説明

線維化疾患治療剤

【課題】
本発明は、組織の線維化及び組織の線維化によって引き起こされる疾患の治療及び/又は予防のための医薬の提供、並びに、該医薬を使用した治療及び/又は予防方法の提供を目的とする。
【解決手段】
一般式(1)で表される置換ジフェニルメタン酸誘導体若しくはその塩又はそれらの溶媒和物若しくはそれらの水和物を有効成分として含む、組織の線維化及び組織の線維化によって引き起こされる疾患の治療及び/又は予防用医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線維化疾患の予防、又は治療をするための医薬又は医薬組成物、並びに、線維化疾患の治療方法に関する。より具体的には、ビタミンD受容体に選択的なパーシャルアゴニスト(又は部分アゴニスト)又はアンタゴニストを含んでなる線維化疾患の予防、又は治療をするための医薬又は医薬組成物、並びに、線維化疾患の治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
組織の線維化は、炎症などによって損傷を受けた組織が治癒する過程において、組織修復が異常に誘導される結果引き起こされる。このような組織の線維化は、様々な臓器において生じる可能性があり、線維化の結果、さらなる重篤な疾患が発症する危険性を有している。主な線維化疾患としては、心筋線維化、肺線維症、肝硬変、糸球体硬化症、全身性強皮症、全身性硬化症、皮膚瘢痕化などが知られている。線維化疾患患者は、国内で数十万人にのぼるが、未だ有効な治療法は存在せず、組織の線維化は、重要な薬剤開発課題として早急に解決されるべき対象となっている。線維化疾患の主要原因は、TGF−β/Smad経路の異常亢進であると考えられている。TGF−βが細胞膜上のレセプターに結合すると、細胞内セカンドメッセンジャーであるSmad2/3がリン酸化され、さらに、Smad4と複合体を形成して、核内へと移行する。リン酸化されたSmad複合体は、転写補助因子として核内において機能し、標的遺伝子(例えば、I型コラーゲン遺伝子、平滑筋アクチン遺伝子、フィブロネクチン遺伝子など)の転写を介して細胞外マトリクス産生を促進する。従って、組織の線維化疾患の治療方法として、異常亢進したTGF−β/Smad経路をTGF−β阻害剤等により抑制することが考えられている。
【0003】
TGF−βの阻害剤として、例えば、アンチセンス核酸(AP−12009、AP−11014)(特許文献1)、抗TGF−βレセプター抗体(Lerdelimumab、Metelimumab、GC−1008)などが報告されており、さらに、線維症の治療剤として、受容体キナーゼ阻害剤、TGF−β活性化阻害ペプチド(特許文献2)、線維化抑制剤(特許文献3)、シンナモイル化合物(例えば、特許文献4、5)、含複素環化合物(特許文献6)、シクロプロパンカルボン酸アミド化合物(特許文献7)などが報告されている。
【0004】
TGF−β阻害剤に対しては、線維症に関する治療効果が期待される反面、TGF−βの下流の経路を全て抑制してしまうため、副作用の危険性が指摘されている。そこで、TGF−βよりも下流で、線維化関連遺伝子を直接転写活性化するSmadの活性を阻害することによって、線維症の治療ができないか検討が行われつつある。例えば、核内受容体がリガンド依存的にSmadを分解することに着目し、エストロゲン受容体リガンド、グルココルチコイド受容体リガンド、ビタミンD受容体リガンド、プロゲステロン受容体リガンド、レチノイン酸受容体リガンド等により、Smadのユビキチン化及び分解を誘導する方法が開示された(特許文献8)。なかでも、ビタミンD受容体アゴニストはTGF−β受容体を介した情報伝達経路を抑制することで、閉塞性ネフロパシーにおける間質性線維症を軽減することが報告されており(非特許文献1)、今後の線維症治療剤の開発を行う上で注目を浴びている。
本願の発明者らは、すでに、TGF−β/Smad経路を抑制し、線維化を抑制する効果を有するビタミンD受容体アゴニストについて報告している(特許文献9)。また、発明者らが報告したビタミンD受容体アゴニストと類似する化合物についてもいくつか報告されている(特許文献10〜12、非特許文献2)。ただ、ビタミンD受容体アゴニストなどの核内受容体リガンドは、本来、該リガンドが有する生理的機能に起因した副次的作用、を引き起こす可能性があるため、Smad活性を阻害する全ての核内受容体リガンドが線維症の治療に利用できるとは限らない点において、依然として未解決の問題が残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO02005/084712号
【特許文献2】特開2008−247900
【特許文献3】特許第3700854号
【特許文献4】特開2006−104062
【特許文献5】特開2006−273847
【特許文献6】特開2007−308441
【特許文献7】特開2004− 35475
【特許文献8】特開2008−174463
【特許文献9】特開2010−208997
【特許文献10】WO2003/101978
【特許文献11】WO2004/048309
【特許文献12】WO2005/051898
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Xiaoyue Tanら J.Am Soc Nephrol 17:3382−3393 2006
【非特許文献2】Hakamataら,Bioorg.Med.Chem.Lett.18:120−123 2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、上記事情に鑑み、Smadの活性化を阻害し、かつ、副作用の生じにくい化合物の探索につき鋭意研究を行った結果、ビタミンD受容体(VitaminD Receptor:VDR、以下VDRとする)に選択的な部分アゴニスト(partial agonist;パーシャルアゴニスト)活性、及び/又はアンタゴニスト活性を有する化合物を見出し、本発明を完成させた。
従って、本発明は、VDRに選択的な部分アゴニスト又はアンタゴニストを含んでなる、線維化抑制のための医薬又は医薬組成物の提供を目的とする。
また、該医薬又は医薬組成物を用いた組織の線維化の抑制及び/又は予防方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者らは、Smadの転写活性の阻害活性を有し、かつ、VDRアゴニストとしての活性が、天然のビタミンD(full agonist;フルアゴニスト)に比較して活性が弱い化合物を合成することにより、課題を解決し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表される置換ジフェニルメタン酸誘導体若しくはその塩又はそれらの溶媒和物若しくはそれらの水和物を有効成分として含む、組織の線維化及び組織の線維化によって引き起こされる疾患の治療及び/又は予防用医薬組成物である。
【化1】


[式(1)中、Xは−C(R)−、又は硫黄原子であり、R及びRは同一又は相異なって直鎖のC3からC6を表し、Dはtertブチル基、アダマンチル基、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、C(CH(CH)nPh基(ただし、nは1〜3)であり、Aは、−CHCH(OH)CHOH又は−(CH)mCOOH(ただし、mは1〜5)であり、B及びCは相異なっても又は同一でもよい、水素原子又はメチル基であり、Eはヒドロキシル基又はオキソ基である]
また、本発明は上記医薬を患者に投与することを含む、組織の線維化及び組織の線維化によって引き起こされる疾患の治療及び/又は予防方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、線維症、及び組織の線維化によって引き起こされる疾患の治療及び/又は予防に極めて有効であり、かつ、副作用が少ない医薬の提供が可能となる。
【0010】
また、本発明により、線維症、及び組織の線維化によって引き起こされる疾患の治療及び/又は予防において極めて有効であり、かつ、副作用が少ない方法の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の化合物(実施例16の化合物)のVDR転写活性に対するアゴニスト(A)及びアンタゴニスト(B)としての活性について評価を行った。アンタゴニスト活性の評価は、10−4μMの1,25(OH)ビタミンDの存在下で行った。比較化合物として、1,25(OH)ビタミンDと(3−(4−(2−(4−(2−ヒドロキシ−3,3−ジメチルブトキシ)フェニル)プロパン−2−イル)フェノキシ)プロパン−1,2−ジオール)(図中、「比較化合物」と表記)(特許文献9)を用いた。縦軸は、ルシフェラーゼ活性を内部標準であるβガラクトシダーゼ活性で序した数値(RLU;Relative Light Unit)を示す。
【図2】本発明の化合物(実施例16の化合物)の腎組織線維化への影響。マウスC57BL/6NJclの9週齢の雄に、アデニン0.25%混じ食を7日間投与し、8日よりCE食(基礎食)を7日間投与した線維化モデルマウスを使用した。コントロールとして、DMSO(ジメチルスルホキシド)を投与した。腎組織は、マッソントリクローム染色法により染色後、顕微鏡観察を行った。
【図3】線維化マーカー遺伝子(α−平滑筋アクチン遺伝子)(A)及びVDR標的遺伝子(Cyp24A)(B)の発現に対する実施例16の化合物の影響を検討した。図2の実験と同様に、アデニンを投与した線維化モデルマウス(図中「アデニン」)に対する影響を検討した。Shamは、疑似処理のコントロール群である。グラフの縦軸は、Sham処理群に対する相対的発現量である。
【図4】実施例16の化合物を投与した場合の線維化モデルマウス(アデニン投与マウス)の血中カルシウム量を調べた結果。グラフの縦軸は、Sham群、各種薬物投与群マウスの血中カルシウム濃度である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態の1つは、一般式(1)で表される置換ジフェニルメタン酸誘導体若しくはその塩又はそれらの溶媒和物若しくはそれらの水和物を有効成分として含む、組織の線維化及び組織の線維化によって引き起こされる疾患の治療及び/又は予防用医薬又は医薬組成物である。
一般式(1)において、Xは−C(R)−、又は硫黄原子であり、R及びRは同一又は相異なって直鎖のC3からC6を表であり、好ましくは−C(C−である。
また、Dはtertブチル基、アダマンチル基、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、C(CH(CH)nPh基(ただし、nは1〜3)であり、好ましくは、tert−ブチル基である。
さらに、Aは、−CHCH(OH)CHOH又は−(CH)mCOOH(ただし、mは1〜5)であり、好ましくは、−CHCH(OH)CHOHであり、B及びCは水素又はメチル基であり、Eはヒドロキシル基又はオキソ基であり、好ましくはオキソ基である。
【0013】
一般式(1)で表される化合物の薬剤上許容される塩は特に限定されるものではなく、慣用の塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩等の金属塩が挙げられる。
一般式(1)で表される置換ジフェニルメタン酸誘導体には、光学異性体が含まれるが、そのような光学異性体及びそれらの混合物はすべて本発明の範囲内に含まれるものである。
【0014】
本発明の一般式(1)で表される化合物のうち、例えば、式(1a)及び式(1b)で表される化合物は、以下のスキーム1に示す過程により製造することができる。
【化2】

【0015】
すなわち、上記化合物(1a)
【化3】


[ただし、Rはtert−ブチル基、アダマンチル基、又はC(CH(CH)nPh基(ただし、nは1〜3)]で表わされる化合物はフェノールに4−ヘプタノンをメタンスルホン酸存在下反応させる(第1工程)ことにより合成できる化合物(2)
【化4】


に一般式(4)
【化5】


[ただし、Rはtert−ブチル基、アダマンチル基、又はC(CH(CH)nPh基(ただし、nは1〜3)]で表わされる化合物を反応させる(第2工程)ことにより得られる一般式(3)
【化6】


[ただし、Rはtert−ブチル基、アダマンチル基、又はC(CH(CH)nPh基(ただし、nは1〜3))]で表わされる化合物にラセミ体のグリシドールを反応させる(第3工程)ことにより合成することができる。
【0016】
第1工程の反応は無溶媒又はトルエン中で実施する事ができる。反応温度としては0℃から100℃にて、好適には室温から50℃にて実施する事ができる。
第2工程の反応はN,N−ジメチルホルムアミド、DMSO、N−メチルピロリドン等の溶媒中、塩基として水素化ナトリウム、tert−ブトキシドカリウム等を用いて実施する事ができる。反応温度としては0℃から100℃にて、好適には室温から80℃にて実施する事ができる。
第3工程の反応はN,N−ジメチルホルムアミド、DMSO、N−メチルピロリドン等の溶媒中、塩基としてフッ化セシウム、水素化ナトリウム、tert−ブトキシドカリウム等を用いて実施する事ができる。反応温度としては0℃から150℃にて、好適には60℃から100℃にて実施する事ができる。
【0017】
また、一般式(1b)
【化7】


[ただし、Rはtert−ブチル基、アダマンチル基、又はC(CH(CH)nPh基(ただし、nは1〜3)]で表わされる化合物は上記化合物(1a)
【化8】


[ただし、Rはtert−ブチル基、アダマンチル基、又はC(CH(CH)nPh基(ただし、nは1〜3)]で表わされる化合物を還元(第4工程)することにより合成することができる。
【0018】
第4工程の反応はメタノール、エタノール、酢酸エチル等の溶媒中、テトラヒドロホウ酸ナトリウム、テトラヒドロホウ酸リチウム等の還元剤を用いて実施する事ができる。反応温度としては0℃から100℃にて、好適には室温から60℃にて実施する事ができる。
また、本発明の一般式(1)で表される化合物のうち、例えば、式(1c)で表される化合物は、以下のスキーム2に示す過程により製造することができる。
【化9】

【0019】
すなわち、上記化合物(1c)
【化10】


[ただし、Rはフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2,4,6−トリメチルフェニル基]で表わされる化合物は化合物(2)
【化11】


にベンジルブロミドを反応(第5工程)させて得られる化合物(5)
【化12】


にグリシドールを反応(第6工程)させて得られる化合物(6)
【化13】


のベンジル基を脱保護(第7工程)して得られる化合物(7)
【化14】


に一般式(8)
【化15】


[ただし、Rはフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2,4,6−トリメチルフェニル基]で表わされる化合物を反応させる(第8工程)ことにより合成することができる。
【0020】
第5工程の反応はN,N−ジメチルホルムアミド、DMSO、N−メチルピロリドン等の溶媒中、塩基として水素化ナトリウム、tert−ブトキシドカリウム等を用いて実施する事ができる。反応温度としては0℃から100℃にて、好適には室温から80℃にて実施する事ができる。
第6工程の反応はN,N−ジメチルホルムアミド、DMSO、N−メチルピロリドン等の溶媒中、塩基としてフッ化セシウム、水素化ナトリウム、tert−ブトキシドカリウム等を用いて実施する事ができる。反応温度としては0℃から150℃にて、好適には60℃から100℃にて実施する事ができる。
第7工程の反応は、還元反応はパラジウム担持活性炭、白金担持活性炭、酸化白金、ロジウム担持アルミナ等の金属触媒存在下、エタノール、メタノール、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド等の溶媒中水素圧1kgf/cmから5kgf/cmで実施する事ができる。反応温度としては0℃から100℃にて、好適には室温から80℃にて実施する事ができる。
第8工程の反応はN,N−ジメチルホルムアミド、DMSO、N−メチルピロリドン等の溶媒中、塩基としてフッ化セシウム、水素化ナトリウム、tert−ブトキシドカリウム等を用いて実施する事ができる。反応温度としては0℃から150℃にて、好適には60℃から100℃にて実施する事ができる。
【0021】
また、一般式(1d)
【化16】


[ただし、Rはtert−ブチル基、アダマンチル基、又はC(CH)(CH)(CH2)nPh基(nは1〜3)であり、B及びCは同一又は相異なって水素原子又はメチル基]で表わされる化合物は以下のスキーム3に示す過程により製造することができる。
【化17】

【0022】
すなわち、上記化合物(1d)
【化18】


[ただし、Rはtert−ブチル基、アダマンチル基、又はC(CH(CH)nPh基(ただし、nは1〜3)であり、B及びCは同一又は相異なって水素原子又はメチル基]で表わされる化合物は、化合物(9)
【化19】


[ただし、B及びCは同一又は相異なって水素原子又はメチル基]に一般式(4)
【化20】


[ただし、Rはtert−ブチル基、アダマンチル基、又はC(CH(CH)nPh基(ただし、nは1〜3)]で表わされる化合物を反応させる(第9工程)ことにより得られる一般式(10)
【化21】


[ただし、Rはtert−ブチル基、アダマンチル基、又はC(CH(CH)nPh基(ただし、nは1〜3)であり、B及びCは同一又は相異なって水素原子又はメチル基]で表わされる化合物にラセミ体のグリシドールを反応させる(第10工程)ことにより合成することができる。
【0023】
第9工程の反応はN,N−ジメチルホルムアミド、DMSO、N−メチルピロリドン等の溶媒中、塩基として水素化ナトリウム、tert−ブトキシドカリウム等を用いて実施する事ができる。反応温度としては0℃から100℃にて、好適には室温から80℃にて実施する事ができる。
第10工程の反応はN,N−ジメチルホルムアミド、DMSO、N−メチルピロリドン等の溶媒中、塩基としてフッ化セシウム、水素化ナトリウム、tert−ブトキシドカリウム等を用いて実施する事ができる。反応温度としては0℃から150℃にて、好適には60℃から100℃にて実施する事ができる。
【0024】
また、式(1e)で表される化合物は、以下のスキーム4に示す過程により製造することができる。
【化22】

【0025】
すなわち、上記化合物(1e)
【化23】


[ただし、Rはtert−ブチル基、アダマンチル基、又はC(CH(CH)nPh基(ただし、mは1〜5)であり、nは1〜6を表す]で表わされる化合物は化合物(3)に一般式(12)
【化24】


[ただし、Rは炭素数1〜6のアルキル基であり、mは1〜5を表す]で表わされる化合物を反応させる(第11工程)ことにより得られる一般式(11)
【化25】


[ただし、Rはtert−ブチル基またはC(CH(CH)nPh基(ただし、nは1〜3)であり、mは1〜5であり、Rは炭素数1〜6のアルキル基]で表わされる化合物を加水分解反応(第12工程)することにより合成することができる。
【0026】
第11工程の反応はN,N−ジメチルホルムアミド、DMSO、N−メチルピロリドン、アセトン等の溶媒中、塩基として水素化ナトリウム、tert−ブトキシドカリウム、無水炭酸カリウム、無水炭酸ナトリウム等を用いて実施する事ができる。反応温度としては0℃から150℃にて、好適には室温から100℃にて実施する事ができる。
第12工程の反応はアルカリ性条件下で行う事ができる。アルカリ性条件としては水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が用いられる。反応温度としては0℃から100℃にて、好適には室温から70℃にて実施する事ができる。
【0027】
また、式(1f)で表される化合物は、以下のスキーム5に示す過程により製造することができる。
【化26】

【0028】
すなわち、上記化合物(1f)
【化27】


[ただし、B及びCは同一又は相異なって水素原子又はメチル基であり、Rはtert−ブチル基またはC(CH(CH)nPh基(ただし、nは1〜3)であり、mは1〜5]で表わされる化合物は一般式(10)
【化28】


[ただし、Rはtert−ブチル基またはC(CH(CH)nPh基(ただし、nは1〜3)であり、B及びCは同一又は相異なって水素原子又はメチル基]で表わされる化合物に一般式(12)
【化29】


[ただし、Rは炭素数1〜6のアルキル基であり、mは1〜5を表す]で表わされる化合物を反応させる(第13工程)ことにより得られる一般式(13)
【化30】


[ただし、Rはtert−ブチル基又はC(CH(CH)nPh基(ただし、nは1〜3)であり、Rは炭素数1〜6のアルキル基であり、mは1〜5]で表わされる化合物を加水分解反応(第14工程)することにより合成することができる。
【0029】
第13工程の反応はN,N−ジメチルホルムアミド、DMSO、N−メチルピロリドン、アセトン等の溶媒中、塩基として水素化ナトリウム、tert−ブトキシドカリウム、無水炭酸カリウム、無水炭酸ナトリウム等を用いて実施する事ができる。反応温度としては0℃から150℃にて、好適には室温から100℃にて実施する事ができる。
第14工程の反応はアルカリ性条件下で行う事ができる。アルカリ性条件としては水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が用いられる。反応温度としては0℃から100℃にて、好適には室温から70℃にて実施する事ができる。
【0030】
一般式(1)で表される化合物は、VDRに選択的なパーシャルアゴニスト(部分アゴニスト)又はアンタゴニスト活性を有する。
ここで、VDRの「アゴニスト」とは、VDRに結合して、VDRによる標的遺伝子の転写活性化を誘導する化合物のことである。また、VDRの「パーシャルアゴニスト(又は部分アゴニスト)」とは、VDRに結合して、VDRによる標的遺伝子の転写活性化を誘導するが完全なアゴニスト(フルアゴニスト;例えば、生体内において実際にアゴニストとして作用している化合物(ビタミンDなど))よりは転写活性化の誘導作用が弱い化合物のことである。本明細書において、「パーシャルアゴニスト」とは、その最大活性が、フルアゴニストとして知られている1α,25ジヒドロキシビタミンDの最大活性の数%〜75%程度、好ましくは、10%〜50%程度の化合物のことである。一方、「アンタゴニスト」とは、VDRに結合はするが、VDRによる転写活性を誘導せず、アゴニストによるVDR転写活性の活性化を抑制する化合物のことである。本明細書において「アンタゴニスト」とは、VDRのフルアゴニストを共存させた場合に、該フルアゴニストの活性を、例えば、70%以下に減少させる化合物、好ましくは50%以下に減少させる化合物、より好ましくは30%以下に減少させる化合物、さらにより好ましくは10%以下に減少させる化合物のことである。
パーシャルアゴニストには、他のアゴニストと共存させた場合に、アンタゴニストとして作用する化合物も含まれる。
【0031】
一般式(1)で表される本発明の化合物のVDR転写活性化は、フルアゴニストより低い。あるいは、一般式(1)で表される本発明の化合物は、フルアゴニストによるVDRの標的遺伝子の転写活性化を抑制することができる。従って、本発明の一般式(1)で表される化合物を医薬又は医薬組成物として患者に投与した場合、公知のフルアゴニスト(例えば、1α,25ジヒドロキシビタミンD(本明細書では、1,25(OH)と表記する場合もある))によって惹起されることが予測されるような副作用の発症を低く抑え、対象疾患の予防又は治療を有効に行うことができる。
【0032】
本発明の好ましい態様によれば、一般式(1)で表される化合物、若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物若しくはそれらの水和物を有効成分として含む、組織の線維化及び組織の線維化によって引き起こされる疾患の治療及び/又は予防のための医薬又は医薬組成物が提供される。本発明において、「線維化」の対象となる組織は、特に、限定されるものではなく、臨床上「線維化」として認められる現象が生じている組織であれば、全ての組織が本発明の対象となる。限定はしないが、あえて例を挙げるとすれば、血管、心臓組織、肺の組織、腎組織、皮膚組織、肝臓の組織などが典型的な「線維化」の対象となる組織である。また、組織の線維化によって引き起こされる疾患についても、組織の線維化に起因することが臨床上認められ、該組織化を抑制又は阻止することで当該疾患が治癒せしめることができる疾患の全てが、本発明の対象となる疾患に含まれる。あえて例を挙げるとすれば、動脈硬化、心筋梗塞、肺線維症、腎糸球体硬化症、間質性腎炎、糖尿病性腎症、全身性強皮症、全身性硬化症、皮膚瘢痕化などがある。
【0033】
本発明の医薬の有効成分としては、上記一般式(1)で表される化合物のほか、生理学的に許容されるその塩を用いてもよい。塩としては、例えば、酸性基が存在する場合には、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ金属及びアルカリ土類金属塩;アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)ピペラジン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、エタノールアミン、N−メチルグルカミン、L−グルカミン等のアミンの塩;又はリジン、δ− ヒドロキシリジン、アルギニンなどの塩基性アミノ酸との塩を形成することができる。塩基性基が存在する場合には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の鉱酸の塩;メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、酢酸、プロピオン酸塩、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、シュウ酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、マンデル酸、ケイ皮酸、乳酸、グリコール酸、グルクロン酸、アスコルビン酸、ニコチン酸、サリチル酸等の有機酸との塩;又はアスパラギン酸、グルタミン酸などの酸性アミノ酸との塩などを挙げることができる。
さらに、本発明の医薬の有効成分として、一般式(1)で表される化合物又はその塩の溶媒和物若しくは水和物を用いることもできる。
【0034】
本発明の医薬は、一般式(1)で表される化合物及び薬理学的に許容されるその塩、又はそれらの溶媒和物若しくはそれらの水和物自体を投与してもよいが、一般的には、有効成分である上記物質と1又は2以上の薬剤上許容される製剤用添加物(担体など)とを含む医薬組成物の形態で投与することが望ましい。本発明の医薬の有効成分としては、一般式(1)で表される化合物の2種以上を組み合わせて用いることができ、上記医薬組成物には、組織の線維症又は線維症によって引き起こされる疾患の治療に有効な他の既知の物質を配合することも可能である。
【0035】
医薬組成物の種類は特に限定されず、剤型としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、懸濁剤、座剤、軟膏、クリーム剤、ゲル剤、貼付剤、吸入剤、注射剤等が挙げられる。これらの製剤は常法に従って調製される。尚、液体製剤にあっては、用時、水又は他の適当な溶媒に溶解又は懸濁する形であってもよい。また錠剤、顆粒剤は周知の方法でコーティングしてもよい。注射剤の場合には、本発明の化合物を水に溶解させて調製されるが、必要に応じて生理食塩水或いはブドウ糖溶液に溶解させてもよく、また緩衝剤や保存剤を添加してもよい。経口投与用又は非経口投与用の任意の製剤形態で提供される。例えば、顆粒剤、細粒剤、散剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤又は液剤等の形態の経口投与用医薬組成物、静脈内投与用、筋肉内投与用、若しくは皮下投与用などの注射剤、点滴剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤、点鼻剤、吸入剤、坐剤などの形態の非経口投与用医薬組成物として調製することができる。注射剤や点滴剤などは、凍結乾燥形態などの粉末状の剤形として調製し、用時に生理食塩水などの適宜の水性媒体に溶解して用いることもできる。また、高分子などで被覆した徐放製剤を脳内に直接投与することも可能である。
【0036】
医薬組成物の製造に用いられる製剤用添加物の種類、有効成分に対する製剤用添加物の割合、又は医薬組成物の製造方法は、組成物の形態に応じて当業者が適宜選択することが可能である。製剤用添加物としては無機又は有機物質、あるいは、固体又は液体の物質を用いることができ、一般的には、有効成分重量に対して1重量%から90重量%の間で配合することができる。具体的には、その様な物質の例として乳糖、ブドウ糖、マンニット、デキストリン、シクロデキストリン、デンプン、蔗糖、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルデンプン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、イオン交換樹脂、メチルセルロース、ゼラチン、アラビアゴム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウム、タルク、トラガント、ベントナイト、ビーガム、酸化チタン、ソルビタン脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、グリセリン、脂肪酸グリセリンエステル、精製ラノリン、グリセロゼラチン、ポリソルベート、マクロゴール、植物油、ロウ、流動パラフィン、白色ワセリン、フルオロカーボン、非イオン性界面活性剤、プロピレングルコール、水等が挙げられる。
【0037】
経口投与用の固形製剤を製造するには、有効成分と賦形剤成分例えば乳糖、澱粉、結晶セルロース、乳酸カルシウム、無水ケイ酸などと混合して散剤とするか、さらに必要に応じて白糖、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドンなどの結合剤、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウムなどの崩壊剤などを加えて湿式又は乾式造粒して顆粒剤とする。錠剤を製造するには、これらの散剤及び顆粒剤をそのまま或いはステアリン酸マグネシウム、タルクなどの滑沢剤を加えて打錠すればよい。これらの顆粒又は錠剤はヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸− メタクリル酸メチルポリマーなどの腸溶剤基剤で被覆して腸溶剤製剤、あるいは、エチルセルロース、カルナウバロウ、硬化油などで被覆して持続性製剤とすることもできる。また、カプセル剤を製造するには、散剤又は顆粒剤を硬カプセルに充填するか、有効成分をそのまま或いはグリセリン、ポリエチレングリコール、ゴマ油、オリーブ油などに溶解した後ゼラチン膜で被覆し軟カプセルとすることができる。
【0038】
注射剤を製造するには、有効成分を必要に応じて塩酸、水酸化ナトリウム、乳糖、乳酸、ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムなどのpH 調整剤、塩化ナトリウム、ブドウ糖などの等張化剤と共に注射用蒸留水に溶解し、無菌濾過してアンプルに充填するか、更にマンニトール、デキストリン、シクロデキストリン、ゼラチンなどを加えて真空凍結乾燥し、用事溶解型の注射剤としてもよい。また、有効成分にレチシン、ポリソルベート80 、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などを加えて水中で乳化せしめ注射剤用乳剤とすることもできる。
【0039】
直腸投与剤を製造するには、有効成分をカカオ脂、脂肪酸のトリ、ジ及びモノグリセリド、ポリエチレングリコールなどの座剤用基材と共に加湿して溶解し型に流し込んで冷却するか、有効成分をポリエチレングリコール、大豆油などに溶解した後、ゼラチン膜で被覆すればよい。
【0040】
皮膚用外用剤を製造するには、有効成分を白色ワセリン、ミツロウ、流動パラフィン、ポリエチレングリコールなどに加えて必要ならば加湿して練合し軟膏剤とするか、ロジン、アクリル酸アルキルエステル重合体などの粘着剤と練合した後ポリアルキルなどの不織布に展延してテープ剤とする。
【0041】
本発明の医薬又は医薬組成物の投与量及び投与回数は特に限定されず、治療対象疾患の悪化・進展の防止及び/又は治療の目的、疾患の種類、患者の体重や年齢、疾患の重篤度などの条件に応じて、医師の判断により適宜選択することが可能である。一般的には、経口投与における成人一日あたりの投与量は0.01〜1000mg(有効成分重量)程度であり、一日1回又は数回に分けて、或いは数日ごとに投与することができる。注射剤として用いる場合には、成人に対して一日量0.001〜100mg(有効成分重量)を連続投与又は間欠投与することが望ましい。
【0042】
本発明の医薬は、植込錠及びマイクロカプセルに封入された送達システムなどの徐放性製剤として、体内から即時に除去されることを防ぎ得る担体を用いて調製することができる。例えば、エチレンビニル酢酸塩、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸などの、生物分解性、生物適合性ポリマーを用いることができる。このような材料は、当業者によって容易に調製することができる。また、リポソームの懸濁液も薬剤的に受容可能な担体として使用することができる。有用なリポソームは、限定はしないが、ホスファチジルコリン、コレステロール及びPEG誘導ホスファチジルエタノール(PEG−PE)を含む脂質組成物として、使用に適するサイズになるように、適当なポアサイズのフィルターを通して調製され、逆相蒸発法によって精製される。
【0043】
本発明の医薬は、医薬組成物としてキットの形態で、容器、パック中に投与の説明書と共に含めることができる。本発明に係る薬剤組成物がキットとして供給される場合、該薬剤組成物のうち異なる構成成分が別々の容器中に包装され、使用直前に混合される。このように構成成分を別々に包装するのは、活性構成成分の機能を失うことなく長期間の貯蔵を可能にするためである。
【0044】
キット中に含まれる試薬は、構成成分が活性を長期間有効に持続し、容器の材質によって吸着されず、変質を受けないような何れかの種類の容器中に供給される。例えば、封着されたガラスアンプルは、窒素ガスのような中性で不反応性ガスの下において包装されたバッファーを含む。アンプルは、ガラス、ポリカーボネート、ポリスチレンなどの有機ポリマー、セラミック、金属、又は試薬を保持するために通常用いられる他の何れかの適切な材料などから構成される。他の適切な容器の例には、アンプルなどの類似物質から作られる簡単なボトル、及び内部がアルミニウム又は合金などのホイルで裏打ちされた包装材が含まれる。他の容器には、試験管、バイアル、フラスコ、ボトル、シリンジ、又はその類似物が含まれる。容器は、皮下用注射針で貫通可能なストッパーを有するボトルなどの無菌のアクセスポートを有する。
【0045】
また、キットには使用説明書も添付される。医薬組成物からなるキットの使用説明は、紙又は他の材質上に印刷され、及び/又はフロッピー(登録商標)ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、Zipディスク、ビデオテープ、オーディオテープなどの電気的又は電磁的に読み取り可能な媒体として供給されてもよい。詳細な使用説明は、キット内に実際に添付されていてもよく、或いは、キットの製造者又は分配者によって指定され又は電子メール等で通知されるウェブサイトに掲載されていてもよい。
【0046】
さらに、本発明には、組織の線維化又は組織の線維化によって引き起こされる疾患が発症した哺乳動物、又は発症が予想される哺乳動物の該線維化又は該疾患に対し、本発明の化合物を投与することによる、該疾患の発症の予防方法又は治療方法が含まれる。
ここで「治療」とは、組織の線維化又は組織の線維化によって引き起こされる疾患が発症した哺乳動物において、該線維化又は該疾患の病態の進行及び悪化を阻止又は緩和することを目的とする治療的処置の意味として使用される。
また、「予防」とは、組織の線維化又は組織の線維化によって引き起こされる疾患の発症が予想される哺乳動物について、該線維化又は該疾患の発症を予め阻止することを目的とする予防的処置の意味として使用される。
【0047】
治療の対象となる「哺乳動物」は、哺乳類に分類される任意の動物を意味し、特に限定はしないが、例えば、ヒトの他、イヌ、ネコ、ウサギなどのペット動物、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマなどの家畜動物などのことである。特に好ましい「哺乳動物」は、ヒトである。
【実施例】
【0048】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、これらの実施例によって本発明の範囲が限定されるものではない。
【0049】
まず、本発明の化合物の合成例を下記に示す。
〔実施例1〕1−(4−(4−(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)−3−メチルフェニルチオ)−2−メチルフェノキシ)−3,3−ジメチルブタン−2−オン
【化31】


60%水素化ナトリウム(272mg、6.8mmol)とDMF5mLを混合し、アルゴンガス雰囲気下、ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)スルフィド(1.68g、6.8mmol)をDMFに溶かしシリンジにて注入した。さらに0℃にて30分撹拌した。次にクロロピナコロン(0.9mL、6.9mmol)を3mLのDMFに溶かしシリンジにて注加後室温に戻し一晩撹拌した。反応液を100mLの0.5mol/L塩酸に空け、酢酸エチルで抽出した。抽出液は無水硫酸マグネシウムで乾燥後ろ過、濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィ−(溶出液 n−ヘキサン:酢酸エチル=3:1 v/v)にて精製し、1.05gの1−(4−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニルチオ)−2−メチルフェノキシ)−3,3−ジメチルブタン−2−オンを無色個体として得た。
Rf値 0.17(n−ヘキサン:酢酸エチル=3:1 v/v).
【0050】
1−(4−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニルチオ)−2−メチルフェノキシ)−3,3−ジメチルブタン−2−オン(310mg、0,99mmol)、フッ化セシウム(137mg、0.99mmol)、脱水DMFを混合し、次にグリシドール(0.090mL、 1.35mmol)を加えた後90℃に加熱し一晩撹拌した。反応液を100mLの0.5mol/L塩酸に注加し、酢酸エチルで抽出した。抽出液は無水硫酸マグネシウムで乾燥後ろ過、濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィ−(溶出液 n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1 v/v)にて精製し、141mgの表題化合物を無色油状物として得た。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) δ 7.12- 7.15 (3H, m), 7.08 (1H, dd, J= 8.4 Hz, 2.6 Hz), 6.76 (1H, d, J=9.2 Hz), 6.53 (1H, d, J= 8.4 Hz), 4.86 (2H, s), 4.10- 4.14 (1H, m), 4.04 (2H, d, J= 5.1 Hz), 3.75- 3.88 (2H, m), 2.54 (-OH, d, J= 4.8 Hz), 2.25 (3H, s), 2.18 (3H, s), 1.99 (-OH, bs), 1.25 (9H, s).
【0051】
〔実施例2〕1−(4−(4−(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)−3−メチルフェニルチオ)−2−メチルフェノキシ)−2−アダマンチルエタン−2−オン
【化32】


実施例1と同様の手法により合成した。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) δ 7.05- 7.14 (4H, m), 6.75 (1H, d, J= 9.2 Hz), 6.50 (1H, d, J= 8.4 Hz), 4.84 (2H, s), 4.11- 4.19 (1H, m), 4.03- 4.04 (2H, m), 3.75- 3.90 (1H, m), 3.56- 3.71 (1H, m), 2.52 (-OH, bs), 2.24 (3H, s), 2.18 (3H, s), 1.99- 2.08 (3H, m), 1.58- 1.92 (12H, m)
【0052】
〔実施例3〕1−(4−(4−(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)−3−メチルフェニルチオ)−2−メチルフェノキシ)−3,3−ジメチル−4−フェニルブタン−2−オン
【化33】


実施例1と同様の手法により合成した。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) δ 7.22- 7.29 (3H, m), 7.09- 7.15 (5H, m), 7.02- 7.05 (1H, m), 6.73- 6.76 (1H, m), 6.40 (1H, d, J= 8.4 Hz), 4.68 (2H, s), 4.11- 4.14 (1H, m), 4.02- 4.04 (2H, m), 3.83- 3.88 (1H, m), 3.74- 3.79 (1H, m), 2.90 (2H, s), 2.61 (-OH, bs), 2.24 (3H, s), 2.18 (3H, s), 1.65 (-OH, bs), 1.24 (6H, m)
HRMS(FAB): calcd. C29H34O5S [M]+ 495.2205, found 495.2202
【0053】
〔実施例4〕1−(4−(4−(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)−3−メチルフェニルチオ)−2−メチルフェノキシ)−3,3−ジメチル−5−フェニルペンタン−2−オン
【化34】


実施例1と同様の手法により合成した。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) δ 7.06- 7.30 (9H, m), 6.75 (1H, d, J= 9.2 Hz), 6.54 (1H, d, J= 8.4 Hz), 4.84 (2H, s), 4.10- 4.17 (1H, m), 4.03- 4.05 (2H, m), 3.72- 3.89 (2H, m), 2.51- 2.57 (-OH + 2H, m), 2.25 (3H, s), 2.18 (3H, s), 1.88- 1.94 (2H, m), 1.31 (6H, s).
HRMS(FAB): calcd. C30H36O5S [M]+ 509.2362, found 509.2386.
【0054】
〔実施例5〕1−(4−(4−(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)−3−メチルフェニルチオ)−2−メチルフェノキシ)−3,3−ジメチル−6−フェニルヘキサン−2−オン
【化35】


実施例1と同様の手法により合成した。
1H-NMR (300MHz, CDCl3)δ 7.06- 7.28 (9H, m), 6.75 (1H, d, J= 9.2 Hz), 6.47 (1H, d, J= 8.4 Hz), 4.72 (2H, s), 4.10- 4.17 (1H, m), 4.03- 4.05 (2H, m), 3.75- 3.89 (2H, m), 2.56- 2.61 (2H, m), 2.51 (-OH, bs), 2.23 (3H, s), 2.18 (3H, s), 1.96 (-OH, bs), 1.52- 1.67 (4H, m), 1.18- 1.20 (6H, m).
HRMS(FAB): calcd. C31H38O5S [M]+ 523.2518, found 523.2504.
【0055】
〔実施例6〕(R)−1−(4−(4−(4−(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)フェニル)ヘプタン−4−イル)フェノキシ)−3,3−ジメチルブタン−2−オン
【化36】


実施例1と同様の手法により合成した。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) δ 7.04- 7.08 (4H, m), 6.78 (2H, d, J= 8.8 Hz), 6.74 (2H, d, J= 9.2 Hz), 4.84 (2H, s), 4.06- 4.11 (1H, m), 4.01- 4.03 (2H, m), 3.77-3.82 (2H, m), 2.65 (-OH, bs), 1.92- 1.98 (4H, m), 1.24 (9H, s), 0.90- 0.99 (4H, m), 0.81- 0.85 (6H, m).
HRMS(FAB): calcd. C28H40O5 [M]+ 457.2954, found 457.2948.
【0056】
〔実施例7〕(S)−1−(4−(4−(4−(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)フェニル)ヘプタン−4−イル)フェノキシ)−3,3−ジメチルブタン−2−オン
【化37】


実施例1と同様の手法により合成した。
1H-NMR (300MHz, CDCl3)δ 7.04- 7.08 (4H, m), 6.78 (2H, d, J= 8.8 Hz), 6.74 (2H, d, J= 9.2 Hz), 4.84 (2H, s), 4.07- 4.09 (1H, m), 4.01- 4.03 (2H, m), 3.73-3.82 (2H, m), 2.61 (-OH, d, J= 4.8 Hz), 1.93- 1.98 (4H, m), 1.25 (9H, s), 0.90- 0.99 (4H, m), 0.81- 0.85 (6H, m).
HRMS(FAB): calcd. C28H40O5 [M]+ 457.2954, found 457.2951.
【0057】
〔実施例8〕(R)−1−(4−(4−(4−(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)−3−メチルフェニル)ヘプタン−4−イル)−2−メチルフェノキシ)−3,3−ジメチルブタン−2−オン
【化38】


実施例1と同様の手法により合成した。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) δ6.86- 6.96 (4H, m), 6.62- 6.70 (1H, m), 6.47 (1H, d, J= 8.4 Hz), 4.83 (2H, s), 4.08- 4.14 (1H, m), 4.04 (2H, d, J= 4.4 Hz), 3.73-3.87 (2H, m), 2.56 (-OH, bs), 2.22 (3H, s), 2.17 (3H, s), 1.91- 1.96 (4H, m), 1.25 (9H, s), 0.89- 0.96 (4H, m), 0.81- 0.85 (6H, m).
HRMS(FAB): calcd. C30H44O5 [M]+ 485.3267, found 485.3257.
【0058】
〔実施例9〕(S)−1−(4−(4−(4−(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)−3−メチルフェニル)ヘプタン−4−イル)−2−メチルフェノキシ)−3,3−ジメチルブタン−2−オン
【化39】


実施例1と同様の手法により合成した。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) δ 1H-NMR (300MHz, CDCl3) d 6.86- 6.95 (4H, m), 6.68 (1H, d, J= 8.4 Hz), 6.47 (1H, d, J= 8.4 Hz), 4.83 (2H, s), 4.10- 4.13 (1H, m), 4.03 (2H, d, J= 4.8 Hz), 3.75-3.88 (2H, m), 2.24 (3H, s), 2.17 (3H, s), 1.91- 1.96 (4H, m), 1.25 (9H, s), 0.90- 0.96 (4H, m), 0.80- 0.89 (6H, m).
HRMS(FAB): calcd. C30H44O5 [M]+ 485.3267, found 485.3257.
【0059】
〔実施例10〕1−(4−(5−(4−(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)フェニル)ノナン−5−イル)フェノキシ)−3,3−ジメチルブタン−2−オン
【化40】


実施例1と同様の手法により合成した。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) δ 7.03- 7.08 (4H, m), 6.73- 6.80 (4H, m), 4.84 (2H, s), 4.05- 4.12 (1H, m), 4.01- 4.04 (2H, m), 3.73-3.87 (2H, m), 2.58 (-OH, d, J= 4.8 Hz), 1.94- 2.11 (4H, m), 1.18- 1.28 (13H, m), 0.86- 0.95 (4H, m), 0.79- 0.84 (6H, m).
HRMS(FAB): calcd. C30H44O5 [M]+ 485.3267, found 485.3257.
【0060】
〔実施例11〕3−(4−(4−(2−ヒドロキシ−3,3−ジメチルブトキシ)−3−メチルフェニルチオ)−2−メチルフェノキシ)プロパン−1,2−ジオール
【化41】


1−(4−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニルチオ)−2−メチルフェノキシ)−3,3−ジメチルブタン−2−オン(実施例1の合成中間体;312mg、0.90mmol)とエタノール15mLを混合し、水素化ホウ素ナトリウム(41mg、1.08mmol)を加え室温にて一晩撹拌した。反応液を濃縮し、残留物をシリカゲルクロマトグラフィ−(溶出液 n−ヘキサン:酢酸エチル=3:1 v/v)にて精製し、292mgの4−(4−(2−ヒドロキシ−3,3−ジメチルブトキシ)−3−メチルフェニルチオ)−2−メチルフェノールを無色油状物として得た。
Rf値 0.19(n−ヘキサン:酢酸エチル=3:1 v/v).
【0061】
4−(4−(2−ヒドロキシ−3,3−ジメチルブトキシ)−3−メチルフェニルチオ)−2−メチルフェノール(292mg、0.84mmol)、フッ化セシウム(128mg、0.92mmol)、脱水DMFを混合し、次にグリシドール(0.084mL、1.26mmol)を加えた後90℃に加熱し一晩撹拌した。反応液を100mLの0.5mol/L塩酸に注加し、酢酸エチルで抽出した。抽出液は無水硫酸マグネシウムで乾燥後ろ過、濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィ−(溶出液 n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1 v/v)にて精製し、231mgの表題化合物を黄色油状物として得た。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) δ 7.15- 7.11(4H, m), 6.76- 6.73 (2H, m), 4.11- 4.07 (2H, m), 4.04- 4.02 (2H, m), 3.90- 3.83 (2H, m), 2.56 (-OH, bs), 2.40 (-OH, bs), 2.18- 2.17 (6H, m), 2.13 (-OH, bs), 1.01 (9H, m).
HRMS(FAB): calcd. C23H32O5S [M]+ 421.2049, found 421.2051.
【0062】
〔実施例12〕3−(4−(4−(2−ヒドロキシ−3,3−ジメチルブトキシ)フェニルチオ)フェノキシ)プロパン−1,2−ジオール
【化42】


実施例11と同様の手法により合成した。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) δ 7.24- 7.29 (4H, m), 6.83- 6.87 (4H, m), 4.07- 4.14 (1H, m), 4.01- 4.03 (3H, m), 3.82- 3.88 (2H, m), 3.66- 3.77 (2H, m), 2.60 (-OH, d, J= 4.4 Hz), 2.37 (-OH, bs), 2.02 (-OH, bs), 1.00 (9H, s).
HRMS(FAB): calcd. C21H28O5 [M]+ 393.1736, found 393.1740.
【0063】
〔実施例13〕3−(4−(4−(2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル−4−フェニルブトキシ)−3−メチルフェニルチオ)−2−メチルフェノキシ)プロパン−1,2−ジオール
【化43】


実施例11と同様の手法により合成した。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) δ 7.21- 7.28 (9H, m), 6.83- 6.87 (4H, m), 4.08- 4.10 (1H, m), 4.01- 4.06 (2H, m), 3.91 (1H, t, J= 8.8 Hz, 18.0 Hz), 3.82- 3.86 (2H, m), 3.73- 3.77 (2H, m), 2.90 (1H, d, J= 13.2 Hz), 2.53 (1H, d, J= 13.2 Hz), 0.83- 0.91 (6H, m).
HRMS(FAB): calcd. C27H32O5S [M]+ 469.2049, found 469.2067.
【0064】
〔実施例14〕3−(4−(4−(2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル−5−フェニルペンチルオキシ)−3−メチルフェニルチオ)−2−メチルフェノキシ)プロパン−1,2−ジオール
【化44】


実施例11と同様の手法により合成した。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) δ 7.18- 7.31(9H, m), 6.87 (2H, d, J=2.2 Hz), 6.83 (2H, d, J= 2.6 Hz), 4.09- 4.12 (1H, m), 4.01- 4.06 (3H, m), 3.82- 3.92 (2H, m), 3.74- 3.81 (2H, m), 2.56- 2.68 (2H, m), 2.37 (-OH, bs), 1.96 (-OH, bs), 1.53- 1.58 (2H, m), 1.06 (6H, s).
HRMS(FAB): calcd. C28H34O5S [M]+ 483.2205, found 483.2222.
【0065】
〔実施例15〕3−(4−(4−(2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル−6−フェニルヘキシルオキシ)−3−メチルフェニルチオ)−2−メチルフェノキシ)プロパン−1,2−ジオール
【化45】


実施例11と同様の手法により合成した。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) δ 7.18- 7.30 (9H, m), 6.81- 6.86 (4H, m), 4.09- 4.13 (1H, m), 4.00- 4.05 (3H, m), 3.81- 3.87 (2H, m), 3.71- 3.76 (2H, m), 2.75 (-OH, bs), 2.57- 2.65 (2H, m), 2.38 (-OH, bs), 1.47- 1.72 (4H, m), 2.28 (-OH, bs), 0.93- 0.96 (6H, m).
HRMS(FAB): calcd. C29H36O5S [M]+ 497.2362, found 497.2341.
【0066】
〔実施例16〕3−(4−(4−(4−(2−ヒドロキシ−3,3−ジメチルブトキシ)フェニル)ヘプタン−4−イル)フェノキシ)プロパン−1,2−ジオール
【化46】


実施例11と同様の手法により合成した。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) δ 7.09- 7.05 (4H, m), 6.80- 6.77 (4H, m), 4.10- 4.06 (2H, m), 4.03- 4.01 (2H, m), 3.87-3.81 (2H, m), 3.77- 3.71 (1H, m), 3.68- 3.65 (1H, m), 2.65 (-OH, bs), 2.44 (-OH, bs), 1.99- 1.94 (4H, m), 1.63 (-OH, bs), 1.00 (9H, s), 0.97- 0.91 (4H, m), 0.86- 0.81 (6H, m).
HRMS(FAB): calcd. C28H42O5 [M]+ 459.3111, found 459.3113.
【0067】
〔実施例17〕3−(4−(4−(4−(2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル−4−フェニルブトキシ)フェニル)ヘプタン−4−イル)フェノキシ)プロパン−1,2−ジオール
【化47】


実施例11と同様の手法により合成した。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) δ1H-NMR (300MHz, CDCl3) d 7.18- 7.35(5H, m), 6.98- 7.09 (4H, m), 6.77- 6.80 (4H, m), 4.03- 4.15 (4H, m), 3.81- 3.92 (2H, m), 3.67- 3.77 (2H, m), 2.90 (1H, d, J= 12.8 Hz), 2.53 (1H, d, J= 12.5 Hz), 1.85- 1.98 (4H, m), 0.81- 1.00 (16H, m).
【0068】
〔実施例18〕3−(4−(4−(4−(2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル−5−フェニルペンチルオキシ)フェニル)ヘプタン−4−イル)フェノキシ)プロパン−1,2−ジオール
【化48】


実施例11と同様の手法により合成した。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) δ 1H-NMR (300MHz, CDCl3) d 7.18- 7.31 (5H, m), 7.05- 7.09 (4H, m), 6.78- 6.80 (4H, m), 4.09- 4.13 (2H, m), 4.01- 4.03 (2H, m), 3.70- 3.92 (4H, m), 2.53- 2.72 (-OH + 2H, m), 2.44 (-OH, bs), 1.85- 2.05 (-OH + 4H, m), 1.57- 1.60 (2H, m), 1.05 (6H, s), 0.89-1.01 (4H, m), 0.81- 0.86 (6H, s).
HRMS(FAB): calcd. C35H48O5 [M]+ 549.3580, found 549.3571.
【0069】
〔実施例19〕
3−(4−(5−(4−(2−ヒドロキシ−3,3−ジメチルブトキシ)フェニル)ノナン−5−イル)フェノキシ)プロパン−1,2−ジオール
【化49】


実施例11と同様の手法により合成した。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) δ 7.05- 7.09 (4H, m), 6.77- 6.80 (4H, m), 4.07- 4.14 (2H, m), 4.01- 4.04 (2H, m), 3.81-3.87 (2H, m), 2.59 (-OH, bs), 2.41 (-OH, bs), 1.96- 2.05 (4H, m), 1.59 (-OH, bs), 1.20- 1.28 (4H, m), 1.00 (9H, s), 0.89- 0.97 (4H, m), 0.79- 0.84 (6H, m).
HRMS(FAB): calcd. C30H46O5 [M]+ 487.3423, found 487.3432.
【0070】
〔実施例20〕2−(4−(4−(3,3−ジメチル−2−オキソブトキシ)−3−メチルフェニルチオ)−2−メチルフェノキシ)酢酸
【化50】


60%水素化ナトリウム(56mg、1.2mmol)とDMF5mLを混合し、0℃にてアルゴンガス雰囲気下、1−(4−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニルチオ)−2−メチルフェノキシ)−3,3−ジメチルブタン−2−オン(300mg、0.87mmol)をDMF5mLに溶かしシリンジにて注入し0℃にて30分撹拌した。次にブロモ酢酸エチル(0.15mL、1.4mmol)を5mLのDMFに溶かしシリンジにて注加後室温に戻し一晩撹拌した。反応液を100mLの水に注加し、酢酸エチルで抽出した。抽出液は無水硫酸マグネシウムで乾燥後ろ過、濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィ−(溶出液 n−ヘキサン:酢酸エチル=3:1 v/v)にて精製し、357mgのエチル 2−(4−(4−(3,3−ジメチル−2−オキソブトキシ)−3−メチルフェニルチオ)−2−メチル−フェノキシ)アセテートを無色油状物として得た。
【0071】
エチル 2−(4−(4−(3,3−ジメチル−2−オキソブトキシ)−3−メチルフェニルチオ)−2−メチルフェノキシ)アセテート(310mg)、1mol/L水酸化ナトリウム水溶液20mL、エタノール8mLを混合し60℃にて2時間加熱撹拌した。反応液を100mLの1mol/L塩酸に注加し、酢酸エチルで抽出した。抽出液は無水硫酸マグネシウムで乾燥後ろ過、濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィ−(溶出液 n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1 v/v)にて精製し、257mgの表題化合物を黄色油状物として得た。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) δ 1H-NMR (300MHz, CDCl3) d 7.17- 7.13 (2H, m), 7.12- 7.08 (2H, m), 6.64 (1H, d, J= 8.4 Hz), 6.54 (1H, d, J= 8.4 Hz), 4.87 (2H, s), 4.67 (2H, s), 2.25 (3H, s), 2.23 (3H, s), 1.25 (9H, s).
HRMS(FAB): calcd. C22H26O5S [M]+ 403.1579, found 403.1597.
【0072】
〔実施例21〕2−(4−(4−(3,3−ジメチル−2−オキソブトキシ)−3−メチルフェニルチオ)−2−メチルフェノキシ)酢酸
【化51】


実施例20と同様の手法により合成した。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) δ 7 1H-NMR (300MHz, CDCl3) d 7.15- 7.13 (3H, m), 7.05 (1H, dd, J= 2.2, 8.4 Hz), 6.72 (1H, d, J= 9.2 Hz), 6.52 (1H, d, J= 8.4 Hz), 4.85 (2H, s), 4.00 (2H, t, J= 5.9, 11.7 Hz), 2.60 (2H, t, J= 7.3, 14.7 Hz), 2.24 (3H, s), 2.19- 2.11 (5H, m), 1.24 (9H, s).
HRMS(FAB): calcd. C24H30O5S [M]+ 431.1892, found 431.1896.
【0073】
〔実施例22〕2−(4−(4−(4−(3,3−ジメチル−2−オキソブトキシ)フェニル)ヘプタン−4−イル)フェノキシ)酢酸
【化52】


実施例20と同様の手法により合成した。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) δ 7.10- 7.03 (4H, m), 6.81- 6.73 (4H, m), 4.84 (2H, s), 4.65 (2H, s), 1.98- 1.92 (4H, m), 1.25 (9H, s), 0.98- 0.88 (4H, m), 0.85- 0.80 (6H, m).
HRMS(FAB): calcd. C27H36O5 [M]+ 441.2641, found 441.2626.
【0074】
〔実施例23〕4−(4−(4−(4−(3,3−ジメチル−2−オキソブトキシ)フェニル)ヘプタン−4−イル)フェノキシ)ブタン酸
【化53】


実施例20と同様の手法により合成した。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) δ 7.07- 7.03 (4H, m), 6.77- 6.73 (4H, m), 4.85 (2H, s), 3.99 (2H, t, J= 5.9, 11.7 Hz), 2.58 (2H, t, J= 7.3, 14.7 Hz), 2.14- 2.08 (2H, m), 1.97- 1.92 (4H, m), 1.24 (9H, s), 0.97- 0.89 (4H, m), 0.87- 0.80 (6H, m)
HRMS(FAB): calcd. C29H40O5 [M]+ 469.2954, found 469.2971.
【0075】
〔実施例24〕6−(4−(4−(4−(3,3−ジメチル−2−オキソブトキシ)フェニル)ヘプタン−4−イル)フェノキシ)ヘキサン酸
【化54】


実施例20と同様の手法により合成した。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) δ 7.07- 7.03 (4H, m), 6.77- 6.73 (4H, m), 4.83 (2H, s), 3.93 (2H, t, J= 6.4, 12.8 Hz), 2.39 (2H, t, J= 7.4, 14.7 Hz), 1.98- 1.92 (4H, m), 1.82- 1.67 (4H, m), 1.57- 1.50 (2H, m), 1.24 (9H, s), 0.99- 0.91 (4H, m), 0.85- 0.80 (6H, m).
【0076】
〔実施例25〕6−(4−(4−(4−(3,3−ジメチル−2−オキソブトキシ)フェニル)ヘプタン−4−イル)フェノキシ)ヘキサン酸
【化55】


実施例20と同様の手法により合成した。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) δ 7.07- 7.03 (4H, m), 6.77- 6.73 (4H, m), 4.83 (2H, s), 3.93 (2H, t, J= 6.4, 12.8 Hz), 2.39 (2H, t, J= 7.4, 14.7 Hz), 1.98- 1.92 (4H, m), 1.82- 1.67 (4H, m), 1.57- 1.50 (2H, m), 1.24 (9H, s), 0.99- 0.91 (4H, m), 0.85- 0.80 (6H, m).
【0077】
〔実施例26〕2−(4−(4−(2−ヒドロキシ−3,3−ジメチルブトキシ)−3−メチルフェニルチオ)−2−メチルフェノキシ)酢酸
【化56】


60%水素化ナトリウム(18mg、0.74mmol)とDMF5mLを混合し、0℃にてアルゴンガス雰囲気下、4−(4−(2−ヒドロキシ−3,3−ジメチルブトキシ)−3−メチルフェニルチオ)−2−メチルフェノール(実施例11の中間体;233mg、0.67mmol)、をDMF5mLに溶かしシリンジにて注入した。さらに0℃にて30分撹拌した。次にブロモ酢酸エチル(0.074mL、0.67mmol)を5mLのDMFに溶かしシリンジにて注加後室温に戻し一晩撹拌した。反応液を100mLの0.5mol/L塩酸に空け、酢酸エチルで抽出した。抽出液は無水硫酸マグネシウムで乾燥後ろ過、濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィ−(溶出液 n−ヘキサン:酢酸エチル=3:1 v/v)にて精製し、218mgのエチル 2−(4−(4−(2−ヒドロキシ−3,3−ジメチルブトキシ)−3−メチルフェニルチオ)−2−メチルフェノキシ)アセテートを無色油状物として得た。
【0078】
エチル 2−(4−(4−(2−ヒドロキシ−3,3−ジメチルブトキシ)−3−メチルフェニルチオ)−2−メチルフェノキシ)アセテート(218mg)、1mol/L水酸化ナトリウム水溶液25mL、エタノール5mLを混合し60℃にて2時間加熱撹拌した。反応液を100mLの1mol/L塩酸に注加し、酢酸エチルで抽出した。抽出液は無水硫酸マグネシウムで乾燥後ろ過、濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィ−(溶出液 n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1 v/v)にて精製し、195mgの表題化合物を無色粉末として得た。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) δ 7.06- 7.26 (4H, m), 6.76 (1H, d, J= 9.2 Hz), 6.64 (1H, d, J= 8.4 Hz), 4.64 (2H, s), 4.09- 4.14 (1H, m), 3.87 (1H, t, J=8.8 Hz, 18.0 Hz), 3.72 (1H, dd, J= 2.2 Hz, 8.8 Hz), 2.23 (3H, s), 2.19 (3H, s), 1.01 (9H, s).
HRMS(FAB): calcd. C22H28O5S [M]+ 405.1736, found 405.1726.
【0079】
〔実施例27〕2−(4−(4−(2−ヒドロキシ−3,3−ジメチルブトキシ)フェニルチオ)フェノキシ)酢酸
【化57】


実施例26と同様の手法により合成した。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) δ 7.22- 7.31 (4H, m), 6.80- 6.87 (4H, m), 4.64 (1H, s), 4.06- 4.11 (1H, m), 3.99 (1H, t, J=5.9 Hz, 12.1 HZ)), 3.84- 3.88 (1H, m), 3.67- 3.71 (1H, m), 1.00 (9H, s).
HRMS(FAB): calcd. C20H24O5S [M]+ 377.1423, found 377.1441.
【0080】
〔実施例28〕4−(4−(4−(4−(2−ヒドロキシ−3,3−ジメチルブトキシ)フェニル)ヘプタン−4−イル)フェノキシ)ブタン酸
【化58】


実施例26と同様の手法により合成した。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) δ 7.08- 7.04 (4H, m), 6.80- 6.74 (4H, m), 4.11- 4.06 ( 1H, m), 4.01- 3.97 (2H, m), 3.84 (1H, t, J= 9.0, 18.0 Hz), 3.67 (1H, dd, J= 2.4, 9.0 Hz), 2.61- 2.56 (2H, m), 2.12- 2.07 (2H, m), 1.99- 1.93 (4H, m), 1.03- 0.92 (4H, m), 1.00 (9H, s), 0.86- 0.81 (6H, m).
【0081】
〔実施例29〕6−(4−(4−(4−(2−ヒドロキシ−3,3−ジメチルブトキシ)フェニル)ヘプタン−4−イル)フェノキシ)ヘキサン酸
【化59】


実施例26と同様の手法により合成した。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) δ7.09- 7.03 (4H, m), 6.80- 6.74 (4H, m), 4.09- 4.07 ( 1H, m), 3.95- 3.90 (2H, m), 3.84 (1H, t, J= 9.0, 18.0 Hz), 3.67 (1H, dd, J= 2.4, 9.0 Hz), 2.41- 2.36 (2H, m), 1.99- 1.93 (4H, m), 1.82- 1.68 (4H, m), 1.56- 1.48 (2H, m), 1.04- 0.92 (4H,m), 1.00 (9H, s), 0.86- 0.81 (6H, m).
【0082】
〔実施例30〕4−(4−(4−(ベンジルオキシ)フェニル)ヘプタン−4−イル)フェノール
【化60】


60%水素化ナトリウム(211mg、8.67mmol)とDMF10mLを混合し、0℃にてアルゴンガス雰囲気下、4,4’−(ヘプタン−4,4−ジイル)ジフェノール(1.50g、5.28mmol)、をDMF10mLに溶かしシリンジにて注入した。さらに0℃にて30分撹拌した。次にベンジルブロマイド(0.22mL、1.89mmol)を20mLのDMFに溶かし滴下ロートにて滴下後室温に戻し一晩撹拌した。反応液を100mLの1mol/L塩酸にあけ、酢酸エチルで抽出した。抽出液は無水硫酸マグネシウムで乾燥後ろ過、濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィ−(溶出液 n−ヘキサン:酢酸エチル=6:1 v/v)にて精製し、550mgの表題化合物を無色油状物として得た。
Rf値 0.17(n−ヘキサン:酢酸エチル=3:1 v/v)。
【0083】
〔実施例31〕3−(4−(4−(4−(ベンジルオキシ)フェニル)ヘプタン−4−イル)フェノキシ)プロパン−1,2−ジオール
【化61】


4−(4−(4−(ベンジルオキシ)フェニル)ヘプタン−4−イル)フェノール(実施例30の化合物:470mg、1.25mmol)、グリシドール(0.124mL、1.88mmol)、フッ化セシウム(19mg、1.25mmol)とDMF20mLを混合し90℃にて一晩分撹拌した。反応液を100mLの1mol/L塩酸にあけ、酢酸エチルで抽出した。抽出液は無水硫酸マグネシウムで乾燥後ろ過、濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィ−(溶出液 n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1 v/v)にて精製し、361mgの表題化合物を無色油状物として得た。
Rf値 0.37(n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1 v/v)。
【0084】
〔実施例32〕3−(4−(4−(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン−4−イル)フェノキシ)プロパン−1,2−ジオール
【化62】


3−(4−(4−(4−(ベンジルオキシ)フェニル)ヘプタン−4−イル)フェノキシ)プロパン−1,2−ジオール(実施例31の化合物:360mg、0.80mmol)、10%パラジウム担持活性炭100mg、酢酸エチル100mLを混合し中圧接触還元を3時間行った。触媒を、セライトを通してろ過、酢酸エチル洗浄後濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィ−(溶出液 n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1 v/v)にて精製し、260mgの表題化合物を無色油状物として得た。
Rf値 0.21(n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1 v/v)。
【0085】
〔実施例33〕2−(4−(4−(4−(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)フェニル)ヘプタン−4−イル)フェノキシ)−1−(ナフタレン−1−イル)エタンオン
【化63】


60%水素化ナトリウム(16mg、0.40mmol)とDMF5mLを混合し、アルゴンガス雰囲気下、3−(4−(4−(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン−4−イル)フェノキシ)プロパン−1,2−ジオール(実施例32の化合物:130mg、0.36 mmol)をDMF5mLに溶かしシリンジにて注入した。さらに0℃にて30分撹拌した。次に1−ブロモメチルナフタレン(90mg、0.36mmol)を5mLのDMFに溶かしシリンジにて注加後室温に戻し一晩撹拌した。反応液を60mLの1mol/L塩酸に空け、酢酸エチルで抽出した。抽出液は無水硫酸マグネシウムで乾燥後ろ過、濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィ−(溶出液 n−ヘキサン:酢酸エチル=3:1 v/v)にて精製し、25mgの表題化合物を無色油状物として得た。
Rf値 0.28(n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1 v/v).
1H-NMR (300MHz, CDCl3) δ8.63 ( 1H, d, J= 8.4 Hz), 8.03 (1H, d, J= 8.43 Hz), 7.80- 7.94 (2 H, m), 7.63- 7.47 (3 H, m), 7.07- 7.02 ( 4H, m), 6.84- 6.75 (4 H, m), 5.24 (2 H, s), 4.04- 4.12 (1H, m), 4.0- 3.99 (2H, m), 3.85- 3.69 (2H, m), 2.00- 1.90 (4H, m), 1.00- 0.91(4H, m), 0.91- 0.70 (6H, m).
【0086】
〔実施例34〕2−(4−(4−(4−(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)フェニル)ヘプタン−4−イル)フェノキシ)−1−フェニルエタンオン
【化64】


実施例33と同様の手法により合成した。
Rf値 0.28(n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1 v/v).
1H-NMR (300MHz, CDCl3) δ 8.02-7.98( 2 H, m), 7.65- 7.58 ( 1H, m), 7.54- 7.46 (2 H, m), 7.10-7.03 (4 H, m), 6.85-6.76 (4 H, m), 5.24 (2H, s), 4.13- 4.05 (1H, m), 4.05- 4.01 (2H, m), 3.87- 3.71 (2 H, m), 2.00- 1.93 (4 H, m), 1.00- 0.83 (4 H, m), 0.83- 0.75 (6 H, m).
【0087】
次に、本発明の化合物がVDRに対するパーシャルアゴニスト又はアンタゴニストであること、本発明の化合物のVDR転写活性及びSmadを介したTGFβの転写活性に及ぼす影響について検討を行った。
VDR及びSmadを介したTGFβの転写活性に対する影響は、HEK293細胞を用いて検討した。VDRを発現するプラスミド及びALK5TD(TGF−β受容体の恒常的活性化型変異体で、Smadの転写活性を恒常的に維持する)を発現するプラスミドを、ルシフェラーゼアッセイのためのレポータープラスミド(TGF−β受容体を介したSmadの転写活性に対しては9×CAGA−Lucをレポーターとし、VDRの転写活性について対してはVDR応答配列−Lucをレポーターとして使用した)と共に、HEK293細胞に共導入し、24時間培養後、ルシフェラーゼ活性を測定した。
【0088】
〔実験例〕
1.VDR転写活性に対する影響について
実施例16の化合物を用いてVDRに対するアゴニスト及びアンタゴニストとしての活性を評価した。
上述したHEK293細胞のアッセイ系を使用して、VDR転写活性がVDRのフルアゴニスト(ここでは、1α,25ジヒドロキシビタミンDと3−(4−(2−(4−(2−ヒドロキシ−3,3−ジメチルブトキシ)フェニル)プロパン−2−イル)フェノキシ)プロパン−1,2−ジオール(特許文献9)を使用)、又は実施例16の化合物によって如何なる影響を受けるか検討した。アンタゴニストとしての活性評価は、10−4μMの1α,25ジヒドロキシビタミンD存在下で行った。
評価の結果、VDRの転写活性は、実施例16の化合物の最大転写活性化能は、VDRフルアゴニストである1α,25ジヒドロキシビタミンDの約1/10程度であった。また、3−(4−(2−(4−(2−ヒドロキシ−3,3−ジメチルブトキシ)フェニル)プロパン−2−イル)フェノキシ)プロパン−1,2−ジオール(図の「比較化合物」)と比較しても、約1/2程度であった。従って、実施例16の化合物は、VDRに対してパーシャルアゴニストとして作用する(図1A)。
また、1α,25ジヒドロキシビタミンD存在下で測定したVDR転写活性については、実施例16の化合物を10μM添加した場合、顕著にVDR活性を抑制したことから、実施例16の化合物はVDRに対しアンタゴニストとして作用することがわかった(図1B)。以上の結果は、実施例16の化合物がVDRのパーシャルアゴニストであることを示すものである。また、実施例1、6及び7の化合物についても、同様に活性の評価を行ったところ、いずれの化合物も、VDRフルアゴニストである1α,25ジヒドロキシビタミンDの約1/10程度であり、これらの化合物もVDRのパーシャルアゴニストであることが示された(表1)。
【0089】
2.Smadを介したTGFβ転写活性への影響
次に、実施例1、6、7及び16の化合物が、Smadを介したTGFβ転写活性に与える影響について検討を行った。活性測定の結果は、表1に示す。
【表1】


表1の結果から、本発明の化合物は、VDR転写活性に対する効果は、フルアゴニストである1,25ジヒドロキシビタミンDの約1/10程度と低いのに対し、TGFβ転写活性に対する抑制効果は、1,25ジヒドロキシビタミンDとほぼ同等(70%〜100%程度)であった。従って、本発明の化合物のVDR転写活性に対するTGFβ転写抑制効果(有効性比率;表1)は、1,25ジヒドロキシビタミンDよりも高い効果を示すものである(およそ、3倍〜10倍程度)。
【0090】
以上の結果から、本発明の化合物は、TGFβ転写を有効に抑制し、線維症などの疾患の治療効果を示す一方で、VDR転写活性化に起因する副次的な影響を低く抑え、副作用の少ない治療薬として有効に作用することが示唆される(以下の実験結果「3.線維化に対する効果」も参照のこと)。
【0091】
3.線維化に対する効果
本発明の化合物の線維化に対する効果を、モデル動物を用いて評価した。マウスC57BL/6NJclの9週齢の雄に、アデニン0.25%混じ食を7日間投与し、8日よりCE食(基礎食)を7日間投与し、15日目に屠殺し、化合物の線維化に対する影響を検討した。なお、化合物は4日目から屠殺時まで投与されている。本モデルはアデニンの結晶化を利用して尿細管を閉塞させ、腎臓組織の線維化を誘導するモデルである。
図2は、腎臓組織をマッソントリクローム染色法による染色後の顕微鏡写真である。マッソントリクローム染色法によると、線維タンパク質(コラーゲンやαSMAなど)が、青もしくは白く染色される。そのため、線維化が進んでいる組織は、青白く染色されることになる。
本実験においては、コントロール(DMSO投与)の組織は、全体が青白く染色されているのに対し(図2の左側の写真の白っぽく見える部分)、実施例16の化合物を投与した場合には、組織全体が、赤みがかって染色されている(図2の右側の写真;全体として黒っぽく見える)。この結果から、コントロール由来の組織は線維化が進んでいるのに対し、実施例16の化合物を投与したマウス由来の組織においては、線維化の進行が抑制されていることが明かとなった(図2B)。
なお、線維化の評価については、投与薬剤を知らされていない2名の病理医による判断が行われており、実施例16の化合物を投与した群由来の腎臓組織の線維化の進行が抑制されていることが確認されている。
【0092】
4.腎線維化マーカー遺伝子発現への影響
線維化モデルマウスを用いて、α平滑筋アクチン遺伝子(線維化マーカー)の発現とCyp24a(VDR標的遺伝子)の発現が、本発明の化合物の投与によりどのような影響を受けるのか検討した。線維化モデルマウスでは線維化マーカーであるα平滑筋アクチン遺伝子の発現が高く(図3Aの2)、VDRフルアゴニストの1α,25ジヒドロキシビタミンD、及び実施例16の化合物の投与により、その発現が低下した(図3Aの3及び4)。一方、VDRの標的遺伝子であるCyp24aの発現は、VDRフルアゴニストの1α,25ジヒドロキシビタミンDの投与により顕著に上昇したのに対し(図3Bの3)、実施例16の化合物の投与では全く変化しなかった(図3Bの4)。
以上の結果から、VDRのパーシャルアゴニストである本発明の化合物は、組織の線維化を有効に抑制しつつ、VDRのジェノミック活性をほとんど上昇させないことが明かになった。従って、本発明の化合物は、VDRの活性化に伴う副作用を誘導することなく、組織の線維化を有効に抑制する効果を発揮すると考えられる。
【0093】
5.高カルシウム血症に対する影響について
上記1〜4の結果から、本発明の化合物は、VDRの活性化を最小限に抑えながら、線維化を抑制する効果をもつことが強く示唆される。そこで、本発明の化合物がVDRの転写活性化により引き起こされる高カルシウム血症の誘発を抑制することができるかどうか評価を行った。VDRフルアゴニストの1α,25ジヒドロキシビタミンDを投与した線維化モデルマウスと実施例16の化合物を投与した線維化モデルマウスの血中におけるカルシウム濃度を測定した。その結果、1α,25ジヒドロキシビタミンDの投与により、血中カルシウム濃度が上昇したのに対し(図4「アデニン+1,25(OH)」)、実施例16の化合物を投与した場合の血中カルシウム濃度は、非投与群と比較して変化はなかった(図4「アデニン+実施例16の化合物」)。
従って、VDRのパーシャルアゴニストである本発明の化合物は、高カルシウム血症を誘発することなく、組織の線維化の治療又は予防に効果を示すものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、組織の線維化及び線維化によって発症する各種疾患を治療するための薬剤又は医薬を提供するもので、その利用価値が高く、また、さらなる高い効果を示す化合物及びそれを含有する医薬の開発に大きく貢献するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される置換ジフェニルメタン酸誘導体若しくはその塩又はそれらの溶媒和物若しくはそれらの水和物を有効成分として含む、組織の線維化及び組織の線維化によって引き起こされる疾患の治療及び/又は予防用医薬組成物。
【化1】


[式(1)中、Xは−C(R)−、又は硫黄原子であり、R及びRは同一又は相異なって直鎖のC3からC6を表し、Dはtertブチル基、アダマンチル基、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、C(CH(CH)nPh基(ただし、nは1〜3)であり、Aは、−CHCH(OH)CHOH又は−(CH)mCOOH(ただし、mは1〜5)であり、B及びCは相異なっても又は同一でもよい、水素又はメチル基であり、Eはヒドロキシル基又はオキソ基である。]
【請求項2】
前記Aが、−CHCH(OH)CHOHである請求項1に記載の医薬用組成物。
【請求項3】
前記Xが、硫黄原子又はヘプタン−4−イル基である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記B及びCが、水素又はメチル基である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記Dが、tert−ブチル基である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記Eが水酸基である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記Eがオキソ基である請求項1に記載の医薬組成物。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−56834(P2013−56834A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194684(P2011−194684)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、文部科学省科学技術試験研究委託事業「核内レセプターの新規機能解析と構造情報に基づいた線維化疾患治療法の開発」産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504147243)国立大学法人 岡山大学 (444)
【出願人】(504171134)国立大学法人 筑波大学 (510)
【出願人】(501083643)学校法人慈恵大学 (20)
【Fターム(参考)】