説明

耕耘作業機の排油構造

【課題】エンジンオイルの交換等を行う際に、ドレン口から排出される排油をミッションケースを広い範囲で汚すことなくスムーズに回収すると共に、排油構造を部品数を増やすことなく廉価に製作することができる耕耘作業機の排油構造を提供する。
【解決手段】耕耘伝動部と走行伝動部とからなるミッションケース1の上部にエンジン7を搭載し、該エンジン7から駆動力を耕耘伝動部と走行伝動部に伝動する耕耘作業機であって、前記ミッションケース1の耕耘伝動部と走行伝動部との間に、エンジン7のドレン口7aから排出される排油を受ける排油受部25と、該排油受部25から流出させる排油をミッションケース1の下方に向けて排出案内する排油路26を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耕耘作業機における排油構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ミッションケースの上部にエンジンを搭載した耕耘作業機において、エンジンオイル等を交換する際に、ドレン口から排出される排油をエンジンフレーム上に敷設したフェンダに凹入形成される排油溝に沿わせて前方に流出案内する耕耘作業機の排油構造が既に知られている。(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭60−139582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に示される耕耘作業機の排油構造は、ドレン口から排出される排油をフェンダの排油溝により、排油容器を受け易い位置に設置して流出させるので、フェンダ面を広い範囲で汚すことなく回収することができる。然しながら、上記排油構造は排油の回収にフェンダ等の特別な溝構成部材を必要とする。また例えば、ミッションケースがエンジンを載置する走行伝動部から、耕耘伝動部が前方に向けて一体的に延長構成されるような耕耘作業機である場合に、フェンダとミッションケースとの間隔は狭くなるので、フェンダの下方に排油容器の設置が困難になる等の問題がある。従って、このような耕耘作業機においては、溝を有するフェンダの長さを耕耘伝動部の前方に至る長大な形状となして排油構造を形成しなければならないと共に、短いフェンダにした場合には、溝から流出した排油がミッションケースの上に落ちて、該ミッションケースを広い範囲で汚すことになる等の課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明の耕耘作業機の排油構造は、第1に、耕耘伝動部1aと走行伝動部1bとからなるミッションケース1の上部にエンジン7を搭載し、該エンジン7から駆動力を耕耘伝動部1aと走行伝動部1bに伝動する耕耘作業機において、前記ミッションケース1の耕耘伝動部1aと走行伝動部1bとの間に、エンジン7のドレン口7aから排出される排油を受ける排油受部25と、該排油受部25から流出させる排油をミッションケース1の下方に向けて排出案内する排油路26を形成したことを特徴としている。
【0006】
第2に、排油路26を、耕耘伝動部1aと走行伝動部1bとの間で、耕耘飛散土を遮るようにミッションケース1の側壁1cから左右方向に突設するリブ21を利用して形成することを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、ミッションケースの耕耘伝動部と走行伝動部との間に、エンジンのドレン口から排出される排油を受ける排油受部と、該排油受部から排油をミッションケースの下方に向けて排出案内する排油路を形成した排油構造にしたことにより、エンジンオイルの交換等のメンテナンス作業を行う際に、ドレン口から排出される排油は、ドレン口の直下に設置された排油受部によって一時的に受けさせながら排油路によって案内されて流下するので、ミッションケースを広い範囲で汚すことなく排油をスムーズに回収することができる。またミッションケースの製作時に排油受部と排油路を一体的に設けることができるので、排油構造を部品数を増やすことなく簡潔な構成にすることができる。
【0008】
請求項2の発明によれば、耕耘飛散土を遮るようにミッションケースの側壁から左右方向に突設するリブを利用して排油路を形成することにより、側壁とリブによって形成される溝状をなすコーナー部が排油を流下させるように案内するので、排油を排油容器内に確実且つ簡単に回収することができ、且つ側壁及びリブ等の汚れを規制することができる。また排油路は耕耘飛散土防止用のリブを利用するので、簡単な構成にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】耕耘作業機の側面図である。
【図2】耕耘作業機の排油構造を示す平面図である。
【図3】排油構造を示す拡大斜視図である。
【図4】別実施形態の排油構造を示す平面図である。
【図5】燃料タンクの平面図である。
【図6】燃料タンクの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の排油構造を備えた耕耘作業機(歩行型管理機)の排油作業の態様を示す側面図である。この耕耘作業機は側面視において、下方が2叉状に形成されたミッションケース1が機体フレームを構成している。ミッションケース1の2叉に分かれた一方(後部)の下端側となる走行伝動部1bに左右の車軸2が軸支されている。またミッションケース1の2叉に分かれた他方(後部)の下端側となる耕耘伝動部1aにロータリ軸3が軸支されている。上記左右の車軸2には各車輪4が装着されており、ロータリ軸3には耕耘爪を備えた耕耘装置であるロータリ6がそれぞれ軸支されている。
【0011】
ミッションケース1の上部には、エンジン本体の前方下部にエンジンオイル排出用のドレン口7aを有するエンジン7が搭載されている。エンジン7は、重心がロータリ軸3と車軸2の中間位置より後方に位置するように、車軸2の上方位置に配置されている。またエンジン7は、上方をボンネット8によって覆い、且つ後方上部に燃料タンク7bを配置し、エンジンベース7cを介してドレン口7aがミッションケース1の前後方向の中間上方に臨むように取付けられている。
【0012】
ミッションケース1内には、車輪4用の走行駆動力を変速する走行変速機構と、ロータリ6用のロータリ駆動力を変速するロータリ変速機構とを備えたトランスミッションが構成され、ミッションケース1にはエンジン7から図示しないベルト伝動機構により、図2で示す入力プーリ9を介して伝動される。この入力プーリ9は放射方向に複数の羽根9aを設けており、回転に伴い各羽根9aが外気を燃料タンク7bに吹き付けて燃料タンク7bを冷却し、燃料油の昇温を抑制するようにしている。
【0013】
エンジン7からトランスミッションへの伝動はメインクラッチによって入り切り自在となっている。メインクラッチの入り作動によって、エンジン7からトランスミッションに駆動力が伝動され、車輪4及びロータリ6が回転駆動される。ミッションケース1は、エンジン7から車輪4に駆動力を伝動する走行伝動部1aと、エンジン7からロータリ6に駆動力を伝動する耕耘伝動部1bとを一体的に構成している。尚、上記ミッションケース1は、アルミダイキャスト鋳造手段によって左右対称形状で製作される、2分割状の左右のケースをボルト止め手段によって合体することによって構成している。
【0014】
ミッションケース1の後方には、斜め上方に向かって左右一対のブラケット11がボルト固定されている。ブラケット11の後端には、平面視で略U字状をなし、後方斜め上方に向かって突出するハンドル12が前後揺動可能に取り付けられている。ハンドル12には、前述のメインクラッチの入り切りを操作するクラッチ操作部13が揺動自在に設けられている。クラッチ操作部13によって車輪4及びロータリ6の駆動を入り切り操作することができる。
【0015】
ミッションケース1からは、後方に向かって車輪4及びロータリ6の駆動変速を操作する主操作レバー14が突設されている。主操作レバー14はレバーガイド16を介して後方に向かって突出している。主操作レバー14はレバーガイド16に沿って、前後及び左右の揺動操作が可能となっている。主変速レバー14の揺動操作によって走行速度(車輪4の駆動速度)と、ロータリ6の駆動速度及び回転方向が変速操作される。
【0016】
ミッションケース1の耕耘伝動部1aには、ロータリ軸3を軸支する軸受け部(ミッションケース1の前端部分)にブラケット17がボルト固定されている。該ブラケット17には、先端にゲージ輪18が自由回転自在に軸支されたゲージ輪アーム19が上下揺動自在に軸支されている。
【0017】
上記構造により耕耘作業機は、車輪4を接地させて作業者がハンドルを持ち、エンジン7を作動させ、メインクラッチを入り作動させることによって、後方側の車輪4の駆動によって走行し、機体の走行に伴って回転するロータリ6により耕耘作業を行うことができる。
【0018】
機体は、車輪4とゲージ輪18とが接地しながら走行する。車輪4とロータリ6の位置関係は固定されているため、車輪4の接地点とゲージ輪18の接地点とを結ぶ直線より下方に突出するロータリ6の量で耕耘深さが決まる。このためゲージ輪アーム19を揺動させてゲージ輪18の高さ位置を設定することによって耕耘深さが調節され、設定維持される。
【0019】
上記ミッションケース1は、エンジン7とロータリ6との略中間位置に、左右方向に突出するリブ21が一体的に設けられている。該リブ21の上部に平面視で略逆U字状をなす杆状の持上げハンドル22の両基端部が固定されている。持上げハンドル22はロータリ6の上方を迂回するように経由して機体の前方に延出している。
【0020】
持上げハンドル22の前方側は、前述のブラケット17の上方延長端部17aに固定されている。作業者は持上げハンドル22を前方の持ち手とすることによって機体を簡単に持ち上げることができる。このときハンドル12を前方に回動させることによってハンドル12は機体後方に突出しないように格納され、機体の全長が短くなる。これにより作業者はコンパクトにハンドル12が格納された機体の持ち上げ作業を容易に行うことができる。
【0021】
ロータリ6の上方は、エンジン7の下方位置から前方に延出するカバー23によって覆われている。該カバー23は樹脂による一体成形品であり、持上げハンドル22をフレームとして上記のように取り付けられている。カバー23は上面の端縁側に下方に突出する周面が設けられている。カバー23はロータリ6の概ね上方のみを、ロータリ6の回転軌跡に沿って覆う。このためロータリ6の側方は概ね開放されており、耕耘土の詰まり等を容易に確認することができる。
【0022】
上記リブ21は、図3に示されるように、ロータリ6の後方においてミッションケース1の左右方向に突出しているため、リブ21はロータリ6による耕耘時の後方への飛散土(泥土)を遮る泥土飛散防止部材として機能し、リブ21より後方に飛散する泥土が減少する。
【0023】
このため耕耘作業中の作業者や、リブ21より後方にあるエンジン7やミッションケース1及び車輪4等に向かって飛散するロータリ6により発生する泥土を減少させることができ、上記作業者や各パーツ等の汚れや泥土の付着等を防止することができる。またリブ21によって泥土飛散防止部材が構成されるため、泥土飛散防止部材を別途設ける必要がなく、泥土飛散防止部材を簡単な構造、且つローコストで設けることができる。
【0024】
また前述のようにリブ21は持上げハンドル22の取付け部材を兼用している。これにより持上げハンドル22の取付け用の部材を別途設ける必要がなく、持上げハンドル22の取付構造を簡単に、且つローコストで構成することができる。
【0025】
上記のように構成される耕耘作業機は、ミッションケース1の前後方向中間位置の上部でドレン口7aの略直下位置に、該ドレン口7aから排出される排油(エンジンオイル)を受ける排油受部25を設け、且つ排油受部25からミッションケース1の下部に向けて排油を排出案内する排油路26を形成している。
即ち、図示例の排油構造は、左右対称形状で2分割状に形成される左右のケースに内向きコ字状の立壁27を立設し、各ケースを対向接合することにより左右の立壁27も接合され、上方を開口させた方形状の排油受部25を構成するようにしている。また排油受部25は、左右の立壁27の少なくとも一方を切欠することにより、排油路26に通ずる排出口29を形成している。
【0026】
排油路26は、ミッションケース1の側壁1cと前記リブ21の基部とで形成されるコーナー部を利用しており、この排油路26の上方に臨む排出口29から排出される排油を、上記コーナー部に沿って案内し下方の所定位置に落下させるようにしている。尚、実施形態の排油路26は、前低後高状に傾斜しているミッションケース1の前後方向中間部の側壁1cから一体的に側方に向けて突出させるリブ21を前傾角を有して突設しているため、排油は排出口29から前方傾斜するリブ21によって堰き止められた状態でコーナー部を伝わりスムーズに流下する。また排油路26の下部は高い位置になるため、広い空間部において排油容器30の設置を容易にする。
【0027】
以上のように構成される耕耘作業機は、ミッションケース1の耕耘伝動部1aと走行伝動部1bとの間に、エンジン7のドレン口7aから排出される排油を受ける排油受部25と、該排油受部25から排油をミッションケース1の下方に向けて排出案内する排油路26を形成した排油構造にしているため、エンジンオイルの交換等のメンテナンス作業を行う際に、排油作業を以下のように行うことができる。
【0028】
先ず図1に示すように、排油容器30を排油路26の下方空間部に設置したのち、ドレン口7aを閉じている口栓(ドレンコック)を開けてエンジン7内のエンジンオイルを排出する。これにより、排出された排油は排油受部25内に一時的に貯留されながら、排出口29から流出し排油路26を通り排油容器30内に向けて流下する。従って、この排油構造によれば、ドレン口7aの直下に設置された排油受部25がドレン口7aから排出される排油を容器外にこぼすことなく確実に回収し、また排油を一旦貯留した状態で排出口29から定量的に排油路26に流出させる。
【0029】
また耕耘伝動部1aと走行伝動部1bとの間で、耕耘飛散土を遮るようにミッションケース1の側壁1cと、該側壁1cから左右方向に突設するリブ21とにより形成される排油路26は、溝状をなすコーナー部が排油を側壁1cの広い範囲で流れ落とすことなく、1箇所で集中的に流下させるように案内するので、排油を排油容器30内に確実且つ簡単に回収することができると共に、側壁1c及びリブ21を排油によって広い範囲を徒に汚すことがない。そして、排油作業が完了しドレン口7aを閉栓したのち、エンジン7内に新たな油(エンジンオイル)を供給して、エンジンオイルの交換等のメンテナンス作業を完了することができる。
【0030】
また排油路26を、耕耘飛散土を遮るようにミッションケース1の側壁1cから左右方向に突設するリブ21を利用して形成すると、既設のリブ21を排油の側壁1c前方側への拡散移動を規制する規制誘導部材にすることができるので、排油構造をミッションケース1の製作時に簡単且つ廉価な手段によって一体的に構成することができる等の特徴がある。尚、リブ21には図3の点線で示すように、リブ面に縦向きの突起条21aを設けると、排油の外側よりの拡散をより規制することができる。またリブ21は図4で示すように、突出代を短くしてもよく、更には隣接する突起条21bを突設することにより溝状の排油路26を設けるようにしてもよい。
【0031】
次に図5,図6を参照し燃料タンク7bについて説明する。この燃料タンク7bは、タンク上部に突設される円筒状の給油口31に、燃料油の貯留量を表示する燃料ゲージ32とタンク内と外部を導通させるブリーザ孔33を備えたキャップ35を開閉自在に備えている。上記燃料ゲージ32は、浮力により上下作動してタンク内の油量を検知するフロート型の油量センサ36によって、表示部に燃料油の残量を表示させるものであり、該表示部はその表示面を機体後方側に向けて傾斜させて設けている。従って、オペレータはハンドル12を把持したままの操縦姿勢で燃料ゲージ32を後方から容易に視認することができる。
【0032】
またキャップ35は、ブリーザ孔33を燃料ゲージ32の前部側に位置させて開口しており、且つブリーザ孔33を開閉するブリーザ蓋37を左右方向にスライド操作自在に設けている。これにより耕耘或いは走行等の運転時において、ブリーザ孔33は図5で示す開放状態で使用する。また機体やロータリ6に絡まったり付着した雑草や泥土の除去、或いは修理や点検等のメンテナンス作業を、機体を前後又は側方に大きく傾けて行う場合には、ブリーザ蓋37を右方向にスライド操作してブリーザ孔33を閉じる。
【0033】
これにより、作業者はブリーザ孔33からの燃料漏れを懸念することなく機体を傾けてメンテナンス作業を能率よく行うことができる。尚、上記のようなブリーザ孔33を有しないキャップ35の場合には、燃料タンク7bの上側壁に穿設されるブリーザ孔33に長いパイプ39を上方に向けて設けることが望ましく、この場合には、パイプ39によって機体傾倒時の燃料漏れを防止することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 ミッションケース
1a 耕耘伝動部
1b 走行伝動部
1c 側壁
7 エンジン
7a ドレン口
21 リブ
25 排油受部
26 排油路
29 排出口
30 排油容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耕耘伝動部(1a)と走行伝動部(1b)とからなるミッションケース(1)の上部にエンジン(7)を搭載し、該エンジン(7)から駆動力を耕耘伝動部(1a)と走行伝動部(1b)に伝動する耕耘作業機において、前記ミッションケース(1)の耕耘伝動部(1a)と走行伝動部(1b)との間に、エンジン(7)のドレン口(7a)から排出される排油を受ける排油受部(25)と、該排油受部(25)から流出させる排油をミッションケース(1)の下方に向けて排出案内する排油路(26)を形成したことを特徴とする耕耘作業機の排油構造。
【請求項2】
排油路(26)を、耕耘伝動部(1a)と走行伝動部(1b)との間で、耕耘飛散土を遮るようにミッションケース(1)の側壁(1c)から左右方向に突設するリブ(21)を利用して形成する請求項1記載の耕耘作業機の排油構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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