説明

美容施術方法並びのそのための理美容機器

【課題】 肌表面の洗浄と補水を行うミスト発生装置を改良し、微細で均一なミストを連続的に噴射可能とすることを課題とする。又、表面のみならず肌内部から補水することにより、肌の乾燥を防ぎ、しなやかでうるおいのある肌を実現し、肌の老化を抑制する。
【解決手段】 少なくともメーク落とし工程、洗浄工程、化粧水適用工程、マッサージ工程からなり、これらの工程をこの順序で適用する美容施術方法であって、洗浄工程が、所定のノズル口径と空気圧とにより微細で均一なミストを噴霧し得る理美容機器を使用した洗浄液のミスト噴霧により、肌表面の洗浄と角質層への補水とを行い、マッサージ工程が、加温手段による肌表面への加温を行う工程を含み、該加温工程によって、肌内部から角質層への補水を行い得るようにしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、肌の改善を図る美容施術方法並びに該方法に適用するに適した肌表面へ補水を行うための理美容器具に関する。
【背景技術】
【0002】
美容上の肌改善手段としては、マッサージ施術や保湿を目的とした化粧品の適用が知られている。マッサージは、肌の血行を調節し、リンパの流れを整え、肌本来の恒常性維持機能を高めることで肌状態を改善するものであり、保湿を目的とした化粧品をマッサージと組み合わせることにより相乗効果が図られている。従来、このようなマッサージと保湿とを組み合わせて肌の改善を図る美容施術方法が提案されており、通常肌表面に塗布された化粧料を落とした後、霧化した水を噴霧して肌表面を洗浄すると共に補水を行い、その後化粧水を塗布して皮膚のマッサージを行う工程を含み、美容院、エステサロン等において実用に供されている。
【0003】
従来公知の美容施術方法において、肌表面の洗浄と補水ためのミスト発生装置は、噴霧ノズルに圧縮空気を水と共に送給してミストを発生させるもの、水を加熱してスチームとして噴射するもの、或いは超音波により霧化させるもの等が知られており、例えば特開2002−125762号公報、実用新案登録第3087095号公報等に開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−125762号公報
【特許文献2】実用新案登録第3087095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来公知の圧縮空気を利用した噴霧ノズルによるミスト発生装置では、充分に微細で均一なミストを発生させることが困難であり、又ミストも連続的ではなく断続的に生じているため、肌表面への洗浄、補水効果が不十分であった。又、従来の美容施術方法では、肌への補水、特に肌表面からと肌内部からの補水を組み合わせた施術ではなかったため、肌の乾燥を防ぎ肌の老化を抑制する効能を十分発揮しうるとは言い得なかった。
【0006】
この発明は、肌表面の洗浄と補水を行うミスト発生装置を改良し、微細で均一なミストを連続的に噴射可能とすることを課題とする。又、表面のみならず肌内部から補水することにより、肌の乾燥を防ぎ、しなやかでうるおいのある肌を実現し、肌の老化を抑制することを他の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の美容施術方法は、少なくともメーク落とし工程、洗浄工程、化粧水適用工程、マッサージ工程からなり、これらの工程をこの順序で適用する美容施術方法であって、洗浄工程が、所定のノズル口径と空気圧とにより微細で均一なミストを噴霧し得る理美容機器を使用した洗浄液のミスト噴霧により、肌表面の洗浄と角質層への補水とを行い、マッサージ工程が、加温手段による肌表面への加温を行う工程を含み、該加温工程によって、肌内部から角質層への補水を行い得るようにしたことを特徴とする。
【0008】
本発明の理美容機器は、ノズル本体のノズル孔内にニードルバルブを挿入してノズル口径を狭小に調整し、所定圧力の空気圧を連続的に送給して微細で均一なミストを噴霧し得るようにしたことを特徴とし、ノズル口径は0.4mmであり、空気圧が0.02〜0.03MPaであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の美容施術方法によれば、肌表面からの補水と、加温による肌内部からの補水とによって、肌に充分な補水を行い、高い肌改善効果を期待することが出来る。又、理美容器具によれば、水又は水に化粧料を混入して液体を微細で均一に霧化して噴出することが出来るので、肌表面への洗浄と補水に優れた効果をもたらすことが出来る。特に、肌への外部からの水分補給効果を向上させることが可能であり、皮膚角質層の水分量を増加させることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
この発明の好ましい実施の形態を、以下に詳細に説明する。この発明のミスト発生用理美容器具は、所要の孔径のノズル孔を有するノズル本体を具備し、該ノズル孔内径をニードルによって効果的かつ調整可能にして、所定の口径に設定すると共に、空気圧を所定の圧力に調整して、微細な粒子のミストの発生を可能にする。又、圧縮空気は連続的に供給されることが必要であり、ミストを連続的に生成可能とする。更にノズル孔には化粧料を供給するための供給口を設けて、洗浄料、保湿剤等の所望の化粧料のミストを混入して供給する。微細で均一なミストを得るために、ノズル口径は0.4mmとし、空気圧は0.02〜0.03MPaとすることが好ましい。この理美容器具によれば、従来のミスト発生装置に比して、より微細で均一な粒子のミストを連続的に安定して供給することが可能となり、肌表面への補水効果を向上させうる。
【0011】
又、この発明の美容施術方法は、メーク落とし工程、洗浄工程、化粧水適用工程、マッサージ工程、拭き取り工程を含み、洗浄工程に前記ミスト発生用理美容器具を適用して肌表面からの補水を行い、マッサージ工程において肌を表面から加温して血管を拡張し、肌内部からの補水を行うことを特徴とし、肌の内外からの補水によって高い肌改善効果を達成するようにした。
【実施例】
【0012】
図1を参照して、この発明にかかる美容施術の工程を説明する。美容施術方法は、メーク落とし工程(1)、洗浄工程(2)、化粧水適用工程(3)、マッサージ工程(4)並びに仕上げ工程(5)からなり、この順序で適用される。メーク落とし工程(1)は、メーク落とし剤を適用する工程(1a)と適用したメーク落とし剤を拭き取る工程(1b)とからなり、メーク落とし剤は従来美容院、エステサロン等において使用されているものから適宜選択することが出来、特に限定されるものではない。
【0013】
洗浄工程(2)は、後述するこの発明のミスト発生用理美容器具(6)を適用した洗浄水のミストによる肌表面の洗浄工程であり(図2参照)、微細で均一でかつ連続した安定的なミストを不織布の上から顔の肌表面に噴射して肌表面を効果的に洗浄すると共に、肌への補水を同時に達成することが出来る。洗浄水には必要に応じて所望の洗浄液或いは美容液等の化粧料が混入される。洗浄液、美容液は特に限定されるものではないが、美容機器専用のものが好ましい。化粧水適用工程(3)は、前行程で適用された洗浄水を拭き取る工程(3a)と化粧水を適用する工程(3b)とからなる。適用する化粧水は、肌の老化と肌の乾燥を防止する高浸透機能を有した化粧水が好ましい。
【0014】
マッサージ工程(4)は、マッサージ用クリームを用いたマッサージ(4a)と、図3に示すようなホットプレート等の加温手段(7)を用いたマッサージ(4b)並びにマッサージ後の肌表面をスチームで保温したタオルで拭き取る拭き取り工程(4c)とからなる。加温手段を用いたマッサージの適用により、肌を表面から加温して血管を拡張させて、皮膚内部から肌への水分補給を高めることが出来る。本発明は、この皮膚内部からの水分補給と、前記洗浄工程(2)における皮膚外部からの水分補給との内外両面からの水分の補給とを特徴とし、これによって肌に充分な補水を達成することが出来、高い肌改善効果を得ることが可能となる。
【0015】
仕上げ工程(5)は、少なくとも一種類の美容液を適用して肌の老化と乾燥を防止し、肌を活性化する機能をもたらすものである。美容液塗布(1)の工程(5a)では、美容機器専用の美容液を噴霧後パッティングして肌になじませる。又、美容液塗布(2)の工程(5b)では、肌の老化につながる肌荒れを防止する高賦活美容液を適用する。その後フィニッシング(5c)を行って完了する。尚、この仕上げ工程(5)は、顧客の要望や、肌の状態に応じて適宜採用される工程であり、必須の工程ではない。
【0016】
図4、5を参照して、前記洗浄工程に使用されるミスト発生用理美容機器(6)を詳細に説明する。該理美容機器(6)は、ノズル孔(11)を穿孔した噴霧ノズル本体(10)からなり、ノズル孔(11)には、化粧料を供給するための化粧料供給孔(12)と、圧縮空気を供給するエア供給孔(13)が形成される。ノズル孔(11)内には、ニードルバルブ(14)が挿入され、ノズル孔、特にその先端部の内径を狭小にして噴出されるミストの粒子を微細化している。エア供給孔(13)には、リニアコンプレッサー(15)が圧力調整弁(16)を介して連結されており、生成された圧縮空気をノズル孔(11)に送給する。リニアコンプレッサー(15)は、圧縮空気を連続的に発生することが出来る。
【0017】
図5,6に、この発明によって生成されるミストと、従来の装置によって生成されるミストを対比して示す。従来一般的に用いられているコンプレッサー(A)を用いたノズルでは、図6に示すように圧縮空気は脈動となり、ノズル(B)から噴出されるミストは断続的で且強弱のあるミストとなり、不安定かつ不均一であるのに対し、この発明のノズルから噴出されるミストは、図5に示すように連続的で微細かつ均一な安定したミストとなっている。
【0018】
微細で均一な安定したミストを得るには、ノズル口径と空気圧の関係が重要である。表1は、最適なノズル口径と空気圧を決定するための試験の結果を示し、ミストの安定性、塗布状態の安定性、皮膚への刺激強度面の3つの要素について判定した。表1において、評価◎は、好適なノズル口径と空気圧を示し、ノズル口径は0.4mm、空気圧は0.02〜0.03mmであった。評価Aは、ミストが細かすぎて空気の流れなどの影響を受けやすく、肌への塗布状態が不安定となる問題があった。評価Bは、皮膚へ過度の刺激を生じないと想定出来る範囲内の空気圧(0.05MPa以下)では口径に対して空気圧が足りず噴霧状態が安定しなかった。評価Cでは、空気圧と化粧料の塗布による刺激強度(空気圧、化粧料による力学的刺激、皮膚温度の低下)が強く、施術への適用が困難であった。
【0019】
【表1】

【0020】
図7は、同一人の顔の一方側の頬にこの発明のミスト発生装置によるミストの噴霧を行い、他方の側の頬には何等の水分の塗布も行っていない場合について、角質水分量を測定したものである。ミストの噴霧を行った側の頬の角質水分量は、水分の補給を行わなかった側の頬に比して、大きな差異が認められた。このグラフは、8人に対して行った平均値を示すものである。この発明のミスト噴霧による肌への補水効果が顕著であることが認められた。尚、角質水分量を示す単位は、カサック社製コルネオメーターによる静電容量分(a.u)である。
【0021】
又、図8は、この発明のミスト発生装置である理美容器具を使用してこの発明の美容施術を適用した効果を、20人の被施術者へのアンケートにより確認したグラフであり、「肌がしっとりした」「肌がしなやかに、やわらかくなった」「つるつる、なめらかになった」等の項目において高い効果が認められた。又、「肌の脂っぽさやべたつきがなくなった」の項目においても、高い効果があることが確認出来た。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明にかかる美容施術の工程を示す図
【図2】この発明による理美容機器でミストを噴霧している状態を示す概略図
【図3】ホットプレートで加温をしている状態を示す概略図
【図4】この発明にかかるミスト発生用理美容機器の要部の概念図
【図5】同ミスト発生の状態を概略的に示す図
【図6】従来の理美容機器によるミスト発生の状態を概略的に示す図
【図7】ミスト噴霧の有無による角質水分量の相違を示すグラフ
【図8】この発明にかかる美容施術の効果のアンケート結果を示すグラフ
【符号の説明】
【0023】
(1)メーク落とし工程
(2)洗浄工程
(3)化粧水適用工程
(4)マッサージ工程
(5)仕上げ工程
(6)ミスト発生用理美容機器
(7)加温手段
(10)噴霧ノズル本体
(11)ノズル孔
(12)化粧料供給孔
(13)エア供給孔
(14)ニードルバルブ
(15)リニアコンプレッサー
(16)圧力調整弁
(17)噴出調整ボタン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともメーク落とし工程、洗浄工程、化粧水適用工程、マッサージ工程からなり、これらの工程をこの順序で適用する美容施術方法であって、洗浄工程が、所定のノズル口径と空気圧とにより微細で均一なミストを噴霧し得る理美容機器を使用した洗浄液のミスト噴霧により、肌表面の洗浄と角質層への補水とを行い、マッサージ工程が、加温手段による肌表面への加温を行う工程を含み、該加温工程によって、肌内部から角質層への補水を行い得るようにしたことを特徴とする美容施術方法。
【請求項2】
ノズル本体のノズル孔内にニードルバルブを挿入してノズル口径を狭小に調整し、所定圧力の空気圧を連続的に送給して微細で均一なミストを噴霧し得るようにしたことを特徴とする理美容機器。
【請求項3】
ノズル口径が0.4mmであり、空気圧が0.02〜0.03MPaであることを特徴とする請求項2記載の理美容機器。
【請求項4】
ノズル孔に化粧水供給孔とエア供給孔が設けられていること特徴とする請求項2又は3記載の理美容機器。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−34540(P2006−34540A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−217861(P2004−217861)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】