説明

翻訳会話装置

【課題】言葉が通じない相手同士ができるだけスムーズに、しかも正確に意志の疎通を図ることができる翻訳会話装置を提供する。
【解決手段】会話フレーズFが複数の言語で表現され、それぞれの会話フレーズFに選択番号Nを付けて表記されたテキストと、テキストに表記された会話フレーズFに対応する音声フレーズを記憶し、選択番号Nの入力と発声言語の選択を受け付けて、テキストに表記された会話フレーズFを翻訳して音声出力する音声出力ユニットとから構成される。テキストには、会話フレーズに関連するイラストIを表記し、音声出力ユニットでその会話フレーズに対応した音声フレーズを出力する際に、その音声フレーズに対応するイラストIを指差しながら出力したり、その音声フレーズに対して関連するイラストIを指差して返答してもらったりして会話を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外国語が上手く話せなくても、旅行先などで現地の人と会話を行うことを可能とした翻訳会話装置に関するものである。この装置は、会話文が表記されたテキストと、このテキストの会話文を複数の言語で選択出力可能な音声発生装置とからなり、テキストに会話文と関連したイラストや写真を表記し、このイラストや写真を介在して会話をスムーズに行えるようにした点に特徴を有する。
【背景技術】
【0002】
外国旅行においては、現地での会話が不安材料となる。語学力を身につけようにも時間と費用が掛かり、即実行というわけには行かない。そこで、第1言語(日本語)と第2言語(英語)が併記されたテキストを用い、遭遇した場面や質問したい内容に応じた会話文をそのテキストの中から第1言語で探し出して、併記された第2言語で自ら発声して相手に意志を伝えるという方法が採られている。しかし、テキスト中の発音表記だけでは正確な発音は困難であり、相手に上手く伝わらないことがしばしば発生する。
【0003】
このため、特許文献1のように、会話文を表記したテキストと、複数の音声フレーズが記憶された音声発生ユニットとを関連づけ、テキストから会話文を選択し対応するスイッチを入力すると音声発生ユニットからネイティブな発声で音声出力され、相手に意志を伝える装置が提案されている。
【0004】
しかし、このような装置では、相手に意志を伝えることはできるものの、相手からの返事は理解できず、結局聞きたいことが聞き出せないという問題が残ってしまう。例えば、ある場所への行き方を尋ねた場合、相手からの回答を理解するのは困難であり、何の乗り物が便利か、その乗り物に乗るにはどうしたらいいか等の情報を正確に得るのは難しかった。
【特許文献1】特開平8−305274号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、言葉が通じない相手同士ができるだけスムーズに、しかも正確に意志の疎通を図ることができる翻訳会話装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するため、単語もしくは会話フレーズが複数の言語で表現され、それぞれの単語もしくは会話フレーズに選択番号を付けて表記されたテキストと、該テキストに表記された単語もしくは会話フレーズに対応する音声フレーズを記憶し、前記選択番号の入力と発声言語の選択を受け付けて、テキストに表記された単語もしくは会話フレーズを翻訳して音声出力する音声出力ユニットとから構成され、テキストに、会話フレーズに関連するイラストもしくは写真を表記し、音声出力ユニットで会話フレーズに対応した音声フレーズを出力する際に、その音声フレーズに対応するイラストもしくは写真を指差しながら出力したり、その音声フレーズに対して関連するイラストもしくは写真を指差して返答してもらったりして会話を行うようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、相手へ質問するときや返答をもらうときに、イラストを介在させるようにしたので、相互の理解力が高まり会話をスムーズにすることができるとともに、正確な意思疎通が図られるようになる。
【実施例1】
【0008】
以下、図面を用いて本発明の実施例1について説明する。
本発明の翻訳会話装置は、会話文が表記されたテキスト1と、このテキストの会話文を複数の言語で出力可能な音声発生ユニット2とから構成されている。
【0009】
まず、テキストの構成について説明する。図1はテキスト1の全体構成・図2はテキスト1のページ構成を示す説明図である。
テキスト1は、挨拶・買い物・移動・食事・ホテルといった各場面毎に区分けされ、テキストのトップページに印刷した見出し1aに対応させて場面毎に段違いのべた刷り1bを施し検索を容易にした状態で綴られている。各場面毎のページには、その場面で必要となる代表的な会話フレーズFが、日本語による表記と複数言語による表記とで併記されている。尚、図2では、英語・イタリア語・フランス語の3カ国語を表記しているが、その種類や数に限定されるものではない。
【0010】
各会話フレーズFには、それぞれ通し番号Nが付けられており、後述する音声発生ユニット2で音声出力させるときに、この番号によって会話フレーズが選択できるようになっている。各ページにおける会話フレーズFは、各場面で想定される会話のやり取りが一連の流れに沿って展開できるように、関連する会話フレーズが順番に配列してある。例えば、図2に示すように、行きたい場所を尋ねる場面において、「すいません。」という前置きのフレーズF1から、「ここへ行きたいのですが」というフレーズF2を経て、「どの乗り物が便利ですか?」という主要フレーズF3に展開し、その後、相手の返事に応じて、「最寄りの駅はどこですか?」というフレーズF4、「〜の乗り場はどこですか?」というフレーズF5に展開できるようにページ構成されているのである。
【0011】
また、「〜の乗り場はどこですか?」というフレーズF5のように、”〜”部分にバリエーションがあるフレーズについては、”〜”部分にタクシーを当てはめたフレーズ、バスを当てはめたフレーズというように、それぞれ異なる会話フレーズを用意し、別々の通し番号Nを付けて選択できるようにしている。加えて、”〜”部分に当てはまる乗り物のイラストIとその単語Wを表記しているため、例えば「どの乗り物が便利ですか?」というフレーズF3に対する相手の返答をもらうときに、イラストIの中から指差して選んでもらうといった使い方ができるようになっている。
【0012】
このように、テキスト上にイラストや写真を表記することで、お互いに指差しながら質問や返答をすることができ、相互の意思疎通がスムーズに図られるようになる。尚、テキスト中のイラストや写真に限らず旅行ガイドブックなどのイラストや写真を使って場所を尋ねたり、食事を頼んだりすることも可能になる。
【0013】
次に、音声発生ユニット2の構成について説明する。図3は音声発声ユニット2の構成を示す説明図である。
音声発生ユニット2は、薄型の本体ケース表面に、音声フレーズの選択手段となる番号キー3及び上下キー4と、言語選択手段となる国旗キー5と、電源/クリアキー6、LCD表示パネル7とを配置し、ケース内部にスピーカ8・制御部9・メモリ10を備えて構成される。番号キー3は、テキスト1に表記された会話フレーズに付された選択番号を入力するもの、上下キー4は、番号キー3で選択した会話フレーズを次のフレーズに送るもしくは前のフレーズに戻すもの、国籍キー5は、複数言語の中から音声出力する言語を選択するもの、電源/クリアキー6は、電源の投入や選択番号のクリアを行うもの、LCD表示パネル7は番号キー3で選択した会話フレーズの番号を表示するものである。制御部9は、マイクロコンピュータからなり、図示しない乾電池によって電源供給され、番号キー3と国籍キー5で選択された会話フレーズとその言語に対応する音声フレーズをメモリ9から読みだし、スピーカ8を通して出力させるものである。
【0014】
実施例1の翻訳会話装置は、テキスト1と音声発生ユニット2を併用しながら外国人とのコミュニケーションを図るものである。まず、テキスト1の中から会話フレーズを見つけ、その会話フレーズの番号を音声発生ユニット2の番号キー3で入力する。次に、音声の言語を選んで対応する国旗キー5を入力すると、国旗の言語で音声フレーズが出力される。音声フレーズは、テキスト1に表記したイラストや写真、または別途ガイドブックや地図、メニューリスト等を利用して指差しを交えて聞かせることで意思伝達がスムーズに行える。また、その質問に対する返答もイラストや写真を指差しながらしてもらうことで、相手からの返答も正確に理解することが可能となる。こうして、言葉が通じない質問者・回答者の間での相互理解を高めることができ、この点に本発明の特徴がある。
【0015】
このよう構成する翻訳会話装置を用いての会話事例について説明する。
旅行者は、ローマのコロッセオに観光に行きたいので、現地の人にそこへの行き方を尋ねようとしている。この場合、テキスト1をめくり、図2に示すページを開いたら「すいません。」という会話フレーズに付けられている番号”336”を音声発声ユニット2の番号キー3で入力する。LCD表示パネル7にその番号が正しく表示されていることを確認し、イタリアの国旗キー5を入力すれば「Mi scusi.」というイタリア語の音声フレーズに翻訳されて音声出力される。このとき、日本の国旗キー5を入力すれば「すいません。」という日本語の音声フレーズが流れるので、選択した会話フレーズが間違っていないかどうかを確認することができる。
【0016】
次に、ページ上の会話フレーズの配列に沿って、「ここへ行きたいのですが」という会話フレーズを音声フレーズで出力させる。このとき、上下キー6の下キーを入力すれば、LCD表示パネル7の表示が”337”に移行し、「ここへ行きたいのですが」という会話フレーズを選択することができる。この会話フレーズは、「ここへ」という代名詞が含まれているので、出力するときガイドブックに載っているコロッセオの写真を指差しながら出力させる。こうすることにより、相手に確実に場所を伝えることができる。
【0017】
相手に場所を伝えた後は、どうやってその場所に行けばよいかを尋ねる。このため、「どの乗り物が便利ですか?」という会話フレーズを”338”を選択して音声フレーズで出力させる。この質問に対する返答をもらうとき、テキスト1を見せながら、同じページに表記された乗り物のイラストを指差してもらうようにすれば、相手からの返答を確実に理解することができる。相手から指差しもしくは口頭で「バスが便利」という返答があったら、バスのイラストに付けた番号”341”を選択して「バスの乗り場はどこですか」という会話フレーズを音声フレーズで出力させ、バス乗り場の場所を教えてもらうのである。
【0018】
こうして本発明の翻訳会話装置を利用することにより、より確実に応対ができるようになりスムーズに会話を進めることができる。また、言語が異なる複数の人が集まっている場合であっても、国籍キー5の入力を選ぶことで、例えば「すいません」という会話フレーズを複数の言語で音声出力させることができるので、日本人とイタリア人の2局間コミュニケーションだけでなく、日本人・アメリカ人・イタリア人といった複合的なコミュニケーションを図ることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】テキスト1の全体構成を示す説明図である。
【図2】テキスト1のページ構成を示す説明図である。
【図3】音声発声ユニット2の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0020】
1 テキスト
1a 見出し
1b べた刷り
2 音声発生ユニット
3 番号キー
4 上下キー
5 国旗キー
6 電源/クリアキー
7 LCD表示パネル
8 スピーカ
9 制御部
10 メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単語もしくは会話フレーズが複数の言語で表現され、それぞれの単語もしくは会話フレーズに選択番号を付けて表記されたテキストと、
該テキストに表記された単語もしくは会話フレーズに対応する音声フレーズを記憶し、前記選択番号の入力と発声言語の選択を受け付けて、前記テキストに表記された単語もしくは会話フレーズを翻訳して音声出力する音声出力ユニットとから構成され、
前記テキストに、会話フレーズに関連するイラストもしくは写真を表記し、前記音声出力ユニットで会話フレーズに対応した音声フレーズを出力する際に、その音声フレーズに対応するイラストもしくは写真を指差しながら出力したり、その音声フレーズに対して関連するイラストもしくは写真を指差して返答してもらったりして会話を行うようにしたことを特徴とする翻訳会話装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−176086(P2008−176086A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−9826(P2007−9826)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【出願人】(000103149)エムケー電子株式会社 (6)
【Fターム(参考)】