説明

繊維用処理剤

【課題】皮膚刺激性が低減された繊維用処理剤を提供すること。
【解決手段】分子内にアミノ基及び/又はイミノ基を有する、オルガノポリシロキサン及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種のオルガノポリシロキサン系化合物、炭素数が10であるモノアルコールのアルキレンオキサイド付加物からなる群から選択される少なくとも1種の第1のアルキレンオキサイド付加物、並びに、炭素数が16〜22であるモノアルコールのアルキレンオキサイド付加物からなる群から選択される少なくとも1種の第2のアルキレンオキサイド付加物を含むことを特徴とする繊維用処理剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚に対する刺激性が低減された繊維用処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、繊維加工の分野においては、様々なポリオルガノシロキサンやその誘導体を含有する繊維用処理剤が、柔軟性、平滑性又は撥水性等を付与するための処理剤として提供されていた。
【0003】
このような繊維用処理剤は、繊維素材に付着することにより各性能が発揮されているので、衣類等のような皮膚と接触する繊維製品に使用する際には、皮膚刺激性を低減させることが重要である。特に、近年はアトピー体質によるアトピー性皮膚炎に悩む人が増えており、このようにアレルギー体質の人はアレルギー体質でない人よりも衣類等の繊維製品による皮膚障害が多いことから、皮膚刺激性に対しての消費者の要求レベルが高くなっている。
【0004】
従来のポリオルガノシロキサン系の繊維用処理剤として、例えば、特開平8−209543号公報(特許文献1)には、繊維に撥水性、離形性、耐熱性等の独特の感触を付与することのできる繊維用処理剤として、25℃における粘度が50センチストークス以上であるアミノ変性シロキサンを少なくとも50質量%以上含有するシリコーン油剤、ジカルボン酸のモノエステルとノニオン界面活性剤からなる乳化剤、及び、アミノカルボン酸物質を含む組成物が開示されており、明細書中において、ノニオン界面活性剤として、具体的にノニルフェノールのエチレンオキサイド付加物を用いることが記載されている。しかしながら、このような組成物については、皮膚刺激性は特に検討されていないうえに、ノニルフェノールのエチレンオキサイド付加物は内分泌攪乱物質、いわゆる環境ホルモン物質に該当すると言われている。
【0005】
また、特開2006−9220号公報(特許文献2)には、合成繊維に洗濯耐久性に優れる柔軟風合いを付与する柔軟処理剤として、アミノ変性ポリシロキサンを少なくとも70質量%以上含有するシリコーン、高級脂肪族アルコールの酸化アルキレン付加物およびβ−アラニンを含有する水性エマルジョン型柔軟処理剤が開示されている。しかしながら、このような柔軟処理剤においても皮膚刺激性についての検討が十分ではなく、このような柔軟処理剤は皮膚刺激性の点で未だ十分なものではなかった。
【特許文献1】特開平8−209543号公報
【特許文献2】特開2006−9220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、皮膚刺激性が低減された繊維用処理剤、とりわけ柔軟剤として利用される繊維用処理剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
繊維加工の分野では一般的に、カチオン性を示す化合物は皮膚刺激性が高いことが知られている。そして、分子内にアミノ基及び/又はイミノ基を有するオルガノポリシロキサン及びその誘導体は、液性を弱酸性とした時に安定性が優れているが、これは、アミノ基及び/又はイミノ基が酸によってわずかにカチオン化することに起因しており、その結果として皮膚刺激性が高いと考えられてきた。
【0008】
しかしながら、本発明者らは、従来は皮膚刺激性が高くなる要因として注視されていなかった、オルガノポリシロキサン及びその誘導体を乳化するための界面活性剤等によっても皮膚刺激性が大きく変化することを突き止めた。そして、本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、オルガノポリシロキサン及びその誘導体を含有する繊維用処理剤において、特定のアルキレンオキサイド付加物を組み合わせて用いることにより、繊維用処理剤の皮膚刺激性を低減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の繊維用処理剤は、分子内にアミノ基及び/又はイミノ基を有する、オルガノポリシロキサン及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種のオルガノポリシロキサン系化合物、炭素数が10であるモノアルコールのアルキレンオキサイド付加物からなる群から選択される少なくとも1種の第1のアルキレンオキサイド付加物、並びに、炭素数が16〜22であるモノアルコールのアルキレンオキサイド付加物からなる群から選択される少なくとも1種の第2のアルキレンオキサイド付加物を含むことを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の繊維用処理剤においては、前記オルガノポリシロキサン系化合物中のアミノ基及びイミノ基由来の窒素原子の含有量が0.01〜3質量%の範囲であることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明の繊維用処理剤においては、前記第1のアルキレンオキサイド付加物が、炭素数が10であるモノアルコールのエチレンオキサイド付加物であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、皮膚刺激性が低減された繊維用処理剤を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0014】
本発明の繊維用処理剤は、分子内にアミノ基及び/又はイミノ基を有する、オルガノポリシロキサン及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種のオルガノポリシロキサン系化合物、炭素数が10であるモノアルコールのアルキレンオキサイド付加物からなる群から選択される少なくとも1種の第1のアルキレンオキサイド付加物、並びに、炭素数が16〜22であるモノアルコールのアルキレンオキサイド付加物からなる群から選択される少なくとも1種の第2のアルキレンオキサイド付加物を含むものである。
【0015】
本発明にかかるオルガノポリシロキサン系化合物は、分子内にアミノ基及び/又はイミノ基を有する、オルガノポリシロキサン及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である。そして、本発明において用いられる、分子内にアミノ基及び/又はイミノ基を有するオルガノポリシロキサンとしては、従来公知のものを特に制限なく使用することができ、例えば、アミノプロピル基(−CHCHCHNH)等のアミノアルキル基、N−(β−アミノエチル)アミノプロピル基(−CHCHCHNHCHCHNH)等の置換基を、側鎖又は末端に有するオルガノポリシロキサンが挙げられる。また、例えば、特開2007−56396号公報に記載されたように、さらにポリオキシエチレン鎖やポリオキシプロピレン鎖等のポリエーテル鎖を、主鎖又は側鎖に導入したポリエーテル変性オルガノポリシロキサンを用いることもできる。
【0016】
このようなオルガノポリシロキサンは、市販されているものを用いてもよいし、従来公知の方法、例えば、「有機合成化学協会誌」(1982年、社団法人有機合成化学協会発行)第40巻第6号、575〜581頁に記載された方法により合成したものを用いてもよい。
【0017】
本発明において用いられる、分子内にアミノ基及び/又はイミノ基を有するオルガノポリシロキサンの誘導体は、前記オルガノポリシロキサンと、オルガノポリシロキサンのアミノ基及び/又はイミノ基と反応し得る化合物とを反応させたものをいい、例えば、特開57−101076号公報、特開平1−306683号公報、特開2−47371号公報、特開平6−184946号公報、特開9−21071号公報、特開平9−143885号公報、特開2007−46171号公報に記載されたように、前記オルガノポリシロキサンのアミノ基及び/又はイミノ基の一部を、モノカルボン酸、モノカルボン酸無水物、モノカルボン酸塩化物、ジカルボン酸、環状酸無水物、アルキレンカーボネート化合物、エポキシ化合物、及びアミド基含有エーテルカルボン酸からなる群から選択される少なくとも1種のものと反応させて得られる化合物を挙げることができる。
【0018】
本発明にかかるオルガノポリシロキサン系化合物においては、化合物中のアミノ基及び/又はイミノ基に由来する窒素原子の含有量が合計で0.01〜3.0質量%の範囲であることが好ましい。アミノ基及び/又はイミノ基に由来する窒素原子の含有量が0.01%未満では柔軟性が劣る傾向にあり、他方、3.0質量%を超えると、繊維加工における加熱処理や乾燥時に、或いは、熱、光、NOxガスやSOxガス等により経時で、繊維製品の着色や変色といった問題が生じる場合がある。したがって、特に白物や淡色系の繊維製品に対して本発明の繊維用処理剤を使用する場合は、アミノ基及び/又はイミノ基に由来する窒素原子の含有量が1.0質量%以下であることが好ましい。
【0019】
本発明にかかる第1のアルキレンオキサイド付加物とは、炭素数が10であるモノアルコールのアルキレンオキサイド付加物のことをいう。また、本発明にかかる第2のアルキレンオキサイド付加物とは、炭素数が16〜22であるモノアルコールのアルキレンオキサイド付加物のことをいう。このような第1及び第2のアルキレンオキサイド付加物におけるアルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドが挙げられる。また、このようなアルキレンオキサイドの付加形態は、1種のアルキレンオキサイドの単独付加、2種以上のアルキレンオキサイドのブロック付加又はランダム付加のいずれでもよいが、皮膚刺激性がより低いという観点からエチレンオキサイドの単独付加であることが好ましい。また、このようなアルキレンオキサイドの付加モル数は、乳化性が良好であり、皮膚刺激性も低いという観点から、3〜20モルの範囲であることが好ましい。
【0020】
本発明にかかる第1のアルキレンオキサイド付加物においては、炭素数が10であるモノアルコールは、直鎖状又は分岐鎖を有するアルコールのいずれでもよく、飽和又は不飽和のアルコールのいずれでもよいが、乳化性がより優れているという観点から、分岐鎖を有するアルコールであることが好ましい。また、繊維用処理剤の着色や繊維製品の黄変等の問題が好ましくない場合には、飽和の脂肪族アルコールを用いることが好ましい。このような脂肪族アルコールの中でも、乳化性が良好であり、皮膚刺激性がより低いという観点からイソデカノールが特に好ましい。
【0021】
本発明にかかる第2のアルキレンオキサイド付加物においては、炭素数が16〜22であるモノアルコールは、直鎖状アルコール又は分岐鎖を有するアルコールのいずれでもよく、飽和又は不飽和のアルコールのいずれであってもよいが、繊維用処理剤の着色や繊維製品の黄変等の問題を望まない場合には、飽和のアルコールを用いることが好ましい。また、乳化性及び皮膚刺激性の観点から、このようなモノアルコールの炭素数は16〜18であることが好ましい。
【0022】
なお、本発明の繊維用処理剤においては、皮膚刺激性の観点から、前記第1及び第2のアルキレンオキサイド付加物以外のモノアルコールのアルキレンオキサイド付加物を使用しないことが好ましい。すなわち、炭素数9以下のモノアルコールの場合は、前記オルガノポリシロキサン及びその誘導体の乳化性が劣るばかりでなく皮膚刺激性の低減が不十分であり、また、炭素数11〜15のモノアルコールの場合は、乳化性は良好であるものの皮膚刺激性の低減が不十分であることから、本発明の繊維用処理剤の効果を阻害しない程度の量であれば添加することができるが、皮膚刺激性の観点からは使用しないほうが好ましい。
【0023】
本発明の繊維用処理剤は、以上説明したようなオルガノポリシロキサン系化合物、第1のアルキレンオキサイド付加物、及び第2のアルキレンオキサイド付加物を含むものである。そして、本発明においては、前記オルガノポリシロキサン系化合物を、前記第1のアルキレンオキサイド付加物と、前記第2のアルキレンオキサイド付加物とを併用して乳化することにより、乳化安定性が極めて優れ、また皮膚刺激性も十分に低減された繊維用処理剤を得ることができる。
【0024】
本発明の繊維用処理剤においては、前記第1及び第2のアルキレンオキサイド付加物の合計の添加量が、前記オルガノポリシロキサン系化合物100質量部に対して、1〜100質量部の範囲であることが好ましく、3〜80質量部の範囲であることがより好ましい。添加量が前記下限未満では、乳化安定性が劣る傾向にあり、他方、前記上限を超えると、得られる繊維製品の風合(柔軟性)が不十分となる傾向にある。
【0025】
また、前記オルガノポリシロキサン系化合物の乳化性がより良好であり、皮膚刺激性も低いという観点から、前記第1のアルキレンオキサイド付加物と前記第2のアルキレンオキサイド付加物との配合割合(第1のアルキレンオキサイド付加物:第2のアルキレンオキサイド付加物)が、質量比で10:90〜90:10の範囲であることが好ましい。
【0026】
本発明の繊維用処理剤の製造方法としては、前記オルガノポリシロキサン系化合物を乳化分散させる、従来公知の方法を適用することができる。このような繊維用処理剤の製造方法としては、例えば、(i)前記各成分を加熱混合し、攪拌しながら、水、温水又は熱水を徐々に加えることによって乳化する方法;(ii)前記各成分を加熱混合し、攪拌しながら、少量の熱水を徐々に加えることによって乳化した後に、この乳化物を大量の水中に添加することにより乳化する方法が挙げられる。なお、繊維用処理剤の製造中又は製造後に、溶媒として、低級アルコール、グリコール類、アセトン等の水系有機溶剤を適宜添加することができる。
【0027】
本発明の繊維用処理剤を付与できる繊維製品の素材としては、特に制限されないが、綿、麻、羊毛、絹等の天然繊維;ポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリオレフィン等の合成繊維;アセテート等の半合成繊維;レーヨン等の再生繊維及びこれらの複合繊維を挙げることができる。また、繊維製品の形態についても特に制限されず、糸、織物、編物、不織布等が挙げられる。
【0028】
本発明の繊維用処理剤を繊維製品に付与する方法についても特に制限されず、従来公知のパディング処理法、浸漬処理法、スプレー処理法等が適用できる。その処理浴の濃度は、例えば、パディング処理やスプレー処理の場合は、前記オルガノポリシロキサン系化合物の濃度が0.01〜10質量%の範囲であることが好ましく、浸漬処理の場合は、前記オルガノポリシロキサン系化合物の濃度が0.01〜10%o.w.f.の範囲であることが好ましい。また、繊維用処理剤の繊維製品への付着量は、繊維製品の素材や使用目的等に応じて適宜調整すればよいが、前記オルガノポリシロキサン系化合物の付着量が0.01〜3質量%の範囲となるように付与することが好ましい。
【実施例】
【0029】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例で用いたオルガノシロキサン系化合物に含まれる、アミノ基及びイミノ基由来の窒素原子の含有量は、次の方法にしたがって測定した。すなわち、試料(オルガノポリシロキサン系化合物)を1g精秤し、これをイソプロパノール50mLに溶解した。この溶液を、ブロムフェノールブルー指示薬を用いて、0.1Nの塩酸エタノール溶液で滴定し、溶液の青色が黄色となった点を終点とした。0.1Nの塩酸エタノール溶液の滴定量に基づいて、下記関係式により、窒素原子の含有量を算出した。
窒素原子の含有量(質量%)=滴定量(mL)×F×0.14÷試料量(g)
(式中、Fは0.1N塩酸エタノール溶液のファクターを示す。)。
【0030】
<界面活性剤の合成>
(合成例1)
加熱装置のついた耐圧容器に、イソデカノール395g(2.5mol)及び水酸化カリウム2gを添加し、窒素雰囲気とした。これを120℃に昇温し、エチレンオキサイド550g(12.5mol)を添加し150℃で3時間反応させた。その後、反応物を100℃に冷却して、未反応のエチレンオキサイドガスを減圧留去し、さらに80℃に冷却した後、酢酸により中和し、イソデカノールのエチレンオキサイド5モル付加物(イソデカノールのEO5モル付加物)を得た。
【0031】
(合成例2)
合成例1において用いたエチレンオキサイド550gに代えてエチレンオキサイド770g(17.5mol)を用いた以外は合成例1と同様にして、イソデカノールのエチレンオキサイド7モル付加物(イソデカノールのEO7モル付加物)を得た。
【0032】
(合成例3)
合成例1において用いたエチレンオキサイド550gに代えてエチレンオキサイド990g(22.5mol)を用いた以外は合成例1と同様にして、イソデカノールのエチレンオキサイド9モル付加物(イソデカノールのEO9モル付加物)を得た。
【0033】
(合成例4)
加熱装置のついた耐圧容器に、セチルアルコール242g(1mol)及び水酸化カリウム2gを添加し、窒素雰囲気とした。これを120℃に昇温し、エチレンオキサイド352g(8mol)を添加し150℃で3時間反応させた。その後、反応物を100℃に冷却して、未反応のエチレンオキサイドガスを減圧留去し、さらに80℃に冷却した後、酢酸により中和し、セチルアルコールのエチレンオキサイド8モル付加物(セチルアルコールのEO8モル付加物)を得た。
【0034】
(合成例5)
合成例4において用いたエチレンオキサイド352gに代えてエチレンオキサイド440g(10mol)を用いた以外は合成例4と同様にして、セチルアルコールのエチレンオキサイド10モル付加物(セチルアルコールのEO10モル付加物)を得た。
【0035】
(合成例6)
合成例4において用いたエチレンオキサイド352gに代えてエチレンオキサイド572g(13mol)を用いた以外は合成例4と同様にして、セチルアルコールのエチレンオキサイド13モル付加物(セチルアルコールのEO13モル付加物)を得た。
【0036】
(合成例7)
合成例4において用いたエチレンオキサイド352gに代えてエチレンオキサイド880g(20mol)を用いた以外は合成例4と同様にして、セチルアルコールのエチレンオキサイド20モル付加物(セチルアルコールのEO20モル付加物)を得た。
【0037】
(合成例8)
合成例7において用いたセチルアルコールに代えてステアリルアルコール269g(1mol)を用いた以外は合成例7と同様にして、ステアリルアルコールのエチレンオキサイド20モル付加物(ステアリルアルコールのEO20モル付加物)を得た。
【0038】
(合成例9)
加熱装置のついた耐圧容器に、2−エチルヘキシルアルコール325g(2.5mol)及び水酸化カリウム2gを添加し、窒素雰囲気とした。これを120℃に昇温し、エチレンオキサイド440g(10mol)を添加し150℃で3時間反応させた。その後、反応物を100℃に冷却して、未反応のエチレンオキサイドガスを減圧留去し、さらに80℃に冷却した後、酢酸により中和し、2−エチルヘキシルアルコールのエチレンオキサイド4モル付加物(2−エチルヘキシルアルコールのEO4モル付加物)を得た。
【0039】
(合成例10)
合成例9において用いたエチレンオキサイド440gに代えてエチレンオキサイド660g(15mol)を用いた以外は合成例9と同様にして、2−エチルヘキシルアルコールのエチレンオキサイド6モル付加物(2−エチルヘキシルアルコールのEO6モル付加物)を得た。
【0040】
(合成例11)
合成例9において用いたエチレンオキサイド440gに代えてエチレンオキサイド880g(20mol)を用いた以外は合成例9と同様にして、2−エチルヘキシルアルコールのエチレンオキサイド8モル付加物(2−エチルヘキシルアルコールのEO8モル付加物)を得た。
【0041】
(合成例12)
加熱装置のついた耐圧容器に、ラウリルアルコール372g(2mol)及び水酸化カリウム2gを添加し、窒素雰囲気とした。これを120℃に昇温し、エチレンオキサイド528g(12mol)を添加し150℃で3時間反応させた。その後、反応物を100℃に冷却して、未反応のエチレンオキサイドガスを減圧留去し、さらに80℃に冷却した後、酢酸により中和し、ラウリルアルコールのエチレンオキサイド6モル付加物(ラウリルアルコールのEO6モル付加物)を得た。
【0042】
(合成例13)
合成例12において用いたエチレンオキサイド528gに代えてエチレンオキサイド704g(16mol)を用いた以外は合成例12と同様にして、ラウリルアルコールのエチレンオキサイド8モル付加物(ラウリルアルコールのEO8モル付加物)を得た。
【0043】
(合成例14)
合成例12において用いたエチレンオキサイド528gに代えてエチレンオキサイド880g(20mol)を用いた以外は合成例12と同様にして、ラウリルアルコールのエチレンオキサイド10モル付加物(ラウリルアルコールのEO10モル付加物)を得た。
【0044】
<繊維用処理剤の調製>
(実施例1)
下記一般式[1]で表されるアミノ基及びイミノ基を有するオルガノポリシロキサンA(アミノ基及びイミノ基由来の窒素原子の含有量:0.7質量%、粘度:1200mm/s)10gに、合成例1で得られたイソデカノールのエチレンオキサイド5モル付加物2g、合成例5で得られたセチルアルコールのエチレンオキサイド10モル付加物1g及び合成例6で得られたセチルアルコールのエチレンオキサイド13モル付加物0.5gを添加し、50℃で攪拌し混合した後に、攪拌しながら60℃の温水を徐々に添加して乳化分散させ、総量を100gとし、繊維用処理剤を調製した。
【0045】
【化1】

【0046】
(実施例2)
先ず、実施例1で用いたオルガノポリシロキサンA115gとプロピレンカーボネート7gとを100℃で1時間反応させ、アミノ基及び/又はイミノ基を有するオルガノポリシロキサン誘導体B(アミノ基及びイミノ基由来の窒素原子の含有量:0.5質量%)を得た。
【0047】
次に、得られたオルガノポリシロキサン誘導体Bを10gに、合成例2で得られたイソデカノールのエチレンオキサイド7モル付加物0.5g、合成例4で得られたセチルアルコールのエチレンオキサイド8モル付加物2g及び合成例5で得られたセチルアルコールのエチレンオキサイド10モル付加物0.5gを添加し、50℃で攪拌し混合した後に、攪拌しながら60℃の温水を徐々に添加して乳化分散させ、総量を100gとし、繊維用処理剤を調製した。
【0048】
(実施例3)
先ず、実施例1で用いたオルガノポリシロキサンA115gと無水酢酸4.5gとを100℃で1時間反応させて、アミノ基及び/又はイミノ基を有するオルガノポリシロキサン誘導体C(アミノ基及びイミノ基由来の窒素原子の含有量:0.4質量%)を得た。
【0049】
次に、得られたオルガノポリシロキサン誘導体Cを10gに、合成例1で得られたイソデカノールのエチレンオキサイド5モル付加物2.5g、合成例2で得られたイソデカノールのエチレンオキサイド7モル付加物0.5g、及び合成例6で得られたセチルアルコールのエチレンオキサイド13モル付加物0.5gを添加し、50℃で攪拌し混合した後に、攪拌しながら60℃の温水を徐々に添加して乳化分散させ、総量を100gとし、繊維用処理剤を調製した。
【0050】
(実施例4)
下記一般式[2]で表されるアミノ基及びイミノ基を有するオルガノポリシロキサンD(アミノ基及びイミノ基由来の窒素原子の含有量:2.3質量%、粘度:1300mm/s)10gに、合成例1で得られたイソデカノールのエチレンオキサイド5モル付加物1.5g、合成例5で得られたセチルアルコールのエチレンオキサイド10モル付加物1.5g及び合成例6で得られたセチルアルコールのエチレンオキサイド13モル付加物1.5gを添加し、50℃で攪拌し混合した後に、攪拌しながら60℃の温水を徐々に添加して乳化分散させ、総量を100gとし、繊維用処理剤を調製した。
【0051】
【化2】

【0052】
(実施例5)
下記一般式[3]で表されるアミノ基及びイミノ基を有するオルガノポリシロキサンE(アミノ基及びイミノ基由来の窒素原子の含有量:0.4質量%、粘度:1300mm/s)10gに、合成例1で得られたイソデカノールのエチレンオキサイド5モル付加物1.5g、合成例2で得られたイソデカノールのエチレンオキサイド7モル付加物1.5g、合成例3で得られたイソデカノールのエチレンオキサイド9モル付加物1g及び合成例7で得られたセチルアルコールのエチレンオキサイド20モル付加物0.5gを添加し、50℃で攪拌し混合した後に、攪拌しながら60℃の温水を徐々に添加して乳化分散させ、総量を100gとし、繊維用処理剤を調製した。
【0053】
【化3】

【0054】
(実施例6)
合成例7で得られたセチルアルコールのエチレンオキサイド20モル付加物0.5gに代えて合成例8で得られたステアリルアルコールのエチレンオキサイド20モル付加物0.5gを用いた以外は実施例5と同様にして繊維用処理剤を調製した。
【0055】
(比較例1)
実施例2で用いたオルガノポリシロキサン誘導体Bを10gに、合成例9で得られた2−エチルヘキシルアルコールのエチレンオキサイド4モル付加物1.5g、合成例10で得られた2−エチルヘキシルアルコールのエチレンオキサイド6モル付加物1.5g、及び、合成例11で得られた2−エチルヘキシルアルコールのエチレンオキサイド8モル付加物1.5gを添加し、50℃で攪拌し混合した後に、攪拌しながら60℃の温水を徐々に添加して乳化分散させ、総量を100gとし、繊維用処理剤を調製した。
【0056】
(比較例2)
実施例2で用いたオルガノポリシロキサン誘導体Bを10gに、合成例12で得られたラウリルアルコールのエチレンオキサイド6モル付加物1.5g、合成例13で得られたラウリルアルコールのエチレンオキサイド8モル付加物1.5g、及び、合成例14で得られたラウリルアルコールのエチレンオキサイド10モル付加物1.5gを添加し、50℃で攪拌し混合した後に、攪拌しながら60℃の温水を徐々に添加して乳化分散させ、総量を100gとし、繊維用処理剤を調製した。
【0057】
(比較例3)
実施例2で得られたオルガノポリシロキサン誘導体Bを10gに、合成例4で得られたセチルアルコールのエチレンオキサイド8モル付加物3g、合成例5で得られたセチルアルコールのエチレンオキサイド10モル付加物1g、及び、合成例6で得られたセチルアルコールのエチレンオキサイド13モル付加物1gを添加し、50℃で攪拌し混合した後に、攪拌しながら60℃の温水を徐々に添加して乳化分散させ、総量を100gとし、繊維用処理剤を調製した。
【0058】
<繊維用処理剤の評価>
実施例及び比較例で得られた繊維用処理剤について、繊維用処理剤を用いて処理した加工布の風合、白度及び皮膚刺激性、並びに繊維用処理剤の乳化安定性を以下の方法により評価した。
【0059】
(I)加工布の風合、白度及び皮膚刺激性の評価方法
(i)評価用加工布の準備
実施例及び比較例で得られた繊維用処理剤の5質量%水溶液を調製し、これを処理液として用いて、綿ニット布をパディング処理した。このときのピックアップは70質量%とした。その後、綿ニット布を120℃で2分間乾燥し、評価用加工布を得た。
【0060】
(ii)風合の評価方法
得られた加工布の風合を、触感にて評価した。なお、風合の評価は以下の基準に基づいて以下の5段階及びそれぞれの中間位に分類して判定した。
5:非常に柔軟である
4:柔軟である
3:やや柔軟である
2:やや粗硬である
1:粗硬である。
【0061】
(iii)白度の評価方法
得られた加工布のハンター白度を、測色機(ミノルタ株式会社製、製品名「CM−3700d」)を用いて測定した。
【0062】
(iv)皮膚刺激性の評価方法
JIS L 1918(2005)「繊維製品の皮膚一次刺激性試験方法(培養ヒト皮膚モデル法)に記載の方法に準拠して、細胞生存率(%)を求め、下記表1の判定基準に基づいて一次刺激性を分類した。具体的には、24時間貼付試験において、細胞生存率が80.0%以上を示した場合は、加工布の皮膚への一次刺激性を陰性に分類し、50.0%未満を示した場合は陽性に分類した。24時間貼付試験で、細胞生存率が50.0%以上、80.0%未満を示した場合は、さらに、48時間貼付試験を実施し、細胞生存率が50.0%未満であれば弱陽性に分類し、50.0%以上であれば陰性に分類した。培養ヒト皮膚モデルとしてヒドロライフスキン(グンゼ株式会社製)を使用した。
【0063】
【表1】

【0064】
(II)繊維用処理剤の乳化安定性の評価方法
実施例及び比較例の繊維用処理剤の1質量%水溶液を調製し、これをホモミキサー(プライミクス(株)製、モデルM、スペックC)を用いて、6000回転/分の回転速度で5分間攪拌し、その乳化状態の変化(外観)を目視にて評価した。なお、乳化安定性の評価は、以下の基準に基づいて判定した。
◎:非常に優れる。
○:優れる。
△:オイル(オルガノポリシロキサン又はその誘導体)の粒子が見える。
×:オイルが分離する。
【0065】
(III)評価結果
繊維用処理剤を用いて処理した加工布の風合、白度及び皮膚刺激性、並びに繊維用処理剤の乳化安定性を評価した。また、未加工布の風合、白度及び皮膚刺激性を評価した。得られた結果を表2に示す。さらに、実施例及び比較例の繊維用処理剤の組成を表2に示す。
【0066】
【表2】

【0067】
表2に記載した結果からも明らかなように、本発明の繊維用処理剤から得られた加工布は、いずれも、風合や皮膚刺激性(細胞生存率)が良好であることが確認された。また、ハンター白度については、オルガノポリシロキサン中のアミノ基及びイミノ基に由来する窒素原子の含有量が2.3質量%とやや多い実施例4ではやや低いが、白度が要求されない分野への応用に問題はないことが確認された。
【0068】
一方、2−エチルヘキシルアルコールのエチレンオキサイド付加物のみを用いた比較例1の繊維用処理剤においては、繊維用処理剤の乳化安定性があまり良好でなく、また得られた加工布の風合は良好であるものの、細胞生存率が著しく低く、皮膚刺激性が陽性であることが確認された。
【0069】
また、ラウリルアルコールのエチレンオキサイド付加物のみを用いた比較例2、セチルアルコールのエチレンオキサイド付加物のみを用いた比較例3の繊維用処理剤においては、得られた加工布における細胞生存率はやや高く皮膚刺激性は陰性であるが、繊維用処理剤の乳化安定性が著しく不良であることが確認された。また、得られた加工布の風合については、上記の評価によれば本発明の繊維用処理剤から得られた加工布との有意差はなかったものの、触感にムラがあり、品位が多少劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上説明したように、本発明によれば、皮膚刺激性が低減された繊維用処理剤、とりわけ柔軟剤として利用される繊維用処理剤を提供することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内にアミノ基及び/又はイミノ基を有する、オルガノポリシロキサン及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種のオルガノポリシロキサン系化合物、炭素数が10であるモノアルコールのアルキレンオキサイド付加物からなる群から選択される少なくとも1種の第1のアルキレンオキサイド付加物、並びに、炭素数が16〜22であるモノアルコールのアルキレンオキサイド付加物からなる群から選択される少なくとも1種の第2のアルキレンオキサイド付加物を含むことを特徴とする繊維用処理剤。
【請求項2】
前記オルガノポリシロキサン系化合物中のアミノ基及びイミノ基由来の窒素原子の含有量が0.01〜3質量%の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の繊維用処理剤。
【請求項3】
前記第1のアルキレンオキサイド付加物が、炭素数が10であるモノアルコールのエチレンオキサイド付加物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の繊維用処理剤。

【公開番号】特開2009−52155(P2009−52155A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−217865(P2007−217865)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(000226161)日華化学株式会社 (208)
【Fターム(参考)】