説明

置物玩具

【課題】遊泳体を停滞させることなく円滑に遊泳させること。
【解決手段】置物玩具1は、液体20が充填されたケース10と、液体中で遊泳可能な遊泳体30と、ケース内に液体を噴出して流れを引き起こさせる流れ形成手段40と、を備え、流れ形成手段は、複数の異なる方向に液体を噴出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、置物玩具に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を水槽内に流出させる流出口を有する液路をポンプの吐出口に接続し、この流出口を水槽の底部に複数配置し、ポンプを起動させることで水槽内に流れを引き起こして水槽内の遊泳造形体を遊泳させることができる遊泳造形物玩具が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−173650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図9は、特許文献1と同様、水槽の底部から上方に向けて液体を噴出させる構成を示した斜視図であり、図10は、流出口の上方に遊泳造形物がある場合の液体の流れを説明する図である。
図9に示すように、流出口100から水槽101内に流出される液体の流出方向は上方の一方向だけであるため、図10に示すように、流出口100から流出した液体が遊泳造形体102の両側縁を通るような位置に遊泳造形体102がある場合には、液体の流れが両側から遊泳造形体102の移動を妨害してしまい、遊泳造形体102が同じ位置に停滞して水槽101内を遊泳しないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、遊泳体を停滞させることなく円滑に遊泳させることができる置物玩具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、
液体が充填されたケースと、
前記液体中で遊泳可能な遊泳体と、
前記ケース内に前記液体を噴出して流れを引き起こさせる流れ形成手段と、を備える置物玩具において、
前記流れ形成手段は、複数の異なる方向に前記液体を噴出することを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の置物玩具において、
前記流れ形成手段は、前記液体の噴出位置に前記遊泳体がある場合に、前記遊泳体を回避して異なる方向から前記液体を噴出させることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の置物玩具において、
前記流れ形成手段は、前記液体を前記ケースの上方に向けて噴出することを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の置物玩具において、
前記流れ形成手段は、前記ケースの角部に設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の置物玩具において、
前記流れ形成手段は、前記ケースに複数設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の置物玩具において、
前記流れ形成手段は、
前記液体を前記ケース内に押し出す押出部と、
前記押出部により押し出された前記液体を噴出する噴出溝と、を備え、
前記噴出溝は、開口面方向が交差する複数の噴出開口部を有することを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の置物玩具において、
前記噴出溝は、
前記ケースの底部に形成され、前記ケースの上方に向けて前記液体を噴出する第1の噴出開口部と、
前記ケースの側壁部に形成され、前記ケースの側方に向けて前記液体を噴出する第2の噴出開口部と、を有し、
前記第1の噴出開口部と前記第2の噴出開口部は互いに連通されていることを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の置物玩具において、
前記流れ形成手段は、
前記液体を前記ケース内に押し出す押出部と、
前記押出部により押し出された前記液体を開口軸線方向に噴出する複数の噴出口と、を備え、
前記複数の噴出口の少なくとも一部は、前記液体の噴出方向が他の噴出口と異なることを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の発明は、請求項6〜8のいずれか一項に記載の置物玩具において、
前記押出部は、内部が前記ケース内に連通され、外力を加えることで縮んで前記液体を押し出し、加えた外力を解放することで前記液体が流入して元の状態に戻るベローズ部材であることを特徴とする。
【0015】
請求項10に記載の発明は、請求項6〜8のいずれか一項に記載の置物玩具において、
前記押出部は、前記ケース内に連通され、前記ケース内に前記液体を噴出するポンプと、
前記ポンプを駆動させる駆動源と、
を備えることを特徴とする。
【0016】
請求項11に記載の発明は、請求項1〜10のいずれか一項に記載の置物玩具において、
前記ケースを支持し、底部が平面状に形成された基台を備えることを特徴とする。
【0017】
請求項12に記載の発明は、請求項1〜11のいずれか一項に記載の置物玩具において、
前記ケースの少なくとも一部は、レンチキュラーレンズであることを特徴とする。
【0018】
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の置物玩具において、
前記レンチキュラーレンズは、一方向に直線状に延びる凸レンズを一定のピッチで配置することにより構成され、
前記遊泳体には絵柄が形成され、当該絵柄は前記一定のピッチでインターレース状に複数の絵柄部分で構成されていることを特徴とする。
【0019】
請求項14に記載の発明は、請求項13に記載の置物玩具において、
前記遊泳体の表面には、変化の前後に亘る絵柄が複数形成され、この複数の絵柄の間では、互いに、前記絵柄部分の位相がずらしてあることを特徴とする。
【0020】
請求項15に記載の発明は、請求項13又は14に記載の置物玩具において、
前記遊泳体は、静止する前記液体中に置かれた場合に、前記絵柄部分の並び方向が上下方向となるように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に記載の発明によれば、流れ形成手段は、複数の異なる方向から液体を噴出させるので、流れ形成手段による液体の一方向の流れのみによって押されることがなくなり、遊泳体が停滞することもなくなる。よって、ケース内で遊泳体を円滑に遊泳させることができる。
【0022】
請求項2に記載の発明によれば、液体の噴出位置に遊泳体がある場合に、遊泳体を回避して異なる方向から液体を噴出させるので、流れ形成手段による液体の噴出部位に遊泳体がある場合においても、遊泳体は異なる方向に押されることになるので、遊泳体が停滞しなくなる。よって、ケース内で遊泳体を円滑に遊泳させることができる。
【0023】
請求項3に記載の発明によれば、流れ形成手段は、液体を前記ケースの上方に向けて噴出するため、遊泳体が自重によりケースの底に沈んできた場合には、その遊泳体を液体の流れによって下方から上方に向けて押すことで、再び遊泳させることができる。
【0024】
請求項4に記載の発明によれば、流れ形成手段は、ケースの角部に設けられているので、ケースの底面と壁面を利用して異なる方向から液体を噴出することができる。
【0025】
請求項5に記載の発明によれば、流れ形成手段は、ケースに複数設けられているので、ケース内に遊泳体を複数遊泳させた場合であっても、いずれかの流れ形成手段により遊泳体を遊泳させることができる。
よって、ケースの底に停滞する遊泳体を減らすことができる。
【0026】
請求項6に記載の発明によれば、開口面方向が交差する複数の噴出開口部からは、異なる方向に液体が噴出されるので、遊泳体は異なる方向に押されることになり、遊泳体が停滞しなくなる。よって、ケース内で遊泳体を円滑に遊泳させることができる。
【0027】
請求項7に記載の発明によれば、噴射溝の第1の噴出開口部から噴出された液体は遊泳体の下側をケースの上方に向けて押し、噴射溝の第2の噴出開口部から噴出された液体は遊泳体の左側又は右側をケースの側方に向けて押すことになる。
これにより、遊泳体は異なる方向に押されることになるので、遊泳体が停滞しなくなる。よって、ケース内で遊泳体を円滑に遊泳させることができる。
【0028】
請求項8に記載の発明によれば、一部の噴射口からの液体の噴出方向が他の噴射口と異なるので、遊泳体は異なる方向に押されることになり、遊泳体が停滞しなくなる。よって、ケース内で遊泳体を円滑に遊泳させることができる。
【0029】
請求項9に記載の発明によれば、押出部をベローズ部材とすることで、人の操作で遊泳体を遊泳させることができ、簡単に遊ぶことができる。
また、ケース内で液体の流れを引き起こすためにポンプ等の機械的な機構を用いる必要がなくなるので、軽量化、コスト低減を図ることができる。
【0030】
請求項10に記載の発明によれば、押出部はポンプと駆動源を備えることで、人が操作しなくても遊泳体を遊泳させることができる。従って、置物玩具を見て楽しむオブジェとして使用する際に有用である。
【0031】
請求項11に記載の発明によれば、基台を備えることにより、ケースを安定した状態で設置することができ、置物玩具を見て楽しむオブジェとして使用する際に有用である。
【0032】
請求項12に記載の発明によれば、ケースの少なくとも一部は、レンチキュラーレンズであるため、遊泳体が液体中で遊泳したとき、レンチキュラーレンズを通して見る絵柄は、刻々変化することになる。よって、形態変化に富むとともに、意外性のある形態変化を行う置物玩具が実現できることになる。
【0033】
請求項13に記載の発明によれば、レンチキュラーレンズの凸レンズの延在方向と、絵柄部分の延在方向とが合致する時には、視覚上で、絵柄が消失したり、出現したりする。また、凸レンズの延在方向と、絵柄部分の延在方向とが合致しない時には、視覚上で、崩れた絵柄が出現する。すなわち、遊泳体が液体中で方向性なく遊泳した際には、視覚上で、絵柄が突然崩れたり、出現したり、消失したりする。この順番は遊泳体の遊泳状況によって変化する。
よって、形態変化に富むとともに、意外性のある形態変化を行う置物玩具が実現できることになる。
なお、複数の遊泳体に同一絵柄を担持させておくことも可能である。この場合、視覚上で消失した絵柄が突然他の場所から出現したり、同時に同じ絵柄が見え隠れしたりするので、さらに、全体としての形態変化の意外性が増すことになる。
【0034】
請求項14に記載の発明によれば、レンチキュラーレンズの凸レンズの延在方向と、絵柄部分の延在方向とが合致している状態で、凸レンズの延在方向と直交する方向に遊泳体が移動すると、レンチキュラーレンズを通して見た絵柄は2つの絵柄の間で交互に変化する。
【0035】
請求項15に記載の発明によれば、遊泳体の姿勢が比較的に安定し、レンチキュラーレンズの凸レンズの延在方向と、絵柄部分の延在方向とが合致する方向に遊動体は姿勢調節されるので、絵柄が整然と形態変化する確率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】置物玩具の斜視図。
【図2】ケースの一部を側方から見た断面図。
【図3】遊泳体に形成される絵柄を説明するための図であり、(A)は海月の第1の姿態の絵柄、(B)は海月の第2の姿態の絵柄、(C)は第1の姿態の絵柄と第2の姿態の絵柄とを組み合わせた絵柄。
【図4】流れ形成手段の構造を説明するための図であり、(A)は平面図、(B)は正面図。
【図5】噴射部材の正面図。
【図6】流れ形成手段の斜視図。
【図7】液体の噴出方向を説明する図。
【図8】流れ形成手段の他の形態を示す斜視図。
【図9】従来の玩具における液体の流れを形成する構造を示す斜視図。
【図10】従来の玩具における液体の噴出方向を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明に係る置物玩具の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
<置物玩具の構成>
図1、図2に示すように、置物玩具1は、ケース10と、ケース10に充填された液体20(図2参照)と、ケース10内に設置され液体20中で遊泳可能な遊泳体30と、液体20の流れを引き起こさせる流れ形成手段40と、ケース10を支持する基台50とを備えている。
【0038】
(ケース、基台)
ケース10は扁平な箱状に形成されており、中空状に形成されている。ケース10の中空内部には、液体20が充填されている。ケース10は基台50に起立状態で支持されている。すなわち、ケース10は、大きな面(主面)が正面を向き且つ奥行き寸法が小さくなるように、基台50に支持されている。この場合の奥行き寸法は、遊泳体30が前後に倒れない程度とすることが好ましい。
基台50は、底部が平面状に形成されており、構造物の上面に載置することができるようになっている。置物玩具1を遊ぶためだけでなく、置物としても用いることができる。
ケース10の少なくとも前壁11は、ガラス又はアクリル樹脂等からなる透明板から構成されている。全ての壁が透明板で構成されていてもよいし、前壁11の一部が透明となっていてもよい。
【0039】
ケース10の前壁11の表面には、レンチキュラーレンズ11aが形成されている。レンチキュラーレンズ11aは、一方向に直線状に延びるシリンドリカル状の細長い凸レンズを一定のピッチで並設して構成されるものである。置物玩具1の場合、レンチキュラーレンズ11aは、細長い凸レンズが上下方向に一定のピッチで並ぶように前壁11の表面に形成されている。このレンチキュラーレンズ11aの形成にあたっては、ケース10の前壁11と一体にレンチキュラーレンズ11aを成型してもよいし、前壁11の基体にレンチキュラーレンズ11aを形成したシートを貼り付けてもよい。また、レンチキュラーレンズ11aは、ケース10の前壁11の表面全域に形成されている必要はなく、その一部であっても良い。
【0040】
ケース10の後壁12の内側には、遊泳体30の遊泳場所の背景を構成する海底の絵柄13、例えば岩や海草の絵柄が形成されている。この絵柄13の形成にあたっては、ケース10の後壁12の内面に絵柄13を直接描いてもよいし、絵柄13が予め描かれたシートを後壁12の内面に貼り付けてもよいし、また、絵柄13が予め描かれた板を後壁12の前に設置してもよい。さらには、ケース10の後壁12も透明板とし、その後面に絵柄13を形成してもよい。
ケース10の上壁には、液体20の給排口が形成され、この給排口にはキャップ14が着脱自在に装着されている。
【0041】
(液体)
液体20としては、中に入れられた遊泳体30を視認することができるよう、透明な液体であることが必要である。具体的には、液体20は、水,油等である。液体20には興趣性を向上させるために着色しても良いが、遊泳体30をケース10の外側から視認できるよう、液体20に混ぜても濁らない透明な染料を用いることが必要である。
【0042】
(遊泳体)
遊泳体30は、例えば、円形又は楕円形の合成樹脂製の平板によって形成されている。この遊泳体30は、他の平面的形状であってもよいし、立体形象物であってもよい。
遊泳体30は、後述する「海月(くらげ)」の絵柄31を担持している。この絵柄31は、遊泳体30の表面に絵柄31を直接描いたものでもよいし、絵柄31が予め描かれたシートを遊泳体30の表面に貼り付けたものであってもよい。或いは、遊泳体30を前後2枚の平板を貼り合わせることによって形成し、このうち前側の平板を透明とし、その2枚の平板の間で絵柄31を挟み込んだものであってもよい。さらには、絵柄31は、遊泳体30を透明板とし、その後面に形成したものであってもよい。
遊泳体30は、液体20よりも僅かに大きい比重であり、液体20中に入れた際に自然状態では沈下し、液流がある場合には液体20の中を遊泳する程度の比重を有することが好ましい。
遊泳体30は、図2に示すように、遊泳時に姿勢が傾かないよう、前壁11と後壁12の内側の距離よりわずかに小さい程度の幅とすることが好ましい。具体的には、前壁11と後壁12の内側の距離を5mmとすると、遊泳体30の幅を4.5mm程度にすることが好ましい。
また、遊泳体30は、静止する液体20中に置かれた場合に、後述の短冊状絵柄部分の並び方向が上下方向となるように、形状及び重心位置が調整されている。この場合、必要があれば、遊泳体30に重りを設けてもよい。
【0043】
続いて、遊泳体30が担持する絵柄31について説明する。
遊泳体30が担持する絵柄31は、縦方向に伸びた「海月」の姿態を示すストライプ状の絵柄31a(図3(A))と、縦方向に縮んだ「海月」の姿態を示すストライプ状の絵柄31b(図3(B))とを一部重ね合わせるようにして合成した絵柄となっている。
まず、絵柄31aについて説明すれば、絵柄31aは、図3(A)に示すように、短冊状絵柄部分を、レンチキュラーレンズ11aの凸レンズの並設ピッチと同じピッチでインターレース状に並設することによって形成されている。同様に、絵柄31bは、図3(B)に示すように、短冊状絵柄部分を、凸レンズの並設ピッチと同じピッチでインターレース状に並設することによって形成されている。そして、この2つの絵柄31a,31bをピッチの1/2だけ位相がずれるようにして一部重ね合わせた状態で合成することによって、絵柄31(図3(C))を形成している。
なお、ここでは1つの遊泳体30に2つのストライプ状の絵柄31a,31bを形成したが、3つ以上のストライプ状の絵柄を形成してもよい。この場合、3つ以上のストライプ状の絵柄を形成する場合には、全てのストライプ状の絵柄の短冊状絵柄部分の並設ピッチを同じにするとともに、重ね合わせ数をNとした場合、1/Nピッチずつ位相をずらすように、ストライプ状の絵柄を形成することが好ましい。このようにして3つ以上のストライプ状の絵柄を形成する場合には、2つの場合と比較して、絵柄の変化の過程をより繊細に表現できることになる。
【0044】
(流れ形成手段)
図1、図4〜図6に示すように、流れ形成手段40は、複数の異なる方向に液体20を噴射するように構成されている。流れ形成手段40は、液体20の噴出位置に遊泳体30がある場合に、遊泳体30を回避して異なる方向から液体20を噴出させる。具体的には、流れ形成手段40は、上方に遊泳体30がいない場合には、ケース10の底面から上方に向けて液体20を噴出するが、上方に遊泳体30がいる場合には、遊泳体30を回避し、遊泳体30の下側以外からも液体20を噴出する。すなわち、遊泳体30が上方に存在する場合には、複数の方向から液体20を噴出することで、遊泳体30を停滞させることなく遊泳させる。
【0045】
流れ形成手段40は、ケース10の角部に設けられている。具体的には、流れ形成手段40は、ケース10の底部と左側の壁部とにわたって設けられていると共に、ケース10の底部と右側の壁部とにわたって設けられている。なお、流れ形成手段40の数はいくつあっても良く、ケース10の大きさや形状に合わせて設けると良い。遊泳体30を複数設ける場合には、遊泳体30がケース10の底部に停滞しないよう、流れ形成手段40も複数設けることが好ましい。また、流れ形成手段40を複数設けることで、互いに引き起こされた流れがぶつかって複雑な流れを形成するので、遊泳体30のリアルな遊泳を鑑賞することができる。
【0046】
流れ形成手段40は、基台50の前壁に付設された押出部としてのベローズ部材41と、基台50からケース10の底壁15及び側壁16にかけて設けられた噴出部材42と、を備えている。
ベローズ部材41の基端側は基台50に取り付けられている。このベローズ部材41の基端側は、パイプ43の一端に連結され、このパイプ43の他端は噴出部材42に連結されている。
噴出部材42は、下端が基台50内に収容され、上端が二股に分岐するように形成されている。噴出部材42は、ケース10の底壁15の一部をなすように形成され、ケース10の上方に向けて液体20を噴出する第1の噴出開口部44と、ケース10の側壁16の一部をなすように形成され、ケース10の対向する側方に向けて液体20を噴出する第2の噴出開口部45と、を備えている。第1の噴出開口部44と第2の噴出開口部45は、それぞれの壁部に沿って延びる溝状に形成されている。第1の噴出開口部44と第2の噴出開口部45は、互いに連通されており、互いの開口面方向が交差(より具体的には直交)するように形成されている。これにより、ベローズ部材41から押し出された液体20は、複数の異なる方向に流れることとなる。従って、第1の噴出開口部44と第2の噴出開口部45とで噴出溝が形成される。
【0047】
なお、遊泳体30の幅が4.5mm程度の場合、噴射溝を構成する第1の噴出開口部44と第2の噴出開口部45の幅は、遊泳体30が挟まらないよう、共に3〜4mm程度にすることが好ましい。また、遊泳体30の高さ及び幅が30mm程度である場合、噴射溝を構成する第1の噴出開口部44と第2の噴出開口部45の長さについても、遊泳体30を上方に向けて遊泳させるために30mm程度にすることが好ましい。
噴出部材42は、内部に第1の噴出開口部44と第2の噴出開口部45に連通する流路部46を備えており、この流路部46はパイプ43に連通されている。
【0048】
これによって、ベローズ部材41の内部とケース10の内部が噴出部材42及びパイプ43を介して連通され、ベローズ部材41の内部はケース10に充填された液体20で満たされることになる。その結果、外力を加えてベローズ部材41を縮めることによって、ベローズ部材41から液体20が押し出され、パイプ43から噴出部材42を介してケース10に液体20が噴出されることとなり、ケース10内の液体20に流れを生じさせることができる。また、縮んだベローズ部材41に加えた外力を解放することにより、液体20が一時的にベローズ部材41内に流れてベローズ部材41が元の状態に戻る。この際にも、ケース10内の液体20に流れを生じさせることができる。
なお、液体20を循環させる方式に代えて、ベローズ部材41によって空気を噴出させる方式を採用することも可能である。
【0049】
<置物玩具での遊び方>
次に、置物玩具1での遊び方を説明する。
この置物玩具1は、常態では、ケース10の液体20がベローズ部材41に流入した状態にある。この状態で、ベローズ部材41を縮めると、図7に示すように、ベローズ部材41内の液体20がケース10内に噴出する。これによって、ケース10内の液体20に流れが発生し、この液体20の流れによって遊泳体30が液体20の中で遊泳する。また、縮んだベローズ41から手を離すと一時的にベローズ部材41に向けて液体20が逆流する。したがって、ケース10内には複雑な液体20の流れが生じ、遊泳体30の動作は複雑となる。
【0050】
この場合、レンチキュラーレンズ11aを通して遊泳体30の絵柄31を観察すると、レンチキュラーレンズ11aの凸レンズの延在方向と短冊状絵柄部分の延在方向とが合致したまま、凸レンズの延在方向と直交する方向(上下方向)に遊泳体30が移動した場合には、上下方向に伸びた「海月」の絵柄(図3(A)参照)と、上下方向に縮んだ「海月」の絵柄(図3(B)参照)とが選択的に見えることになる。この場合には、「海月」が伸縮しているイメージが醸し出される。
また、凸レンズの延在方向と短冊状絵柄部分の延在方向とが合致しない場合には、「海月」とは判別できないような崩れた絵柄が見えることになる。また、この崩れた絵柄の出現後に、凸レンズの延在方向と短冊状絵柄部分の延在方向とが合致した場合には、上下方向に伸びた「海月」の絵柄(図3(A)参照)又は上下方向に縮んだ「海月」の絵柄(図3(B)参照)が出現する。この場合には、「海月」の誕生のイメージが醸し出される。
【0051】
<作用・効果>
以上のように、置物玩具1によれば、噴射部材42の第1の噴出開口部44から噴出された液体20は遊泳体30の下側をケース10の上方に向けて押し、噴射部材42の第2の噴出開口部45から噴出された液体20は遊泳体30の左側又は右側をケース10の側方に向けて押すことになる。
これにより、遊泳体30は異なる方向に押されることになるので、遊泳体30は一方向の流れのみによって押されることがなくなり、遊泳体30が停滞しなくなる。よって、ケース10内で遊泳体30を円滑に遊泳させることができる。
【0052】
また、流れ形成手段40は、ケース10の角部に設けられているので、ケース10の底面と壁面を利用して異なる方向から液体を噴出することができる。
また、流れ形成手段40は、ケース10に複数設けられているので、ケース10内に遊泳体30を複数遊泳させた場合であっても、いずれかの流れ形成手段40により遊泳体30を遊泳させることができる。よって、ケース10の底に停滞する遊泳体30を減らすことができる。
【0053】
また、流れを引き起こすための操作部材としてベローズ部材41とすることで、人の操作で遊泳体30を遊泳させることができ、簡単に遊ぶことができる。
また、ケース10内で液体20の流れを引き起こすためにポンプ等の機械的な機構を用いる必要がなくなるので、軽量化、コスト低減を図ることができる。
【0054】
また、ケース10を支持する基台50を備えることにより、ケース10を安定した状態で設置することができ、置物玩具1を見て楽しむオブジェとして使用する際に有用である。
【0055】
また、ケース10の少なくとも一部は、レンチキュラーレンズ11aであるため、遊泳体30が液体20中で遊泳したとき、レンチキュラーレンズ11aを通して見る絵柄31は、刻々変化することになる。よって、形態変化に富むとともに、意外性のある形態変化を行う置物玩具1が実現できることになる。
【0056】
また、レンチキュラーレンズ11aの凸レンズの延在方向と、絵柄部分の延在方向とが合致する時には、視覚上で、絵柄が消失したり、出現したりする。また、凸レンズの延在方向と、絵柄部分の延在方向とが合致しない時には、視覚上で、崩れた絵柄が出現する。すなわち、遊泳体30が液体20中で方向性なく遊泳した際には、視覚上で、絵柄31が突然崩れたり、出現したり、消失したりする。この順番は遊泳体30の遊泳状況によって変化する。
よって、形態変化に富むとともに、意外性のある形態変化を行う置物玩具1が実現できることになる。
なお、複数の遊泳体30に同一絵柄を担持させておくことも可能である。この場合、視覚上で消失した絵柄が突然他の場所から出現したり、同時に同じ絵柄が見え隠れしたりするので、さらに、全体としての形態変化の意外性が増すことになる。
【0057】
また、レンチキュラーレンズ11aの凸レンズの延在方向と、絵柄部分の延在方向とが合致している状態で、凸レンズの延在方向と直交する方向に遊泳体30が移動すると、レンチキュラーレンズ11aを通して見た絵柄は2つの絵柄の間で交互に変化する。
【0058】
また、遊泳体30の姿勢が比較的に安定し、レンチキュラーレンズ11aの凸レンズの延在方向と、絵柄部分の延在方向とが合致する方向に遊動体30は姿勢調節されるので、絵柄31が整然と形態変化する確率を高めることができる。
【0059】
<その他>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではなく、発明の本質的部分を変更しない範囲で種々変形可能である。
例えば、図8に示すように、噴出部材42の第1の噴出開口部44及び第2の噴出開口部45を噴出溝ではなく、液体を開口軸線方向に噴出する複数の噴出孔の集まりで構成してもよい。具体的には、噴出部材42の第1の噴出開口部として複数の噴出孔48を底壁15に沿って形成し、噴出部材42の第2の噴出開口部として複数の噴出孔49を側壁16に沿って形成する。このような構成としても上記実施形態の噴出溝と同様の効果を奏することができる。
【0060】
また、上記実施形態では、押出部としてベローズ部材41を使用しているが、風船状のゴム嚢を使用することもでき、遊泳体30に磁性体を配設して磁力作用によって遊泳体30を遊泳させるようにしてもよい。また、押出部として、ポンプや羽根車又はスクリュ等とモータ(駆動源)を設け、モータによってポンプや羽根車又はスクリュ等を動作させることによって液流を形成するようにしてもよい。このような構成とすれば、人が操作しなくても遊泳体30を遊泳させることができる。従って、置物玩具1を見て楽しむオブジェとして使用する際に有用である。
さらに、単に、ケース10をユーザが振ることによって遊泳体30を移動させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 置物玩具
10 ケース
11a レンチキュラーレンズ
20 液体
30 遊泳体
31 絵柄
40 流れ形成手段
41 ベローズ部材
42 噴出部材
44 第1の噴出開口部
45 第2の噴出開口部
50 基台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が充填されたケースと、
前記液体中で遊泳可能な遊泳体と、
前記ケース内に前記液体を噴出して流れを引き起こさせる流れ形成手段と、を備える置物玩具において、
前記流れ形成手段は、複数の異なる方向に前記液体を噴出することを特徴とする置物玩具。
【請求項2】
前記流れ形成手段は、前記液体の噴出位置に前記遊泳体がある場合に、前記遊泳体を回避して異なる方向から前記液体を噴出させることを特徴とする請求項1に記載の置物玩具。
【請求項3】
前記流れ形成手段は、前記液体を前記ケースの上方に向けて噴出することを特徴とする請求項1又は2に記載の置物玩具。
【請求項4】
前記流れ形成手段は、前記ケースの角部に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の置物玩具。
【請求項5】
前記流れ形成手段は、前記ケースに複数設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の置物玩具。
【請求項6】
前記流れ形成手段は、
前記液体を前記ケース内に押し出す押出部と、
前記押出部により押し出された前記液体を噴出する噴出溝と、を備え、
前記噴出溝は、開口面方向が交差する複数の噴出開口部を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の置物玩具。
【請求項7】
前記噴出溝は、
前記ケースの底部に形成され、前記ケースの上方に向けて前記液体を噴出する第1の噴出開口部と、
前記ケースの側壁部に形成され、前記ケースの側方に向けて前記液体を噴出する第2の噴出開口部と、を有し、
前記第1の噴出開口部と前記第2の噴出開口部は互いに連通されていることを特徴とする請求項6に記載の置物玩具。
【請求項8】
前記流れ形成手段は、
前記液体を前記ケース内に押し出す押出部と、
前記押出部により押し出された前記液体を開口軸線方向に噴出する複数の噴出口と、を備え、
前記複数の噴出口の少なくとも一部は、前記液体の噴出方向が他の噴出口と異なることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の置物玩具。
【請求項9】
前記押出部は、内部が前記ケース内に連通され、外力を加えることで縮んで前記液体を押し出し、加えた外力を解放することで前記液体が流入して元の状態に戻るベローズ部材であることを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載の置物玩具。
【請求項10】
前記押出部は、前記ケース内に連通され、前記ケース内に前記液体を噴出するポンプと、
前記ポンプを駆動させる駆動源と、
を備えることを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載の置物玩具。
【請求項11】
前記ケースを支持し、底部が平面状に形成された基台を備えることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の置物玩具。
【請求項12】
前記ケースの少なくとも一部は、レンチキュラーレンズであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の置物玩具。
【請求項13】
前記レンチキュラーレンズは、一方向に直線状に延びる凸レンズを一定のピッチで配置することにより構成され、
前記遊泳体には絵柄が形成され、当該絵柄は前記一定のピッチでインターレース状に複数の絵柄部分で構成されていることを特徴とする請求項12に記載の置物玩具。
【請求項14】
前記遊泳体の表面には、変化の前後に亘る絵柄が複数形成され、この複数の絵柄の間では、互いに、前記絵柄部分の位相がずらしてあることを特徴とする請求項13に記載の置物玩具。
【請求項15】
前記遊泳体は、静止する前記液体中に置かれた場合に、前記絵柄部分の並び方向が上下方向となるように構成されていることを特徴とする請求項13又は14に記載の置物玩具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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