脂溶性生理活性物質の抽出方法
【課題】 種子一粒から微量の脂溶性生理活性物質を抽出する。
【解決手段】 種子粉末及び/又は種子の胚粉末を、セルロース加水分解酵素を含む緩衝液で処理する工程と、脂溶性生理活性物質を抽出する工程とを含む。脂溶性生理活性物質としてはユビキノン10を挙げることができる。
【解決手段】 種子粉末及び/又は種子の胚粉末を、セルロース加水分解酵素を含む緩衝液で処理する工程と、脂溶性生理活性物質を抽出する工程とを含む。脂溶性生理活性物質としてはユビキノン10を挙げることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユビキノン10等の脂溶性生理活性物質を植物組織から抽出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ユビキノン10(以下、CoQ10という。)は呼吸鎖電子伝達系の酸化還元に関わる重要な物質として、古くから基礎及び応用の両面にわたる研究の対象となってきた。近年はエネルギー産生賦活作用だけでなく抗酸化機能が注目され、従来の医薬用途に加えてサプリメントや化粧品として社会に普及している。日本においては、1974年に代謝性強心剤の医薬品として承認・販売され、生産及び医療並びに栄養面からの分析定量法が研究されてきた。このため、CoQ10の分析定量の対象は、酵母、動物由来の試料(血清等)、野菜・魚・肉・油等多岐にわたっている。CoQ10の基本抽出法は、簡易な有機溶媒抽出であり、そのままでは抽出できない試料は事前に破砕された後に抽出されていた。
【0003】
他方、イネ等の種子中には、極めて微量のCoQ10と比較的多量のコエンザイムQ9(以下、CoQ9という。)が存在する。このイネの種子を対象にした場合には、従来の抽出、定量方法では、多量のサンプルを用いてもCoQ10は言うに及ばずCoQ9についても効率良く抽出、定量することは不可能であった。このため、オートクレーブ処理や薄層クロマトグラフィーを使用するかなり煩雑な抽出、定量法が考案され、この方法によって回収率が大幅に改良され定量が可能となった(非特許文献1)。しかし、非特許文献1に開示された方法でも、米粒イネ種子1粒等の微量サンプルからCoQ10やCoQ9といった脂溶性の生理活性物質の定量は不可能であった。
【0004】
一方、植物種子(大豆・菜種・ひまわり・ごま)からの油糧の抽出においては、水処理、オートクレーブ処理、酵素処理を予備的に行う事により、その後の有機溶媒による抽出の効率が上昇することが報告されており(特許文献1)、これらの処理の中で加水分解酵素による予備処理は、植物組織からの他の機能性物質の抽出においても用いられていた(特許文献2及び3)。
【0005】
【非特許文献1】S. Takahashi et al. 2006, FEBS Lett., 580(3), 955-959
【特許文献1】特開2002-256281号公報
【特許文献2】特開2005-27520号公報
【特許文献3】特開2002-348245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1〜3に開示された方法では、CoQ10といった種子中に非常に微量しか含まれていない脂溶性の生理活性物質を抽出するといった技術的思想は想定されておらず、当該脂溶性の生理活性物質を種子一粒から抽出することは不可能であった。そこで、本発明は、上述した実情に鑑み、種子一粒から微量の脂溶性生理活性物質を抽出することのできる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上述した目的を達成するために鋭意検討した結果、有機溶媒抽出操作の前に行う種々の予備処理操作を検討し、セルロース加水分解酵素(セルラーゼ)によって種子粉末及び/又は種子の胚粉末を処理することによって、微量サンプルからのCoQ10等の脂溶性生理活性物質を簡便、且つ高収率で抽出できるといった知見を見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下を包含する。
(1)種子粉末及び/又は種子の胚粉末を、セルロース加水分解酵素を含む緩衝液で処理する工程と、脂溶性生理活性物質を抽出する工程とを含む、脂溶性生理活性物質の抽出方法。
(2)上記種子粉末及び/又は種子の胚粉末は、イネ由来であることを特徴とする(1)記載の脂溶性生理活性物質の抽出方法。
(3)上記イネは、脂溶性生理活性物質としてユビキノン10を産生する形質転換イネであることを特徴とする(2)記載の脂溶性生理活性物質の抽出方法。
(4)上記種子粉末及び/又は種子の胚粉末の量は、種子1粒に相当する量であることを特徴とする(1)記載の脂溶性生理活性物質の抽出方法。
(5)上記脂溶性生理活性物質を抽出する工程は、低極性有機溶媒を使用することを特徴とする(1)記載の脂溶性生理活性物質の抽出方法。
(6)上記低極性有機溶媒は炭素数5個〜8個の飽和炭化水素であることを特徴とする(5)記載の脂溶性生理活性物質の抽出方法。
(7)上記脂溶性生理活性物質は、ユビキノン及び/又はビタミンE類であることを特徴とする(1)記載の脂溶性生理活性物質の抽出方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、種子中に非常に微量で存在する脂溶性生理活性物質を種子一粒といった微量サンプルから抽出することができる、非常に優れた方法を提供することができる。本発明に係る脂溶性生理活性物質の抽出方法によれば、例えば種子一粒に相当するサンプルから脂溶性生理活性物質を抽出して定量することができるため、種子中に存在する脂溶性生理活性物質を高精度に分析することができる。また、本発明に係る脂溶性生理活性物質の抽出方法を適用することによって、種子中に存在する脂溶性生理活性物質を非常に優れた収率で回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る脂溶性生理活性物質の抽出方法を図面を参照にして詳細に説明する。
【0011】
本発明に係る脂溶性生理活性物質の抽出方法は、種子中に微量に存在する脂溶性生理活性物質を抽出する方法である。ここで、脂溶性生理活性物質としては、例えば、ユビキノン類、脂溶性ビタミン類等を挙げることができる。
【0012】
ユビキノン類とは、2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−ポリプレニル−1,4−ベンゾキノンの誘導体である。ユビキノン類としては、側鎖のイソプレン単位の繰り返し数に応じて、コエンザイムQ6、コエンザイムQ7、コエンザイムQ8、コエンザイムQ9、コエンザイムQ10等が知られている。脂溶性ビタミン類としては、例えば、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKを挙げることができる。
【0013】
本発明に係る脂溶性生理活性物質の抽出方法では、先ず、植物から採取した種子を集積し、これら種子を、好ましくはこれら種子から分離した胚を粉末化する。なお、本発明に係る脂溶性生理活性物質の抽出方法において、植物としては特に限定されず、野生型の植物及び所望の形質が付与された形質転換植物のいずれであっても良い。形質転換植物としては、例えば、特定の物質の産生量が増大するように遺伝子操作がなされた形質転換植物を挙げることができる。特に、本発明に係る脂溶性生理活性物質の抽出方法では、CoQ10の産生量が増加するようにグルコン酸菌(Gluconobacter suboxydans)由来のddsA(decaprenyl diphosphate synthase:デカプレニル2リン酸合成酵素)が導入されたCoQ10産生植物を対象とすることが好ましい。
【0014】
植物としては、特に限定されず、例えば、イネ、タバコ、オオムギ、コムギ、パンコムギ、ライムギ、カラスムギ、ハトムギ、モロコシ、トウモロコシ、キビ、アワ、ヒエ、ソバ、カタクリ、クズ、サトウキビ、テンサイ、ナス、ジャガイモ、サツマイモ、ヤマイモ、サトイモ、コンニャク、ゴボウ、レンコン、キュウリ、カラスウリ、ヘチマ、フキ、タロイモ、キャッサバ、トマト、ニンジン、アスパラガス、カボチャ、ダイコン、カブ、アブラナ、キャノーラ、アルアルファ、ピーマン、トウガラシ、キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、レタス、マツナ、ホウレンソウ、シュンギク、ヨモギ、オクラ、シソ、ゴマ、クチナシ、ワサビ、カラシ、ショウガ、ミョウガ、ウコン、サフラン、タマネギ、ネギ、ニンニク、ワラビ、ゼンマイ、ダイズ、アズキ、インゲンマメ、エンドウ、ソラマメ、ササゲ、ベルベットビーン、カラスノエンドウ、ラッカセイ、クコ、ケシ、オリーブ、ハッカ、アーモンド、ピスタチオ、マカダミアナッツ、ピーナッツ、ナツメヤシ、ココヤシ、サゴヤシ、サトウヤシ、ニッパヤシ、パイナップル、カキ、リンゴ、ウメ、モモ、ビワ、ナシ、ブドウ、サクランボウ、イチゴ、キイチゴ、ブルーベリー、プルーン、ザクロ、イチジク、アケビ、グミ、マンゴスチン、キーウィフルーツ、メロン、柑橘、バナナ、パパイヤ、マンゴー、シロイヌナズナ、ナズナ、イヌナズナ、ユリ、バラ、サクラ、ヤマザクラ、ボタン、ツバキ、サザンカ、ラベンダー、フジ、シャクヤク、スミレ、パンジー、スイートピー、スイセン、ハナショウブ、アヤメ、バショウ、ショウブ、ミズバショウ、スイレン、ハス、ラン、アサガオ、キンモクセイ、アザミ、ガーベラ、ダリア、チューリップ、コスモス、ヒマワリ、タンポポ、カモミール、ローズマリー、ホオズキ、ハマナス、マタタビ、クローバー、ライラック、サボテン、ユキノシタ、ドクダミ、チャ、コーヒー、エゾマツ、カラマツ、アカマツ、タケ、イチョウ、スギ、ヒノキ、モミ、ゴム、ブナ、ケヤキ、クスノキ、モミジバフウ、ユーカリ、カエデ、ポプラ、アカシア、ゲッケイジュ、ワタ、イグサ、シバ、ベニバナ、クルミ、アボカドが挙げられるが、特にイネが好ましい。
【0015】
これら植物から採取した種子及び/又は胚を粉末化する手法としては、特に限定されないが、乳鉢を用いて粉末化する方法、ボールミル装置を用いて粉末化する方法といった各種の粉末化方法を挙げることができる。
【0016】
本発明に係る脂溶性生理活性物質の抽出方法では、次に、粉末化した種子及び/又は胚をセルロース加水分解酵素を含む緩衝液で処理する。ここで、セルロース加水分解酵素とは、セルラーゼと称される一群の酵素と同義であり、分子内部から切断するエンドグルカナーゼ(EC 3.2.1.4)と、糖鎖の還元末端と非還元末端のいずれから分解してセロビオースを遊離するエキソグルカナーゼ(EC 3.2.1.91)の両者を含む意味である。セルロース加水分解酵素としては、例えば、Aspergillus niger由来のセルラーゼ等を使用することができる。
【0017】
また、セルロース加水分解酵素を含む緩衝液とは、セルロース加水分解酵素に至適な塩濃度及びpHに維持した溶液を意味する。したがって、具体的に使用するセルロース加水分解酵素が決定されれば、緩衝液の組成及びpH等については当業者により適宜選択することができる。
【0018】
さらに、セルロース加水分解酵素を含む緩衝液で粉末化した種子及び/又は胚を処理する際の処理条件としては、反応温度、撹拌の有無及び反応時間等を挙げることができる。これらの処理条件は、粉末化した種子及び/又は胚の量及びセルロース加水分解酵素の種類等に応じて適宜設定することができる。
【0019】
本発明に係る脂溶性生理活性物質の抽出方法では、次に、処理後の緩衝液から脂溶性生理活性物質を抽出する。この抽出工程では、有機溶媒を利用した抽出処理が行われる。有機溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の低極性有機溶媒を使用することが好ましく、特にヘキサンが好ましい。有機溶媒の量は、特に限定されないが、種子及び/又は胚の粉体20mgに対して5〜25ml、好ましくは10〜20ml、より好ましくは12〜16mlとする。
【0020】
本抽出工程によって有機溶媒層に種子に蓄積された脂溶性生理活性物質を抽出することができる。有機溶媒層に抽出された脂溶性生理活性物質は、有機溶媒を除去することによって乾燥状態で回収することができる。また、脂溶性生理活性物質を含む有機溶剤をそのまま保存することもできるし、当該有機溶剤を用いて種子に含まれていた脂溶性生理活性物質を定量することもできる。
【0021】
有機溶剤中に抽出した脂溶性生理活性物質を検出する際には、特に限定されないが、例えば、高速液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー等を適用することができる。中でも、高速液体クロマトグラフィーを使用することが好ましい。
【0022】
以上で説明した本発明に係る脂溶性生理活性物質の抽出方法によれば、種子及び/又は胚の粉体をセルロース加水分解酵素によって処理することによって、有機溶媒層に脂溶性生理活性物質を抽出することができる。本発明に係る脂溶性生理活性物質の抽出方法では、セルロース加水分解酵素によって処理する粉体の量が種子一粒に相当するような微量であっても、脂溶性生理活性物質を確実に抽出することができる。従来においては、種子一粒から脂溶性生理活性物質を抽出できる手法は知られておらず、本発明に係る脂溶性生理活性物質の抽出方法は、粉体サンプル量が僅少である場合にも適用できるといった利点がある。
【0023】
さらに、本発明に係る脂溶性生理活性物質の抽出方法は、非常に簡便な操作で脂溶性生理活性物質を抽出することができる。すなわち、本発明に係る脂溶性生理活性物質の抽出方法では、オートクレーブ処理といった従来の手法には必須であった処理工程を省くことができる。
【実施例】
【0024】
以下、本発明に係る脂溶性生理活性物質の抽出方法を、実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
【0025】
〔実施例1〕
本実施例では、CoQ10をミトコンドリアで発現するように組み換えられたイネを用いて、本発明に係る脂溶性生理活性物質の抽出方法によりCoQ10を抽出した。なお、当該イネの作出方法は後述の参考実験1に詳述した。また、本例では、主としてCoQ9を産生する野生型イネを用いてCoQ9を抽出した。
【0026】
先ず、参考実験1で作出された形質転換イネから採取した玄米を乳鉢で粉砕し、得られた玄米パウダーの100mg或いは20mgを1.5mlのエッペンドルフチューブに入れ、そこにpH5.0の酢酸buffer(1ml)に溶解させた各加水分解酵素(セルラーゼ)を添加した(工程1)。次に、37℃の温浴に各エッペンドルフチューブが完全に漬かるように横に寝かせて入れ24時間静置した(工程2)。24時間の静置後、エッペンドルフチューブから別容器に移した溶液にヘキサン4mlをそれぞれ加え、ミキサーで30秒間撹拌した(工程3)。その後、2000rpmで2分間遠心を行い、ヘキサン層を3ml回収した(工程4)。さらに、ヘキサン4mlで2回(工程3と併せて合計3回)同様に抽出及び回収を行った(工程5)。最後に、回収した全てのヘキサン層をナス型フラスコに集め、エバポレーターで濃縮乾固した(工程6)。
【0027】
工程6で回収したCoQ10は以下の方法によって分析した。先ず、工程6において濃縮乾燥したヘキサン層をアセトニトリル/メタノール=1/1の混合溶液2 mlに溶解し、その50μlをHPLC装置に注入した。HPLC装置及び分析条件は以下の通りである。
【0028】
装置:液体クロマトグラフHP-1100(Hewlett Packard)
移動層:MeOH/MeCN=60/40→(15min)→90/10 (5min維持)
流速:1.0ml
検出器:可変波長型UV-VIS(測定波長275nm)
カラム:CAPCELL PACK C8 SHISEIDO TYPE:UG120 5mm SIZE: 4.6mmφ×250mm
【0029】
〔比較例1〕
比較例1では、セルラーゼを使用する代わりにα-アミラーゼを使用した以外は実施例1と同様にしてCoQ10を抽出及び分析した。
【0030】
〔比較例2〕
比較例2では、セルラーゼを使用する代わりにプロテアーゼを使用した以外は実施例1と同様にしてCoQ10を抽出及び分析した。
【0031】
〔比較例3〕
比較例3では、セルラーゼを使用する代わりにリパーゼを使用した以外は実施例1と同様にしてCoQ10を抽出及び分析した。
【0032】
〔比較例4〕
比較例4では、参考実験1で作出された形質転換イネ或いはCoQ9を発現する野生型イネを用いて、以下の方法によりCoQ10或いはCoQ9を抽出した。要約すると、比較例4の方法は、酵素による前処理なしの有機溶媒による抽出方法である。
先ず、殻を剥ぎとった後、秤量した玄米をパウダー状にした(工程1)。次に、玄米パウダーの100mgを10mlの試験管に入れた(工程2)。次に、当該試験管にヘキサン5mlを加え抽出した(工程3)。その後、2500rpmで5分間遠心した(工程4)。遠心分離処理の後、試験管内において分離したヘキサン層を回収した(工程5)。次に、ヘキサン層を回収した後の試験管に、再びヘキサン5mlを加え再抽出した(工程6)。その後、2500rpmで5分間遠心した(工程7)。遠心分離処理の後、試験管内において分離したヘキサン層を回収した(工程8)。最後に、回収した全てのヘキサン層をナス型フラスコに集め、エバポレーターで濃縮乾固した(工程9)。
また、比較例4では、実施例1と同様にしてCoQ10或いはCoQ9を行った。
【0033】
〔比較例5〕
比較例5では、比較例4の工程2の後に試験管内に蒸留水1mlを加えて1時間膨潤させ、比較例4の工程3においてヘキサンを4mlとした以外は比較例4と同様にしてCoQ9を抽出及び分析した。
【0034】
〔比較例6〕
比較例6では、蒸留水1mlを加えて1時間膨潤させる際の温度を80℃とした以外は実施例5と同様にしてCoQ9を抽出及び分析した。
【0035】
〔比較例7〕
比較例7では、蒸留水1mlを加えて1時間膨潤させる際に更に1mlの6%硫酸水溶液を加え、膨潤温度を80℃とした以外は比較例5と同様にしてCoQ9を抽出及び分析した。但し、比較例7では、比較例4の工程4は除いた。
【0036】
〔比較例8〕
比較例8では、比較例4の工程2の後に試験管内に蒸留水1mlを加えて、120℃で20分間オートクレーブ処理し、工程4を除いた以外は比較例4と同様にしてCoQ9を抽出及び分析した。
【0037】
〔比較例9〕
比較例9では、比較例4の工程2の後に試験管内に蒸留水1ml及び6%硫酸水溶液1mlを加えて、120℃で20分間オートクレーブ処理し、工程4を除いた以外は比較例4と同様にしてCoQ9を抽出及び分析した。
【0038】
〔比較例10〕
比較例10では、100mgの玄米パウダーに対してCoQ9標準品を1μg添加した以外は比較例6及び7と同様にしてCoQ9を抽出及び分析した。
【0039】
〔参考実験1〕
以下、参考実験1として、CoQ10を産生する組換えイネの作出方法について説明する。CoQ10を産生する組換えイネについては、35Sプロモーターによりドライブされたグルコン酸菌(Gluconobacter suboxydans)由来のddsA(decaprenyl diphosphate synthase:デカプレニル2リン酸合成酵素:CoQ10の側鎖部分を合成する酵素)をミトコンドリアで発現するように組換えられたイネはCoQ9をほとんど含まず高濃度のCoQ10を含むことが報告されている(S.Takahashi et al. 2006, FEBS Lett. 580(3), 955-959)。一方、イネ由来のALSプロモーターは未成熟種子や分裂の盛んな組織で強く機能することが判っている(K.Osakabe et al. 2005, Molecular Breeding, 16, 313-320)。したがって、ALSプロモーターでドライブしたddsAは、コエンザイムの生合成の活発な時期に強く発現することにより種子中のCoQ10含量を高めることが期待された。そこで、発明者らはミトコンドリア局在化配列のS14 SignalとddsAを融合させた遺伝子をALSプロモーターでドライブするコンストラクト(ALSpro::S14::ddsA::P10T)を作製した。
【0040】
1.ddsAを持つバイナリーベクター(pPALS-ddsA)の作製(図1及び2)
イネミトコンドリアリボソームタンパクのミトコンドリア局在化シグナルペプチドをコードする0044NAであるS14Signal、酢酸菌の一種であるグルコン酸菌(Gluconobacter suboxydans)由来で、CoQ10の側鎖(10ユニットのイソプレン鎖)の合成を行う酵素のdecaorenyl diphosphate synthase遺伝子(ddsA、アクセッション番号AB006850)並びに植物形質転換用に開発された2種類のバイナリーベクター(pPALS PSR-02及びPSR-03、http://www.kumiai-chem.co.jp/palselect/index.html)を利用して、ALSpro:: S14 Signal::ddsA::P10Tカセットを持つバイナリーベクターのpPALS PSR-03を作出した。
【0041】
具体的には、図1に示すように以下の方法で作製した。S14 Signal::ddsAが組み込まれたpUS14ddsAプラスミドをNot Iで消化しKlenow Fragmentにより平滑化した後、Sal Iで消化しS14 Signal::ddsA遺伝子を切り出した。pUC18プラスミドをSal I/Sma I(平滑末端)で順次消化後、先のS14 signal::ddsA遺伝子とライゲーションして大腸菌JM109株に形質転換し、目的のプラスミドを持つシングルコロニーを選抜した(KLB-161)。一方、ターミネーターとしてP10T(イネプロラミン10ターミネーター遺伝子)を利用するため、pPALS PSR-03バイナリーベクターをBam HI/Eco RI処理しALS::P10T断片を切り出し、pUC19の同サイトへ挿入後、Hind III/Sac I処理でALS遺伝子を除去し、pUC19ベクター上にP10Tが乗っている形にした。この断片と先のHind III/Sac Iサイトを持つS14 Signal::ddsA断片をライゲートし、大腸菌JM109株に形質転換した。この段階でpUC19上にS14 Signal::ddsA:: P10Tカセットが乗る形となった(KLB-164)。
【0042】
次に、S14 Signal::ddsA::P10Tカセットが組込まれたpUC19ベクター(上記KLB-164)をSal I処理/Blp I処理/ T4 DNA polymeraseによるblunt化/BAP処理を行なった。一方、pPALS PSR-02バイナリーベクターからAhd I/ Nco I処理した後、S1 nucleaseにより5'側から3'側にヌクレオチドを分解した。T4 DNA polymeraseにより平滑化した断片を、平滑末端化したKLB-164とライゲートし大腸菌HB101株に形質転換した。得られたコロニーをPCR(OsALS-7/ddsA 3Aのプライマーセット、下記に記載)でスクリーニングし、なるべく長いPCR産物を生成するコロニーをピックアップした。結果的に、得られたALSプロモーター(ALSpro)断片はPSR-02上のALSプロモーターと比較して上流側で294bp、下流側で24bp短くなったが、プロモーターとしての機能は損なわれていないと判断した。ALSpro:: S14 Signal::ddsA::P10TカセットをHind III/Eco RIで切り出し、T4 DNA polymeraseで平滑化した。一方、pPALS PSR-03バイナアリーベクターをEco RIで切断しT4 DNA polymeraseで平滑化、BAP処理した後、先のカセットとライゲーションし、大腸菌DH5α株に形質転換した(KLB-180)(図2)。
【0043】
また、得られたKLB-180の全塩基配列を配列番号1及び図3−1〜図3−10に示した。なお、図3−1〜図3−10において、遺伝子配列には一本線の下線を引いた。また、図3−1〜図3−10において、遺伝子配列の開始点に遺伝子名を示した。また、図3−1〜図3−10において、ddsA遺伝子のみ二本線で示した。また、図3−1〜図3−10においては、pPALS-ddsAベクターのSac Iサイトを1番目の塩基として表記した。この結果から、すべてのプライマーセットにおいて目的断片が増幅されていると判断された。
【0044】
2.pPALS-ddsAのアグロバクテリウム菌への導入
DH5α(KLB-180)に導入したALS プロモーター::S14::ddsA::P10 ターミネーターカセットを持つ上述のバイナリーベクターを、三親交配法を用いて以下のようにEHA101 株(KLB-131)に導入した。
【0045】
ずなわち、先ず、5mlのLB液体培地(抗生物質添加)にアグロバクテリウム菌EHA101株、大腸菌DH1株、大腸菌HB101株の各菌体を懸濁した。このとき、大腸菌は37℃、アグロバクテリウム菌は28℃で培養した。次に、それぞれの菌液を1.5mlずつエッペンチューブに移し、遠心(4℃、15000rpm、3分間)することで集菌した。その後、上清を捨て、LB液体培地(抗生物質無添加)を1ml加えて懸濁した。そして、再度、遠心(4℃、15000rpm、3分間)で集菌した。なお、LB液体培地による懸濁と、遠心による集菌をもう一度繰り返した。
【0046】
次に、上清を捨て、LB液体培地200μlを加えて懸濁した。その後、LB寒天培地(抗生物質無添加)上に重ねて植菌し、28℃で二晩培養した。成長したコロニーを全て掻き取り、500μlのLB液体培地(抗生物質無添加)に懸濁した。この懸濁液から100μlずつLB寒天培地(12.5ppmのリファンピシン、25ppmのクロラムフェニコール、50ppmのカナマイシン、50ppmのテトラサイクリンを含む)に塗布し、28℃で培養した。培養開始から2〜3日後、生えてきたコロニーを取り、PCRによる確認作業(T-DNA領域の一部分)を行った。PCRで選抜された数個のコロニーを再度ストリークし、純化した。また、コロニーPCRを行うことによりバイナリーベクターが菌体内に導入されていることを確認した。
【0047】
3.pPALS-ddsAを持つアグロバクテリウム菌によるイネ形質転換
<イネ種子の前培養>
籾殻を除去したイネ(日本晴)種子を50ml容のファルコンチューブに入れ、以下の操作は全てクリーンベンチ内で行った。70%エタノールで軽く洗浄した後滅菌水ですすいで洗浄液を除去した。1/2希釈次亜塩素酸ナトリウム溶液を加え、15分間振とうした。次亜塩素酸ナトリウム溶液を捨て、泡立ちがなくなるまで滅菌水で洗浄した。滅菌した濾紙上に種子をあけ、水分を除去した。滅菌した種子を表1に記載したカルス誘導培地(N6D培地)に胚を上向きに置床し(12-16粒/シャーレ)、33℃、明所で5日間培養した。
【0048】
<アグロバクテリウムの前培養>
感染3日前に、pPALS-ddsAを持つアグロバクテリウム(EHA101)をリファンピシン(12.5mg/L)、クロラムフェニコール(25mg/L)、テトラサイクリン(50mg/L)、カナマイシン(50mg/L)を含むLB固形培地に塗布し、24℃、暗所で3日間培養した。なお、本アグロバクテリウムはAB培地上での増殖が悪かったためLB培地上で増殖したアグロバクテリウム菌を用いた。
【0049】
<アグロバクテリウムの感染と共存培養>
50ml容のファルコンチューブにAAM溶液を40ml入れ、アセトシリンゴンを30mg/Lとなるように加えた。前培養したアグロバクテリウムを滅菌したミクロスパーテルで1/4匙程度かきとり、アセトシリンゴンを加えたAAM溶液に懸濁した。この際、アグロバクテリウムの塊が残らないように駒込ピペットでよくピペッティングした。5日間培養した種子の中から胚盤由来カルスの良く発達したものを選び、シュートと胚乳部分を除去し、新しい50ml容ファルコンチューブに入れた。胚盤由来カルスの入ったファルコンチューブにアグロバクテリウム懸濁液を加え、1.5分間ゆっくりと転倒混和した後、共存培養培地(2N6-AS培地)にカルス同士が接触しないように置床し、24℃、暗所で3日間共存培養した。
【0050】
<アグロバクテリウムの除去と選抜>
共存培養したカルスを50ml容ファルコンチューブへ移し、滅菌水で7-8回洗浄した。さらにカルスをカルベニシリン500mg/Lを含む滅菌水で洗浄した。洗液を駒込ピペット等でできるだけ取り除いた後、カルスを滅菌した濾紙上に移して余分な水分を除去した。カルスをカルベニシリン400mg/Lと0.5μM ピリミノバック(以下PMと記す)を含む選抜培地(N6D培地)に置床し(14カルス/シャーレ)、33℃、明所で1ヶ月間培養した。この間2週間ごとに新しい選抜培地に移植した。
【0051】
<形質転換体の再分化>
選抜培地上で、活発に増殖しているカルスをPMを含まない再分化培地に移植した。再分化した植物体は根の成長を促進するためさらにホルモンフリー培地で生育し、土に移植し成熟させた。形質転換植物のT0世代は自家受粉させ、T1種子を得た。
【0052】
【表1】
【0053】
4.PCRによる遺伝子導入の確認
DNeasy Plant Mini Kit を用いてプロトコール通りにカルスからDNAを抽出し、PCRによる導入遺伝子の確認を行った(図4)。抽出したDNA溶液を5μL用いて以下の条件でPCR反応を行った。
【0054】
DNA溶液:5 μL
センスプライマー(25pmol/l):2μl
アンチセンスプライマー(25pmol/l):2μl
蒸留水:16μl
Ready to go PCR bead(アマシャム):1個
【0055】
PCRの際の反応温度サイクルは、94℃で10min維持した後、94℃で30s、55℃で1min及び72℃で1m30sを1サイクルとして25サイクル行った後、72℃で7min維持するものとした。
【0056】
また、T−DNA領域の導入された各領域を確認する際に使用したプライマーを図4に示し、各プライマーの塩基配列を以下に示す。
ALS-RspJ(センスプライマー) 5´−TTGTTGGATATCATCGTCCCGCAC−3´(配列番号4)
OsALS1(アンチセンスプライマー) 5´−CTGGCTACTCCATAAACCGTAG−3´(配列番号5)
OsALS2(センスプライマー) 5´−GTCCACGACTAGTCCATGATTT−3´(配列番号6)
OsALS3(アンチセンスプライマー) 5´−GTGGCTATGTGTATGCAGTTC−3´(配列番号7)
OsALS7(センスプライマー) 5´−CTCATCTTGCGCTGCGTTTGT−3´(配列番号8)
pTN51(アンチセンスプライマー) 5´−TCAGGGATGTGACATTGCTCTTGC−3´(配列番号9)
3-1-4(センスプライマー) 5´−AGGTGTCACAGTTGTTG−3´(配列番号10)
ALS-Rsp2(アンチセンスプライマー) 5´−AGTCCTGCCATCACCATCCAG−3´(配列番号11)
Cal pro 1S(センスプライマー) 5´−TGAAGGTGTGTATTTGTCC−3´(配列番号12)
Cal pro 1A(アンチセンスプライマー) 5´−GCCTTCTCTGTATAACCTG−3´(配列番号13)
pTN7(センスプライマー) 5´−GTGCAATGTTTCGAGGAGC−3´(配列番号14)
pTN9(アンチセンスプライマー) 5´−CACGTTTGATCGAGGCACTGA−3´(配列番号15)
pTN17(アンチセンスプライマー) 5´−TCCATGTAGATTTCCCGG−3´(配列番号16)
pTN27(センスプライマー) 5´−GTTGTGGATACCTCGCGGAA−3´(配列番号17)
ddsA 2S(センスプライマー) 5´−CATTCATACCGCCACACTGCT−3´(配列番号18)
ddsA 3A(アンチセンスプライマー) 5´−CCGTGAATGACTTCAAGATAGCG−3´(配列番号19)
ddsA 3S(センスプライマー) 5´−TGGGAGCGCGTCATTGGAGAAG−3´(配列番号20)
pTN3(アンチセンスプライマー) 5´−GCACACGATAGTATGCAACACC−3´(配列番号21)
pTN53(センスプライマー) 5´−GCCATCCGACGGATGATGTTTA−3´(配列番号22)
pTN54(アンチセンスプライマー) 5´−GGACGTGAATGTAGACACGTCG−3´(配列番号23)
【0057】
なお、アグロバクテリウムの残存確認には、以下のプライマーを用いて同様にPCRを行った。
PTIB-1(センスプライマー) 5´−TTGCGCTGCTTTGGCAAATGACGG−3´(配列番号24)
PTIB-2(アンチセンスプライマー) 5´−TATGAGGCGCATCGTCGGATCAGT−3´(配列番号25)
【0058】
アグロバクテリウム菌を用いた形質転換後、約40日間経過した時点で、選抜培地において増殖したカルスの3個体からDNA抽出を行ってPCR、電気泳動を行った結果、目的遺伝子が組み込まれていることが示された(図5及び図6)。図5のレーン2、6及び10と図6のレーン6の写真から、T-DNA領域のddsA、図5のレーン3、7及び11と図6のレーン4の写真からP10ターミネーター、図6のレーン2、3及び5からALSプロモーター、更に図6のレーン5からS14の一部分に相当するDNAがPCRによって増幅され、目的の塩基数に対応するバンドが確認された。また、図6のレーン11からヘルパープラスミドの存在を確認するプライマーセット(PTIB1/PTIB2)を用いたPCR ではバンドの増幅が認められなかったことから、増幅されたT-DNA領域は遺伝子導入された結果であり、残存するアグロバクテリウムに由来するものではないことが示された。以上の結果から、T-DNA領域のイネ培養細胞への導入が確認された。
【0059】
5.In vivo ALS 検定による遺伝子導入の確認
約40日間の選抜後に遺伝子導入により増殖したと考えられるカルスの一部(25mg程度)を500μMの1,1-シクロプロパンジカルボン酸(CPCA)及び0.25μMのピリミノバック(PM)含有N6D 培地(表1参照)に置床し、以下のin vivo ALS検定による遺伝子導入の確認を行った。
【0060】
すなわち、先ず、500μMのCPCA及び0.25μMのPMを含むN6D培地にカルス50mgを置床し、30℃、暗条件で1日静置した。なお、コントロールにおいては培地から0.25μM PMを除いた。次に、カルスをシャーレから取り出し、1.5mlマイクロチューブに入れた。当該1.5mlマイクロチューブに0.025%Triton X-100を含む蒸留水220μlを加え、60℃で5分間静置した。
【0061】
その後、超音波(周波数40kHz)で15分抽出した後、200μlの上清を別の1.5mlマイクロチューブに移した。これに20μlの5%(v/v)の硫酸を加え、60℃で30分間静置した。次に、100μlの0.5%(w/v)クレアチン溶液及び2.5NのNaOH溶液に溶かした100μlの5%(w/v)α-ナフトール溶液を加え、37℃で15分間静置した。その後、525 nmにて吸光度を測定することにより遺伝子導入の確認を行った。
【0062】
なお、500μMのCPCA及び0.25μMのPMを含むN6D培地は以下のように作製した。CHUの粉(1袋)、ミオイノシトール(100mg)、ニコチン酸(0.5mg)、ピリドキシン塩酸塩(0.5mg)、チアミン塩酸塩(1mg)、2,4-D(2mg)、カザミノ酸(300mg)、グリシン(2mg)、L-プロリン(2.8g)、スクロース(30g)、ゲルライト(4g)を1リッターの蒸留水に溶かしオートクレーブ滅菌をした後、55℃まで培地を冷まし500μMのCPCA及び0.25μMのPMを加えた。シャーレに培地を30mlずつ分注し500μMのCPCA及び0.25μMのPMを含むN6D培地を準備した。
【0063】
そして、増殖が確認された全28個体についてin vivo ALS 検定を行った結果、0.25μMのピリミノバック存在下で、非形質転換カルスでは発色が認められなかったのに対して、28個体すべてにおいて赤色発色が認められ、遺伝子が導入されていることが確認された。表2はそれぞれの形質転換カルスでのアセトインの蓄積量(3連の平均±標準偏差)を示した。個体間でのアセトイン蓄積量の違いは、形質転換体での導入遺伝子のコピー数、位置効果に依存した発現量の違いを反映していると考えられた。
【0064】
【表2】
【0065】
カルスで遺伝子導入が確認された28の形質転換体をピリミノバックを含まない再分化培地に移植した。その結果、1個体を除くすべての個体で再分個体が得られた。再分化した植物体はホルモンフリー培地で草丈が5cm程度に生育した時点で、PCRによる植物体での遺伝子導入の確認を行った。具体的にはDNAを葉から抽出した後、ALSとp10ターミネーターの連結部を増幅する 3-1-4/pTN3およびddsAとp10ターミネーターの連結を増幅するddsA3S/pTN3の2つのプライマーセットを用いてPCRを行った。その結果、すべての個体で目的のバンドが確認された(図7)。再分化した植物体は順次隔離温室での栽培を行った。隔離温室での栽培開始から平均2ヶ月で、すべての植物体で出穂が確認された。これらの植物体から後代種子(T1)を採種した。
【0066】
〔結果及び考察〕
上述した実施例1に記載した方法によって、CoQ10を産生する組換えイネから採取した種子中のCoQ10の抽出、定量を行った。その結果を図8に示す。また、表3には、各組換え個体の検定種子数、CoQ10蓄積種子の分離比及び最も多くのCoQ10蓄積が認められた種子での含有量を示した。
【0067】
【表3】
【0068】
検定を行った17個体すべてに、CoQ10の蓄積が認められ、メンデル則に従った分離が認められた。このうち、ALSCoQ-6でもっとも多くのCoQ10の蓄積が認められた(10.5μg/g)。また、図9に各個体の1粒ごとのCoQ10蓄積のばらつきを示した。各個体の最も多くの蓄積が認められた種子でのCoQ10含量がホモ個体での蓄積に相当すると考えられた。
以上の結果から明らかなように、実施例1の方法によれば種子1粒でのCoQ10の定量が可能となり、本法によってCoQ10蓄積量をT1種子で判断することができることが明らかとなった。
【0069】
一方、上述した実施例1に記載した方法によって野生型イネからCoQ9を抽出した結果及び比較例1〜3の方法によって野生型イネからCoQ9を抽出した結果を併せて表4に示す。
【0070】
【表4】
【0071】
表4に示した結果から、セルラーゼを用いた実験区(実施例1)において高い抽出効率で内在性CoQ9を定量することが可能となった。これに対して、比較例1〜3のようにα-アミラーゼ、プロテアーゼ或いはリパーゼにより玄米パウダーを処理しても、CoQ9の抽出効率は低いことが明らかとなった。
【0072】
一方、比較例4に記載した方法を用いて、参考実験1で作出された形質転換イネからCoQ10を抽出した結果を表5に示す。
【0073】
【表5】
【0074】
表5から判るように、ほとんどの個体で非形質転換体に比べて多くのCoQ10が蓄積していることが明らかとなった。また、表5に示した非形質転換カルス及び形質転換カルスNo5についてCoQ10を分析した結果のチャートをそれぞれ図10及び図11に示す。これら図10及び図11の比較からも、形質転換体でCoQ10が著しく増加していることが示唆された。
【0075】
しかしながら、表5に示した結果は、玄米パウダーを多く(100mg以上)用いる場合であって玄米1粒(15mg〜25mg)中のCoQ10或いはCoQ9を定量することは不可能である。これに対して、実施例1に記載した方法では、図10及び表3に示したように、玄米1粒(15mg〜25mg)中のCoQ10を定量できることが明らかとなった。また、実施例1に記載の方法で野生型イネから玄米1粒中のCoQ9を抽出、定量した結果を表6及び図12に示す。なお、Takahashiらのオートクレーブ処理とTLCを用いる方法(S.Takahashi et al. 2006, FEBS Lett. 580(3), 955-959)では、玄米パウダーを100mg使えばCoQ9がほぼ完全に回収でき、定量が可能であると報告されている。本報告において、この方法で定量される米粒(品種:日本晴)のCoQ9含量は4.2〜6.0μg/gである。
【0076】
【表6】
【0077】
表6及び図12に示した結果から、実施例1に記載の方法によれば、玄米1粒に相当する量の玄米パウダーからCoQ9を再現性良く定量できることが明らかとなった。次に、実施例1に記載の方法において、玄米パウダー20mg(玄米1粒に相当する量)を材料とする場合に必要な酵素量(ユニット数)を調べた。結果を表7に示す。
【0078】
【表7】
表7に示した結果から、実施例1に記載の方法において20ユニット以上のセルラーゼを用いれば再現性良くCoQ9が定量できることが判明した。
【0079】
以上のような実施例1に記載の方法に対して、玄米パウダーの100mgを使用して比較例4に記載の方法でCoQ9を抽出定量した結果を表8及び図13に示す。
【0080】
【表8】
【0081】
表8及び図13に示したように、比較例4の方法では報告されている値の10分の1以下しか定量できず、抽出効率が極めて悪いことが明らかとなった。また、比較例5或いは比較例6に記載の方法でも抽出効率は改善しなかった。そこで、比較例10として、抽出効率の改善を目的としてCoQ9の添加回収試験を行った。100mgの玄米パウダー(これには0.42〜0.6μgのCoQ9が含まれている)にCoQ9標準品を1μg添加して、抽出効率の悪かった比較例6に記載の方法及び酸を利用する改善法の比較例7に記載の方法でCoQ9を抽出して定量した結果を表9に示す。
【0082】
【表9】
【0083】
表9に示した結果から、比較例10として行った比較例7に記載の方法では抽出率が僅かながら改善されていると考えられた。すなわち、酸処理が抽出効率を高めると考えられた。一方、オートクレーブ処理は抽出効率を高めることが知られていたので、酸処理をしない方法(比較例8)と処理する方法(比較例9)で、定量値が変化するかどうかを調べた。その結果を表10及び図14(比較例9のみ)に示す。
【0084】
【表10】
【0085】
表10及び図14に示したように、比較例8の定量値はオートクレーブ処理を用いない比較例7と大きな違いは認められなかったが、酸処理とオートクレーブ処理を併用する比較例9に記載の方法では定量値が大きくなり、抽出効率が改善されたと考えられた。しかしながら表10に示したように、再現性が乏しい(換言すればデータの振れが大きい)結果であった。この再現性の乏しさは、酸性条件下でのCoQ9の分解であると推察された。このように、実施例1に記載の方法と異なり、酸処理によってCoQ9やCoQ10を抽出する方法では定量的にCoQ9及びCoQ10を測定できないと結論づけられる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】Ole18 pro::S14::ddsA::P10terカセットのPSR-03への組込みスキームを説明するための模式図である。
【図2】ALS pro::S14::ddsA::P10terカセットのPSR-03への組込みスキームを説明するための模式図である。
【図3−1】KLB-180の全塩基配列を示す配列図である。
【図3−2】KLB-180の全塩基配列を示す配列図である。
【図3−3】KLB-180の全塩基配列を示す配列図である。
【図3−4】KLB-180の全塩基配列を示す配列図である。
【図3−5】KLB-180の全塩基配列を示す配列図である。
【図3−6】KLB-180の全塩基配列を示す配列図である。
【図3−7】KLB-180の全塩基配列を示す配列図である。
【図3−8】KLB-180の全塩基配列を示す配列図である。
【図3−9】KLB-180の全塩基配列を示す配列図である。
【図3−10】KLB-180の全塩基配列を示す配列図である。
【図4】形質転換に用いたバイナリーベクターコンストラクト及びPCRに用いたプライマーセットの増幅位置を説明するための模式図である。
【図5】形質転換カルスから抽出したDNAを用いたPCRによる導入遺伝子の確認結果を示す電気泳動写真である。
【図6】形質転換カルスから抽出したDNAを用いたPCRによる導入遺伝子の確認結果を示す電気泳動写真である。
【図7】形質転換植物の葉から抽出したDNAを用いたPCRによる導入遺伝子の確認結果を示す電気泳動写真である。
【図8】実施例1に記載の方法で抽出したCoQ9及びCoQ10を分析するためのHPLCの結果を示すチャートである。
【図9】実施例1に記載の方法により測定した各系統のT1種子1粒でのCoQ10の蓄積量の散布図である。
【図10】比較例4に記載の方法により非形質転換カルスについてCoQ9及びCoQ10をHPLC分析した結果を示すチャートである。
【図11】比較例4に記載の方法により形質転換カルスNo5についてCoQ9及びCoQ10をHPLC分析した結果を示すチャートである。
【図12】実施例1に記載の方法により野生型イネの玄米1粒中のCoQ9をHPLC分析した結果を示すチャートである。
【図13】比較例4に記載の方法より野生型イネ玄米パウダー100mg中のCoQ9をHPLC分析した結果を示すチャートである。
【図14】比較例9に記載の方法より野生型イネ玄米パウダー100mg中のCoQ9をHPLC分析した結果を示すチャートである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユビキノン10等の脂溶性生理活性物質を植物組織から抽出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ユビキノン10(以下、CoQ10という。)は呼吸鎖電子伝達系の酸化還元に関わる重要な物質として、古くから基礎及び応用の両面にわたる研究の対象となってきた。近年はエネルギー産生賦活作用だけでなく抗酸化機能が注目され、従来の医薬用途に加えてサプリメントや化粧品として社会に普及している。日本においては、1974年に代謝性強心剤の医薬品として承認・販売され、生産及び医療並びに栄養面からの分析定量法が研究されてきた。このため、CoQ10の分析定量の対象は、酵母、動物由来の試料(血清等)、野菜・魚・肉・油等多岐にわたっている。CoQ10の基本抽出法は、簡易な有機溶媒抽出であり、そのままでは抽出できない試料は事前に破砕された後に抽出されていた。
【0003】
他方、イネ等の種子中には、極めて微量のCoQ10と比較的多量のコエンザイムQ9(以下、CoQ9という。)が存在する。このイネの種子を対象にした場合には、従来の抽出、定量方法では、多量のサンプルを用いてもCoQ10は言うに及ばずCoQ9についても効率良く抽出、定量することは不可能であった。このため、オートクレーブ処理や薄層クロマトグラフィーを使用するかなり煩雑な抽出、定量法が考案され、この方法によって回収率が大幅に改良され定量が可能となった(非特許文献1)。しかし、非特許文献1に開示された方法でも、米粒イネ種子1粒等の微量サンプルからCoQ10やCoQ9といった脂溶性の生理活性物質の定量は不可能であった。
【0004】
一方、植物種子(大豆・菜種・ひまわり・ごま)からの油糧の抽出においては、水処理、オートクレーブ処理、酵素処理を予備的に行う事により、その後の有機溶媒による抽出の効率が上昇することが報告されており(特許文献1)、これらの処理の中で加水分解酵素による予備処理は、植物組織からの他の機能性物質の抽出においても用いられていた(特許文献2及び3)。
【0005】
【非特許文献1】S. Takahashi et al. 2006, FEBS Lett., 580(3), 955-959
【特許文献1】特開2002-256281号公報
【特許文献2】特開2005-27520号公報
【特許文献3】特開2002-348245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1〜3に開示された方法では、CoQ10といった種子中に非常に微量しか含まれていない脂溶性の生理活性物質を抽出するといった技術的思想は想定されておらず、当該脂溶性の生理活性物質を種子一粒から抽出することは不可能であった。そこで、本発明は、上述した実情に鑑み、種子一粒から微量の脂溶性生理活性物質を抽出することのできる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上述した目的を達成するために鋭意検討した結果、有機溶媒抽出操作の前に行う種々の予備処理操作を検討し、セルロース加水分解酵素(セルラーゼ)によって種子粉末及び/又は種子の胚粉末を処理することによって、微量サンプルからのCoQ10等の脂溶性生理活性物質を簡便、且つ高収率で抽出できるといった知見を見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下を包含する。
(1)種子粉末及び/又は種子の胚粉末を、セルロース加水分解酵素を含む緩衝液で処理する工程と、脂溶性生理活性物質を抽出する工程とを含む、脂溶性生理活性物質の抽出方法。
(2)上記種子粉末及び/又は種子の胚粉末は、イネ由来であることを特徴とする(1)記載の脂溶性生理活性物質の抽出方法。
(3)上記イネは、脂溶性生理活性物質としてユビキノン10を産生する形質転換イネであることを特徴とする(2)記載の脂溶性生理活性物質の抽出方法。
(4)上記種子粉末及び/又は種子の胚粉末の量は、種子1粒に相当する量であることを特徴とする(1)記載の脂溶性生理活性物質の抽出方法。
(5)上記脂溶性生理活性物質を抽出する工程は、低極性有機溶媒を使用することを特徴とする(1)記載の脂溶性生理活性物質の抽出方法。
(6)上記低極性有機溶媒は炭素数5個〜8個の飽和炭化水素であることを特徴とする(5)記載の脂溶性生理活性物質の抽出方法。
(7)上記脂溶性生理活性物質は、ユビキノン及び/又はビタミンE類であることを特徴とする(1)記載の脂溶性生理活性物質の抽出方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、種子中に非常に微量で存在する脂溶性生理活性物質を種子一粒といった微量サンプルから抽出することができる、非常に優れた方法を提供することができる。本発明に係る脂溶性生理活性物質の抽出方法によれば、例えば種子一粒に相当するサンプルから脂溶性生理活性物質を抽出して定量することができるため、種子中に存在する脂溶性生理活性物質を高精度に分析することができる。また、本発明に係る脂溶性生理活性物質の抽出方法を適用することによって、種子中に存在する脂溶性生理活性物質を非常に優れた収率で回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る脂溶性生理活性物質の抽出方法を図面を参照にして詳細に説明する。
【0011】
本発明に係る脂溶性生理活性物質の抽出方法は、種子中に微量に存在する脂溶性生理活性物質を抽出する方法である。ここで、脂溶性生理活性物質としては、例えば、ユビキノン類、脂溶性ビタミン類等を挙げることができる。
【0012】
ユビキノン類とは、2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−ポリプレニル−1,4−ベンゾキノンの誘導体である。ユビキノン類としては、側鎖のイソプレン単位の繰り返し数に応じて、コエンザイムQ6、コエンザイムQ7、コエンザイムQ8、コエンザイムQ9、コエンザイムQ10等が知られている。脂溶性ビタミン類としては、例えば、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKを挙げることができる。
【0013】
本発明に係る脂溶性生理活性物質の抽出方法では、先ず、植物から採取した種子を集積し、これら種子を、好ましくはこれら種子から分離した胚を粉末化する。なお、本発明に係る脂溶性生理活性物質の抽出方法において、植物としては特に限定されず、野生型の植物及び所望の形質が付与された形質転換植物のいずれであっても良い。形質転換植物としては、例えば、特定の物質の産生量が増大するように遺伝子操作がなされた形質転換植物を挙げることができる。特に、本発明に係る脂溶性生理活性物質の抽出方法では、CoQ10の産生量が増加するようにグルコン酸菌(Gluconobacter suboxydans)由来のddsA(decaprenyl diphosphate synthase:デカプレニル2リン酸合成酵素)が導入されたCoQ10産生植物を対象とすることが好ましい。
【0014】
植物としては、特に限定されず、例えば、イネ、タバコ、オオムギ、コムギ、パンコムギ、ライムギ、カラスムギ、ハトムギ、モロコシ、トウモロコシ、キビ、アワ、ヒエ、ソバ、カタクリ、クズ、サトウキビ、テンサイ、ナス、ジャガイモ、サツマイモ、ヤマイモ、サトイモ、コンニャク、ゴボウ、レンコン、キュウリ、カラスウリ、ヘチマ、フキ、タロイモ、キャッサバ、トマト、ニンジン、アスパラガス、カボチャ、ダイコン、カブ、アブラナ、キャノーラ、アルアルファ、ピーマン、トウガラシ、キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、レタス、マツナ、ホウレンソウ、シュンギク、ヨモギ、オクラ、シソ、ゴマ、クチナシ、ワサビ、カラシ、ショウガ、ミョウガ、ウコン、サフラン、タマネギ、ネギ、ニンニク、ワラビ、ゼンマイ、ダイズ、アズキ、インゲンマメ、エンドウ、ソラマメ、ササゲ、ベルベットビーン、カラスノエンドウ、ラッカセイ、クコ、ケシ、オリーブ、ハッカ、アーモンド、ピスタチオ、マカダミアナッツ、ピーナッツ、ナツメヤシ、ココヤシ、サゴヤシ、サトウヤシ、ニッパヤシ、パイナップル、カキ、リンゴ、ウメ、モモ、ビワ、ナシ、ブドウ、サクランボウ、イチゴ、キイチゴ、ブルーベリー、プルーン、ザクロ、イチジク、アケビ、グミ、マンゴスチン、キーウィフルーツ、メロン、柑橘、バナナ、パパイヤ、マンゴー、シロイヌナズナ、ナズナ、イヌナズナ、ユリ、バラ、サクラ、ヤマザクラ、ボタン、ツバキ、サザンカ、ラベンダー、フジ、シャクヤク、スミレ、パンジー、スイートピー、スイセン、ハナショウブ、アヤメ、バショウ、ショウブ、ミズバショウ、スイレン、ハス、ラン、アサガオ、キンモクセイ、アザミ、ガーベラ、ダリア、チューリップ、コスモス、ヒマワリ、タンポポ、カモミール、ローズマリー、ホオズキ、ハマナス、マタタビ、クローバー、ライラック、サボテン、ユキノシタ、ドクダミ、チャ、コーヒー、エゾマツ、カラマツ、アカマツ、タケ、イチョウ、スギ、ヒノキ、モミ、ゴム、ブナ、ケヤキ、クスノキ、モミジバフウ、ユーカリ、カエデ、ポプラ、アカシア、ゲッケイジュ、ワタ、イグサ、シバ、ベニバナ、クルミ、アボカドが挙げられるが、特にイネが好ましい。
【0015】
これら植物から採取した種子及び/又は胚を粉末化する手法としては、特に限定されないが、乳鉢を用いて粉末化する方法、ボールミル装置を用いて粉末化する方法といった各種の粉末化方法を挙げることができる。
【0016】
本発明に係る脂溶性生理活性物質の抽出方法では、次に、粉末化した種子及び/又は胚をセルロース加水分解酵素を含む緩衝液で処理する。ここで、セルロース加水分解酵素とは、セルラーゼと称される一群の酵素と同義であり、分子内部から切断するエンドグルカナーゼ(EC 3.2.1.4)と、糖鎖の還元末端と非還元末端のいずれから分解してセロビオースを遊離するエキソグルカナーゼ(EC 3.2.1.91)の両者を含む意味である。セルロース加水分解酵素としては、例えば、Aspergillus niger由来のセルラーゼ等を使用することができる。
【0017】
また、セルロース加水分解酵素を含む緩衝液とは、セルロース加水分解酵素に至適な塩濃度及びpHに維持した溶液を意味する。したがって、具体的に使用するセルロース加水分解酵素が決定されれば、緩衝液の組成及びpH等については当業者により適宜選択することができる。
【0018】
さらに、セルロース加水分解酵素を含む緩衝液で粉末化した種子及び/又は胚を処理する際の処理条件としては、反応温度、撹拌の有無及び反応時間等を挙げることができる。これらの処理条件は、粉末化した種子及び/又は胚の量及びセルロース加水分解酵素の種類等に応じて適宜設定することができる。
【0019】
本発明に係る脂溶性生理活性物質の抽出方法では、次に、処理後の緩衝液から脂溶性生理活性物質を抽出する。この抽出工程では、有機溶媒を利用した抽出処理が行われる。有機溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の低極性有機溶媒を使用することが好ましく、特にヘキサンが好ましい。有機溶媒の量は、特に限定されないが、種子及び/又は胚の粉体20mgに対して5〜25ml、好ましくは10〜20ml、より好ましくは12〜16mlとする。
【0020】
本抽出工程によって有機溶媒層に種子に蓄積された脂溶性生理活性物質を抽出することができる。有機溶媒層に抽出された脂溶性生理活性物質は、有機溶媒を除去することによって乾燥状態で回収することができる。また、脂溶性生理活性物質を含む有機溶剤をそのまま保存することもできるし、当該有機溶剤を用いて種子に含まれていた脂溶性生理活性物質を定量することもできる。
【0021】
有機溶剤中に抽出した脂溶性生理活性物質を検出する際には、特に限定されないが、例えば、高速液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー等を適用することができる。中でも、高速液体クロマトグラフィーを使用することが好ましい。
【0022】
以上で説明した本発明に係る脂溶性生理活性物質の抽出方法によれば、種子及び/又は胚の粉体をセルロース加水分解酵素によって処理することによって、有機溶媒層に脂溶性生理活性物質を抽出することができる。本発明に係る脂溶性生理活性物質の抽出方法では、セルロース加水分解酵素によって処理する粉体の量が種子一粒に相当するような微量であっても、脂溶性生理活性物質を確実に抽出することができる。従来においては、種子一粒から脂溶性生理活性物質を抽出できる手法は知られておらず、本発明に係る脂溶性生理活性物質の抽出方法は、粉体サンプル量が僅少である場合にも適用できるといった利点がある。
【0023】
さらに、本発明に係る脂溶性生理活性物質の抽出方法は、非常に簡便な操作で脂溶性生理活性物質を抽出することができる。すなわち、本発明に係る脂溶性生理活性物質の抽出方法では、オートクレーブ処理といった従来の手法には必須であった処理工程を省くことができる。
【実施例】
【0024】
以下、本発明に係る脂溶性生理活性物質の抽出方法を、実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
【0025】
〔実施例1〕
本実施例では、CoQ10をミトコンドリアで発現するように組み換えられたイネを用いて、本発明に係る脂溶性生理活性物質の抽出方法によりCoQ10を抽出した。なお、当該イネの作出方法は後述の参考実験1に詳述した。また、本例では、主としてCoQ9を産生する野生型イネを用いてCoQ9を抽出した。
【0026】
先ず、参考実験1で作出された形質転換イネから採取した玄米を乳鉢で粉砕し、得られた玄米パウダーの100mg或いは20mgを1.5mlのエッペンドルフチューブに入れ、そこにpH5.0の酢酸buffer(1ml)に溶解させた各加水分解酵素(セルラーゼ)を添加した(工程1)。次に、37℃の温浴に各エッペンドルフチューブが完全に漬かるように横に寝かせて入れ24時間静置した(工程2)。24時間の静置後、エッペンドルフチューブから別容器に移した溶液にヘキサン4mlをそれぞれ加え、ミキサーで30秒間撹拌した(工程3)。その後、2000rpmで2分間遠心を行い、ヘキサン層を3ml回収した(工程4)。さらに、ヘキサン4mlで2回(工程3と併せて合計3回)同様に抽出及び回収を行った(工程5)。最後に、回収した全てのヘキサン層をナス型フラスコに集め、エバポレーターで濃縮乾固した(工程6)。
【0027】
工程6で回収したCoQ10は以下の方法によって分析した。先ず、工程6において濃縮乾燥したヘキサン層をアセトニトリル/メタノール=1/1の混合溶液2 mlに溶解し、その50μlをHPLC装置に注入した。HPLC装置及び分析条件は以下の通りである。
【0028】
装置:液体クロマトグラフHP-1100(Hewlett Packard)
移動層:MeOH/MeCN=60/40→(15min)→90/10 (5min維持)
流速:1.0ml
検出器:可変波長型UV-VIS(測定波長275nm)
カラム:CAPCELL PACK C8 SHISEIDO TYPE:UG120 5mm SIZE: 4.6mmφ×250mm
【0029】
〔比較例1〕
比較例1では、セルラーゼを使用する代わりにα-アミラーゼを使用した以外は実施例1と同様にしてCoQ10を抽出及び分析した。
【0030】
〔比較例2〕
比較例2では、セルラーゼを使用する代わりにプロテアーゼを使用した以外は実施例1と同様にしてCoQ10を抽出及び分析した。
【0031】
〔比較例3〕
比較例3では、セルラーゼを使用する代わりにリパーゼを使用した以外は実施例1と同様にしてCoQ10を抽出及び分析した。
【0032】
〔比較例4〕
比較例4では、参考実験1で作出された形質転換イネ或いはCoQ9を発現する野生型イネを用いて、以下の方法によりCoQ10或いはCoQ9を抽出した。要約すると、比較例4の方法は、酵素による前処理なしの有機溶媒による抽出方法である。
先ず、殻を剥ぎとった後、秤量した玄米をパウダー状にした(工程1)。次に、玄米パウダーの100mgを10mlの試験管に入れた(工程2)。次に、当該試験管にヘキサン5mlを加え抽出した(工程3)。その後、2500rpmで5分間遠心した(工程4)。遠心分離処理の後、試験管内において分離したヘキサン層を回収した(工程5)。次に、ヘキサン層を回収した後の試験管に、再びヘキサン5mlを加え再抽出した(工程6)。その後、2500rpmで5分間遠心した(工程7)。遠心分離処理の後、試験管内において分離したヘキサン層を回収した(工程8)。最後に、回収した全てのヘキサン層をナス型フラスコに集め、エバポレーターで濃縮乾固した(工程9)。
また、比較例4では、実施例1と同様にしてCoQ10或いはCoQ9を行った。
【0033】
〔比較例5〕
比較例5では、比較例4の工程2の後に試験管内に蒸留水1mlを加えて1時間膨潤させ、比較例4の工程3においてヘキサンを4mlとした以外は比較例4と同様にしてCoQ9を抽出及び分析した。
【0034】
〔比較例6〕
比較例6では、蒸留水1mlを加えて1時間膨潤させる際の温度を80℃とした以外は実施例5と同様にしてCoQ9を抽出及び分析した。
【0035】
〔比較例7〕
比較例7では、蒸留水1mlを加えて1時間膨潤させる際に更に1mlの6%硫酸水溶液を加え、膨潤温度を80℃とした以外は比較例5と同様にしてCoQ9を抽出及び分析した。但し、比較例7では、比較例4の工程4は除いた。
【0036】
〔比較例8〕
比較例8では、比較例4の工程2の後に試験管内に蒸留水1mlを加えて、120℃で20分間オートクレーブ処理し、工程4を除いた以外は比較例4と同様にしてCoQ9を抽出及び分析した。
【0037】
〔比較例9〕
比較例9では、比較例4の工程2の後に試験管内に蒸留水1ml及び6%硫酸水溶液1mlを加えて、120℃で20分間オートクレーブ処理し、工程4を除いた以外は比較例4と同様にしてCoQ9を抽出及び分析した。
【0038】
〔比較例10〕
比較例10では、100mgの玄米パウダーに対してCoQ9標準品を1μg添加した以外は比較例6及び7と同様にしてCoQ9を抽出及び分析した。
【0039】
〔参考実験1〕
以下、参考実験1として、CoQ10を産生する組換えイネの作出方法について説明する。CoQ10を産生する組換えイネについては、35Sプロモーターによりドライブされたグルコン酸菌(Gluconobacter suboxydans)由来のddsA(decaprenyl diphosphate synthase:デカプレニル2リン酸合成酵素:CoQ10の側鎖部分を合成する酵素)をミトコンドリアで発現するように組換えられたイネはCoQ9をほとんど含まず高濃度のCoQ10を含むことが報告されている(S.Takahashi et al. 2006, FEBS Lett. 580(3), 955-959)。一方、イネ由来のALSプロモーターは未成熟種子や分裂の盛んな組織で強く機能することが判っている(K.Osakabe et al. 2005, Molecular Breeding, 16, 313-320)。したがって、ALSプロモーターでドライブしたddsAは、コエンザイムの生合成の活発な時期に強く発現することにより種子中のCoQ10含量を高めることが期待された。そこで、発明者らはミトコンドリア局在化配列のS14 SignalとddsAを融合させた遺伝子をALSプロモーターでドライブするコンストラクト(ALSpro::S14::ddsA::P10T)を作製した。
【0040】
1.ddsAを持つバイナリーベクター(pPALS-ddsA)の作製(図1及び2)
イネミトコンドリアリボソームタンパクのミトコンドリア局在化シグナルペプチドをコードする0044NAであるS14Signal、酢酸菌の一種であるグルコン酸菌(Gluconobacter suboxydans)由来で、CoQ10の側鎖(10ユニットのイソプレン鎖)の合成を行う酵素のdecaorenyl diphosphate synthase遺伝子(ddsA、アクセッション番号AB006850)並びに植物形質転換用に開発された2種類のバイナリーベクター(pPALS PSR-02及びPSR-03、http://www.kumiai-chem.co.jp/palselect/index.html)を利用して、ALSpro:: S14 Signal::ddsA::P10Tカセットを持つバイナリーベクターのpPALS PSR-03を作出した。
【0041】
具体的には、図1に示すように以下の方法で作製した。S14 Signal::ddsAが組み込まれたpUS14ddsAプラスミドをNot Iで消化しKlenow Fragmentにより平滑化した後、Sal Iで消化しS14 Signal::ddsA遺伝子を切り出した。pUC18プラスミドをSal I/Sma I(平滑末端)で順次消化後、先のS14 signal::ddsA遺伝子とライゲーションして大腸菌JM109株に形質転換し、目的のプラスミドを持つシングルコロニーを選抜した(KLB-161)。一方、ターミネーターとしてP10T(イネプロラミン10ターミネーター遺伝子)を利用するため、pPALS PSR-03バイナリーベクターをBam HI/Eco RI処理しALS::P10T断片を切り出し、pUC19の同サイトへ挿入後、Hind III/Sac I処理でALS遺伝子を除去し、pUC19ベクター上にP10Tが乗っている形にした。この断片と先のHind III/Sac Iサイトを持つS14 Signal::ddsA断片をライゲートし、大腸菌JM109株に形質転換した。この段階でpUC19上にS14 Signal::ddsA:: P10Tカセットが乗る形となった(KLB-164)。
【0042】
次に、S14 Signal::ddsA::P10Tカセットが組込まれたpUC19ベクター(上記KLB-164)をSal I処理/Blp I処理/ T4 DNA polymeraseによるblunt化/BAP処理を行なった。一方、pPALS PSR-02バイナリーベクターからAhd I/ Nco I処理した後、S1 nucleaseにより5'側から3'側にヌクレオチドを分解した。T4 DNA polymeraseにより平滑化した断片を、平滑末端化したKLB-164とライゲートし大腸菌HB101株に形質転換した。得られたコロニーをPCR(OsALS-7/ddsA 3Aのプライマーセット、下記に記載)でスクリーニングし、なるべく長いPCR産物を生成するコロニーをピックアップした。結果的に、得られたALSプロモーター(ALSpro)断片はPSR-02上のALSプロモーターと比較して上流側で294bp、下流側で24bp短くなったが、プロモーターとしての機能は損なわれていないと判断した。ALSpro:: S14 Signal::ddsA::P10TカセットをHind III/Eco RIで切り出し、T4 DNA polymeraseで平滑化した。一方、pPALS PSR-03バイナアリーベクターをEco RIで切断しT4 DNA polymeraseで平滑化、BAP処理した後、先のカセットとライゲーションし、大腸菌DH5α株に形質転換した(KLB-180)(図2)。
【0043】
また、得られたKLB-180の全塩基配列を配列番号1及び図3−1〜図3−10に示した。なお、図3−1〜図3−10において、遺伝子配列には一本線の下線を引いた。また、図3−1〜図3−10において、遺伝子配列の開始点に遺伝子名を示した。また、図3−1〜図3−10において、ddsA遺伝子のみ二本線で示した。また、図3−1〜図3−10においては、pPALS-ddsAベクターのSac Iサイトを1番目の塩基として表記した。この結果から、すべてのプライマーセットにおいて目的断片が増幅されていると判断された。
【0044】
2.pPALS-ddsAのアグロバクテリウム菌への導入
DH5α(KLB-180)に導入したALS プロモーター::S14::ddsA::P10 ターミネーターカセットを持つ上述のバイナリーベクターを、三親交配法を用いて以下のようにEHA101 株(KLB-131)に導入した。
【0045】
ずなわち、先ず、5mlのLB液体培地(抗生物質添加)にアグロバクテリウム菌EHA101株、大腸菌DH1株、大腸菌HB101株の各菌体を懸濁した。このとき、大腸菌は37℃、アグロバクテリウム菌は28℃で培養した。次に、それぞれの菌液を1.5mlずつエッペンチューブに移し、遠心(4℃、15000rpm、3分間)することで集菌した。その後、上清を捨て、LB液体培地(抗生物質無添加)を1ml加えて懸濁した。そして、再度、遠心(4℃、15000rpm、3分間)で集菌した。なお、LB液体培地による懸濁と、遠心による集菌をもう一度繰り返した。
【0046】
次に、上清を捨て、LB液体培地200μlを加えて懸濁した。その後、LB寒天培地(抗生物質無添加)上に重ねて植菌し、28℃で二晩培養した。成長したコロニーを全て掻き取り、500μlのLB液体培地(抗生物質無添加)に懸濁した。この懸濁液から100μlずつLB寒天培地(12.5ppmのリファンピシン、25ppmのクロラムフェニコール、50ppmのカナマイシン、50ppmのテトラサイクリンを含む)に塗布し、28℃で培養した。培養開始から2〜3日後、生えてきたコロニーを取り、PCRによる確認作業(T-DNA領域の一部分)を行った。PCRで選抜された数個のコロニーを再度ストリークし、純化した。また、コロニーPCRを行うことによりバイナリーベクターが菌体内に導入されていることを確認した。
【0047】
3.pPALS-ddsAを持つアグロバクテリウム菌によるイネ形質転換
<イネ種子の前培養>
籾殻を除去したイネ(日本晴)種子を50ml容のファルコンチューブに入れ、以下の操作は全てクリーンベンチ内で行った。70%エタノールで軽く洗浄した後滅菌水ですすいで洗浄液を除去した。1/2希釈次亜塩素酸ナトリウム溶液を加え、15分間振とうした。次亜塩素酸ナトリウム溶液を捨て、泡立ちがなくなるまで滅菌水で洗浄した。滅菌した濾紙上に種子をあけ、水分を除去した。滅菌した種子を表1に記載したカルス誘導培地(N6D培地)に胚を上向きに置床し(12-16粒/シャーレ)、33℃、明所で5日間培養した。
【0048】
<アグロバクテリウムの前培養>
感染3日前に、pPALS-ddsAを持つアグロバクテリウム(EHA101)をリファンピシン(12.5mg/L)、クロラムフェニコール(25mg/L)、テトラサイクリン(50mg/L)、カナマイシン(50mg/L)を含むLB固形培地に塗布し、24℃、暗所で3日間培養した。なお、本アグロバクテリウムはAB培地上での増殖が悪かったためLB培地上で増殖したアグロバクテリウム菌を用いた。
【0049】
<アグロバクテリウムの感染と共存培養>
50ml容のファルコンチューブにAAM溶液を40ml入れ、アセトシリンゴンを30mg/Lとなるように加えた。前培養したアグロバクテリウムを滅菌したミクロスパーテルで1/4匙程度かきとり、アセトシリンゴンを加えたAAM溶液に懸濁した。この際、アグロバクテリウムの塊が残らないように駒込ピペットでよくピペッティングした。5日間培養した種子の中から胚盤由来カルスの良く発達したものを選び、シュートと胚乳部分を除去し、新しい50ml容ファルコンチューブに入れた。胚盤由来カルスの入ったファルコンチューブにアグロバクテリウム懸濁液を加え、1.5分間ゆっくりと転倒混和した後、共存培養培地(2N6-AS培地)にカルス同士が接触しないように置床し、24℃、暗所で3日間共存培養した。
【0050】
<アグロバクテリウムの除去と選抜>
共存培養したカルスを50ml容ファルコンチューブへ移し、滅菌水で7-8回洗浄した。さらにカルスをカルベニシリン500mg/Lを含む滅菌水で洗浄した。洗液を駒込ピペット等でできるだけ取り除いた後、カルスを滅菌した濾紙上に移して余分な水分を除去した。カルスをカルベニシリン400mg/Lと0.5μM ピリミノバック(以下PMと記す)を含む選抜培地(N6D培地)に置床し(14カルス/シャーレ)、33℃、明所で1ヶ月間培養した。この間2週間ごとに新しい選抜培地に移植した。
【0051】
<形質転換体の再分化>
選抜培地上で、活発に増殖しているカルスをPMを含まない再分化培地に移植した。再分化した植物体は根の成長を促進するためさらにホルモンフリー培地で生育し、土に移植し成熟させた。形質転換植物のT0世代は自家受粉させ、T1種子を得た。
【0052】
【表1】
【0053】
4.PCRによる遺伝子導入の確認
DNeasy Plant Mini Kit を用いてプロトコール通りにカルスからDNAを抽出し、PCRによる導入遺伝子の確認を行った(図4)。抽出したDNA溶液を5μL用いて以下の条件でPCR反応を行った。
【0054】
DNA溶液:5 μL
センスプライマー(25pmol/l):2μl
アンチセンスプライマー(25pmol/l):2μl
蒸留水:16μl
Ready to go PCR bead(アマシャム):1個
【0055】
PCRの際の反応温度サイクルは、94℃で10min維持した後、94℃で30s、55℃で1min及び72℃で1m30sを1サイクルとして25サイクル行った後、72℃で7min維持するものとした。
【0056】
また、T−DNA領域の導入された各領域を確認する際に使用したプライマーを図4に示し、各プライマーの塩基配列を以下に示す。
ALS-RspJ(センスプライマー) 5´−TTGTTGGATATCATCGTCCCGCAC−3´(配列番号4)
OsALS1(アンチセンスプライマー) 5´−CTGGCTACTCCATAAACCGTAG−3´(配列番号5)
OsALS2(センスプライマー) 5´−GTCCACGACTAGTCCATGATTT−3´(配列番号6)
OsALS3(アンチセンスプライマー) 5´−GTGGCTATGTGTATGCAGTTC−3´(配列番号7)
OsALS7(センスプライマー) 5´−CTCATCTTGCGCTGCGTTTGT−3´(配列番号8)
pTN51(アンチセンスプライマー) 5´−TCAGGGATGTGACATTGCTCTTGC−3´(配列番号9)
3-1-4(センスプライマー) 5´−AGGTGTCACAGTTGTTG−3´(配列番号10)
ALS-Rsp2(アンチセンスプライマー) 5´−AGTCCTGCCATCACCATCCAG−3´(配列番号11)
Cal pro 1S(センスプライマー) 5´−TGAAGGTGTGTATTTGTCC−3´(配列番号12)
Cal pro 1A(アンチセンスプライマー) 5´−GCCTTCTCTGTATAACCTG−3´(配列番号13)
pTN7(センスプライマー) 5´−GTGCAATGTTTCGAGGAGC−3´(配列番号14)
pTN9(アンチセンスプライマー) 5´−CACGTTTGATCGAGGCACTGA−3´(配列番号15)
pTN17(アンチセンスプライマー) 5´−TCCATGTAGATTTCCCGG−3´(配列番号16)
pTN27(センスプライマー) 5´−GTTGTGGATACCTCGCGGAA−3´(配列番号17)
ddsA 2S(センスプライマー) 5´−CATTCATACCGCCACACTGCT−3´(配列番号18)
ddsA 3A(アンチセンスプライマー) 5´−CCGTGAATGACTTCAAGATAGCG−3´(配列番号19)
ddsA 3S(センスプライマー) 5´−TGGGAGCGCGTCATTGGAGAAG−3´(配列番号20)
pTN3(アンチセンスプライマー) 5´−GCACACGATAGTATGCAACACC−3´(配列番号21)
pTN53(センスプライマー) 5´−GCCATCCGACGGATGATGTTTA−3´(配列番号22)
pTN54(アンチセンスプライマー) 5´−GGACGTGAATGTAGACACGTCG−3´(配列番号23)
【0057】
なお、アグロバクテリウムの残存確認には、以下のプライマーを用いて同様にPCRを行った。
PTIB-1(センスプライマー) 5´−TTGCGCTGCTTTGGCAAATGACGG−3´(配列番号24)
PTIB-2(アンチセンスプライマー) 5´−TATGAGGCGCATCGTCGGATCAGT−3´(配列番号25)
【0058】
アグロバクテリウム菌を用いた形質転換後、約40日間経過した時点で、選抜培地において増殖したカルスの3個体からDNA抽出を行ってPCR、電気泳動を行った結果、目的遺伝子が組み込まれていることが示された(図5及び図6)。図5のレーン2、6及び10と図6のレーン6の写真から、T-DNA領域のddsA、図5のレーン3、7及び11と図6のレーン4の写真からP10ターミネーター、図6のレーン2、3及び5からALSプロモーター、更に図6のレーン5からS14の一部分に相当するDNAがPCRによって増幅され、目的の塩基数に対応するバンドが確認された。また、図6のレーン11からヘルパープラスミドの存在を確認するプライマーセット(PTIB1/PTIB2)を用いたPCR ではバンドの増幅が認められなかったことから、増幅されたT-DNA領域は遺伝子導入された結果であり、残存するアグロバクテリウムに由来するものではないことが示された。以上の結果から、T-DNA領域のイネ培養細胞への導入が確認された。
【0059】
5.In vivo ALS 検定による遺伝子導入の確認
約40日間の選抜後に遺伝子導入により増殖したと考えられるカルスの一部(25mg程度)を500μMの1,1-シクロプロパンジカルボン酸(CPCA)及び0.25μMのピリミノバック(PM)含有N6D 培地(表1参照)に置床し、以下のin vivo ALS検定による遺伝子導入の確認を行った。
【0060】
すなわち、先ず、500μMのCPCA及び0.25μMのPMを含むN6D培地にカルス50mgを置床し、30℃、暗条件で1日静置した。なお、コントロールにおいては培地から0.25μM PMを除いた。次に、カルスをシャーレから取り出し、1.5mlマイクロチューブに入れた。当該1.5mlマイクロチューブに0.025%Triton X-100を含む蒸留水220μlを加え、60℃で5分間静置した。
【0061】
その後、超音波(周波数40kHz)で15分抽出した後、200μlの上清を別の1.5mlマイクロチューブに移した。これに20μlの5%(v/v)の硫酸を加え、60℃で30分間静置した。次に、100μlの0.5%(w/v)クレアチン溶液及び2.5NのNaOH溶液に溶かした100μlの5%(w/v)α-ナフトール溶液を加え、37℃で15分間静置した。その後、525 nmにて吸光度を測定することにより遺伝子導入の確認を行った。
【0062】
なお、500μMのCPCA及び0.25μMのPMを含むN6D培地は以下のように作製した。CHUの粉(1袋)、ミオイノシトール(100mg)、ニコチン酸(0.5mg)、ピリドキシン塩酸塩(0.5mg)、チアミン塩酸塩(1mg)、2,4-D(2mg)、カザミノ酸(300mg)、グリシン(2mg)、L-プロリン(2.8g)、スクロース(30g)、ゲルライト(4g)を1リッターの蒸留水に溶かしオートクレーブ滅菌をした後、55℃まで培地を冷まし500μMのCPCA及び0.25μMのPMを加えた。シャーレに培地を30mlずつ分注し500μMのCPCA及び0.25μMのPMを含むN6D培地を準備した。
【0063】
そして、増殖が確認された全28個体についてin vivo ALS 検定を行った結果、0.25μMのピリミノバック存在下で、非形質転換カルスでは発色が認められなかったのに対して、28個体すべてにおいて赤色発色が認められ、遺伝子が導入されていることが確認された。表2はそれぞれの形質転換カルスでのアセトインの蓄積量(3連の平均±標準偏差)を示した。個体間でのアセトイン蓄積量の違いは、形質転換体での導入遺伝子のコピー数、位置効果に依存した発現量の違いを反映していると考えられた。
【0064】
【表2】
【0065】
カルスで遺伝子導入が確認された28の形質転換体をピリミノバックを含まない再分化培地に移植した。その結果、1個体を除くすべての個体で再分個体が得られた。再分化した植物体はホルモンフリー培地で草丈が5cm程度に生育した時点で、PCRによる植物体での遺伝子導入の確認を行った。具体的にはDNAを葉から抽出した後、ALSとp10ターミネーターの連結部を増幅する 3-1-4/pTN3およびddsAとp10ターミネーターの連結を増幅するddsA3S/pTN3の2つのプライマーセットを用いてPCRを行った。その結果、すべての個体で目的のバンドが確認された(図7)。再分化した植物体は順次隔離温室での栽培を行った。隔離温室での栽培開始から平均2ヶ月で、すべての植物体で出穂が確認された。これらの植物体から後代種子(T1)を採種した。
【0066】
〔結果及び考察〕
上述した実施例1に記載した方法によって、CoQ10を産生する組換えイネから採取した種子中のCoQ10の抽出、定量を行った。その結果を図8に示す。また、表3には、各組換え個体の検定種子数、CoQ10蓄積種子の分離比及び最も多くのCoQ10蓄積が認められた種子での含有量を示した。
【0067】
【表3】
【0068】
検定を行った17個体すべてに、CoQ10の蓄積が認められ、メンデル則に従った分離が認められた。このうち、ALSCoQ-6でもっとも多くのCoQ10の蓄積が認められた(10.5μg/g)。また、図9に各個体の1粒ごとのCoQ10蓄積のばらつきを示した。各個体の最も多くの蓄積が認められた種子でのCoQ10含量がホモ個体での蓄積に相当すると考えられた。
以上の結果から明らかなように、実施例1の方法によれば種子1粒でのCoQ10の定量が可能となり、本法によってCoQ10蓄積量をT1種子で判断することができることが明らかとなった。
【0069】
一方、上述した実施例1に記載した方法によって野生型イネからCoQ9を抽出した結果及び比較例1〜3の方法によって野生型イネからCoQ9を抽出した結果を併せて表4に示す。
【0070】
【表4】
【0071】
表4に示した結果から、セルラーゼを用いた実験区(実施例1)において高い抽出効率で内在性CoQ9を定量することが可能となった。これに対して、比較例1〜3のようにα-アミラーゼ、プロテアーゼ或いはリパーゼにより玄米パウダーを処理しても、CoQ9の抽出効率は低いことが明らかとなった。
【0072】
一方、比較例4に記載した方法を用いて、参考実験1で作出された形質転換イネからCoQ10を抽出した結果を表5に示す。
【0073】
【表5】
【0074】
表5から判るように、ほとんどの個体で非形質転換体に比べて多くのCoQ10が蓄積していることが明らかとなった。また、表5に示した非形質転換カルス及び形質転換カルスNo5についてCoQ10を分析した結果のチャートをそれぞれ図10及び図11に示す。これら図10及び図11の比較からも、形質転換体でCoQ10が著しく増加していることが示唆された。
【0075】
しかしながら、表5に示した結果は、玄米パウダーを多く(100mg以上)用いる場合であって玄米1粒(15mg〜25mg)中のCoQ10或いはCoQ9を定量することは不可能である。これに対して、実施例1に記載した方法では、図10及び表3に示したように、玄米1粒(15mg〜25mg)中のCoQ10を定量できることが明らかとなった。また、実施例1に記載の方法で野生型イネから玄米1粒中のCoQ9を抽出、定量した結果を表6及び図12に示す。なお、Takahashiらのオートクレーブ処理とTLCを用いる方法(S.Takahashi et al. 2006, FEBS Lett. 580(3), 955-959)では、玄米パウダーを100mg使えばCoQ9がほぼ完全に回収でき、定量が可能であると報告されている。本報告において、この方法で定量される米粒(品種:日本晴)のCoQ9含量は4.2〜6.0μg/gである。
【0076】
【表6】
【0077】
表6及び図12に示した結果から、実施例1に記載の方法によれば、玄米1粒に相当する量の玄米パウダーからCoQ9を再現性良く定量できることが明らかとなった。次に、実施例1に記載の方法において、玄米パウダー20mg(玄米1粒に相当する量)を材料とする場合に必要な酵素量(ユニット数)を調べた。結果を表7に示す。
【0078】
【表7】
表7に示した結果から、実施例1に記載の方法において20ユニット以上のセルラーゼを用いれば再現性良くCoQ9が定量できることが判明した。
【0079】
以上のような実施例1に記載の方法に対して、玄米パウダーの100mgを使用して比較例4に記載の方法でCoQ9を抽出定量した結果を表8及び図13に示す。
【0080】
【表8】
【0081】
表8及び図13に示したように、比較例4の方法では報告されている値の10分の1以下しか定量できず、抽出効率が極めて悪いことが明らかとなった。また、比較例5或いは比較例6に記載の方法でも抽出効率は改善しなかった。そこで、比較例10として、抽出効率の改善を目的としてCoQ9の添加回収試験を行った。100mgの玄米パウダー(これには0.42〜0.6μgのCoQ9が含まれている)にCoQ9標準品を1μg添加して、抽出効率の悪かった比較例6に記載の方法及び酸を利用する改善法の比較例7に記載の方法でCoQ9を抽出して定量した結果を表9に示す。
【0082】
【表9】
【0083】
表9に示した結果から、比較例10として行った比較例7に記載の方法では抽出率が僅かながら改善されていると考えられた。すなわち、酸処理が抽出効率を高めると考えられた。一方、オートクレーブ処理は抽出効率を高めることが知られていたので、酸処理をしない方法(比較例8)と処理する方法(比較例9)で、定量値が変化するかどうかを調べた。その結果を表10及び図14(比較例9のみ)に示す。
【0084】
【表10】
【0085】
表10及び図14に示したように、比較例8の定量値はオートクレーブ処理を用いない比較例7と大きな違いは認められなかったが、酸処理とオートクレーブ処理を併用する比較例9に記載の方法では定量値が大きくなり、抽出効率が改善されたと考えられた。しかしながら表10に示したように、再現性が乏しい(換言すればデータの振れが大きい)結果であった。この再現性の乏しさは、酸性条件下でのCoQ9の分解であると推察された。このように、実施例1に記載の方法と異なり、酸処理によってCoQ9やCoQ10を抽出する方法では定量的にCoQ9及びCoQ10を測定できないと結論づけられる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】Ole18 pro::S14::ddsA::P10terカセットのPSR-03への組込みスキームを説明するための模式図である。
【図2】ALS pro::S14::ddsA::P10terカセットのPSR-03への組込みスキームを説明するための模式図である。
【図3−1】KLB-180の全塩基配列を示す配列図である。
【図3−2】KLB-180の全塩基配列を示す配列図である。
【図3−3】KLB-180の全塩基配列を示す配列図である。
【図3−4】KLB-180の全塩基配列を示す配列図である。
【図3−5】KLB-180の全塩基配列を示す配列図である。
【図3−6】KLB-180の全塩基配列を示す配列図である。
【図3−7】KLB-180の全塩基配列を示す配列図である。
【図3−8】KLB-180の全塩基配列を示す配列図である。
【図3−9】KLB-180の全塩基配列を示す配列図である。
【図3−10】KLB-180の全塩基配列を示す配列図である。
【図4】形質転換に用いたバイナリーベクターコンストラクト及びPCRに用いたプライマーセットの増幅位置を説明するための模式図である。
【図5】形質転換カルスから抽出したDNAを用いたPCRによる導入遺伝子の確認結果を示す電気泳動写真である。
【図6】形質転換カルスから抽出したDNAを用いたPCRによる導入遺伝子の確認結果を示す電気泳動写真である。
【図7】形質転換植物の葉から抽出したDNAを用いたPCRによる導入遺伝子の確認結果を示す電気泳動写真である。
【図8】実施例1に記載の方法で抽出したCoQ9及びCoQ10を分析するためのHPLCの結果を示すチャートである。
【図9】実施例1に記載の方法により測定した各系統のT1種子1粒でのCoQ10の蓄積量の散布図である。
【図10】比較例4に記載の方法により非形質転換カルスについてCoQ9及びCoQ10をHPLC分析した結果を示すチャートである。
【図11】比較例4に記載の方法により形質転換カルスNo5についてCoQ9及びCoQ10をHPLC分析した結果を示すチャートである。
【図12】実施例1に記載の方法により野生型イネの玄米1粒中のCoQ9をHPLC分析した結果を示すチャートである。
【図13】比較例4に記載の方法より野生型イネ玄米パウダー100mg中のCoQ9をHPLC分析した結果を示すチャートである。
【図14】比較例9に記載の方法より野生型イネ玄米パウダー100mg中のCoQ9をHPLC分析した結果を示すチャートである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
種子粉末及び/又は種子の胚粉末を、セルロース加水分解酵素を含む緩衝液で処理する工程と、脂溶性生理活性物質を抽出する工程とを含む、
脂溶性生理活性物質の抽出方法。
【請求項2】
上記種子粉末及び/又は種子の胚粉末は、イネ由来であることを特徴とする請求項1記載の脂溶性生理活性物質の抽出方法。
【請求項3】
上記イネは、脂溶性生理活性物質としてユビキノン10を産生する形質転換イネであることを特徴とする請求項2記載の脂溶性生理活性物質の抽出方法。
【請求項4】
上記種子粉末及び/又は種子の胚粉末の量は、少なくとも種子1粒に相当する量であることを特徴とする請求項1〜3いずれか一項記載の脂溶性生理活性物質の抽出方法。
【請求項5】
上記脂溶性生理活性物質を抽出する工程は、低極性有機溶媒を使用することを特徴とする請求項1〜4いずれか一項記載の脂溶性生理活性物質の抽出方法。
【請求項6】
上記低極性有機溶媒は炭素数5個〜8個の飽和炭化水素であることを特徴とする請求項5記載の脂溶性生理活性物質の抽出方法。
【請求項7】
上記脂溶性生理活性物質は、ユビキノン及び/又はビタミンE類であることを特徴とする請求項1〜6いずれか一項記載の脂溶性生理活性物質の抽出方法。
【請求項1】
種子粉末及び/又は種子の胚粉末を、セルロース加水分解酵素を含む緩衝液で処理する工程と、脂溶性生理活性物質を抽出する工程とを含む、
脂溶性生理活性物質の抽出方法。
【請求項2】
上記種子粉末及び/又は種子の胚粉末は、イネ由来であることを特徴とする請求項1記載の脂溶性生理活性物質の抽出方法。
【請求項3】
上記イネは、脂溶性生理活性物質としてユビキノン10を産生する形質転換イネであることを特徴とする請求項2記載の脂溶性生理活性物質の抽出方法。
【請求項4】
上記種子粉末及び/又は種子の胚粉末の量は、少なくとも種子1粒に相当する量であることを特徴とする請求項1〜3いずれか一項記載の脂溶性生理活性物質の抽出方法。
【請求項5】
上記脂溶性生理活性物質を抽出する工程は、低極性有機溶媒を使用することを特徴とする請求項1〜4いずれか一項記載の脂溶性生理活性物質の抽出方法。
【請求項6】
上記低極性有機溶媒は炭素数5個〜8個の飽和炭化水素であることを特徴とする請求項5記載の脂溶性生理活性物質の抽出方法。
【請求項7】
上記脂溶性生理活性物質は、ユビキノン及び/又はビタミンE類であることを特徴とする請求項1〜6いずれか一項記載の脂溶性生理活性物質の抽出方法。
【図1】
【図2】
【図3−1】
【図3−2】
【図3−3】
【図3−4】
【図3−5】
【図3−6】
【図3−7】
【図3−8】
【図3−9】
【図3−10】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3−1】
【図3−2】
【図3−3】
【図3−4】
【図3−5】
【図3−6】
【図3−7】
【図3−8】
【図3−9】
【図3−10】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−50190(P2009−50190A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−218986(P2007−218986)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(000000169)クミアイ化学工業株式会社 (86)
【出願人】(501167644)独立行政法人農業生物資源研究所 (200)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(000000169)クミアイ化学工業株式会社 (86)
【出願人】(501167644)独立行政法人農業生物資源研究所 (200)
【Fターム(参考)】
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