説明

編組線トロイダルコイル

【課題】高周波での銅損の増加を抑制する。
【解決手段】樹脂製の円環状のボビン(11)と、そのボビン(11)のリブ(12)の間を通してトロイダル巻きされた編組線(13)とを具備する。ボビン(11)の内周側では、編組線(13)は、リブ(12)によって、エッジワイズ巻きとなるような扁平形状に規制されている。
【効果】高周波での表皮効果と線間近接効果を低減でき、高周波銅損の増加を抑制することが出来る。リブ厚さを薄くすることが出来る。安価な樹脂を利用できる。従って、巻線数を増やすことができ、コストを低減することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、編組線トロイダルコイルに関し、さらに詳しくは、高周波での銅損の増加を抑制することが出来る編組線トロイダルコイルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、平角線をエッジワイズ巻き且つトロイダル巻きした平角線トロイダルコイルが知られている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−164233号公報
【特許文献2】特開2001−196233号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の平角線トロイダルコイルでは、回路動作が高周波化すると、表皮効果と線間近接効果のため、高周波銅損の増加が無視できなくなる問題点があった。また、リブを有するボビンに平角線を巻回する場合に、平角線のエッジワイズ巻きに必要な大きな電線曲げ加工力に耐えうるリブとするために、リブ厚さを薄くできなかったり高価な樹脂が必要となり、巻線数を増やせなかったりコストアップを招いたりする問題点があった。
そこで、本発明の目的は、高周波銅損の増加を抑制することが出来る編組線トロイダルコイルを提供することにある。また、リブを有するボビンに巻線を巻回する場合に、巻線数を増やすことができ且つコストを低減できる編組線トロイダルコイルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の観点では、本発明は、素線表面を絶縁被覆した編組線をトロイダル巻きすると共に該トロイダル巻きの少なくとも内周側ではエッジワイズ巻きとなるように前記トロイダル巻きの少なくとも内周側では前記編組線を扁平形状にしたことを特徴とする編組線トロイダルコイルを提供する。
上記第1の観点による編組線トロイダルコイルでは、素線表面を絶縁被覆した編組線を用いるため、高周波での表皮効果と線間近接効果を低減でき、高周波銅損の増加を抑制することが出来る。
【0006】
第2の観点では、本発明は、前記第1の観点による編組線トロイダルコイルであって、前記編組線を巻回する環状のボビンを有し、該ボビンの内周側ではエッジワイズ巻きとなるように前記ボビンの内周側では前記編組線を扁平形状に規制するリブを前記ボビンに設けたことを特徴とする編組線トロイダルコイルを提供する。
上記第2の観点による編組線トロイダルコイルでは、平角線に比べると、編組線が柔軟であり、巻回時に必要な電線曲げ加工力が小さく、それに耐えうるリブでよいため、リブ厚さを薄くすることが出来る。また、安価な樹脂を利用できる。従って、巻線数を増やすことができ、コストを低減することが出来る。さらに、ボビンの外周側では、リブを省略するか又はリブを付けてもそのリブ厚さ及び外周方向へのリブ突出量を低減でき、樹脂を節減でき、コストを低減できる。また、外周方向へのリブ突出量および巻線厚が小さくなり、コイル全体としての外径を小型化できる。
【0007】
第3の観点では、本発明は、前記第1の観点による編組線トロイダルコイルであって、前記編組線を巻回する環状のボビンを有し、該ボビンの内周側でも外周側でもエッジワイズ巻きとなるように前記ボビンの内周側でも外周側でも前記編組線を扁平形状に規制するリブを前記ボビンに設けたことを特徴とする編組線トロイダルコイルを提供する。
上記第3の観点による編組線トロイダルコイルでは、平角線に比べると、編組線が柔軟であり、巻回時に必要な電線曲げ加工力が小さく、それに耐えうるリブでよいため、リブ厚さを薄くすることが出来る。また、安価な樹脂を利用できる。従って、巻線数を増やすことができ、コストを低減することが出来る。さらに、ボビンの内周側でも外周側でもエッジワイズ巻きとするため、高周波銅損の抑制効果が大きくなる。
【0008】
第4の観点では、本発明は、前記第1から前記第3のいずれかの観点による編組線トロイダルコイルであって、全体を樹脂モールドまたは接着剤(ワニスなど)含浸により固化したことを特徴とする編組線トロイダルコイルを提供する。
上記第4の観点による編組線トロイダルコイルでは、全体が固形物になるため、取扱いが容易になる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の編組線トロイダルコイルによれば、高周波銅損の増加を抑制することが出来る。また、リブを有するボビンに巻線を巻回する場合に、巻線数を増やすことができ且つコストを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図に示す実施の形態により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【0011】
−実施例1−
図1は、実施例1に係る編組線トロイダルコイル100を示す正面図である。
この編組線トロイダルコイル100は、樹脂製の円環状のボビン11と、そのボビン11のリブ12の間を通してトロイダル巻きされた編組線13とを具備してなる。
【0012】
図2は、図1のA−A’端面図である。
ボビン11は、断面がトラック形状になっており、コア14を内蔵している。なお、コア14は、磁路にエアギャップが無い物でも、磁路の一部にエアギャップが有る物でも、いずれでもよい。
ボビン11の内周側では、編組線13は、リブ12によって、エッジワイズ巻きとなるような扁平形状に規制されている。
他方、ボビン11の外周側では、編組線13は、リブ12によって形状を規制されているが、エッジワイズ巻きにはなっていない。
【0013】
図3は、図1のB矢視模式図である。
ボビン11の外周側でのリブ12の切れ目で、編組線13は、隣接するターンに渡っている。
【0014】
図4は、ボビン11を示す正面図である。
リブ12は、ボビン11の内周側でも外周側でも等しいリブ厚さになっている。すなわち、リブ22の間のスリットは、ボビン21の内周側では狭く、外周側では広くなるようなスリット幅になっている。
【0015】
図5は、図4のC−C’端面図である。
ボビン11は、半ボビン11aと半ボビン11bとに分割できるようになっている。
【0016】
図6は、図4のD矢視模式図である。
【0017】
実施例1に係る編組線トロイダルコイル100によれば次の効果が得られる。
(1)素線表面を絶縁被覆した編組線13を用いるため、高周波での表皮効果と線間近接効果を低減でき、高周波銅損の増加を抑制することが出来る。
(2)平角線に比べると、編組線13が柔軟であり、巻回時に必要な電線曲げ加工力が小さく、それに耐えうるリブ12でよいため、リブ厚さを薄くすることが出来る。また、安価な樹脂を利用できる。従って、巻線数を増やすことができ、コストを低減することが出来る。また、ボビン11の外周側では、リブ厚さ及び外周方向へのリブ突出量を低減でき、この点でも樹脂を節減でき、コストを低減できる。
(3)外周方向へのリブ突出量および巻線厚が小さくなり、コイル全体としての外径を小型化できる。
【0018】
−実施例2−
図7は、実施例2に係る編組線トロイダルコイル200を示す正面図である。
この編組線トロイダルコイル200は、樹脂製の円環状のボビン21と、そのボビン21のリブ22の間を通してトロイダル巻きされた編組線23とを具備してなる。
【0019】
図8は、図7のE−E’端面図である。
ボビン21は、断面がトラック形状になっており、コア24を内蔵している。なお、コア24は、磁路にエアギャップが無い物でも、磁路の一部にエアギャップが有る物でも、いずれでもよい。
ボビン21の内周側でも外周側でも、編組線23は、リブ22によって、エッジワイズ巻きとなるような扁平形状に規制されている。
【0020】
図9は、図7のF矢視模式図である。
ボビン21の外周側でのリブ22の切れ目で、編組線23は、隣接するターンに渡っている。
【0021】
図10は、ボビン21を示す正面図である。
リブ22は、ボビン21の内周側では薄く、外周側では厚くなるようなリブ厚さになっている。すなわち、リブ22の間のスリットは、ボビン21の内周側でも外周側でも等しいスリット幅になっている。
【0022】
図11は、図10のG−G’端面図である。
ボビン21は、半ボビン21aと半ボビン21bとに分割できるようになっている。
【0023】
図12は、図10のH矢視模式図である。
【0024】
実施例2に係る編組線トロイダルコイル200によれば次の効果が得られる。
(1)素線表面を絶縁被覆した編組線23を用いるため、高周波での表皮効果と線間近接効果を低減でき、高周波銅損の増加を抑制することが出来る。
(2)平角線に比べると、編組線23が柔軟であり、巻回時に必要な電線曲げ加工力が小さく、それに耐えうるリブ22でよいため、リブ厚さを薄くすることが出来る。また、安価な樹脂を利用できる。従って、巻線数を増やすことができ、コストを低減することが出来る。
(3)ボビン21の内周側でも外周側でもエッジワイズ巻きとするため、高周波銅損の抑制効果が大きくなる。
【0025】
−実施例3−
図13は、実施例3に係る編組線トロイダルコイル300を示す正面図である。
この編組線トロイダルコイル300は、円環状のコア34と、そのコア34の外周にエッジワイズ巻き且つトロイダル巻きされた編組線33と、全体を固体化する樹脂モールド35とを具備してなる。なお、コア34は、磁路の一部にエアギャップが有る物でもよい。
【0026】
実施例3に係る編組線トロイダルコイル300によれば次の効果が得られる。
(1)素線表面を絶縁被覆した編組線33を用いるため、高周波での表皮効果と線間近接効果を低減でき、高周波銅損の増加を抑制することが出来る。
(2)トロイダル巻きの内周側でも外周側でもエッジワイズ巻きとするため、高周波銅損の抑制効果が大きくなる。
【0027】
−実施例4−
図14は、実施例4に係る編組線トロイダルコイル400を示す正面図である。
この編組線トロイダルコイル400は、円環状のコア44と、そのコア44の外周にエッジワイズ巻き且つトロイダル巻きされた編組線43とを具備し、接着剤含浸により全体を固化されたものである。なお、コア44は、磁路の一部にエアギャップが有る物でもよい。
【0028】
実施例4に係る編組線トロイダルコイル400によれば次の効果が得られる。
(1)素線表面を絶縁被覆した編組線43を用いるため、高周波での表皮効果と線間近接効果を低減でき、高周波銅損の増加を抑制することが出来る。
(2)トロイダル巻きの内周側でも外周側でもエッジワイズ巻きとするため、高周波銅損の抑制効果が大きくなる。
(3)軽量化できる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の編組線トロイダルコイルは、電力伝送電気回路や電源回路における空芯または有磁芯の編組線トロイダルコイルとして利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例1に係る編組線トロイダルコイルを示す正面図である。
【図2】図1のA−A’端面図である。
【図3】図1のB矢視模式図である。
【図4】実施例1に係るボビンを示す正面図である。
【図5】図4のC−C’端面図である。
【図6】図4のD矢視模式図である。
【図7】実施例2に係る編組線トロイダルコイルを示す正面図である。
【図8】図7のE−E’端面図である。
【図9】図7のF矢視模式図である。
【図10】実施例2に係るボビンを示す正面図である。
【図11】図10のG−G’端面図である。
【図12】図10のH矢視模式図である。
【図13】実施例3に係る編組線トロイダルコイルを示す正面図である。
【図14】実施例4に係る編組線トロイダルコイルを示す正面図である。
【符号の説明】
【0031】
11,21 ボビン
12,22 リブ
13,23,33 編組線
14,24,34 コア
100,200,300,400 編組線トロイダルコイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
素線表面を絶縁被覆した編組線をトロイダル巻きすると共に該トロイダル巻きの少なくとも内周側ではエッジワイズ巻きとなるように前記トロイダル巻きの少なくとも内周側では前記編組線を扁平形状にしたことを特徴とする編組線トロイダルコイル。
【請求項2】
請求項1に記載の編組線トロイダルコイルであって、前記編組線を巻回する環状のボビンを有し、該ボビンの内周側ではエッジワイズ巻きとなるように前記ボビンの内周側では前記編組線を扁平形状に規制するリブを前記ボビンに設けたことを特徴とする編組線トロイダルコイル。
【請求項3】
請求項1に記載の編組線トロイダルコイルであって、前記編組線を巻回する環状のボビンを有し、該ボビンの内周側でも外周側でもエッジワイズ巻きとなるように前記ボビンの内周側でも外周側でも前記編組線を扁平形状に規制するリブを前記ボビンに設けたことを特徴とする編組線トロイダルコイル。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の編組線トロイダルコイルであって、全体を樹脂モールドまたは接着剤含浸により固化したことを特徴とする編組線トロイダルコイル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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