<P<3.0倍×p
の設定の下で巻き取りを行っている。
【0125】
このように、トラバースピッチを、1.0倍×p<Pとなる範囲に設定することにより、メッキ線1bをボビン200に負荷が加わることなく巻き付けることができるとともに、安定した巻付け態様で巻き付けることができ、メッキ線1bをスムーズにボビン200から送り出すことができる。
【0126】
詳しくは、トラバースピッチPを定格ピッチpの1.0倍未満の値とした場合、メッキ線1bをボビン軸方向に沿ってトラバースピッチPごとずらしながら巻き付けたとき、メッキ線1bをボビン200に巻き付けた配列部分のうち、ボビン軸方向において互いに隣り合う配列部分の一方が他方に乗り上げるなどして傾く可能性が高くなる。このように傾いた状態で配列した配列部分の外側の層において、さらにメッキ線1bを巻き重ねると、巻き太りが発生し、巻き崩れ易い不安定な巻き付け状態となる。
【0127】
このような巻き付け状態の場合、スムーズな送り出しが阻害されることや、該メッキ線1bに歪みや曲げが発生し、0.2%耐力値が高くなり、太陽電池用接続リード線としての品質を確保することが困難となる。
よって、トラバースピッチPを、1.0倍×p<Pとなる範囲に設定している。
【0128】
また、上述したように、トラバースピッチPを、P<3.0倍×pとなる範囲に設定することにより、低耐力化したメッキ線1bをボビン200に対して低いテンションの下で巻き付けた場合であっても、ボビン軸方向に対してメッキ線1bの巻きずれが生じることなく、巻き緩み、巻き崩れの発生を防止することができる。
【0129】
詳しくは、低耐力化したメッキ線1bをボビン200に巻き付ける際には、メッキ線1bを低いテンションの下で巻き付けることで、メッキ線1bに加わる負荷を抑制している。
【0130】
ところが、トラバースピッチPが定格ピッチpの1.0倍の場合、メッキ線1bの配列部分同士の隙間が略皆無の状態となり、巻き層間の滑りが生じ易くなるため、巻き解けが生じ易くなる。このため、トラバースピッチを定格ピッチpの1.0倍より大きい値に設定することで、巻き層間の適度な摩擦を確保し、巻き解けを防止していることは上述したとおりである。
【0131】
しかし、その一方で、トラバースピッチPが大きくなればなる程、ボビン200に巻き付けられたメッキ線1bは、ボビン軸方向の直交方向に対するリード角が大きな螺旋状の巻き付け軌道となる。換言すると、ボビン200に螺旋状に巻き付けたメッキ線1bのボビン軸方向に対する傾斜角度が小さくなる。
【0132】
そうすると、ボビン200に巻き付けたメッキ線1bには、ボビン軸方向において、メッキ線1bの巻き付け軌道がより短くなる方向、すなわち、螺旋のリード角度がより小さくなる方向へ該メッキ線1b自体の復元力が大きく作用することになり、巻きずれがより生じ易くなるとともに、巻きずれが生じた場合の巻き緩みの度合いもより大きくなるという課題が生じる。
【0133】
さらに、トラバースピッチPを定格ピッチpの3.0倍以上に設定した場合、ボビン200の直交方向に対するリード角が大きな螺旋状に巻き付けられることになるため、メッキ線1bをボビン軸方向へ引張るようにしてボビン200に対して巻き付ける必要があり、メッキ線1bに加わる負荷が大きくなるという課題も生じる。
【0134】
さらにまた、トラバースピッチPを定格ピッチpの3.0倍以上に設定した場合、メッキ線1bをボビン200に巻き付けた状態において、メッキ線1bが捩れ易く、捩れクセが付いたり、角部が凹むなどの変形が生じ易くなるという課題も生じる。
【0135】
これに対して、トラバースピッチPを定格ピッチpの3.0倍未満の値に設置することで、ボビン200に対して低いテンションの下で巻き付けたメッキ線1bであっても、ボビン200に対して巻きずれが生じることなく、巻き緩み、巻き崩れの発生を防ぐことができる。
【0136】
さらに、ボビン200に対して巻き付ける際に、メッキ線1bに対してボビン軸方向へ配索する巻き付けテンションを付与する必要がないため、メッキ線1bに負荷が加わることを抑制することができる。また、ボビン200に対してリード角が大きな螺旋状に巻き付けることがないため、メッキ線1bが捩れたり、捩れクセが付いたり、角部が凹むなどの変形が生じることを防ぐことができる。
【0137】
また、本実施形態のメッキ線1bの巻取り方法では、低耐力化したメッキ線1bをボビン200に対して所定のトラバースピッチでボビン軸方向の一端側から他端側へ向けて整列巻きするとともに、整列巻きした巻き層の外側に、ボビン軸方向の他端側から一端側へ向けて整列巻きを繰り返すトラバース巻きによって、ボビン半径方向の内側と外側とで隣り合う巻き層のうち、外側の巻き層を構成するメッキ線1bの配列部分が、内側の巻き層を構成するメッキ線1bの配列部分を跨ぐ跨ぎ部分がボビン軸方向に沿って並んだ軸方向跨ぎラインが巻き層ごと必然的に形成されることになる。
【0138】
このため、前記所定のトラバースピッチを、1.0×p<P<1.5×pを満たす範囲において、前記軸方向跨ぎラインが巻き層ごとにボビン周方向において分散する値に設定している。
【0139】
すなわち、前記トラバースピッチPを、少なくとも前記定格ピッチpの2.0倍の値を除く値に設定することで、後述する凹凸状巻き太り部分133が生じる巻き態様を回避することができる。
【0140】
この点について、図4、乃至、図7を用いて詳述する。
なお、図4(a),(b)は、トラバースピッチPを、定格ピッチpの2.0倍の値に設定の下でメッキ線1bをボビン軸方向に沿って巻き付けたメッキ線巻付けボビン10を模式的に示した展開図である。
図6(a),(b)は、トラバースピッチPを、定格ピッチpの2.5倍の値に設定の下でメッキ線1bをボビン軸方向に沿って巻き付けたメッキ線巻付けボビン10を模式的に示した展開図である。
【0141】
図4(a),(b)、及び、図6(a),(b)は、いずれも簡略化のため、定格ピッチpを決定する上で考慮するクリアランスやメッキ線1bの厚みを省略するとともに、巻き数も(n−1)層目、n層目、及び、(n+1)層目の3層のみを簡略化して図示している。
【0142】
図4(a)、及び、図6(a)中において、複数層に亘って積層した巻き層のうち、メッキ線1bをボビン軸方向の一端側から他端側へ配列した複数の配列部分によって構成するn層目の巻き層を実線で表し、n層目の巻き層の一つ内側の層においてボビン軸方向の他端側から一端側へ配列した複数の配列部分によって構成する(n−1)層目の巻き層を破線で表している。
【0143】
図4(b)、及び、図6(b)中において、メッキ線1bをボビン軸方向の一端側から他端側へ配列した複数の配列部分によって構成する(n+1)層目の巻き層を実線で表し、(n+1)層目の巻き層に対して一つ内側の層においてボビン軸方向の他端側から一端側へ配列した複数の配列部分によって構成するn層目の巻き層を破線で表している。
【0144】
また、図5(a)は、図4(b)のA−A線端面図であり、図5(b)は、図4(b)のB−B線端面図である。図7(a)は、図6(b)のA−A線端面図であり、図7(b)は、図6(b)のB−B線端面図である。
【0145】
図4(a),(b)、及び、図6(a),(b)に示すように、ボビン半径方向の内側と外側とで隣り合う巻き層のうち、内側の巻き層を構成するメッキ線1bの配列部分のリード角(α)と、外側の巻き層を構成するメッキ線1bの配列部分のリード角(−α)とは互いに反転する方向、すなわち、ボビン軸方向に直交する直交方向に対して逆方向となる。
【0146】
このため、ボビン半径方向の内側と外側とで隣り合う巻き層のうち、外側の巻き層を構成するメッキ線1bの配列部分は、ボビン周方向の少なくとも一部分(ボビン周方向において2箇所)において内側の巻き層を構成するメッキ線1bの配列部分を跨ぐ跨ぎ部分130、すなわち、重なり合う部分(クロスポイント)が生じる。
【0147】
このような跨ぎ部分130がボビン軸方向に沿って複数並ぶラインが軸方向跨ぎライン130L(クロスライン)として形成される。
【0148】
ここで図4乃至図7に示すように、(n−1)層目を構成するメッキ線1bの配列部分に対して、n層目を構成するメッキ線1bの配列部分が跨ぐ跨ぎ部分130がボビン軸方向に沿って配列することで構成される軸方向跨ぎライン130Lを、軸方向跨ぎライン130Laに設定し、n層目を構成するメッキ線1bの配列部分に対して、(n+1)層目を構成するメッキ線1bの配列部分が跨ぐ跨ぎ部分130がボビン軸方向に沿って配列することで構成される軸方向跨ぎライン130Lを、軸方向跨ぎライン130Lbに設定する。
【0149】
そして、例えば、トラバースピッチPが、定格ピッチpの2.0倍となる値のように、トラバースピッチPの設定によっては、図4(a),(b)、及び、図5(a),(b)のうち、特に、図4(b)、及び、図5(b)に示すように、巻き層を複数層に亘って積層したとき、軸方向跨ぎライン130L(130La,130Lb)が、巻き層ごとに、ボビン周方向において偏った(一致した)場合、軸方向跨ぎライン130Lにおける、跨ぎ部分130が積層した部分が凸状部分131となり、跨ぎ部分130以外の部分が凹状部分132となる。このため、このように軸方向跨ぎライン130Lが、巻き層ごとに、ボビン周方向において偏った(一致した)場合、該一致する部分において凸状部分131と凹状部分132とがボビン軸方向に沿って並ぶ凹凸状巻き太り部分133ができる。
【0150】
このように、軸方向跨ぎライン130Lが、巻き層ごとにボビン周方向において一致する巻き態様、すなわち、凹凸状巻き太り部分133が生じる巻き態様は、トラバースピッチPを所定の値に設定した場合に発生するが、トラバースピッチPを高くするに従って凹凸状巻き太り部分133が発生する巻き態様となる可能性が高くなる。
【0151】
さらに、軸方向跨ぎライン130Lが、巻き層ごとにボビン周方向において一致する巻き態様、すなわち、上述した凹凸状巻き太り部分133が生じる巻き態様は、図4、及び、図5に示すように、トラバースピッチPを、前記定格ピッチpの2.0倍付近の値に設定した場合に、発生することが実験的に明らかとなっている。
【0152】
これに対して、図6、及び、図7に示すように、例えば、トラバースピッチPが、定格ピッチpの2.5倍となる値の場合のように、トラバースピッチPの設定によっては、(n−1)層目とn層目とで構成する軸方向跨ぎライン130Laと、n層目と(n+1)層目とで構成する軸方向跨ぎライン130Lbとは、ボビン周方向において一致せず、このように、軸方向跨ぎライン130Lが、巻き層ごとにボビン周方向において分散させることができるため、凸状部分131と凹状部分132とがボビン軸方向に沿って並ぶ凹凸状巻き太り部分133発生を防止することができる。
【0153】
よって、この各層において生じる凹凸状巻き太り部分133が周方向において偏る巻き態様を回避するため、トラバースピッチPを、定格ピッチpの2.0倍の値を除く値に設定することが好ましい。
【0154】
以下、効果確認実験について説明する。
【0155】
(効果確認実験)
本実験では、メッキ線1bをボビン200に対して連続してトラバース巻きしたメッキ線巻付けボビン10を、所定のトラバースピッチPごとに複数作成し、これらメッキ線巻付けボビン10を基に、低耐力化したメッキ線1bをボビン200に巻き取る上で、巻き崩れ難さを示す巻き付け特性の観点で好ましいトラバースピッチPを検証した。
【0156】
なお、ボビン200に巻き取られるメッキ線1bは、上述した製造方法により低耐力化した上で、表1に示す条件によりメッキ厚が40μmとなるよう製造したメッキ線である。
【0157】
【表1】

トラバースピッチPは、表2に示すように、定格ピッチpの1.0倍となる値から2.8倍までの所定の倍率で乗算した値の合計15種類に設定し、各トラバースピッチPに対応するメッキ線巻付けボビン10を合計15種類作成した。
なお、定格ピッチpは、ボビン軸方向に沿って配列したメッキ線1bの配列部分同士が乗り上げないように、メッキ線1bの幅やボビン軸方向の長さなどのクリアランスを考慮してメッキ線1bの幅(w=2.0mm)に対して0.4mmを加算した2.4mmに設定している。
【0158】
【表2】

本実験では、上述した15種類のメッキ線巻付けボビン10のそれぞれについて巻き態様の外観評価と落下試験を行い、これらの結果に基づいて巻き付け特性の観点で好ましいトラバースピッチPを明らかにした。
【0159】
巻き態様の外観評価では、メッキ線巻付けボビン10の表面外周の凹凸の有無と膨らみの有無をそれぞれ確認した。
【0160】
なお、メッキ線巻付けボビン10の表面外周の凹凸とは、メッキ線巻付けボビン10の外周の少なくとも一部分において、ボビン200の半径方向に凹状である凹部分と凸状である凸部分とがボビン軸方向に沿って交互に繰り返す構成の凹凸状巻き太り部分133が発生していることを示す。
メッキ線巻付けボビン10の表面外周の膨らみとは、メッキ線巻付けボビン10の外周の少なくとも一部分において、ボビン軸方向の略全体が膨んだ部分を示す。
【0161】
また、ボビン落下試験は以下の要領で行った。
図8に示すように、まず、メッキ線巻付けボビン10を水平なコンクリート床に対して2.0cm(H)の高さまで持ち上げ、ボビン軸方向が水平となる姿勢とした状態から自然落下させることで衝撃を加えた。
【0162】
このようなメッキ線巻付けボビン10の落下を繰り返すと、ボビン200胴部に巻き回したメッキ線1bは、落下の衝撃でボビン胴部201の軸方向の両側に有するボビン鍔部202に対するずれが生じ、ボビン鍔部202とメッキ線1bとの間に隙間が生じる。この隙間をシックネスゲージで計測し、所定の隙間(0.5mm、1.0mm、2.0mm)となるまでの落下回数を数えて、トラバースピッチPごとに比較した。
【0163】
すなわち、ボビン鍔部202とメッキ線1bとの間が所定の隙間に達するまでのボビン200の落下回数が多いほど、巻き崩れが発生し難いことを示し、本ボビン落下試験では、ボビン鍔部202とメッキ線1bとの間の隙間が2.0mmとなるまでの落下回数が10回未満である場合に「不合格」とし、10回以上の場合に「合格」とした。
【0164】
なお、本ボビン落下試験では、落下による巻き崩れの偏りを減らすため、1回の落下毎に、所定の水平姿勢での落下と該水平姿勢に対してボビン軸方向の一方の側と他方の側との向きを反転させた水平姿勢での落下を1セットとして行った。ボビン鍔部202とメッキ線1bとの隙間の計測は、計測の度に軸方向の一方の側と他方側とのそれぞれについて計測し、大きい方の値を採用した。
上述した巻き態様の外観評価とボビン落下試験の結果は、前記表2、及び図9に示すとおりである。
なお、図9は、上述の15種類のトラバースピッチPの設定ごとに、ボビン落下試験においてボビン鍔部202とメッキ線1bとの間の隙間が2.0mmとなる場合の落下回数をグラフ化したものである。
【0165】
表2に示すように、巻き崩れ特性を検証するボビン落下試験において結果が「不合格」となったトラバースピッチPの設定における巻き態様の外観評価の結果に着目すると、メッキ線巻付けボビン10には、その外周表面に凹凸部分、及び、膨らみ部分みのうち少なくともいずれか一方が発生していることが明かとなった。
【0166】
この結果より、メッキ線巻付けボビン10の外周表面の凹凸部分、或いは、膨み部分と、巻き付け特性を示す落下回数との間に因果関係があり、メッキ線巻付けボビン10の外周表面に、凹凸部分、及び、膨み部分の双方が生じないような巻き態様とすることが巻き崩れを防止する上で重要になることが明らかとなった。
【0167】
例えば、トラバースピッチPを定格ピッチpの2.0倍の値に設定した場合には、図13、及び、図14の写真に示すように、メッキ線巻付けボビン10の外周表面に、凹凸部分が発生したが、これは、図4(b)、及び、図5(b)に示すように、ボビン軸方向に沿って、凸状部分131と凹状部分132とが交互に表れる凹凸状巻き太り部分133が発生する巻き態様であった。
なお、凸状部分131と凹状部分132とは、大よそ3mmから8mm程度の段差が生じていた。
【0168】
この凹凸部分のうち、凸部について着目すると、図5(b)に示すように、メッキ線1bを巻き付けた配列部分を異なる層の配列部分が跨いだ跨ぎ部分130が積層した凸状部分131であった。
【0169】
そして、実際に、凸状部分131を指で軽く触ると、凹状部分132の側へ巻き崩れ、巻きずれが発生したことから、メッキ線巻付けボビン10の外周表面の周方向の一部に凹凸状巻き太り部分133が発生する巻き態様である定格ピッチpの2.0倍の値は、巻き崩れの観点で好ましくないことが立証できた。
【0170】
また、トラバースピッチPが定格ピッチpの1.0倍である場合のメッキ線巻付けボビン10は、ボビン落下試験の前においては、ボビン軸方向におけるメッキ線1bの配列部分がそれぞれの間に隙間が略無い状態で整列していることから、一見すると、整った巻き態様で巻き崩れ難いようにも思われた。
【0171】
しかし、ボビン落下試験の後においては、トラバースピッチPが定格ピッチpの1.0倍の値のときには、メッキ線巻付けボビン10の外周表面に、膨み部分が確認され、落下試験で「不合格」となった。
【0172】
よって、低耐力化したメッキ線1bにおいては、メッキ線1bに負荷がかからないよう、低い巻き付けテンションに設定の下、メッキ線1bをボビン200に対して巻き付ける必要があり、トラバースピッチPが定格ピッチpの1.0倍である場合、複数層に亘って積層するように巻き付けたメッキ線1bの巻き付け層間の摩擦抵抗が特に少なくなることから、巻き崩れが発生し易くなることを実証できた。
【0173】
さらに、図9に示すように、トラバースピッチPが定格ピッチpの1.0倍台後半である場合や2.0倍台であるからといって、ボビン落下試験において必ずしも「不合格」となるとは限らないが、トラバースピッチPが定格ピッチpの1.0倍の値に対して高い値になるに従って、ボビン落下試験において不合格となる場合が多くなることが明らかとなった。
【0174】
例えば、トラバースピッチPが定格ピッチpの2.0倍後半の値になると、ボビン落下試験結果は、全て「不合格」となり、2.5倍以下であることが好ましいことを確認できた。
【0175】
さらに、トラバースピッチPを定格ピッチpの2.0倍後半の値に設定すると、ボビン200に巻き付けたメッキ線1bには、クセが付いたり、捩れが生じていた。
この点からもトラバースピッチPは、定格ピッチpの2.5倍以下であることが好ましいことを確認できた。
【0176】
これに対して、トラバースピッチPを定格ピッチpの1.2倍の値に設定した場合には、ボビン落下試験の結果は、「合格」であった。その他にも、例えば、トラバースピッチPが定格ピッチpの1.8倍や2.5倍の場合にも、落下試験で「合格」となった。
【0177】
これらのメッキ線巻付けボビン10についての巻き態様の外観評価は、表2に示すように、外周表面に凹凸部分、及び、膨らみ部分みのいずれも発生しておらず、図10及至図12の写真に示すように、メッキ線1bがボビン軸方向に沿って安定した巻き態様となった。
なお、図10中の写真でボビン200に巻き付いたメッキ線1bの一部がボビン半径方向の外側へ突出しているがこれはメッキ線1bの先端部分であり、巻き太りによるものではない。
【0178】
すなわち、トラバース巻きにより、低耐力化したメッキ線1bをボビン胴部201に対して所定のトラバースピッチPでボビン軸方向の一端側から他端側へ向けて整列巻きするとともに、整列巻きした巻き層の外側に、ボビン軸方向の他端側から一端側へ向けて整列巻きの繰り返しが行われることによって、メッキ線1bがボビン軸方向に沿って整列した整列部分によって構成する巻き付け層が複数層に亘って積層する巻き態様となり、さらに、ボビン半径方向の内側と外側とで隣り合う巻き層のうち、外側の巻き層を構成するメッキ線1bの配列部分が、内側の巻き層を構成するメッキ線1bの配列部分を跨ぐ跨ぎ部分がボビン軸方向に沿って並んだ軸方向跨ぎラインが巻き層ごとに必然的に形成されることになる巻き態様となる。
【0179】
本実施形態のメッキ線1b巻取り方法によれば、トラバースピッチPを、前記軸方向跨ぎライン130Lが巻き層ごとにボビン周方向において分散する値として、例えば、定格ピッチpの1.2倍、1.8倍、或いは、2.5倍に設定しているため、軸方向跨ぎライン130Lが、巻き層ごとにボビン周方向において一致しないよう分散させることができ、凹凸状巻き太り部分133の発生を防止することができる。
【0180】
実際にメッキ線巻付けボビン10の外周表面を、指などで触れても、巻きずれが生じることがなく、巻き崩れや巻き解けが生じなかった。
【0181】
このことから本実験の条件においては、トラバースピッチPが定格ピッチpの1.2倍、1.8倍、2.5倍の場合が好ましく、これらの値は、0.2%耐力値を低い値に保つ必要がある太陽電池のリード線として用いる上で特に好ましいトラバースピッチPであることが明らかとなった。特に、トラバースピッチPが定格ピッチpの1.2倍の場合は、螺旋状に巻きつけることによる螺旋軌道のリード角を小さく抑えることができることからメッキ線1bの捩れの影響を受けることがないため、特に好ましい値といえる。
【0182】
また、効果確認実験では、前記表1の設定条件、製造条件とは異なる条件の下で上述した効果確認実験と同じ要領でメッキ線1bに対してボビン200をトラバース巻きする補足的、追加的な実験(以下、「追加試験」という。)を行った。
【0183】
この追加実験では、例えば、ボビン軸方向の長さなどが異なるサイズのボビン200にメッキ線1bを巻き付けたり、定格ピッチpを異なる値に設定するなどして前記表1の設定条件、製造条件とは異なる条件に設定した。
【0184】
追加実験の結果、トラバースピッチPが定格ピッチpの1.0倍、或いは、2.0倍のとき、図9に示すように、上述した効果確認実験と同様に、不合格となる結果となり、巻き崩れが発生し易い巻き態様であることが明らかとなった。このことからトラバースピッチPが定格ピッチpの1.0倍、或いは、2.0倍のとき、巻き崩れが発生し易い巻き態様となるという再現性を確認でき、これらの値を除く値に設定することが有効となる。
【0185】
逆に、トラバースピッチPが定格ピッチpの1.2倍の値の場合、ボビン落下試験の結果が「合格」となり、巻き崩れが発生し難いという再現性を確認できた。このことからトラバースピッチPが定格ピッチpの1.2倍の値に設定することが好ましいことを確認できた。
【0186】
さらに、トラバースピッチPが定格ピッチpの1.0倍から2.5倍以下の範囲において、トラバースピッチPが定格ピッチpの1.2倍となる値以外にも、好ましい巻き態様となる値が上述した定格ピッチpの1.8倍や2.5倍の場合のように、ボビン落下試験の結果が「合格」となるトラバースピッチPの値が断続的に表れるという上述の実験と同じ傾向が確認できた。
【0187】
但し、これら値は、ボビン軸方向の長さなどの製造条件や、製造過程で生じる誤差の影響により、必ずしも上述したトラバースピッチPの値と完全に一致するわけではなく、必ずしも再現性があるとは限らない。
【0188】
しかし、以下の手順により、その製造条件における最適なトラバースピッチPの値をスムーズ、且つ、正確に見極めることができる。
【0189】
まず、トラバースピッチPを、定格ピッチpの1.2倍となる値以外の好ましい値に設定する場合には、定格ピッチpの1.0倍から2.5倍の範囲内で、且つ、経験的に巻き崩れが発生し易い確率が高い定格ピッチpの2.0倍付近を除く所定の値を仮の値として設定する。
【0190】
そして、トラバースピッチPを前記仮の値とする設定の下で巻き付けを行い、巻き付け途中で仮に、外周面に凹凸が発生したり、膨らみ部分が生じる巻き態様となった場合には、トラバースピッチPの値を、定格ピッチpの1.8倍や2.5倍となる上述した好ましい所定の値付近の値に設定し直して巻き付けを行うことで、その製造条件における最適なトラバースピッチPの値をスムーズに見極めることができる。
【0191】
また、上述したトラバースピッチPは、メッキ線1bをボビン200に対してトラバース巻きする間、一定の値に固定するに限らず、メッキ線1bをボビン200に対して巻き付けの途中においてトラバースピッチPを、メッキ線巻付けボビン10の外周表面に凹凸部分が発生したり、膨らみ部分が生じないように変更可能に構成してもよい。
【0192】
このように、メッキ線1bをボビン200に巻き付けている最中において、メッキ線巻付けボビン10の外周表面における凹凸部分や膨らみ部分の発生の有無を確認する手段は、目視により確認し、手動で任意のトラバースピッチPを入力することでトラバースピッチPの値を変更してもよい。
【0193】
或いは、トラバース巻きしている最中にセンサによりリアルタイムで凹凸部分や膨らみ部分の発生の有無を測定し、センサの検出信号を基に、凹凸部分や膨らみ部分の発生が有りと判断した場合、凹凸部分や膨らみ部分が解消されるように自動でトラバースピッチPの値を変更するよう制御する構成であってもよい。
なお、センサとしては、例えば、赤外線センサやCCDカメラを用いることができる。
【0194】
この発明の構成と、上述した実施形態との対応において、
線条体は、メッキ線1bに対応し、以下同様に、
線条体巻付けボビンは、メッキ線巻付けボビン10に対応し、
線条体巻取り装置は、トラバース方式巻取りユニット80に対応し、
巻き太り部分、凹凸部分(凹凸状巻き太り部分133)、或いは、膨らみ部分に対応するも、本発明は、上述した実施形態に限定せず、様々な実施形態で構成することができる。
【0195】
例えば、巻取り手段71は、メッキ線の製造装置11に組み込んだ構成に限らず、他の装置に組み込んだ構成であってもよく、或いは、単独で構成してもよい。
【0196】
また、巻取り手段71は、トラバース方式巻取りユニット80と供給ユニット90との双方を備えた構成に限らず、例えば、トラバース方式巻取りユニット80のみを備えた構成であってもよい。
【符号の説明】
【0197】
1b…メッキ線
10…メッキ線巻付けボビン
80…トラバース方式巻取りユニット
200…ボビン
201…ボビン胴部
130…跨ぎ部分
130L…軸方向跨ぎライン
133…凹凸状巻き太り部分
P…トラバースピッチ
p…定格ピッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低耐力化した線条体をボビン胴部に対して所定のトラバースピッチでボビン軸方向の一端側から他端側へ向けて整列巻きするとともに、整列巻きした巻き層の外側に、ボビン軸方向の他端側から一端側へ向けて整列巻きを繰り返すトラバース巻きにより、線条体をボビンの半径方向へ巻き重ねた線条体巻付けボビンであって、
前記所定のトラバースピッチを、
定格ピッチの1.0倍より大きい値に設定し、且つ、線条体を巻き付けたボビン周方向における少なくとも一部分に、ボビン周方向の他の部分と比較して線条体が嵩張った巻き太り部分の発生を防止する値に設定した
線条体巻付けボビン。
【請求項2】
前記トラバースピッチをP、前記定格ピッチをpとしたとき、
1.0×p<P<3.0×p
に設定した
請求項1に記載の線条体巻付けボビン。
【請求項3】
1.0×p<P<2.0×p、且つ、
2.0×p<P<3.0×p
に設定した
請求項2に記載の線条体巻付けボビン。
【請求項4】
P<1.5×p
に設定した
請求項3に記載の線条体巻付けボビン。
【請求項5】
低耐力化した線条体をボビン胴部に対して所定のトラバースピッチでボビン軸方向の一端側から他端側へ向けて整列巻きするとともに、整列巻きした巻き層の外側に、ボビン軸方向の他端側から一端側へ向けて整列巻きを繰り返すトラバース巻きにより、線条体をボビンの半径方向へ巻き重ねた線条体巻付けボビンであって、
前記トラバース巻きによって、
ボビン半径方向の内側と外側とで隣り合う巻き層のうち、外側の巻き層を構成する線条体の配列部分が、内側の巻き層を構成する線条体の配列部分を跨ぐ跨ぎ部分がボビン軸方向に沿って並んだ軸方向跨ぎラインが巻き層ごとに形成され、
前記所定のトラバースピッチを、
1.0×p<P<1.5×pを満たす範囲において、
前記軸方向跨ぎラインが巻き層ごとにボビン周方向において分散する値に設定した
線条体巻付けボビン。
【請求項6】
低耐力化した線条体をボビン胴部に対して所定のトラバースピッチでボビン軸方向の一端側から他端側へ向けて整列巻きするとともに、整列巻きした巻き層の外側に、ボビン軸方向の他端側から一端側へ向けて整列巻きを繰り返すトラバース巻きにより、線条体をボビンの半径方向へ巻き重ねる線条体巻取り方法であって、
前記所定のトラバースピッチを定格ピッチの1.0倍より大きい値に設定し、且つ、線条体を巻き付けたボビン周方向における少なくとも一部分に、ボビン周方向の他の部分と比較して線条体が嵩張った巻き太り部分の発生を防止する値に設定する
線条体巻取り方法。
【請求項7】
前記トラバースピッチをP、前記定格ピッチをpとしたとき、
1.0×p<P<3.0×p
に設定した
請求項6に記載の線条体巻取り方法。
【請求項8】
1.0×p<P<2.0×p、且つ、
2.0×p<P<3.0×p
に設定した
請求項7に記載の線条体巻取り方法。
【請求項9】
P<1.5×p
に設定した
請求項8に記載の線条体巻取り方法。
【請求項10】
低耐力化した線条体をボビン胴部に対して所定のトラバースピッチでボビン軸方向の一端側から他端側へ向けて整列巻きするとともに、整列巻きした巻き層の外側に、ボビン軸方向の他端側から一端側へ向けて整列巻きを繰り返すトラバース巻きにより、線条体をボビンの半径方向へ巻き重ねる線条体巻取り方法であって、
前記トラバース巻きによって、
ボビン半径方向の内側と外側とで隣り合う巻き層のうち、外側の巻き層を構成する線条体の配列部分が、内側の巻き層を構成する線条体の配列部分を跨ぐ跨ぎ部分がボビン軸方向に沿って並んだ軸方向跨ぎラインが巻き層ごとに形成され、
前記所定のトラバースピッチを、
1.0×p<P<1.5×pを満たす範囲において、
前記軸方向跨ぎラインが巻き層ごとにボビン周方向において分散する値に設定する
線条体巻取り方法。
【請求項11】
低耐力化した線条体をボビン胴部に対して所定のトラバースピッチでボビン軸方向の一端側から他端側へ向けて整列巻きするとともに、整列巻きした巻き層の外側に、ボビン軸方向の他端側から一端側へ向けて整列巻きを繰り返すトラバース巻きにより、線条体をボビンの半径方向へ巻き重ねる線条体巻取り装置であって、
前記所定のトラバースピッチを定格ピッチの1.0倍より大きい値に設定し、且つ、線条体を巻き付けたボビン周方向における少なくとも一部分に、ボビン周方向の他の部分と比較して線条体が嵩張った巻き太り部分の発生を防止する値に設定する
線条体巻取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−75750(P2013−75750A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217030(P2011−217030)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【特許番号】特許第4999133号(P4999133)
【特許公報発行日】平成24年8月15日(2012.8.15)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(591019656)理研電線株式会社 (12)
【Fターム(参考)】