説明

耐磨耗性白物ゴム組成物

【構成】 ブタジエンゴム60〜80重量%と他の汎用ゴム20〜40重量%を含むゴム組成物であって、該組成物にγ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン1〜3phr、チオシアネートプロピルトリエトキシシラン1〜7phr、硫黄1.6〜2.0phr、加硫促進剤1.0〜3.0phr及び含水ケイ酸系充填剤30〜50phrを配合することを特徴とする耐磨耗性白物ゴム組成物
【構成】 十分な補強性及び耐摩耗性を有する白物ゴム組成物を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】 本発明は、耐磨耗性白物ゴム組成物に関する。
【0002】
【従来技術及びその課題】 タイヤゴムやベルト等の黒色ゴム製品に用いられる天然ゴムあるいはジエン系合成ゴムに補強性を持たせ、耐摩耗性を向上させるゴム配合技術として、黒色のカーボンブラックを配合することが一般的に行われている。
【0003】これに対し、着色が可能である点でデザイン性に優れた白物ゴムの補強は、従来クレー、タルク、含水ケイ酸系充填剤等の補強性配合剤を添加することにより行われ、例えばジエン系合成ゴムはシリカ系充填剤を配合することにより補強される。また、白物ゴムの耐摩耗性を向上させる方法としては、ブタジエンゴムを配合することや、スコーチ性、加工性の観点からγ−メルカプトプロピルトリメトキシシランを低配合量、即ち1phr以下の割合で配合することが行われている。
【0004】しかしながら、白物ゴムに上記添加剤を配合してもカーボンブラックを配合する場合に比較して補強性及び耐摩耗性の向上は十分でなく、実用上補強性及び耐摩耗性をさらに向上した白物ゴムが切望されている。
【0005】本発明の目的は、十分な補強性及び耐摩耗性を有する白物ゴム組成物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題に鑑み鋭意研究を重ねた結果、ブタジエンゴムと他の汎用ゴムとの組成物に、カップリング剤としてγ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン及びチオシアネートプロピルトリエトキシシランの混合物を従来よりも大量に用い、そのことによる加工性及びスコーチ性の問題を、硫黄及び加硫促進剤を所定量加えることで解消することによって上記目的を達成できる優れたゴム組成物が提供できることを見出した。
【0007】即ち、本発明は、ブタジエンゴム60〜80重量%と他の汎用ゴム20〜40重量%を含むゴム組成物であって、該組成物にγ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン1〜3phr、チオシアネートプロピルトリエトキシシラン1〜7phr、硫黄1.6〜2.0phr、加硫促進剤1.0〜3.0phr及び含水ケイ酸系充填剤30〜50phrを配合することを特徴とする耐磨耗性白物ゴム組成物を提供することにある。
【0008】なお、本発明で、phrとは、ゴム組成物100重量部に対して配合されるある成分の重量部を表す。
【0009】本発明でブタジエンゴムとしては、線状構造を有するブタジエンゴムが好ましく、商品名としては、ウベポール340L及びウベポールVCR303(いずれも宇部興産株式会社製)が挙げられる。
【0010】本発明で他の汎用ゴムとしては、ブタジエンゴム以外の公知のゴムが広く利用され、例えば、天然ゴム、エポキシ化天然ゴム、イソプレンゴム、溶液重合スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴムまたはこれらの混合物などが挙げられる。
【0011】ブタジエンゴムと他の汎用ゴムの配合割合は、通常ブタジエンゴム60〜80重量%と他の汎用ゴム20〜40重量%、好ましくはブタジエンゴム65〜75重量%と他の汎用ゴム25〜35重量%、最も好ましくはブタジエンゴム70重量%と他の汎用ゴム30重量%である。ブタジエンゴムの配合量が多すぎると強度の低下が大きくなり、他の汎用ゴムの配合量が多すぎると耐摩耗性の低下が大きくなる。
【0012】カップリング剤としてγ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン及びチオシアネートプロピルトリエトキシシランの混合物を配合させる場合の配合量は、通常γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン1〜3phr及びチオシアネートプロピルトリエトキシシラン1〜7phr、好ましくはγ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン1〜2phr及びチオシアネートプロピルトリエトキシシラン2phr程度、最も好ましくはγ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン1phr及びチオシアネートプロピルトリエトキシシラン2phrである。カップリング剤の各成分の量が多すぎると白物ゴムの加工性、スコーチ性が低下し、カップリング剤の各成分の量が少なすぎると得られる白物ゴムの耐摩耗性の向上が不十分となる。
【0013】本発明で使用される硫黄としては、粉末硫黄、不溶性硫黄などが挙げられ、その配合量は、通常1.6〜2.0phr、好ましくは1.6〜1.8phrである。
【0014】また、加硫促進剤としては、DM、NOB、D、CZなどが挙げられ、その配合量は、通常0.2〜3.0phr、好ましくは1.0〜2.5phrである。
【0015】ゴム組成物に配合される配合される含水ケイ酸系充填剤としては、ホワイトカーボン、ニプシール(商標名、日本シリカ株式会社製)、トクシール(商標名、徳山曹達株式会社製)などが挙げられ、その配合割合は通常30〜50phr、好ましくは35〜40phr程度である。含水ケイ酸系充填剤の配合量が多すぎるとゴム特有の性質が損なわれ、また含水ケイ酸系充填剤の配合量量が少なすぎると白物ゴムの補強性の向上が不十分となる。
【0016】カップリング剤としてγ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン及びチオシアネートプロピルトリエトキシシランの混合物を用いた場合には、遅延加硫するため厚物ゴム製品や、特にタイヤゴム等の工業用品ゴムが適している。
【0017】
【発明の効果】本発明によれば、以下のような優れた効果が達成される。
【0018】(1)補強性及び耐摩耗性に優れた本発明の白色ゴムを用いることにより、着色により商品本体の色調に合ったゴム製品が得られ、特に、耐摩耗性と色調及びデザインを要求される商品に有利である。
【0019】(2)靴底ゴムとして使用する場合、耐摩耗性の要求されるゴルフシューズ、キャディシューズ、スポーツシューズ、及びバイクシューズに最適で、デザインが多様化できることと、白色または着色ゴムとして使用できるため、ゴルフ場のカート道や一般道路を黒色で汚染しない。
【0020】(3)自転車及び自動車タイヤの分野では、車体の色調に合わせたカラフルな色調の自転車タイヤ及び自動車タイヤが生まれ、さらに白物ゴムであるためスリップしたとき一般道路を黒色で汚染することはない。さらに、反発弾性及び発熱特性が向上し、タイヤ高性能化に求められている転動性能が大幅に向上する。さらに、タイヤ配合よりも比重が低いため、軽量化=省燃費化を図ることができる。
【0021】(4)高性能な耐摩耗性白物ゴムでありながら、汎用ゴム並の低価格でしかも容易に提供でき、また現存の製造設備を用いてあらゆるゴム製品が製造可能である。
【0022】以下、本発明の実施例を比較例を用いながらより詳しく説明する。
【0023】
【実施例1】以下の表1に示す処方で白物ゴムを製造した。具体的には、硫黄及び加硫促進剤を除いた上記処方の各成分を75リットルの加圧式ニーダーで5分間混練りし、約20℃で1日間熟成した。次いで、硫黄及び加硫促進剤を加え、16インチオープンロールにて混練りし、150℃で、以下のキュラストメーター加硫度(t90)に基づく時間、加硫工程を行い、目的とする白物加硫ゴム部品を得た。なお、t90とは最適加硫時間を意味する。
【0024】
【実施例2及び比較例1〜4】表1に示す各処方で、実施例1と同様な条件で混練り及び加硫工程を行い、目的とする白物ゴム部品を各々得た。
【0025】
【表1】


【0026】なお、表1において、KMB803は、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランの商標名(信越化学株式会社製)であり、Si264は、チオシアネートプロピルトリエトキシシランの商標名(ドイツDEGUSSA株式会社製)である。
【0027】
【比較例5】以下の示す処方で、実施例1と同様な条件で混練り及び加硫工程を行い、カーボンブラック標準タイヤトレッドゴム(黒物ゴム)を得た。
成 分 配合量 ───────────────────────────────── 天然ゴム RSS#3 75 ブタジエンゴム BR150 25 カーボンブラック HFA 60 ステアリン酸 2 亜鉛華 1号 5 老防 3C 2 マイクロクリスタリンワックス 1 アロマ系オイル 15 クマロン樹脂 5 加硫促進剤 CZ 1 硫黄 2 ─────────────────────────────────
【0028】実施例1〜2、及び比較例1〜5において1日間熟成して各々得られた未加硫ゴムの加硫特性を以下の表2に示す。
【0029】
【表2】


【0030】なお、表2において、キュラストメーター試験は、キュラストメーター加硫試験機(日合商事株式会社製)を用い、測定温度150℃で加硫時間を測定した。また、ムーニースコーチ試験は、ムーニー粘度計(島津製作所製)を用い、測定温度121℃で加硫時間を測定した。
【0031】実施例1〜2、及び比較例1〜5で得られた加硫ゴムの各種物性試験結果を表3に示す。各種試験の条件は、以下に示すとおりである。
【0032】(1)アクロン摩耗試験英国標準(BS)−903に従い、温度25℃、傾斜15度、6ポンド、予備ズリ1000回、本試験1000回の条件で行った。
【0033】(2)ウィリアム摩耗試験英国標準(BS)−903に従い、温度25℃でなじみ運転後、6分間本試験を行った。
【0034】(3)ランボーン摩耗試験温度30℃、荷重4.5kg、試料60m/分、砥石36m/分、スリップ率40%の条件で行った。
【0035】(4)ピコ摩耗試験ASTM−D2228に従い、荷重4.5kg、60rpm、SBRスタンダードゴム(指数125)を用いて行った。
【0036】(5)引張強度及び引裂強度試験JIS−K6301に従い、温度25℃で、JIS−3及びJIS−Bダンベルを基準として行った。
【0037】(6)反発弾性率試験JIS−K6301の規定に従い、測定した。
【0038】(7)発熱試験ASTM−−D623に従い、グッドリッチフレクソメーターを用い、温度100℃、時間25分、荷重55ポンド、0.175インチストローク、1800rpmの条件で行った。
【0039】(8)スキッド抵抗試験ポータブル滑り抵抗試験機を用い、温度25℃の条件で、ドライ試験はスリガラス、ウェット試験はスリガラス+水を用いて行った。
【0040】
【表3】


【0041】表3の結果から、本発明の耐摩耗性白物ゴム組成物は、カーボンブラックを標準配合した黒物ゴム(比較例5)よりもはるかに優れた結果が得られることが明かとなった。また、実施例1及び2の組成物と比較例1〜4の組成物を比較すると、カップリング剤として、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン及びチオシアネートプロピルトリエトキシシランの混合物を本発明の所定量用いることにより、初めて白物ゴム組成物の耐摩耗性及び補強性を両方ともバランス良く向上できることが明かである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ブタジエンゴム60〜80重量%と他の汎用ゴム20〜40重量%を含むゴム組成物であって、該組成物にγ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン1〜3phr、チオシアネートプロピルトリエトキシシラン1〜7phr、硫黄1.6〜2.0phr、加硫促進剤1.0〜3.0phr及び含水ケイ酸系充填剤30〜50phrを配合することを特徴とする耐磨耗性白物ゴム組成物