説明

緩衝手段保持部材およびそれを備えたスライドスイッチ

スライドスイッチ100は、スライダ20と、このスライダ20が挿入されたケース10とを有し、スライダ20の摺動操作によってスイッチングし、スライダ20の摺動操作によって、スライダ20とケース10とが接触するスライダ側の接触部位に設けられ、接触を緩和する緩衝手段(上部、左部、右部)21a,21b,21cと、緩衝手段を一体に支持する緩衝手段保持部材21とを備え、ケース10はスライダ20が摺動するケース内面を有し、このケース内面は水平方向に沿って互いに対峙しており、ケース10の内面の一方がスライダ20を3段階に位置決めする位置決め部11aを備え、ケース10の内面の他方がスライダ20を2段階に位置決めする位置決め部11dを備えている。
これにより、走行中の車両の振動によるスライドスイッチの振動音や、スイッチ操作による操作音の発生を低減し、車両の操作フィーリングの向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、緩衝手段保持部材およびそれを備えたスライドスイッチに関し、特に、スライドスイッチ内でレバーにより摺動するスライダと、スライダが挿入されたケースとを有し、このスライダの摺動操作によってスイッチングする緩衝手段保持部材およびそれを備えたスライドスイッチに関する。
【背景技術】
従来、スライドスイッチのスイッチ操作による操作音の発生を低減するために、スライドスイッチ内で摺動するスライダと、このスライダを内包するケースとが互いに接触したときに、ケースまたはスライダに取り付けられた板ばねによる緩衝作用によってこの接触を緩衝するスライドスイッチが開示されている(例えば、特開2002−42608号公報参照)。このスライドスイッチのレバーを水平方向へ動かすごとに、スライダが摺動し、スライドスイッチの端子がオンまたはオフして、スライドスイッチがスイッチングできる。このとき、レバーの操作によって摺動するスライダと、ケースとが接触する部分に緩衝部材として弾性特性を有する板ばねを取り付け、このスイッチ操作による操作音の発生を低減している。
なお、スライダは、スイッチング操作を可能とする摺動部品であり、可動子とも称す。
第8図は、従来のスライドスイッチの概略を示す構成図であり、3段階に切り換えることができる3段階切り換え式のスライドスイッチを示している。第8図に示すようにスライドスイッチ120は、スイッチ操作時に取っ手として機能するレバー122と、このレバー122が嵌め込まれたスライダ124と、このスライダ124が摺動可能な空間を有するケース110と、スライダ124が載置されている基板130とから構成されている。この基板130の下面には、端子130a、130b,および130cが備えられており、レバー122の操作によってスライダ124が摺動したときに、端子130a、130b,および130cによって、スライドスイッチ120がオンまたはオフする。このように、スライドスイッチは3段階切り換え式として形成されており、2段階切り換え式のスライドスイッチなども個別に形成される。
ケース110は、スライダ124の周囲を覆うようにして、フレーム111を折り曲げ加工して形成されている。スライドスイッチ120のレバー122を水平方向へ動かすと、スライダ124が摺動することにより端子130a,130b,130cが電気的にオンまたはオフして、スライドスイッチ120がスイッチングできる。また、レバー122の操作によって摺動するスライダ124と、ケース110とが接触する部位に緩衝部材として弾性特性を有する板ばね121を取り付ける。そして、レバー122を操作することによってスライダ124が摺動する。このスライダ124とケース110とが接触したときに、板ばね121はその緩衝作用によってこの接触を緩衝する。このため、スイッチ操作による操作音の発生を低減することができる。
しかしながら、こうしたスライドスイッチ120では、スライダ124とケース110との間の上下方向にはクリアランスがあり、このクリアランスによって、スライダ124が上下に振動する。このため、走行中の車両の振動によってスライドスイッチ120から振動音が発生する。この振動音は、運転操作者にとって耳障りであり、操作フィーリングの悪化を招いてしまう。
また、緩衝部材である板ばね121は、別部材であり、ケース110に取り付けるための取り付け工数が発生する。
そこで、本発明のスライドスイッチは、このような問題を解決するために創案されたものであり、走行中の車両の振動によるスライドスイッチの振動音や、スイッチ操作による操作音の発生を低減し、車両の操作フィーリングの向上を図ることを課題とする。
【発明の開示】
請求の範囲第1項に記載された本発明の緩衝手段保持部材は、スライダと、このスライダが挿入されたケースとを有し、前記スライダの摺動操作によってスイッチングするスライドスイッチに備えられ、前記スライダの摺動操作によって、前記スライダと前記ケースとが接触する前記スライダ側の接触部位に設けられ、前記接触を緩和する緩衝手段を備えた緩衝手段保持部材であって、
前記緩衝手段保持部材は、前記スライダが摺動操作される水平方向、または、前記スライダの上下移動が規制される垂直方向への少なくとも一方へ緩衝する緩衝手段を一体に備えていることを特徴とする。
請求の範囲第1項に記載の発明によれば、緩衝手段保持部材と一体になった緩衝手段をスライダに固着しているため、走行中の車両の振動によるスライドスイッチの振動音や、スイッチ操作による操作音の発生を低減し、車両の操作フィーリングの向上を図ることができる。また、スライダは、緩衝手段を一体にした緩衝手段保持部材を備えているため、組み込み工数を低減することができる。
請求の範囲第2項に記載された緩衝手段保持部材は、請求の範囲第1項に記載の発明において、前記緩衝手段は、前記スライダ側の前記接触部位に設けられ、水平方向へ符号「<」の形状に突出した板ばねであることを特徴とする。
請求の範囲第2項に記載の発明によれば、緩衝手段を符号「<」の形状に突出した板ばねとすることによって、板状のばね部材から容易に成形することできる。
請求の範囲第3項に記載された緩衝手段保持部材は、請求の範囲第1項に記載の発明において、前記緩衝手段は、前記スライダ側の前記接触部位に設けられ、垂直方向へ半円形状に反った板ばねであることを特徴とする。
請求の範囲第3項に記載の発明によれば、緩衝手段を垂直方向へ半円形状に反った板ばねにすることによって、板状のばね部材から容易に成形することができる。
請求の範囲第4項に記載された緩衝手段保持部材は、請求の範囲第1項に記載の発明において、前記緩衝手段は、弾性特性を有する材料により形成されたばね性部材であることを特徴とする。
請求の範囲第4項に記載の発明によれば、緩衝手段は、弾性特性を有する材料により形成されたばね性部材であるため、緩衝手段を緩衝手段保持部材と一体に形成することが容易である。
請求の範囲第5項に記載されたスライドスイッチは、請求の範囲第1項〜第4項のいずれか1項に記載の発明において、前記緩衝手段保持部材を備えたことを特徴とする。
請求の範囲第5項に記載の発明によれば、スライダが摺動操作される水平方向、およびスライダの上下移動を規制する垂直方向への緩衝をすることができるため、走行中の車両の振動によるスライドスイッチの振動音や,スイッチ操作による操作音の発生を低減し、操作フィーリングの向上を図ることができる。また、スライダは、水平方向および垂直方向へ緩衝をする緩衝手段を一体にした緩衝手段保持部材を備えているため、組み込み工数を低減することができる。
請求の範囲第6項に記載されたスライドスイッチは、請求の範囲第5項に記載の発明において、前記ケースは、前記スライダが摺動するケース内面を有し、このケース内面は水平方向に沿って互いに対峙しており、前記ケース内面の一方が前記スライダを3段階に位置決めする位置決め部を備え、前記ケース内面の他方が前記スライダを2段階に位置決めする位置決め部を備えたことを特徴とする。
請求の範囲第6項に記載の発明によれば、ケースは、スライドスイッチを3段階および2段階に切り換えるための位置決め部位をケース内面の前後方向に備えることによって一個のケースを共用することができる。このため、ケースを成形する金型を節約することができる。
請求の範囲第7項に記載されたスライドスイッチは、請求の範囲第5項に記載の発明において、前記スライダはスライダ本体の下面から突出した凸部を備え、この凸部は、弾性部材によって付勢されており、前記スライダを基板上で摺動自在に支持していることを特徴とする。
請求の範囲第7項に記載の発明によれば、スライダは、スライダ本体の下面から突出した凸部を備え、この凸部はコイルばねなどの弾性部材で支持されているため、スライダの上下移動を緩衝することができる。このため、走行中の車両の振動によるスライドスイッチの振動音や、スイッチ操作による操作音の発生を低減し、車両の操作フィーリングの向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、第1の実施の形態に係るスライドスイッチ(3段階切り換え部を有する)を示す斜視図であり、(a)はケースを示す斜視図、(b)はスライダを示す斜視図、(c)はケースにスライダを組み込んだスライドスイッチの一部を破断した斜視図である。
第2図は、緩衝手段を備えたスライダを示し、(a)はスライダ本体と緩衝手段保持部材の構造を示す斜視図、(b)は上部緩衝手段の動作の説明図、(c)は左右緩衝手段(左部緩衝手段と右部緩衝手段)の動作の説明図である。
第3図は、ストップ位置を調節するスペーサを示す斜視図である。
第4図は、第1の実施の形態に係るスライドスイッチ(2段階切り換え部を有する)を示す斜視図であり、(a)はケースを示す斜視図である。(b)はスライダを示す斜視図である。(c)はケースとスライダを組み込んだスライドスイッチの一部を破断した斜視図である。
第5図は、3段階切り換え式と2段階切り換え式のスライドスイッチの動作の説明図である。(a)が3段階切り換え式、(b)が2段階切り換え式を示している。
第6図は、第2の実施の形態に係るスライドスイッチを示し、(a)はスライダの斜視図、(b)はその動作の説明図である。
第7図は、緩衝手段を備えたスライダを示し、スライダの下面がコイルばねによって支持されている。(a)は下部緩衝手段の斜視図、(b)はその動作の説明図である。
第8図は、従来のスライドスイッチの内部構成の概略を示す構成図である。
【発明を実施するための最良の形態】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の第1の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。第1図は、本発明の第1の実施の形態であるスライドスイッチ100の内部構成を示している。第1(a)図はケースを示す斜視図である。第1(b)図はスライダを示す斜視図である。第1(c)図はケースとスライダを組み込んだスライドスイッチの一部を破断した斜視図である。
第1図に示すように、スライドスイッチ100は、ケース10と、スライダ20と、基板30とから構成されている。
第1(a)図に示すように、ケース10は五面が囲まれて一面が開口するフレーム11から構成されている。このフレーム11は、板材を折り曲げ加工することによって形成されており、前部フレーム11h、後部フレーム11i、左部フレーム11g、右部フレーム11f、および上部フレーム11eを形成するように折り曲げ加工されている。
なお、前記スライドスイッチ100の前後、左右、上下とは、第1図を正面から見たときに、手前を前部、後方を後部、左側を左部、右側を右部、上方を上部、下方を下部と称している。
前部フレーム11hのほぼ中央部の内面には、スライドスイッチ100のレバー22を3段階に位置決めする位置決め部11aが形成されている。位置決め部11aに対峙する後部フレーム11iのほぼ中央部の内面には、スライドスイッチ100を2段階に位置決めする位置決め部11dが形成されている。上部フレーム11eのほぼ中央部には、レバー孔11cが穿孔されている。このレバー孔11cには、後記するスライダ20に設けられたレバー22が挿通される。ケース10の下部コーナには、図示しないPCボードなどにケース10を固定するためのブラケット部11bが設けられている。
第1(b)図に示すように、スライダ20は、スライダ本体24と、このスライダ本体24に固定された緩衝手段保持部材21と、レバー22と、ストッパ23とから構成されている。緩衝手段保持部材21には、上部緩衝手段21aと、左部緩衝手段21b、右部緩衝手段21cとが一体に備えられている。上部緩衝手段21aは、垂直方向の上方へ4ヶ所設けられており、半円形状に反った板状のばね部材を形成している。左部緩衝手段21b、右部緩衝手段21cは、スライダ本体24の左右に設けられており、ケース10とスライダ20とが接触する接触部位に符号「<」の形状に突出した板ばねで形成されている。
また、ストッパ23は、スライダ本体24の前後摺動面の前部に設けられている。このストッパ23は、スライダ本体24の前部から摺動自在に突出しており、図示しないコイルばねによって付勢されている。
第1(c)図に示すように、基板30は、ケース10の下部の開口に固定されている。この基板30の下部には、電気配線に用いられる端子30a,30b,30cが下方に突設しており、この基板30はスライダ20を下方から摺動自在に支持している。このように、基板30にはスライダ20が載置され、スライダ本体24(第1(b)図参照)の上部に取り付けられたレバー22がケース10に設けられたレバー孔11cから挿通されて、スライドスイッチ100は形成されている。基板30は、フェノール樹脂の積層板(ベーク板)を成形して形成されている。
なお、基板30の材質は、絶縁性を有していれば、特に限定するものではなく、一般に用いられる絶縁材であれば良い。
以上説明した第1の実施の形態のスライドスイッチ100によれば、上部緩衝手段(以下、板ばねとも称す)21aおよび左右緩衝手段(以下、板ばねとも称す)21b,21cがレバー22のスイッチ操作によるスライダ20とケース10との接触を緩衝するため、接触による接触音、即ち操作音の発生を低減することができ、この操作音の低減によるスイッチ操作のフィーリングを向上させることができる。
第1の実施の形態のスライドスイッチ100では、緩衝部材として板ばね21aおよび板ばね21b,21cを用いたが、スライダ本体24とケース10との接触を緩衝できるような弾性を有する部材であればいかなるものであっても構わない。例えば、スプリングばね、シリコーンゴム、および、樹脂などを用いても構わない。
次に、第1の実施の形態に係るスライドスイッチの動作を説明する。第2(a)図はスライダ20の分解斜視図である。第2(b)図は上部緩衝手段の動作を説明する断面構成図である。第2(c)図は、第2(b)図のC−C線の断面図であり、左右緩衝手段の動作を説明する構成図である。
第2(a)図に示すように、緩衝手段保持部材21は、緩衝手段保持部材21の上部の四ヶ所に上部緩衝手段21a,21a,21a,21aを備えている。この上部緩衝手段21aは、垂直方向の上方に対して付勢力を発生させるように、垂直方向の上方に向かって半円形状に反った板状に成形されている。
また、左右緩衝手段(左部緩衝手段と右部緩衝手段)21b,21cが、スライダ本体24の左右の側面に設けられており、ケース10とスライダ20とが接触する接触部位にあって、左右方向に付勢力を発生させるように符号「<」の形状に突出した板ばねで形成されている。
このように、上部緩衝手段21a,左右緩衝手段21b,21cは、緩衝手段保持部材21と一体に備えられている。
第2(a)図に示すように、上部緩衝手段21a,21a,21a,21aは、スライダ本体24の上部に設けられており、第2(b)図のA部拡大図に示すように、ケース10の上部フレーム11eの下面に接触している。すなわち、上部フレーム11eの裏面が上部緩衝手段21aに接触している。このように、上部緩衝手段21a,21a,21a,21aは、上部フレーム11eの下面を付勢している。このため、上部フレーム11eとスライダ20との間に設けられたクリアランスと、上部緩衝手段21aの付勢力とによって、スライダ20はケース10内を滑らかに摺動する。これによって、スライドスイッチ100は、スイッチ操作による接触音の発生を低減することができるとともに、走行中の車両の振動によるスライドスイッチの振動音を低減し、車両の操作フィーリングを向上させることができる。
第2(c)図に示すように、左右緩衝手段21b,21cは、スライダ本体24(第2(b)図参照)の左右の側面に設けられており、B部拡大図に示すように、ケース10とスライダ20とが接触する接触部位にあって、左右方向に付勢力を発生させるように符号「<」の形状に突出した板ばねで形成されている。この符号「<」の形状に突出した板ばねである右部緩衝手段21cが右部フレーム11fに接触している。このとき、右部緩衝手段21cは、右部フレーム11fの側面内側を付勢している。また、コイルばね23bによって付勢された凸部23aからなるストッパ23が位置決め部11aによって位置決めされている。このとき、弾性力によって付勢されたストッパ23によって、スライダ20はケース10内を位置決め部迄滑らかに摺動する。そして、スライダ20は、位置決め部11aにて位置決めされると同時に、右部緩衝手段21cの付勢力によって、ケース10と接触する接触部位と滑らかに接触する。このように、スライドスイッチ100は、スイッチ操作による接触音の発生を低減することができるとともに、走行中の車両の振動によるスライドスイッチ100の振動音を低減し、車両の操作フィーリングを向上させることができる。
第3図はスペーサ15が装着される様子を示している。
第3図に示すように、スペーサ15は、ケース10の左右側面の内部に装着される。これによって、スライダ20(第1図参照)は、ケース10(第1図参照)内での摺動距離を調節することができる。
なお、スペーサ15については、後記する第5図において詳細に説明する。
第4図は、本発明の第1の実施の形態に係るスライドスイッチ200の内部構成を示している。第4(a)図はケースを示す斜視図である。第4(b)図はスライダを示す斜視図である。第4(c)図はケースとスライダを組み込んだスライドスイッチの一部を破断した斜視図である。
スライドスイッチ200がスライドスイッチ100と異なる点は、スライドスイッチ100ではスライドスイッチ100のレバー22を3段階に位置決めする位置決め部11aが機能するように組み込まれているのに対して、スライドスイッチ200ではスライドスイッチ200のレバー22を2段階に位置決めする位置決め部11dが機能するように組み込まれている点である。
第4(a)図に示すように、ケース10は位置決め部11dを図面に向かって手前方向(以下、前方と称す)に配置している。これは、スライドスイッチ100において後方にあった後部フレーム11iが、図面の前方に配置されたためで、それとともに位置決め部11dが、前方に位置している。このとき、第4(b)図に示すように、スライダ20はストッパ23を手前にしており、ストッパ23は、位置決め部11dにより2段階に位置決めされている。すなわち、スライドスイッチ100のケース10とスライダ20の位置関係を、180度回転移動させることで、スライドスイッチ200が形成されることになる。
第4(b)(c)図に示すように、スペーサ15は、ケース10の左右端に配置されて、スライダ20の移動距離を規制している。スペーサ15は、ばね性を持った部材である。このため、ケース10内では少し反ったように装着することにより、簡単に外れることはない。
第5図は3段階切り換え式(スライドスイッチ100の場合)と2段階切り換え式(スライドスイッチ200の場合)のスライドスイッチの動作を説明する図である。第5(a)図が3段階切り換え式の場合を示し、第5(b)図が2段階切り換え式の場合を示している。
第5(a)図に示すように、スライダ20は位置決め部11aによってストップ位置が決められるため、矢印および停止位置イ、ロ、ハに示す3ヶ所の位置でスライダ20は停止する。
第5(b)図に示すように、スライダ20は位置決め部11dによってストップ位置が決められるため、矢印および停止位置ニ、ホに示す2ヶ所の位置でスライダ20は停止する。
位置決め部11a、11dは、前面に位置する位置決め部11aと後面に対峙する位置決め部11dのように形成されており、ケース10を共用し、レバー22を位置決めするようになっている。
すなわち、第5(a)図に示すように、位置決め部11aは、レバー22を中央部のロの位置に停止するように位置決めするが、左右の停止位置イ、ハの位置において、ケース10に接触して停止するようになっている。このため、ケース10との接触部位には、左右緩衝手段21b,21c(第1図参照)が設けられている。
また、第5(b)図に示すように、位置決め部11dは、レバー22が中央部には停止せず左右に振り分けられ、レバー22は、左右の停止位置ニ、ホの位置において、ケース10に接触して停止するようになっている。このため、ケース10との接触部位には、左右緩衝手段21b,21c(第4図参照)が設けられている。
したがって、3段階切り換え式および2段階切り換え式に対して、同一ケース10を用いた場合、スライドスイッチ100の左右の停止位置イ、ハの位置と、スライドスイッチ200の左右の停止位置ニ、ホの位置は同一となり、レバー22の移動距離が全体的に同一となってしまい実用上不都合である。すなわち、3段階に切り換える場合と、2段階に切り換える場合の各々1段階のストロークがほぼ2倍となることは、必ずしも使い勝手の良いものではない。2段階切り換えの場合にも、3段階切り換えの場合と同一ストロークで切り換えることが操作フィーリングとしても良く、レバー22を中途停止にしてしまうような誤操作を防止することができる。
そのため、図3に示すように、前記したストッパ15をケース10の内側の左右に装着して、スライダ20をスペーサ15に接触させて停止させる。このときも、左部緩衝手段21b、右部緩衝手段21cが、スライダ20側に設けられているため、ストッパ15をケース10の内側の左右に装着するだけでよく、極めて容易であり、確実なスイッチ操作を得ることができる。
また、2段階切り換え式と3段階切り換え式とを併せ持つ共用のケース10を用いた場合も、レバー22の移動距離を一定にするため、操作性が良好に維持される。これにより、スライドスイッチの中間止まりなどの不具合の発生を防止することができる(中間止まりとは、スイッチがオンオフするストロークが長いため、スイッチのレバーが誤って途中の位置で停止することを指し、所定の位置でない状態を云う)。
このように、スライドスイッチ100とスライドスイッチ200とは、ケース10やスライダ20を共用することができる。このため、成形金型の製作コストや、部品の保管やその管理工数を節約することができる。
[第2の実施の形態]
第6図は、本発明の第2の実施の形態に係るスライドスイッチ300の内部構成を示している。第6(a)図はスライダを示す斜視図である。第6(b)図はケースとスライダを組み込んだスライドスイッチの動作を示す構成図である。
第2の実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、第1の実施の形態では、スライダ20の上部に板ばねによって付勢力を与えているのに対して、第2の実施の形態では、スライダ50の上部と下部とにおいて付勢力が発生するようにしている点である。したがって、本実施の形態において、前記第1の実施の形態と同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
第6(a)(b)図に示すように、スライドスイッチ300は、ケース40と、スライダ50と、基板60とから構成されている。スライダ50には、スライダ本体54と、緩衝手段保持部材51と、ストッパ53と、レバー52とが備えられている。
D部拡大図に示すように、スライダ本体54の上部には、緩衝手段保持部材51が取り付けられている。この緩衝手段保持部材51の上面には、垂直方向の上方へ半円形状に反った板ばねが四ヶ所設けられている。緩衝手段保持部材51は、スライダ本体54の上面とケース40との間に挟持されている。上部緩衝手段51aは、上部フレーム41eをその下面から付勢している。このため、スライダ50は、ケース40内を滑らかに摺動する。これによって、スライドスイッチ300は、スイッチ操作による接触音の発生を低減することができるとともに、走行中の車両の振動によるスライドスイッチの振動音を低減し、車両の操作フィーリングを向上させることができる。
第7図は、スライダ本体54の下部を球体で摺動させる構造の内部構成を示している。第7(a)図は下部緩衝手段を示す斜視図、第7(b)図は下部緩衝手段の動作を説明する断面構成図である。
第7(a)図に示すように、スライダ本体54の下部には下部緩衝手段56が設けられている。この下部緩衝手段56は球体56aがコイルばね56bに支持されて、スライダ本体54の下面に設けられた孔から球体56aがわずかに突設するようにして装着されている。ここで、球体56aは、特許請求の範囲に示す凸部に相当するする。
第7(b)図のE部拡大図に示すように、球体56aによって、スライダ本体54は、基板60との間を摺動自在に支持されている。すなわち、スライダ本体54と基板60との間はコイルばね56bで支持された球体56aによって摺動自在に支持されている。これによって、スライドスイッチ300は、スイッチ操作による接触音の発生を低減することができるとともに、走行中の車両の振動によるスライドスイッチ300の振動音を低減し、車両の操作フィーリングを向上させることができる。
以上、本発明の実施の形態について実施例を用いて説明したが、本発明のこうした実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。例えば、ケースの材料は、特に指定しないが金属製であっても、樹脂製であっても構わない。また、このようなスライドスイッチは音響機器のスピーカなどによる振動にも適応できるのは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
本発明に係る緩衝手段保持部材およびスライドスイッチによれば、スライドスイッチ内で摺動するスライダと、スライダを内包するケースとが接触する接触部位に、スライダの水平方向と、垂直方向との少なくとも一方を緩衝する緩衝手段が緩衝手段保持部材と一体に設けられて互いの接触を緩衝するため、スイッチ操作による接触音の発生を低減することができるとともに、走行中の車両の振動によるスライドスイッチの振動音を低減し、車両の操作フィーリングを向上させることができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライダと、このスライダが挿入されたケースとを有し、前記スライダの摺動操作によってスイッチングするスライドスイッチに備えられ、前記スライダの摺動操作によって、前記スライダと前記ケースとが接触する前記スライダ側の接触部位に設けられ、前記接触を緩和する緩衝手段を備えた緩衝手段保持部材であって、
前記緩衝手段保持部材は、前記スライダが摺動操作される水平方向、または、前記スライダの上下移動が規制される垂直方向への少なくとも一方へ緩衝する緩衝手段を一体に備えていることを特徴とする緩衝手段保持部材。
【請求項2】
前記緩衝手段は、前記スライダ側の前記接触部位に設けられ、水平方向へ符号「<」の形状に突出した板ばねであることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の緩衝手段保持部材。
【請求項3】
また、前記緩衝手段は、前記スライダ側の前記接触部位に設けられ、垂直方向へ半円形状に反った板ばねであることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の緩衝手段保持部材。
【請求項4】
さらに、前記緩衝手段は、弾性特性を有する材料により形成されたばね性部材であることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の緩衝手段保持部材。
【請求項5】
前記緩衝手段保持部材を備えたことを特徴とする請求の範囲第1項〜第4項のいずれか1項に記載のスライドスイッチ。
【請求項6】
前記ケースは、前記スライダが摺動するケース内面を有し、このケース内面は水平方向に沿って互いに対峙しており、前記ケース内面の一方が前記スライダを3段階に位置決めする位置決め部を備え、前記ケース内面の他方が前記スライダを2段階に位置決めする位置決め部を備えたことを特徴とする請求の範囲第5項に記載のスライドスイッチ。
【請求項7】
前記スライダはスライダ本体の下面から突出した凸部を備え、この凸部は、弾性部材によって付勢されており、前記スライダを基板上で摺動自在に支持していることを特徴とする請求の範囲第5項に記載のスライドスイッチ。

【国際公開番号】WO2005/069325
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【発行日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516939(P2005−516939)
【国際出願番号】PCT/JP2004/000231
【国際出願日】平成16年1月15日(2004.1.15)
【出願人】(000114271)ミヤマ電器株式会社 (5)
【Fターム(参考)】