説明

胃潰瘍治療剤

【課題】本発明は、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、Zollinger-Ellison症候群、逆流性食道塩、急性及び慢性胃炎等の予防及び/又は治療剤として有用な医薬組成物を提供することにある。
【解決手段】H2受容体拮抗剤であるロキサチジン及びその薬学上許容されうる塩と防御因子増強剤であるレバミピドとを組み合せた医薬組成物であって、通常の投与量又は少ない投与量(低用量)でも優れた治療効果を発揮し、かつ副作用を低減できる医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、Zollinger-Ellison症候群、逆流性食道塩、急性及び慢性胃炎等の予防及び/又は治療剤として有用であり、活性成分として1)ロキサチジン及びその薬学上許容されうる塩及び2)レバミピドを有効成分とする医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ロキサチジン及びその薬学上許容されうる塩は、胃壁に存在するH2受容体に作用し、胃液の分泌を抑制する作用を有するH2受容体拮抗剤の一つである。特に胃潰瘍、十二指腸潰瘍の疼痛をはじめとする自覚症状をすみやかに消失させ、高い内視鏡的治癒率を示すものである。また、その基本構造は6員環を基本骨格とするユニークな構造をしている。ロキサチジン及びその薬学上許容されうる塩の代表的な化合物としては、ロキサチジン酢酸エステル塩酸塩が既に上市され、H2受容体拮抗作用を有する胃酸分泌抑制剤として広く一般に知られている。
レバミピドは、胃粘膜防御因子を増強する作用をもつ化合物で防御因子増強剤と呼ばれ、作用機序として胃粘膜血流改善、アルカリ分泌、内因性プロスタグランジン含量増加などが明らかにされており、特に内因性プロスタグランジンの増加により胃の防御機能を様々な方法で高めることで知られた薬剤である。具体的には、胃潰瘍治療剤、及び胃粘膜の内因性プロスタグランジン増加作用及び胃粘膜障害の発症因子の1つであるフリーラジカル抑制作用を有することから、胃炎治療剤として知られている。
【0003】
これまでH2受容体拮抗剤及び防御因子増強剤は、単独で用いるほか、これらの薬剤を組み合わせることが知られている。
例えば、(1)H2受容体拮抗剤であるシメチジン及び防御因子増強剤であるエグアレンナトリウムをそれぞれの臨床用量で組み合わせた胃潰瘍治療剤(例えば、非特許文献1参照。)が開示されている。それぞれの臨床用量は、シメチジンが400mg×2回/日、エグアレンナトリウムが15mg×2回/日である。ここで、エグアレンナトリウムは、防御因子増強剤の中でも内因性プロスタグランジンを介さない細胞保護作用などで胃粘膜を保護強化する薬剤である。
さらに、(2)H2受容体拮抗剤と胃粘膜保護作用を有する薬剤とを組み合わせた胃傷害治療剤(例えば、特許文献1参照。)が開示されている。具体的に、H2受容体拮抗剤としてファモチジン、胃粘膜保護作用を有する薬剤としてテプレノンが開示されている。なお、テプレノンは、防御因子増強剤の中でも胃粘液を増加させることを特徴とする薬剤として知られている。
以上のとおり、H2受容体拮抗剤と防御因子増強剤の併用については種々知られているが、ロキサチジン化合物と内因性プロスタグランジンの増加を主作用とするレバミピドとを組み合わせた医薬組成物、さらには胃炎・胃潰瘍治療剤に関しては知られていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】薬理と治療、27(5)、1999年、p91−106
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-89393公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、Zollinger-Ellison症候群、逆流性食道塩、急性及び慢性胃炎等の予防及び/又は治療剤として十分な治療効果が得られ、副作用も少ない優れた医薬組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、Zollinger-Ellison症候群、逆流性食道塩、急性及び慢性胃炎等の予防及び/又は治療に有用な医薬組成物を見出すために、種々のH2受容体拮抗剤と防御因子増強剤の併用(配合)について鋭意検討を重ねた結果、H2受容体拮抗剤であるロキサチジン及びその薬学上許容されうる塩と防御因子増強剤であるレバミピドとを組み合せた医薬組成物が、通常の投与量又は少ない投与量(低用量)でも優れた治療効果を発揮し、かつ副作用を低減できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の医薬組成物は、
1.1)ロキサチジン及びその薬学上許容されうる塩及び2)レバミピドを有効成分とする医薬組成物、
2.ロキサチジン及びその薬学上許容されうる塩が、ロキサチジン酢酸エステル塩酸塩である上記1記載の医薬組成物、
3.ロキサチジン及びその薬学上許容されうる塩とレバミピドの含有割合が、重量比で1:0.1〜1:10である上記1記載の医薬組成物、
4.ロキサチジン及びその薬学上許容されうる塩とレバミピドの含有割合が、重量比で1:0.2〜1:4である上記1記載の医薬組成物、
5.レバミピドを25〜100mg、及びロキサチジン及びその薬学上許容されうる塩を10〜75mg含有する上記1記載の医薬組成物、
6.胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、Zollinger-Ellison症候群、逆流性食道塩、急性及び慢性胃炎から選択された少なくとも一種の症状を予防及び/又は治療するための上記1記載の医薬組成物、
7.錠剤、カプセル剤、顆粒及び細粒の形態である上記1記載の医薬組成物、
8.ヒト又は非ヒト動物に、ロキサチジン及びその薬学上許容されうる塩及びレバミピドを投与し、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、Zollinger-Ellison症候群、逆流性食道塩、急性及び慢性胃炎から選択された少なくとも一種の症状を予防又は治療する方法を提供する。
なお、本明細書中、医薬組成物は、医薬品、医薬部外品なども含む意味で用いる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の医薬組成物は、H2受容体拮抗剤であるロキサチジン及びその薬学上許容されうる塩と、防御因子増強剤であるレバミピドとを併用(配合)するため、対象疾患(例えば、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、Zollinger-Ellison症候群、逆流性食道塩、急性及び慢性胃炎等)の予防及び/又は治療効果を大幅に増強、改善できる。また、ロキサチジン及びその薬学上許容されうる塩及びレバミピドをそれぞれ単独に用いた場合に比べて、予防及び/又は治療効果(例えば、胃傷害抑制効果など)が大幅に改善される。特にそれぞれの活性成分を通常の投与量(使用量)で使用した場合でも高い予防及び/又は治療効果が得られるが、投与量を低減した場合(低用量)でも通常量と同等もしくはそれ以上の予防及び/又は治療効果を得ることができる。そのため、副作用が少なく、安全性の高い医薬品を提供することができる。さらに、低用量で配合された医薬組成物は、製剤化において小型化が可能となり、患者にとって飲みやすい薬剤を提供することが可能となり、服薬コンプライアンスの改善につながる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の医薬組成物は、1)ロキサチジン及びその薬学上許容されうる塩及び2)レバミピドとを組み合わせた医薬組成物である。
本発明に用いられるロキサチジン及びその薬学上許容されうる塩は、H2受容体拮抗作用を有する成分又は薬剤であればよく、例えば、胃酸分泌を抑制することなどにより、胃潰瘍や胃炎等の傷害を改善する化合物であってもよい。
上記ロキサチジン及びその薬学上許容されうる塩(生理学的又は薬学的に許容可能な塩など)としては、例えば、無機又は有機塩基との塩、無機又は有機酸との塩、中性、塩基性又は酸性アミノ酸との塩等が挙げられる。無機塩基との塩の好適な例としては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属、ならびにアルミニウム、アンモニウム等との塩が挙げられる。有機塩基との塩の好適な例としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどのアルキルアミンとの塩;ピリジン、ピコリンなどの複素環式アミンとの塩;エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミンとの塩;ジシクロヘキシルアミンなどのシクロアルキルアミンとの塩;N,N−ジベンジルエチレンジアミンなどのアルキレンジアミン誘導体との塩等が挙げられる。無機酸との塩の好適な例としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等との塩が挙げられる。有機酸との塩の好適な例としては、例えばギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸などのモノカルボン酸との塩;フマール酸、マレイン酸、シュウ酸などの多価カルボン酸との塩、酒石酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸などのオキシカルボン酸との塩;メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸との塩などが挙げられる。中性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えば、グリシン、バリン、ロイシン等との塩が挙げられ、塩基性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えば、アルギニン、リジン、オルニチン等との塩が挙げられ、酸性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸等との塩が挙げられる。このようなロキサチジン及びその薬学上許容されうる塩としては、例えば、ロキサチジン酢酸エステル塩酸塩が挙げられる。なお、ロキサチジン酢酸エステル塩酸塩の化学名は、(3−{3−[(ピペリジン−1−イル)メチル]フェノキシ}プロピルカルバモイル)メチルアセテートモノハイドレイドである。
【0010】
本発明に用いられるレバミピドは、胃潰瘍及び胃炎治療剤であり、その化学名は、(2RS)−2−(4−クロロベンゾイルアミノ)−3−(2−オキソ−1,2−ジヒドロキノリン−4−イル)プロパノイック酸(鏡像異性体を含む)である。
本発明の医薬組成物において、ロキサチジン及びその薬学上許容されうる塩とレバミピドの割合は、重量比で1:0.1〜1:10の範囲から選択でき、好ましくは1:0.2〜1:6重量部、さらに好ましくは1:0.2〜1:4重量部程度(例えば:1:0.5〜1:4)である。
【0011】
本発明の医薬組成物は、それぞれ単独に用いた場合に比べて、予防及び/又は治療効果(例えば、胃傷害抑制効果など)が大幅に改善される。特にそれぞれの活性成分の投与量(使用量)が通常量でも高い予防及び/又は治療効果が得られるが、投与量を低減した場合(低用量)でも通常量と同等もしくはそれ以上の予防及び/又は治療効果を得ることができる。例えば、ヒトにおけるロキサチジン及びその薬学上許容されうる塩の一つであるロキサチジン酢酸エステル塩酸塩の1回の投与量(通常量)は、75mgまたは150mgであり、レバミピドの1回の投与量(通常量)は、100mgであるが、本発明の医薬組成物では、ロキサチジン酢酸エステル塩酸塩の1回の投与量を10〜150mg、好ましくは10〜37.5mg及びレバミピドの1回の投与量を10〜100mg、好ましくは、10〜50mgとすることができる。
投与回数は、特に制限されず、例えば、1日1回であってもよく、必要に応じて複数回(例えば、2〜3回)であってもよい。
【0012】
1)ロキサチジン及びその薬学上許容されうる塩と2)レバミピドとの組み合わせのうち、特に、ロキサチジン酢酸エステル塩酸塩とレバミピドとの組合せが好ましい。
本発明の医薬組成物は、1)ロキサチジン及びその薬学上許容されうる塩と2)レバミピドとを組み合わせて使用すればよく、ロキサチジン及びその薬学上許容されうる塩とレバミピドとの双方を含む医薬組成物(医薬製剤)であってもよく、ロキサチジン及びその薬学上許容されうる塩を含む医薬組成物(医薬製剤)とレバミピドを含む医薬組成物(医薬製剤)とを組み合わせた医薬(又は医薬製剤)であってもよい。前記医薬組成物において、有効成分であるロキサチジン及びその薬学上許容されうる塩とレバミピドとを、担体成分などを用いることなく、そのまま医薬として用いてもよい。また、ロキサチジン及びその薬学上許容されうる塩とレバミピドとは、医薬製剤(又はその製造)に好適に使用され、通常、医薬製剤の形態で用いる場合が多い。なお、本発明には、ロキサチジン及びその薬学上許容されうる塩を含む医薬組成物(医薬製剤)とレバミピドを含む医薬組成物(医薬製剤)とを組み合わせたキットも含まれる。
なお、前記医薬組成物の投与形態は特に制限されず、例えば、ロキサチジン及びその薬学上許容されうる塩を含む医薬(又は医薬製剤)とレバミピドを含む医薬(又は医薬製剤)とを一緒に(同時に)投与してもよく、別々に投与に供してもよい。別々に投与する場合、両医薬(又は医薬製剤)のうち一方の医薬を投与した後、時間差をおいて他方の医薬を同一対象に投与してもよい。通常、予め投与した一方の医薬の活性成分の効果が持続している間に、他方の医薬を投与する場合が多い。
前記有効成分(ロキサチジン及びその薬学上許容されうる塩及び/又はレバミピド)は、通常、生理学的に許容されうる担体、賦形剤、結合剤、希釈剤などと混合して製剤化し、医薬製剤(医薬組成物)として投与する場合が多い。
【0013】
医薬製剤は、特に制限されず、固形剤[粉末剤、細粒剤、散剤、顆粒剤、丸剤、カプセル剤(硬カプセル剤、軟カプセル剤など)、錠剤、圧搾剤、溶融固化剤、フィルム製剤など]、半固形剤(軟軟膏、硬軟膏などの軟膏剤など)または液剤(懸濁剤、乳剤、シロップ剤、注射剤、ゼリー剤、グミ剤など)のいずれであってもよい。
また、本発明の医薬の投与形態は、特に制限されず、経口投与及び非経口投与のいずれの形態であってもよい。上記医薬組成物のうち、経口剤としては、例えば、顆粒剤(ドライシロップ剤なども含む)、散剤、錠剤(舌下錠、口腔内崩壊錠、トローチ剤、チュアブル錠なども含む)、カプセル剤(ソフトカプセル、マイクロカプセルを含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤、ゼリー剤、グミ剤等が挙げられる。なお、経口剤には、公知の製剤成分を用いて、有効成分の体内での放出をコントロールした製剤(例えば、速放性製剤、徐放性製剤など)や少量の水もしくは水を必要とすることなく服用が可能な製剤(フィルム製剤)も含まれる。また、非経口剤としては、例えば、注射剤(皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤、点滴剤を含む)、外用剤(経鼻投与製剤、経皮製剤、軟膏剤、坐剤を含む)等が挙げられる。
【0014】
前記有効成分を含む医薬製剤は、投与経路を問わず、前記有効成分と担体(医薬製剤に適した製剤添加物(「製剤成分」と称する場合もある))とを組合せ、慣用の方法で製剤化(又は製造)できる。すなわち、医薬製剤は、例えば、局方に記載の錠剤、顆粒剤、散剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、トローチ剤、ドライシロップ剤、シロップ剤、液剤及び懸濁剤の製造法に従って製造することができる。なお、固形製剤は、通常、結合剤、賦形剤、崩壊剤から選択された少なくとも1つの担体(特に、少なくとも賦形剤)を用いて調製できる。例えば、顆粒剤は、押出造粒、噴霧造粒などにより有効成分と担体成分とを造粒し、必要により整粒することにより調製できる。錠剤は、前記造粒物を必要により添加剤とを混合し、圧縮成形し、次いで必要により、味のマスキング、腸溶性あるいは持続性を付与する自体公知の方法でコーティングすることにより製造できる。カプセル剤は、カプセルに顆粒剤を充填することにより調製できる。また、粉末剤などの粉状固形剤(例えば、粉状の外用剤など)は、有効成分を、賦形剤、必要により増粘剤などと共に混合することにより調製できる。なお、固形状の坐剤は、有効成分と担体成分と必要により添加剤とを混合して、圧搾器などにより圧搾することにより圧搾剤として調製でき、また、溶融混合した混合物を冷却固化することにより溶融固化剤として調製できる。
【0015】
液剤(ゼリー剤、グミ剤を含む)は、剤型に応じて、有効成分と液体担体成分(精製水などの水性溶剤、油性溶剤、ゲル基剤(水性又は油性のゲル剤など)など)と必要により添加剤(乳化剤、分散剤や懸濁剤、等張化剤、溶解補助剤、保存剤、安定剤、矯味剤、pH調整剤や緩衝剤など)とを混合(例えば、溶解、懸濁、乳化など)することにより調製でき、必要により滅菌処理される。軟膏剤は、有効成分と、担体成分(油性基剤、水性基剤など)と(必要により添加剤と)を、必要により加熱下、混合又は練合することにより調製できる。
【0016】
前記担体(製剤添加物)としては、前記剤型の医薬品を製造する上で通常使用される添加剤が挙げられ、例えば、局方の他、(1)医薬品添加物ハンドブック(薬事日報社、2007)、(2)医薬品添加物事典2007(薬事日報社、2007)に収載されている成分(例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、コーティング剤など)の中から、投与経路及び製剤用途に応じて適宜選択してもよい。
【0017】
例えば、固形剤に用いられる担体成分又は添加剤のうち賦形剤としては、乳糖水和物、白糖、ブドウ糖、マンニトール、ソルビトールなどの糖類;トウモロコシデンプン(コーンスターチ)などのデンプン;結晶セルロース(微結晶セルロースも含む)などの多糖類、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カルシウムなどが例示できる。結合剤としては、α化デンプン、寒天、アラビアゴム、デキストリンなどの多糖類;ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ポリ乳酸などの合成高分子;メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロースエーテル類などが例示できる。崩壊剤としては、炭酸カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム(カルメロースカルシウム)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(カルメロースナトリウム)、クロスポピドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどが例示できる。滑沢剤としては、例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール6000などが挙げられる。また、固形剤は、添加剤として、崩壊助剤、界面活性剤(アルキル硫酸ナトリウムなどのアニオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルなどの非イオン系界面活性剤など)、脂質類(水素添加植物油などの油脂、リン脂質など)、増粘剤(天然ガム類、セルロース誘導体、アクリル酸重体など)、油性基剤[高級脂肪酸エステル、例えば、高級脂肪酸のグリセリド(カカオ脂、ウイテプゾル類を含む)など;中級脂肪酸(ミグリオール類を含む);植物油(ゴマ油、大豆油、綿実油を含む);ワセリン、流動パラフィン、ロウなどの炭化水素系基剤;セタノール等]、水性基剤(親水ワセリン、マクロゴールなど)、酸化防止剤(抗酸化剤)、保存剤又は防腐剤、湿潤剤、帯電防止剤などを含有してもよい。なお、圧搾剤及び溶融固化剤(固形状の坐剤など)では、前記油性基剤、水性基剤などを担体成分として用いる場合が多い。
【0018】
なお、前記コーティングに使用するコーティング剤としては、例えば、糖類、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)などのセルロース誘導体、ポリオキシエチレングリコール、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、オイドラギット(メタアクリル酸・アクリル酸共重合物)、酸化チタン及びマクロゴール6000などが用いられる。コーティング剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートなどの腸溶性成分であってもよく、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートなどの塩基性成分を含むポリマー(オイドラギットなど)で構成された胃溶性成分であってもよい。
なお、これらの医薬製剤は、矯味剤(例えば、甘味剤など)やマスキング剤、着色剤、矯臭剤(芳香剤など)、清涼化剤、消泡剤などを含有してもよい。
【0019】
本発明の医薬(又は医薬製剤)は、必要により、他の生理活性成分又は薬理活性成分、例えば、ビタミン類、アミノ酸類、制酸剤、生薬成分、酵素類、降圧薬、他の高脂血症治療剤(ニコチン酸又はその誘導体、イオン交換薬、プロブコール、植物ステロールなど)、糖尿病薬(インスリン製剤、血糖降下薬など)などを含有してもよい。
【0020】
本発明の医薬は、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、Zollinger-Ellison症候群、逆流性食道炎、症候性逆流性食道炎、内視鏡陰性逆流性食道炎、非びらん性逆流性食道炎、胃食道逆流症、急性及び慢性胃炎、NUD(Non Ulcer Dyspepsia)、胃癌、胃MALTリンパ腫、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、急性ストレス潰瘍及び急性胃粘膜病変による上部消化管出血、非ステロイド系抗炎症剤に起因する潰瘍、手術後ストレスによる胃酸過多及び潰瘍、侵襲ストレスによる上部消化管出血、早期胃癌に対する内視鏡的粘膜切除術(EMR)後胃萎縮性胃炎、胃過形成性ポリープ、特発性血小板減少性紫斑病、ヘリコバクター・ピロリ菌に起因する疾患、胃酸逆流に起因する喘息、胃酸逆流による睡眠障害、GERDによる胸やけ、喉頭炎(Laryngitis)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、閉塞性無呼吸症またはバレット食道(Barrett's
esophagus)の予防及び/又は治療剤(治療薬)として有用である。なお、本発明の医薬は、これらの症状から選択された少なくとも一種の症状の予防又は治療に適しており、複数の症状の予防又は治療するための予防又は治療剤としても有用である。
本発明の医薬は、すでに単独で医薬として使用されていることもあり、毒性も低く、その安全性も確立されており、ヒト及び非ヒト動物、通常、哺乳動物(例、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、サル等)に対し、安全に用いられる。

【実施例】
【0021】
次に、本発明を実施例及び試験例をもってさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0022】
表1に記載の成分(mg)に従い、製剤(錠剤:フィルムコート錠)を慣用の方法により製剤化した。
表1

【0023】
試験例1.モノクロラミン胃傷害モデルに対する胃傷害抑制作用
<試験方法>
ラットを前日より約24時間絶食し、体重値を指標に1群5匹に群分けした。その後、ロキサチジン酢酸エステル塩酸塩(ROX)、レバミピド(REB)又は媒体として0.25%カルボキシメチルセルロースナトリウム溶液を、単独あるいは併用して経口投与した。その30分後に、120 mmol/Lのモノクロラミン溶液(1 mL/body)を経口投与して胃傷害を惹起させた。胃傷害惹起1時間後にラットを致死させて胃を摘出した。胃は大弯に沿って切開し、胃粘膜に発症した胃傷害をデジタルカメラで撮影して胃傷害面積を測定した。成績は平均値として表し、胃傷害抑制率は下記の式1より算出した。

式1: 胃傷害抑制率(%)= 100 ×〔1−被験物質投与群の平均胃傷害面積 / 対照群の平均胃傷害面積〕

<試験結果>
表2

図1


ROX 2.5 mg/kg群及びREB 0.5 mg/kg群(単独群)の胃傷害抑制率はそれぞれ6.3及び30.7%を示した。一方、ROX及びREBを併用投与したROX 2.5 mg/kg + REB 0.5 mg/kg併用群の胃傷害抑制率は63.9%を示し、単独群と比較して非常に高い胃障害抑制効果を示した。さらに、併用群は対照群と比較した場合、有意に高い胃傷害抑制効果を示した(表2及び図1)。

【0024】
試験例2.ラット塩酸−アスピリン胃傷害モデルに対する胃傷害抑制作用
<試験方法>
ラットを前日より約24時間絶食し、体重値を指標に1群5匹に群分けした。その後、ロキサチジン酢酸エステル塩酸塩(ROX)、レバミピド(REB)又は媒体として0.25%カルボキシメチルセルロースナトリウム溶液を、単独あるいは併用して経口投与した。なお、参考までに、ROX及びREBとは作用機序が異なるが臨床では低用量で胃炎・胃潰瘍の治療に効果を発揮するプロトンポンプ阻害剤の一つであるオメプラゾール(OME)も被験物質に加えた。上記被験物質を投与し、その30分後に塩酸-アスピリン懸濁液(0.15N-200 mg/kg)を経口投与して胃傷害を惹起させた。胃傷害惹起1時間後にラットを致死させて胃を摘出した。胃は大弯に沿って切開して胃粘膜に発症した傷害の長さをノギスにて測定し、その長さの総計をLesion Indexとして求めた。成績は平均値として表し、胃傷害抑制率は下記の式2より算出した。

式2: 胃傷害抑制率(%)= 100 ×〔1−被験物質投与群の平均Lesion
Index / 対照群の平均Lesion Index〕

<試験結果>
表3

図2


ROX 2 mg/kg群及びREB 2 mg/kg群(単独群)の胃傷害抑制率はそれぞれ42.5及び37.9%を示した。一方、ROX及びREBを併用投与したROX 1mg/kg + REB1 mg/kg併用群の胃傷害抑制率は65.4%を示し、単独群と比較して非常に高い胃障害抑制効果を示した。さらに、併用群は対照群と比較した場合、有意に高い胃傷害抑制効果を示した(表3及び図2)。つまり、併用群は単独群の投与量よりも少ない用量(1/2量)にもかかわらず、その胃障害抑制効果は単独群よりも非常に高いことが明らかとなった。
さらに、OME 10 mg/kg群のLesion Indexは対照群と比べて有意に減少し、胃傷害抑制率は66.3%であったが、ROXとREBの併用群は低用量で胃傷害に対して効果を発揮するOMEよりもさらに少ない1/5量の低用量で十分な効果を示した。

【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の医薬組成物は、H2受容体拮抗剤であるロキサチジン及びその薬学上許容されうる塩と、防御因子増強剤であるレバミピドとを併用(配合)するため、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、Zollinger-Ellison症候群、逆流性食道塩、急性及び慢性胃炎等の予防及び/又は治療剤として有用である。また、ロキサチジン及びその薬学上許容されうる塩及びレバミピドをそれぞれ単独に用いた場合に比べて、予防及び/又は治療効果(例えば、胃傷害抑制効果など)が大幅に改善され、特にそれぞれの活性成分の投与量(使用量)が通常量でも高い予防及び/又は治療効果が得られるとともに、投与量を低減した場合(低用量)でも通常量と同等もしくはそれ以上の予防及び/又は治療効果を得るができるため、副作用が少なく、安全性の高い医薬品(医薬製剤)を提供することが可能となる。さらに、低用量で配合された医薬組成物は、製剤化において小型化が可能となり、患者にとって飲みやすい薬剤を提供することが可能となり、服薬コンプライアンスの改善につながるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)ロキサチジン及びその薬学上許容されうる塩及び2)レバミピドを有効成分とする医薬組成物。
【請求項2】
ロキサチジン及びその薬学上許容されうる塩が、ロキサチジン酢酸エステル塩酸塩である請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
ロキサチジン及びその薬学上許容されうる塩とレバミピドの含有割合が、重量比で1:0.1〜1:10である請求項1記載の医薬組成物。
【請求項4】
ロキサチジン及びその薬学上許容されうる塩とレバミピドの含有割合が、重量比で1:0.2〜1:4である請求項1記載の医薬組成物。
【請求項5】
レバミピドを25〜100mg、及びロキサチジン及びその薬学上許容されうる塩を10〜75mg含有する請求項1記載の医薬組成物。
【請求項6】
胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、Zollinger-Ellison症候群、逆流性食道塩、急性及び慢性胃炎から選択された少なくとも一種の症状を予防及び/又は治療するための請求項1記載の医薬組成物。
【請求項7】
錠剤、カプセル剤、顆粒及び細粒の形態である請求項1記載の医薬組成物。
【請求項8】
ヒト又は非ヒト動物に、ロキサチジン及びその薬学上許容されうる塩及びレバミピドを投与し、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、Zollinger-Ellison症候群、逆流性食道塩、急性及び慢性胃炎から選択された少なくとも一種の症状を予防又は治療する方法。

【公開番号】特開2011−157298(P2011−157298A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19854(P2010−19854)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(000002990)あすか製薬株式会社 (39)
【Fターム(参考)】