説明

繊維の多い野菜のフライ食品の製造方法

【課題】 食べ易さと野菜の素材感を有しながらも、工業的に安定生産できる野菜フライ品を提供する。
【解決手段】 繊維の多い野菜を茹でる処理と、長径15mm〜50mmに切断する処理を行う前処理工程、長径15〜50mmに切断され茹でられた野菜を、長径10mm以下の野菜小片を含むつなぎで連結し成型する成型工程、成型した野菜とつなぎをフライ調理する加熱工程を施すことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維の多い野菜のフライ食品の製造方法に関し、更に詳しくは、素材自体の形状を保ちながら、繊維感(筋っぽさ)を低減した食べやすい食感を有する経済性・美観性に優れたフライ食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、野菜加工品の品質を高める為に、その外観や食感を向上する技術について研究が行われてきた。例えば、野菜を用いたフライ製品を製造する際に、ブランチングの工程、ブランチングする溶液の配合について工夫を行うことにより、野菜本来の食感を維持するという技術や(特許文献1)、食感の硬い野菜については、酵素組成物等処理することにより、柔らかい食感を演出することで、食べやすい野菜加工食品を製造するという技術がある(特許文献2)。
【0003】
しかしながら、繊維が多い野菜(オクラ、アスパラ、ピーマン、エンドウ等)において、繊維部分のみを柔らかくすることは難しく、加熱や酵素組成物等による処理により葉肉部は柔らかくなるが、相対的に繊維部は固いままなので、これらの工夫だけでは、より噛み切りが難しく、食べにくくなる問題があり、且つ、上述の処理をしてしまっては、特に葉肉部の野菜本来の食感が損なわれてしまうという欠点があった。
【0004】
また、一般に健康イメージが低いフライ品において、素材そのものの形状を呈したままで作られる野菜フライは、その形状から強く野菜の素材感を惹起される為、特有の価値観を有している。一方で、素材形状を保ったまま工業的に生産すると、形状が一定とならず、且つそれに由来する生産性の低さが問題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開2002/080690パンフレット
【特許文献2】特表2007−525144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
よって本発明が解決しようとしている課題は、食べ易さと野菜の素材感を有しながらも、工業的に安定生産できる野菜フライ品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を達成するため鋭意検討を行った結果、繊維が多い野菜の本来の姿が惹起できる程度(15mm〜50mm)に大きくカットした断片を少なくとも2つ以上、肉、澱粉等のつなぎ材及び該野菜の端材等から作った小片を含むつなぎで連結し成型することで、大きな断片間の食感を向上させると共に、端材の有効利用を図った。これにより、食べ易さと野菜の素材感を有しながらも、工業的に安定生産できるという知見に至り、本発明を完成したものである。
【0008】
即ち、本発明の第一は、繊維の多い野菜を茹でる処理と、長径15mm〜50mmに切断する処理を行う前処理工程、長径15〜50mmに切断され茹でられた野菜を、長径10mm以下の野菜小片を含むつなぎで連結し成型する成型工程、成型した野菜とつなぎをフライ調理する加熱工程を施すことを特徴とする野菜フライの製造方法である。
【0009】
本発明の第二は、繊維の多い野菜が、オクラ及び/又はピーマンである野菜フライの製造方法である。
本発明の第三は、つなぎに含まれる野菜小片の割合と野菜小片の大きさをグラフにした時、野菜小片の長径10mm以下、かつ野菜小片の割合30%以下であり、長径1mmで20%、長径3mmで5%、長径5mmで3%、長径10mmで1%の各点を直線で結んだ時に囲まれる領域にある野菜フライの製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法により、大きな断片間の食感を向上させると共に、端材を有効に利用することができる。更に、食べ易さと野菜の素材感を有しながらも、工業的に安定生産できる製法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明で用いる繊維が多い野菜とは、野菜には食物繊維が1%以上含まれているもので、具体的にはオクラ、アスパラ、ピーマン、エンドウ等を言い、特にオクラとピーマンが好ましい。
【0012】
これらの野菜の不要物を除去するなどの下処理した後、沸騰したお湯に1分間程度浸漬し、茹でる調理を行う。その後、湯切し、長径15mm〜50mm、好ましくは20mm〜40mmに切断する調理を行う。茹でる調理と切断する調理は順序を逆にしてもよい。切断の大きさについては、目的とする食品やつなぐ数により異なり、適宜選択することができる。長径15mmより小さいと、連結、成型し、野菜の素材感を発現するためには手間がかかるため、生産性が悪く好ましくない。長径50mmより大きいと、繊維感が残り、食べづらい。
【0013】
前処理した野菜を、肉、澱粉等のつなぎ材及び該野菜の端材等から作った小片を含むつなぎで連結し、成型する。つなぎの製法は、肉、魚介のすり身、大豆、澱粉等を一般につなぎとして用いられるつなぎ材に食塩など調味料を加えたものと、野菜の小片を数分間混合したものである。
野菜小片とつなぎ材の混合割合は、つなぎに含まれる野菜小片の割合と野菜小片の大きさをグラフにした時、野菜小片の長径10mm以下、かつ野菜小片の割合30%以下であり、長径1mmで20%、長径3mmで5%、長径5mmで3%、長径10mmで1%の各点を直線で結んだ時に囲まれる領域にあればよい。これらを混合後、所定の形に成型する。成型の方法は、おくらなど切断された野菜の元の形がわかるように並べ前述のつなぎを野菜にそって充填する。野菜は複数並べればよく、切断された野菜の大きさが大きい場合には、2個並べれば充分である場合もある。複数並べる場合、長径の合計が40mm以上であれば素材感がよく、120mmより大きくなると、大きすぎて筋っぽくなるので、好ましくない。
【0014】
成型した野菜とつなぎをフライ調理して野菜フライ食品とする。フライ調理の方法は、サラダ油など食用油と、鍋もしくは自動フライヤーなどの器具を用いて行う。
加熱温度と時間は、150℃〜220℃、1分〜10分の範囲で、野菜フライの形状、大きさに合わせ適宜選択する。
【0015】
以下、本発明について実験例および実施例によって順次説明する。
[実験例]
【0016】
市販のオクラを沸騰したお湯に1分間浸漬し、茹で調理を行った。試料を表1に示す各サイズにカットし、その一片について、食べ易さ、素材感(食感)、素材感(美観)の評価を7名で行った結果を表1に示す。各項目の定義は、
<食べ易さ> 繊維が繋がったり、一部残ったりせずに快適に食べられるか
○:繊維を感じず、食べ易い、△:繊維が少し残り、やや食べづらい、×:繊維が残り食べづらい
<素材感(食感)> 野菜本来が持つ独特の食感、固さであるか
○:オクラの食感を感じる、△:オクラの食感を若干感じる、×:オクラの食感を殆ど感じない
<素材感(美観)> 野菜本来が持つ独特の形状をイメージできる形であるか
○:オクラそのものに見える大きさ、△:オクラの原型が想像できる、×:オクラの原型がわからない
【0017】
【表1】

【0018】
以上の結果から、カットしたオクラ一片では、食べ易さ、素材感(食感)、素材感(美観性)の全てを満たすのは、大変限定されたカットサイズでしか実現できないことが判った。
【実施例】
【0019】
実施例1
大きく切断した野菜断片を連結し、成型するためのつなぎについて、肉、澱粉等のつなぎ材における野菜小片の割合と素材感(食感)の関係を、各カットサイズで評価した。
表2に示す大きさに切断した野菜小片と、つなぎ材として豚肉90%、食塩1%、グルタミン酸ナトリウム1%、醤油8% を混合したものを表2に示す割合で混合し、25gとなるように小分けした後、俵型に成型したものを7分間蒸し調理し、表1の<素材感(食感)>について評価した。
【0020】
【表2】

【0021】
以上の結果から、一片では素材感(食感)がないとされた1mm〜10mmのカットサイズでも、つなぎに一定の割合配合することで、素材感を感じさせ得ることが示された。
【0022】
実施例2
大きく切断した野菜断片をつなぎで1本のフライに連結、成型したときの経済性、素材感(美観性)の関係を、各カットサイズで評価した。
表1と同様な方法で処理した後、表3に示す大きさに切断したオクラに、肉を主体としたつなぎ材(豚肉90%、食塩1%、グルタミン酸ナトリウム1%、醤油8% を混合したもの)を混合し、合計25gとなるように小分けした後、俵型に成型したものを7分間蒸し調理し、表1の<素材感(美観)>と下記の<経済性>を指標に評価した。
<経済性> 工業製品として一定の長さの規格に安定的に生産できるか
○:安定生産可能及びコスト的にも良い △:生産面もしくはコスト面にやや問題あり ×:安定生産不可もしくはコストが高い
【0023】
【表3】

【0024】
以上の結果から、通常のオクラを惹起させる大きさ(40mm〜150mm)に満たないオクラでも2個以上連結させ、長径の合計を40mm〜120mmにすることで経済性もあり、美観性もあるようにすることができることが判明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維の多い野菜を茹でる処理と、長径15mm〜50mmに切断する処理を行う前処理工程、長径15〜50mmに切断され茹でられた野菜を、長径10mm以下の野菜小片を含むつなぎで連結し成型する成型工程、成型した野菜とつなぎをフライ調理する加熱工程を施すことを特徴とする野菜フライの製造方法。
【請求項2】
繊維の多い野菜が、オクラ及び/又はピーマンであることを特徴とする請求項1に記載の野菜フライの製造方法。
【請求項3】
つなぎに含まれる野菜小片の割合と野菜小片の大きさをグラフにした時、野菜小片の長径10mm以下、かつ野菜小片の割合30%以下であり、長径1mmで20%、長径3mmで5%、長径5mmで3%、長径10mmで1%の各点を直線で結んだ時に囲まれる領域にあることを特徴とする請求項1に記載の野菜フライの製造方法。