説明

耐DME用ゴム組成物

【目的】耐LPG性および耐DME性の優れたゴム組成物を提供することを目的とする。
【構成】ニトリル系ゴム(NBRゴム)にハロゲン化ブチルゴムを配合したことを特徴とする。前記ニトリル系ゴムのアクリロニトリル量は、28〜38重量%であることを特徴とし、さらに前記ハロゲン化ブチルゴムは臭素化ブチルゴム、塩素化ブチルゴムであることを特徴とする。また、前記ハロゲン化ブチルゴムのムーニー粘度(ML1+8 125℃)は、41以上であることを特徴とし、前記ニトリル系ゴムとハロゲン化ブチルゴムの混合比は25:75〜75:25であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
耐DME(ジメチルエーテル)用として、気体又は液体のDMEと接触する装置に使用され、DME・LPG両用またはDME専用として使用可能なゴム材料のゴム組成物及びゴム部材に関する。
【背景技術】
【0002】
ジメチルエーテル(DME)は、天然ガス、随伴ガス、石炭などをガス化して得られる合成ガス(CO,H)を原料としてDME合成によって得られ、燃焼したときに煤煙、SOxを発生せず、またNOxの発生も少ないことから、最近、環境にやさしい燃料として供給が輸入に依存するプロパンガス(LPG)の代替燃料として注目されている。
【0003】
従来、LPG・LNGなどの気体又は液体に接触する装置に用いられるO−リングやダイヤフラムの様なゴム系シール材にはNBRやHNBRが使用されている。同様に、耐DME用のゴム組成物としても、たとえばアクリロニトリルを38重量%以上有するNBRないしHNBRが使用されている(特開2000−137391号)。
【特許文献1】特開2000−137391号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
LPG等の代替とされるDME、上述のNBRやHNBRを使用したシール材では、長期間の仕様により、膨潤が大きくなり、ケースからのはみ出しによる破損、漏れ、圧力調整不能を起こし、製品としての機能を果たさなくなるという欠点がある。
【0005】
本発明は上述の課題に鑑みなされたものであり、耐LPG性および耐DME性の優れたゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するため、本発明による耐DMEゴム組成物は、ニトリル系ゴム(NBRゴム)にハロゲン化ブチルゴムを配合したことを特徴とするものである。
【0007】
NBRは耐LPG性に優れるが耐DME性に劣り、逆にハロゲン化ブチルは耐DME性に優れるが耐LPG性に劣ることを見出したので、NBRとハロゲン化ブチルのブレンドをべースゴムとすることにより、耐LPG性および耐DME性の良好なゴム組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、DMEとLPGに各単独及び両方に接触する装置で使用可能なゴム組成物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明によれば、前述のようにニトリル系ゴムにハロゲン化ブチルゴムを配合したことを特徴とする。
【0010】
ゴム材料としては、NBRとハロゲン化ブチルのブレンドであり、DME・LPG両用として使えるものである。このような本発明で使用されるNBRのアクリロニトリル量は、好ましくは28〜38重量%、最も好ましくは31〜35重量%である。38重量%を超える極高ニトリル・高ニトリルではブレンド性が悪くなり、一方28重量%未満の中ニトリル・低ニトリルでは耐油性が悪くなりLPG・DME両用として使うにはふさわしくないからである。このNBRとしては、水添加NBR(HNBR)であってもよい。
【0011】
一方、前述のようなNBRにブレンドされるハロゲン化ブチルゴムとしては、たとえば臭素化ブチルゴム、塩素化ブチルゴムを挙げることができる。ハロゲン化ブチルゴムとしては、好ましくは、ムーニー粘度(ML1+8 125℃)は41以上であるのがよい。ムーニー粘度が41未満であると、ブレンド性が悪化するからである。
【0012】
このようなNBRゴムとハロゲン化ブチルゴムの配合比(重量比)は25:75〜75:25であるのがよい。NBRが25重量部未満であると、後述の実施例より明らかなように耐LPG性に問題を生じる恐れがあり、一方、ハロゲン化ブチルゴムが25重量%未満であると、耐DME性の劣る恐れを生じるからである。
【実施例1】
【0013】
アクリロニトリル量33重量%の中高ニトリルのNBRと臭素化ブチルゴム(ムーニー粘度(ML1+8 125℃);41〜49)のブレンド量を変化させて、耐LPG性および耐DEM性を測定した(表1)。比較例として、表1に示すような組成のアクリルゴム、ヒドリンゴム、ブチルゴム、水添加NBR、クロロプレンゴム、ウレタンゴムを同様な試験を行った。
【0014】
後述の表1の組成のゴム組成物を160℃、10分間加硫して、試験片を製造し、前記試験片をDMEガス、LPG/DMEガス中に40℃、24時間浸漬し、取り出した後、デシケータ中で12分間放置した後、デシケータから取りだし、ΔTB、ΔEB、ΔHs、ΔVを10分以内に測定した。さらに、60分後、再度ΔVを測定した。結果を下記の表1に示す。
【0015】
【表1】

【0016】
判断基準は、表1の右欄に示している。表中、比A、比BはNBR単独、臭素化ブチルゴム単独の場合を示している。これらの表から明らかなように、NBR単独の場合、耐DME性に問題があり、一方臭素化ブチルゴムの場合には、耐LPG性に問題を生じる恐がある。また、他のゴムにおいては耐DME性あるいは耐LPG性のいずれか、あるいはその両方に問題を生じる恐れがあることが明らかになった。
【0017】
これに対し、本発明によるNBRゴムとハロゲン化ブチルゴムのブレンドでは、DME、LPG/DMEガス浸漬による膨潤は小さく、良好な耐DME性および耐LPG性があることが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0018】
以上のように本発明による耐DME性ゴム組成物によれば、耐DME性、耐LPG性に優れたゴムを製造可能であり、DMEあるいはLPGに接触するゴム部品、たとえばシール材として良好に使用可能になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニトリル系ゴムにハロゲン化ブチルゴムを配合したことを特徴とする耐DME用ゴム組成物。
【請求項2】
前記ニトリル系ゴムのアクリロニトリル量は、28〜38重量%であることを特徴とする請求項1記載の耐DME用ゴム組成物。
【請求項3】
前記ハロゲン化ブチルゴムは臭素化ブチルゴム、塩素化ブチルゴムであることを特徴とする請求項1または2記載の耐DME用ゴム組成物。
【請求項4】
前記ハロゲン化ブチルゴムのムーニー粘度(ML1+8 125℃)は、41以上であることを特徴とする請求項1から3記載のいずれかの耐DME用ゴム組成物。
【請求項5】
前記ニトリル系ゴムとハロゲン化ブチルゴムの混合比は25:75〜75:25であることを特徴とする請求項1から4記載のいずれかの耐DME用ゴム組成物。

【公開番号】特開2006−52327(P2006−52327A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−235179(P2004−235179)
【出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(000005175)藤倉ゴム工業株式会社 (120)
【Fターム(参考)】