説明

肌に接する衣類

【課題】 紫外線による光劣化防止特性に優れ、柔らかな風合いを表出する柔軟特性に優れ且つ消臭特性・抗菌特性に優れたストッキング、パンティストッキング、タイツ、ソックス等の靴下類や肌着類等の肌と直接接する衣類を提案する。
【解決手段】 有機繊維質基材を構成する繊維製のストッキング、パンティストッキング、タイツ、ソックス等の靴下類及び肌着類等の肌と直接接する衣類であって、染色加工を行う直前の状態まで製造された半製品を構成する繊維の表面に、光劣化防止剤層と柔軟剤層と光触媒加工剤層が積層されてなる。
上記前記光劣化防止剤層及び柔軟剤層並びに光触媒加工剤層の各々は有機質部を含んでいる。また、光劣化防止剤としては紫外線防止剤を、触媒加工剤としては酸化チタンを使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線による光劣化防止特性に優れ、柔らかな風合いを表出する柔軟特性に優れ且つ消臭特性・抗菌特性に優れたストッキング、パンティストッキング、タイツ、ソックス等の靴下類や肌着類等の肌と直接接する衣類に関する。詳しくは、有機繊維質基材を構成する繊維製のパンティストッキングすなわち、ポリアミド繊維(ナイロン)・ポリエステル繊維等の合成繊維製、アセテートなどの半合成繊維製、綿・絹等の天然繊維製、レーヨン等の再生繊維製、アセテート等の半合成繊維製の肌と直接接する衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
ストッキング、パンティストッキング、タイツ、ソックス等の靴下類及び肌着類等の肌と直接接する衣類に関しては、近年の消費者の清潔志向の高まりに伴って、光劣化防止特性、柔軟特性及び消臭特性・抗菌特性・防汚特性に対する関心が高まって来ており、今後の需要拡大が予想される。
【0003】
こうした状況にあって、過去には、例えば紫外線吸収剤を用いて紫外線による光劣化防止特性を改善するように工夫したパンティストッキング(後記特許文献1参照)、柔軟剤を用いて柔軟な感触を賦与するように工夫したパンティストッキング(特許文献2参照)、また光触媒加工剤を用いて消臭特性・抗菌特性・防汚特性を賦与するように工夫したパンティストッキング(特許文献3参照)等は開示されている。
【0004】
しかしながら、紫外線吸収剤を用いて紫外線による光劣化の防止特性を改善する工夫、柔軟剤を用いて柔軟な感触を賦与する工夫、光触媒加工剤を用いて消臭特性・抗菌特性・防汚特性を賦与する工夫のすべてを施したパンティストッキング等の肌と直接接する衣類は、現在見当たらない。
【0005】
そこで、本発明者は、光劣化防止特性に優れ且つ柔らかな風合を表出する柔軟特性に優れ且つ消臭特性・抗菌特性・防汚特性に優れたストッキング、パンティストッキング、タイツ、ソックス等の靴下類及び肌着類等の肌と直接接する衣類を提供すべく試行錯誤し、その結果、期待通りの性能を有する本発明に係る衣類を得ることができた。
【0006】
そもそも、例えばパンティストッキングを構成する繊維は、伸長/収縮の割合が大きく頻繁に繰り返されるために被膜が裂け易く、既存の紫外線吸収剤の付着性、柔軟剤の付着性及び光触媒加工剤の付着性が悪かった。中でも光触媒加工剤の付着性が最も悪く製品化に至っていなかったものと推測できる。
【0007】
【特許文献1】特開2003−147617号公報
【特許文献2】特許3264366号公報
【特許文献3】特開平9−192496号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、紫外線による光劣化の防止特性に優れ且つ柔らかな風合を表現する柔軟特性に優れ且つ消臭特性・抗菌特性・防汚特性のすべてに優れたストッキング、パンティストッキング、タイツ、ソックス等の靴下類及び肌着類等の肌と直接接する衣類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に係る衣類は、有機繊維質基材を構成する繊維製のパンティストッキング等の衣類であって、染色加工を行う直前の状態まで製造された半製品を構成する繊維の表面に、光劣化防止剤と柔軟剤と光触媒加工剤を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る衣類は、有機繊維質基材を構成する繊維製のパンティストッキング等の衣類であって、染色加工を行う直前の状態まで製造された半製品を構成する繊維の表面に、光劣化防止剤層と柔軟剤層と光触媒加工剤層が積層されて成ることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る衣類は、光劣化防止剤層及び柔軟剤層並びに光触媒加工剤層の各々が、有機質部を含んでいることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る衣類は、光劣化防止剤が紫外線防止剤であることを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る衣類は、光触媒加工剤が酸化チタンであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係るパンティストッキング等の肌と直接接する衣類は、有機繊維質基材を構成する繊維製の衣類であって、染色加工を行う直前の状態まで製造された半製品を構成する繊維の表面に光劣化防止剤と柔軟剤と光触媒加工剤を備えているので、これら各剤が相互に機能して紫外線による光劣化の防止特性、柔らかな風合を表現する柔軟特性及び消臭特性・抗菌特性・防汚特性のすべてにおいて優れた相乗効果を有し、肌に直接接する衣料類の一つとして好ましいものである。
【0015】
請求項2に係る衣類は、有機繊維質基材を構成する繊維製のパンティストッキング等の肌と直接接する衣類であって、染色加工を行う直前の状態まで製造された半製品を構成する繊維の表面に光劣化防止剤層と柔軟剤層と光触媒加工剤層が積層されているので、紫外線による光劣化の防止特性、柔らかな風合を表現する柔軟特性及び消臭特性・抗菌特性・防汚特性のすべてに優れた効果を有し、肌に直接接する衣料類の一つとして好ましいものである。
【0016】
請求項3に係る衣類は、半製品を構成する繊維、光劣化防止剤層、柔軟剤層及び光触媒加工剤層の各々が有機質部を含んでいるので、相互に付着するための親和性があって、紫外線吸収剤層の付着性、柔軟剤層の付着性及び光触媒加工剤層の付着性が良く、着用者の動きや洗濯等によってパンティストッキング等を構成する繊維の伸長/収縮が頻繁に繰り返えされても前記紫外線吸収剤層、柔軟剤層及び光触媒加工剤層が裂けにくく、耐用性に優れている。
【0017】
請求項4に係る衣類は、光劣化防止剤が紫外線防止剤であるので、紫外線に対してより強い製品を提供できる。
【0018】
請求項5に係る衣類は、光触媒加工剤が酸化チタンであるので、当該酸化チタンが有する微細な孔内にのみ活性酸素が発生することで繊維が脆化することを防止できる。
【0019】
なお、前記光劣化防止剤層及び柔軟剤層並びに光触媒加工剤層が染色機を用いて形成するようにすれば、光劣化防止剤層の付着、柔軟剤層の付着及び光触媒加工剤層の付着が満遍なく均質になされた良質の製品を提供できる。また、染色機としては、ストッキングなどのピース生地ならスミスドラム型染色機等を、肌着用生地の反物なら液流型染色機等を適宜生地に合わせて使用するとよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施の形態をパンティストッキングを例にして説明する。
【0021】
先ず、パンティストッキングの形に編み立てる工程、縫製工程等を施すことによって、染色加工を行う直前の状態まで製造されたナイロン繊維製の半製品1を得る。これら編み立て工程、縫製工程等は、公知の方法であるので、その説明はここでは省略する。
【0022】
その後に、後述する例えばドラム型染色機10を使用して、前記半製品1に染色加工を行う。
【0023】
前記染色加工は、例えばドラム型染色機10内で、色素の水溶液、色止め液、柔軟液に前記半製品を浸漬することにより、染色工程→色止め工程→柔軟工程の順で行われる。
【0024】
前記染色工程及び色止め工程については、本発明の要点でないので、その詳細な説明はここでは省略する。
【0025】
また、前記柔軟工程は、要するに半製品1を構成する各繊維2の表面に下地層3を形成する工程である。
【0026】
前記下地層3は、紫外線防止剤のコーティング工程→柔軟剤のコーティング工程の順で行うことで、半製品1を構成する各繊維2の表面に紫外線防止剤層4及び柔軟剤層5を設けることにより形成される。なお、本発明は、柔軟剤のコーティング工程→紫外線防止剤のコーティング工程の順で行うことにより下地層3を形成することもできる。
【0027】
前記紫外線防止剤のコーティング工程及び柔軟剤のコーティング工程は、上記染色機10を使用して行う。
【0028】
次いで、前記のようにして形成した下地層3の表面に光触媒加工剤をコーティングして前記紫外線防止剤層5の表面に光触媒加工剤層6を設け、よって完成品(図示せず)を得る。
【0029】
前記光触媒加工剤のコーティング工程も、上記染色機10を使用して行う。
【0030】
ここで、本発明の実施の一例として使用される例えば公知のドラム型染色機10の概略を図1に示して説明する。なお、図1は、前記ドラム型染色機10を示す構造説明図である。
【0031】
この染色機10は、同図に示すように染色浴槽11と、当該染色浴槽11の中に縦方向に回転自在にして軸支されたドラム10と、同染色浴槽11内の染色液12を加熱する高温蒸気用の加熱管(図示せず)から構成されている。
【0032】
前記回転ドラム10は、その軸心から多孔材製の仕切り板13が放射状に複数枚まで取付けられ、これら仕切り板13によって複数室(通常4室又は8室)に区切られている。なお、図には示していないが、前記染色浴槽11には前記ドラム10の上部を閉塞する開閉ドア(図示せず)が設けられている。
【0033】
前記のように、紫外線防止剤のコーティング工程及び柔軟剤のコーティング工程並びに光触媒加工剤のコーティング工程を行うことで紫外線防止剤及び柔軟剤並びに光触媒加工剤を付着させることは、紫外線による光劣化を防止するために及び柔らかな風合を維持するために並びに消臭特性・抗菌特性・防汚特性を向上させるためには、必要不可欠な条件であり、いずれが欠けても本発明の目的は達成されない。
【0034】
前記必要不可欠な条件を満たすために、本発明は次の光劣化防止剤(紫外線吸収剤)と柔軟剤と光触媒加工剤を使用することができる。
【0035】
光劣化防止剤(紫外線吸収剤)としては、例えばベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、シアノアクリレート系、サリチル酸エステル系等を有機溶剤溶液に分散体として含有させた組成物が使用できる。しかし、繊維の表面に関わる波長を吸収するもので繊維に悪影響を与えないものであれば特に制限はされない。好ましくは、2−(2′−ヒドロキシ−5′−アクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メタクリロキシエチルフェニル)−2H− ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−アクリロイルオキシエチルフェニル)− 5−クロロ−2H− ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系は最も好ましい。配合の最適範囲は、被染物の全体に対して0.5〜1.0重量%である。0.5重量%未満では繊維の劣化を防ぐことができないため好ましくなく、1.0重量%を超えると塗膜の透明性が低下するため好ましくない。また、紫外線吸収剤の粒径が大きい場合には塗膜の透明性が低下するので、分散されたときの粒径が1ミクロン以下のものが好ましい。
【0036】
柔軟剤としては、肌が感じる感覚に柔軟性を与えるとともにパンティストッキング独特の厚み感、弾力性、反発性を付与するためにノニオン系、カチオン系、又はアニオン系が採用できる。この場合増粘剤を利用して増粘できる。配合の最適範囲は、被染物の全体に対して1.5〜4.0重量%である。1.5重量%未満では繊維の劣化を防ぐことができないため好ましくなく、4.0重量%を超えると光劣化防止剤や光触媒加工剤が脱落する為、好ましくない。
【0037】
光触媒加工剤としては、前記有機繊維質基材を構成する繊維が有する風合いや可撓性を維持し、有機質基材と光触媒との接着性に優れ、光触媒による効果を長期間にわたって保持しうる光触媒含有基材であることが好ましい。特に、本発明の実施には、光触媒による光触媒反応が進行に伴って酸化分解されない、いわゆるチョーキングという被膜の劣化が経時とともに発生しない有機質樹脂バインダーにより光触媒微粒子が結着された光触媒加工剤が好適である。また前記光触媒の代表例としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、二酸化チタンと酸化亜鉛との複合酸化物などが挙げられ、これらの光触媒は、それぞれ単独でまたは2種以上を併用することができる。これらの光触媒の中では、二酸化チタンは、触媒活性が高いことから好適に使用できて好ましい。
【0038】
本発明者は、前記特許文献1〜3を参考に、紫外線吸収剤を用いて紫外線による光劣化防止特性を改善するように工夫したパンティストッキング、柔軟剤を用いて柔軟な感触を賦与するように工夫したパンティストッキング、また光触媒加工剤を用いて消臭特性・抗菌特性・防汚特性を賦与するように工夫したパンティストッキングを再現し、これら再現品と本発明による完成品とを比較した結果、再現品には、紫外線による光劣化の防止特性、柔らかな風合を表現する柔軟特性及び消臭特性・抗菌特性・防汚特性のすべてに優れたものがないことを確認できた。
【0039】
また、本発明ではパンティストッキングを実施形態の一例としてあげたが、本発明はパンティストッキングに限られず、ストッキング、タイツ、ソックス等のその他の靴下類ならびに肌着類など、肌と直接接する衣類の全般に適用できることも勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施の形態に係る完成品を構成する繊維の断面を模式的に示す拡大断面図である。
【図2】本発明の実施の一例として用いられるドラム型染色機を示す概念図である。
【符号の説明】
【0041】
1 半製品
2 繊維
3 下地層
4 紫外線防止剤層
5 柔軟剤層
6 光触媒加工剤層
10 ドラム型染色機
11 染色浴槽
12 染色液
13 仕切り板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機繊維質基材を構成する繊維製のストッキング、パンティストッキング、タイツ、ソックス等の靴下類及び肌着類等の肌と直接接する衣類であって、染色加工を行う直前の状態まで製造された半製品を構成する繊維の表面に、光劣化防止剤と柔軟剤と光触媒加工剤を備えことを特徴とする消臭性能と抗菌性能に優れた肌に接する衣類。
【請求項2】
有機繊維質基材を構成する繊維製のストッキング、パンティストッキング、タイツ、ソックス等の靴下類及び肌着類等の肌と直接接する衣類であって、染色加工を行う直前の状態まで製造された半製品を構成する繊維の表面に、光劣化防止剤層と柔軟剤層と光触媒加工剤層が積層されてなることを特徴とする消臭性能と抗菌性能に優れた肌に接する衣類。
【請求項3】
前記光劣化防止剤層及び柔軟剤層並びに光触媒加工剤層の各々が、有機質部を含んでいることを特徴とする請求項1又は2記載の肌に接する衣類。
【請求項4】
光劣化防止剤が紫外線防止剤であることを特徴とする請求項1又は2記載の肌に接する衣類。
【請求項5】
光触媒加工剤が酸化チタンであることを特徴とする請求項1又は2記載の肌に接する衣類。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−37279(P2006−37279A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−219508(P2004−219508)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(000000398)アツギ株式会社 (13)
【Fターム(参考)】