説明

胆肝機能改善剤

【課題】胆肝機能の改善効果を有する製剤を提供すること。
【解決手段】本発明に係る胆肝機能改善剤は、化学式(1)で示されるメチル化カテキンからなる。式中、R,R,R,Rは、それぞれ独立に水素原子、メチル基のいずれかであり、X,Xは、それぞれ独立に水素原子、ヒドロキシ基のどちらかである。本発明に係る胆肝機能改善剤は、経口投与されることが好ましい。メチル化カテキンは、「べにふうき」、「べにふじ」、「べにほまれ」、「やえほ」、「するがわせ」、「ゆたかみどり」、「かなやみどり」、「おくむさし」、「青心大パン」、「青心烏龍」、「大葉烏龍」、「紅花」、「べにひかり」、「やまかい」、「やまみどり」、「からべに」、「香駿」、「そうふう」及び「おくみどり」、もしくはこれらの混合物の茶葉由来のものであってよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレルギー症状の抑制及び高脂血症とその派生疾患、すなわち動脈硬化症、肥満症、胆肝疾患の予防・治療に有効な成分からなる胆肝機能改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
過度の免疫反応の一つであるアレルギーは、植物、動物、微生物、食物、化学物質などの「アレルゲン」と呼ばれる原因物質により発症する。特にアレルギー性鼻炎は、花粉症に代表される上気道アレルギー疾患であり、くしゃみ発作、水性鼻汁、鼻閉などの症状を示す。日本全国で花粉症患者だけでも1300万人といわれており、大きな社会問題となっている。アレルギー症状を抑制するためには、ヒスタミン等アレルギー症状を引き起こす化学伝達性物質が、マスト細胞から放出されることを抑制する必要がある。このヒスタミン放出を抑制するために、従来から様々な抗アレルギー剤が開発されてきた。
【0003】
例えば、烏龍茶から抽出した抽出物を、アトピー性皮膚炎等のアレルギーを抑制する有効成分として含有する抗アレルギー剤や、スギから搾取した油に抗ヒスタミン剤を配合したものを、スギ花粉症の予防薬及び治療薬として用いたもの等が検討されていた(特許文献1,2参照)。また、ハーブを日本茶に混合した花粉症サプリメントドリンクも検討されてきた(特許文献3参照)。
【0004】
また近年、食生活の欧米化に伴い、高脂血症、糖尿病、高血圧、肥満をはじめとした生活習慣病は年々増加傾向にある。例えば、日本人の2/3はこの生活習慣病で亡くなっているといわれており、大きな社会問題となっている。この中で高脂血症は、食事の高カロリー化、運動不足、基礎代謝の低下等、様々な要因が引き金となって血液中の中性脂肪値や総コレステロール値が上昇する疾患であるが、特に中性脂肪値の上昇が様々な重度の疾患、すなわち派生疾患の引き金となることが知られている。
【0005】
中性脂肪値の上昇は、脂肪細胞の肥大、肝細胞の中性脂肪蓄積、及び動脈硬化易発性のリポタンパク増加を促進する。そして、脂肪細胞の肥大は肥満症、肝細胞の中性脂肪蓄積は脂肪肝を経て肝炎や肝硬変の発症リスクを高める。また、動脈硬化易発性リポタンパクとは、レムナント様リポタンパク−コレステロールと小粒子LDL−コレステロールを指すが、これらはマクロファージや血管内皮細胞に取り込まれやすいため、血中濃度の増加は動脈硬化の発症リスクを高める。
【0006】
すなわち、血液中の中性脂肪値を健常な範囲にコントロールするということは、高脂血症の派生疾患である動脈硬化症、肥満症、肝疾患等の発症を抑えることにつながる。従って、従来から高中性脂肪血症を予防するための様々な薬剤や食品等が開発されてきた。
【0007】
例えば、茶葉中のカテキン類は、抗酸化作用、動脈硬化抑制作用、血圧上昇抑制作用、血糖上昇抑制作用等、多様な作用があることが実証されているため、茶葉の粉末等を健康食品の原料に用いることによって、基礎代謝を向上させ、脂肪の燃焼を促進させることによって肥満を予防する方法が知られている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−175874号公報
【特許文献2】特開2002−234846号公報
【特許文献3】特開2001−348339号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】村松敬一郎編 「茶の科学」朝倉書店(2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載されている抽出物は、鼻炎の症状を抑制できず、また、特許文献2に記載されている予防及び治療薬は、体内にスギ花粉が入った場合に効果を示さない。更に、この予防及び治療薬に抗ヒスタミン剤を配合した場合、眠気などの副作用を誘発するため、常時服用に適さない。また、特許文献3に記載されている花粉症サプリメントドリンクは、ハーブを用いているため、独特の風味を生じ、万人向きではない。
【0011】
また、上述のように脂肪の燃焼を促進させ、肥満症を予防するためにカテキン類が有効であることは従来から知られていた。しかし、アレルギー症状の抑制と高脂血症とその派生疾患の予防、あるいは治療の両方の効果を有する薬剤や飲食品については未だ提案されていない。アレルギー症状と高脂血症は全く異なる疾病であるため、これらの両方に効果的な物質があるとは考えにくかった。また、茶葉は種類によっては含有されている化学成分が異なり、かつ、その種類も多様である。中でもカテキン類は異性化体を多く有するため、どのカテキンがどの疾病に有効であるか否かを検討するのが困難であった。
【0012】
本発明は以上のような課題に鑑みてなされたものであり、胆肝機能の改善効果を有する製剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、ある種の茶葉中に、胆肝機能の改善効果を有するカテキン成分が存在することを見出し、以下のような本発明を完成するに至った。
【0014】
より具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0015】
(1) 下記の化学式(1)で示されるメチル化カテキンからなる胆肝機能改善剤。
【化1】

[R,R,R,Rは、それぞれ独立に水素原子、メチル基のいずれかであり、X,Xは、それぞれ独立に水素原子、ヒドロキシ基のどちらかである。]
【0016】
(1)の発明によれば、メチル化カテキンを飲料に有効成分量含有したことによって、胆肝機能を改善することが可能となる。上述のように、カテキン類には、抗酸化作用、動脈硬化抑制作用、血圧上昇抑制作用、血糖上昇抑制作用、殺菌作用、抗菌作用、消臭作用等様々な効果を有する。
【0017】
また、中性脂肪は肝リパーゼにより脂肪酸とグリセリンに分解されて肝細胞に取り込まれるため、血清中の中性脂肪値の上昇は脂肪肝、更には肝炎や肝硬変のリスクを高めるが、(1)の発明によれば、メチル化カテキン飲料に有効成分量を含有したことによって、中性脂肪値が抑えられるため、これらの胆肝機能障害を予防することも可能となる。
【0018】
本発明における肝疾患治療剤とは、それぞれ肝疾患を予防あるいは治療効果を奏するものをいう。本発明によれば、これらの効果は本発明に係るメチル化カテキンによるものであるため、本発明に係るメチル化カテキンが、本発明に係る「胆肝機能改善剤」であるということになる。
【0019】
また、「有効成分量」とは、胆肝機能を改善する有効成分が、十分な効果を奏すると判断される場合の含有量をいう。具体的には、飲料100ml当たり、メチル化カテキンを1mgから30mg含有する。
【0020】
(1)の発明によれば、メチル化カテキンを組成物に有効成分量含有したことによって、胆肝機能を改善させることが可能となる。また、飲料以外の形態での摂取も可能となるため、症状や用途、目的に合わせて商品を製造することが可能となる。
【0021】
ここで、「組成物」とは、本発明に係る茶葉を抽出した抽出物に従来公知の添加剤を添加して得られたものをいう。この組成物は、人及び動物の飲食用に製造したものを含む。固形物に限らず、流動性を有する液体やゲル等であってもよい。この組成物は、食品を含み、例えば、本発明に係る「胆肝機能改善剤」を含む栄養サプリメントを食品として提供してもよく、錠剤の形状をしていてもよい。
【0022】
(2) 経口投与される(1)に記載の胆肝機能改善剤。
【0023】
(3) 前記メチル化カテキンは、「べにふうき」、「べにふじ」、「べにほまれ」、「やえほ」、「するがわせ」、「ゆたかみどり」、「かなやみどり」、「おくむさし」、「青心大パン」、「青心烏龍」、「紅花」、「べにひかり」、「やまかい」、「やまみどり」、「からべに」、「香駿」、「そうふう」及び「おくみどり」、もしくはこれらの混合物の茶葉由来のものである(1)又は(2)に記載の胆肝機能改善剤。
【0024】
(3)の発明によれば、メチル化カテキンは、「べにふうき」、「べにふじ」、「べにほまれ」、「やえほ」、「するがわせ」、「ゆたかみどり」、「かなやみどり」、「おくむさし」、「青心大パン」、「青心烏龍」、「紅花」、「べにひかり」、「やまかい」、「やまみどり」、「からべに」、「香駿」、「そうふう」及び「おくみどり」等の品種の茶葉固有のものであるため、これらの茶葉を用いたことによって、胆肝機能を改善することが可能となる。また、メチル化カテキンを含有する茶葉として上記の品種の茶葉を挙げたが、特にこれらの品種に限られるものではない。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る機能性飲料によれば、眠気などの副作用を誘発することなく、かつ万人向けの風味を有する。これにより、茶を飲むという日常的に行われている行為により、簡易に胆肝疾患等の生活習慣病を予防することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】各被験者の日誌から算出した見かけの鼻炎重症度を示す図である。
【図2】各被験者の鼻汁中好酸球数の変動量を示す図である。
【図3】各被験者の血中中性脂肪量の変動量を示す図である。
【図4】各被験者の総ビリルビンの変動量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0028】
[機能性飲料の製造]
本発明に係る機能性飲料は、下記に記載の所定の茶葉由来のメチル化カテキン成分を含む機能性飲料である。この茶葉を湯で浸出して得た茶を飲むことにより、胆肝機能を改善させることができる。
【0029】
本発明に係る「メチル化カテキン」とは、化学式(1)で示されるものであり、メチル化されたカテキン及び精製の際の不可避成分をいう。本発明におけるメチル化カテキンは主として、エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレート(以下、EGCG3”Meという)、エピカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレート(以下、ECG3”Meという)、エピカテキン−3−O−(4−O−メチル)ガレート(以下、ECG4”Meという)、エピガロカテキン−3−O−(4−O−メチル)ガレート(以下、EGCG4”Meという)、ガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレート(以下、GCG3”Meという)、カテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレート(以下、CG3”Meという)、カテキン−3−O−(4−O−メチル)ガレート(以下、CG4”Meという)、又は、ガロカテキン−3−O−(4−O−メチル)ガレート(以下、GCG4”Meという)及びこれらの異性化体を含むことが好ましい。メチル化カテキンの一般的な効果は、化学伝達物質であるヒスタミンなどの炎症物質の放出を止めて、I型、IV型アレルギーを抑制することである。
【化2】

【0030】
また、本発明に係るメチル化カテキンは、所定の茶葉由来のものである。メチル化カテキンを含有している茶葉としては、「べにふうき」、「べにふじ」、「べにほまれ」、「やえほ」、「するがわせ」、「ゆたかみどり」、「かなやみどり」、「おくむさし」、「青心大パン」、「青心烏龍」、「大葉烏龍」、「鳳凰単叢」、「鳳凰水仙」、「白葉単叢水仙」、「黄枝香」、「武夷水仙」、「紅花」、「べにひかり」、「やまかい」、「やまみどり」、「からべに」、「香駿」及び「おくみどり」、もしくはこれらの混合物などが挙げられる。これらの茶葉を単一種又は複数種混合して用いてもよい。
【0031】
また、本発明に係る機能性飲料は、酸化防止剤、香料、各種エステル類、有機酸類、有機酸塩類、無機酸類、無機酸塩類、無機塩類、色素類、乳化剤、保存料、調味料、甘味料、酸味料、果汁エキス類、野菜エキス類、花蜜エキス類、pH調整剤、品質安定剤などの添加剤を単独、あるいは併用して配合しても良い。
【0032】
例えば甘味料としては、砂糖、ぶどう糖、果糖、異性化液糖、グリチルリチン、ステビア、アスパルテーム、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖等が挙げられる。酸味料としては、天然成分から抽出した果汁類のほか、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、リン酸が挙げられる。クエン酸もしくはリンゴ酸を飲料中に0.1〜5g/L、好ましくは0.5〜2g/L含有するのがよい。酸化防止剤としては、L‐アスコルビン酸、L‐アスコルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、があげられる。飲料中に、0.005〜0.5質量%、好ましくは0.01〜0.1質量%含有するのがよい。
【0033】
本発明に係る機能性飲料に使用される容器は、一般の飲料と同様にポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、瓶などの通常の形態で提供することができる。
【0034】
また上記の容器は、例えば、金属缶のように容器に充填後、加熱殺菌できる場合にあっては食品衛生法に定められた所定の殺菌条件で製造される。PETボトル、紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、あらかじめ上記と同等の殺菌条件、例えばプレート式熱交換器などで高温短時間殺菌後、一定の温度まで冷却して、容器に充填する等の方法が採用される。また無菌下で、充填された容器に別の成分を配合して充填してもよい。更に、酸性下で加熱殺菌後、無菌下でpHを中性に戻すことや、中性下で加熱殺菌後、無菌下でpHを酸性に戻すなどの操作も可能である。
【0035】
[胆肝機能改善剤の製造]
本発明に係る胆肝機能改善剤は、所定の茶葉由来のメチル化カテキン成分からなる。この組成物は、上記の茶葉からメチル化カテキンを従来公知の方法を用いて抽出して得られる。抽出際の温度は、溶媒の融点より高く、沸点より低い温度であれば、特に限定されるものではないが、水では10℃から100℃、エタノール及びメタノールでは10℃から40℃が望ましい。抽出時間は10秒から24時間の範囲とするのが好ましい。
【0036】
例えば、乾燥させた茶葉を破砕、粉砕等により粉末化処理したものに、抽出溶媒を添加して抽出物又はその処理物として用いることが好ましい。抽出溶媒としては、水;低級アルコール類、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール;エーテル類、例えばエチルエーテル、ジオキサン;ケトン類、例えばアセトン等が挙げられるが、水、エタノール、又は水−エタノール混合溶媒が好ましい。
【0037】
得られた抽出物は、そのまま本発明に係る組成物として用いることも可能であるが、化学分離精製手法として一般的に用いられる方法を使用することが好ましい。例えば、液−液分配、薄層クロマトグラフィー、吸着カラムクロマトグラフィー、分配カラムクロマトグラフィー、ゲルろ過カラムクロマトグラフィー、イオン交換カラムクロマトグラフィー、電気泳動や高速液体クロマトグラフィーなどを用いることができる。また、必要に応じこれらの分離精製手段を組み合わせて行なってもよい。
【0038】
本発明に係る胆肝機能改善剤は、医薬、食品等のような各種用途に用いることができる。医薬としては、胆肝疾患の治療目的に使用できる。食品としては、特定保健用食品、特殊栄養食品、栄養補助食品、健康食品などに食品添加物として配合することができる。添加対象の食品としては、各種食品に可能である。飲料としては、特定保健用食品、特殊栄養食品、栄養補助食品としての飲料やその他の栄養飲料、健康飲料、各種の健康茶、その他の飲料などに配合できる。他の食品としては、菓子類、パン、麺類、大豆加工品、乳製品、卵加工品、練り製品、油脂、調味料等が挙げられる。化粧品としては、花粉症の症状の緩和や予防の目的又スリミングの目的で、スキンケア製品、ファンデーションやメイクアップ製品等に本発明に係る組成物を添加することができる。
【0039】
医薬に関しては、本発明に係る組成物をそのまま、あるいは水等で希釈して、経口的に投与できる。もしくはこれを公知の医薬用担体と共に製剤化することにより調製される。例えば、シロップ剤などの経口液状製剤として、又はエキス、粉末などに加工して、薬学的に許容される担体と配合し、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤などの経口固形製剤として投与できる。薬学的に許容できる担体としては、製剤素材として慣用の各種有機あるいは無機担体物質が用いられ、固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、液状製剤における溶剤、賦形剤、懸濁化剤、結合剤などして配合される。また、必要に応じて、防腐剤、抗酸化剤、着色料、甘味剤などの製剤添加物を用いることもできる。更に、公知の医薬用担体を用いて、鼻うがい剤、点鼻薬、又は、目の洗浄剤などとすることも可能である。
【実施例】
【0040】
[参考例1:アレルギー性鼻炎抑制効果の検討]
茶葉「べにふうき」は30倍量の純水を用いて、90℃で抽出を行って得た抽出液を、重曹などの水質調整剤及びビタミンCを添加混合した。殺菌し密封容器(本参考例では250ml紙パック)に窒素充填して試験飲料1とした。
【0041】
[比較例1]
比較例として、茶葉「やぶきた」をメチル化カテキン以外の成分含量が試験飲料1と同量となるように純水でメスアップし、重曹などの水質調整剤、ビタミンCを添加混合した。混合液を殺菌し密封容器中に窒素充填して試験飲料2とした。
【0042】
[比較例2]
比較例1同様の比較例として、「麦茶」をメチル化カテキン以外の成分含量が試験飲料1と同量となるように純水でメスアップし、重曹などの水質調整剤、ビタミンCを添加混合した。混合液を殺菌し密封容器中に窒素充填して試験飲料3とした。
【0043】
試験飲料1から3に含まれるメチル化カテキン類の含有量を表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
[参考例2:アレルギー性鼻炎抑制効果の検討]
参考例1及び比較例1、2で製造した被験飲料が、花粉症状を抑制するかについて試験を行った。試験は軽度の通年性鼻炎患者を一群20〜23名とし、それぞれの群に試験飲料1から3を12週間摂取させ、鼻炎の症状に及ぼす影響を調査した。試験は総合医科学研究所に委託し、試験のプロトコールは総合医科学研究所とアサヒ飲料株式会社、アサヒビール株式会社、独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構の共同で設計した。
【0046】
被験者には試験飲料1から3をそれぞれ250ml容器入り飲料を1日2本ずつ(500ml/日)飲用させた。被験者には飲用開始2週間前より飲用期間が終了した4週間後(16週目)まで毎日アレルギー日誌をつけさせ、日本アレルギー学会の診断基準に従って重症度スコアを算出した。試験は、二重盲検(被験者と担当医師の両方が所属する試験群を知らない)で行った。3週間毎に数値を平均化し、見かけ上の鼻炎重症度(Nasal Symptomatic Score)を算出した結果を図1に示す。図中の記号、四角形は試験飲料1を示し、円は試験飲料2、三角形は試験飲料3を示す。
【0047】
飲用開始6週目以降に対照群である試験飲料2及び3の2群において症状が復活したのに対し、試験飲料1群では症状の改善が維持された。
【0048】
また、鼻汁中好酸球数も減少が認められた。以上より「べにふうき」のアレルギー改善作用が、「麦茶」「やぶきた」を上回り、「べにふうき」の有効性が検証された。その結果を図2に示す。なお、図1と同様に図中の記号四角形は試験飲料1を示し、円は試験飲料2、三角形は試験飲料3を示す。これによりアレルギー性鼻炎に対するヒトでの効果が確認されたアレルギー性鼻炎抑制飲料の提供が可能となった。
【0049】
[参考例3:中性脂肪の低減効果の検討]
空腹時の中性脂肪値が100〜350mg/dLの健常成人10名を5名ずつ2群(ともに男性4名、女性1名)に分け、試験飲料1又は比較例2に係る試験飲料3を6週間摂取させた。各飲料は250mLの容器に入れ、1日に2本ずつ(500ml/日)の飲用とした。試験開始時と飲用終了時に一晩絶食後の中性脂肪値(平均±SD値)を測定した。このときの結果を表2及び図3に示す。これより、メチル化カテキンを含まない試験飲料3の摂取は血清中性脂肪値に影響しなかったのに対し、メチル化カテキンを含有する試験飲料1は中性脂肪値を有意に低下させた。
【表2】

【0050】
[実施例4:胆肝機能の是正効果の検討]
総ビリルビン値1.1の通年性アレルギー鼻炎患者9名を5名(べにふうき)、4名(プラセボ:やぶきた)ずつ2群に分け、参考例1に係る試験飲料1又は比較例1に係る試験飲料2を4週間摂取させた。各飲料は250mLの容器に入れ、1日に6本ずつ(1500ml/日)の飲用とした。試験開始時と飲用終了時に一晩絶食後の総ビリルビン値(平均±SD値)を測定した。このときの結果を表3及び図4に示す。これにより抗高脂血症剤、及び胆肝機能改善剤としての効果を奏することも確認された。
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式(1)で示されるメチル化カテキンからなる胆肝機能改善剤。
【化1】

[R1,R2,R3,R4は、それぞれ独立に水素原子、メチル基のいずれかであり、X1,X2は、それぞれ独立に水素原子、ヒドロキシ基のどちらかである。]
【請求項2】
経口投与される請求項1に記載の胆肝機能改善剤。
【請求項3】
前記メチル化カテキンは、「べにふうき」、「べにふじ」、「べにほまれ」、「やえほ」、「するがわせ」、「ゆたかみどり」、「かなやみどり」、「おくむさし」、「青心大パン」、「青心烏龍」、「大葉烏龍」、「紅花」、「べにひかり」、「やまかい」、「やまみどり」、「からべに」、「香駿」、「そうふう」及び「おくみどり」、もしくはこれらの混合物の茶葉由来のものである請求項1又は2に記載の胆肝機能改善剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−21040(P2011−21040A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247334(P2010−247334)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【分割の表示】特願2005−517749(P2005−517749)の分割
【原出願日】平成17年2月4日(2005.2.4)
【出願人】(596126465)アサヒ飲料株式会社 (84)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【Fターム(参考)】