美容上適当な運動プログラムの決定方法

【課題】不適当な運動による皮膚の美容状態の悪化を防止するために、美容上適当な運動プログラムの決定方法と、該決定方法を実施するためのキットとを開発する。
【解決手段】本発明は、美容上適当な運動プログラムの決定方法を提供する。前記方法は、(1)被験者に1種類又は2種類以上の運動プログラムを実行させるステップと、(2)ステップ(1)の後、前記被験者から生物学的試料を調製するステップと、(3)前記生物学的試料の抗酸化指標の測定値を定量するステップと、(4)前記測定値にもとづいて運動プログラムを決定するステップとを含む。本発明は、前記測定値を決定するための試薬を含む、本発明の美容上適当な運動プログラムの決定方法を実施するためのキットを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美容上適当な運動プログラムの決定方法と、該決定方法を実施するためのキットとに関する。
【背景技術】
【0002】
適度な運動が、恒常性(ホメオスタシス)の維持や、美容・健康の増進のために有効であることが知られている。実際、適度な運動は、高血圧、肥満、糖尿病等を含む生活習慣病の改善に有効である。しかし、過度な運動は、疲労の蓄積、骨密度の低下、寿命の短縮等を生じさせる。その原因の1つは活性酸素種(ROS)であると考えられている。
【0003】
ROSは、核酸、タンパク質、脂質等の生体成分を非選択的に酸化し、生体の機能や組織・器官の構造に傷害を起こす。皮膚においては、ROSは、皮膚がん、皮膚のアレルギー、皮膚の炎症及び光線過敏性皮膚症のような皮膚疾患の原因とされている(非特許文献1)。また、ROSは皮膚の表皮に作用して、シワ、肌あれ、乾燥等の皮膚の美容状態の悪化の原因となることが知られている。したがって、不適当な運動は、皮膚の美容状態を悪化させるおそれがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Bickers,D.R.及びAthar,M.、J Invest Dermatol.、126:2565(2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、トレーニングを効果的に実施するためのさまざまな方法がある。また、皮膚の美容状態を測定するためのさまざまな方法がある。しかし、美容上適当な運動プログラムを決定するための方法はなかった。そこで、不適当な運動による皮膚の美容状態の悪化を防止するために、美容上適当な運動プログラムの決定方法と、該決定方法を実施するためのキットとを開発する必要がある。
【0006】
本発明者らは、運動習慣を有する被験者から調製された唾液のBAP測定値が、運動習慣を有しない被験者から調製された唾液のBAP測定値と比較して統計学的に有意に高いことを発見した。また、BAP測定値は、体積最大シワ最大深さ及び最大シワ最大深さと統計学的に有意に正の相関を示すことを発見した。そこで、本発明者らは、抗酸化指標の測定値にもとづく美容上適当な運動プログラムの決定方法と、該決定方法を実施するためのキットとに関する本発明を想到した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、美容上適当な運動プログラムの決定方法を提供する。前記方法は、(1)被験者に1種類又は2種類以上の運動プログラムを実行させるステップと、(2)ステップ(1)の後、前記被験者から生物学的試料を調製するステップと、(3)前記生物学的試料の抗酸化指標の測定値を定量するステップと、(4)前記測定値にもとづいて運動プログラムを決定するステップとを含む。
【0008】
本発明の美容上適当な運動プログラムの決定方法は、ステップ(1)の前に被験者から調製された生物学的試料の抗酸化指標の測定値と、ステップ(1)の後に被験者から調製された生物学的試料の抗酸化指標の測定値とを比較するステップを含む場合がある。
【0009】
本発明の美容上適当な運動プログラムの決定方法において、前記運動プログラムは、ウォーキング、ジョギング、ランニング、水中ウォーキング、水泳、サイクリング、エアロビクス、トレッキング及びウェイトトレーニングからなるグループから構成される場合がある。
【0010】
本発明の美容上適当な運動プログラムの決定方法において、前記生物学的試料は、唾液及び/又は血液の場合がある。
【0011】
本発明の美容上適当な運動プログラムの決定方法において、前記測定値は、抗酸化能(PAO)測定値又は生物学的抗酸化能(BAP)測定値の場合がある。
【0012】
本発明の美容上適当な運動プログラムの決定方法は、シワ形成を防止するために用いられる場合がある。
【0013】
本発明は、前記測定値を決定するための試薬を含む、本発明の美容上適当な運動プログラムの決定方法を実施するためのキットを提供する。
【0014】
本明細書における「被験者」は女性であることが典型的であるが、男性であってもかまわない。
【0015】
本発明における「運動プログラム」とは、運動の実行プランをいい、該運動は、例えば、ウォーキング、ジョギング、ランニング、水中ウォーキング、水泳、サイクリング、エアロビクス、トレッキング及びウェイトトレーニングを含むがこれらに限定されない。前記運動プログラムにおける運動の種類、時間、強度、頻度等は、被験者の性別、年齢、運動能力、美容・健康状態、生活習慣、食習慣、化粧習慣等を考慮して被験者に応じて加重又は軽減される場合がある。前記運動の強度は、心拍数、酸素摂取量、拳上重量等にもとづいて当業者に周知な方法で算出される場合がある。前記運動プログラムは、1週間あたり1回又は2回以上実行される場合がある。前記運動プログラムは、1日あたり1回又は2回以上実行される場合がある。
【0016】
前記運動プログラムの実行の前及び後に、柔軟体操が行われる場合がある前記運動プログラムは、屋外で実行されてもかまわないし、屋内で実行されてもかまわない。前記運動プログラムの実行の前、実施中又は実施後に、抗酸化物質(還元型コエンザイムQ10等)を含むサプリメントが摂取される場合がある。
【0017】
ある実施態様では、前記運動プログラムは、平均脈拍数130〜160拍/分でのジョギング30分間〜60分間の場合がある。
【0018】
ある実施態様では、前記運動プログラムは、水中ウォーキング30分間〜60分間の場合がある。
【0019】
ある実施態様では、前記運動プログラムは、水泳30分間〜60分間の場合がある。前記水泳の泳法は、クロール、バタフライ、平泳ぎ及び背泳ぎから選択される場合がある。前記水泳の速度は、25m又は50mを一定の間隔で連続して泳ぐことができる速度であることが好ましい。
【0020】
ある実施態様では、前記運動プログラムはエアロビクスのステップの組み合わせの場合があり、該エアロビクスのステップは、マーチ、ウォーキング、サイドステップ、Vステップ、レッグカール、ニーアップ、ランジアップ、グレープバイン、ホッピング、ジャンプ及びペンジュラムを含むがこれらに限定されない。
【0021】
ある実施態様では、前記運動プログラムは、例えば、ウォーキング、ジョギング、ランニング、水中ウォーキング、水泳、サイクリング、エアロビクス、トレッキング及びウェイトトレーニングを含むがこれらに限定されない運動の組み合わせの場合がある。
【0022】
本発明における「生物学的試料」とは、被験者から調製された細胞、組織、体液をいい、例えば、唾液、血液及び尿を含むがこれらに限定されない。前記生物学的試料は、採血、採尿、生検等を含む当業者に標準的な方法で調製される場合がある。前記生物学的試料は凍結保存される場合がある。血液は唾液の代替試料として利用できる生物学的試料である(例えば、Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics、第11版、Laurence L Bruntonら編、11、599、643、994頁と、Ishikawa,Y.ら、J Pharmacol Sci.、100:495(2006)と、脇田慎一ら、ぶんせき 6:309(2004)とを参照せよ。)。前記唾液及び尿は、運動の前後を問わず、非侵襲的かつ容易に採取することができるため、被験者の身体的負担の観点から有用である。
【0023】
本発明における「抗酸化指標」とは、生物学的試料に含まれる抗酸化物質の還元能として、CUPRAC法、DPPH法、FRAP法、ORAC法、TRAP法等を用いて決定される測定値をいい、例えば、抗酸化能(PAO)測定値及び生物学的抗酸化能(BAP)測定値を含むがこれらに限定されない。本発明の抗酸化指標の測定値を決定するステップでは、商業的に入手可能な機器(例えば、マイクロプレートリーダー)、試薬、キット等が用いられる場合がある。前記PAO測定値は、例えば、抗酸化能測定キット「PAO」(日研ザイル株式会社 日本老化制御研究所)を用いて決定できる。前記BAP測定値は、例えば、フリーラジカル自動分析装置(FRAS4、ウイスマー研究所/株式会社ウイスマー)と、専用試薬(BAPテスト:生化学自動分析装置用試薬、DI−102、ウイスマー研究所/株式会社ウイスマー)とを用いて決定できる。前記BAP測定値は、三価鉄イオンから二価鉄イオンへの還元反応にともなう、試験試薬の色の変化を光度計で測定することによって決定される。簡潔には、前記試験試薬は、チオシアン酸塩誘導物を含む溶液に三価鉄塩を溶解することによって調製される。前記試験試薬と前記生物学的試料とが接触されると、該試験試薬に含まれる三価鉄イオンが、前記生物学的試料に含まれる抗酸化物質(例えば、アルブミン、トランスフェリン、ビリルビン、尿酸等)によって二価鉄イオンに還元される。その結果、前記試験試薬は脱色され、この色の変化を利用してBAPが定量される。BAPは、大規模な測定機器を必要とせず、かつ、運動プログラムの実行の前後で簡便に定量できるため、時間、労力、定量の観点から有用である。
【0024】
本発明の決定方法では、運動プログラムの実行後に被験者から調製された生物学的試料の抗酸化指標の測定値が、運動プログラムの実行前に被験者から調製された生物学的試料の抗酸化指標の測定値又は基準値と比較され、美容上適当な運動プログラムが決定される場合がある。前記生物学的試料は、唾液及び/又は血液の場合がある。前記抗酸化指標の測定値は、抗酸化能(PAO)測定値及び/又は生物学的抗酸化能(BAP)測定値の場合がある。前記基準値は、当業者に周知な統計処理によって算出することができる。前記抗酸化指標の測定値は、d−ROMs試験の測定値、8−OHdG生成速度の測定値、CoQ10濃度の測定値を含む他の指標と組み合わされ、美容上適当な運動プログラムが決定される場合がある。
【0025】
運動プログラムの実行後の抗酸化指標の測定値が基準値と比較して高い場合には、実行された運動プログラムは不適当である。前記運動プログラムの運動の種類、時間、強度、頻度等を軽減した運動プログラムが、美容上適当な運動プログラムとして決定される場合がある。
【0026】
運動プログラムの実行後の抗酸化指標の測定値が基準値と同程度の場合には、実行された運動プログラムは適当である。複数の運動プログラムが実行された場合には、抗酸化指標の最小測定値の運動プログラムが、美容上適当な運動プログラムとして決定されることが好ましい。前記運動プログラムの運動の種類、時間、強度、頻度等は加重される場合がある。
【0027】
これまで、抗酸化指標、特にBAP測定値は運動によって増大することが知られている(例えば、長島未央子、体力科学、60:279(2011)、對東俊介ら、第45回日本理学療法学術大会抄録集、O2−017(2010)、及び、Martarelli,D.ら J Sports Med Phys Fitness、49;122(2009)を参照せよ。)。しかし、BAP測定値がシワ指標と正の相関関係を示すことは明らかにされていなかった。したがって、本発明の抗酸化指標の測定値を指標とする美容上適当な運動プログラムの決定方法と、該決定方法を実施するためのキットとは新規発明である。
【0028】
本明細書における「皮膚の美容状態の悪化」とは、シワ、たるみ、ニキビ、吹き出物、くすみ、肌あれ、乾燥を含む皮膚のトラブルの発生及び/又は亢進をいう。
【0029】
本明細書における「シワ」とは、皮膚のトラブルの一種であって、皮表の線状陥没が作り出す紋様が、特定の領域に集中して、かつ、大きさ及び配列の不規則性をもって存在する状態をいう。
【0030】
本明細書における「シワ指標」とは、日本香粧品学会の化粧品機能評価ガイドライン(日本香粧品学会誌、30:316(2006))に従って定量された測定値をいい、例えば、シワ面積率、総シワ平均深さ、最大シワ平均深さ、最大シワ最大深さ、体積最大シワ最大深さ、及び、シワ総体積を含む。前記シワ指標は、当業者に周知な方法に従って被験者に形成されたシワを測定することによって定量される。前記シワ指標は、被験者から作製されたレプリカを3次元解析法で測定することによって定量される場合がある。
【0031】
抗酸化指標の測定値及びシワ指標の測定値の有意差検定と、抗酸化指標の測定値及びシワ指標の測定値の相関分析とは、当業者に周知な統計処理を用いて行うことができる。
【0032】
本発明のキットには、抗酸化指標の測定値を定量するための試薬を含む場合がある。前記試薬は、AAPH(2,2’−azo−bis(2−amidinopropane)dihydrochloride)、ABAP(2,2’−azobis(2−amidinopropane))、三価鉄塩、二価銅塩、及び、DPPH(1,1−diphenyl−2−picryl−hydrazyl)を含むがこれらに限定されない。本発明のキットには、抗酸化指標の測定値を定量するための固体支持体を含む場合がある。前記固体支持体は、マルチウェルプレート及びマイクロタイタープレートを含むがこれらに限定されない。本発明のキットには、抗酸化指標の測定値を定量するための対照試薬を含む場合がある。前記対照試薬は既知の濃度の抗酸化物質であり、該抗酸化物質は、例えば、アルブミン、トランスフェリン、ビリルビン、尿酸、カロテン及びポリフェノールを含むがこれらに限定されない。
【0033】
本明細書において言及される全ての文献はその全体が引用により本明細書に取り込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】継続的な運動習慣を有する被験者と、継続的な運動習慣を有しない被験者とにおけるBAP測定値を示すグラフ。
【図2】BAP測定値と体積最大シワ最大深さとの相関関係を示すグラフ。
【図3】BAP測定値と最大シワ最大深さとの相関関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に説明する本発明の実施例は例示のみを目的とし、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載によってのみ限定される。本発明の趣旨を逸脱しないことを条件として、本発明の変更、例えば、本発明の構成要件の追加、削除及び置換を行うことができる。
【0036】
以下の実施例に説明される研究は、「ヘルシンキ宣言(2002年10月改定)」、「疫学研究に関する倫理指針(平成14年6月17日文部科学省、厚生労働省)」、「臨床研究に関する倫理指針(平成15年7月30日厚生労働省)」、「実験動物の適正な実施に向けたガイドライン(平成18年6月1日日本学術会議)」、「研究機関における動物実験等の実施に関する基本指針(平成18年6月1日文部科学省)」及び「厚生労働省における動物実験等の実施に関する基本指針(平成18年6月1日厚生労働省)」の趣旨に則り、資生堂リサーチセンターの倫理委員会と、早稲田大学の倫理委員会とによって承認された後に実施された。
【実施例1】
【0037】
1.材料及び方法
1.1 被験者の選定
試験の内容を説明され、試験への協力についての文書による同意を得られた健康な成人女性52人(35歳ないし45歳)が被験者として選定された。前記被験者は、継続的な運動習慣、皮膚・身体の健康状態、生活習慣等が調査された。
【0038】
1.2 調査項目の詳細
1.2.1 継続的な運動習慣
継続的な運動習慣について、被験者の1年あたりの運動日数が調査された。時間及び強度を問うことなしに、ウォーキング、ジョギング又はランニングを実施した日数が、1週間あたり2日(すなわち104日/年)以上の場合に、前記被験者は継続的な運動習慣を有すると判断され、1週間あたり2日(すなわち104日/年)未満の場合に、前記被験者は継続的な運動習慣を有しないと判断された。前記被験者(52人)は、継続的な運動習慣を有する被験者(24人)と、継続的な運動習慣を有しない被験者(28人)とに分けられた。
【0039】
1.2.2 皮膚・身体の健康状態
被験者の皮膚・身体の健康状態は、体調、性周期、体温、身長、体重、体脂肪、内臓脂肪、基礎代謝量及び骨量を含む身体指標、生物学的抗酸化能(BAP)を含む抗酸化指標、シワ面積率、総シワ平均深さ、最大シワ平均深さ、最大シワ最大深さ、体積最大シワ最大深さ、及び、シワ総体積を含むシワ指標、皮膚粘弾性を含むたるみ指標、その他の指標にもとづいて調査された。前記指標は、原則として、恒温恒湿室(温度23°C、湿度50%)で30分間以上馴化された後に調査された。
【0040】
身体指標
簡潔には、体調及び性周期はアンケートによって調査された。体温及び身長それぞれは、市販の体温計及び身長計で測定された。体重、体脂肪、内臓脂肪及び基礎代謝量は市販の体重計で測定された。骨量はAS−100(アロカ株式会社)を用いてインピーダンス法により測定された。
【0041】
抗酸化指標
生物学的抗酸化能(BAP)が、前記被験者から調製された唾液と、フリーラジカル自動分析装置(FRAS4、ウイスマー研究所/株式会社ウイスマー)とを用いて製造者に指示書に従って定量された。簡潔には、試験試薬が、チオシアン酸塩誘導物を含む溶液に三価鉄塩を溶解することによって調製された。前記試験試薬中の三価鉄イオン濃度が前記分析装置で測定された。唾液が被験者から調製され、前記試験試薬に添加された。5分後、前記試験試薬中の三価鉄イオン濃度が前記分析装置で測定された。その後、BAP測定値が、唾液添加前の三価鉄イオン濃度と、唾液添加後の三価鉄イオン濃度とにもとづいて算出された。
【0042】
シワ指標
シワ面積率、総シワ平均深さ、最大シワ平均深さ、最大シワ最大深さ、体積最大シワ最大深さ、及び、シワ総体積は、日本香粧品学会の化粧品機能評価ガイドライン(日本香粧品学会誌、30:316(2006))に従って定量された。前記指標の測定値は、当業者に周知な方法に従って、シワのレプリカが被験者から作製され、自作のシワ解析装置(Wrinkle Analyzer 3D)で前記レプリカを3次元光切断解析法によって測定して定量された。
【0043】
たるみ指標
皮膚粘弾性は、生体皮膚粘弾性測定装置(キュートメーター(Cutometer)Courage+Khazaka electronic GmbH)で測定された。前記キュートメーターは、頬の皮膚を吸引(500mb、2秒間)した後、1秒間開放するサイクルを5回繰り返すよう設定された。
【0044】
その他の指標
肌色は、分光測色計(CM−2600d、コニカミノルタセンシング株式会社)で測定された。ニキビ・吹き出物の有無が目視で判断された。
【0045】
1.2.3 生活習慣
生活習慣について、食、睡眠、美容、化粧等の習慣がアンケートによって調査された。
【0046】
2.結果
2.1 BAP測定値と運動習慣との関係
図1は、継続的な運動習慣を有する被験者と、継続的な運動習慣を有しない被験者とにおけるBAP測定値を示すグラフである。各実験条件の誤差棒は、各実験条件の測定値の標準偏差を示す。p値(p<0.043)はスチューデントt検定で算出した値を示す。継続的な運動習慣を有する被験者のBAP測定値(μmol/L)は、継続的な運動習慣を有しない被験者のBAP測定値(μmol/L)と比較して統計学的に有意に高かった。この実験結果から、継続的な運動習慣を有し、BAP測定値が高い被験者では、活性酸素種(ROS)が運動によって発生し、該ROSの酸化ストレスに対する防御メカニズムが活性化されていることが示唆された。
【0047】
2.2 BAP測定値とシワ指標との相関関係
図2は、BAP測定値と体積最大シワ最大深さとの相関関係を示すグラフである。グラフ中の「y」の記載は一次式を、「r」の記載は相関係数を、「p」の記載は有意確率を示す。図2に示されるとおり、BAP測定値(μmol/L)と体積最大シワ最大深さ(μm)とは統計学的に有意に正の相関を示した。図3は、BAP測定値と最大シワ最大深さとの相関関係を示すグラフである。グラフ中の「y」の記載は一次式を、「r」の記載は相関係数を、「p」の記載は有意確率を示す。図3に示されるとおり、BAP測定値(μmol/L)と最大シワ最大深さ(μm)とは統計学的に有意に正の相関を示した。表1は、継続的な運動習慣があるが、BAP測定値が低い被験者の体積最大シワ最大深さ及び最大シワ最大深さを示す。継続的な運動習慣があっても、BAP測定値が低い被験者では、体積最大シワ最大深さ及び最大シワ最大深さは平均値と比較して低かった。これらの実験結果から、継続的な運動習慣を有し、BAP測定値が高い被験者では、前記酸化ストレスの発生頻度が高いため、皮膚の美容状態の悪化が促進されることが示唆された。また、抗酸化物質を含むサプリメントの摂取が、前記酸化ストレスの発生を抑制し、皮膚の美容状態の悪化を防止するのに有効であることが示唆された。
【0048】
【表1】

【0049】
結論
本実施例の実験結果から、継続的な運動習慣を有する被験者のBAP測定値は、継続的な運動習慣を有しない被験者のBAP測定値と比較して統計学的に有意に高いことが明らかとなった。BAP測定値は、シワ指標、特に体積最大シワ最大深さ及び最大シワ最大深さと正の相関を示すことが明らかとなった。BAP測定値と前記シワ指標とが正の相関を示すため、前記BAP測定値以外の抗酸化指標も前記シワ指標と相関を示すことが示唆された。また、前記抗酸化指標の測定値は、美容上適当な運動プログラムの決定に有用であることが示唆された。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
美容上適当な運動プログラムの決定方法であって、
(1)被験者に1種類又は2種類以上の運動プログラムを実行させるステップと、
(2)ステップ(1)の後、前記被験者から生物学的試料を調製するステップと、
(3)前記生物学的試料の抗酸化指標の測定値を定量するステップと、
(4)前記測定値にもとづいて運動プログラムを決定するステップとを含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
ステップ(1)の前に被験者から調製された生物学的試料の抗酸化指標の測定値と、ステップ(1)の後に被験者から調製された生物学的試料の抗酸化指標の測定値とを比較するステップを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記運動プログラムは、ウォーキング、ジョギング、ランニング、水中ウォーキング、水泳、サイクリング、エアロビクス、トレッキング及びウェイトトレーニングからなるグループから構成されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記生物学的試料は、唾液及び/又は血液であることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
前記測定値は、抗酸化能(PAO)測定値又は生物学的抗酸化能(BAP)測定値であることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
シワ形成を防止するために用いられることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記測定値を決定するための試薬を含む、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の方法を実施するためのキット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−113651(P2013−113651A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258690(P2011−258690)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)
【Fターム(参考)】