説明

緩衝器

【目的】 感電や漏電が防止され、管理上や保安上に有利であると共に、所定の減衰作用が設定通りに実現されるようにし得て、その汎用性の向上を期待できるようにする。
【構成】 ピストン部3における伸側チェック弁3aを介してピストン側室Bをロッド側室Aに連通させ、シリンダ1とインナーチューブ10との間にロッド側室Aとリザーバ室とに連通する制御用隙間Sを形成してなり、又、リザーバ室がシリンダの下端部に配設のベースバルブ部14における圧側チェック弁14cを介してピストン側室に連通されてなり、前記シリンダとインナーチューブとの各両端部をベアリングとベースバルブのバルブボディに結合させている緩衝器において、前記シリンダ又はインナーチューブの上端又は下端が弾性材30を介してベアリング又はバルブボディに嵌合されていることとする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、油圧緩衝器、又は電気粘性流体が印加電圧によってその粘性を変化させる性質を利用して発生減衰力の調整を可能にする緩衝器に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、例えば自動車に利用される緩衝器としての油圧緩衝器にあっては、該自動車の走行路面の状況に応じてその発生減衰力が調整されるように構成されていることが望まれている。
【0003】そして、そのために従来から提案されている油圧緩衝器にあっては、一般的には、シリンダに対してピストンロッドが出没されることでシリンダ内でピストン部が摺動する際に、減衰力発生部を作動油が通過することで所定の減衰力が発生されると共に、該減衰力発生部における減衰力発生の機構を例えば機械的に変更させてあるいは該減衰力発生部を通過する作動油の流量を増減させて、その発生減衰力を高低調整し得るように構成されている。
【0004】その結果、上記減衰力発生部が例えば絞りやバルブ等の固有の減衰特性のもので構成されている場合には、該固有の減衰特性の範囲内で発生された減衰力が調整されることになり、従って、この減衰力発生部を装備する油圧緩衝器が自動車に搭載される場合には、該自動車が走行する路面の状況に応じてその発生減衰力を調整するという当初の目的を充分に達成できなくなる危惧がある。
【0005】そして、多様の特性の減衰力を発揮し得るように、減衰力発生部を多種の絞りやバルブ等を有する構造に構成すると、該油圧緩衝器の構造が複雑になってその生産性が低下されたりその保守管理が面倒になる等の不都合が招来されるだけでなく、構造が複雑になるのに呼応してその制御が複雑になり、その分高価な部品が多用されることになる等して、その生産コストが上昇される等の不都合も招来され易くなる。
【0006】そこで、近年、印加電圧によってその粘性が変化する性質を有する電気粘性流体が発見されていることを鑑案して、例えば、実公平3−5698号公報に開示された図2に示すような構造の電気粘性流体利用の緩衝器が提案されている。
【0007】即ち、該緩衝器は、従来の油圧緩衝器の態様に形成されてなるもので、シリンダ1に対して出没自在に挿通されるピストンロッド2の先端には、上記シリンダ1内で摺動すると共に該シリンダ1内にロッド側室Aとピストン側室Bを区画形成するピストン部3を有してなる。
【0008】そして、ロッド側室Aとピストン側室Bには電気粘性流体が充満されてなり、該ロッド側室Aとピストン側室Bは、ピストン部3に配設の伸側チェック弁3aとこれに並列する絞り3bを介して連通されるとしている。
【0009】また、シリンダ1は、その上端部にポート1a及び下端部にポート1bをそれぞれ有しており、該各ポート1a,1bを介して各側室A,Bがそれぞれ外部に連通するとしている。
【0010】尚、シリンダ1の外部には、リザーバタンクTが配設されており、該リザーバタンクTを形成するタンクハウジングT1内にはそこに容室T2とガス室T3とを区画形成フリーピストンT4が摺動可能に収装されている。
【0011】そして、容室T2は、配管Pを介してシリンダ1内のピストン側室Bに連通されるとしている。
【0012】一方、シリンダ1の外周側には容室Rを形成するように所謂外筒が配設されてなるとするが、該外筒は、ヘッド側筒状体4と、ボトム側筒状体5と、中間部筒状体6と、からなる。
【0013】尚、容室Rは、シリンダ1に開穿の各ポート1a,1bを介して各側室A,Bに連通するとしている。
【0014】ヘッド側筒状体4は、その上端内周にベアリング部材7を螺着させてなり、該ベアリング部材7の中央部にはピストンロッド2が摺動可能に挿通されている。
【0015】そして、該ヘッド側筒状体4は、その下端にフランジ部4aを有してなり、該フランジ部4aを介して中間部筒状体6の上端に連設されるとしている。
【0016】ボトム側筒状体5は、その下端肉厚部に圧側チェック弁5aとこれに並列する絞り5bを有してなり、該圧側チェック弁5a及び絞り5bは、前記リザーバタンクT内の容室T2をピストン側室Bに連通させている。
【0017】そして、該ボトム側筒状体5は、その上端にフランジ部5cを有してなり、該フランジ部5cを介して中間部筒状体6の下端に連設されるとしている。
【0018】中間部筒状体6は、その上下端にそれぞれフランジ部6a,6bを有しており、該各フランジ部6a,6bがそれぞれが対向するヘッド側筒状体4のフランジ部4a及びボトム側筒状体5のフランジ部5cにそれぞれ絶縁材8を介してボルトナット9で連設されている。
【0019】そして、中間部筒状体6は、その内周と前記シリンダ1の外周との間に、前記容室Rの一部を所謂巾狭にするように、間隔が約1mm程度となる制御用隙間Sを形成するとしている。
【0020】該制御用隙間Sは、ここに電場が発現される際に該電場に介在される電気粘性流体の粘性を印加電圧量に応じて硬化傾向に変化させるように機能する。
【0021】そしてまた、この従来例にあっては、シリンダ1が一方の電極部材とされるに対して、中間部筒状体6が他方の電極部材とされ、外部に配設のコントローラCから延長される電線E1が一方の電極部材、即ち、シリンダ1に電気的に接続される上端側筒状体4に接続され、コントローラCから延長される電線E2が他方の電極部材とされる中間部筒状体6に接続されるとしている。
【0022】それ故、この従来提案としての電気粘性流体利用の緩衝器によれば、シリンダ1に対してピストンロッド2が出没されることでシリンダ1内をピストン部3が摺動するときに、該シリンダ1の外部に配設されている制御用隙間Sを電気粘性流体が通過することになるが、このとき両方の電極部材に所定の電圧を印加して制御用隙間Sに電場を発現させるようにすれば、該電場で電気粘性流体の粘性が印加電圧量に応じて硬化傾向に変化されることになる。
【0023】従って、上記印加電圧が維持されることを条件に、以降、制御用隙間Sにおける電気粘性流体の流通性が妨げられる傾向になり、その結果、ピストン部3のシリンダ1内での摺動性が妨げられる、即ち、減衰作用が発現されることになり、両方の電極部材への印加電圧量を適宜に選択すれば、発現される減衰作用の度合を任意に調整し得ることになる。
【0024】そして、上記従来提案としての緩衝器が自動車に搭載されれば、該自動車の走行路面の状況に応じて減衰作用の度合を調整することが可能になり、該自動車における例えば乗り心地を好ましい状態に改善し得ることになる。
【0025】他方、シリンダの外側にアウターシリンダを同芯に配設し、アウターシリンダの外側にアウターシェルを設け、シリンダとアウターシリンダをベアリングとベースバルブのバルブボディに嵌合させ、アウターシリンダとアウターシェルとの間にリザーバを区画した多重式の油圧緩衝器が例えば実公昭62−24846号公報に開示されている。
【0026】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の実公平3−5698号公報に示す従来例としての電気粘性流体利用の緩衝器にあっては、保安上の欠点があると共に、所定の減衰作用が期待できなくなる危惧がある。
【0027】即ち、従来例に係る緩衝器は、両方の電極部材、即ち、一方の電極部材たるシリンダ1に電気的に接続される上端側筒状体4及び下端側筒状体5と共に他方の電極部材とされる中間部筒状体6が緩衝器の外周に露出されている状況にある。
【0028】それ故、両方の電極部材は、所謂野晒し状態にあって、これに人体が触れる場合には感電の危険がある。
【0029】又、自動車への搭載状態にあっても電流がベアリング部材7等を介して他部への接触による漏電の危険があり、電力損失が生じる。
【0030】そして、上記従来例の場合には、緩衝器の外部にフランジ部4a,6a及び5c,6bが突出する形態に形成されているために、上記感電や漏電の機会が増えることになる不都合がある。
【0031】さらに、制御用隙間Sの間隔は、これが約1mm程度に保持されている必要があるという事実を鑑みると、上記した従来例にあっては、中間部筒状体6に凹凸が招来される等の事態を絶対的に回避しなければならないが、該緩衝器が例えば自動車への搭載中には中間部筒状体6の外周に石が衝突する等して凹みができる危険があり、該凹みができる等の場合には、制御用隙間Sの間隔が狂うことになり、設定通りの減衰作用を期待できなくなる危惧がある。
【0032】そして、制御用隙間Sにおける間隔の維持は、該緩衝器を商品として搬送する場合にも要請されることで、その管理が面倒になる不都合もある。
【0033】他方、上記実公昭62−24846号公報に示す従来の油圧緩衝器ではシリンダとアウターシリンダの長さが異なるために所望通りに取り付けるには寸法加工精度を出すのが困難であり、また温度変化によってシリンダとアウターシリンダの伸び率又は縮み率が異なると一方のシリンダ又はアウターシリンダにガタが生じ取付けが不安定で油の漏れの原因にもなる不具合がある。
【0034】この発明は、前記した事情を鑑みて創案されたものであって、その目的とするところは、感電や漏電のおそれが無く、管理上や保安上に有利であると共に、所定の減衰作用が設定通りに実現されるようにし得て、その汎用性の向上を期待できる電気粘性流体利用の緩衝器を提供することである。
【0035】更に又、長さの異なる多重管を使用しても組立性が向上し、寸法加工精度をラフにでき、温度変化があっても多重管のそれぞれにガタが発生しない緩衝器を提供することである。
【0036】
【課題を解決するための手段】上記した目的を達成するために、本発明の構成はシリンダの外側にインナーチューブを配設し、インナーチューブの外側にアウターチューブを配設し、インナーチューブとアウターチューブとの間にリザーバ室を形成してなり、更にシリンダ内にピストン部を摺動可能に収装して該シリンダ内にロッド側室とピストン側室とを区画形成する一方でピストン部における伸側チェック弁を介してピストン側室をロッド側室に連通させ、シリンダとインナーチューブとの間にロッド側室とリザーバ室とに連通する制御用隙間を形成してなり、又、リザーバ室がシリンダの下端部に配設のベースバルブ部における圧側チェック弁を介してピストン側室に連通されてなり、前記シリンダとインナーチューブとの各両端部をベアリングとベースバルブのバルブボディに結合させている緩衝器において、前記シリンダ又はインナチューブの上端又は下端が弾性材を介してベアリング又はバルブボディに嵌合されていることを特徴とするものである。
【0037】
【作用】シリンダ又はインナーチューブの長さが異なっていても弾性部材で長さの不均一さを吸収でき、シリンダとインナーチューブに歪みが生じたり、又は温度変化によって寸法変化があっても弾性部材がこれを吸収する。
【0038】
【実施例】以下、図示した実施例に基いてこの発明を詳細に説明すると、図1に示す実施例はこれが自動車用とされる電気粘性流体を利用した緩衝器であって、該緩衝器は、シリンダ1と、インナーチューブ10と、アウターチューブ11と、を有してなり、所謂複筒型に対する三重筒型に形成されてなる。緩衝器は通常の三重筒等からなる多重式の油圧緩衝器であってもよい。
【0039】図1のシリンダ1は、所謂単管構造に形成されてその内部にピストンロッド2を出没自在に挿通させると共に、その内部に摺動可能に収装されたピストン部3によって区画形成されたロッド側室Aとピストン側室Bとを有してなる。
【0040】そして、ロッド側室Aとピストン側室Bには電圧印加時にその粘性が変化される電気粘性流体が充満されている。
【0041】また、シリンダ1は、その上端がその中央部にピストンロッド2を挿通させるベアリング部材12に絶縁材8を介して接続された状態で閉塞されてなり、該ベアリング部材12は、インナーチューブ10の上端をも絶縁材8の配在下に閉塞するとしている。
【0042】尚、ベアリング部材12は、シール部材16を保持すると共にピストンロッド2を挿通させるキャップ部材13の下端側内周に接続されている。キャップ部材13は、その下端側にアウターチューブ11の上端を接続させている。
【0043】そしてまた、シリンダ1は、その下端がベースバルブ部14によって閉塞される、即ち、ベースバルブ部14を形成するバルブボディ14aの外周に絶縁材8aを介して接続された状態で閉塞されている。
【0044】そして、このバルブボディ14aは、インナーチューブ10の下端をも絶縁材8aの配在下に閉塞するとしている。尚、バルブボディ14aは、その下方に配設されたボトム部材15に接続された状態で支持されてなるとし、該ボトム部材15は、その上端側にアウターチューブ11の下端を連設させている。
【0045】ベースバルブ部14は、バルブボディ14aに開穿されたポート14b及び該ポート14bの上端側を閉塞するように配設された圧側チェック弁14cを介してピストン側室Bをインナーチューブ10とアウターチューブ11との間に形成されるリザーバ室R2に連通させるとしている。
【0046】ピストン部3は、そのピストンボディ3cに開穿されたポート3d及び該ポート3dの上端側を閉塞するように配設された伸側チェック弁3aを介してピストン側室Bをロッド側室Aに連通させるとしている。
【0047】一方、シリンダ1の上端部にはポート1aが開穿されていて、該ポート1aを介してロッド側室Aがシリンダ1の外部、即ち、シリンダ1と該シリンダ1の外部に配設されたインナーチューブ10との間に形成される制御用隙間Sに連通するとしている。
【0048】該制御用隙間Sの間隔は、前記した従来例の場合と同様に、約1mm程度とされており、この実施例にあっては、前記した絶縁材8,8aの所謂肉厚の調整によって設定されるとしている。
【0049】インナーチューブ10の下端部には、ポート10aが開穿されていて、該ポート10aを介して制御用隙間Sとリザーバ室R2とが連通するようにしている。
【0050】これによって、制御用隙間Sを流通する電気粘性流体は、常にリザーバ室R2に流入する傾向になる。
【0051】絶縁材8,8aは合成樹脂、セラミック材等で成形され、その外周に小径部と大径部を有し、小径部外周にシリンダ1の上下端を嵌合させ、大径部外周にインナーシリンダ10の上下端を嵌合させている。
【0052】シリンダ1よりインナーチューブ10が長く成形され、インナーチューブ10の下端とバルブボディ14aの上面との間にウェーブワッシャ、皿ばね、ゴム等からなる弾性部材30がシールを兼ねて介在されている。
【0053】弾性部材30はインナーチューブ10の上端とベアリング12との間に介在してもよく、シリンダ1の上端、下端又は最端のみに設けてもよい。
【0054】ところで、制御用隙間Sに電界を発現させるには、プラス側及びマイナス側の両方の電極部材に所定の電圧を印加することによるが、この実施例にあっては、一方の電極部材とされるシリンダ1を例えばプラス側に設定すると共に、他方の電極部材とされるインナーチューブ10をマイナス側に設定するとしている。
【0055】そして、シリンダ1に外部のコントローラC又は電源から延長された電線E1が接続されてなると共に、インナーチューブ10にコントローラCから延長された電線E2が接続されてなるとしている。
【0056】尚、電線E1,E2がアウターチューブ11を貫通するにあっては、該アウターチューブ11に開穿の挿通用孔に液密状態下に嵌挿された絶縁材を液密状態下に貫通してなるとしている。
【0057】電線E1は絶縁されながらインナーチューブ1を貫通してシリンダ1に接続されている。
【0058】結線の方法はこれに限定されるものではない。
【0059】この実施例にあっては、コントローラCには自動車に搭載される車高センサC1からの信号が入力されるとしており、緩衝器が自動車に搭載されて路面走行をする場合に、該走行路面の状況に応じて両方の電極部材への印加電圧量が適宜に調整されるとしている。
【0060】従って、以上のように形成されたこの実施例に係る電気粘性流体利用の緩衝器においては、シリンダ1に対してピストンロッド2が出没される緩衝器の伸縮作動時には、ロッド側室Aにある電気粘性流体が制御用隙間S、リザーバ室R2及びベースバルブ部14を介してピストン側室Bに流入することになる。
【0061】即ち、緩衝器は、その伸縮作動時には、常に、ロッド側室Aからの電気粘性流体が制御用隙間Sを流通することになり、所謂ワンウェイタイプとして機能することになる。
【0062】そして、緩衝器の圧側作動時にロッド側室Aにおいて余剰になる電気粘性流体は、制御用隙間Sを介してリザーバ室R2に流入され、緩衝器の伸側作動時にピストン側室Bにおいて不足する電気粘性流体は、ベースバルブ部14を介してリザーバ室R2から補充される。
【0063】緩衝器の伸縮作動時に、一方の電極部材たるシリンダ1及び他方の電極部材たるインナーチューブ10に所定の電圧が印加されると、両方の電極部材間に形成されている制御用隙間Sに電界が発現される。
【0064】該電界の発現は、そこに介在している、即ち、そこを流通している電気粘性流体の粘性が硬化傾向に瞬時に変化されることになり、それ故、該粘性が変化された電気粘性流体は、以降、該制御用隙間Sを電気粘性流体が流通することを妨げる傾向に作用する。
【0065】その結果、ロッド側室Aからの電気粘性流体の流出性が妨げられることになって、ピストン部3のシリンダ1内での摺動性が妨げられることになり、これが減衰作用として発現されて、ピストンロッド2のシリンダ1内への没入性及びピストンロッド2のシリンダ1内からの突出性が妨げられ、緩衝器が所謂緩衝器として機能することになる。
【0066】従って、印加電圧量を適宜に制御すれば、減衰作用を印加電圧量に応じて直ちに、しかも所定の減衰力調整を段差なく円滑に実行することが可能になり、緩衝器が自動車に搭載される場合には、該自動車の走行路面の状況に応じた減衰作用の調整が可能になり、該自動車における例えば乗り心地を好ましい状態に改善し得ることになる。
【0067】尚インナーチューブは複数設けて多重式にし、制御用隙間を長くしてもよく、ロッド側室とリザーバ室に開口するポートの近辺に大きな流体抵抗を発生させないようにしても良い。
【0068】
【発明の効果】以上のように、この発明によれば次の効果がある。
【0069】■インナーチューブ又はシリンダの端部に弾性部材を介在させているから、インナーシリンダとシリンダとの長さが異なっていてもこの弾性部材が長さの不均一さを吸収するため、寸法加工精度がラフでもよく加工性が向上する。
【0070】■シリンダとインナーチューブとの間に歪み差があったり、温度変化で両者に寸法変化があっても、この寸法変化を弾性材が吸収するため、他方のシリンダ又はインナーチューブにガタが発生しない。
【0071】■シリンダとインナーチューブとが電極部材とされ、流体が電気粘性流体を使用した緩衝器の場合には次の効果がある。
【0072】イ.印加電圧量を適宜に制御することで、所定の減衰作用を直ちにしかも円滑に実行することが可能になり、これを自動車に搭載する緩衝器とする場合には該自動車の走行路面の状況に応じた減衰力調整が可能になって該自動車の例えば乗り心地が良好に改善されることになる。
【0073】ロ.制御用隙間が外部からの衝撃が直接作用しないように緩衝器の所謂内部に形成されるので、制御用隙間を形成する電極部材の外周への衝撃等の外力作用を予め阻止し得て、該制御用隙間の間隔を設定通りに維持することが可能になる。
【0074】ハ.両方の電極部材が外部に露出されなくなり、感電や漏電が防止される。
【0075】ニ.シリンダとインナーチューブの各端部が絶縁されているから、ベアリング等の他の部材を介して電流が直流であっても交流であっても他の部材に流れず、漏電が防止され電力損失を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例に係る電気粘性流体利用の緩衝器を示す断面図である。
【図2】従来例としての電気粘性流体利用の緩衝器を示す断面図である。
【符号の説明】
1 シリンダ
3 ピストン部
3a 伸側チェック弁
8,8a 絶縁材
10 インナーチューブ
11 アウターチューブ
14 ベースバルブ部
14c 圧側チェック弁
30 弾性部材
A ロッド側室
B ピストン側室
R2 リザーバ室
S 制御用隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】 シリンダの外側にインナーチューブを配設し、インナーチューブの外側にアウターチューブを配設し、インナーチューブとアウターチューブとの間にリザーバ室を形成してなり、更にシリンダ内にピストン部を摺動可能に収装して該シリンダ内にロッド側室とピストン側室とを区画形成する一方でピストン部における伸側チェック弁を介してピストン側室をロッド側室に連通させ、シリンダとインナーチューブとの間にロッド側室とリザーバ室とに連通する制御用隙間を形成してなり、又、リザーバ室がシリンダの下端部に配設のベースバルブ部における圧側チェック弁を介してピストン側室に連通されてなり、前記シリンダとインナーチューブとの各両端部をベアリングとベースバルブのバルブボディに結合させている緩衝器において、前記シリンダ又はインナーチューブの上端又は下端が弾性材を介してベアリング又はバルブボディに嵌合されていることを特徴とする緩衝器。

【図1】
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【図2】
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