説明

緩衝装置

【課題】緩衝装置を取り付けるために戸板に何ら加工を施す必要がなく且つ外部から見えないように折戸装置に装着することが可能な緩衝装置を提供する。
【解決手段】折戸の一方の戸板12を吊支しているランナー42と共にレール30に沿って走行し且つその走行方向に圧縮され反発するダンパ61と、折戸の閉じ際にダンパ61を当接させるべくレール30に固定して設けられた当接体65とを備えている。ダンパ61は、ランナー42に連結されるダンパ本体62と、ダンパ本体62の当接体65に臨む側の端部62aから突出してその走行方向に進退移動するダンパ軸63とを備えている。ダンパ軸63が折戸の閉じ際における所定のタイミングで当接体65に当接しダンパ本体62側に押圧されることによりダンパ61が圧縮され、その反発力が制動力として折戸に作用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シンクキャビネットや吊り戸棚等の建具或いは食器棚、書棚等の家具などに装備される折戸装置に関し、特に、折戸を閉める際の戸板相互の急激な回動を制動する緩衝装置に関する。
【背景技術】
【0002】
折戸は、少なくとも二つの戸板を備え、相隣り合う戸板同士を蝶番を介して互いに水平方向に回動自在に連結するとともに、戸板の上端部をその上方に敷かれたレールにランナーを介して移動自在に支持することにより、戸板相互が回動しながら開閉する構造になっている。
【0003】
このように折戸は戸板相互が回動しながら開閉する構造上、閉めた時に戸板が左右の戸枠に当接するとともに戸板相互の木口面同士が当接する。このため折戸を閉めた際に戸板が最後まで急激に回動すると大きな衝撃音や振動が発生する。この衝撃が折戸や戸枠に繰り返し加わることが部品の損傷や劣化を早める原因となる。また一旦最後まで閉まった戸板が衝撃により跳ね返り、戸板相互が折れ曲がった姿態で半閉まり状態になるという折戸特有の問題もある。この種の問題を解決するには、折戸を閉める際の戸板相互の急激な回動を緩衝装置で制動することが有効である。
【0004】
従来、戸板の閉め際における急激な回動を制動する緩衝装置として、蝶番を介して戸板(扉)を取り付けた戸枠(框)の内側側面部に、戸板(扉)の木口面に当接して戸板(扉)の回動を制動する力を及ぼすダンパを埋設したものが知られている。この種のダンパは、戸枠(框)に埋設されたシリンダ内に、戸枠(框)の内側側面から出没するピストンとこれを常時突出させる側に付勢する復元ばねとを備え、戸板(扉)の極閉め際に戸板(扉)の木口面がピストンに当接し、復元ばねの反発力に抗してピストンが押されることにより、復元ばねの反発力をピストンを介して戸板(扉)に作用させる。(特許文献1、2)
【特許文献1】実開昭53−16661号公報
【特許文献2】実開昭59−111279号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の緩衝装置を折戸に取り付けるためには、ダンパを埋設するための取付穴を戸板に形成する必要があるため、緩衝装置を取り付けるために戸板に別途穴加工などを施さなければならない。従来の緩衝装置は、折戸を開いたときなどに戸板の木口面などから緩衝装置が露出することになり、折戸の美観を損ねるという欠点もある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、緩衝装置を取り付けるために戸板に何ら加工を施す必要がなく、外部から見えないように折戸装置に装着することが可能な緩衝装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、一対の戸板を互いに水平回動自在に連結してなる折戸をその折戸の上方に敷かれたレールにランナーを介して移動自在に連結してなる折戸装置において、折戸の閉じ際における戸板相互の急激な回動を制動する緩衝装置であって、前記ランナーと共に前記レールに沿って走行し且つその走行方向に圧縮され反発するダンパと、折戸の閉じ際に前記ダンパを当接させるべく前記レールに固定して設けられた当接体とを備え、前記ダンパは、前記ランナーに連結されるダンパ本体と、ダンパ本体の前記当接体に臨む側の端部から突出してその走行方向に進退移動するダンパ軸とを備え、前記ダンパ軸が折戸の閉じ際における所定のタイミングで前記当接体に当接し前記ダンパ本体側に押圧されることにより前記ダンパが圧縮されるように構成されていることを特徴としている。
【0008】
本発明の緩衝装置において、前記ダンパ本体は、前記レールに折戸を取付けた後の折戸の初期動作時に前記ランナーの上端部と係合し離脱不能に連結されるランナー連結部を有していることが望ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、緩衝装置を取り付けるために戸板に何ら加工を施す必要がなく、外部から見えないように折戸装置に装着することが可能な緩衝装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
[第1の形態例]
図1(a)は本発明に係る緩衝装置を備えた折戸装置の構成例を示す背面図である。図1(b)は図1(a)の折戸装置をA−A線に沿って切断した断面を示す断面図である。
図2は図1に示す折戸装置の要部を拡大して示した斜視図である。図3は図1に示す折戸装置の要部を拡大して示した分解斜視図である。
【0011】
折戸装置1は、左右一対の戸板11、12を蝶番21、22、23により互いに水平方向に回動自在に連結してなる折戸10と、折戸10の上方に敷かれたレール30と、折戸10をレール30に吊り下げた状態でレール30に沿って移動自在に支持しているランナー41、42と、レール30が取り付けられた戸枠50と、折戸10の閉じ際における戸板11、12相互の急激な回動を制動すべく装備された緩衝装置60とを備えている。蝶番21、22、23は、折戸用の蝶番として広く用いられている公知の蝶番である。蝶番21、22、23は、いわゆるキャッチ機構を備えており、折戸10を閉じる際に両戸板11、12相互間の角度が略125度以上になると、そのキャッチ機構が作動して、折戸10を強制的に全閉状態に誘導する。緩衝装置60はレール30に取り付けられている。
【0012】
レール30は、断面形状が下向きに開いた略C字形のレールであり、その下部の前後方向(奥行き方向)中央には、その長手方向全長に亘ってガイドスリット31が形成されている。
【0013】
ランナー41、42は、戸板11、12の上端部に埋設された中空円筒構造の基部43と、基部43に支持されて戸板11、12の上端面より突出した円柱形状の軸部44と、軸部44の上端近傍に設けられたヘッド部45とからなり、ヘッド部45がレール本体31の底部内面に係合した状態で摺動し、軸部44がガイドスリット31に案内されて軸回りに回転しつつ移動することにより、折戸10をレール30に吊り下げた状態で開閉動作可能に支持している。この例では、一方(戸先側)のランナー42のみ移動可能とし、他方(吊り元側)のランナー41は、移動しないようにレール本体32の端部近傍に保持されている。
【0014】
基部43は、軸部44を上下動可能に支持している。基部43内には、軸部44を常時上方に付勢しつつ弾力的に支えている図示しない弾性体(ばね)が設けられている。軸部44は、基部43の上端部に形成された貫通孔46に挿通されている。軸部44の下端には、図示しない環状のフランジ部が形成されており、このフランジ部が基部43の上端内面に係合することにより、基部43からの軸部44の抜けが防止されている。ヘッド部45は、軸部44の上端近傍に離脱しないように環装された円環状の摺動部材47からなる。軸部44の上端部44aは摺動部材47よりも上方に突出している。
【0015】
緩衝装置60は、戸先側のランナー42と共にレール30に沿って走行し且つその走行方向に圧縮され反発するダンパ61と、折戸10の閉じ際にダンパ61を当接させるべくレール30に固定して設けられた当接体65とを備えている。
【0016】
ダンパ61は、ランナー42に連結されるダンパ本体62と、ダンパ本体62の当接体65に臨む側の端部62aから突出してその走行方向に進退移動するダンパ軸63とを備えている。
【0017】
当接体65は、レール30内に設けられた立方体形状の部材である。当接体65には、これを上下に貫通する螺子挿通孔65aが形成されている。当接体65は、その螺子挿通孔65aに下方から挿入された螺子66によりレール30の天井部に締着して固定されている。折戸10の閉じ際における所定のタイミングで、この当接体65にダンパ軸63が当接しダンパ本体62側に押圧されることによりダンパ60が圧縮されるようになっている。
【0018】
ダンパ本体62は、レール30に折戸10を取付けた後の折戸10の初期動作時にランナー42の上端部44aと係合し離脱不能に連結されるランナー連結部62bを有している。ランナー連結部62bは、ダンパ本体62のダンパ軸63が突出している側とは反対側の端(基端)62cの近傍の底板部分にこれを貫通させて形成された貫通孔からなる。ダンパ本体62の基端62cとランナー連結部62bとの間は傾斜面62dになっており、レール30に折戸10を取付けた後の折戸10の初期動作時に、ランナー42の軸部44がこの傾斜面62dに案内されて一旦下降しランナー連結部62bに到達した時点で上昇することにより、軸部44の上端部44aがランナー連結部62bに挿入された状態で係合するようになっている。
【0019】
図4は折戸装置1の開閉時における一連の状態を示す部分平面図である。図4において、(a)は折戸10が全開の状態であり、この状態から折戸10を閉める際、(b)の状態を経て、(c)の状態すなわち折戸10の折曲角度が略125度になった時点で、蝶番21、22、23のキャッチ機構が作動し、その働きにより折戸10が強制的に(d)の状態すなわち全閉状態まで誘導される。その際、蝶番21、22、23のキャッチ機構の作動開始後から折戸10が全閉状態になるまでの間の所定のタイミングで、ダンパ61による制動力が効き始める。これにより、折戸10は閉め際における両戸板11、12相互の急激な回動が制動されつつ、全閉状態まで静かに誘導される。
【0020】
上記のように、この緩衝装置60は、折戸10の上方に敷かれたレール30内に設置されるので、緩衝装置60を取り付けるために戸板11、12に何ら加工を施す必要がない。折戸装置1の外部から見えないように設置できるので、折戸装置1の意匠を損なわないようにして折戸装置1に装着することができる。
【0021】
また、この緩衝装置60は、レール30に折戸10を取付けた後の折戸10の初期動作時に、ダンパ61にランナー42が離脱不能に連結されるように構成されているので、緩衝装置60をレール30に取り付けた後、折戸10をレール30に取り付け、折戸10を閉じる動作(初期動作)を行うという手順で、緩衝装置60を備えた折戸装置1を容易に組み立てることができる。
【0022】
なお、ランナー連結部62bをダンパ本体62の底板部分に形成された貫通孔で構成した例について説明したが、これに限らず、たとえばダンパ本体62にその基端62cから先端側に延びるスリット状のランナー受入れ部を形成し、そのランナー受入れ部内にランナー42と離脱不能に係合する機構からなるランナー連結部を設けてもよい。
【0023】
なお、上記の例では、上荷重式の折戸装置について説明したが、本発明の緩衝装置は下荷重式の折戸装置に装備しても有効に機能する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(a)は本発明に係る緩衝装置を備えた折戸装置の構成例を示す背面図(b)は(a)の折戸装置をA−A線に沿って切断した断面を示す断面図
【図2】図1に示す折戸装置の要部を拡大して示した斜視図
【図3】図1に示す折戸装置の要部を拡大して示した分解斜視図
【図4】図1に示す折戸装置の開閉時における一連の状態を示す部分平面図
【符号の説明】
【0025】
1 折戸装置
10 折戸
11 戸板
12 戸板
21、22、23 蝶番
30 レール
41、42 ランナー
60 緩衝装置
61 ダンパ
62a 端部
62b ランナー連結部
62d 傾斜面(案内面)
63 ダンパ軸
65 当接体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の戸板を互いに水平回動自在に連結してなる折戸をその折戸の上方に敷かれたレールにランナーを介して移動自在に連結してなる折戸装置において、折戸の閉じ際における戸板相互の急激な回動を制動する緩衝装置であって、
前記ランナーと共に前記レールに沿って走行し且つその走行方向に圧縮され反発するダンパと、
折戸の閉じ際に前記ダンパを当接させるべく前記レールに固定して設けられた当接体とを備え、
前記ダンパは、
前記ランナーに連結されるダンパ本体と、
ダンパ本体の前記当接体に臨む側の端部から突出してその走行方向に進退移動するダンパ軸とを備え、
前記ダンパ軸が折戸の閉じ際における所定のタイミングで前記当接体に当接し前記ダンパ本体側に押圧されることにより前記ダンパが圧縮されるように構成されている緩衝装置。
【請求項2】
前記ダンパ本体は、
前記レールに折戸を取付けた後の折戸の初期動作時に前記ランナーの上端部と係合し離脱不能に連結されるランナー連結部を有している請求項1の緩衝装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−248599(P2008−248599A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−92301(P2007−92301)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000137959)株式会社ムラコシ精工 (92)
【Fターム(参考)】