説明

肩掛け

【課題】 かばんの荷重が肩掛けベルトの幅全体を通じて肩に平均的に掛かるようにして保持を安定させると共に、装飾性や意匠性などの付加機能を付与可能な肩掛けを提供すること。
【解決手段】 肩に掛けて用いる物品の肩掛けにおいて、肩掛けベルトまたは肩掛けベルトに付設される肩当て部分の少なくとも使用者の肩に当たる部位を、使用者の肩の傾斜に合わせて人体側から外側に向かって厚く構成する。肩当て部分の内部に、弾性を有する物質を充填されることで厚みを設けてもよいし、肩当て部分の表面に、高さの異なる不連続な突起の集合体から成る突部を有することで厚みを設けてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肩掛け式のかばんのベルトなど、肩掛けの構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の旅行かばんやビジネスバッグまたは婦人用ショルダーバッグなど、肩掛けベルトを備えた肩掛け式のかばんにおいては、使用時、ベルトの吊り下げた角度が鉛直に対して若干傾斜する。そのため、ベルトの肩掛け部において、ベルトの底面と肩の傾斜角度が一致せず、肩に掛かる荷重が不均一で人体側に対し外側のベルトの縁が浮き上がる状況になり、不安定なので使用中に頻繁に掛けなおす必要がある。
【0003】
また、重量の大きなかばんにおいては、肩掛けベルトの肩掛け部にベルトより広幅の肩当てを付設して、肩に掛かる荷重を分散させたり、肩当部に柔軟な構造の厚みや突出部を確保することにより、緩衝効果を持たせているものもあるが、基本的な構造は平板な帯状物であり、肩に掛かる荷重が不均一であることには違いない。
【0004】
さらに、肩掛けベルトは単なるかばんの吊り下げ部としての機能しか期待されておらず、前述のように平板な構造のものしか存在しないため、肩掛けベルトがかばん全体に影響を及ぼす装飾性、意匠性などの面は軽視されている。
【0005】
特許文献1は、肩パットに突起物を設けることにより角度を保持することを述べているが、突起物が肩の頂点に位置しないと意味をなさず効果が限定的であり、さらに、突起物は上に向かっているので肩掛けベルトが局部的に上部に突出することになり、デザイン性を損なうことがあり実用的とは言い難い。
【特許文献1】特開2001-78821号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、肩掛けかばんの肩掛けベルトなど、肩掛けの構造を工夫することにより、使用時にかばんの荷重が肩掛けベルトの幅全体を通じて肩に平均的に掛かるようにして、ずり落ちにくくすることで使用時の安定感が増し、さらに肩掛けベルトに装飾性や意匠性などの付加機能を付与することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の肩掛けは、肩に掛けて用いる物品の肩掛けにおいて、肩掛けベルトまたは肩掛けベルトに付設される肩当て部分の少なくとも使用者の肩に当たる部位が、使用者の肩の傾斜に合わせて人体側から外側に向かって厚く構成されることを特徴とする。
ここで、肩当て部分の内部に、弾性を有する物質を充填されることで厚みを設けてもよい。
また、肩当て部分の表面に、高さの異なる不連続な突起の集合体から成るで突部を有することで厚みを設けてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、簡易な構成でありながら、肩掛けの肩に当たる部分の人体側に対して外側に相当する縁が肩から浮き上がらず、かばんの荷重が肩に平均して掛かるようになるので、かばんがずり落ちにくくなり安定し、それに伴って肩に掛けなおす必要がなくなる。
また、重量の大きなかばんを肩に下げる場合、肩に掛かる荷重が、肩掛けの幅に均等に分散するので、肩に発生する局部的な荷重による痛み等が緩和される。
さらに、婦人用のバッグなどを念頭におくと、肩掛けベルトの肩に当たる部分の外側に向く厚みの部分が広がるので、その面を利用して新たな装飾や意匠を施すことが可能になり、デザイン性と商品価値の向上に寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を基に説明する。
本発明は、肩掛けかばんなど、肩に掛けて用いる物品において、その肩掛けベルトの少なくとも肩に当たる部分の断面、または、肩掛けベルトに付設する肩当ての少なくとも肩に当たる部分の断面の厚みが、それを利用する人体側に対し内側から外側に増すように格差を設けることを特徴とする。
【0010】
肩掛けベルトまたは肩掛けベルトに付設する肩当ての断面の厚みに格差をつける手段としては、次の4通りの手段が有効である。
肩掛けベルトまたはベルトに付設する肩当ての素材自体の厚みを変える。または、内部に軽くてクッション性のある物質を充填する。または、内部に気体または液体を密封する。または、上面と底面の間の空間を柱状または板状の支えで支持する。
【0011】
さらに、厚みに格差をつける手段のバリエーションとして、肩掛けベルトまたは肩掛けベルトに付設する肩当ての少なくとも肩に当たる部分の底面から下方に向けて、高さの異なる不連続な突起の集合体で突部を構成する方法もある。その場合、突起は、断面が任意の形の柱状や、肩掛けベルトの長さ方向に平行に並ぶ板状や、肩掛けベルトの長さ方向に直角に並ぶ板状などが有効である。
【0012】
肩掛けベルトまたは肩掛けベルトに付設する肩当ての素材は、皮革またはゴムまたは合成樹脂など、従来から使用されている弾力性のあるものが、好適に利用できる。また、それらと布などとの接合物でもよい。
特に、前述の突起を弾力性を有する素材で構成すると、弓状に湾曲させることにより肩に掛かる荷重に対する緩衝性を上げることもできる。
肩掛けベルトの肩に当たる部位の底面の下部に、前述のような構造を有する部材を接着する方法も有効である。
【実施例】
【0013】
以下では、肩掛けの例として、かばんを挙げるが、本発明は、肩に掛けて用いるベルト状の肩掛け一般に適用可能である。
図1は、本発明による肩掛けの使用状態を示す斜視説明図である。
肩掛けの肩に当たる部分の断面において、人体側に対し内側に相当する縁(A)よりも人体側に対し外側に相当する縁(B)の厚みが増す構造になっている。肩掛けベルトの長さ方向の両端(C)、(D)の断面は前述の厚みの格差を維持してもしなくてもよい。
本実施例では、肩掛けベルト(ウ)を通す孔(E)を持つ場合の肩当てを使用している状態を示している。人体側に対する内側すなわち頭部側(ア)に縁(A)が、人体側に対し外側すなわち肩側(イ)に縁(B)が向くように使用する。肩当ての上面にベルトが上部から確認できるように窓状の穴(F)を複数開けることもできる。肩当てを肩掛けベルトに付設する手段としては、このようにベルトを通す孔を設ける方法の他に、肩当ての上面にベルトを包み込む構造を備えて着脱可能な状態にする方法もある。
以下では、実質的に同内容なので、肩掛けベルトと肩掛けベルトに付設する肩当てを区別せずに、肩当て部の構造について述べる。
【0014】
図2は、図1に示した肩当ての中央部の縦断面図である。
厚みを増した部分(G)の内部は、皮革、ゴムまたは合成樹脂など外部の構造に使用した素材自体の厚みを増すことで構成する。或いは、軽くクッション性のある物質を充填したり、上面と底面との空間を柱状または板状の支えで支持したり、気体または液体を密封したりして構成してもよい。
【0015】
図3は、別実施例の肩当ての斜視説明図である。
肩当て部の断面の厚みに格差をつけるかわりに、肩当ての少なくとも肩に当たる部分の底面から下方向に向けて高さが異なる不連続な突起(H1)の集合体を設けている。その高さは、縁(A)から縁(B)に向かい段階的に増すようにする。突起(H1)の断面の形状と大きさは任意でよいがテーパーを持たせるのがよい。また、突起(H1)を途中で弓状に湾曲させると、肩に掛かる荷重の緩衝効果を増すこともできる。
【0016】
図4も、別実施例の肩当ての斜視説明図である。
前例の突起(H2)の形状を板状にして、肩掛けベルトの長さ方向に直角なるように並べて構成してある。板状の突起(H2)の厚みは任意でよいが、高さが縁(B)に向かって縁(A)よりも段階的に高くなるようにする。
【0017】
図5も、別実施例の肩当ての斜視説明図である。
前例の突起(H3)の形状を板状にして、肩掛けベルトの長さ方向に平行になるように並べて構成してある。板状の突起(H3)の厚みは任意でよいが、高さが縁(A)から縁(B)に向け段階的に増すように構成する。板状の突起(H3)は途中で湾曲させて肩に掛かる荷重を緩衝させてもよい。
【0018】
図6は、本実施例の肩掛けを用いたバッグを示す斜視図である。
本実施例では、婦人用バッグに付設された肩掛けベルトに、本発明の肩掛けを適用した場合の一例を示している。このように、肩掛けベルトの肩に当たる部分の外側に向く厚みの部分が広がるので、その面を利用して新たな装飾や意匠を施すことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明によると、肩掛けかばんを安定保持できるばかりか、使用上の快適性とデザイン性の向上に有益であり、産業上利用価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による肩掛けの使用状態を示す斜視説明図
【図2】同、肩当ての中央部の縦断面図
【図3】別実施例の肩当ての斜視説明図
【図4】別実施例の肩当ての斜視説明図
【図5】別実施例の肩当ての斜視説明図
【図6】本発明による肩掛けを用いたバッグを示す斜視図
【符号の説明】
【0021】
ア 人体側に対する内側(首側)
イ 人体側に対する外側(肩側)
ウ 肩掛けベルト
A 肩掛けベルトの縁
B 肩掛けベルトの縁
C 肩当ての端
D 肩当ての端
E ベルトを通す孔
F 肩当ての上部に開いた穴
G 厚みの内部
H1〜H3 突起


【特許請求の範囲】
【請求項1】
肩に掛けて用いる物品の肩掛けにおいて、
肩掛けベルトまたは肩掛けベルトに付設される肩当て部分の少なくとも使用者の肩に当たる部位が、使用者の肩の傾斜に合わせて人体側から外側に向かって厚く構成される
ことを特徴とする肩掛け。
【請求項2】
肩当て部分が、内部に弾性を有する物質を充填されることで厚みを備える
請求項1に記載の肩掛け。
【請求項3】
肩当て部分が、高さの異なる不連続な突起の集合体から成る突部を有することで厚みを備える
請求項1に記載の肩掛け。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−167114(P2006−167114A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−363226(P2004−363226)
【出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【出願人】(504126363)
【Fターム(参考)】